説明

電磁弁装置およびそれを備えた動力伝達装置

【課題】電磁弁の最大出力圧の低下を抑制しつつ、当該電磁弁の調圧精度を良好に確保する。
【解決手段】リニアソレノイドバルブに要求される出力圧である要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力以下になるときには、電磁部のコイルを流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefを超えることなく要求出力圧に応じた値になるようにデューティ比および周波数が設定され、要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力を超えるときには、電磁部のコイルを流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefを超えてコイルへの給電状態が過電流状態になると共に要求出力圧に応じた値になるように当該要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力以下であるときに比べて高いデューティ比と低い周波数とが設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁装置およびそれを備えた動力伝達装置に関し、特に、電磁弁の電磁部にスイッチング素子のスイッチング制御により矩形波電圧を印加して当該電磁弁を駆動制御する電磁弁装置およびそれを備えた動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子制御式ブレーキシステムのリニアソレノイドバルブを駆動するためのリニアソレノイド駆動装置として、ソレノイドを流れる電流値を制御するためのPWM信号生成部、ソレノイド駆動回路およびソレノイド駆動トランジスタと、ソレノイドを流れる電流値をモニタすると共にモニタした電流を所定のゲイン特性にて出力してPWM信号生成部等にフィードバックする電流モニタとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このリニアソレノイド駆動装置では、ソレノイドを流れる電流値の大きさ、すなわち必要な電流制御の精度に応じて電流モニタのゲイン特性が変化させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−282433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなリニアソレノイドバルブといった電磁弁に要求される最大出力圧によっては、比較的狭い電流のレンジ(例えば0.1A程度)内で比較的大きい圧力変動(例えば200kPa程度)を制御することが必要となって電磁弁の出力ゲイン(電流変化に対する出力圧の変化の度合)が比較的高くなり、上記従来の装置のように電流モニタのゲイン特性を変更したとしても、電磁弁の調圧精度を良好に確保し得なくなるおそれがある。その一方で、電磁弁の調圧精度を向上させるべく電磁弁の出力ゲインを低下させると電磁弁の最大出力圧が低下してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の電磁弁装置およびそれを備えた動力伝達装置は、電磁弁の最大出力圧の低下を抑制しつつ、当該電磁弁の調圧精度を良好に確保することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電磁弁装置およびそれを備えた動力伝達装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0007】
本発明による電磁弁装置は、
電磁部を有する電磁弁と、該電磁弁の前記電磁部に接続されたスイッチング素子と、該スイッチング素子をスイッチング制御する制御手段とを含む電磁弁装置であって、
前記制御手段は、前記電磁弁に要求される出力圧である要求出力圧が所定圧以下になるときには、前記電磁部を流れる電流の平均値が所定電流値を超えることなく前記要求出力圧に応じた値になるようにデューティ比および周波数を設定すると共に該デューティ比および該周波数をもった矩形波電圧が前記電磁部に印加されるように前記スイッチング素子をスイッチング制御し、前記要求出力圧が前記所定圧を超えるときには、前記電磁部を流れる電流の平均値が前記所定電流値を超えると共に前記要求出力圧に応じた値になるように該要求出力圧が前記所定圧以下であるときに比べて高いデューティ比と低い周波数とを設定すると共に、該デューティ比および該周波数をもった矩形波電圧が前記電磁部に印加されるように前記スイッチング素子をスイッチング制御することを特徴とする。
【0008】
この電磁弁装置では、電磁弁に要求される出力圧である要求出力圧が所定圧以下になるときには、電磁部を流れる電流の平均値が所定電流値を超えることなく要求出力圧に応じた値になるようにデューティ比および周波数が設定され、設定されたデューティ比および周波数をもった矩形波電圧が電磁部に印加されるようにスイッチング素子がスイッチング制御される。これにより、当該所定圧をある程度低めに抑えると共に所定電流値をある程度高めに設定することで電磁弁の出力ゲイン(電流変化に対する出力圧の変化の度合)を低くすることができるので、電磁弁の調圧精度を良好に確保することが可能となる。また、要求出力圧が所定圧を超えるときには、電磁部を流れる電流の平均値が上記所定電流値を超えると共に要求出力圧に応じた値になるように要求出力圧が所定圧以下であるときに比べて高いデューティ比と低い周波数とが設定され、設定されたデューティ比および周波数をもった矩形波電圧が電磁部に印加されるようにスイッチング素子がスイッチング制御される。このように、要求出力圧が所定圧を超えるときに電磁部を流れる電流の平均値が所定電流値を超えることを許容すれば、電磁弁からより大きな出力圧を得ることができる。従って、この電磁弁装置によれば、電磁弁の最大出力圧の低下を抑制しつつ、当該電磁弁の調圧精度を良好に確保することが可能となる。
【0009】
また、前記所定電流値は、前記電磁弁の前記電磁部に許容される常用最大電流値であってもよく、前記制御手段は、前記要求出力圧が前記所定圧を超えるときには、前記電磁部への給電状態が過電流状態になるように前記要求出力圧が前記所定圧以下であるときに比べて高いデューティ比と低い周波数とを設定するものであってもよい。このように、要求出力圧が所定圧を超えるときに電磁部を流れる電流の平均値が常用最大電流値を超えて電磁部への給電状態が過電流状態になることを許容すれば、より広い電流のレンジ内で比較的小さい圧力変動を制御することができるので電磁弁の出力ゲインを低くすることが可能となり、それにより電磁弁の調圧精度を良好に確保することができる。また、要求出力圧が所定圧を超えるときに電磁部への給電状態が過電流状態になることを許容すれば、電磁弁(スプール)の変位をより大きくして電磁弁からより大きな出力圧を得ることができる。従って、この電磁弁装置によれば、電磁弁の最大出力圧と当該電磁弁の調圧精度とを良好に確保することが可能となる。ただし、常用最大電流値自体がある程度大きく確保される場合には、上記所定電流値は常用最大電流値未満の値とされてもよい。何れにしても、要求出力圧が所定圧を超える時間が長くなる場合には、電磁部の発熱に対する耐久性を充分に確保しておくことが好ましい。
【0010】
更に、前記電磁弁装置は、前記電磁部を流れる電流の値を取得する電流センサを更に備えてもよく、前記制御手段は、前記要求出力圧が前記所定圧以下になるときには、前記要求出力圧に応じた電流値と前記電流センサにより検出された電流値との偏差がなくなるように前記デューティ比および前記周波数を設定し、前記要求出力圧が前記所定圧を超えるときには、前記電流センサにより検出された電流値を用いることなく前記デューティ比および前記周波数を設定するものであってもよい。これにより、要求出力圧が所定圧以下となるときの電磁弁の調圧精度をより向上させることが可能となる。
【0011】
本発明による動力伝達装置は、上記何れかの電磁弁装置を備え、前記電磁弁から作動流体の供給を受ける少なくとも一つの摩擦係合要素の係合状態を切り替えることにより動力発生源に接続される入力軸から出力軸までの動力伝達経路を変更しながら前記動力発生源からの動力を前記出力軸に伝達する動力伝達装置であって、前記所定圧が前記摩擦係合要素が係合したときの係合圧以上かつ前記電磁弁の最大圧未満の値とされるものである。この動力伝達装置では、動力伝達経路の変更に伴って摩擦係合要素を係合させるときに、係合開始から係合完了までの間の処理がスムースに行われるように電磁弁を精度よく制御すると共に、摩擦係合要素の係合完了後には、電磁弁から摩擦係合要素の係合を保持するために必要な保持圧を良好に出力させることが可能となる。
【0012】
また、本発明による他の動力伝達装置は、上記何れかの電磁弁装置を備え、前記電磁弁から作動流体の供給を受ける少なくとも一つの摩擦係合要素の係合状態を切り替えることにより動力発生源に接続される入力軸から出力軸までの動力伝達経路を変更しながら前記動力発生源からの動力を前記出力軸に伝達する動力伝達装置であって、前記制御手段は、前記要求出力圧が前記所定圧以下になる前記摩擦係合要素の係合処理に際して該要求出力圧に応じた電流値と前記電流センサにより検出された電流値との偏差がなくなるように前記デューティ比および前記周波数を設定し、前記摩擦係合要素の係合処理が終了したと判断された後に、それ以後前記要求出力圧が前記所定圧を超えるとみなして前記電流センサにより検出された電流値を用いることなく前記デューティ比および前記周波数を設定するものである。
【0013】
この場合、前記制御手段は、前記摩擦係合要素の係合処理の前に前記電磁弁から前記摩擦係合要素までの流路に作動流体を充填する際に、前記電流センサにより検出された電流値を用いることなく前記デューティ比および前記周波数を設定するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係る電磁弁装置を含む動力伝達装置20を搭載した車両である自動車10の概略構成図である。
【図2】実施例の動力伝達装置20の概略構成図である。
【図3】実施例の動力伝達装置20に含まれる自動変速機25の各変速段とクラッチおよびブレーキBの作動状態との関係を表した作動表である。
【図4】実施例の動力伝達装置20に含まれる油圧制御ユニット50の概要を示す系統図である。
【図5】リニアソレノイドバルブ55等を駆動するのに用いられる駆動回路60の一部を示す概略構成図である。
【図6】リニアソレノイドバルブ55等の電磁部554等に印加される電流と出力ポートPoutから出力される作動油の圧力との相関を示す説明図である。
【図7】(a)および(b)は、リニアソレノイドバルブ55等の電磁部554等に印加される矩形波電圧を例示する説明図である。
【図8】変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例に係る電磁弁装置を含む動力伝達装置20を搭載した車両である自動車10の概略構成図であり、図2は、自動車10に搭載された動力伝達装置20の概略構成図である。これらの図面に示す自動車10は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関であるエンジン12と、エンジン12を運転制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)14と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という)16と、トルクコンバータ23や有段の自動変速機25、これらを制御する変速用電子制御ユニット(以下、「変速用ECU」という)21を有し、エンジン12のクランクシャフトに接続されると共にエンジン12からの動力を左右の駆動輪DWに伝達する動力伝達装置20とを備える。
【0017】
図1に示すように、エンジンECU14には、アクセルペダル91の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度Accや車速センサ99からの車速V、クランクシャフトの回転数を検出する図示しない回転数センサといった各種センサ等からの信号、ブレーキECU16や変速用ECU21からの信号等が入力され、エンジンECU14は、これらの信号に基づいて何れも図示しない電子制御式スロットルバルブや燃料噴射弁、点火プラグ等を制御する。ブレーキECU16には、ブレーキペダル93が踏み込まれたときにマスタシリンダ圧センサ94により検出されるマスタシリンダ圧や車速センサ99からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14や変速用ECU21からの信号等が入力され、ブレーキECU16は、これらの信号に基づいて図示しないブレーキアクチュエータ(油圧アクチュエータ)等を制御する。
【0018】
動力伝達装置20の変速用ECU21は、トランスミッションケースの内部に収容される。変速用ECU21には、複数のシフトレンジの中から所望のシフトレンジを選択するためのシフトレバー95の操作位置を検出するシフトレンジセンサ96からのシフトレンジSRや車速センサ99からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14やブレーキECU16からの信号等が入力され、変速用ECU21は、これらの信号に基づいてトルクコンバータ23や自動変速機25等を制御する。ここで、実施例の自動車10では、シフトレバー95のシフトレンジSRとして、駐車時に選択される駐車レンジ(Pレンジ)、後進走行用のリバースレンジ(Rレンジ)、中立のニュートラルレンジ(Nレンジ)、通常の前進走行用のドライブレンジ(Dレンジ)に加えて、運転者に予め定められた複数の変速段の中から任意の変速段の選択を許容するスポーツレンジ(Sレンジ)、アップシフト指示ポジションおよびダウンシフト指示ポジションが用意されている。
【0019】
なお、エンジンECU14、ブレーキECU16および変速用ECU21は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を備える。そして、エンジンECU14、ブレーキECU16および変速用ECU21は、バスライン等を介して相互に接続されており、これらのECU間では制御に必要なデータのやり取りが随時実行される。
【0020】
動力伝達装置20は、トランスミッションケースの内部に収容されるトルクコンバータ23や、オイルポンプ24、自動変速機25、差動機構(デファレンシャルギヤ)29等を含む。トルクコンバータ23は、エンジン12のクランクシャフトに接続される入力側のポンプインペラ23aと、自動変速機25の入力軸26に接続された出力側のタービンランナ23bとを含み、更にロックアップクラッチ機能を有するものである。オイルポンプ24は、ポンプボディとポンプカバーとからなるポンプアッセンブリと、ハブを介してトルクコンバータ23のポンプインペラ23aに接続された外歯ギヤとを備えるギヤポンプとして構成されている。エンジン12からの動力により外歯ギヤを回転させれば、オイルポンプ24によりストレーナ40を介してオイルパン45(何れも図4参照)に貯留されている作動油(ATF)が吸引・吐出され、それによりトルクコンバータ23や自動変速機25により要求される油圧を発生したり、各種軸受などの潤滑部分に作動油を供給したりすることができる。
【0021】
自動変速機25は、6段変速の有段変速機として構成されており、図2に示すように、シングルピニオン式遊星歯車機構30と、ラビニヨ式遊星歯車機構35と、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための3つのクラッチC1,C2およびC3と2つのブレーキB1およびB2とワンウェイクラッチF1とを含む。シングルピニオン式遊星歯車機構30は、トランスミッションケースに固定された外歯歯車であるサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置されると共に入力軸26に接続された内歯歯車であるリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを有する。ラビニヨ式遊星歯車機構35は、外歯歯車である2つのサンギヤ36a,36bと、自動変速機25の出力軸27に固定された内歯歯車であるリングギヤ37と、サンギヤ36aに噛合する複数のショートピニオンギヤ38aと、サンギヤ36bおよび複数のショートピニオンギヤ38aに噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のロングピニオンギヤ38bと、互いに連結された複数のショートピニオンギヤ38aおよび複数のロングピニオンギヤ38bを自転かつ公転自在に保持すると共にワンウェイクラッチF1を介してケースに支持されたキャリア39とを有する。そして、自動変速機25の出力軸27は、ギヤ機構28および差動機構29を介して駆動輪DWに接続される。
【0022】
クラッチC1は、シングルピニオン式遊星歯車機構30のキャリア34とラビニヨ式遊星歯車機構35のサンギヤ36aとを締結すると共に当該締結を解除することができる油圧クラッチである。クラッチC2は、入力軸26とラビニヨ式遊星歯車機構35のキャリア39とを締結すると共に当該締結を解除することができる油圧クラッチである。クラッチC3は、シングルピニオン式遊星歯車機構30のキャリア34とラビニヨ式遊星歯車機構35のサンギヤ36bとを締結すると共に当該締結を解除することができる油圧クラッチである。ブレーキB1は、ラビニヨ式遊星歯車機構35のサンギヤ36bをケースに固定すると共にサンギヤ36bのケースに対する固定を解除することができる油圧クラッチである。ブレーキB2は、ラビニヨ式遊星歯車機構35のキャリア39をケースに固定すると共にキャリア39のケースに対する固定を解除することができる油圧クラッチである。これらのクラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB2は、油圧制御ユニット50による作動油の給排を受けて動作する。図3に、自動変速機25の各変速段とクラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB2の作動状態との関係を表した作動表を示す。自動変速機25は、クラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB2を図3の作動表に示す状態とすることで前進1〜6速の変速段と後進1段の変速段とを提供する。
【0023】
図4に示すように、油圧制御ユニット50は、エンジン12からの動力を用いてストレーナ40を介してオイルパン45から作動油を吸引・吐出する前述のオイルポンプ24に接続されるものであり、オイルポンプ24側(図示しない調圧バルブ)からの作動油を調圧して出力するリニアソレノイドバルブ51と、リニアソレノイドバルブ51により駆動されてオイルポンプ24からの作動油の圧力を調節してライン圧PLを生成するレギュレータバルブ52と、シフトレバー95の操作位置に応じてレギュレータバルブ52からの作動油をクラッチC1〜C3,ブレーキB1およびB2に供給可能とすると共にクラッチC1等に対する作動油の供給を停止させることができるマニュアルバルブ53と、マニュアルバルブ53からの作動油(ライン圧PL)を調圧してクラッチC1側に出力可能な常閉型のリニアソレノイドバルブ54と、マニュアルバルブ53からの作動油(ライン圧PL)を調圧してブレーキB1側に出力可能な常閉型のリニアソレノイドバルブ55と、マニュアルバルブ53からの作動油(ライン圧PL)を調圧してクラッチC2,C2およびブレーキB2の中の対応するものへと出力可能な図示しない複数のリニアソレノイドバルブとを含む。なお、図4にはクラッチC1およびブレーキB1の油圧系のみを例示したが、その他のクラッチC2,C3およびブレーキB2についても同様の油圧系が構成される。
【0024】
リニアソレノイドバルブ54および55は、入力ポートPinと出力ポートPoutとドレンポートPdとを有する中空のスリーブ541,551と、スリーブ541,551内に配置されて軸方向に摺動可能なスプール542,552と、スプール542,552を軸方向に付勢するスプリング543,553と、スプリング543,553の付勢力に抗するようにスプール542,552に対して推力を付与可能な電磁部544,554とを有する。そして、リニアソレノイドバルブ54,55、クラッチC2,C3およびブレーキB2の図示しないリニアソレノイドバルブは、変速用ECU21により制御される駆動回路60により駆動される。図5に、駆動回路60のうちのブレーキB1に対応したリニアソレノイドバルブ55の電磁駆動系を例示する。同図に示すように、駆動回路60は、例えばDC12Vの直流電源61と、リニアソレノイドバルブ55の電磁部554のコイル555とに接続されると共に変速用ECU21によりON時間の割合が調整(スイッチング制御)されるスイッチング素子としてのトランジスタ62と、コイル555を流れる電流を検出するための電流センサ63とを含む。なお、クラッチC1に対応したリニアソレノイドバルブ54や他のクラッチC2,C3およびブレーキB2に対応したリニアソレノイドバルブについても図5のものと同様の電磁駆動系が構成される。このような構成を有するリニアソレノイドバルブ55等では、スプール552に付与される推力が変化するようにトランジスタ62をスイッチング制御して電圧(矩形波電圧)を電磁部554のコイル555に印加すれば、入力ポートPinに流入した作動油の一部がドレンポートPdから排出され、それにより調圧された作動油を出力ポートPoutから出力することができる。
【0025】
ここで、実施例のリニアソレノイドバルブ54,55では、電磁部544,554のコイル545,555に印加される電流の平均値と出力ポートPoutから出力される作動油の圧力(出力圧)とが図6に示すような相関を有するようにスプール542,552のストローク、スプール542,552の大径ランドと小径ランドとの面積差(フィードバック圧)、スプリング543,553のバネ定数、電磁部544,554(コイル545,555)の材質や性能といった諸元や駆動回路60の制御モード等が定められている。すなわち、実施例のリニアソレノイドバルブ54,55は、電磁部544,554のコイル545,555を流れる電流の平均値が常用最大電流値(例えば1.0A程度の値)Arefよりも若干小さい値(例えば0.9A程度)になったときにクラッチC1やブレーキB1が係合したときの係合圧を出力すると共に、電磁部544,554のコイル545,555を流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefを超える所定値(例えば2.0A程度)になったときに全開となって最大圧Pmax(ライン圧PL)を出力するという特性を有する。これにより、図6において二点鎖線で示すように電磁部のコイルを流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefになったときに全開となって最大圧Pmax(ライン圧PL)を出力するといった特性を有するリニアソレノイドバルブに比べて、出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力以下になるときのリニアソレノイドバルブ54,55の出力ゲイン(電流変化に対する出力圧の変化の度合)を低くして調圧精度を良好に確保することが可能となる。なお、常用最大電流値Arefに対応した圧力は、リニアソレノイドバルブ54,55に要求される最大圧よりも小さい範囲内で任意に定められるが、リニアソレノイドバルブ54,55の出力ゲインをできるだけ低下させるという観点からみれば、ある程度低めの値とすることが好ましい。
【0026】
そして、実施例では、リニアソレノイドバルブ54,55に要求される出力圧である要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力以下になるときに、電磁部544,554のコイル545,555を流れる電流の平均値が当該常用最大電流値Arefを超えることなく要求出力圧に応じた値となるように目標デューティ比(例えば50〜70%程度)が設定され、当該目標デューティ比と比較的高い一定の周波数(例えば300Hz程度)とをもった矩形波電圧(図7(a)参照)が電磁部544,554のコイル545,555に印加されるように駆動回路60のトランジスタ62がスイッチング制御される(以下、このような駆動回路60の制御モードを「通常モード」という)。かかる通常モードのもとで、変速用ECU21は、所定のデータと予め定められたマップとを用いてリニアソレノイドバルブ54,55に対する要求出力圧を設定した後、要求出力圧とコイル545,555に印加すべき電流の値との関係を規定するマップを用いて要求出力圧に対応した要求電流値を求める。そして、要求電流値と電流センサ63により検出された電流値との偏差がなくなるようにするフィードバック制御の関係式に従って目標デューティ比を設定する。すなわち、通常モードのもとでは、要求電流値と電流センサ63により検出された電流値との偏差がなくなるようにする電流フィードバックが実行される。
【0027】
また、リニアソレノイドバルブ54,55に対する要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力を超えるときには、電磁部544,554のコイル545,555を流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefを超えてコイル545,555への給電状態が過電流状態になることによりリニアソレノイドバルブ54,55からより大きな出力圧を得ることができるように通常モードの実行時に比べて高い目標デューティ比と低い一定の周波数(例えば10Hz)とが設定され、当該目標デューティ比および周波数をもった矩形波電圧(図7(b)参照)が電磁部544,554のコイル545,555に印加されるように駆動回路60のトランジスタ62がスイッチング制御される(以下、このような駆動回路60の制御モードを「過電流モード」という)。かかる過電流モードのもとで、変速用ECU21は、所定のデータと予め定められたマップとを用いてリニアソレノイドバルブ54,55に対する要求出力圧を設定した後、要求出力圧とコイル545,555に印加すべき電流の値との関係を規定するマップを用いて要求出力圧に対応した要求電流値を求め、電流フィードバックを実行することなく要求電流値に対応した目標デューティ比を設定する。なお、実施例の自動変速機25では、クラッチC1およびブレーキB1以外のクラッチC2,C3およびブレーキB2に対応した他のリニアソレノイドバルブについても、リニアソレノイドバルブ54,55と同様の特性を有するように各種諸元や駆動回路60の制御モードが定められる。なお、通常モードおよび過電流モードの双方において、デューティ比のみならず周波数が変更されてもよいことはいうまでもない。
【0028】
次に、実施例の動力伝達装置20に含まれる自動変速機25の変速段を変更する際の動作について説明する。
【0029】
図8は、自動変速機25の変速段をアップシフト側に変更するときに変速用ECU21により実行される変速制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。ここでは、前進1速から前進2速へのアップシフト変速に伴ってブレーキB1を係合させる(オンする)場合を例にとって変速制御ルーチンを説明する。なお、変速段をアップシフト側へと変更するか否かの判定は、アクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度Accや車速センサ99からの車速Vなどに基づいて変速用ECU21により実行される。
【0030】
変速制御ルーチンの開始に際して、変速用ECU21の図示しないCPUは、まず上述の電流フィードバックの実行を禁止すべく、所定の電流フィードバックフラグをオフした上で(ステップS100)、比較的高いデューティ比でリニアソレノイドバルブ55を駆動することにより当該リニアソレノイドバルブ55付近から係合させるべきブレーキB1までの油路に作動油を急速充填するファーストフィルを実行する(ステップS110)。このように、ファーストフィルに際して電流フィードバックを実行することなくリニアソレノイドバルブ55を駆動することによりブレーキB1までの油路に作動油を速やかに充填することが可能となる。そして、例えば所定時間が経過することによりステップS120にてファーストフィルが完了したと判断された時点で電流フィードバックフラグの実行を許容すべく電流フィードバックフラグをオンする(ステップS130)。
【0031】
ステップS130の処理の後、リニアソレノイドバルブ55の出力圧が所定勾配をもって入力軸26の回転変化を生じさせない程度の比較的低い待機圧まで低下すると共にリニアソレノイドバルブ55の出力圧が当該待機圧に所定時間だけ保持されるように駆動回路60(トランジスタ62)を制御する待機圧制御を実行する(ステップS140)。次いで、トルクフェーズ制御(ステップS150)、イナーシャフェーズ制御(ステップS160)および終期制御(ステップS170)を順次実行する。ステップS150のトルクフェーズ制御が開始されると、まず入力軸26への入力トルクと所定の関数とを用いて入力軸26の回転変化が開始される直前(イナーシャフェーズ開始直前)の目標圧が算出され、リニアソレノイドバルブ55の出力圧が比較的ゆるやかな勾配をもって当該目標圧まで上昇するように駆動回路60が制御される。そして、リニアソレノイドバルブ55の出力圧が目標圧に達すると、入力軸26の回転変化が開始されるときの目標回転変化率に対応した勾配が算出され、算出された勾配をもってリニアソレノイドバルブ55の出力圧が上昇するように駆動回路60が制御される。
【0032】
トルクフェーズ制御が完了してステップS160のイナーシャフェーズ制御が開始されると、まず、入力軸26の回転数変化量に基づくフィードバック制御の関係式に従って勾配が算出され、算出された勾配をもってリニアソレノイドバルブ55の出力圧が上昇するように駆動回路60が制御される。そして、入力軸26の回転数が変速後の変速段に応じた回転数に所定の割合(例えば70%)を乗じた値になった段階でイナーシャフェーズ制御が完了し、終期制御(ステップS170)が開始される。ステップS170の終期制御は、イナーシャフェーズ制御における勾配よりも緩やかな勾配をもってリニアソレノイドバルブ55の出力圧が上昇するように駆動回路60を制御するものであり、ステップS180にて、例えば入力軸26の回転数と出力軸27の回転数とに基づくギヤ比が目標変速段のギヤ比に概ね一致した段階で終了する。
【0033】
ステップS180にて終期制御(ブレーキB1の係合処理)が終了したと判断された段階で、入力軸26の回転数と出力軸27の回転数とに基づくギヤ比が目標変速段のギヤ比に概ね一致し、リニアソレノイドバルブ55の出力圧がブレーキB1の係合圧に達して当該ブレーキB1が係合したとみなすことができる。すなわち、ステップS140の待機圧制御が開始されてからステップS170の終期制御が完了するまでの間、リニアソレノイドバルブ55に対する要求出力圧は常用最大電流値Arefに対応した圧力以下になる。従って、変速用ECU21は、ステップS140〜S170の処理に際して、通常モードのもと、電磁部554のコイル555を流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefを超えることなく要求出力圧に応じた値となるように例えば50〜70%の範囲内で目標デューティ比を設定すると共に、目標デューティ比と比較的高い一定の周波数(例えば300Hz程度)とをもった矩形波電圧がコイル555に印加されるように駆動回路60のトランジスタ62をスイッチング制御しながら、ステップS140〜S170の処理を実行する。また、ステップS140〜ステップS170の処理が実行される間、上述の電流フィードバックフラグがオンされており、この間、変速用ECU21は、電流センサ63からの電流値を用いた電流フィードバックを実行する。この結果、自動変速機25では、出力ゲインを比較的低く保った状態で電流フィードバックによりリニアソレノイドバルブ55の出力圧を精度よく調整しながらブレーキB1の係合処理としての待機圧制御(ステップS140)、トルクフェーズ制御(ステップS150)、イナーシャフェーズ制御(ステップS160)および終期制御(ステップS170)を実行することができるので、スムースかつショックのない変速を実現することが可能となる。
【0034】
そして、ステップS170の終期制御が終了した段階で電流フィードバックフラグが再度オフされ(ステップS190)、完了制御(ステップS200)が実行される。ステップS190の完了制御は、所定時間内にリニアソレノイドバルブ55の出力圧を急峻に最大圧(ライン圧PL)まで上昇させると共にブレーキB1に対してリニアソレノイドバルブ55から保持圧として当該最大圧が付与される状態が保たれるようにするものである。かかる完了制御が実行されるときには、リニアソレノイドバルブ54,55に対する要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力を超えることになり、また、電流フィードバックフラグがオフされている。このため、変速用ECU21は、完了制御に際して、過電流モードのもと、要求出力圧に応じた通常モードの実行時に比べて高いデューティ比(最終的に例えば90%)と低い周波数(例えば10Hz)とをもった矩形波電圧(図7(b)参照)が電磁部554のコイル555に印加されるように駆動回路60のトランジスタ62をスイッチング制御する。これにより、リニアソレノイドバルブ55からより大きな出力圧(保持圧)をブレーキB1に対して付与してブレーキB1の係合状態を確実に保持することが可能となる。そして、リニアソレノイドバルブ55からブレーキB1に対してライン圧PLが供給されようになって、その状態が保持されると、電流フィードバックフラグが再度オンされ(ステップS210)、本ルーチンが終了することになる。
【0035】
なお、前進2速から前進3速へのアップシフト変速や前進3速から前進4速へのアップシフト変速、前進4速から前進5速へのアップシフト変速、前進5速から前進6速へのアップシフト変速に際しては、上述のものと同様の変速制御と共に、必要に応じてそれまで係合されていたクラッチまたはブレーキの係合を解除する制御が実行される。
【0036】
以上説明したように、実施例の動力伝達装置20に含まれる自動変速機25では、リニアソレノイドバルブ55等に対する要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力以下になるときには、電磁部554等のコイル555等を流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefを超えることなく要求出力圧に応じた値になるようにデューティ比および周波数が設定され、設定されたデューティ比および周波数をもった矩形波電圧がコイル555等に印加されるようにトランジスタ62がスイッチング制御される。これにより、当該常用最大電流値Arefに対応した圧力をブレーキB1の係合圧を若干超える程度と低めに抑えておくことでリニアソレノイドバルブ55等の出力ゲイン(電流変化に対する出力圧の変化の度合)を低くすることができるので、特に要求出力圧が比較的低くなるときにリニアソレノイドバルブ55等の調圧精度を良好に確保することが可能となる。
【0037】
また、要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力を超えるときには、電磁部554等のコイル555等を流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefを超えると共に要求出力圧に応じた値になるように当該要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力以下であるときに比べて高いデューティ比と低い周波数とが設定され、設定されたデューティ比および周波数をもった矩形波電圧がコイル555等に印加されるようにトランジスタ62がスイッチング制御される。このように、要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力を超えるときにコイル555等を流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefを超えてコイル555等への給電状態が過電流状態になることを許容すれば、リニアソレノイドバルブ55等のスプール552等の変位をより大きくしてリニアソレノイドバルブ55等からより大きな出力圧を得ることができる。従って、自動変速機25では、リニアソレノイドバルブ55等の最大出力圧の低下を抑制しつつ、当該リニアソレノイドバルブ55等の調圧精度を良好に確保することが可能となる。
【0038】
更に、上記実施例のように、要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力を超えるときに電磁部554等のコイル555等を流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefを超えてコイル555等への給電状態が過電流状態になることを許容すれば、より広い電流のレンジ内で比較的小さい圧力変動を制御することができるのでリニアソレノイドバルブ55等の出力ゲインを低くすることが可能となり、それによりリニアソレノイドバルブ55等の調圧精度を良好に確保することができる。なお、要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力を超える時間が長くなる場合には、電磁部554等の発熱に対する耐久性を充分に確保しておくことが好ましい。
【0039】
また、上記実施例のように、要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力以下になるときに、要求出力圧に応じた電流値と電流センサ63により検出された電流値との偏差がなくなるようにデューティ比および周波数を設定すれば、要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力以下となるときのリニアソレノイドバルブ55等の調圧精度をより向上させることが可能となる。
【0040】
そして、上記実施例では、常用最大電流値Arefに対応した圧力がブレーキB1等が係合したときの係合圧以上かつ当該リニアソレノイドバルブ55の最大圧未満の値となる。これにより、自動変速機25の変速に伴ってブレーキB1等を係合させるときに、通常モードのもとでブレーキB1等の係合処理(係合開始から係合完了までの間の処理)がスムースに行われるように電流フィードバックを伴ってリニアソレノイドバルブ55等を精度よく制御すると共に、ブレーキB1の係合処理が終了したと判断された後、すなわちブレーキB1等の係合完了後には、過電流モードのもとで電流フィードバックを伴うことなくリニアソレノイドバルブ55等からブレーキB1等の係合を保持するために必要な保持圧を良好に出力させることが可能となる。更に、リニアソレノイドバルブ55からブレーキB1までの油路に作動油を急速充填するファーストフィルに際して、過電流モードのもとで電流フィードバックを伴うことなくリニアソレノイドバルブ55を駆動することによりブレーキB1までの油路に作動油を速やかに充填することが可能となる。
【0041】
なお、常用最大電流値Aref自体がある程度大きく確保される場合には、要求出力圧が所定圧以下になるときに電磁部554等を流れる電流の平均値が常用最大電流値Aref未満の所定値を超えることなく要求出力圧に応じた値になるようにデューティ比および周波数を設定すると共に、要求出力圧が所定圧を超えるときに電磁部554等を流れる電流の平均値が当該所定値を超えると共に要求出力圧に応じた値になるように要求出力圧が所定圧以下であるときに比べて高いデューティ比と低い周波数とを設定してもよい。また、実施例の動力伝達装置20に含まれる自動変速機25は、前進6段の変速段を提供可能なものであるが、自動変速機25の変速段数は、2〜5段であってもよく、7段以上であってもよい。
【0042】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。すなわち、上記実施例では、入力ポートPnと出力ポートPoutとドレンポートPdとを有する中空のスリーブ541,551と、スリーブ541,551内に配置されて軸方向に摺動可能なスプール542,552と、スプール542,552を軸方向に付勢するスプリング543,553と、スプリング543,553の付勢力に抗するようにスプール542,552に対して推力を付与可能な電磁部544,554とを有する常閉型のリニアソレノイドバルブ54,55が「電磁弁」に相当し、リニアソレノイドバルブ55等のコイル555等に接続されたトランジスタ62が「スイッチング素子」に相当し、要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力以下になるときには、電磁部554等のコイル555等を流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefを超えることなく要求出力圧に応じた値になるようにデューティ比および周波数を設定すると共に設定したデューティ比および周波数をもった矩形波電圧がコイル555等に印加されるようにトランジスタ62をスイッチング制御し、要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力を超えるときには、コイル555等を流れる電流の平均値が常用最大電流値Arefを超えてコイル555等への給電状態が過電流状態になると共に要求出力圧に応じた値になるように当該要求出力圧が常用最大電流値Arefに対応した圧力以下であるときに比べて高いデューティ比と低い周波数とを設定し、設定したデューティ比および周波数をもった矩形波電圧がコイル555等に印加されるようにトランジスタ62をスイッチング制御する変速用ECU21が「制御手段」に相当する。また、駆動回路60に含まれる電流センサ63が「電流センサ」に相当し、エンジン12に接続される入力軸26から出力軸27までの動力伝達経路をクラッチC1やブレーキB1等の係合状態を切り替えることにより変更しながらエンジン12からの動力を出力軸27に伝達する動力伝達装置20が「動力伝達装置」に相当し、クラッチC1やブレーキB1等が「摩擦係合要素」に相当する。ただし、これら実施例および変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0043】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、電磁弁装置や動力伝達装置の製造産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 自動車、12 エンジン、14 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、16 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、20 動力伝達装置、21 変速用電子制御ユニット(変速用ECU)、23 トルクコンバータ、23a ポンプインペラ、23b タービンランナ、24 オイルポンプ、25 自動変速機、26 入力軸、27 出力軸、28 ギヤ機構、29 差動機構、30 シングルピニオン式遊星歯車機構、31,36a,36b サンギヤ、32,37 リングギヤ,33 ピニオンギヤ、34,39 キャリア、35 ラビニヨ式遊星歯車機構、38a ショートピニオンギヤ、38b ロングピニオンギヤ、40 ストレーナ、45 オイルパン、50 油圧制御ユニット、51 リニアソレノイドバルブ、52 レギュレータバルブ、53 マニュアルバルブ、54,55 リニアソレノイドバルブ、60 駆動回路、61 直流電源、62 トランジスタ、63 電流センサ、91 アクセルペダル、92 アクセルペダルポジションセンサ、93 ブレーキペダル、94 マスタシリンダ圧センサ、95 シフトレバー、96 シフトレンジセンサ、99 車速センサ、541,551 スリーブ、542,552 スプール、543,553 スプリング、544,554 電磁部、B1,B2 ブレーキ、C1,C2,C3 クラッチ、F1 ワンウェイクラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁部を有する電磁弁と、該電磁弁の前記電磁部に接続されたスイッチング素子と、該スイッチング素子をスイッチング制御する制御手段とを含む電磁弁装置であって、
前記制御手段は、前記電磁弁に要求される出力圧である要求出力圧が所定圧以下になるときには、前記電磁部を流れる電流の平均値が所定電流値を超えることなく前記要求出力圧に応じた値になるようにデューティ比および周波数を設定すると共に該デューティ比および該周波数をもった矩形波電圧が前記電磁部に印加されるように前記スイッチング素子をスイッチング制御し、前記要求出力圧が前記所定圧を超えるときには、前記電磁部を流れる電流の平均値が前記所定電流値を超えると共に前記要求出力圧に応じた値になるように該要求出力圧が前記所定圧以下であるときに比べて高いデューティ比と低い周波数とを設定すると共に、該デューティ比および該周波数をもった矩形波電圧が前記電磁部に印加されるように前記スイッチング素子をスイッチング制御する電磁弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁弁装置において、
前記所定電流値は、前記電磁弁の前記電磁部に許容される常用最大電流値であり、
前記制御手段は、前記要求出力圧が前記所定圧を超えるときには、前記電磁部への給電状態が過電流状態になるように前記要求出力圧が前記所定圧以下であるときに比べて高いデューティ比と低い周波数とを設定する電磁弁装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電磁弁装置において、
前記電磁部を流れる電流の値を取得する電流センサを更に備え、
前記制御手段は、前記要求出力圧が前記所定圧以下になるときには、前記要求出力圧に応じた電流値と前記電流センサにより検出された電流値との偏差がなくなるように前記デューティ比および前記周波数を設定し、前記要求出力圧が前記所定圧を超えるときには、前記電流センサにより検出された電流値を用いることなく前記デューティ比および前記周波数を設定する電磁弁装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の電磁弁装置を備え、前記電磁弁から作動流体の供給を受ける少なくとも一つの摩擦係合要素の係合状態を切り替えることにより動力発生源に接続される入力軸から出力軸までの動力伝達経路を変更しながら前記動力発生源からの動力を前記出力軸に伝達する動力伝達装置であって、
前記所定圧は、前記摩擦係合要素が係合したときの係合圧以上かつ前記電磁弁の最大圧未満の値である動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1から3の何れか一項の電磁弁装置を備え、前記電磁弁から作動流体の供給を受ける少なくとも一つの摩擦係合要素の係合状態を切り替えることにより動力発生源に接続される入力軸から出力軸までの動力伝達経路を変更しながら前記動力発生源からの動力を前記出力軸に伝達する動力伝達装置であって、
前記制御手段は、前記要求出力圧が前記所定圧以下になる前記摩擦係合要素の係合処理に際して該要求出力圧に応じた電流値と前記電流センサにより検出された電流値との偏差がなくなるように前記デューティ比および前記周波数を設定し、前記摩擦係合要素の係合処理が終了したと判断された後に、それ以後前記要求出力圧が前記所定圧を超えるとみなして前記電流センサにより検出された電流値を用いることなく前記デューティ比および前記周波数を設定する動力伝達装置。
【請求項6】
請求項5に動力伝達装置において、
前記制御手段は、前記摩擦係合要素の係合処理の前に前記電磁弁から前記摩擦係合要素までの流路に作動流体を充填する際に、前記電流センサにより検出された電流値を用いることなく前記デューティ比および前記周波数を設定する動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−230123(P2010−230123A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80142(P2009−80142)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】