説明

電磁弁

【課題】内部パイロットタイプの電磁弁と外部パイロットタイプの電磁弁とに切り換えることができるようにする。
【解決手段】主弁軸22の両端には大径の第1ピストン23と小径の第2ピストン24とが設けられ、第1ピストン23には第1パイロット電磁弁からのパイロット流体が第1パイロット圧出力路を介して供給され、第2ピストン24には第2パイロット圧出力路61を介してパイロット流体が供給されるようになっている。外部パイロット連通孔66を閉塞すると内部パイロットタイプとなり、内部パイロット連通孔64を閉塞すると外部パイロットタイプとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパイロット電磁弁の作動によって主弁軸を軸方向に移動させて流路の切り換えを行うようにした間接作動形の電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流路の切り換えを行うための間接作動形の電磁弁は、単一の電磁弁として使用されるだけでなく、複数の電磁弁を組み合わせてマニホールド化したマニホールド電磁弁としても使用することができる。
【0003】
マニホールド電磁弁としては、共通の給気流路と排気流路とが形成されたマニホールドブロックに複数の電磁弁を搭載して、それぞれの電磁弁の給気孔と排気孔とをそれぞれマニホールドブロックの給気流路と排気流路とに連通させるようにしたブロックタイプと、電磁弁の主弁ブロックに給気孔に連通する給気連通孔と排気孔に連通する排気連通孔とが形成され、複数の電磁弁を積層することによって各々の主弁ブロックの給気連通孔と排気連通孔とにより共通の給気流路と排気流路とが形成されるようにしたスタッキングタイプとがある。
【0004】
間接作動形の電磁弁にあっては、単一の電磁弁として使用される場合でも、マニホールド電磁弁として複数個使用される場合でも、電磁弁の主弁軸の切換位置を自己保持タイプと自己復帰タイプのいずれにも使用者が任意に切り換えることができるようにしたものが、たとえば、特開平7-198054号公報に示されるように開発されている。
【0005】
自己保持タイプは2つのパイロット電磁弁を作動させるようにしており、ダブルソレノイドタイプとも言われ、主弁軸の両端に設けられた空気圧室に対してパイロット流体を給排制御するようにし、一方のパイロット電磁弁を作動させると主弁軸は一方の位置に切り換わり、作動を停止してもその位置を保持し、他方のパイロット電磁弁を作動させると主弁軸は他方の位置に切り換わり、作動を停止してもその位置を保持する。
【0006】
これに対して、自己復帰タイプは一方の空気圧室に常時パイロット流体を供給させた状態とし、1つのパイロット電磁弁を作動させるようにしており、シングルソレノイドタイプとも言われ、パイロット電磁弁を作動させて他方の空気圧室にパイロット流体を供給すると主弁軸は切り換わり、作動を停止させると一方の空気圧室に供給されているパイロット流体により主弁軸は元の位置に復帰することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような両方のタイプに切り換えることができるようにした従来の電磁弁にあっては、2つのパイロット電磁弁をパイロット組立体の中にモールドするようにしており、1つのパイロット電磁弁のみが使用されるときには、他のパイロット電磁弁を取り外すことができず、さらに、電磁弁の内部の流路が複雑となってしまう。
【0008】
両方の空気圧室に供給されるパイロット流体としては、主弁軸の切換動作によって給排制御が行われる流体を使用するようにした内部パイロットタイプと、その流体とは別系統の流体を使用するようにした外部パイロットタイプとがあり、同一の電磁弁を使用者が使用形態に応じて内部パイロットタイプと外部パイロットタイプとのいずれか一方に切り換えることがある。
【0009】
シングルソレノイドタイプの電磁弁にあっては、たとえば、特開平11-125362号公報に示されるように、外部パイロットタイプと内部パイロットタイプとに切り換えるようにした電磁弁がある。
【0010】
しかしながら、使用時にダブルソレノイドタイプとシングルソレノイドタイプとに切り換えることができるようにしたタイプの電磁弁にあっては、外部パイロットタイプと内部パイロットタイプとに切り換える機構を組み込むと、主弁ブロックの内部流路が複雑となるという問題点がある。
【0011】
本発明の目的は、流路の構造を簡単にして内部パイロットタイプと外部パイロットタイプとに切り換えることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電磁弁は、一端に大径の第1ピストンが設けられ他端に小径の第2ピストンが設けられた主弁軸を軸方向に摺動自在に収容する弁孔を主弁組立体に形成するとともに、該弁孔に開口して形成された給気孔からの流体が流出する複数の出力ポートを前記主弁組立体に形成し、パイロット電磁弁を着脱自在に収容する収容空間が設けられたパイロット組立体を前記主弁組立体に取り付け、前記主弁組立体に形成されたパイロット流路に連通する第1パイロット圧入力路の入力ポートと、前記パイロット流路に連通する第2パイロット圧入力路の入力ポートとを前記収容空間に開口させて前記パイロット組立体に形成し、前記第1ピストンを収容する第1の空気圧室に連通する第1パイロット圧出力路の出力ポートと、前記第2ピストンを収容する第2空気圧室に連通する第2パイロット圧出力路の出力ポートとを前記収容空間に開口させて前記パイロット組立体に形成し、前記パイロット流路と前記給気孔とを連通させる内部パイロット連通孔と、前記パイロット流路と外部パイロット流体供給孔とを連通させる外部パイロット連通孔とを前記主弁組立体に形成し、前記内部パイロット連通孔と前記外部パイロット連通孔との一方を閉塞する流路閉塞部材を前記主弁組立体に着脱自在に設けたことを特徴とする。本発明の電磁弁は、前記流路閉塞部材は前記弁孔に対して直角の方向に装着され、前記主弁組立体の表面側から前記流路閉塞部材を着脱自在に装着するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にあっては、外部パイロット連通孔を流路閉塞部材によって閉じることにより、内部パイロットタイプの電磁弁とすることができ、内部パイロット連通孔を流路閉塞部材によって閉じることにより、外部パイロットタイプの電磁弁とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施の形態である電磁弁を示す斜視図であり、図2は図1におけるA−A線に沿う断面図であり、図3(A)は図2の平面図である。
【0016】
本発明の電磁弁は単一で使用することもでき、複数の電磁弁を積層して形成された電磁弁積層体の両側にエンドブロックを配置したスタッキングタイプのマニホールド電磁弁としても使用することができる。
【0017】
図1は本発明の電磁弁10を複数個積層して電磁弁積層体11を形成し、これの両側にエンドブロック12,13を締結するようにしたスタッキングタイプのマニホールド電磁弁を示す。
【0018】
図2に示すように、それぞれの電磁弁10は主弁ブロック14を有し、これの一端には密閉プレート15を介してポートプレート16が取り付けられ、主弁ブロック14の他端にはアダプター17が取り付けられ、これらの部材により主弁組立体18が構成されている。主弁組立体18にはパイロット組立体19が取り付けられ、パイロット組立体19にはコネクター20が取り付けられるようになっており、図1に示すように、それぞれの電磁弁10の全体形状はほぼ直方体となっている。
【0019】
それぞれの電磁弁10はソレノイドにより作動する直動弁からなるパイロット弁と、このパイロット弁からの圧縮空気により作動する主弁軸を有する間接作動形切換弁とから構成されており、図4および図5に示すように、主弁ブロック14に形成された弁孔21には主弁軸22が軸方向に往復動自在に装着され、この主弁軸22の一端には大径の第1ピストン23が設けられている。そして、他端には小径の第2ピストン24が設けられており、この第2ピストン24は主弁軸22の端部によって形成され、主弁軸22と一体に形成されている。ただし、主弁軸22の他端部にこれと相違した外径の第2ピストン24を設けるようにしても良い。
【0020】
主弁ブロック14にはその長手方向中央部に位置させて給気孔25が弁孔21に連通して形成されており、給気孔25の両側に位置させて弁孔21に連通させて2つの出力孔26,27が形成され、一方の出力孔26に連通する連通路26aはポートプレート16に形成された出力ポートAに連通し、他方の出力孔27に連通する連通路27aは出力ポートBに連通している。それぞれの出力ポートA,Bには空気圧シリンダなどの空気圧機器に接続された配管がねじ結合されることになる。
【0021】
主弁ブロック14には弁孔21に連通する2つの排気孔28,29が形成されており、図4に示すように、主弁軸22が図において右側に移動して第1の位置となっているときには、給気孔25から弁孔21内に流入した空気は出力ポートBに流出し、出力ポートAから戻った空気は排気孔29に流出することになる。一方、図5に示すように、主弁軸22が左側に移動して第2の位置となっているときには、給気孔25から流入した空気は出力ポートAに流出し、出力ポートBから戻った空気は排気孔28に流出することになる。
【0022】
給気孔25は給気連通孔25aに連通し、それぞれの排気孔28,29は排気連通孔28a,29aに連通している。それぞれの連通孔25a,28a,29aは主弁ブロック14の幅方向に貫通しており、複数の電磁弁10を積層して電磁弁積層体11を組み立てると、それぞれの給気連通孔25aにより電磁弁積層体11には共通の給気流路が形成され、同様に、排気連通孔28a、29aにより共通の排気流路が2つ形成されることになる。図1に示されるように、エンドブロック12には一方の排気流路に連通する排気ポート31が設けられ、エンドブロック13には他方の排気流路に連通する排気ポート32が設けられている。両方のエンドブロック12,13にはそれぞれ給気流路に連通する給気ポート33が設けられ、使用状態に応じて、2つの給気ポート33の一方を使用することができるようになっている。それぞれのポート31〜33には配管がねじ結合されることになる。
【0023】
電磁弁積層体11の両側にエンドブロック12,13を締結するために、2本の締結ロッド34,35がエンドブロック12,13に取り付けられるようになっており、それぞれの主弁ブロック14には収容溝36と係合溝37が形成されている。収容溝36は高さ方向に延びて主弁ブロック14の底面に開口し、係合溝37は収容溝36に対して直角方向に延びるガイド部とこの先端から主弁ブロック14の底面に開口する連通部を有している。締結ロッド34はエンドブロック12,13に形成された円形の取付孔に嵌合されているのに対して、締結ロッド35はエンドブロック12,13に形成された長孔に嵌合しており、それぞれの締結ロッド34,35のねじを緩めた状態で締結ロッド35をずらすことにより、それぞれの電磁弁10をエンドブロック12,13から取り外すことができる。
【0024】
主弁軸22の一端に設けられた第1ピストン23はアダプター17に形成された大径の第1空気圧室41に配置され、他端に設けられた第2ピストン24は主弁ブロック14に形成された小径の第2空気圧室42に配置されている。
【0025】
それぞれの電磁弁10は同一の主弁ブロック14を用いることによって、自己保持タイプの電磁弁と自己復帰タイプの電磁弁とのいずれのタイプにも設定することができる。
【0026】
自己保持タイプにあっては、パイロット流体を第1空気圧室41に供給することにより主弁軸22は図4に示す位置になり、第2空気圧室42にパイロット流体を供給することにより主弁軸22は図5に示す位置になり、それぞれの空気圧室41,42内の空気を排出しても、主弁軸22はパイロット流体を供給したときの位置を保持する。この自己保持タイプとする場合には、2つのパイロット電磁弁が使用されることになり、ダブルソレノイドバルブタイプとなる。
【0027】
一方、自己復帰タイプにあっては、第2空気圧室42には常にパイロット流体が供給された状態となっており、第1空気圧室41にパイロット流体を供給すると、主弁軸22は図4に示す位置になり、第1空気圧室41内のパイロット流体を排出すると、第1空気圧室41内のパイロット流体によって主弁軸22は図5に示す位置に復帰する。この自己復帰タイプとする場合には、1つのパイロット電磁弁が使用されることになり、シングルソレノイドタイプとなる。
【0028】
パイロット組立体19は、図2および図3に示すように、その表面に開閉式のカバー43が設けられたケース部44を有し、このケース部44内には第1と第2の2つのパイロット電磁弁45,46が装着される収容空間44aが形成されている。図3(B)は開閉式のカバー43を開いた状態を示し、カバー43を開くと、収容空間44a内に収容された2つのパイロット電磁弁45,46の表面が外部から目視される。
【0029】
それぞれのパイロット電磁弁45、46は、ソレノイドに対する通電によって開閉作動する弁体を有する3ポート型の直動弁となっており、パイロット流体を案内するパイロット圧入力路に接続された入力ポートと、パイロット圧出力路に接続され弁体の作動時に前記入力ポートと連通状態となる出力ポートと、排気路に接続され入力ポートと出力ポートとの連通を解いたときに不要なパイロット流体を排出する排気ポートとを有している。
【0030】
図6はパイロット組立体19の収容空間44a内に装着された第1パイロット電磁弁45を示す図であり、図7はパイロット電磁弁の表面を示す拡大平面図であり、図8は図7の断面図である。
【0031】
パイロット組立体19には、図6に示すように、パイロット圧入力路47の入力ポート47aが収容空間44aに開口して形成され、パイロット圧出力路48の出力ポート48aが収容空間44aに開口して形成され、排気路49の排気ポート49aが収容空間に開口して形成されている。パイロット組立体19に組み込まれる第1パイロット電磁弁45は、図8に示すように、パイロット組立体19に形成された第1パイロット圧入力路47の入力ポート47aに接続される入力路47bと、第1パイロット圧出力路48の出力ポート48aに接続される出力路48bと、排気ポート49aに接続される排気路49bとを有している。
【0032】
パイロット組立体19に装着される第2パイロット電磁弁46も第1パイロット電磁弁45と同様の構造であり、第2パイロット電磁弁46に対応させて、図示しない第2パイロット圧入力路の入力ポートと第2パイロット圧出力路の出力ポートと第2排気路の排気ポートとがそれぞれ収容空間44aに開口して形成されており、第2パイロット電磁弁46は、それぞれのポートに対応する入力路と出力路と排気路とを有している。
【0033】
主弁ブロック14には、図4および図5に示すように、給気孔25を介して給気ポート33に連通するパイロット流路51が形成されており、このパイロット流路51は、図6に矢印で示すように、パイロット組立体19に形成されてパイロット圧入力路47にパイロット圧案内路52を介して連通し、パイロット流体が第1パイロット電磁弁45に供給されるようになっている。パイロット流路51は図示しない第2パイロット圧入力路を介して第2パイロット電磁弁46にも供給されるようになっている。
【0034】
図6に示すように、第1パイロット電磁弁45を介してパイロット流体が供給される第1パイロット圧出力路48は連通孔53により第1空気圧室41に連通しており、このパイロット圧出力路48には、出力ポート48内における第1空気圧室41に向かう空気の流れを許容し、逆方向の流れを阻止するとともに、逆方向に流れる空気を急速排気路54に案内するために、急速排気弁55が組み込まれている。この急速排気路54は第1ピストン23が図5の位置から図4に位置に移動するときに第1ピストン23の内面側の空気を外部に排出するための排気連通口56に連通しており、排気を流して逆方向の流れを阻止するための逆止弁57が急速排気路54に設けられるとともに、急速排気路54は排気孔58に連通している。
【0035】
図4および図5に示すように、主弁ブロック14には第2パイロット電磁弁46から流出するパイロット流体を案内するパイロット圧出力路に連通した第2パイロット圧出力路61が形成され、この第2パイロット圧出力路61は第2空気圧室42に連通されるようになっている。さらに、第2空気圧室42にはバイパス流路62によりパイロット流路51と連通されるようになっている。
【0036】
第2パイロット圧出力路61にも、第1パイロット圧出力路48と同様に、急速排気弁が組み込まれるとともに、逆止弁が設けられている。
【0037】
バイパス流路62および第2パイロット圧出力路61は、それぞれねじ部材により密閉プレート15が着脱自在となった主弁ブロック14の端面に開口しており、この開口面から流路閉塞部材63がバイパス流路62と第2パイロット圧出力路61に対して着脱自在となっている。
【0038】
図4はバイパス流路62内に流路閉塞部材63を装着してバイパス流路62を閉塞し、第2パイロット圧出力路61を開放状態とした場合を示し、この場合には電磁弁10はパイロット組立体19内に装着された2つのパイロット電磁弁45,46により主弁軸22を作動させる自己保持タイプつまりダブルソレノイドタイプの電磁弁となる。
【0039】
つまり、パイロット流路51からはそれぞれのパイロット電磁弁45,46の入力路47bに接続されるパイロット圧入力路47にパイロット流体が供給されることになり、第1パイロット電磁弁45を作動させて出力路48bにパイロット流体を流すと、そのパイロット流体は第1空気圧室41に供給され、主弁軸22は図4に示す第1の位置となり、給気ポート33からの圧縮空気つまり作動流体は出力ポートBに流出することになる。そして、第1パイロット電磁弁45の作動を停止しても、主弁軸22は作動時の状態を保持することになる。
【0040】
一方、第2パイロット電磁弁46を作動させてその出力ポートにパイロット流体を流すと、そのパイロット流体は第2パイロット圧出力路61を介して第2空気圧室42に供給され、主弁軸22は図5に示す第2の位置となり、給気ポート33からの圧縮空気は出力ポートAから流出することになる。そして、第2パイロット電磁弁46の作動を停止しても、主弁軸22は作動時の状態を保持することになる。
【0041】
図5は第2パイロット圧出力路61内に流路閉塞部材63を装着し、バイパス流路62を開放状態とした場合を示し、この場合には電磁弁10は第1パイロット電磁弁45により主弁軸22を作動させる自己復帰タイプつまりシングルソレノイドタイプの電磁弁となる。
【0042】
つまり、流路閉塞部材63によって第2パイロット圧出力路61が閉塞されて第2空気圧室42にはバイパス流路62を介して常にパイロット流体が供給されることになり、パイロット流体によって主弁軸22には図5に示すように、第2の位置に向かう推力が常時加えられることになる。第1パイロット電磁弁45を作動させて出力ポート48aにパイロット流体を流すと、そのパイロット流体は第1空気圧室41に供給されることになり、第1ピストン23の方が第2ピストン24よりも大径となっているので、主弁軸22は図4および図5において右方向の第1の位置に向けて移動する。これにより、給気ポート33からの圧縮空気は出力ポートBから流出することになる。
【0043】
一方、第1パイロット電磁弁45に対する通電を解くと、第1空気圧室41内の空気は外部に排出され、第2空気圧室42内にバイパス流路62から供給されるパイロット流体によって主弁軸22は第2の位置に復帰する。これにより、給気ポート33からの圧縮空気は出力ポートAから流出することになる。
【0044】
それぞれの電磁弁10にあってはパイロット流体の利用形態として内部パイロット式と外部パイロット式とに切り換えることができる。
【0045】
内部パイロット式は、主弁軸22の作動位置の切換によって2つの出力ポートA,Bに対して切り換えて流出させるための給気ポート33からの流体をパイロット流体としても利用する場合であり、外部パイロット式は、給気ポート33からの流体とは別系統の流体をパイロット流体として利用する場合である。
【0046】
主弁ブロック14には、図4および図5に示すように、給気孔25とパイロット流路51とを連通させる内部パイロット連通孔64が形成され、外部パイロット流体供給孔65とパイロット流路51とを連通させる外部パイロット連通孔66が形成されている。外部パイロット流体供給孔65は、複数の電磁弁10を積層してマニホールド電磁弁とした場合には、図1に示すように、エンドブロック12に形成されたパイロット流体供給ポート67に連通することになる。
【0047】
内部パイロット連通孔64と外部パイロット連通孔66は、それぞれ主弁ブロック14の表面に開口し、表面側からそれぞれの連通孔64,66には流路閉塞部材68が着脱自在となっている。装着された流路閉塞部材68は、主弁ブロック14の表面にねじ止めされるブロックプレート69により固定されるようになっている。
【0048】
つまり、図4に示すように、流路閉塞部材68により外部パイロット連通孔66を閉塞し、内部パイロット連通孔64を開放状態とすると、パイロット流路51には給気ポート33からの流体が内部パイロット連通孔64を介して供給されることになり、内部パイロット式の電磁弁となる。
【0049】
一方、図5に示すように、流路閉塞部材68により内部パイロット連通孔64を閉塞し、外部パイロット連通孔66を開放状態とすると、パイロット流路51にはパイロット流体供給ポート67からの流体が供給されることになり、外部パイロット式の電磁弁となる。
【0050】
このように、電磁弁10は2つの流路閉塞部材63,68の装着位置を変更することによって、図9(A)〜図9(D)に示すように、2つのパイロット電磁弁45,46を作動させて主弁軸22の切換移動を行うダブルソレノイドタイプと、1つのパイロット電磁弁45を作動させて主弁軸22の切換移動を行うシングルソレノイドタイプと、出力ポートA,Bに出力される流体をパイロット流体として利用した内部パイロットタイプと、別系統の流体をパイロット流体として利用した外部パイロットタイプとの4つの形態に切り換えることができる。図9にあっては、主弁軸22により形成される切換弁と、パイロット電磁弁45,46により形成される切換弁とがそれぞれ空気圧回路図により示されており、二点鎖線で示される部分は使用されていない部分を示す。
【0051】
主弁ブロック14の表面に開口してそれぞれの出力ポートA,Bに対応して出力流路26b,27bが形成されており、これらの流路はブロックプレート69により閉塞されるようになっている。したがって、出力ポートA,Bが設けられたブロックプレートを主弁ブロック14の表面に装着し、ポートプレート16を取り外すことによって、出力ポートA,Bを主弁ブロック14の表面に配置することもできる。
【0052】
図7は図3(B)および図6に示された第1パイロット電磁弁45を示す拡大平面図であり、図8は図7の断面図であり、第2パイロット電磁弁46も同様の構造となっている。
【0053】
第1パイロット電磁弁45の弁ハウジング70内にはコイル71が巻き付けられたボビン72が組み込まれ、このボビン72には固定鉄心73が固定され、可動鉄心74が軸方向に摺動自在となっている。可動鉄心74の先端には、入力路47bと出力路48bとの間の連通孔75を開閉する弁体76が設けられ、この弁体76に対して連通孔75を閉じる方向のばね力がコイルばね77により加えられている。出力路48bと排気路49bとの間の連通孔78が連通孔75と同心の位置に設けられ、この連通孔78を開閉するフラッパ弁79が図示しない連動ロッドによって弁体76と同期して作動するようになっている。したがって、コイル71に通電すると、弁体76が連通孔75を開いてフラッパ弁79が連通孔78を閉じることにより、入力路47bから流入したパイロット流体が出力路48bに供給される。一方、通電を解くと、弁体76が連通孔75を閉じてフラッパ弁79が連通孔78を開いて出力路48b内の流体は排気路49bから外部に排出される。
【0054】
弁ハウジング70内に組み込まれた制御基板81には、図7および図8に示すように、コイル71に通電がなされたときに、その状態を点灯表示するためのLED素子82が設けられ、コイル71およびLED素子82に対して電力を供給するためのソケット部83が第1パイロット電磁弁45の底面から吐出している。ソケット部83は、図6に示すように、パイロット組立体19の底面に着脱自在に取り付けられるコネクター20の中に組み込まれた通電プラグ84に嵌合され、通電プラグ84には通電ケーブル85が接続されている。
【0055】
弁体76およびフラッパ弁79をそれぞれ手動によって作動させるために、図8に示すように、弁ハウジング70には可動鉄心74の先端部に接触する手動操作ボタン86が可動鉄心74の移動方向に対して直角の方向に移動自在に設けられており、手動操作ボタン86にはコイルばね87によって可動鉄心74から離れる方向のばね力が加えられている。手動操作ボタン86の後端面は弁ハウジング70の表面に露出されており、手動操作ボタン86を工具などを用いて押し込むことにより手動操作ボタン86を介して可動鉄心74を手動で操作することができ、電磁弁10のメンテナンス時などにおいて電磁弁10を手動で作動させることができる。
【0056】
手動操作ボタン86は固定ピン88によって抜け止めされるとともに、手動操作ボタン86を押し込んだ状態で90度程度回転させると、固定ピン88に形成された係合溝に固定ピン88が係合して、手動操作ボタン86を押し込んだ状態に保持することができる。
【0057】
このように、第2パイロット電磁弁46の手動操作ボタン86を押し込んだ状態とし、第1パイロット電磁弁45のみを作動させるようにすると、図4に示すように、流路閉塞部材63によりバイパス流路62を閉塞した状態としても、常時、第2空気圧室42にパイロット流体を供給し続けることができるので、バイパス流路62を使用することなく、図9(C)および(D)に示すように、シングルソレノイドタイプの電磁弁に設定することができる。
【0058】
パイロット組立体19に、常に2つのパイロット電磁弁45、46を収容するようにし、図9(C),(D)に示すように、シングルソレノイドタイプとして使用される場合には、第2パイロット電磁弁46を使用しないようにしても良く、前述のように、第2パイロット電磁弁46の手動操作ボタン86を押し込んだ状態として、第2パイロット電磁弁46の内部流路をバイパス流路62として利用するようにしても良い。さらには、パイロット組立体19の中に第1パイロット電磁弁45のみを組み込むようにし、第2パイロット電磁弁46を取り外すようにしても良い。その場合には、取り外される第2パイロット電磁弁46の入力ポート47aに対応したパイロット圧入力路47を閉塞する。
【0059】
また、パイロット組立体19としては、外形寸法を同一として、1つのパイロット電磁弁45のみが装着されるタイプと、2つのパイロット電磁弁45,46が装着されるタイプとの2種類を用意し、同種の主弁ブロック14にいずれか一方のタイプのパイロット組立体19を取り付けることにより、ダブルソレノイドタイプとして使用する電磁弁10と、シングルソレノイドタイプとして使用する電磁弁10とに切り換えることができる。
【0060】
パイロット電磁弁45,46は、図7に示すように、ねじ部材89によってパイロット組立体19のケース部44内に固定されるようになっている。図3(B)および図6に示すように、ケース部44にはカバー43が開閉自在に設けられており、パイロット電磁弁45,46をパイロット組立体19に装着したり、取り外したり、交換するときには、カバー43を開くことによって、容易にその作業を行うことができる。
【0061】
図10はカバー43を示す図であり、カバー43にはケース部44に嵌合されるヒンジ部91が設けられている。カバー43にはケース部44の表面に形成された係合爪92と係合する係合凹部93が形成され、これらの係合によってカバー43は閉じた状態に保持される。
【0062】
カバー43が閉じられた状態をねじ部材などを用いて強固に保持するようにするとともに、カバー43がパイロット電磁弁45,46を押し付けるようにすることにより、パイロット電磁弁45,46はケース部44にねじ部材89を用いて締結することなく、ケース部44内に固定させることができる。
【0063】
カバー43には、図10に示すように、パイロット電磁弁45,46の手動操作ボタン86に対応させて開口窓94が形成されており、この開口窓94には蓋部材95が開閉自在に設けられている。蓋部材95はヒンジ部96を中心に揺動自在となっており、図10(A)は蓋部材95が閉じた状態を示し、図10(B)は開いた状態を示す。蓋部材95の先端部の両側には係合突起97が設けられ、蓋部材95を閉じると、係合突起97はカバー43に設けられた係合凹部98に係合して閉じた状態を保持することになる。
【0064】
このように、パイロット電磁弁45,46の手動操作ボタン86はカバー43に設けられた蓋部材95により覆われており、作業者が不用意に手動操作ボタン86に触れてこれを誤動作することが防止される。操作する場合には、蓋部材95を開くことによって容易に手動操作ボタン86を操作することができる。なお、カバー43にはLED素子82の位置に対応させて透明ないし半透明となった透光部99が設けられ、LED素子82が点灯すると、その光が透光部99を介して外部から目視することができる。
【0065】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0066】
たとえば、図1は本発明の電磁弁10を複数個積層したスタッキングタイプの電磁弁を示すが、電磁弁10を単体として使用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施の形態である電磁弁を積層したマニホールド電磁弁を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿う断面図である。
【図3】(A)は図2の平面図であり、(B)はカバー開いた状態における同図(A)の一部を示す平面図である。
【図4】ダブルソレノイドタイプであって内部パイロットタイプに切り換えた状態における主弁組立体を示す断面図である。
【図5】シングルソレノイドタイプであって外部パイロットタイプに切り換えた状態における主弁組立体を示す断面図である。
【図6】パイロット組立体を示す断面図である。
【図7】パイロット電磁弁を示す平面図である。
【図8】図7の断面図である。
【図9】主弁軸により形成される切換弁と、パイロット電磁弁とを示す空気圧回路図である。
【図10】(A)はパイロット組立体に設けられ、蓋部材が閉じた状態におけるカバーを示す斜視図であり、(B)は蓋部材が開いた状態におけるカバーを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
10 電磁弁
18 主弁組立体
19 パイロット組立体
21 弁孔
22 主弁軸
23 第1ピストン
24 第2ピストン
25 給気孔
26,27 出力孔
28、29 排気孔
31,32 排気ポート
33 給気ポート
41 第1空気圧室
42 第2空気圧室
43 カバー
44 ケース部
44a 収容空間
45 第1パイロット電磁弁
46 第2パイロット電磁弁
47 第1パイロット圧入力路
47a,47b 入力ポート
48 第1パイロット圧出力路
48a,48b 出力ポート
49 排気路
49a,49b 排気ポート
51 パイロット流路
55 急速排気弁
61 第2パイロット圧出力路
62 バイパス流路
63 流路閉塞部材
64 内部パイロット連通孔
66 外部パイロット連通孔
68 流路閉塞部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に大径の第1ピストンが設けられ他端に小径の第2ピストンが設けられた主弁軸を軸方向に摺動自在に収容する弁孔を主弁組立体に形成するとともに、該弁孔に開口して形成された給気孔からの流体が流出する複数の出力ポートを前記主弁組立体に形成し、
パイロット電磁弁を着脱自在に収容する収容空間が設けられたパイロット組立体を前記主弁組立体に取り付け、
前記主弁組立体に形成されたパイロット流路に連通する第1パイロット圧入力路の入力ポートと、前記パイロット流路に連通する第2パイロット圧入力路の入力ポートとを前記収容空間に開口させて前記パイロット組立体に形成し、
前記第1ピストンを収容する第1の空気圧室に連通する第1パイロット圧出力路の出力ポートと、前記第2ピストンを収容する第2空気圧室に連通する第2パイロット圧出力路の出力ポートとを前記収容空間に開口させて前記パイロット組立体に形成し、
前記パイロット流路と前記給気孔とを連通させる内部パイロット連通孔と、前記パイロット流路と外部パイロット流体供給孔とを連通させる外部パイロット連通孔とを前記主弁組立体に形成し、
前記内部パイロット連通孔と前記外部パイロット連通孔との一方を閉塞する流路閉塞部材を前記主弁組立体に着脱自在に設けたことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1記載の電磁弁であって、前記流路閉塞部材は前記弁孔に対して直角の方向に装着され、前記主弁組立体の表面側から前記流路閉塞部材を着脱自在に装着するようにしたことを特徴とする電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−209009(P2008−209009A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149542(P2008−149542)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【分割の表示】特願平11−270931の分割
【原出願日】平成11年9月24日(1999.9.24)
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【Fターム(参考)】