説明

電磁弁

【課題】弁体のシール性を長期間に渡って維持し得るようにして電磁弁の耐久性を向上させる。
【解決手段】弁ハウジングには供給ポート30と出力ポート34とを連通させる連通孔32が形成された弁座33が設けられている。弁体40は弁座33のシート面に対向する当接面58を有し、弁体40には連通孔32を閉じる方向のばね力がばね部材47により加えられており、コイル43への通電によりプランジャ46が駆動されると、弁体40により連通孔32は開かれる。弁座33には弁体40が連通孔32を閉じたときに弁体40を弾性変形させて連通孔32をシールするシール部が設けられ、このときの弾性変形量を規制するストッパ面が弁座に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポペットタイプの弁体をソレノイドにより駆動して流路を切り換える電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイドの可動鉄心つまりプランジャによりポペットタイプの弁体を直接駆動して流路を開閉する直動形の電磁弁は、弁座面に対して弁体が直角方向に駆動される。このタイプの電磁弁には、2ポートタイプと3ポートタイプがある。2ポートタイプの電磁弁は、特許文献1に記載されるように、外部から流体が供給される一次側の供給ポートと流体を外部に吐出する二次側の出力ポートとを連通させる連通孔が形成された弁座に対して弁体が押し付けられるようになっている。3ポートタイプは、特許文献2,3に記載されるように、弁体を介して相互に対向して設けられた2つの弁座の一方には、供給ポートと出力ポートとを連通させる供給側の連通孔が形成され、他方の弁座には出力ポートと外部から出力ポートに戻された流体を外部に排出するための排出ポートとを連通させる排出側の連通路が形成されている。弁体が一方の弁座に押し付けられて供給用の連通孔を閉じた状態のもとでは、弁体は他方の弁座から離れて連通路が開放される。
【0003】
このような直動形の電磁弁をパイロット弁とした電磁弁は間接作動形となる。間接作動形の電磁弁は、ピストンが設けられた主弁軸と、ピストンに対する流体の給排を切り換えるパイロット弁とを有し、パイロット弁を介してピストンに供給される流体により主弁軸を駆動し、主弁軸に設けられたスプールタイプの複数の弁体により流路が切り換えられる。さらに、間接作動形の電磁弁としては、特許文献4に記載されるように、ソレノイドの可動鉄心により駆動されるスピンドルつまり主弁軸にポペット型の弁体が設けられたタイプがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−106576号公報
【特許文献2】特開2003−278929号公報
【特許文献3】特開2003−278930号公報
【特許文献4】特開平9−203477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直動形の電磁弁およびこれをパイロット弁とした間接作動形の電磁弁は、いずれもソレノイドのプランジャにより弁座に押し付けられるポペットタイプの弁体を有しており、弁体はゴム等の弾性体により形成されている。弁体にはプランジャに設けられたばね部材により弁座に向かう方向のばね力が加えられており、弁座に形成された連通孔は弁体が弁座に押し付けられると閉じられる。弁座に弁体を押し付けて連通孔を閉じた状態のもとではばね力が弾性体の弁体に加えられて、一次側のポートから二次側のポートへの流体の漏れがシールされる。
【0006】
弁座のシート面全体を平坦面とし、弁体をシート面つまり弁座面の全体に面接触させるようにすると、弁体と弁座面との間におけるシール性を確保するには弁体に加えられるばね力を強くする必要がある。シール性を確保するには、ばね力により弁体を弾性変形させて連通孔を閉じた状態に保持する必要がある。しかし、ばね力を強くすると、弁体をばね力に抗して開放駆動するために、ソレノイドに対して供給する電力を高める必要がある。供給電力を過度に高めることなく弁体によるシール性を確保するために、従来では、弁座を弁体の外径よりも小径の環状としたり、弁体に接触する環状のビード部を弁座に設けたりし、弁体が弁座に押し付けられたときには環状の部分が弁体に食い込むようにしている。このように弁座を弁体に食い込むようにすると、弁体が弾性変形することになり、シール性を高めることができる。
【0007】
しかしながら、弁座の環状部分に弁体を押し付けるようにすると、電磁弁の製造後に実際の装置に電磁弁が組み込まれて作動されるまでの間、および装置が休止状態となっているときなどのように電磁弁が作動していないときには、ばね力により弁体が弁座に押し付けられて、弁体が徐々に変形することによって、弁体が弁座に沈み込む現象が発生することになる。この沈み込み現象は、実際に電磁弁が作動してON,OFFを繰り返して弁体に衝撃力が加わり、さらにソレノイドの熱が加わると、促進されることになる。このように、弁体の沈み込みが発生すると、弁体の当接面には弁座の痕跡が残って歪んだ状態となってその部分が環状の凹部となってしまう。弁体の当接面に深い凹部が残った状態になると、弁体が弁座に当接した際にシール不良を発生させることになり、電磁弁は所期の性能を発揮できず、電磁弁を新品と交換しなければならなくなる。
【0008】
弁体が弁座に沈み込むと、プランジャのストロークは電磁弁製造時または設計値よりも長くなるので、弁体を駆動するためにソレノイドに供給する最低作動電圧が設計値よりも高くなる。例えば、定格24Vの電磁弁の場合には、製造時の最低作動電圧が18Vであっても、弁体の沈み込みが発生すると、最低作動電圧が24V程度まで高くなり、電磁弁の作動特性が変化することになる。
【0009】
本発明の目的は、弁体のシール性を長期間に渡って維持し得るようにして電磁弁の耐久性を向上させることにある。
【0010】
本発明の目的は、弁体の変形を防止して弁体を駆動するプランジャのストロークを長期間に渡って一定に維持し得るようにして電磁弁の最低作動電圧の上昇を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電磁弁は、コイルへの通電により駆動されるプランジャを有し、流体流路を開閉する電磁弁であって、流体圧源からの流体が供給される供給ポートおよび外部に流体を吐出する出力ポートが設けられた弁ハウジングと、前記供給ポートを前記出力ポートに連通させる連通孔が形成されるとともに当該連通孔が開口するシート面を有する弁座と、前記シート面に対向する当接面を有し、ばね部材により前記連通孔を閉じる方向に移動する一方、前記コイルへの通電により前記プランジャが駆動されると前記連通孔を開く方向に移動する弾性部材からなる弁体とを有し、前記弁体が前記連通孔を閉じたときに前記弁体を弾性変形させて前記連通孔をシールするシール部を前記連通孔の開口部を囲むように前記シート面に設け、前記弁体が前記連通孔を閉じた状態のもとで前記当接面に当接して前記シール部による前記弁体の弾性変形量を規制するストッパ面を前記シート面に形成することを特徴とする。本発明の電磁弁は、前記シール部を前記シート面の中心部に設けることを特徴とする。
【0012】
本発明の電磁弁は、外部から前記出力ポートに戻された流体を排出する排出ポートを前記弁ハウジングに設け、前記弁座に対向させて前記排出ポートを前記出力ポートに連通させる連通路が形成された対向弁座を前記弁座に対向させて前記弁ハウジングに設け、前記弁体が前記連通孔を閉じたときに前記連通路を開き、前記弁体が前記連通路を閉じたときに前記連通孔を開くことを特徴とする。本発明の電磁弁は、端部にピストンが設けられるとともに複数のスプール弁体が設けられた主弁軸を軸方向に往復動自在に収容する弁収容孔が形成されるとともに、前記流体圧源から流体が供給される供給流路と、流体圧機器に流体を吐出する出力流路と、前記流体圧機器から戻された流体を外部に排出する排出流路とがそれぞれ前記弁収容孔に連通して形成される主弁ブロックを有し、前記コイルへの通電により前記流体圧源からの流体を前記連通孔を介して前記ピストンに供給し、前記供給流路を前記出力流路に連通させる位置と、前記出力流路を前記排出流路に連通させる位置とに前記主弁軸を切換移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弁体がばね力により弁座に押し付けられた状態のもとでは、弁座に設けられたストッパ面に弁体の当接面が当接し、弁座のシール部による弁体の弾性変形量が規制されるので、弁体が弁座に沈み込むことが防止される。これにより、連通孔を閉じる方向のばね力によって弁体内に残留歪みが発生したり、痕跡が発生したりすることが防止され、弁体のシール性を長期間に渡って維持することができ、電磁弁の耐久性が向上する。
【0014】
弁体の沈み込みの発生が防止されるので、弁体を駆動するプランジャのストロークは、電磁弁が長期間に渡って使用されても、増加することなく一定のストロークを維持することになる。これにより、コイルへ供給される最低作動電圧が上昇することなく、長期間に渡って安定した作動特性が維持され、電磁弁の耐久性が向上する。
【0015】
弁座のストッパ面に弁体を押し付けてシール部による弁体の弾性変形量を規制するようにしたので、シール部を小さくすることができる。シール部を小さくすると、シール部は面積が小さくなるので、弁体を弁座に押し付けるためのばね力を小さくしてもシール部の単位面積当たりのばねによる圧力つまり面圧を十分に確保することができる。これにより、シール性を十分に確保することができる。しかも、ばね力が小さいので、ばね力に抗してプランジャを駆動するためのソレノイド電流を小さくすることができ、ソレノイドの消費電流を少なくしてソレノイドの低消費電力化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態である電磁弁を示す断面図である。
【図2】図1の一部を示す拡大断面図である。
【図3】(A)は弁ホルダーに組み込まれた弁体を示す斜視図であり、(B)は(A)における3B−3B線断面図であり、(C)は(B)における3C−3C線断面図である。
【図4】弁座を示す拡大断面図である。
【図5】図1における弁体を拡大して示す断面図であり、(A)はソレノイドがONからOFFに切り換えられて弁体の当接面がシール面に当接した状態を示し、(B)はシール面に当接した後に当接面がストッパ面に押し付けられた状態を示す。
【図6】比較例としての電磁弁における図5と同一の部分を示す断面図であり、(A)はソレノイドがONからOFFに切り換えられて弁体の当接面が弁座に当接した状態を示し、(B)は弁体が弁座に沈み込んだ状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示す電磁弁10は間接作動形であって、ほぼ直方体形状となった主弁ブロック11を有している。この主弁ブロック11には長手方向に弁収容孔12が主弁ブロック11を貫通して形成され、弁収容孔12には主弁軸13が軸方向に往復動自在に収容されている。主弁ブロック11の一端には切換ブロック14を介して第1のパイロットブロック15が固定され、他端には第2と第3の2つのパイロットブロック16,17が固定されている。これらの主弁ブロック11と切換ブロック14と3つのパイロットブロック15〜17とにより弁ハウジング18が形成されており、弁ハウジング18にはソレノイドブロック19が取り付けられている。
【0018】
図1に示すように、主弁ブロック11には供給流路21と、この供給流路21の両側に位置する2つの出力流路22a,22bが形成され、それぞれの出力流路22a,22bに隣り合って排出流路23a,23bが主弁ブロック11に形成されており、それぞれは弁収容孔12に連通している。この電磁弁10はそれぞれ主弁ブロック11に対するポートとしての供給流路21と、出力流路22a,22bと、排出流路23a,23bが合計5つ設けられているので、5ポート弁となっている。
【0019】
主弁軸13には複数のスプール弁体24が設けられており、主弁軸13が図1に示されるように右端部側の第1の位置に移動すると、供給流路21と出力流路22aとが連通状態になり、出力流路22bと排出流路23bとが連通状態になる。これに対し、主弁軸13が左端部側の第2の位置に移動すると、供給流路21と出力流路22bとが連通状態になり、出力流路22aと排出流路23aとが連通状態になる。
【0020】
図1に示す電磁弁10は、図示しないマニホールドブロックに取り付けられるようになっており、マニホールドブロックには複数の電磁弁が集合された状態となって取り付けられることになる。ただし、図1に示す構造の電磁弁10を単体として使用することもできる。マニホールドブロックには複数の電磁弁10の主弁ブロック11における供給流路21に連通するとともに流体圧供給源に接続される共通の供給流路が形成されており、供給流路21にはマニホールドブロックを介して外部の流体圧供給源としての空気圧源から圧縮空気が供給されるようになっている。出力流路22a,22bはマニホールドブロックに形成された出力流路を介して空気圧シリンダ等の流体圧機器に接続されるようになっているが、主弁ブロック11の図1における上部に出力流路を開口させると、流体圧機器を主弁ブロック11に直接接続することができる。マニホールドブロックには複数の電磁弁10の主弁ブロック11における排出流路23a,23bに連通する共通の排出流路が形成されており、流体圧機器から戻された圧縮空気は排出流路23a,23bを介して外部に排出されることになる。
【0021】
例えば、複動型の空気圧シリンダの前進側圧力室に一方の出力流路22aを接続し、後退側圧力室に他方の出力流路22bを接続すると、供給流路21から出力流路22aを介して前進側圧力室に供給される圧縮空気によりピストンロッドが前進移動し、後退側圧力室内の圧縮空気は出力流路22bに戻されて排出流路23bから外部に排出されることになる。
【0022】
主弁軸13の一端にはピストン25が配置され、他端にはピストン25よりも大径のピストン26が配置されている。小径のピストン25はパイロットブロック15に形成された空気圧室27内に往復動自在に収容され、大径のピストン26はパイロットブロック16に形成された空気圧室28内に往復動自在に収容されている。空気圧室27に圧縮空気が供給されると主弁軸13には図1に示される第1の位置に移動する方向に推力が加えられ、空気圧室28に圧縮空気が供給されると主弁軸13には第2の位置に移動する方向に推力が加えられることになる。
【0023】
パイロットブロック16には供給流路21に連通する供給ポート30が形成されている。この供給ポート30は、2つのパイロットブロック16,17を突き合わせることにより形成される第1と第2の2つの弁室31a,31bに連通孔32を介して連通するようになっている。図2に示されるように、それぞれの連通孔32は弁室31a,31b内に突出してパイロットブロック16に設けられた弁座33に形成されている。第1の弁室31aは、パイロットブロック16に形成された出力ポート34aを介して大径の空気圧室28に連通しており、第2の弁室31bは主弁ブロック11に形成された連通流路35と出力ポート34bを介して小径の空気圧室27に連通するようになっている。パイロットブロック17にはパイロットブロック16に形成された排出流路36に連通する排出ポート37が形成されている。排出ポート37はそれぞれの弁室31a,31bに連通路38を介して連通しており、それぞれの連通路38は弁座33に対向するとともに弁室31a,31b内に突出してパイロットブロック17に設けられた対向弁座39に形成されている。
【0024】
このように、パイロットブロック16,17は、パイロット弁としての電磁弁の弁ハウジング20を構成しており、弁ハウジング20には、空気圧源からの圧縮空気が供給される供給ポート30と外部に圧縮空気を吐出する出力ポート34a,34bが設けられるとともに、出力ポート34a,34bから弁室31a,31bに戻された圧縮空気を排出するための排出ポート37が設けられている。
【0025】
それぞれの弁室31a,31b内には、ゴム等の弾性部材からなるポペット型の弁体40が配置されており、弁体40は弁ホルダー41に装着されている。図1に示されるように、ソレノイドブロック19には2つの弁体40に対応させて第1と第2の2つのソレノイド42a,42bが組み込まれている。それぞれのソレノイド42a,42bは、コイル43が巻き付けられたボビン44を有し、ボビン44内には固定鉄心45が取り付けられるとともに軸方向に往復動自在に可動鉄心つまりプランジャ46が装着されている。図2に示されるように、プランジャ46の先端面は弁ホルダー41の端面が当接しており、弁体40に向かう方向つまり前進方向のばね力をプランジャ46に加えるための前進用のばね部材47がソレノイド42a,42bに設けられている。
【0026】
コイル43が非通電となったソレノイドOFFのときには、前進用のばね部材47のばね力によりプランジャ46が前進移動して弁体40は対向弁座39から離れて弁座33に押し付けられた状態となる。これにより、供給ポート30と出力ポート34の連通は遮断され、出力ポート34と排出ポート37とが連通状態となる。したがって、両方のソレノイド42a,42bがOFFのときにはそれぞれの空気圧室27,28は排出ポート37に連通した状態となる。一方、コイルが通電されてソレノイドがONのときには、ばね部材47のばね力に抗してプランジャ46が後退移動して弁体40は弁座33から離れて対向弁座39に押し付けられた状態となる。これにより、供給ポート30と出力ポート34が連通状態となり、出力ポート34と排出ポート37の連通は遮断された状態となる。例えば、第1のソレノイド42aのコイル43が通電されると、主弁ブロック11の供給流路21が弁室31aを介して空気圧室27と連通状態になり、空気圧源からの圧縮空気が空気圧室27に供給されて主弁軸13は図1に示されるように第1の位置となる。これに対し、第2のソレノイド42bのコイル43が通電されると、供給流路21が弁室31bを介して空気圧室28と連通状態となって、空気圧室28に供給される圧縮空気により主弁軸13は、図1において左側に駆動されて第2の位置となる。
【0027】
図2においては、第1のソレノイド42aがOFFされて、ばね力によりプランジャ46が弁体40に向けて前進移動した状態で示されており、第2のソレノイド42bがONされてプランジャ46がばね力に抗して後退移動した状態で示されている。
【0028】
弁室31a,31b内には、図2に示されるように、弁体40に対して弁座33から離す方向にばね力を加えるために後退用のばね部材48が組み込まれている。これにより、ソレノイド42a,42bがONされたときに、確実に弁体40が弁座33から離れて対向弁座39に向けて移動することになる。後退用のばね部材48のばね力は、前進用のばね部材47のばね力よりも小さい値に設定されている。
【0029】
図1に示されるように、主弁ブロック11には空気圧室27に連通するバイパス流路51が形成されており、切換ブロック14には切換操作ボタン52が設けられている。この切換操作ボタン52は、バイパス流路51と空気圧室27とを連通させて連通流路35と空気圧室27との連通を遮断する位置と、図1に示されるようにバイパス流路51と空気圧室27との連通を遮断して連通流路35と空気圧室27とを連通させる位置とに手動操作により切り換えられるようになっている。
【0030】
図1に示すように2つのソレノイド42a,42bを有する間接作動型の電磁弁においては、2つのソレノイド42a,42bの一方をONすると、主弁軸13は第1と第2の位置のいずれか一方に切り換えられ、ソレノイド42a,42bをOFFすると、主弁軸13は切り換えられた位置を保持することになる。このタイプはダブルソレノイドタイプとなる。このタイプとして電磁弁10が使用されるときには、図1に示されるように、切換操作ボタン52によりバイパス流路51と空気圧室27との連通が遮断され、連通流路35と空気圧室27とが連通された状態に設定される。
【0031】
これに対し、切換操作ボタン52の操作によりバイパス流路51と空気圧室27とを連通させて連通流路35と空気圧室27との連通を遮断するように設定されると、小径の空気圧室27には外部の空気圧源から供給流路21を介して常に圧縮空気が供給された状態となる。これにより、第2のソレノイド42bのみにより主弁軸13の切り換えが行われる。つまり、第2のソレノイド42bがONされると、両方の空気圧室27,28に圧縮空気が供給されることになり、2つのピストン25,26の面積差により主弁軸13は第2の位置に切り換えられることになる。第2のソレノイド42bがOFFされると、大径の空気圧室28に供給された圧縮空気は排出され、小径の空気圧室27内の圧縮空気により主弁軸13は第1の位置に切り換えられてその位置に自動的に復帰することになる。このように、第1のソレノイド42aを具備しないタイプ、または第1のソレノイド42aを具備していてもそれを使用しないタイプは、1つのソレノイド42bのみにより主弁軸13の切換動作が行われるので、電磁弁10はシングルソレノイドタイプとなる。
【0032】
第3のパイロットブロック17には、手動操作によりソレノイド42aのプランジャ46を後退移動させて弁体40を作動させる手動操作ボタン53が設けられている。
【0033】
図3に示されるように、弁ホルダー41は弁体40が組み込まれる円筒部55を有しており、円筒部55内に設けられた小径部56に突き当てられて弁体40は円筒部55内に組み込まれるようになっている。弁ホルダー41は円筒部55から突出する2つの脚部57を有しており、この脚部57はパイロットブロック17に形成された図示しないガイド孔内を貫通し、後端面57aがプランジャ46の先端面に当接するようになっている。弁体40の先端側部は後端側部よりも小径となっており、小径の先端側部と円筒部55の間の隙間に後退用のばね部材48の端部が図2に示されるように挿入される。弁体40の先端面は弁座33に対向する当接面58となっており、後端面のうち小径部56の内側部分は対向弁座39に対向する当接面59となっている。
【0034】
図4に示されるように、弁座33には供給ポート30と出力ポート34とを弁室31aを介して連通させる連通孔32が形成されており、この連通孔32は弁座33のシート面61の径方向中央部で弁室31aに開口されている。一方、対向弁座39には出力ポート34と排出ポート37とを弁室31aを介して連通させる連通路38が形成されており、この連通路38は対向弁座39のシート面62の径方向中央部で開口されている。第1と第2の両方のシート面61,62は相互に対向している。他の弁室31b内に突出して設けられた弁座33と対向弁座39についても同様の構造となっている。それぞれの弁室31a,31b内に装着される弁体40は、このシート面61に当接面58が対向するように弁室31a,31b内に装着される。このように、供給ポート30側の第1の弁座としての弁座33と、排出ポート37側の第2の弁座としての対向弁座39は、弁体40を介して相互に対向するように設けられており、相互に対向するシート面61,62の間に配置された弁体40が流路の切換動作を行うことになる。なお、図4には弁体40が図示省略されている。
【0035】
弁座33のシート面61の中央部には、連通孔32の開口部を囲むように環状となったシール部63が設けられ、シール部63の先端は平坦または断面が略円弧状となったシール面61aとなっている。シール部63の径方向外側は径方向に真っ直ぐに延びるストッパ面61bとなっており、シール部63はストッパ面61bよりも弁体40に向けて突出している。シール部63は、図示するようにシート面61の中央部に設けられているが、この位置よりも径方向外方に寄せてシール部63を設けるようにしても良い。
【0036】
図4に示されるように弁座33のシート面61の外径をDとし、シール部63のストッパ面61bからの突出寸法をLとすると、外径Dは1.6mmであり、突出寸法Lは0.05mm〜0.1mm程度に設定されており、その半径方向の幅Wは0.05mm〜0.1mm程度に設定されている。このように、シール部63の面積はストッパ面61bに比して非常に小さいので、弁体40を弁座33に押し付けるためのばね力が小さいにもかかわらず、シール部63の単位面積当たりのばね力による圧力つまり面圧を十分に確保できる。すなわち、シール性を確保することができる。また、ばね力が小さいので、ばね力に抗してプランジャ46を駆動するためのソレノイド電流を小さくすることができる。
【0037】
一方、対向弁座39は弁体40の当接面59に当接するシール面62aが径方向中央部に環状に設けられており、シール面62aから径方向外方に向かうに従って弁体40から離れる方向に傾斜したテーパ面62bが対向弁座39に設けられている。
【0038】
ソレノイド42a,42bがONとなったときに弁体40の当接面59が当接する対向弁座39にはストッパ面は設けられていない。ソレノイドがONのときには、プランジャ46は固定鉄心45に突き当たるので、それ以上後退移動することはない。すなわち、弁体40が対向弁座39に向かって沈み込む寸法は、プランジャ46の寸法や弁ホルダー41の寸法等で予め設計値として規定されている。設計値以上に弁体40が対向弁座39に向かって沈みこむことはない。したがって、対向弁座39には突出したシール部が設けられていない。また、弁体40を対向弁座39に押し付ける力としては、後退用のばね部材48の小さいばね力もあるが、供給ポートの圧縮空気が弁体40を対向弁座39に押し付ける力が主である。つまり、ばね力などに依存しないセルフシール構造となっている。
【0039】
図2に示されるように、プランジャ46により駆動される弁体40は、供給ポート30と出力ポート34とを連通させる連通孔32を閉じたときには、出力ポート34と排出ポート37とを連通させる連通路38を開き、連通孔32を開いたときには連通路38を閉じる3ポートの直動形の電磁弁を構成している。
【0040】
図5(A)はソレノイド42a,42bがONからOFFに切り換えられて弁体40の当接面58がシール面61aに当接した状態を示しており、図5(B)はシール面61aに当接した後に当接面58がストッパ面61bに押し付けられた状態を示す。
【0041】
当接面58がストッパ面61bに当接した状態のもとでは、シール部63が弁体40の一部を弾性変形させて当接面58内に食い込んだ状態となる。このときの、弁体40の弾性変形量は、ストッパ面61bに当接面58が当接するので、シール面61aと当接面58との当接によりシール性を確保するに十分な値に設定される。これにより、弁体40が連通孔32を閉じた状態のもとでは、永久歪みが弁体40内に残留するような過度な変形が弁体40に発生することは防止される。
【0042】
当接面58がシート面61に接触した状態のもとではストッパ面61bにより弁体40の姿勢が保持されるので、環状のシール部63は全体的に均一に弁体40に当接し、片当たりの発生が防止される。しかも、ストッパ面61bはシール面61aに比して格段に広い面積に設定されているので、当接面58がストッパ面61bに押し付けられても、ストッパ面61bが当接面58内に食い込むことはなく、シール部63により弁体40の当接面58に発生する変形は弾性体の比例限度以内となる。これにより、弁体40にばね力が加えられても、弁体40はその内部に残留歪みが発生することなく、長期間に渡って所望のシール特性を維持することになる。
【0043】
したがって、電磁弁10の不使用期間が長くなったり、電磁弁10が長期間に渡って使用されたとしても、弁体40が弁座33に沈み込んで弁座33の痕跡が弁体40の当接面58に発生することがなく、長期間に渡ってシール性を確保することができる。これにより、電磁弁10の寿命を長くすることができ、電磁弁10の耐久性を格段と向上させることができる。
【0044】
しかも、弁体40の弁座33に対する沈み込み現象の発生が防止されるので、弁体40がシート面61に当接した状態から弁体40をシート面61から離反させる際のプランジャ46のストロークは常に一定に保持され、電磁弁10が長期間使用されてもプランジャ46のストロークが増加することがない。これにより、ソレノイド42a,42bの最低作動電圧が上昇することがなく、長期間に渡って電磁弁は安定した作動特性を維持し、電磁弁10の耐久性が格段と向上することになる。
【0045】
当接面58はシール面61aとともにシート面61全体に当接面58が接触することになるので、シール部63の片当たりの発生を防止することができるとともに、弁体40を弁座33のシート面61に押し付けるためのばね部材47つまりプランジャスプリングのばね力を小さくすることができる。ばね力を小さくすることができると、それに打ち勝ってプランジャ46を吸引駆動するソレノイド42a,42bの電流値を小さくすることができるので、消費電流の小さいソレノイドの低消費電力化を実現することができる。
【0046】
図6は比較例として示す電磁弁における図5と同一の部分を示す断面図であり、図6(A)はソレノイドがONからOFFに切り換えられて弁体40の当接面58が弁座33に当接した状態を示し、図6(B)は弁体40が弁座33に沈み込んだ状態を示す。
【0047】
従来の電磁弁は弁座33にストッパ面が設けられていないので、弁体40が弁座33のシール面に接触して連通孔32を閉じた状態のもとでは、ばね部材による押し付け力が環状のシール面に接触する部分全体に加わることになる。このため、図6(B)に示すように、弁体40が弁座33に沈み込む現象の発生が不可避であった。
【0048】
この沈み込み現象を防止するためにシール面の面積を大きくすると、シール面の単位面積当たりのばねによる圧力つまり面圧を確保するためには、ばね部材47のばね力をシール面の面積に応じて大きくする必要がある。そうすると、ばね部材47のばね力に抗してプランジャ46を吸引するソレノイドの力も大きくする必要があり、すなわちソレノイド電流を大きく設定することになるから消費電流が大きくなり発熱量も大きくなり、その熱によってゴム製品である弁体の寿命が短くなるから、電磁弁の耐久性が損なわれる。これらに対して、本発明の電磁弁10においては、沈み込み現象を生じない上にシール面の面圧も確保している。
【0049】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図1は直動弁としての弁体40をパイロット弁とした間接作動型の電磁弁を示すが、弁座33と対向弁座39が設けられた2つのパイロットブロック16,17に相当する弁ハウジングを有し、弁体40をソレノイドにより駆動するようにしたタイプの直動形の電磁弁に対しても本発明を適用することができる。また、直動形の電磁弁としては本発明が具体化される場合には、特許文献1に記載されるように、供給ポート30に相当する一次側のポートと出力ポート34に相当する二次側ポートを有し、これらのポート相互間の開閉のみを行うようにした2ポートタイプにも本発明を適用することができる。2ポートタイプの直動形としては、弁室に一次側ポートを連通させ、連通孔に二次側ポートを連通させることも可能である。図1は5ポートの間接作動形の電磁弁を示すが、3ポートの間接作動形の電磁弁にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 電磁弁
11 主弁ブロック
12 弁収容孔
13 主弁軸
14 切換ブロック
15〜17 パイロットブロック
18 弁ハウジング
20 弁ハウジング
21 供給流路
22a,22b 出力流路
23a,23b 排出流路
25,26 ピストン
27,28 空気圧室
30 供給ポート
31a,31b 弁室
32 連通孔
33 弁座
34a,34b 出力ポート
35 連通流路
36 排出流路
37 排出ポート
38 連通路
39 対向弁座
40 弁体
41 弁ホルダー
42a,42b ソレノイド
43 コイル
44 ボビン
45 固定鉄心
46 プランジャ
47 ばね部材
48 ばね部材
51 バイパス流路
58,59 当接面
61 シート面
61a シール面
61b ストッパ面
62 シート面
63 シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルへの通電により駆動されるプランジャを有し、流体流路を開閉する電磁弁であって、
流体圧源からの流体が供給される供給ポートおよび外部に流体を吐出する出力ポートが設けられた弁ハウジングと、
前記供給ポートを前記出力ポートに連通させる連通孔が形成されるとともに当該連通孔が開口するシート面を有する弁座と、
前記シート面に対向する当接面を有し、ばね部材により前記連通孔を閉じる方向に移動する一方、前記コイルへの通電により前記プランジャが駆動されると前記連通孔を開く方向に移動する弾性部材からなる弁体とを有し、
前記弁体が前記連通孔を閉じたときに前記弁体を弾性変形させて前記連通孔をシールするシール部を前記連通孔の開口部を囲むように前記シート面に設け、
前記弁体が前記連通孔を閉じた状態のもとで前記当接面に当接して前記シール部による前記弁体の弾性変形量を規制するストッパ面を前記シート面に形成することを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項1記載の電磁弁において、前記シール部を前記シート面の中心部に設けることを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
請求項1または2記載の電磁弁において、外部から前記出力ポートに戻された流体を排出する排出ポートを前記弁ハウジングに設け、前記弁座に対向させて前記排出ポートを前記出力ポートに連通させる連通路が形成された対向弁座を前記弁座に対向させて前記弁ハウジングに設け、前記弁体が前記連通孔を閉じたときに前記連通路を開き、前記弁体が前記連通路を閉じたときに前記連通孔を開くことを特徴とする電磁弁。
【請求項4】
請求項3記載の電磁弁において、端部にピストンが設けられるとともに複数のスプール弁体が設けられた主弁軸を軸方向に往復動自在に収容する弁収容孔が形成されるとともに、前記流体圧源から流体が供給される供給流路と、流体圧機器に流体を吐出する出力流路と、前記流体圧機器から戻された流体を外部に排出する排出流路とがそれぞれ前記弁収容孔に連通して形成される主弁ブロックを有し、前記コイルへの通電により前記流体圧源からの流体を前記連通孔を介して前記ピストンに供給し、前記供給流路を前記出力流路に連通させる位置と、前記出力流路を前記排出流路に連通させる位置とに前記主弁軸を切換移動することを特徴とする電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−174965(P2010−174965A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17540(P2009−17540)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【Fターム(参考)】