露光装置及びデバイス製造方法
露光装置は、第1方向に延在するカ゛イト゛部材を有し、第1駆動装置の駆動により第1方向と略直交する第2方向に移動する第1移動体と、カ゛イト゛部材に沿って第1方向に独立して移動自在に設けられ、第1移動体の移動によりカ゛イト゛部材とともに第2方向に移動する一対の第2移動体(WCS)と、物体(W)を保持するとともに、一対の第2移動体により、少なくとも第1方向、前記第2方向を含むとともに光学系の直下の第1位置を含む二次元平面内で移動自在に支持される保持部材(WFS)と、一対の第2移動体に対して第2方向に沿って隣接して配置され、第1駆動装置の少なくとも一部を共用する第2駆動装置の駆動により、一対の第2移動体に支持された保持部材とともに第2方向側の端部で近接又は接触した状態を維持して第2方向に平行な方向に移動して、保持部材上の物体と光学系との間に液体が保持される第1の状態から、光学系との間で液体を保持する第2の状態に遷移させる液体保持部材(MST)と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及びデバイス製造方法に関するものである。
本願は、2009年12月2日に出願された米国特許仮出願61/282,013号、及び2010年12月1日に出願された米国出願第12/957,769号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置で用いられる、露光対象となるウエハ又はガラスプレート等の基板は、次第に(例えばウエハの場合、10年おきに)大型化している。現在は、直径300mmの300mmウエハが主流となっているが、今や直径450mmの450mmウエハ時代の到来が間近に迫っている。450mmウエハに移行すると、1枚のウエハから採れるダイ(チップ)の数が現行の300mmウエハの2倍以上となり、コスト削減に貢献する。加えて、エネルギ、水、その他のリソースの効率的な利用により、1チップにかかるすべてのリソース使用を減少させられるものと期待されている。
【0004】
半導体素子は、次第に微細化しており、このため、露光装置には、高解像力も要請されている。解像力向上のための手段として、露光光の波長の短波長化と投影光学系の開口数の増大化(高NA化)とがある。投影光学系の実質的な開口数を最大限に大きくするため、投影光学系と液体とを介してウエハを露光する液浸露光が有効である。
【0005】
一方、ウエハのサイズが450mmにもなると、1枚のウエハから採れるダイ(チップ)の数が多くなる分、1枚のウエハの露光処理に要する時間が増加してスループットが低下する蓋然性が高い。そこで、スループットを極力向上させる必要があり、その方法として、1つのウエハステージ上のウエハに対する露光処理と、別のウエハステージ上でのウエハ交換、アライメントなどの処理とを、並行して行う、ツインステージ方式の採用が考えられる。
【0006】
すなわち、解像力の向上とスループットの向上とを同時に実現するために、ツインステージ方式を採用した局所液浸型の露光装置の採用することが考えられる。かかる露光装置の従来例としては、例えば特許文献1に開示される露光装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0088843号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示される局所液浸型の露光装置では、スループットを最大限に高くするため、投影光学系下方に形成される液浸空間を常時維持する必要があり,このためには、投影光学系の直下に、常に何らかの部材が交換的に配置される必要がある。そして、この部材の交換的配置が、装置のスループットの向上に寄与することが望ましい。
また、この交換部材のために別途駆動装置を設けた場合、装置の大型化及びコスト増を招く虞がある。
このことは、ツインステージ方式の露光装置に限られるものではなく、1基のステージを用いる露光装置においても同様に生じる。
【0009】
本発明は、スループットの向上及びコスト増の抑制に寄与できる露光装置、及びデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様にかかる露光装置は、エネルギビームにより光学系と液体とを介して物体を露光する露光装置であって、第1方向に延在するガイド部材を有し、第1駆動装置の駆動により前記第1方向と略直交する第2方向に移動する第1移動体と、前記ガイド部材に沿って前記第1方向に独立して移動自在に設けられ、前記第1移動体の移動により前記ガイド部材とともに前記第2方向に移動する一対の第2移動体と、物体を保持するとともに、前記一対の第2移動体により、少なくとも前記第1方向、前記第2方向を含むとともに前記光学系の直下の第1位置を含む二次元平面内で移動自在に支持される保持部材と、前記一対の第2移動体に対して前記第2方向に沿って隣接して配置され、前記第1駆動装置の少なくとも一部を共用する第2駆動装置の駆動により、前記一対の第2移動体に支持された前記保持部材と、前記第2方向側の端部で近接又は接触した状態を維持して前記第2方向に平行な方向に移動して、前記保持部材上の物体と前記光学系との間に液体が保持される第1の状態から、前記光学系との間で液体を保持する第2の状態に遷移させる液体保持部材と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の別の一態様にかかるデバイス製造方法は、本発明の露光装置を用いて物体を露光することと、前記露光された物体を現像することと、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様では、装置の大型化及びコスト増を抑制しつつ、局所液浸型の露光装置のスループットを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態の露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の露光装置が備えるステージ装置の概観斜視図である。
【図3】図2のステージ装置の分解斜視図である。
【図4A】図1の露光装置が備えるステージ装置を示す−Y方向から見た側面図である。
【図4B】ステージ装置を示す平面図である。
【図5】図1の露光装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】微動ステージ駆動系を構成する磁石ユニット及びコイルユニットの配置を示す平面図である。
【図7A】微動ステージを粗動ステージに対してZ軸回りに回転させる際の動作を説明するための図である。
【図7B】微動ステージを粗動ステージに対してY軸回りに回転させる際の動作を説明するための図である。
【図7C】微動ステージを粗動ステージに対してX軸回りに回転させる際の動作を説明するための図である。
【図8】微動ステージの中央部を+Z方向に撓ませる際の動作を説明するための図である。
【図9A】計測アームの先端部を示す斜視図である。
【図9B】計測アームの先端部の上面を+Z方向から見た平面図である。
【図10A】Xヘッドの概略構成を示す図である。
【図10B】Xヘッド、Yヘッドそれぞれの計測アーム内での配置を説明するための図である。
【図11A】スキャン露光時のウエハの駆動方法を説明するための図である。
【図11B】ステッピング時のウエハの駆動方法を説明するための図である。
【図12】微動ステージと計測ステージとの間で行われる液浸空間(液体Lq)の受け渡しについて説明するための図である。
【図13】微動ステージと計測ステージとの間で行われる液浸空間(液体Lq)の受け渡しについて説明するための図である。
【図14】微動ステージと計測ステージとの間で行われる液浸空間(液体Lq)の受け渡しについて説明するための図である。
【図15A】微動ステージと計測ステージとのY方向における相対位置測定を説明するための図である。
【図15B】微動ステージと計測ステージとのY方向における相対位置測定を説明するための図である。
【図16】変形例に係る露光装置を示す図である。
【図17】露光装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図18】2つのステージユニットを有するステージ装置の概観斜視図である。
【図19】液体保持部材の別形態を示す図である。
【図20】変形例に係るグレーティングの配置を示す図である。
【図21】本発明のマイクロデバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図22】図21におけるステップS13の詳細工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の露光装置及びデバイス製造方法の実施の形態を、図1ないし図22を参照して説明する。
【0015】
図1には、一実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0016】
露光装置100は、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU、局所液浸装置8、微動ステージWFS及び計測ステージMSTを有するステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。図1において、微動ステージWFS上には、ウエハWが載置されている。
【0017】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0018】
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図5参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0019】
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)13によって、レチクルステージRSTに固定された移動鏡15を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計13の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図5参照)に送られる。
【0020】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された複数の光学素子から成る投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する屈折光学系が用いられている。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTと微動ステージWFSとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0021】
局所液浸装置8は、液体供給装置5、液体回収装置6(いずれも図1では不図示、図5参照)、及びノズルユニット32等を含む。ノズルユニット32は、図1に示されるように、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子、ここではレンズ(以下、「先端レンズ」ともいう)191を保持する鏡筒40の下端部周囲を取り囲むように不図示の支持部材を介して、投影ユニットPU等を支持するメインフレームBDに吊り下げ支持されている。本実施形態では、主制御装置20が液体供給装置5(図5参照)を制御して、ノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間に液体を供給するとともに、液体回収装置6(図5参照)を制御して、ノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間から液体を回収する。このとき、主制御装置20は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5と液体回収装置6を制御する。従って、先端レンズ191とウエハWとの間には、一定量の液体Lq(図1参照)が常に入れ替わって保持される。本実施形態では、上記の液体Lqとして、ArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する純水を用いるものとする。
【0022】
ステージ装置50は、図1に示されるように、床面上に防振機構(図示省略)によってほぼ水平に支持されたベース盤12、ウエハWを保持してベース盤12上で移動するウエハステージWST、ウエハステージWSTを駆動するウエハステージ駆動系53(図5参照)、ベース盤12上で移動する計測ステージ(液体保持部材)MST、計測ステージMSTを駆動する計測ステージ駆動系54(図5参照)及び各種計測系(16、70(図5参照)等)等を備えている。
【0023】
ベース盤12は、平板状の外形を有する部材から成り、その上面は平坦度が非常に高く仕上げられ、ウエハステージWSTの移動の際のガイド面とされている。
【0024】
図2に示すように、ステージ装置50は、Yモータ(第1駆動装置)YM1の駆動により移動するY粗動ステージ(第1移動体)YCと、XモータXM1の駆動により独立して移動する一対のX粗動ステージ(第2移動体)WCSと、ウエハWを保持してX粗動ステージWCSに移動自在に支持される微動ステージ(保持部材)WFSと、Yモータ(第2駆動装置)YM2の駆動によりY方向に移動するとともに、XモータXM2の駆動によりX方向に移動する計測ステージMSTと、を備えている。これらY粗動ステージYCとX粗動ステージWCSとによりステージユニットSUが構成される。YモータYM1とXモータXM1とを含んで粗動ステージ駆動系51(図5参照)が構成される。また、YモータYM2とXモータXM2とを含んで計測ステージ駆動系54(図5参照)が構成される。
【0025】
一対のX粗動ステージWCS及び微動ステージWFSにより上述したウエハステージWSTが構成される。微動ステージWFSは、微動ステージ駆動系52(図5参照)によってX粗動ステージWCS対して6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)にそれぞれ駆動される。本実施形態では、粗動ステージ駆動系51と微動ステージ駆動系52とを含んで、ウエハステージ駆動系53が構成されている。
【0026】
X粗動ステージWCSに微動ステージWFSが支持されたとき、その微動ステージWFSと粗動ステージWCSとのX、Y、θzの3自由度方向に関する相対位置情報は、粗動ステージWCSと微動ステージWFSとの間に設けられた相対位置計測器22(図5参照)によって計測可能である。
【0027】
相対位置計測器22としては、例えば微動ステージWFSに設けられたグレーティングを計測対象とする、X粗動ステージWCSにそれぞれ設けられた少なくとも2つのヘッドを含み、該ヘッドの出力に基づいて、微動ステージWFSのX軸方向、Y軸方向及びθz方向の位置を計測するエンコーダなどを用いることができる。相対位置計測器22の計測結果は、主制御装置20(図5参照)に供給される。
【0028】
ウエハステージ位置計測系16、微動ステージ位置計測系70、およびステージ装置50の各部の構成等については、後に詳述する。
【0029】
露光装置100では、投影ユニットPUの中心から+Y側に所定距離隔てた位置にウエハアライメント系ALG(図1では不図示、図5参照)が配置されている。ウエハアライメント系ALGとしては、例えば画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられる。ウエハアライメント系ALGは、主制御装置20により、ウエハアライメント(例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA))の際に、後述する微動ステージWFS上の計測プレートに形成された第2基準マーク、又はウエハW上のアライメントマークの検出に用いられる。ウエハアライメント系ALGの撮像信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される。主制御装置20は、ウエハアライメント系ALGの検出結果(撮像結果)と、検出時の微動ステージWFS(ウエハW)の位置情報とに基づいて、対象マークのアライメント時座標系におけるX,Y座標を算出する。
【0030】
この他、本実施形態における露光装置100には、投影ユニットPUの近傍に、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系(以下、多点AF系と略述する)AF(図1では不図示、図5参照)が設けられている。多点AF系AFの検出信号は、不図示のAF信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図5参照)。主制御装置20は、多点AF系AFの検出信号に基づいて、多点AF系AFの複数の検出点それぞれにおけるウエハW表面のZ軸方向の位置情報(面位置情報)を検出し、その検出結果に基づいて走査露光中のウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行する。なお、ウエハアライメント系ALGの近傍に多点AF系を設けて、ウエハアライメント(EGA)時にウエハW表面の面位置情報(凹凸情報)を事前に取得し、露光時には、その面位置情報と、後述する微動ステージ位置計測系70の一部を構成するレーザ干渉計システム75(図5参照)の計測値とを用いて、ウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行することとしても良い。
【0031】
また、レチクルステージRSTの上方には、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに詳細に開示されるように、露光波長の光(本実施形態では照明光IL)をアライメント用照明光とする画像処理方式の一対のレチクルアライメント系RA1,RA2(図1においてはレチクルアライメント系RA2は、レチクルアライメント系RA1の紙面奥側に隠れている。)が配置されている。レチクルアライメント系RA1,RA2の検出信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図5参照)。
【0032】
図5には、露光装置100の制御系の主要な構成が示されている。制御系は、主制御装置20を中心として構成されている。主制御装置20は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、前述の局所液浸装置8、粗動ステージ駆動系51、微動ステージ駆動系52など、露光装置100の構成各部を統括制御する。
【0033】
この他、本実施形態の露光装置100では、レチクルステージRSTの上方には、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに詳細に開示されるように、CCD等の撮像素子を有し、露光波長の光(本実施形態では照明光IL)をアライメント用照明光とする画像処理方式の一対のレチクルアライメント系RA1,RA2(図1においてはレチクルアライメント系RA2は、レチクルアライメント系RA1の紙面奥側に隠れている。)が配置されている。一対のレチクルアライメント系RA1,RA2は、投影光学系PLの直下に微動ステージWFS上の後述する計測プレートが位置する状態で、主制御装置20により、レチクルRに形成された一対のレチクルアライメントマーク(図示省略)の投影像と対応する計測プレート上の一対の第1基準マークとを投影光学系PLを介して検出することで、投影光学系PLによるレチクルRのパターンの投影領域の中心と計測プレート上の基準位置、すなわち一対の第1基準マークの中心との位置関係を検出するために用いられる。レチクルアライメント系RA1,RA2の検出信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図5参照)。
【0034】
続いて、ステージ装置50の各部の構成等について図2および図3を用いて詳述する。
YモータYM1は、ベース盤12のX方向の両側縁にY方向に延在して設けられた固定子150と、Y粗動ステージYCのX方向の両端に設けられた可動子151Aとから構成されている。YモータYM2は、上記固定子150と、Y粗動ステージYC2のX方向の両端に設けられた可動子151Bとから構成されている。すなわち、YモータYM1、YM2では、固定子150を共用する構成となっている。固定子150は、Y方向に沿って配列された永久磁石を備えており、可動子151A、151BはY方向に沿って配列されたコイルを備えている。即ち、YモータYM1、YM2は、ウエハステージWST、計測ステージMST及びY粗動ステージYCをY方向に駆動するムービングコイル型のリニアモータを構成している。尚、ここではムービングコイル型のリニアモータを例に挙げて説明するが、ムービングマグネット型のリニアモータであってもよい。
【0035】
また、固定子150は、それぞれの下面に設けられた不図示の気体静圧軸受、例えばエアベアリングによってベース盤12の上方において所定のクリアランスを介して浮上支持されている。これにより、ウエハステージWST、計測ステージMSTやY粗動ステージYCのY方向の移動により発生した反力により、固定子150がY方向のYカウンタマスとして逆方向に移動して、この反力を運動量保存の法則により相殺する。
【0036】
可動子151B、151B間には、X方向に延びるXガイド(ガイド部材)XG2が設けられており、計測ステージMSTは、XモータXM2の駆動によりXガイドXG2に沿って移動する。計測ステージMSTは、ベース盤12上に配置された計測ステージ本体46と、計測ステージ本体46上に搭載された計測テーブルMTBとを備えている。計測テーブルMTBは、例えばショット日本株式会社製のゼロデュア(登録商標)等の低熱膨張材料から形成されており、その上面は撥液性(撥水性)を有している。この計測テーブルMTBは、例えば真空吸着によって計測ステージ本体46上に保持されており、交換可能に構成されている。
【0037】
また、計測ステージMSTは、ウエハステージWSTに対して+Y側に隣接して配置されるとともに、−Y側の上端部に他の部分より突出した突出部19を有している(図1及び図2等参照)。突出19を含む部計測テーブルMTBの表面の高さは、微動ステージWFSの表面の高さとほぼ同一となるように設定されている。
【0038】
計測ステージMSTの位置情報は、主制御装置20により、計測ステージ位置計測系17(図1、図5参照)を用いて計測される。計測ステージ位置計測系17は、図1に示されるように、計測ステージMST側面の反射面に測長ビームを照射して計測ステージMSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)を計測するレーザ干渉計を含んでいる。
【0039】
また、計測ステージMSTは、露光に関する各種計測を行うための計測器群を備えている。この計測器群としては、例えば空間像計測装置、波面収差測定装置、及び露光検出装置等がある。空間像計測装置は、投影光学系PLにより水を介して計測テーブルMTB上に投影される空間像を計測するものである。また、上記の波面収差測定装置としては、例えば国際公開第99/60361号パンフレット(対応する欧州特許第1,079,223号明細書)等に開示される波面収差測定装置を用いることができる。
【0040】
また、上記の露光検出装置としては、投影光学系PLを介して計測テーブルMTB上に照射される露光光の露光エネルギーに関する情報(光量、照度、照度むら等)を検出する検出装置であり、例えば特開昭57−117238号公報(対応する米国特許第4,465,368号)等に開示される照度むら計測器、及び、例えば特開平11−16816号公報(対応する米国特許出願公開第2002/0061469号明細書)等に開示される照度モニタを用いることができる。尚、図2においては、以上説明した空間像計測装置、波面収差測定装置、及び露光検出装置を計測器群63として示している。
さらに、計測テーブルMTB上面の所定位置には、これらの計測器群又はアライメントで用いられる各種のマークが形成された基準板253が設けられている。この基準板253は、低熱膨張材料から形成されているとともに、上面が撥液性(撥水性)を有しており、計測テーブルMTBに対して交換可能に構成されている。
【0041】
Y粗動ステージYCは、可動子151A、151A間に設けられX方向に延びるXガイド(ガイド部材)XG1を有しており、その底面に設けられた複数の非接触軸受、例えばエアベアリング94によりベース盤12の上に浮上支持される。
【0042】
XガイドXG1には、XモータXM1を構成する固定子152が設けられている。XモータXM1の可動子153は、図3に示すように、X粗動ステージWCSをX方向に貫通し、XガイドXG1が挿通される貫通孔154に設けられている。
【0043】
一対のX粗動ステージWCSは、その底面に設けられた複数の非接触軸受、例えばエアベアリング95によりそれぞれベース盤12の上に浮上支持され、XモータXM1の駆動によりXガイドXG1に沿って互いに独立してX方向に移動する。Y粗動ステージYCには、XガイドXG1の他に、X粗動ステージWCSをY方向に駆動するYリニアモータYM1の固定子が配設されたXガイドXGYが設けられている。そして、X粗動ステージWCSには、当該X粗動ステージWCSをX方向に貫通する貫通孔155(図3参照)にYリニアモータの可動子156が設けられている。なお、Yリニアモータを設けずに、エアベアリングを設けることにより、X粗動ステージWCSをY方向に支持する構成としてもよい。
【0044】
図4Aはステージ装置50を−Y方向から見た側面図、図4Bはステージ装置50の平面図である。図4A及び図4Bに示すように、X粗動ステージWCSのX方向外側端部には、一対の側壁部92a、92bと、側壁部92a、92bそれぞれの上面に固定された一対の固定子部93a、93bとを備えている。粗動ステージWCSは、全体として、上面のX軸方向中央部及びY軸方向の両側面が開口した高さの低い箱形の形状を有している。すなわち、粗動ステージWCSには、その内部にY軸方向に貫通した空間部が形成されている。
【0045】
一対の固定子部93a、93bそれぞれは、外形が板状の部材から成り、その内部に微動ステージWFSを駆動するためのコイルユニットCUa、CUbが収容されている。コイルユニットCUa、CUbを構成する各コイルに供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される。コイルユニットCUa、CUbの構成については、さらに後述する。
【0046】
固定子部93aは、+X側の端部が側壁部92a上面に固定され、固定子部93bは、−X側の端部が側壁部92b上面に固定されている。
【0047】
微動ステージWFSは、図4A及び図4Bに示されるように、平面視でX軸方向を長手方向とする八角形板状の部材から成る本体部81と、本体部81の長手方向の一端部と他端部にそれぞれ固定された一対の可動子部82a、82bと、を備えている。
【0048】
本体部81は、その内部を後述するエンコーダシステムの計測ビーム(計測光)が進行可能とする必要があることから、光が透過可能な透明な素材で形成されている。また、本体部81は、その内部における計測ビームに対する空気揺らぎの影響を低減するため、中実に形成されている(内部に空間を有しない)。なお、透明な素材は、低熱膨張率であることが好ましく、本実施形態では一例として合成石英(ガラス)などが用いられる。なお、本体部81は、その全体が透明な素材で構成されていても良いが、エンコーダシステムの計測ビームが透過する部分のみが透明な素材で構成されていても良く、この計測ビームが透過する部分のみが中実に形成されていても良い。
【0049】
微動ステージWFSの本体部81の上面中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。なお、ウエハホルダは、微動ステージWFSと一体に形成されていても良いし、本体部81に対して、例えば静電チャック機構あるいはクランプ機構等を介して、又は接着等により固定されていても良い。
【0050】
さらに、本体部81の上面には、ウエハホルダ(ウエハWの載置領域)の外側に、図4A及び図4Bに示されるように、ウエハW(ウエハホルダ)よりも一回り大きな円形の開口が中央に形成され、かつ本体部81に対応する八角形状の外形(輪郭)を有するプレート(撥液板)83が取り付けられている。プレート83の表面は、液体Lqに対して撥液化処理されている(撥液面が形成されている)。プレート83は、その表面の全部(あるいは一部)がウエハWの表面と同一面となるように本体部81の上面に固定されている。また、プレート83には、図4Bに示されるように、一端部に円形の開口が形成され、この開口内にその表面がプレート83の表面と、すなわちウエハWの表面とほぼ同一面となる状態で計測プレート86が埋め込まれている。計測プレート86の表面には、前述した一対の第1基準マークと、ウエハアライメント系ALGにより検出される第2基準マークとが少なくとも形成されている(第1及び第2基準マークはいずれも図示省略)。
【0051】
図4Aに示されるように、本体部81の上面のウエハWよりも一回り大きい領域には、計測面としての2次元グレーティング(以下、単にグレーティングと呼ぶ)RGが水平(ウエハW表面と平行)に配置されている。グレーティングRGは、X軸方向を周期方向とする反射型の回折格子(X回折格子)と、Y軸方向を周期方向とする反射型回折格子(Y回折格子)と、を含む。
【0052】
グレーティングRGの上面は、保護部材、例えばカバーガラス84(図10A)によって覆われている。本実施形態では、カバーガラス84の上面に、ウエハホルダを吸着保持する前述の静電チャック機構が設けられている。なお、本実施形態では、カバーガラス84は、本体部81の上面のほぼ全面を覆うように設けられているが、グレーティングRGを含む本体部81の上面の一部のみを覆うように設けても良い。また、保護部材(カバーガラス84)は、本体部81と同一の素材によって形成しても良いが、これに限らず、保護部材を、例えば金属、セラミックスで形成しても良いし、あるいは薄膜などで構成しても良い。
【0053】
本体部81は、図4Aからもわかるように、長手方向の両端部に外側に突出した張り出し部が形成された全体として八角形板状部材から成り、その底面の、グレーティングRGに対向する部分に凹部が形成されている。本体部81は、グレーティングRGが配置された中央の領域は、その厚さが実質的に均一な板状に形成されている。
【0054】
可動子部82aは、図4A及び図4Bに示されるように、Y軸方向寸法(長さ)及びX軸方向寸法(幅)が、共に固定子部93aよりも短い(半分程度の)2枚の平面視矩形状の板状部材82a1、82a2を含む。板状部材82a1、82a2は、本体部81の+X側の端部に対し、Z軸方向(上下)に所定の距離だけ離間した状態でともにXY平面に平行に固定されている。2枚の板状部材82a1、82a2の間には、固定子部93aの−X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82a1、82a2の内部には、後述する磁石ユニットMUa1、MUa2が、収容されている。
【0055】
可動子部82bは、Z軸方向(上下)に所定の間隔が維持された2枚の板状部材82b1、82b2を含み、可動子部82aと左右対称ではあるが同様に構成されている。2枚の板状部材82b1、82b2の間には、固定子部93bの+X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82b1、82b2の内部には、磁石ユニットMUa1、MUa2と同様に構成された磁石ユニットMUb1、MUb2が、収容されている。
【0056】
ここで、前述したように、粗動ステージWCSは、Y軸方向の両側面が開口しているので、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに装着する際には、板状部材82a1、82a2、及び82b1、82b2間に固定子部93a、93bがそれぞれ位置するように、微動ステージのWFSのZ軸方向の位置決めを行い、この後に微動ステージWFSをY軸方向に移動(スライド)させれば良い。
【0057】
微動ステージ駆動系52は、前述した可動子部82aが有する一対の磁石ユニットMUa1、MUa2と、固定子部93aが有するコイルユニットCUaと、前述した可動子部82bが有する一対の磁石ユニットMUb1、MUb2と、固定子部93bが有するコイルユニットCUbと、を含む。
【0058】
これをさらに詳述する。図6からわかるように、固定子部93aの内部には、複数(ここでは、12個)の平面視長方形状のYZコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)55、57が、Y軸方向に等間隔でそれぞれ配置され、2列のコイル列を構成している。コイル列はX軸方向に所定間隔で配置されている。YZコイル55は、上下方向(Z軸方向)に重ねて配置された平面視矩形状の上部巻線と下部巻線(不図示)とを有する。また、固定子部93aの内部であって、上述した2列のコイル列の間には、Y軸方向を長手方向とする細長い平面視長方形状の一つのXコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)56が、配置されている。この場合、2列のコイル列と、Xコイル56とは、X軸方向に関して等間隔で配置されている。2列のコイル列と、Xコイル56とを含んで、コイルユニットCUaが構成されている。
【0059】
なお、以下では、図6を用いて、コイルユニットCUa及び磁石ユニットMUa1,MUa2をそれぞれ有する一方の固定子部93a及び可動子部82aについて説明するが、他方の固定子部93b及び可動子部82bは、これらと同様に構成され、同様に機能する。
【0060】
可動子部82aの一部を構成する+Z側の板状部材82a1の内部には、図6を参照するとわかるように、X軸方向を長手方向とする平面視長方形の複数(ここでは10個)の永久磁石65a、67aがY軸方向に等間隔で配置され、2列の磁石列を構成している。磁石列はX軸方向に所定間隔を隔てて配置されるとともに、コイル55、57に対向して配置されている。また、板状部材82a1の内部であって、上述の2列の磁石列の間には、X軸方向に離間して配置されたY軸方向を長手方向とする一対(2つ)の永久磁石66a1、66a2が、コイル56に対向して配置されている。
【0061】
複数の永久磁石65aは、交互に極性が逆極性となるような配置で配列されている。複数の永久磁石67aから成る磁石列は、複数の永久磁石65aから成る磁石列と同様に構成されている。また、永久磁石66a1、66a2は、互いに逆極性となるように配置されている。複数の永久磁石65a、67a及び66a1、66a2によって、磁石ユニットMUa1が構成されている。
【0062】
−Z側の板状部材82a2の内部にも、上述した板状部材82a1の内部と同様の配置で、永久磁石が配置され、これらの永久磁石によって、磁石ユニットMUa2が構成されている。
【0063】
ここで、Y軸方向に隣接して配置された複数の永久磁石65aは、隣接する2つの永久磁石(便宜上第1、第2の永久磁石とする)65aそれぞれが、YZコイル(便宜上第1のYZコイルと呼ぶ)55の巻線部に対向したとき、第2の永久磁石65aに隣接する第3の永久磁石65aが、上述の第1のYZコイル55に隣接する第2のYZコイル55の巻線部に対向しないように(コイル中央の中空部、又はコイルが巻き付けられたコア、例えば鉄芯に対向するように)、複数の永久磁石65及び複数のYZコイル55のY軸方向に関する位置関係(それぞれの間隔)が設定されている。この場合、第3の永久磁石65aに隣接する第4の永久磁石65a及び第5の永久磁石65aそれぞれは、第2のYZコイル55に隣接する第3のYZコイル55の巻線部に対向する。永久磁石67a、及び−Z側の板状部材82a2の内部の2列の永久磁石列のY軸方向に関する間隔も、同様になっている。
【0064】
本実施形態では、上述のような各コイルと永久磁石との配置が採用されているので、主制御装置20は、Y軸方向に配列された複数のYZコイル55、57に対して、一つおきに電流を供給することによって、微動ステージWFSをY軸方向に駆動することができる。また、これと併せて、主制御装置20は、YZコイル55、57のうち、微動ステージWFSのY軸方向への駆動に使用していないコイルに電流を供給することによって、Y軸方向への駆動力とは別に、Z軸方向への駆動力を発生させ、微動ステージWFSを粗動ステージWCSから浮上させることができる。そして、主制御装置20は、微動ステージWFSのY軸方向の位置に応じて、電流供給対象のコイルを順次切り替えることによって、微動ステージWFSの粗動ステージWCSに対する浮上状態、すなわち非接触状態を維持しつつ、微動ステージWFSをY軸方向に駆動する。また、主制御装置20は、微動ステージWFSを粗動ステージWCSから浮上させた状態で、Y軸方向に駆動するとともに、これと独立にX軸方向にも駆動可能である。
【0065】
また、主制御装置20は、例えば図7Aに示されるように、可動子部82aと可動子部82bとに、互いに異なる大きさのY軸方向の駆動力(推力)を作用させることによって(図7Aの黒塗り矢印参照)、微動ステージWFSをZ軸回りに回転(θz回転)させることができる(図7Aの白抜き矢印参照)。なお、図7Aとは反対に、+X側の可動子部82aに作用させる駆動力を−X側よりも大きくすることで、微動ステージWFSをZ軸に対して左回りに回転させることができる。
【0066】
また、主制御装置20は、図7Bに示されるように、可動子部82aと可動子部82bとに、互いに異なる浮上力(図7Bの黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFSをY軸回りに回転(θy駆動(θy回転))させること(図7Bの白抜き矢印参照)ができる。なお、図7Bとは反対に、可動子部82aに作用させる浮上力を可動子部82b側よりも大きくすることで、微動ステージWFSをY軸に対して左回りに回転させることができる。
【0067】
さらに、主制御装置20は、例えば図7Cに示されるように、可動子部82a、82bそれぞれにおいて、Y軸方向の+側と−側とに、互いに異なる浮上力(図7Cの黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFSをX軸回りに回転(θx駆動(θx回転))させること(図7Cの白抜き矢印参照)ができる。なお、図7Cとは反対に、可動子部82a(及び82b)の−Y側の部分に作用させる浮上力を+Y側の部分に作用させる浮上力よりも小さくすることで、微動ステージWFSをX軸に対して左回りに回転させることができる。
【0068】
以上の説明からわかるように、本実施形態では、微動ステージ駆動系52により、微動ステージWFSを、粗動ステージWCSに対して非接触状態で浮上支持するとともに、粗動ステージWCSに対して、非接触で6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)へ駆動することができるようになっている。
【0069】
また、本実施形態では、主制御装置20は、微動ステージWFSに浮上力を作用させる際、固定子部93a内に配置された2列のコイル55、57(図6参照)に互いに反対方向の電流を供給することによって、例えば図8に示されるように、可動子部82aに対して、浮上力(図8の黒塗り矢印参照)と同時にY軸回りの回転力(図8の白抜き矢印参照)を作用させることができる。同様に、主制御装置20は、微動ステージWFSに浮上力を作用させる際、固定子部93b内に配置された2列のコイル55、57に互いに反対方向の電流を供給することによって、可動子部82bに対して、浮上力と同時にY軸回りの回転力を作用させることができる。
【0070】
また、主制御装置20は、一対の可動子部82a、82bそれぞれに、互いに反対の方向のY軸回りの回転力(θy方向の力)を作用させることによって、微動ステージWFSのX軸方向に関する中央部を+Z方向又は−Z方向に撓ませることができる(図8のハッチング付き矢印参照)。従って、図8に示されるように、微動ステージWFSのX軸方向に関する中央部を+Z方向に(凸状に)撓ませることによって、ウエハW及び本体部81の自重に起因する微動ステージWFS(本体部81)のX軸方向の中間部分の撓みを打ち消して、ウエハW表面のXY平面(水平面)に対する平行度を確保できる。これにより、ウエハWが大径化して微動ステージWFSが大型化した時などに、特に効果を発揮できる。
【0071】
本実施形態の露光装置100では、ウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時には、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報(θz方向の位置情報を含む)は、主制御装置20により、後述する微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73(図5参照)を用いて計測される。微動ステージWFSの位置情報は、主制御装置20に送られ、主制御装置20は、この位置情報に基づいて微動ステージWFSの位置を制御する。
【0072】
これに対し、ウエハステージWSTが微動ステージ位置計測系70の計測領域外にあるときには、ウエハステージWSTの位置情報は、主制御装置20により、ウエハステージ位置計測系16(図5参照)を用いて計測される。ウエハステージ位置計測系16は、図1に示されるように、粗動ステージWCS側面の反射面に測長ビームを照射してウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)を計測するレーザ干渉計を含んでいる。なお、ウエハステージWSTのXY平面内での位置情報は、上述のウエハステージ位置計測系16に代えて、その他の計測装置、例えばエンコーダシステムによって計測しても良い。
【0073】
微動ステージ位置計測系70は、図1に示されるように、ウエハステージWSTが投影光学系PLの下方に配置された状態で、計測ステージMSTに形成された開口18(図1、図2参照)を介して粗動ステージWCSの内部の空間部内に挿入される計測アーム71を備えている。開口18は、計測アーム71が挿通されている状態であっても、計測ステージMSTがX方向に十分なストロークで移動できる大きさで形成されている。
計測アーム71は、メインフレームBDに支持部72を介して片持ち支持(一端部近傍が支持)されている。
【0074】
計測アーム71は、Y軸方向を長手方向とする、幅方向(X軸方向)よりも高さ方向(Z軸方向)の寸法が大きい縦長の長方形断面を有する四角柱状(すなわち直方体状)の部材であり、光を透過する同一の素材、例えばガラス部材が複数貼り合わされて形成されている。計測アーム71は、後述するエンコーダヘッド(光学系)が収容される部分を除き、中実に形成されている。計測アーム71は、前述したようにウエハステージWSTが投影光学系PLの下方に配置された状態では、先端部が粗動ステージWCSの空間部内に挿入され、図1に示されるように、その上面が微動ステージWFSの下面(より正確には、本体部81(図1では不図示、図4A等参照)の下面)に対向している。計測アーム71の上面は、微動ステージWFSの下面との間に所定のクリアランス、例えば数mm程度のクリアランスが形成された状態で、微動ステージWFSの下面とほぼ平行に配置される。
【0075】
微動ステージ位置計測系70は、図5に示されるように、エンコーダシステム73と、レーザ干渉計システム75とを備えている。エンコーダシステム73は、微動ステージWFSのX軸方向の位置を計測するXリニアエンコーダ73x、微動ステージWFSのY軸方向の位置を計測する一対のYリニアエンコーダ73ya、73ybを含む。エンコーダシステム73では、例えば米国特許第7,238,931号明細書、及び米国特許出願公開第2007/288,121号明細書などに開示されるエンコーダヘッド(以下、適宜ヘッドと略述する)と同様の構成の回折干渉型のヘッドが用いられている。ただし、本実施形態では、ヘッドは、後述するように光源及び受光系(光検出器を含む)が、計測アーム71の外部に配置され、光学系のみが計測アーム71の内部に、すなわちグレーティングRGに対向して配置されている。以下、特に必要な場合を除いて、計測アーム71の内部に配置された光学系をヘッドと呼ぶ。
【0076】
エンコーダシステム73は、微動ステージWFSのX軸方向の位置を1つのXヘッド77x(図10A及び図10B参照)で計測し、Y軸方向の位置を一対のYヘッド77ya、77yb(図10B参照)で計測する。すなわち、グレーティングRGのX回折格子を用いて微動ステージWFSのX軸方向の位置を計測するXヘッド77xによって、前述のXリニアエンコーダ73xが構成され、グレーティングRGのY回折格子を用いて微動ステージWFSのY軸方向の位置を計測する一対のYヘッド77ya、77ybによって、一対のYリニアエンコーダ73ya、73ybが構成されている。
【0077】
ここで、エンコーダシステム73を構成する3つのヘッド77x、77ya、77ybの構成について説明する。図10Aには、3つのヘッド77x、77ya、77ybを代表して、Xヘッド77xの概略構成が示されている。また、図10Bには、Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの計測アーム71内での配置が示されている。
【0078】
図10Aに示されるように、Xヘッド77xは、偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と表記する)WP1a,WP1b、反射ミラーR2a,R2b、及び反射ミラーR3a,R3b等を有し、これらの光学素子が所定の位置関係で配置されている。Yヘッド77ya、77ybも同様の構成の光学系を有している。Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれは、図10A及び図10Bに示されるように、ユニット化されて計測アーム71の内部に固定されている。
【0079】
図10Bに示されるように、Xヘッド77x(Xエンコーダ73x)では、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられた光源LDxから−Z方向にレーザビームLBx0が射出され、計測アーム71の一部にXY平面に対して45°の角度で斜設された反射面RPを介してY軸方向に平行にその光路が折り曲げられる。このレーザビームLBx0は、計測アーム71の内部の中実な部分を、Y軸方向に平行に進行し、反射ミラーR3a(図10A参照)に達する。そして、レーザビームLBx0は、反射ミラーR3aによりその光路が折り曲げられて、偏光ビームスプリッタPBSに入射する。レーザビームLBx0は、偏光ビームスプリッタPBSで偏光分離されて2つの計測ビームLBx1,LBx2となる。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1は反射ミラーR1aを介して微動ステージWFSに形成されたグレーティングRGに到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2は反射ミラーR1bを介してグレーティングRGに到達する。なお、ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。
【0080】
計測ビームLBx1,LBx2の照射によってグレーティングRGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームそれぞれは、レンズL2a,L2bを介して、λ/4板WP1a,WP1bにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2a,R2bにより反射されて再度λ/4板WP1a,WP1bを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに達する。
【0081】
偏光ビームスプリッタPBSに達した2つの1次回折ビームは、各々その偏光方向が元の方向に対して90度回転している。このため、計測ビームLBx1,LBx2それぞれの1次回折ビームは同軸上に合成ビームLBx12として合成される。合成ビームLBx12は、反射ミラーR3bでその光路が、Y軸に平行に折り曲げられて、計測アーム71の内部をY軸に平行に進行し、前述の反射面RPを介して、図10Bに示される、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられたX受光系74xに送光される。
【0082】
X受光系74xでは、合成ビームLBx12として合成された計測ビームLBx1,LBx2の1次回折ビームが不図示の偏光子(検光子)によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が不図示の光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。ここで、微動ステージWFSが計測方向(この場合、X軸方向)に移動すると、2つのビーム間の位相差が変化して干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化は、微動ステージWFSのX軸方向に関する位置情報として主制御装置20(図5参照)に供給される。
【0083】
図10Bに示されるように、Yヘッド77ya、77ybには、それぞれの光源LDya、LDybから射出され、前述の反射面RPで光路が90°折り曲げられたY軸に平行なレーザビームLBya0、LByb0が入射し、前述と同様にして、Yヘッド77ya、77ybから、偏向ビームスプリッタで偏光分離された計測ビームそれぞれのグレーティングRG(のY回折格子)による1次回折ビームの合成ビームLBya12、LByb12が、それぞれ出力され、Y受光系74ya、74ybに戻される。ここで、光源LDya、LDybから射出されるレーザビームLBya0、LByb0とY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とは、図10Bにおける紙面垂直方向に重なる光路をそれぞれ通る。また、上述のように、光源から射出されるレーザビームLBya0、LByb0とY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とが、Z軸方向に離れた平行な光路を通るように、Yヘッド77ya、77ybでは、それぞれの内部で光路が適宜折り曲げられている(図示省略)。
【0084】
図9Aには、計測アーム71の先端部が斜視図にて示されており、図9Bには、計測アーム71の先端部の上面を+Z方向から見た平面図が示されている。図9A及び図9Bに示されるように、Xヘッド77xは、X軸に平行な直線LX上で計測アーム71のセンターラインCLから等距離にある2点(図9Bの白丸参照)から、計測ビームLBx1、LBx2(図9A中に実線で示されている)を、グレーティングRG上の同一の照射点に照射する(図10A参照)。計測ビームLBx1、LBx2の照射点、すなわちXヘッド77xの検出点(図9B中の符号DP参照)は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致している(図1参照)。なお、計測ビームLBx1、LBx2は、実際には、本体部81と空気層との境界面などで屈折するが、図10A等では、簡略化して図示されている。
【0085】
図10Bに示されるように、一対のYヘッド77ya、77ybそれぞれは、センターラインCLの+X側、−X側に配置されている。Yヘッド77yaは、図9A及び図9Bに示されるように、直線LYa上で直線LXからの距離が等しい2点(図9Bの白丸参照)から、グレーティングRG上の共通の照射点に図9Aにおいてそれぞれ破線で示される計測ビームLBya1,LBya2を照射する。計測ビームLBya1,LBya2の照射点、すなわちYヘッド77yaの検出点が、図9Bに符号DPyaで示されている。
【0086】
Yヘッド77ybは、センターラインCLに関して、Yヘッド77yaの計測ビームLBya1,LBya2の射出点に対称な2点(図9Bの白丸参照)から、計測ビームLByb1,LByb2を、グレーティングRG上の共通の照射点DPybに照射する。
図9Bに示されるように、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの検出点DPya、DPybは、X軸に平行な直線LX上に配置される。
【0087】
ここで、主制御装置20は、微動ステージWFSのY軸方向の位置は、2つのYヘッド77ya、77ybの計測値の平均に基づいて決定する。従って、本実施形態では、微動ステージWFSのY軸方向の位置は、検出点DPya、DPybの中点DPを実質的な計測点として計測される。中点DPは、計測ビームLBx1,LBx2のグレーティングRG上の照射点と一致する。
【0088】
すなわち、本実施形態では、微動ステージWFSのX軸方向及びY軸方向の位置情報の計測に関して、共通の検出点を有し、この検出点は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する。従って、本実施形態では、主制御装置20は、エンコーダシステム73を用いることで、微動ステージWFS上に載置されたウエハWの所定のショット領域にレチクルRのパターンを転写する際、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報の計測を、常に露光位置の直下(微動ステージWFSの裏面側)で行うことができる。また、主制御装置20は、一対のYヘッド77ya、77ybの計測値の差に基づいて、微動ステージWFSのθz方向の回転量を計測する。
【0089】
レーザ干渉計システム75は、図9Aに示されるように、3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3を計測アーム71の先端部から、微動ステージWFSの下面に入射させる。レーザ干渉計システム75は、これら3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3それぞれを照射する3つのレーザ干渉計75a〜75c(図5参照)を備えている。
【0090】
レーザ干渉計システム75では、3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3は、図9A及び図9Bに示されるように、その重心が、照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する、二等辺三角形(又は正三角形)の各頂点に相当する3点からZ軸に平行に射出される。この場合、測長ビームLBz3の射出点(照射点)はセンターラインCL上に位置し、残りの測長ビームLBz1、LBz2の射出点(照射点)は、センターラインCLから等距離にある。本実施形態では、主制御装置20は、レーザ干渉計システム75を用いて、微動ステージWFSのZ軸方向の位置、θz方向及びθy方向の回転量の情報を計測する。なお、レーザ干渉計75a〜75cは、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられている。レーザ干渉計75a〜75cから−Z方向に射出された測長ビームLBz1、LBz2、LBz3は、前述の反射面RPを介して計測アーム71内をY軸方向に沿って進行し、その光路がそれぞれ折り曲げられて、上述の3点から射出される。
【0091】
本実施形態では、微動ステージWFSの下面に、エンコーダシステム73からの各計測ビームを透過させ、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの透過を阻止する、波長選択フィルタ(図示省略)が設けられている。この場合、波長選択フィルタは、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの反射面をも兼ねる。
【0092】
以上の説明からわかるように、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73及びレーザ干渉計システム75を用いることで、微動ステージWFSの6自由度方向の位置を計測することができる。この場合、エンコーダシステム73では、計測ビームの空気中での光路長が極短くかつほぼ等しいため、空気揺らぎの影響が殆ど無視できる。従って、エンコーダシステム73により、微動ステージWFSのXY平面内(θz方向も含む)の位置情報を高精度に計測できる。また、エンコーダシステム73によるX軸方向、及びY軸方向の実質的なグレーティングRG上の検出点、及びレーザ干渉計システム75によるZ軸方向の微動ステージWFS下面上の検出点は、それぞれ露光領域IAの中心(露光位置)にXY平面内で一致するので、検出点と露光位置とのXY平面内のずれに起因するいわゆるアッベ誤差の発生が実質的に無視できる程度に抑制される。従って、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70を用いることで、検出点と露光位置とのXY平面内のずれに起因するアッベ誤差なく、微動ステージWFSのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置を高精度に計測できる。
【0093】
本実施形態の露光装置100では、デバイスの製造に際し、粗動ステージWCSに保持された微動ステージに保持されたウエハWに対して、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われ、そのウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンがそれぞれ転写される。このステップ・アンド・スキャン方式の露光動作は、主制御装置20により、事前に行われた、ウエハアライメントの結果(例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)により得られるウエハW上の各ショット領域の配列座標を第2基準マークを基準とする座標に変換した情報)、及びレチクルアライメントの結果等に基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)へ微動ステージWFSが移動されるショット間移動動作と、レチクルRに形成されたパターンを走査露光方式で各ショット領域に転写する走査露光動作と、を繰り返すことにより、行われる。なお、上記の露光動作は、先端レンズ191とウエハWとの間に液体Lqを保持した状態で、すなわち液浸露光により行われる。また、+Y側に位置するショット領域から−Y側に位置するショット領域の順で行われる。なお、EGAについては、例えば米国特許第4,780,617号明細書などに詳細に開示されている。
【0094】
本実施形態の露光装置100では、上述の一連の露光動作中、主制御装置20により、微動ステージ位置計測系70を用いて、微動ステージWFS(ウエハW)の位置が計測され、この計測結果に基づいてウエハWの位置が制御される。
【0095】
なお、上述の走査露光動作時は、ウエハWをY軸方向に高加速度で走査する必要があるが、本実施形態の露光装置100では、主制御装置20は、走査露光動作時には、図11Aに示されように、原則的に粗動ステージWCSを駆動せず、微動ステージWFSのみをY軸方向に(必要に応じて他の5自由度方向にも併せて)駆動する(図11Aの黒塗り矢印参照)ことで、ウエハWをY軸方向に走査する。これは、粗動ステージWCSを駆動する場合に比べ、微動ステージWFSのみを動かす方が駆動対象の重量が軽い分、高加速度でウエハWを駆動できて有利だからである。また、前述のように、微動ステージ位置計測系70は、その位置計測精度がウエハステージ位置計測系16よりも高いので、走査露光時には微動ステージWFSを駆動した方が有利である。なお、この走査露光時には、微動ステージWFSの駆動による反力(図11Aの白抜き矢印参照)の作用により、粗動ステージWCSが微動ステージWFSと反対側に駆動される。すなわち、粗動ステージWCSがカウンタマスとして機能し、ウエハステージWSTの全体から成る系の運動量が保存され、重心移動が生じないので、微動ステージWFSの走査駆動によってベース盤12に偏加重が作用するなどの不都合が生じることがない。
【0096】
一方、X軸方向にショット間移動(ステッピング)動作を行う際には、微動ステージWFSのX軸方向への移動可能量が少ないことから、主制御装置20は、図11Bに示されるように、粗動ステージWCSをX軸方向に駆動することによって、ウエハWをX軸方向に移動させる。
【0097】
図12には、露光が終了した直後で、液体Lqで形成される液浸空間が先端レンズ191とウエハステージWSTとの間で保持される状態(第1の状態)が示されている。
主制御装置20は、露光終了に先立って、計測ステージ駆動系54を介して、図1に示される位置に計測ステージMSTを所定量駆動し、この状態で、露光が終了するのを待つ。
【0098】
そして、露光が終了すると、主制御装置20は、計測ステージ駆動系54を介して計測ステージMSTを−Y方向に所定量駆動し(図12中の白抜き矢印参照)、計測ステージMST(の突出部19)を、微動ステージWFSに接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接させる。すなわち、主制御装置20は、計測ステージMSTと微動ステージWFSとをスクラム状態に設定する。
【0099】
次に、主制御装置20は、図13に示されるように、計測ステージMSTと微動ステージWFSとのスクラム状態を維持しつつ、ウエハステージWSTと一体で計測ステージMSTを−Y方向に駆動する(図13の白抜き矢印参照)。これにより、先端レンズ191との間に保持されていた液体Lqで形成される液浸空間が、微動ステージWFSから計測ステージMSTに渡される。図13には、液体Lqで形成される液浸空間が微動ステージWFSから計測ステージMSTに渡される直前の状態が示されている。この状態では、先端レンズ191と、微動ステージWFS及び計測ステージMSTとの間に、液体Lqが保持されている。
【0100】
そして、図14に示されるように、微動ステージWFSから計測ステージMSTへの液浸空間の受け渡しが終了し、液体Lqで形成される液浸空間が先端レンズ191と計測ステージMSTとの間で保持される状態(第2の状態)になると、主制御装置20は、粗動ステージWCSを微動ステージWFS(及びウエハW)の受け渡し位置まで移動させる。
【0101】
上記の液浸空間の受け渡しにおいては、計測ステージMST(の突出部19)と微動ステージWFSとのクリアランスが所定量以上に大きくなったり、微動ステージWFSあるいは計測ステージMSTがZ軸周りに回転していると、液浸空間を維持することが困難になる。そのため、本実施形態では、露光装置100の立ち上げ時、定期的なメンテナンス時、又は停電やエラーが生じた場合に露光装置100の装置状態を初期状態に設定するリセット時等に、ウエハアライメント系ALG及び多点AF系AFを用いて微動ステージWFSと計測ステージMSTとの相対位置を計測している。尚、この相対位置の測定時には、液体供給装置5及び液体回収装置6の各バルブが閉状態になっており、投影光学系PLの先端レンズ191の直下への液体Lqの供給はされない。
【0102】
具体的には、主制御装置20は、計測ステージ駆動系54の駆動により、計測ステージMSTを投影光学系PLの下方(−Z方向)へ配置する。このとき、図15Aに示すように、計測ステージMST(突出部19)の微動ステージWFSと対向する−Y方向側のエッジ部e1がアライメント系ALGの計測視野内に入るよう計測ステージMSTを移動させる。次に、主制御装置20は、XモータXM2の駆動により計測ステージMSTを−X方向に移動させ、エッジ部e1の+X方向の端部(以下、計測点P11という)がアライメント系ALGの計測視野内に入るよう計測ステージMSTを配置する。
この状態で、アライメント系ALGを用いて計測点P11を撮像する。この撮像信号は主制御装置20に供給され、計測点P11を撮像したときの計測ステージMSTの位置とともに記憶される。
【0103】
次いで、主制御装置20は、XモータXM2の駆動により計測ステージMSTを+X方向に移動させ、エッジ部e1の−X方向の端部(以下、計測点P12という)がアライメント系ALGの計測視野内に入るよう計測ステージMSTを配置する。
この状態で、アライメント系ALGを用いて計測点P12を撮像する。この撮像信号は主制御装置20に供給され、計測点P12を撮像したときの計測ステージMSTの位置とともに記憶される。
主制御装置20は、以上の処理により得られた計測点P11,P12の撮像信号の各々を画像処理して計測点P11,P12の計測視野内における位置情報を求め、この位置情報と各々の撮像信号を撮像した時点で検出された計測ステージMSTの位置に基づいて、計測点P11,P12のY方向における位置情報を求める。
【0104】
続いて、主制御装置20は、微動ステージWFSについても計測ステージMSTと同様に、微動ステージWFSの計測ステージMSTと対向する+Y方向側のエッジ部e2のうち、+X方向の端部(以下、計測点P21という)がアライメント系ALGの計測視野内に入るよう微動ステージWFSを配置し、アライメント系ALGを用いて計測点P21を撮像する。この撮像信号は主制御装置20に供給され、計測点P21を撮像したときの微動ステージWFSの位置とともに記憶される。
【0105】
次いで、主制御装置20は、微動ステージWFSを+X方向に移動させ、エッジ部e2の−X方向の端部(以下、計測点P22という)がアライメント系ALGの計測視野内に入るよう微動ステージWFSを配置し、アライメント系ALGを用いて計測点P22を撮像する。この撮像信号は主制御装置20に供給され、計測点P22を撮像したときの微動ステージWFSの位置とともに記憶される。
主制御装置20は、以上の処理により得られた計測点P21,P22の撮像信号の各々を画像処理して計測点P21,P22の計測視野内における位置情報を求め、この位置情報と各々の撮像信号を撮像した時点で検出された微動ステージWFSの位置に基づいて、計測点P21,P22のY方向における位置情報を求める。
【0106】
以上の処理で得られた計測点P11,P12の位置情報と、計測点P21,P22の位置情報とからエッジ部e1とエッジ部e2とのY方向における相対的な位置関係、即ち計測ステージMSTと微動ステージWFSとのY方向における相対位置が求められる。エッジ部e1を複数の測定点P11,P12で測定し、エッジ部e2を複数の測定点P21,P22で測定しているため、ウェハステージWST又は計測ステージMSTのZ軸周りの回転に起因するエッジ部e1とエッジ部e2との平行からのずれ量を求めることもできる。尚、以上の処理で求められた計測ステージMSTと微動ステージWFSとのY方向における相対位置を示す情報は、露光時(液浸空間の受け渡し時)の計測ステージMSTと微動ステージWFSとの駆動制御に用いられ、主制御装置20がYモータYM1、YM2を制御することにより、これらの間のクリアランスを管理することができる。
【0107】
また、計測ステージMSTと微動ステージWFSとのZ方向における相対位置については、多点AF系AFを用いて計測・調整することができる。
具体的には、主制御装置20はYモータYM1、YM2を駆動して、計測ステージMST及び微動ステージWFSがエッジ部e1,e2を互いに近接させた状態で投影光学系PLの下方(−Z方向)に位置するように計測ステージMST及び微動ステージWFSの各々を配置する。
【0108】
そして、多点AF系AFの検出領域が、微動ステージWFSのエッジ部e2の近傍に設定されるよう、ウエハステージWST及び計測ステージMSTのY方向の位置を設定する。Y方向の配置が完了すると、主制御装置20は、XモータXM1を駆動して、微動ステージWFSを−X方向に移動させ、多点AF系AFの検出領域がエッジ部e2の+X方向の端部の近傍(以下、計測面P31という)に設定されるよう微動ステージWFSを配置する。この状態で、多点AF系AFを用いて計測面P31を検出する。この検出結果は主制御装置20に供給される。
【0109】
次いで、主制御装置20は、XモータXM1を駆動して、微動ステージWFSを+X方向に移動させ、多点AF系AFの検出領域がエッジ部e2の−X方向の端部の近傍(以下、計測面P32という)に設定されるよう微動ステージWFSを配置する。この状態で、多点AF系AFを用いて計測面P32を検出する。この検出結果は主制御装置20に供給される。
【0110】
次に、主制御装置20は、YモータYM1、YM2を駆動して、相対位置関係を保持した状態でウエハステージWST及び計測ステージMSTを−Y方向に移動させ、多点AF系AFの検出領域が計測ステージMSTにおけるエッジ部e1の近傍に設定されるよう、計測ステージMST及び微動ステージWFSのY方向の位置を設定する。
【0111】
Y方向の配置が完了すると、主制御装置20は、XモータXM2を駆動して、計測ステージMSTを−X方向に移動させ、多点AF系AFの検出領域がエッジ部e1の+X方向の端部の近傍(以下、計測面P41という)に設定されるよう計測ステージMSTを配置する。この状態で、多点AF系AFを用いて計測面P41を検出する。この検出結果は主制御装置20に供給される。
【0112】
次いで、主制御装置20は、XモータXM2を駆動して、計測ステージMSTを+X方向に移動させ、多点AF系AFの検出領域がエッジ部e1の−X方向の端部の近傍(以下、計測面P42という)に設定されるよう計測ステージMSTを配置する。この状態で、多点AF系AFを用いて計測面P42を検出する。この検出結果は主制御装置20に供給される。
【0113】
以上の処理で得られた計測面P31,P32の検出結果と、計測面P41,P42の検出結果とから計測ステージMSTと微動ステージWFSとのZ方向における相対的な位置関係が求められる。尚、以上の処理で求められた計測ステージMSTと微動ステージWFSとのZ方向における相対位置を示す情報は、露光時(液浸空間の受け渡し時)の計測ステージMSTと微動ステージWFSとのZ方向の駆動制御に用いられる。
【0114】
以上説明したように、本実施形態では、微動ステージWFS上のウエハWと投影光学系PL(先端レンズ191)との間に液体Lqが保持される状態から、計測ステージMSTと投影光学系PL(先端レンズ191)との間に液体Lqが保持される状態に遷移させているため、微動ステージWFSをローディングポジションやアライメント位置等に移動させて他の処理を実行させている間にも、液浸空間を常時維持してスループットを最大限に高くすることができる。また、本実施形態では、液浸空間を維持する計測ステージMSTの駆動が、YモータYM1と固定子150を共用するYモータYM2により行われるため、別途固定子150を設けた場合に生じる装置の大型化及びコスト増を抑制することが可能になる。
【0115】
また、本実施形態では、計測ステージMSTと微動ステージWFSとのZ方向及びY方向の相対位置の計測結果に基づいて両ステージの相対位置を調整できるため、計測ステージMSTと微動ステージWFSとの間で液体を受け渡す場合に、漏れや液体の残存が生ずることなく液体を受け渡すことができる。
【0116】
なお、上記実施形態では、レーザ干渉計システム(不図示)を介してウエハW(微動ステージWFS)の位置を計測しながらウエハのアライメントを行うものとしたが、これに限らず、上述した微動ステージ位置計測系70の計測アーム71と同様の構成の計測アームを含む第2の微動ステージ位置計測系をウエハアライメント系ALGの近傍に設け、これを用いてウエハアライメント時における微動ステージのXY平面内の位置計測を行うものとしても良い。
【0117】
図16乃至図18には、このような第2の微動ステージ位置計測系を備えた変形例に係る露光装置1000の構成が示されている。なお、露光装置1000においては、液浸空間を保持する装置として、計測ステージではなく、YモータYM2の駆動により、Y方向にのみ独立して移動する液体保持ステージLSTが設けられる構成とする。
【0118】
露光装置1000は、投影ユニットPUが配置された露光ステーション200と、アライメント系ALGが配置された計測ステーション300とを備えたツインウエハステージタイプの露光装置である。ここで、前述した第1の実施形態の露光装置100と同一又は同等の構成部分については、同一若しくは類似の記号を用いると共に、その説明を省略又は簡略するものとする。また、同等の部材が露光ステーション200と計測ステーション300とにある場合、識別のため、各部材の符号の末尾にA,Bを付して表記する。ただし、2つのウエハステージの符号は、WST1,WST2と表記する。
【0119】
露光ステーション200は、図1と図16とを比較するとわかるように、基本的には、前述した上記の実施形態の露光装置100と同様に構成されている。また、計測ステーション300には、露光ステーション200側の微動ステージ位置計測系70Aと、左右対称の配置で微動ステージ位置計測系70Bが配置されている。また、計測ステーション300には、アライメント系ALGに代えて、アライメント装置99がボディBDから吊り下げ状態で取り付けられている。アライメント装置99として、例えば国際公開第2008/056735号に詳細に開示される、5つのFIA系を備えた5眼のアライメント系が用いられている。
【0120】
また、露光装置1000では、ベース盤12の露光ステーション200と計測ステーション300との間の位置には、上下動可能なセンターテーブル130が取り付けられている。センターテーブル130は、駆動装置132(図17参照)によって上下動可能な軸134と、軸134の上端に固定された平面視Y字形のテーブル本体136とを備えている。また、ウエハステージWST1、WST2をそれぞれ構成する粗動ステージWCS1、WCS2には、それぞれの底面に、軸134より幅の広い、第1部分と第2部分との分離線を含む全体としてU字状の切り欠き96が形成されている。これにより、ウエハステージWST1、WST2は、いずれもテーブル本体136の上方に微動ステージWFS1又はWFS2を搬送できるようになっている。
【0121】
液体保持ステージLSTは、ウエハステージWST1の+Y側に設けられ、YモータYM2の駆動により、Y方向に独立して移動する。本形態における液体保持ステージLSTは、X方向に関しては移動せず、可動子151Bに一体的に設けられている。なお、液体保持ステージLSTについては、各種計測機器を備えていない点及びX方向については移動しない点を除けば、開口部18、突出部19を有する点や、表面が撥液性を有する点については、上記計測ステージMSTと同様の構成を備えている。
【0122】
図17には、露光装置1000の制御系の主要な構成が、ブロック図にて示されている。
このようにして構成された露光装置1000では、露光ステーション200において、ウエハステージWST1を構成する粗動ステージWCS1に支持された微動ステージWFS1上のウエハWに対して露光が行われるのと並行して、計測ステーション300において、ウエハステージWST2を構成する粗動ステージWCS2に支持された微動ステージWFS2上のウエハWに対してウエハアライメント(例えばEGAなど)等が行われる。
【0123】
そして、露光が終了すると、ウエハステージWST1が、テーブル本体136の上方に露光済みのウエハWを保持する微動ステージWFS1を搬送する。このウエハステージWST1の移動時には、液体保持ステージLSTを−Y方向に所定量駆動し、液体保持ステージLST(の突出部19)を、微動ステージWFS1に接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接させて、液体保持ステージLSTと微動ステージWFS1とをスクラム状態に設定する。
【0124】
そして、このスクラム状態を維持しつつ、ウエハステージWST1と一体で液体保持ステージLSTを−Y方向に駆動する。これにより、先端レンズ191との間に保持されていた液体Lqで形成される液浸空間が、微動ステージWFSから液体保持ステージLSTに受け渡される。
【0125】
ウエハステージWST1がセンターテーブル130に到達すると、センターテーブル130が、駆動装置132によって上昇駆動され、主制御装置20により、ウエハステージ駆動系53Aが制御されて一対の粗動ステージWCS1がXガイドXG1に沿って互いに離間する方向に移動する。これにより、微動ステージWFS1が粗動ステージWCS1からテーブル本体136に渡される。そして、センターテーブル130が、駆動装置132によって下降駆動された後、一対の粗動ステージWCS1が互いに接近する方向に移動する。そして、粗動ステージWCS1にウエハステージWST2が−Y方向から近接又は接触し、アライメント済みのウエハWを保持する微動ステージWFS2が、粗動ステージWCS2から粗動ステージWCS1に移載される。この一連の動作は、主制御装置20が、ウエハステージ駆動系53Bを制御することで行われる。
【0126】
その後、微動ステージWFS2を保持した粗動ステージWCS1が、露光ステーション200に移動し、レチクルアライメント、そのレチクルアライメントの結果と、ウエハアライメントの結果(ウエハW上の各ショット領域の第2基準マークを基準とする配列座標)とに基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われる。
【0127】
粗動ステージWCS1が、露光ステーション200に移動する際には、液体保持ステージLSTと微動ステージWFS1とを接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接させて、液体保持ステージLSTと微動ステージWFS1とをスクラム状態に設定する。そして、このスクラム状態を維持しつつ、ウエハステージWST1と一体で液体保持ステージLSTを+Y方向に駆動する。これにより、先端レンズ191との間に保持されていた液体Lqで形成される液浸空間が、再度液体保持ステージLSTから微動ステージWFSに受け渡される。
【0128】
この露光と並行して、粗動ステージWCS2が、−Y方向に退避し、テーブル本体136上に保持されている微動ステージWFS1が、不図示の搬送系によって、所定の位置まで搬送され、その微動ステージWFS1に保持されている露光済みのウエハWが、新たなウエハWに、不図示のウエハ交換機構によって交換される。そして、新たなウエハWを保持した微動ステージWFS1が、搬送系によってテーブル本体136上に搬送され、さらに、テーブル本体136上から粗動ステージWCS2上に渡される。以後、上記と同様の処理が、繰り返し行われる。
【0129】
また、液体保持部材としては、上述した計測ステージMSTや液体保持ステージLSTの他に、図19に示すように、Y粗動ステージYC1に支持部219を介して一体的に設けられた液体保持テーブルLTBを用いる構成であってもよい。この場合、液体保持テーブルLTBは、微動ステージWFS1の+Y側に、上述したクリアランスを介して配置され、YモータYM1の駆動によりウエハステージWST1と一体的に移動する。換言すると、液体保持テーブルLTBは、YモータYM1をウエハステージWST1と共用してY方向に移動することになる。
【0130】
なお、上記実施形態及び変形例では、微動ステージWFSを、粗動ステージWCSに対して移動可能に支持すると共に、6自由度方向に駆動する第1、第2駆動部として、コイルユニットを一対の磁石ユニットで上下から挟み込むサンドイッチ構造が採用される場合について例示した。しかし、これに限らず、第1、第2駆動部は、磁石ユニットを一対のコイルユニットで上下から挟み込む構造であっても良いし、サンドイッチ構造でなくても良い。また、コイルユニットを微動ステージに配置し、磁石ユニットを粗動ステージに配置しても良い。
【0131】
また、上記実施形態及び変形例では、第1、第2駆動部により、微動ステージWFSを、6自由度方向に駆動するものとしたが、必ずしも6自由度に駆動できなくても良い。例えば、第1、第2駆動部をθx方向に関して微動ステージを駆動できなくても良い。
【0132】
なお、上記実施形態では、微動ステージWFSは、ローレンツ力(電磁力)の作用により粗動ステージWCSに非接触支持されたが、これに限らず、例えば微動ステージWFSに真空予圧空気静圧軸受等を設けて、粗動ステージWCSに対して浮上支持しても良い。また、微動ステージ駆動系52は、上述したムービングマグネット型のものに限らず、ムービングコイル型のものであっても良い。さらに微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに接触支持されていても良い。従って、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに対して駆動する微動ステージ駆動系52としては、例えばロータリモータとボールねじ(又は送りねじ)とを組み合わせたものであっても良い。
【0133】
また、上記実施形態及び変形例では、微動ステージ位置計測系70が、全体が例えばガラスによって形成され、内部を光が進行可能な計測アーム71を備える場合を説明したが、これに限らず、計測アームは、少なくとも前述の各レーザビームが進行する部分が、光を透過可能な中実な部材によって形成されていれば良く、その他の部分は、例えば光を透過させない部材であっても良いし、中空構造であっても良い。
【0134】
また、例えば計測アーム71としては、グレーティングRGに対向する部分から計測ビームを照射できれば、例えば計測アーム71の先端部に光源や光検出器等を内蔵していても良い。この場合、計測アームの内部にエンコーダの計測ビームを進行させる必要は無い。さらに、計測アームは、その形状は特に問わない。また、微動ステージ位置計測系は、必ずしも、計測アームを備えている必要はなく、粗動ステージWCSの空間部内にグレーティングRGに対向して配置され、該グレーティングRGに少なくとも1本の計測ビームを照射し、該計測ビームのグレーティングRGからの回折光を受光するヘッドを有し、該ヘッドの出力に基づいて微動ステージWFSの少なくともXY平面内の位置情報を計測できれば足りる。
【0135】
また、上記実施形態では、エンコーダシステム73が、Xヘッド77xと一対のYヘッド77ya、77ybを備える場合について例示したが、これに限らず、例えばX軸方向及びY軸方向の2方向を計測方向とする2次元ヘッド(2Dヘッド)を、1つ又は2つ設けても良い。2Dヘッドを2つ設ける場合には、それらの検出点がグレーティングRG上で露光位置を中心として、X軸方向に同一距離離れた2点になるようにしても良い。
【0136】
なお、上記実施形態では、微動ステージWFSの上面、すなわちウエハWに対向する面にグレーティングRGが配置されているものとしたが、これに限らず、例えば図20に示されるように、グレーティングRGは、ウエハWを保持するウエハホルダWHの下面に形成されていても良い。この場合、露光中にウエハホルダWHが膨張したり、微動ステージWFSに対する装着位置がずれたりした場合であっても、これに追従してウエハホルダWH(ウエハW)の位置を計測することができる。また、グレーティングは、微動ステージの下面に配置されていても良く、この場合、エンコーダヘッドから照射される計測ビームが微動ステージの内部を進行しないので、微動ステージを光が透過可能な中実部材とする必要がなく、微動ステージを中空構造にして内部に配管、配線等を配置することができ、微動ステージを軽量化できる。
【0137】
なお、上記実施形態では、露光装置100が液浸型の露光装置である場合について説明したが、これに限られるものではなく、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置にも本発明は好適に適用することができる。
【0138】
なお、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計を用いてこのステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができ、エンコーダの計測値に基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、結果的に高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明は適用することができる。
【0139】
また、上記実施形態の露光装置100における投影光学系PLは縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0140】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0141】
また、上記実施形態では、露光装置100の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に本発明を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0142】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、このステージの位置をエンコーダシステム及びレーザ干渉計システムを用いて計測することで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0143】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0144】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0145】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0146】
露光装置100の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0147】
なお、本発明の移動体装置は、露光装置に限らず、その他の基板の処理装置(例えば、レーザリペア装置、基板検査装置その他)、あるいはその他の精密機械における試料の位置決め装置、ワイヤーボンディング装置等の移動ステージを備えた装置にも広く適用できる。
【0148】
次に、本発明の実施形態による露光装置100及び露光方法をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。図21は、マイクロデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。
【0149】
まず、ステップS10(設計ステップ)において、マイクロデバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS11(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクル)を製作する。一方、ステップS12(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0150】
次に、ステップS13(ウエハ処理ステップ)において、ステップS10〜ステップS12で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS14(デバイス組立ステップ)において、ステップS13で処理されたウエハを用いてデバイス組立を行う。このステップS14には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS15(検査ステップ)において、ステップS14で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
【0151】
図22は、半導体デバイスの場合におけるステップS13の詳細工程の一例を示す図である。
ステップS21(酸化ステップ)おいては、ウエハの表面を酸化させる。ステップS22(CVDステップ)においては、ウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップS23(電極形成ステップ)においては、ウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップS24(イオン打込みステップ)においては、ウエハにイオンを打ち込む。以上のステップS21〜ステップS24のそれぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0152】
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS25(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップS26(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置)及び露光方法によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップS27(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップS28(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS29(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【産業上の利用可能性】
【0153】
以上説明したように、本発明の移動体装置は、所定平面内で移動体を駆動するのに適している。また、本発明の露光装置及び露光方法は、エネルギビームを物体上に照射して物体上にパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、電子デバイスを製造するのに適している。
【符号の説明】
【0154】
100、1000…露光装置、 MST…計測ステージ(液体保持部材)、 WCS…X粗動ステージ(第2移動体)、 WFS…微動ステージ(保持部材)、 XG1…Xガイド(ガイド部材)、 YC…Y粗動ステージ(第1移動体)、YM1…Yモータ(第1駆動装置)、 YM2…Yモータ(第2駆動装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及びデバイス製造方法に関するものである。
本願は、2009年12月2日に出願された米国特許仮出願61/282,013号、及び2010年12月1日に出願された米国出願第12/957,769号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子(集積回路等)、液晶表示素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、主として、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、あるいはステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置で用いられる、露光対象となるウエハ又はガラスプレート等の基板は、次第に(例えばウエハの場合、10年おきに)大型化している。現在は、直径300mmの300mmウエハが主流となっているが、今や直径450mmの450mmウエハ時代の到来が間近に迫っている。450mmウエハに移行すると、1枚のウエハから採れるダイ(チップ)の数が現行の300mmウエハの2倍以上となり、コスト削減に貢献する。加えて、エネルギ、水、その他のリソースの効率的な利用により、1チップにかかるすべてのリソース使用を減少させられるものと期待されている。
【0004】
半導体素子は、次第に微細化しており、このため、露光装置には、高解像力も要請されている。解像力向上のための手段として、露光光の波長の短波長化と投影光学系の開口数の増大化(高NA化)とがある。投影光学系の実質的な開口数を最大限に大きくするため、投影光学系と液体とを介してウエハを露光する液浸露光が有効である。
【0005】
一方、ウエハのサイズが450mmにもなると、1枚のウエハから採れるダイ(チップ)の数が多くなる分、1枚のウエハの露光処理に要する時間が増加してスループットが低下する蓋然性が高い。そこで、スループットを極力向上させる必要があり、その方法として、1つのウエハステージ上のウエハに対する露光処理と、別のウエハステージ上でのウエハ交換、アライメントなどの処理とを、並行して行う、ツインステージ方式の採用が考えられる。
【0006】
すなわち、解像力の向上とスループットの向上とを同時に実現するために、ツインステージ方式を採用した局所液浸型の露光装置の採用することが考えられる。かかる露光装置の従来例としては、例えば特許文献1に開示される露光装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0088843号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示される局所液浸型の露光装置では、スループットを最大限に高くするため、投影光学系下方に形成される液浸空間を常時維持する必要があり,このためには、投影光学系の直下に、常に何らかの部材が交換的に配置される必要がある。そして、この部材の交換的配置が、装置のスループットの向上に寄与することが望ましい。
また、この交換部材のために別途駆動装置を設けた場合、装置の大型化及びコスト増を招く虞がある。
このことは、ツインステージ方式の露光装置に限られるものではなく、1基のステージを用いる露光装置においても同様に生じる。
【0009】
本発明は、スループットの向上及びコスト増の抑制に寄与できる露光装置、及びデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様にかかる露光装置は、エネルギビームにより光学系と液体とを介して物体を露光する露光装置であって、第1方向に延在するガイド部材を有し、第1駆動装置の駆動により前記第1方向と略直交する第2方向に移動する第1移動体と、前記ガイド部材に沿って前記第1方向に独立して移動自在に設けられ、前記第1移動体の移動により前記ガイド部材とともに前記第2方向に移動する一対の第2移動体と、物体を保持するとともに、前記一対の第2移動体により、少なくとも前記第1方向、前記第2方向を含むとともに前記光学系の直下の第1位置を含む二次元平面内で移動自在に支持される保持部材と、前記一対の第2移動体に対して前記第2方向に沿って隣接して配置され、前記第1駆動装置の少なくとも一部を共用する第2駆動装置の駆動により、前記一対の第2移動体に支持された前記保持部材と、前記第2方向側の端部で近接又は接触した状態を維持して前記第2方向に平行な方向に移動して、前記保持部材上の物体と前記光学系との間に液体が保持される第1の状態から、前記光学系との間で液体を保持する第2の状態に遷移させる液体保持部材と、を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の別の一態様にかかるデバイス製造方法は、本発明の露光装置を用いて物体を露光することと、前記露光された物体を現像することと、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の態様では、装置の大型化及びコスト増を抑制しつつ、局所液浸型の露光装置のスループットを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態の露光装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の露光装置が備えるステージ装置の概観斜視図である。
【図3】図2のステージ装置の分解斜視図である。
【図4A】図1の露光装置が備えるステージ装置を示す−Y方向から見た側面図である。
【図4B】ステージ装置を示す平面図である。
【図5】図1の露光装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図6】微動ステージ駆動系を構成する磁石ユニット及びコイルユニットの配置を示す平面図である。
【図7A】微動ステージを粗動ステージに対してZ軸回りに回転させる際の動作を説明するための図である。
【図7B】微動ステージを粗動ステージに対してY軸回りに回転させる際の動作を説明するための図である。
【図7C】微動ステージを粗動ステージに対してX軸回りに回転させる際の動作を説明するための図である。
【図8】微動ステージの中央部を+Z方向に撓ませる際の動作を説明するための図である。
【図9A】計測アームの先端部を示す斜視図である。
【図9B】計測アームの先端部の上面を+Z方向から見た平面図である。
【図10A】Xヘッドの概略構成を示す図である。
【図10B】Xヘッド、Yヘッドそれぞれの計測アーム内での配置を説明するための図である。
【図11A】スキャン露光時のウエハの駆動方法を説明するための図である。
【図11B】ステッピング時のウエハの駆動方法を説明するための図である。
【図12】微動ステージと計測ステージとの間で行われる液浸空間(液体Lq)の受け渡しについて説明するための図である。
【図13】微動ステージと計測ステージとの間で行われる液浸空間(液体Lq)の受け渡しについて説明するための図である。
【図14】微動ステージと計測ステージとの間で行われる液浸空間(液体Lq)の受け渡しについて説明するための図である。
【図15A】微動ステージと計測ステージとのY方向における相対位置測定を説明するための図である。
【図15B】微動ステージと計測ステージとのY方向における相対位置測定を説明するための図である。
【図16】変形例に係る露光装置を示す図である。
【図17】露光装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図18】2つのステージユニットを有するステージ装置の概観斜視図である。
【図19】液体保持部材の別形態を示す図である。
【図20】変形例に係るグレーティングの配置を示す図である。
【図21】本発明のマイクロデバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図22】図21におけるステップS13の詳細工程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の露光装置及びデバイス製造方法の実施の形態を、図1ないし図22を参照して説明する。
【0015】
図1には、一実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
【0016】
露光装置100は、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU、局所液浸装置8、微動ステージWFS及び計測ステージMSTを有するステージ装置50、及びこれらの制御系等を備えている。図1において、微動ステージWFS上には、ウエハWが載置されている。
【0017】
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
【0018】
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図5参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
【0019】
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)13によって、レチクルステージRSTに固定された移動鏡15を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計13の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図5参照)に送られる。
【0020】
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された複数の光学素子から成る投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する屈折光学系が用いられている。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTと微動ステージWFSとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
【0021】
局所液浸装置8は、液体供給装置5、液体回収装置6(いずれも図1では不図示、図5参照)、及びノズルユニット32等を含む。ノズルユニット32は、図1に示されるように、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子、ここではレンズ(以下、「先端レンズ」ともいう)191を保持する鏡筒40の下端部周囲を取り囲むように不図示の支持部材を介して、投影ユニットPU等を支持するメインフレームBDに吊り下げ支持されている。本実施形態では、主制御装置20が液体供給装置5(図5参照)を制御して、ノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間に液体を供給するとともに、液体回収装置6(図5参照)を制御して、ノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間から液体を回収する。このとき、主制御装置20は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5と液体回収装置6を制御する。従って、先端レンズ191とウエハWとの間には、一定量の液体Lq(図1参照)が常に入れ替わって保持される。本実施形態では、上記の液体Lqとして、ArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する純水を用いるものとする。
【0022】
ステージ装置50は、図1に示されるように、床面上に防振機構(図示省略)によってほぼ水平に支持されたベース盤12、ウエハWを保持してベース盤12上で移動するウエハステージWST、ウエハステージWSTを駆動するウエハステージ駆動系53(図5参照)、ベース盤12上で移動する計測ステージ(液体保持部材)MST、計測ステージMSTを駆動する計測ステージ駆動系54(図5参照)及び各種計測系(16、70(図5参照)等)等を備えている。
【0023】
ベース盤12は、平板状の外形を有する部材から成り、その上面は平坦度が非常に高く仕上げられ、ウエハステージWSTの移動の際のガイド面とされている。
【0024】
図2に示すように、ステージ装置50は、Yモータ(第1駆動装置)YM1の駆動により移動するY粗動ステージ(第1移動体)YCと、XモータXM1の駆動により独立して移動する一対のX粗動ステージ(第2移動体)WCSと、ウエハWを保持してX粗動ステージWCSに移動自在に支持される微動ステージ(保持部材)WFSと、Yモータ(第2駆動装置)YM2の駆動によりY方向に移動するとともに、XモータXM2の駆動によりX方向に移動する計測ステージMSTと、を備えている。これらY粗動ステージYCとX粗動ステージWCSとによりステージユニットSUが構成される。YモータYM1とXモータXM1とを含んで粗動ステージ駆動系51(図5参照)が構成される。また、YモータYM2とXモータXM2とを含んで計測ステージ駆動系54(図5参照)が構成される。
【0025】
一対のX粗動ステージWCS及び微動ステージWFSにより上述したウエハステージWSTが構成される。微動ステージWFSは、微動ステージ駆動系52(図5参照)によってX粗動ステージWCS対して6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)にそれぞれ駆動される。本実施形態では、粗動ステージ駆動系51と微動ステージ駆動系52とを含んで、ウエハステージ駆動系53が構成されている。
【0026】
X粗動ステージWCSに微動ステージWFSが支持されたとき、その微動ステージWFSと粗動ステージWCSとのX、Y、θzの3自由度方向に関する相対位置情報は、粗動ステージWCSと微動ステージWFSとの間に設けられた相対位置計測器22(図5参照)によって計測可能である。
【0027】
相対位置計測器22としては、例えば微動ステージWFSに設けられたグレーティングを計測対象とする、X粗動ステージWCSにそれぞれ設けられた少なくとも2つのヘッドを含み、該ヘッドの出力に基づいて、微動ステージWFSのX軸方向、Y軸方向及びθz方向の位置を計測するエンコーダなどを用いることができる。相対位置計測器22の計測結果は、主制御装置20(図5参照)に供給される。
【0028】
ウエハステージ位置計測系16、微動ステージ位置計測系70、およびステージ装置50の各部の構成等については、後に詳述する。
【0029】
露光装置100では、投影ユニットPUの中心から+Y側に所定距離隔てた位置にウエハアライメント系ALG(図1では不図示、図5参照)が配置されている。ウエハアライメント系ALGとしては、例えば画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられる。ウエハアライメント系ALGは、主制御装置20により、ウエハアライメント(例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA))の際に、後述する微動ステージWFS上の計測プレートに形成された第2基準マーク、又はウエハW上のアライメントマークの検出に用いられる。ウエハアライメント系ALGの撮像信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される。主制御装置20は、ウエハアライメント系ALGの検出結果(撮像結果)と、検出時の微動ステージWFS(ウエハW)の位置情報とに基づいて、対象マークのアライメント時座標系におけるX,Y座標を算出する。
【0030】
この他、本実施形態における露光装置100には、投影ユニットPUの近傍に、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系(以下、多点AF系と略述する)AF(図1では不図示、図5参照)が設けられている。多点AF系AFの検出信号は、不図示のAF信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図5参照)。主制御装置20は、多点AF系AFの検出信号に基づいて、多点AF系AFの複数の検出点それぞれにおけるウエハW表面のZ軸方向の位置情報(面位置情報)を検出し、その検出結果に基づいて走査露光中のウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行する。なお、ウエハアライメント系ALGの近傍に多点AF系を設けて、ウエハアライメント(EGA)時にウエハW表面の面位置情報(凹凸情報)を事前に取得し、露光時には、その面位置情報と、後述する微動ステージ位置計測系70の一部を構成するレーザ干渉計システム75(図5参照)の計測値とを用いて、ウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行することとしても良い。
【0031】
また、レチクルステージRSTの上方には、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに詳細に開示されるように、露光波長の光(本実施形態では照明光IL)をアライメント用照明光とする画像処理方式の一対のレチクルアライメント系RA1,RA2(図1においてはレチクルアライメント系RA2は、レチクルアライメント系RA1の紙面奥側に隠れている。)が配置されている。レチクルアライメント系RA1,RA2の検出信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図5参照)。
【0032】
図5には、露光装置100の制御系の主要な構成が示されている。制御系は、主制御装置20を中心として構成されている。主制御装置20は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、前述の局所液浸装置8、粗動ステージ駆動系51、微動ステージ駆動系52など、露光装置100の構成各部を統括制御する。
【0033】
この他、本実施形態の露光装置100では、レチクルステージRSTの上方には、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに詳細に開示されるように、CCD等の撮像素子を有し、露光波長の光(本実施形態では照明光IL)をアライメント用照明光とする画像処理方式の一対のレチクルアライメント系RA1,RA2(図1においてはレチクルアライメント系RA2は、レチクルアライメント系RA1の紙面奥側に隠れている。)が配置されている。一対のレチクルアライメント系RA1,RA2は、投影光学系PLの直下に微動ステージWFS上の後述する計測プレートが位置する状態で、主制御装置20により、レチクルRに形成された一対のレチクルアライメントマーク(図示省略)の投影像と対応する計測プレート上の一対の第1基準マークとを投影光学系PLを介して検出することで、投影光学系PLによるレチクルRのパターンの投影領域の中心と計測プレート上の基準位置、すなわち一対の第1基準マークの中心との位置関係を検出するために用いられる。レチクルアライメント系RA1,RA2の検出信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図5参照)。
【0034】
続いて、ステージ装置50の各部の構成等について図2および図3を用いて詳述する。
YモータYM1は、ベース盤12のX方向の両側縁にY方向に延在して設けられた固定子150と、Y粗動ステージYCのX方向の両端に設けられた可動子151Aとから構成されている。YモータYM2は、上記固定子150と、Y粗動ステージYC2のX方向の両端に設けられた可動子151Bとから構成されている。すなわち、YモータYM1、YM2では、固定子150を共用する構成となっている。固定子150は、Y方向に沿って配列された永久磁石を備えており、可動子151A、151BはY方向に沿って配列されたコイルを備えている。即ち、YモータYM1、YM2は、ウエハステージWST、計測ステージMST及びY粗動ステージYCをY方向に駆動するムービングコイル型のリニアモータを構成している。尚、ここではムービングコイル型のリニアモータを例に挙げて説明するが、ムービングマグネット型のリニアモータであってもよい。
【0035】
また、固定子150は、それぞれの下面に設けられた不図示の気体静圧軸受、例えばエアベアリングによってベース盤12の上方において所定のクリアランスを介して浮上支持されている。これにより、ウエハステージWST、計測ステージMSTやY粗動ステージYCのY方向の移動により発生した反力により、固定子150がY方向のYカウンタマスとして逆方向に移動して、この反力を運動量保存の法則により相殺する。
【0036】
可動子151B、151B間には、X方向に延びるXガイド(ガイド部材)XG2が設けられており、計測ステージMSTは、XモータXM2の駆動によりXガイドXG2に沿って移動する。計測ステージMSTは、ベース盤12上に配置された計測ステージ本体46と、計測ステージ本体46上に搭載された計測テーブルMTBとを備えている。計測テーブルMTBは、例えばショット日本株式会社製のゼロデュア(登録商標)等の低熱膨張材料から形成されており、その上面は撥液性(撥水性)を有している。この計測テーブルMTBは、例えば真空吸着によって計測ステージ本体46上に保持されており、交換可能に構成されている。
【0037】
また、計測ステージMSTは、ウエハステージWSTに対して+Y側に隣接して配置されるとともに、−Y側の上端部に他の部分より突出した突出部19を有している(図1及び図2等参照)。突出19を含む部計測テーブルMTBの表面の高さは、微動ステージWFSの表面の高さとほぼ同一となるように設定されている。
【0038】
計測ステージMSTの位置情報は、主制御装置20により、計測ステージ位置計測系17(図1、図5参照)を用いて計測される。計測ステージ位置計測系17は、図1に示されるように、計測ステージMST側面の反射面に測長ビームを照射して計測ステージMSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)を計測するレーザ干渉計を含んでいる。
【0039】
また、計測ステージMSTは、露光に関する各種計測を行うための計測器群を備えている。この計測器群としては、例えば空間像計測装置、波面収差測定装置、及び露光検出装置等がある。空間像計測装置は、投影光学系PLにより水を介して計測テーブルMTB上に投影される空間像を計測するものである。また、上記の波面収差測定装置としては、例えば国際公開第99/60361号パンフレット(対応する欧州特許第1,079,223号明細書)等に開示される波面収差測定装置を用いることができる。
【0040】
また、上記の露光検出装置としては、投影光学系PLを介して計測テーブルMTB上に照射される露光光の露光エネルギーに関する情報(光量、照度、照度むら等)を検出する検出装置であり、例えば特開昭57−117238号公報(対応する米国特許第4,465,368号)等に開示される照度むら計測器、及び、例えば特開平11−16816号公報(対応する米国特許出願公開第2002/0061469号明細書)等に開示される照度モニタを用いることができる。尚、図2においては、以上説明した空間像計測装置、波面収差測定装置、及び露光検出装置を計測器群63として示している。
さらに、計測テーブルMTB上面の所定位置には、これらの計測器群又はアライメントで用いられる各種のマークが形成された基準板253が設けられている。この基準板253は、低熱膨張材料から形成されているとともに、上面が撥液性(撥水性)を有しており、計測テーブルMTBに対して交換可能に構成されている。
【0041】
Y粗動ステージYCは、可動子151A、151A間に設けられX方向に延びるXガイド(ガイド部材)XG1を有しており、その底面に設けられた複数の非接触軸受、例えばエアベアリング94によりベース盤12の上に浮上支持される。
【0042】
XガイドXG1には、XモータXM1を構成する固定子152が設けられている。XモータXM1の可動子153は、図3に示すように、X粗動ステージWCSをX方向に貫通し、XガイドXG1が挿通される貫通孔154に設けられている。
【0043】
一対のX粗動ステージWCSは、その底面に設けられた複数の非接触軸受、例えばエアベアリング95によりそれぞれベース盤12の上に浮上支持され、XモータXM1の駆動によりXガイドXG1に沿って互いに独立してX方向に移動する。Y粗動ステージYCには、XガイドXG1の他に、X粗動ステージWCSをY方向に駆動するYリニアモータYM1の固定子が配設されたXガイドXGYが設けられている。そして、X粗動ステージWCSには、当該X粗動ステージWCSをX方向に貫通する貫通孔155(図3参照)にYリニアモータの可動子156が設けられている。なお、Yリニアモータを設けずに、エアベアリングを設けることにより、X粗動ステージWCSをY方向に支持する構成としてもよい。
【0044】
図4Aはステージ装置50を−Y方向から見た側面図、図4Bはステージ装置50の平面図である。図4A及び図4Bに示すように、X粗動ステージWCSのX方向外側端部には、一対の側壁部92a、92bと、側壁部92a、92bそれぞれの上面に固定された一対の固定子部93a、93bとを備えている。粗動ステージWCSは、全体として、上面のX軸方向中央部及びY軸方向の両側面が開口した高さの低い箱形の形状を有している。すなわち、粗動ステージWCSには、その内部にY軸方向に貫通した空間部が形成されている。
【0045】
一対の固定子部93a、93bそれぞれは、外形が板状の部材から成り、その内部に微動ステージWFSを駆動するためのコイルユニットCUa、CUbが収容されている。コイルユニットCUa、CUbを構成する各コイルに供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される。コイルユニットCUa、CUbの構成については、さらに後述する。
【0046】
固定子部93aは、+X側の端部が側壁部92a上面に固定され、固定子部93bは、−X側の端部が側壁部92b上面に固定されている。
【0047】
微動ステージWFSは、図4A及び図4Bに示されるように、平面視でX軸方向を長手方向とする八角形板状の部材から成る本体部81と、本体部81の長手方向の一端部と他端部にそれぞれ固定された一対の可動子部82a、82bと、を備えている。
【0048】
本体部81は、その内部を後述するエンコーダシステムの計測ビーム(計測光)が進行可能とする必要があることから、光が透過可能な透明な素材で形成されている。また、本体部81は、その内部における計測ビームに対する空気揺らぎの影響を低減するため、中実に形成されている(内部に空間を有しない)。なお、透明な素材は、低熱膨張率であることが好ましく、本実施形態では一例として合成石英(ガラス)などが用いられる。なお、本体部81は、その全体が透明な素材で構成されていても良いが、エンコーダシステムの計測ビームが透過する部分のみが透明な素材で構成されていても良く、この計測ビームが透過する部分のみが中実に形成されていても良い。
【0049】
微動ステージWFSの本体部81の上面中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。なお、ウエハホルダは、微動ステージWFSと一体に形成されていても良いし、本体部81に対して、例えば静電チャック機構あるいはクランプ機構等を介して、又は接着等により固定されていても良い。
【0050】
さらに、本体部81の上面には、ウエハホルダ(ウエハWの載置領域)の外側に、図4A及び図4Bに示されるように、ウエハW(ウエハホルダ)よりも一回り大きな円形の開口が中央に形成され、かつ本体部81に対応する八角形状の外形(輪郭)を有するプレート(撥液板)83が取り付けられている。プレート83の表面は、液体Lqに対して撥液化処理されている(撥液面が形成されている)。プレート83は、その表面の全部(あるいは一部)がウエハWの表面と同一面となるように本体部81の上面に固定されている。また、プレート83には、図4Bに示されるように、一端部に円形の開口が形成され、この開口内にその表面がプレート83の表面と、すなわちウエハWの表面とほぼ同一面となる状態で計測プレート86が埋め込まれている。計測プレート86の表面には、前述した一対の第1基準マークと、ウエハアライメント系ALGにより検出される第2基準マークとが少なくとも形成されている(第1及び第2基準マークはいずれも図示省略)。
【0051】
図4Aに示されるように、本体部81の上面のウエハWよりも一回り大きい領域には、計測面としての2次元グレーティング(以下、単にグレーティングと呼ぶ)RGが水平(ウエハW表面と平行)に配置されている。グレーティングRGは、X軸方向を周期方向とする反射型の回折格子(X回折格子)と、Y軸方向を周期方向とする反射型回折格子(Y回折格子)と、を含む。
【0052】
グレーティングRGの上面は、保護部材、例えばカバーガラス84(図10A)によって覆われている。本実施形態では、カバーガラス84の上面に、ウエハホルダを吸着保持する前述の静電チャック機構が設けられている。なお、本実施形態では、カバーガラス84は、本体部81の上面のほぼ全面を覆うように設けられているが、グレーティングRGを含む本体部81の上面の一部のみを覆うように設けても良い。また、保護部材(カバーガラス84)は、本体部81と同一の素材によって形成しても良いが、これに限らず、保護部材を、例えば金属、セラミックスで形成しても良いし、あるいは薄膜などで構成しても良い。
【0053】
本体部81は、図4Aからもわかるように、長手方向の両端部に外側に突出した張り出し部が形成された全体として八角形板状部材から成り、その底面の、グレーティングRGに対向する部分に凹部が形成されている。本体部81は、グレーティングRGが配置された中央の領域は、その厚さが実質的に均一な板状に形成されている。
【0054】
可動子部82aは、図4A及び図4Bに示されるように、Y軸方向寸法(長さ)及びX軸方向寸法(幅)が、共に固定子部93aよりも短い(半分程度の)2枚の平面視矩形状の板状部材82a1、82a2を含む。板状部材82a1、82a2は、本体部81の+X側の端部に対し、Z軸方向(上下)に所定の距離だけ離間した状態でともにXY平面に平行に固定されている。2枚の板状部材82a1、82a2の間には、固定子部93aの−X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82a1、82a2の内部には、後述する磁石ユニットMUa1、MUa2が、収容されている。
【0055】
可動子部82bは、Z軸方向(上下)に所定の間隔が維持された2枚の板状部材82b1、82b2を含み、可動子部82aと左右対称ではあるが同様に構成されている。2枚の板状部材82b1、82b2の間には、固定子部93bの+X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82b1、82b2の内部には、磁石ユニットMUa1、MUa2と同様に構成された磁石ユニットMUb1、MUb2が、収容されている。
【0056】
ここで、前述したように、粗動ステージWCSは、Y軸方向の両側面が開口しているので、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに装着する際には、板状部材82a1、82a2、及び82b1、82b2間に固定子部93a、93bがそれぞれ位置するように、微動ステージのWFSのZ軸方向の位置決めを行い、この後に微動ステージWFSをY軸方向に移動(スライド)させれば良い。
【0057】
微動ステージ駆動系52は、前述した可動子部82aが有する一対の磁石ユニットMUa1、MUa2と、固定子部93aが有するコイルユニットCUaと、前述した可動子部82bが有する一対の磁石ユニットMUb1、MUb2と、固定子部93bが有するコイルユニットCUbと、を含む。
【0058】
これをさらに詳述する。図6からわかるように、固定子部93aの内部には、複数(ここでは、12個)の平面視長方形状のYZコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)55、57が、Y軸方向に等間隔でそれぞれ配置され、2列のコイル列を構成している。コイル列はX軸方向に所定間隔で配置されている。YZコイル55は、上下方向(Z軸方向)に重ねて配置された平面視矩形状の上部巻線と下部巻線(不図示)とを有する。また、固定子部93aの内部であって、上述した2列のコイル列の間には、Y軸方向を長手方向とする細長い平面視長方形状の一つのXコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)56が、配置されている。この場合、2列のコイル列と、Xコイル56とは、X軸方向に関して等間隔で配置されている。2列のコイル列と、Xコイル56とを含んで、コイルユニットCUaが構成されている。
【0059】
なお、以下では、図6を用いて、コイルユニットCUa及び磁石ユニットMUa1,MUa2をそれぞれ有する一方の固定子部93a及び可動子部82aについて説明するが、他方の固定子部93b及び可動子部82bは、これらと同様に構成され、同様に機能する。
【0060】
可動子部82aの一部を構成する+Z側の板状部材82a1の内部には、図6を参照するとわかるように、X軸方向を長手方向とする平面視長方形の複数(ここでは10個)の永久磁石65a、67aがY軸方向に等間隔で配置され、2列の磁石列を構成している。磁石列はX軸方向に所定間隔を隔てて配置されるとともに、コイル55、57に対向して配置されている。また、板状部材82a1の内部であって、上述の2列の磁石列の間には、X軸方向に離間して配置されたY軸方向を長手方向とする一対(2つ)の永久磁石66a1、66a2が、コイル56に対向して配置されている。
【0061】
複数の永久磁石65aは、交互に極性が逆極性となるような配置で配列されている。複数の永久磁石67aから成る磁石列は、複数の永久磁石65aから成る磁石列と同様に構成されている。また、永久磁石66a1、66a2は、互いに逆極性となるように配置されている。複数の永久磁石65a、67a及び66a1、66a2によって、磁石ユニットMUa1が構成されている。
【0062】
−Z側の板状部材82a2の内部にも、上述した板状部材82a1の内部と同様の配置で、永久磁石が配置され、これらの永久磁石によって、磁石ユニットMUa2が構成されている。
【0063】
ここで、Y軸方向に隣接して配置された複数の永久磁石65aは、隣接する2つの永久磁石(便宜上第1、第2の永久磁石とする)65aそれぞれが、YZコイル(便宜上第1のYZコイルと呼ぶ)55の巻線部に対向したとき、第2の永久磁石65aに隣接する第3の永久磁石65aが、上述の第1のYZコイル55に隣接する第2のYZコイル55の巻線部に対向しないように(コイル中央の中空部、又はコイルが巻き付けられたコア、例えば鉄芯に対向するように)、複数の永久磁石65及び複数のYZコイル55のY軸方向に関する位置関係(それぞれの間隔)が設定されている。この場合、第3の永久磁石65aに隣接する第4の永久磁石65a及び第5の永久磁石65aそれぞれは、第2のYZコイル55に隣接する第3のYZコイル55の巻線部に対向する。永久磁石67a、及び−Z側の板状部材82a2の内部の2列の永久磁石列のY軸方向に関する間隔も、同様になっている。
【0064】
本実施形態では、上述のような各コイルと永久磁石との配置が採用されているので、主制御装置20は、Y軸方向に配列された複数のYZコイル55、57に対して、一つおきに電流を供給することによって、微動ステージWFSをY軸方向に駆動することができる。また、これと併せて、主制御装置20は、YZコイル55、57のうち、微動ステージWFSのY軸方向への駆動に使用していないコイルに電流を供給することによって、Y軸方向への駆動力とは別に、Z軸方向への駆動力を発生させ、微動ステージWFSを粗動ステージWCSから浮上させることができる。そして、主制御装置20は、微動ステージWFSのY軸方向の位置に応じて、電流供給対象のコイルを順次切り替えることによって、微動ステージWFSの粗動ステージWCSに対する浮上状態、すなわち非接触状態を維持しつつ、微動ステージWFSをY軸方向に駆動する。また、主制御装置20は、微動ステージWFSを粗動ステージWCSから浮上させた状態で、Y軸方向に駆動するとともに、これと独立にX軸方向にも駆動可能である。
【0065】
また、主制御装置20は、例えば図7Aに示されるように、可動子部82aと可動子部82bとに、互いに異なる大きさのY軸方向の駆動力(推力)を作用させることによって(図7Aの黒塗り矢印参照)、微動ステージWFSをZ軸回りに回転(θz回転)させることができる(図7Aの白抜き矢印参照)。なお、図7Aとは反対に、+X側の可動子部82aに作用させる駆動力を−X側よりも大きくすることで、微動ステージWFSをZ軸に対して左回りに回転させることができる。
【0066】
また、主制御装置20は、図7Bに示されるように、可動子部82aと可動子部82bとに、互いに異なる浮上力(図7Bの黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFSをY軸回りに回転(θy駆動(θy回転))させること(図7Bの白抜き矢印参照)ができる。なお、図7Bとは反対に、可動子部82aに作用させる浮上力を可動子部82b側よりも大きくすることで、微動ステージWFSをY軸に対して左回りに回転させることができる。
【0067】
さらに、主制御装置20は、例えば図7Cに示されるように、可動子部82a、82bそれぞれにおいて、Y軸方向の+側と−側とに、互いに異なる浮上力(図7Cの黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFSをX軸回りに回転(θx駆動(θx回転))させること(図7Cの白抜き矢印参照)ができる。なお、図7Cとは反対に、可動子部82a(及び82b)の−Y側の部分に作用させる浮上力を+Y側の部分に作用させる浮上力よりも小さくすることで、微動ステージWFSをX軸に対して左回りに回転させることができる。
【0068】
以上の説明からわかるように、本実施形態では、微動ステージ駆動系52により、微動ステージWFSを、粗動ステージWCSに対して非接触状態で浮上支持するとともに、粗動ステージWCSに対して、非接触で6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)へ駆動することができるようになっている。
【0069】
また、本実施形態では、主制御装置20は、微動ステージWFSに浮上力を作用させる際、固定子部93a内に配置された2列のコイル55、57(図6参照)に互いに反対方向の電流を供給することによって、例えば図8に示されるように、可動子部82aに対して、浮上力(図8の黒塗り矢印参照)と同時にY軸回りの回転力(図8の白抜き矢印参照)を作用させることができる。同様に、主制御装置20は、微動ステージWFSに浮上力を作用させる際、固定子部93b内に配置された2列のコイル55、57に互いに反対方向の電流を供給することによって、可動子部82bに対して、浮上力と同時にY軸回りの回転力を作用させることができる。
【0070】
また、主制御装置20は、一対の可動子部82a、82bそれぞれに、互いに反対の方向のY軸回りの回転力(θy方向の力)を作用させることによって、微動ステージWFSのX軸方向に関する中央部を+Z方向又は−Z方向に撓ませることができる(図8のハッチング付き矢印参照)。従って、図8に示されるように、微動ステージWFSのX軸方向に関する中央部を+Z方向に(凸状に)撓ませることによって、ウエハW及び本体部81の自重に起因する微動ステージWFS(本体部81)のX軸方向の中間部分の撓みを打ち消して、ウエハW表面のXY平面(水平面)に対する平行度を確保できる。これにより、ウエハWが大径化して微動ステージWFSが大型化した時などに、特に効果を発揮できる。
【0071】
本実施形態の露光装置100では、ウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時には、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報(θz方向の位置情報を含む)は、主制御装置20により、後述する微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73(図5参照)を用いて計測される。微動ステージWFSの位置情報は、主制御装置20に送られ、主制御装置20は、この位置情報に基づいて微動ステージWFSの位置を制御する。
【0072】
これに対し、ウエハステージWSTが微動ステージ位置計測系70の計測領域外にあるときには、ウエハステージWSTの位置情報は、主制御装置20により、ウエハステージ位置計測系16(図5参照)を用いて計測される。ウエハステージ位置計測系16は、図1に示されるように、粗動ステージWCS側面の反射面に測長ビームを照射してウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)を計測するレーザ干渉計を含んでいる。なお、ウエハステージWSTのXY平面内での位置情報は、上述のウエハステージ位置計測系16に代えて、その他の計測装置、例えばエンコーダシステムによって計測しても良い。
【0073】
微動ステージ位置計測系70は、図1に示されるように、ウエハステージWSTが投影光学系PLの下方に配置された状態で、計測ステージMSTに形成された開口18(図1、図2参照)を介して粗動ステージWCSの内部の空間部内に挿入される計測アーム71を備えている。開口18は、計測アーム71が挿通されている状態であっても、計測ステージMSTがX方向に十分なストロークで移動できる大きさで形成されている。
計測アーム71は、メインフレームBDに支持部72を介して片持ち支持(一端部近傍が支持)されている。
【0074】
計測アーム71は、Y軸方向を長手方向とする、幅方向(X軸方向)よりも高さ方向(Z軸方向)の寸法が大きい縦長の長方形断面を有する四角柱状(すなわち直方体状)の部材であり、光を透過する同一の素材、例えばガラス部材が複数貼り合わされて形成されている。計測アーム71は、後述するエンコーダヘッド(光学系)が収容される部分を除き、中実に形成されている。計測アーム71は、前述したようにウエハステージWSTが投影光学系PLの下方に配置された状態では、先端部が粗動ステージWCSの空間部内に挿入され、図1に示されるように、その上面が微動ステージWFSの下面(より正確には、本体部81(図1では不図示、図4A等参照)の下面)に対向している。計測アーム71の上面は、微動ステージWFSの下面との間に所定のクリアランス、例えば数mm程度のクリアランスが形成された状態で、微動ステージWFSの下面とほぼ平行に配置される。
【0075】
微動ステージ位置計測系70は、図5に示されるように、エンコーダシステム73と、レーザ干渉計システム75とを備えている。エンコーダシステム73は、微動ステージWFSのX軸方向の位置を計測するXリニアエンコーダ73x、微動ステージWFSのY軸方向の位置を計測する一対のYリニアエンコーダ73ya、73ybを含む。エンコーダシステム73では、例えば米国特許第7,238,931号明細書、及び米国特許出願公開第2007/288,121号明細書などに開示されるエンコーダヘッド(以下、適宜ヘッドと略述する)と同様の構成の回折干渉型のヘッドが用いられている。ただし、本実施形態では、ヘッドは、後述するように光源及び受光系(光検出器を含む)が、計測アーム71の外部に配置され、光学系のみが計測アーム71の内部に、すなわちグレーティングRGに対向して配置されている。以下、特に必要な場合を除いて、計測アーム71の内部に配置された光学系をヘッドと呼ぶ。
【0076】
エンコーダシステム73は、微動ステージWFSのX軸方向の位置を1つのXヘッド77x(図10A及び図10B参照)で計測し、Y軸方向の位置を一対のYヘッド77ya、77yb(図10B参照)で計測する。すなわち、グレーティングRGのX回折格子を用いて微動ステージWFSのX軸方向の位置を計測するXヘッド77xによって、前述のXリニアエンコーダ73xが構成され、グレーティングRGのY回折格子を用いて微動ステージWFSのY軸方向の位置を計測する一対のYヘッド77ya、77ybによって、一対のYリニアエンコーダ73ya、73ybが構成されている。
【0077】
ここで、エンコーダシステム73を構成する3つのヘッド77x、77ya、77ybの構成について説明する。図10Aには、3つのヘッド77x、77ya、77ybを代表して、Xヘッド77xの概略構成が示されている。また、図10Bには、Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの計測アーム71内での配置が示されている。
【0078】
図10Aに示されるように、Xヘッド77xは、偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と表記する)WP1a,WP1b、反射ミラーR2a,R2b、及び反射ミラーR3a,R3b等を有し、これらの光学素子が所定の位置関係で配置されている。Yヘッド77ya、77ybも同様の構成の光学系を有している。Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれは、図10A及び図10Bに示されるように、ユニット化されて計測アーム71の内部に固定されている。
【0079】
図10Bに示されるように、Xヘッド77x(Xエンコーダ73x)では、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられた光源LDxから−Z方向にレーザビームLBx0が射出され、計測アーム71の一部にXY平面に対して45°の角度で斜設された反射面RPを介してY軸方向に平行にその光路が折り曲げられる。このレーザビームLBx0は、計測アーム71の内部の中実な部分を、Y軸方向に平行に進行し、反射ミラーR3a(図10A参照)に達する。そして、レーザビームLBx0は、反射ミラーR3aによりその光路が折り曲げられて、偏光ビームスプリッタPBSに入射する。レーザビームLBx0は、偏光ビームスプリッタPBSで偏光分離されて2つの計測ビームLBx1,LBx2となる。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1は反射ミラーR1aを介して微動ステージWFSに形成されたグレーティングRGに到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2は反射ミラーR1bを介してグレーティングRGに到達する。なお、ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。
【0080】
計測ビームLBx1,LBx2の照射によってグレーティングRGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームそれぞれは、レンズL2a,L2bを介して、λ/4板WP1a,WP1bにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2a,R2bにより反射されて再度λ/4板WP1a,WP1bを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに達する。
【0081】
偏光ビームスプリッタPBSに達した2つの1次回折ビームは、各々その偏光方向が元の方向に対して90度回転している。このため、計測ビームLBx1,LBx2それぞれの1次回折ビームは同軸上に合成ビームLBx12として合成される。合成ビームLBx12は、反射ミラーR3bでその光路が、Y軸に平行に折り曲げられて、計測アーム71の内部をY軸に平行に進行し、前述の反射面RPを介して、図10Bに示される、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられたX受光系74xに送光される。
【0082】
X受光系74xでは、合成ビームLBx12として合成された計測ビームLBx1,LBx2の1次回折ビームが不図示の偏光子(検光子)によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が不図示の光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。ここで、微動ステージWFSが計測方向(この場合、X軸方向)に移動すると、2つのビーム間の位相差が変化して干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化は、微動ステージWFSのX軸方向に関する位置情報として主制御装置20(図5参照)に供給される。
【0083】
図10Bに示されるように、Yヘッド77ya、77ybには、それぞれの光源LDya、LDybから射出され、前述の反射面RPで光路が90°折り曲げられたY軸に平行なレーザビームLBya0、LByb0が入射し、前述と同様にして、Yヘッド77ya、77ybから、偏向ビームスプリッタで偏光分離された計測ビームそれぞれのグレーティングRG(のY回折格子)による1次回折ビームの合成ビームLBya12、LByb12が、それぞれ出力され、Y受光系74ya、74ybに戻される。ここで、光源LDya、LDybから射出されるレーザビームLBya0、LByb0とY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とは、図10Bにおける紙面垂直方向に重なる光路をそれぞれ通る。また、上述のように、光源から射出されるレーザビームLBya0、LByb0とY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とが、Z軸方向に離れた平行な光路を通るように、Yヘッド77ya、77ybでは、それぞれの内部で光路が適宜折り曲げられている(図示省略)。
【0084】
図9Aには、計測アーム71の先端部が斜視図にて示されており、図9Bには、計測アーム71の先端部の上面を+Z方向から見た平面図が示されている。図9A及び図9Bに示されるように、Xヘッド77xは、X軸に平行な直線LX上で計測アーム71のセンターラインCLから等距離にある2点(図9Bの白丸参照)から、計測ビームLBx1、LBx2(図9A中に実線で示されている)を、グレーティングRG上の同一の照射点に照射する(図10A参照)。計測ビームLBx1、LBx2の照射点、すなわちXヘッド77xの検出点(図9B中の符号DP参照)は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致している(図1参照)。なお、計測ビームLBx1、LBx2は、実際には、本体部81と空気層との境界面などで屈折するが、図10A等では、簡略化して図示されている。
【0085】
図10Bに示されるように、一対のYヘッド77ya、77ybそれぞれは、センターラインCLの+X側、−X側に配置されている。Yヘッド77yaは、図9A及び図9Bに示されるように、直線LYa上で直線LXからの距離が等しい2点(図9Bの白丸参照)から、グレーティングRG上の共通の照射点に図9Aにおいてそれぞれ破線で示される計測ビームLBya1,LBya2を照射する。計測ビームLBya1,LBya2の照射点、すなわちYヘッド77yaの検出点が、図9Bに符号DPyaで示されている。
【0086】
Yヘッド77ybは、センターラインCLに関して、Yヘッド77yaの計測ビームLBya1,LBya2の射出点に対称な2点(図9Bの白丸参照)から、計測ビームLByb1,LByb2を、グレーティングRG上の共通の照射点DPybに照射する。
図9Bに示されるように、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの検出点DPya、DPybは、X軸に平行な直線LX上に配置される。
【0087】
ここで、主制御装置20は、微動ステージWFSのY軸方向の位置は、2つのYヘッド77ya、77ybの計測値の平均に基づいて決定する。従って、本実施形態では、微動ステージWFSのY軸方向の位置は、検出点DPya、DPybの中点DPを実質的な計測点として計測される。中点DPは、計測ビームLBx1,LBx2のグレーティングRG上の照射点と一致する。
【0088】
すなわち、本実施形態では、微動ステージWFSのX軸方向及びY軸方向の位置情報の計測に関して、共通の検出点を有し、この検出点は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する。従って、本実施形態では、主制御装置20は、エンコーダシステム73を用いることで、微動ステージWFS上に載置されたウエハWの所定のショット領域にレチクルRのパターンを転写する際、微動ステージWFSのXY平面内の位置情報の計測を、常に露光位置の直下(微動ステージWFSの裏面側)で行うことができる。また、主制御装置20は、一対のYヘッド77ya、77ybの計測値の差に基づいて、微動ステージWFSのθz方向の回転量を計測する。
【0089】
レーザ干渉計システム75は、図9Aに示されるように、3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3を計測アーム71の先端部から、微動ステージWFSの下面に入射させる。レーザ干渉計システム75は、これら3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3それぞれを照射する3つのレーザ干渉計75a〜75c(図5参照)を備えている。
【0090】
レーザ干渉計システム75では、3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3は、図9A及び図9Bに示されるように、その重心が、照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する、二等辺三角形(又は正三角形)の各頂点に相当する3点からZ軸に平行に射出される。この場合、測長ビームLBz3の射出点(照射点)はセンターラインCL上に位置し、残りの測長ビームLBz1、LBz2の射出点(照射点)は、センターラインCLから等距離にある。本実施形態では、主制御装置20は、レーザ干渉計システム75を用いて、微動ステージWFSのZ軸方向の位置、θz方向及びθy方向の回転量の情報を計測する。なお、レーザ干渉計75a〜75cは、計測アーム71の−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられている。レーザ干渉計75a〜75cから−Z方向に射出された測長ビームLBz1、LBz2、LBz3は、前述の反射面RPを介して計測アーム71内をY軸方向に沿って進行し、その光路がそれぞれ折り曲げられて、上述の3点から射出される。
【0091】
本実施形態では、微動ステージWFSの下面に、エンコーダシステム73からの各計測ビームを透過させ、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの透過を阻止する、波長選択フィルタ(図示省略)が設けられている。この場合、波長選択フィルタは、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの反射面をも兼ねる。
【0092】
以上の説明からわかるように、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70のエンコーダシステム73及びレーザ干渉計システム75を用いることで、微動ステージWFSの6自由度方向の位置を計測することができる。この場合、エンコーダシステム73では、計測ビームの空気中での光路長が極短くかつほぼ等しいため、空気揺らぎの影響が殆ど無視できる。従って、エンコーダシステム73により、微動ステージWFSのXY平面内(θz方向も含む)の位置情報を高精度に計測できる。また、エンコーダシステム73によるX軸方向、及びY軸方向の実質的なグレーティングRG上の検出点、及びレーザ干渉計システム75によるZ軸方向の微動ステージWFS下面上の検出点は、それぞれ露光領域IAの中心(露光位置)にXY平面内で一致するので、検出点と露光位置とのXY平面内のずれに起因するいわゆるアッベ誤差の発生が実質的に無視できる程度に抑制される。従って、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70を用いることで、検出点と露光位置とのXY平面内のずれに起因するアッベ誤差なく、微動ステージWFSのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置を高精度に計測できる。
【0093】
本実施形態の露光装置100では、デバイスの製造に際し、粗動ステージWCSに保持された微動ステージに保持されたウエハWに対して、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われ、そのウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンがそれぞれ転写される。このステップ・アンド・スキャン方式の露光動作は、主制御装置20により、事前に行われた、ウエハアライメントの結果(例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)により得られるウエハW上の各ショット領域の配列座標を第2基準マークを基準とする座標に変換した情報)、及びレチクルアライメントの結果等に基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)へ微動ステージWFSが移動されるショット間移動動作と、レチクルRに形成されたパターンを走査露光方式で各ショット領域に転写する走査露光動作と、を繰り返すことにより、行われる。なお、上記の露光動作は、先端レンズ191とウエハWとの間に液体Lqを保持した状態で、すなわち液浸露光により行われる。また、+Y側に位置するショット領域から−Y側に位置するショット領域の順で行われる。なお、EGAについては、例えば米国特許第4,780,617号明細書などに詳細に開示されている。
【0094】
本実施形態の露光装置100では、上述の一連の露光動作中、主制御装置20により、微動ステージ位置計測系70を用いて、微動ステージWFS(ウエハW)の位置が計測され、この計測結果に基づいてウエハWの位置が制御される。
【0095】
なお、上述の走査露光動作時は、ウエハWをY軸方向に高加速度で走査する必要があるが、本実施形態の露光装置100では、主制御装置20は、走査露光動作時には、図11Aに示されように、原則的に粗動ステージWCSを駆動せず、微動ステージWFSのみをY軸方向に(必要に応じて他の5自由度方向にも併せて)駆動する(図11Aの黒塗り矢印参照)ことで、ウエハWをY軸方向に走査する。これは、粗動ステージWCSを駆動する場合に比べ、微動ステージWFSのみを動かす方が駆動対象の重量が軽い分、高加速度でウエハWを駆動できて有利だからである。また、前述のように、微動ステージ位置計測系70は、その位置計測精度がウエハステージ位置計測系16よりも高いので、走査露光時には微動ステージWFSを駆動した方が有利である。なお、この走査露光時には、微動ステージWFSの駆動による反力(図11Aの白抜き矢印参照)の作用により、粗動ステージWCSが微動ステージWFSと反対側に駆動される。すなわち、粗動ステージWCSがカウンタマスとして機能し、ウエハステージWSTの全体から成る系の運動量が保存され、重心移動が生じないので、微動ステージWFSの走査駆動によってベース盤12に偏加重が作用するなどの不都合が生じることがない。
【0096】
一方、X軸方向にショット間移動(ステッピング)動作を行う際には、微動ステージWFSのX軸方向への移動可能量が少ないことから、主制御装置20は、図11Bに示されるように、粗動ステージWCSをX軸方向に駆動することによって、ウエハWをX軸方向に移動させる。
【0097】
図12には、露光が終了した直後で、液体Lqで形成される液浸空間が先端レンズ191とウエハステージWSTとの間で保持される状態(第1の状態)が示されている。
主制御装置20は、露光終了に先立って、計測ステージ駆動系54を介して、図1に示される位置に計測ステージMSTを所定量駆動し、この状態で、露光が終了するのを待つ。
【0098】
そして、露光が終了すると、主制御装置20は、計測ステージ駆動系54を介して計測ステージMSTを−Y方向に所定量駆動し(図12中の白抜き矢印参照)、計測ステージMST(の突出部19)を、微動ステージWFSに接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接させる。すなわち、主制御装置20は、計測ステージMSTと微動ステージWFSとをスクラム状態に設定する。
【0099】
次に、主制御装置20は、図13に示されるように、計測ステージMSTと微動ステージWFSとのスクラム状態を維持しつつ、ウエハステージWSTと一体で計測ステージMSTを−Y方向に駆動する(図13の白抜き矢印参照)。これにより、先端レンズ191との間に保持されていた液体Lqで形成される液浸空間が、微動ステージWFSから計測ステージMSTに渡される。図13には、液体Lqで形成される液浸空間が微動ステージWFSから計測ステージMSTに渡される直前の状態が示されている。この状態では、先端レンズ191と、微動ステージWFS及び計測ステージMSTとの間に、液体Lqが保持されている。
【0100】
そして、図14に示されるように、微動ステージWFSから計測ステージMSTへの液浸空間の受け渡しが終了し、液体Lqで形成される液浸空間が先端レンズ191と計測ステージMSTとの間で保持される状態(第2の状態)になると、主制御装置20は、粗動ステージWCSを微動ステージWFS(及びウエハW)の受け渡し位置まで移動させる。
【0101】
上記の液浸空間の受け渡しにおいては、計測ステージMST(の突出部19)と微動ステージWFSとのクリアランスが所定量以上に大きくなったり、微動ステージWFSあるいは計測ステージMSTがZ軸周りに回転していると、液浸空間を維持することが困難になる。そのため、本実施形態では、露光装置100の立ち上げ時、定期的なメンテナンス時、又は停電やエラーが生じた場合に露光装置100の装置状態を初期状態に設定するリセット時等に、ウエハアライメント系ALG及び多点AF系AFを用いて微動ステージWFSと計測ステージMSTとの相対位置を計測している。尚、この相対位置の測定時には、液体供給装置5及び液体回収装置6の各バルブが閉状態になっており、投影光学系PLの先端レンズ191の直下への液体Lqの供給はされない。
【0102】
具体的には、主制御装置20は、計測ステージ駆動系54の駆動により、計測ステージMSTを投影光学系PLの下方(−Z方向)へ配置する。このとき、図15Aに示すように、計測ステージMST(突出部19)の微動ステージWFSと対向する−Y方向側のエッジ部e1がアライメント系ALGの計測視野内に入るよう計測ステージMSTを移動させる。次に、主制御装置20は、XモータXM2の駆動により計測ステージMSTを−X方向に移動させ、エッジ部e1の+X方向の端部(以下、計測点P11という)がアライメント系ALGの計測視野内に入るよう計測ステージMSTを配置する。
この状態で、アライメント系ALGを用いて計測点P11を撮像する。この撮像信号は主制御装置20に供給され、計測点P11を撮像したときの計測ステージMSTの位置とともに記憶される。
【0103】
次いで、主制御装置20は、XモータXM2の駆動により計測ステージMSTを+X方向に移動させ、エッジ部e1の−X方向の端部(以下、計測点P12という)がアライメント系ALGの計測視野内に入るよう計測ステージMSTを配置する。
この状態で、アライメント系ALGを用いて計測点P12を撮像する。この撮像信号は主制御装置20に供給され、計測点P12を撮像したときの計測ステージMSTの位置とともに記憶される。
主制御装置20は、以上の処理により得られた計測点P11,P12の撮像信号の各々を画像処理して計測点P11,P12の計測視野内における位置情報を求め、この位置情報と各々の撮像信号を撮像した時点で検出された計測ステージMSTの位置に基づいて、計測点P11,P12のY方向における位置情報を求める。
【0104】
続いて、主制御装置20は、微動ステージWFSについても計測ステージMSTと同様に、微動ステージWFSの計測ステージMSTと対向する+Y方向側のエッジ部e2のうち、+X方向の端部(以下、計測点P21という)がアライメント系ALGの計測視野内に入るよう微動ステージWFSを配置し、アライメント系ALGを用いて計測点P21を撮像する。この撮像信号は主制御装置20に供給され、計測点P21を撮像したときの微動ステージWFSの位置とともに記憶される。
【0105】
次いで、主制御装置20は、微動ステージWFSを+X方向に移動させ、エッジ部e2の−X方向の端部(以下、計測点P22という)がアライメント系ALGの計測視野内に入るよう微動ステージWFSを配置し、アライメント系ALGを用いて計測点P22を撮像する。この撮像信号は主制御装置20に供給され、計測点P22を撮像したときの微動ステージWFSの位置とともに記憶される。
主制御装置20は、以上の処理により得られた計測点P21,P22の撮像信号の各々を画像処理して計測点P21,P22の計測視野内における位置情報を求め、この位置情報と各々の撮像信号を撮像した時点で検出された微動ステージWFSの位置に基づいて、計測点P21,P22のY方向における位置情報を求める。
【0106】
以上の処理で得られた計測点P11,P12の位置情報と、計測点P21,P22の位置情報とからエッジ部e1とエッジ部e2とのY方向における相対的な位置関係、即ち計測ステージMSTと微動ステージWFSとのY方向における相対位置が求められる。エッジ部e1を複数の測定点P11,P12で測定し、エッジ部e2を複数の測定点P21,P22で測定しているため、ウェハステージWST又は計測ステージMSTのZ軸周りの回転に起因するエッジ部e1とエッジ部e2との平行からのずれ量を求めることもできる。尚、以上の処理で求められた計測ステージMSTと微動ステージWFSとのY方向における相対位置を示す情報は、露光時(液浸空間の受け渡し時)の計測ステージMSTと微動ステージWFSとの駆動制御に用いられ、主制御装置20がYモータYM1、YM2を制御することにより、これらの間のクリアランスを管理することができる。
【0107】
また、計測ステージMSTと微動ステージWFSとのZ方向における相対位置については、多点AF系AFを用いて計測・調整することができる。
具体的には、主制御装置20はYモータYM1、YM2を駆動して、計測ステージMST及び微動ステージWFSがエッジ部e1,e2を互いに近接させた状態で投影光学系PLの下方(−Z方向)に位置するように計測ステージMST及び微動ステージWFSの各々を配置する。
【0108】
そして、多点AF系AFの検出領域が、微動ステージWFSのエッジ部e2の近傍に設定されるよう、ウエハステージWST及び計測ステージMSTのY方向の位置を設定する。Y方向の配置が完了すると、主制御装置20は、XモータXM1を駆動して、微動ステージWFSを−X方向に移動させ、多点AF系AFの検出領域がエッジ部e2の+X方向の端部の近傍(以下、計測面P31という)に設定されるよう微動ステージWFSを配置する。この状態で、多点AF系AFを用いて計測面P31を検出する。この検出結果は主制御装置20に供給される。
【0109】
次いで、主制御装置20は、XモータXM1を駆動して、微動ステージWFSを+X方向に移動させ、多点AF系AFの検出領域がエッジ部e2の−X方向の端部の近傍(以下、計測面P32という)に設定されるよう微動ステージWFSを配置する。この状態で、多点AF系AFを用いて計測面P32を検出する。この検出結果は主制御装置20に供給される。
【0110】
次に、主制御装置20は、YモータYM1、YM2を駆動して、相対位置関係を保持した状態でウエハステージWST及び計測ステージMSTを−Y方向に移動させ、多点AF系AFの検出領域が計測ステージMSTにおけるエッジ部e1の近傍に設定されるよう、計測ステージMST及び微動ステージWFSのY方向の位置を設定する。
【0111】
Y方向の配置が完了すると、主制御装置20は、XモータXM2を駆動して、計測ステージMSTを−X方向に移動させ、多点AF系AFの検出領域がエッジ部e1の+X方向の端部の近傍(以下、計測面P41という)に設定されるよう計測ステージMSTを配置する。この状態で、多点AF系AFを用いて計測面P41を検出する。この検出結果は主制御装置20に供給される。
【0112】
次いで、主制御装置20は、XモータXM2を駆動して、計測ステージMSTを+X方向に移動させ、多点AF系AFの検出領域がエッジ部e1の−X方向の端部の近傍(以下、計測面P42という)に設定されるよう計測ステージMSTを配置する。この状態で、多点AF系AFを用いて計測面P42を検出する。この検出結果は主制御装置20に供給される。
【0113】
以上の処理で得られた計測面P31,P32の検出結果と、計測面P41,P42の検出結果とから計測ステージMSTと微動ステージWFSとのZ方向における相対的な位置関係が求められる。尚、以上の処理で求められた計測ステージMSTと微動ステージWFSとのZ方向における相対位置を示す情報は、露光時(液浸空間の受け渡し時)の計測ステージMSTと微動ステージWFSとのZ方向の駆動制御に用いられる。
【0114】
以上説明したように、本実施形態では、微動ステージWFS上のウエハWと投影光学系PL(先端レンズ191)との間に液体Lqが保持される状態から、計測ステージMSTと投影光学系PL(先端レンズ191)との間に液体Lqが保持される状態に遷移させているため、微動ステージWFSをローディングポジションやアライメント位置等に移動させて他の処理を実行させている間にも、液浸空間を常時維持してスループットを最大限に高くすることができる。また、本実施形態では、液浸空間を維持する計測ステージMSTの駆動が、YモータYM1と固定子150を共用するYモータYM2により行われるため、別途固定子150を設けた場合に生じる装置の大型化及びコスト増を抑制することが可能になる。
【0115】
また、本実施形態では、計測ステージMSTと微動ステージWFSとのZ方向及びY方向の相対位置の計測結果に基づいて両ステージの相対位置を調整できるため、計測ステージMSTと微動ステージWFSとの間で液体を受け渡す場合に、漏れや液体の残存が生ずることなく液体を受け渡すことができる。
【0116】
なお、上記実施形態では、レーザ干渉計システム(不図示)を介してウエハW(微動ステージWFS)の位置を計測しながらウエハのアライメントを行うものとしたが、これに限らず、上述した微動ステージ位置計測系70の計測アーム71と同様の構成の計測アームを含む第2の微動ステージ位置計測系をウエハアライメント系ALGの近傍に設け、これを用いてウエハアライメント時における微動ステージのXY平面内の位置計測を行うものとしても良い。
【0117】
図16乃至図18には、このような第2の微動ステージ位置計測系を備えた変形例に係る露光装置1000の構成が示されている。なお、露光装置1000においては、液浸空間を保持する装置として、計測ステージではなく、YモータYM2の駆動により、Y方向にのみ独立して移動する液体保持ステージLSTが設けられる構成とする。
【0118】
露光装置1000は、投影ユニットPUが配置された露光ステーション200と、アライメント系ALGが配置された計測ステーション300とを備えたツインウエハステージタイプの露光装置である。ここで、前述した第1の実施形態の露光装置100と同一又は同等の構成部分については、同一若しくは類似の記号を用いると共に、その説明を省略又は簡略するものとする。また、同等の部材が露光ステーション200と計測ステーション300とにある場合、識別のため、各部材の符号の末尾にA,Bを付して表記する。ただし、2つのウエハステージの符号は、WST1,WST2と表記する。
【0119】
露光ステーション200は、図1と図16とを比較するとわかるように、基本的には、前述した上記の実施形態の露光装置100と同様に構成されている。また、計測ステーション300には、露光ステーション200側の微動ステージ位置計測系70Aと、左右対称の配置で微動ステージ位置計測系70Bが配置されている。また、計測ステーション300には、アライメント系ALGに代えて、アライメント装置99がボディBDから吊り下げ状態で取り付けられている。アライメント装置99として、例えば国際公開第2008/056735号に詳細に開示される、5つのFIA系を備えた5眼のアライメント系が用いられている。
【0120】
また、露光装置1000では、ベース盤12の露光ステーション200と計測ステーション300との間の位置には、上下動可能なセンターテーブル130が取り付けられている。センターテーブル130は、駆動装置132(図17参照)によって上下動可能な軸134と、軸134の上端に固定された平面視Y字形のテーブル本体136とを備えている。また、ウエハステージWST1、WST2をそれぞれ構成する粗動ステージWCS1、WCS2には、それぞれの底面に、軸134より幅の広い、第1部分と第2部分との分離線を含む全体としてU字状の切り欠き96が形成されている。これにより、ウエハステージWST1、WST2は、いずれもテーブル本体136の上方に微動ステージWFS1又はWFS2を搬送できるようになっている。
【0121】
液体保持ステージLSTは、ウエハステージWST1の+Y側に設けられ、YモータYM2の駆動により、Y方向に独立して移動する。本形態における液体保持ステージLSTは、X方向に関しては移動せず、可動子151Bに一体的に設けられている。なお、液体保持ステージLSTについては、各種計測機器を備えていない点及びX方向については移動しない点を除けば、開口部18、突出部19を有する点や、表面が撥液性を有する点については、上記計測ステージMSTと同様の構成を備えている。
【0122】
図17には、露光装置1000の制御系の主要な構成が、ブロック図にて示されている。
このようにして構成された露光装置1000では、露光ステーション200において、ウエハステージWST1を構成する粗動ステージWCS1に支持された微動ステージWFS1上のウエハWに対して露光が行われるのと並行して、計測ステーション300において、ウエハステージWST2を構成する粗動ステージWCS2に支持された微動ステージWFS2上のウエハWに対してウエハアライメント(例えばEGAなど)等が行われる。
【0123】
そして、露光が終了すると、ウエハステージWST1が、テーブル本体136の上方に露光済みのウエハWを保持する微動ステージWFS1を搬送する。このウエハステージWST1の移動時には、液体保持ステージLSTを−Y方向に所定量駆動し、液体保持ステージLST(の突出部19)を、微動ステージWFS1に接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接させて、液体保持ステージLSTと微動ステージWFS1とをスクラム状態に設定する。
【0124】
そして、このスクラム状態を維持しつつ、ウエハステージWST1と一体で液体保持ステージLSTを−Y方向に駆動する。これにより、先端レンズ191との間に保持されていた液体Lqで形成される液浸空間が、微動ステージWFSから液体保持ステージLSTに受け渡される。
【0125】
ウエハステージWST1がセンターテーブル130に到達すると、センターテーブル130が、駆動装置132によって上昇駆動され、主制御装置20により、ウエハステージ駆動系53Aが制御されて一対の粗動ステージWCS1がXガイドXG1に沿って互いに離間する方向に移動する。これにより、微動ステージWFS1が粗動ステージWCS1からテーブル本体136に渡される。そして、センターテーブル130が、駆動装置132によって下降駆動された後、一対の粗動ステージWCS1が互いに接近する方向に移動する。そして、粗動ステージWCS1にウエハステージWST2が−Y方向から近接又は接触し、アライメント済みのウエハWを保持する微動ステージWFS2が、粗動ステージWCS2から粗動ステージWCS1に移載される。この一連の動作は、主制御装置20が、ウエハステージ駆動系53Bを制御することで行われる。
【0126】
その後、微動ステージWFS2を保持した粗動ステージWCS1が、露光ステーション200に移動し、レチクルアライメント、そのレチクルアライメントの結果と、ウエハアライメントの結果(ウエハW上の各ショット領域の第2基準マークを基準とする配列座標)とに基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われる。
【0127】
粗動ステージWCS1が、露光ステーション200に移動する際には、液体保持ステージLSTと微動ステージWFS1とを接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接させて、液体保持ステージLSTと微動ステージWFS1とをスクラム状態に設定する。そして、このスクラム状態を維持しつつ、ウエハステージWST1と一体で液体保持ステージLSTを+Y方向に駆動する。これにより、先端レンズ191との間に保持されていた液体Lqで形成される液浸空間が、再度液体保持ステージLSTから微動ステージWFSに受け渡される。
【0128】
この露光と並行して、粗動ステージWCS2が、−Y方向に退避し、テーブル本体136上に保持されている微動ステージWFS1が、不図示の搬送系によって、所定の位置まで搬送され、その微動ステージWFS1に保持されている露光済みのウエハWが、新たなウエハWに、不図示のウエハ交換機構によって交換される。そして、新たなウエハWを保持した微動ステージWFS1が、搬送系によってテーブル本体136上に搬送され、さらに、テーブル本体136上から粗動ステージWCS2上に渡される。以後、上記と同様の処理が、繰り返し行われる。
【0129】
また、液体保持部材としては、上述した計測ステージMSTや液体保持ステージLSTの他に、図19に示すように、Y粗動ステージYC1に支持部219を介して一体的に設けられた液体保持テーブルLTBを用いる構成であってもよい。この場合、液体保持テーブルLTBは、微動ステージWFS1の+Y側に、上述したクリアランスを介して配置され、YモータYM1の駆動によりウエハステージWST1と一体的に移動する。換言すると、液体保持テーブルLTBは、YモータYM1をウエハステージWST1と共用してY方向に移動することになる。
【0130】
なお、上記実施形態及び変形例では、微動ステージWFSを、粗動ステージWCSに対して移動可能に支持すると共に、6自由度方向に駆動する第1、第2駆動部として、コイルユニットを一対の磁石ユニットで上下から挟み込むサンドイッチ構造が採用される場合について例示した。しかし、これに限らず、第1、第2駆動部は、磁石ユニットを一対のコイルユニットで上下から挟み込む構造であっても良いし、サンドイッチ構造でなくても良い。また、コイルユニットを微動ステージに配置し、磁石ユニットを粗動ステージに配置しても良い。
【0131】
また、上記実施形態及び変形例では、第1、第2駆動部により、微動ステージWFSを、6自由度方向に駆動するものとしたが、必ずしも6自由度に駆動できなくても良い。例えば、第1、第2駆動部をθx方向に関して微動ステージを駆動できなくても良い。
【0132】
なお、上記実施形態では、微動ステージWFSは、ローレンツ力(電磁力)の作用により粗動ステージWCSに非接触支持されたが、これに限らず、例えば微動ステージWFSに真空予圧空気静圧軸受等を設けて、粗動ステージWCSに対して浮上支持しても良い。また、微動ステージ駆動系52は、上述したムービングマグネット型のものに限らず、ムービングコイル型のものであっても良い。さらに微動ステージWFSは、粗動ステージWCSに接触支持されていても良い。従って、微動ステージWFSを粗動ステージWCSに対して駆動する微動ステージ駆動系52としては、例えばロータリモータとボールねじ(又は送りねじ)とを組み合わせたものであっても良い。
【0133】
また、上記実施形態及び変形例では、微動ステージ位置計測系70が、全体が例えばガラスによって形成され、内部を光が進行可能な計測アーム71を備える場合を説明したが、これに限らず、計測アームは、少なくとも前述の各レーザビームが進行する部分が、光を透過可能な中実な部材によって形成されていれば良く、その他の部分は、例えば光を透過させない部材であっても良いし、中空構造であっても良い。
【0134】
また、例えば計測アーム71としては、グレーティングRGに対向する部分から計測ビームを照射できれば、例えば計測アーム71の先端部に光源や光検出器等を内蔵していても良い。この場合、計測アームの内部にエンコーダの計測ビームを進行させる必要は無い。さらに、計測アームは、その形状は特に問わない。また、微動ステージ位置計測系は、必ずしも、計測アームを備えている必要はなく、粗動ステージWCSの空間部内にグレーティングRGに対向して配置され、該グレーティングRGに少なくとも1本の計測ビームを照射し、該計測ビームのグレーティングRGからの回折光を受光するヘッドを有し、該ヘッドの出力に基づいて微動ステージWFSの少なくともXY平面内の位置情報を計測できれば足りる。
【0135】
また、上記実施形態では、エンコーダシステム73が、Xヘッド77xと一対のYヘッド77ya、77ybを備える場合について例示したが、これに限らず、例えばX軸方向及びY軸方向の2方向を計測方向とする2次元ヘッド(2Dヘッド)を、1つ又は2つ設けても良い。2Dヘッドを2つ設ける場合には、それらの検出点がグレーティングRG上で露光位置を中心として、X軸方向に同一距離離れた2点になるようにしても良い。
【0136】
なお、上記実施形態では、微動ステージWFSの上面、すなわちウエハWに対向する面にグレーティングRGが配置されているものとしたが、これに限らず、例えば図20に示されるように、グレーティングRGは、ウエハWを保持するウエハホルダWHの下面に形成されていても良い。この場合、露光中にウエハホルダWHが膨張したり、微動ステージWFSに対する装着位置がずれたりした場合であっても、これに追従してウエハホルダWH(ウエハW)の位置を計測することができる。また、グレーティングは、微動ステージの下面に配置されていても良く、この場合、エンコーダヘッドから照射される計測ビームが微動ステージの内部を進行しないので、微動ステージを光が透過可能な中実部材とする必要がなく、微動ステージを中空構造にして内部に配管、配線等を配置することができ、微動ステージを軽量化できる。
【0137】
なお、上記実施形態では、露光装置100が液浸型の露光装置である場合について説明したが、これに限られるものではなく、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置にも本発明は好適に適用することができる。
【0138】
なお、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計を用いてこのステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができ、エンコーダの計測値に基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、結果的に高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明は適用することができる。
【0139】
また、上記実施形態の露光装置100における投影光学系PLは縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0140】
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0141】
また、上記実施形態では、露光装置100の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に本発明を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
【0142】
また、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、このステージの位置をエンコーダシステム及びレーザ干渉計システムを用いて計測することで、上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0143】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
【0144】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
【0145】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0146】
露光装置100の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
【0147】
なお、本発明の移動体装置は、露光装置に限らず、その他の基板の処理装置(例えば、レーザリペア装置、基板検査装置その他)、あるいはその他の精密機械における試料の位置決め装置、ワイヤーボンディング装置等の移動ステージを備えた装置にも広く適用できる。
【0148】
次に、本発明の実施形態による露光装置100及び露光方法をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。図21は、マイクロデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。
【0149】
まず、ステップS10(設計ステップ)において、マイクロデバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS11(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクル)を製作する。一方、ステップS12(ウエハ製造ステップ)において、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。
【0150】
次に、ステップS13(ウエハ処理ステップ)において、ステップS10〜ステップS12で用意したマスクとウエハを使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によってウエハ上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS14(デバイス組立ステップ)において、ステップS13で処理されたウエハを用いてデバイス組立を行う。このステップS14には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS15(検査ステップ)において、ステップS14で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
【0151】
図22は、半導体デバイスの場合におけるステップS13の詳細工程の一例を示す図である。
ステップS21(酸化ステップ)おいては、ウエハの表面を酸化させる。ステップS22(CVDステップ)においては、ウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップS23(電極形成ステップ)においては、ウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップS24(イオン打込みステップ)においては、ウエハにイオンを打ち込む。以上のステップS21〜ステップS24のそれぞれは、ウエハ処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0152】
ウエハプロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS25(レジスト形成ステップ)において、ウエハに感光剤を塗布する。引き続き、ステップS26(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置)及び露光方法によってマスクの回路パターンをウエハに転写する。次に、ステップS27(現像ステップ)においては露光されたウエハを現像し、ステップS28(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS29(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。
【産業上の利用可能性】
【0153】
以上説明したように、本発明の移動体装置は、所定平面内で移動体を駆動するのに適している。また、本発明の露光装置及び露光方法は、エネルギビームを物体上に照射して物体上にパターンを形成するのに適している。また、本発明のデバイス製造方法は、電子デバイスを製造するのに適している。
【符号の説明】
【0154】
100、1000…露光装置、 MST…計測ステージ(液体保持部材)、 WCS…X粗動ステージ(第2移動体)、 WFS…微動ステージ(保持部材)、 XG1…Xガイド(ガイド部材)、 YC…Y粗動ステージ(第1移動体)、YM1…Yモータ(第1駆動装置)、 YM2…Yモータ(第2駆動装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギビームにより光学系と液体とを介して物体を露光する露光装置であって、
第1方向に延在するガイド部材を有し、第1駆動装置の駆動により前記第1方向と略直交する第2方向に移動する第1移動体と、
前記ガイド部材に沿って前記第1方向に独立して移動自在に設けられ、前記第1移動体の移動により前記ガイド部材とともに前記第2方向に移動する一対の第2移動体と、
物体を保持するとともに、前記一対の第2移動体により、少なくとも前記第1方向、前記第2方向を含むとともに前記光学系の直下の第1位置を含む二次元平面内で移動自在に支持される保持部材と、
前記一対の第2移動体に対して前記第2方向に沿って隣接して配置され、前記第1駆動装置の少なくとも一部を共用する第2駆動装置の駆動により、前記一対の第2移動体に支持された前記保持部材とともに前記第2方向側の端部で近接又は接触した状態を維持して前記第2方向に平行な方向に移動して、前記保持部材上の物体と前記光学系との間に液体が保持される第1の状態から、前記光学系との間で液体を保持する第2の状態に遷移させる液体保持部材と、
を有する露光装置。
【請求項2】
前記液体保持部材は、前記第1移動体に設けられて前記第1駆動装置の駆動により前記第2方向に移動する請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記第1駆動装置は、発磁体とコイル体との一方を有する固定子と、前記発磁体と前記コイル体との他方を有し、前記第1移動体に接続されて前記固定子に対して前記第2方向に相対移動する可動子とを備え、
前記第2駆動装置は、前記固定子を共用するとともに、前記液体保持部材に接続され前記固定子に対して前記第2方向に相対移動する第2可動子を備える請求項1記載の露光装置。
【請求項4】
前記液体保持部材は、前記物体の露光に関する計測が行われる計測装置を有して前記第2駆動装置の駆動により前記第2方向に移動する計測ステージに設けられる請求項3記載の露光装置。
【請求項5】
前記二次元平面と略直交する第3方向に沿った、前記保持部材と前記液体保持部材との間の第1ギャップを計測する第1計測装置と、
前記第1計測装置の計測結果に基づいて、前記第1ギャップを調整する第1調整装置とを有する請求項1から4のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第1調整装置は、前記保持部材と前記液体保持部材とが互いに近接した際に、前記前記保持部材と前記液体保持部材との少なくとも一方の前記第3方向に沿った位置を調整することを特徴とする請求項5記載の露光装置。
【請求項7】
前記第2方向の前記保持部材と前記液体保持部材との間の第2ギャップを計測する第2計測装置と、
前記第2計測装置の計測結果に基づいて、前記第2ギャップを調整する第2調整装置と
をさらに備えたことを特徴とする請求項5または6記載の露光装置。
【請求項8】
前記第1移動体及び前記一対の第2移動体を有するステージユニットが複数設けられ、
前記保持部材は、前記複数のステージユニット間を相互に移動可能である請求項1から7のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項9】
前記第2移動体に支持された前記保持部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を計測する位置計測系をさらに備え、
前記複数のステージユニットは、前記一対の第2移動体の間に形成され、前記第2方向に沿って貫通した空間部をそれぞれ有し、
前記保持部材の前記二次元平面に実質的に平行な一面に計測面が設けられ、
前記位置計測系は、前記複数のステージユニットの一つの前記空間部内に前記計測面に対向してその一部が配置され、前記計測面に少なくとも1本の計測ビームを照射して該計測ビームの前記計測面からの光を受光するヘッドを有し、前記第2方向に平行な方向の他側を固定端として前記第2方向に沿って延びる片持ち支持構造の計測アームを含み、前記ヘッドの出力に基づいて前記複数のステージユニットの一つに保持される前記保持部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を計測する請求項8記載の露光装置。
【請求項10】
前記保持部材は、その内部を光が進行可能な中実部を少なくとも一部に有し、
前記計測面は、前記保持部材の前記物体の載置面側に前記中実部に対向して配置され、
前記ヘッドは、前記物体の載置面とは反対側に前記中実部に対向して配置されている請求項9に記載の露光装置。
【請求項11】
前記計測面には、グレーティングが形成され、
前記ヘッドは、前記グレーティングに少なくとも1本の計測ビームを照射し、該計測ビームの前記グレーティングからの回折光を受光する請求項9又は10に記載の露光装置。
【請求項12】
前記グレーティングは、前記第1方向、及び前記二次元平面内で前記第2方向に垂直な第2方向をそれぞれ周期方向とする第1及び第2回折格子を含み、
前記ヘッドは、前記計測ビームとして前記第1及び第2回折格子にそれぞれ対応する第1方向計測用ビーム及び第2方向計測用ビームを照射し、前記第1方向計測用ビーム及び第2方向計測用ビームそれぞれの前記グレーティングからの回折光を受光し、前記位置計測系は、前記ヘッドの出力に基づいて、前記保持部材の前記第1及び第2方向に関する位置情報を計測する請求項11に記載の露光装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の露光装置を用いて物体を露光することと、
前記露光された物体を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項1】
エネルギビームにより光学系と液体とを介して物体を露光する露光装置であって、
第1方向に延在するガイド部材を有し、第1駆動装置の駆動により前記第1方向と略直交する第2方向に移動する第1移動体と、
前記ガイド部材に沿って前記第1方向に独立して移動自在に設けられ、前記第1移動体の移動により前記ガイド部材とともに前記第2方向に移動する一対の第2移動体と、
物体を保持するとともに、前記一対の第2移動体により、少なくとも前記第1方向、前記第2方向を含むとともに前記光学系の直下の第1位置を含む二次元平面内で移動自在に支持される保持部材と、
前記一対の第2移動体に対して前記第2方向に沿って隣接して配置され、前記第1駆動装置の少なくとも一部を共用する第2駆動装置の駆動により、前記一対の第2移動体に支持された前記保持部材とともに前記第2方向側の端部で近接又は接触した状態を維持して前記第2方向に平行な方向に移動して、前記保持部材上の物体と前記光学系との間に液体が保持される第1の状態から、前記光学系との間で液体を保持する第2の状態に遷移させる液体保持部材と、
を有する露光装置。
【請求項2】
前記液体保持部材は、前記第1移動体に設けられて前記第1駆動装置の駆動により前記第2方向に移動する請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記第1駆動装置は、発磁体とコイル体との一方を有する固定子と、前記発磁体と前記コイル体との他方を有し、前記第1移動体に接続されて前記固定子に対して前記第2方向に相対移動する可動子とを備え、
前記第2駆動装置は、前記固定子を共用するとともに、前記液体保持部材に接続され前記固定子に対して前記第2方向に相対移動する第2可動子を備える請求項1記載の露光装置。
【請求項4】
前記液体保持部材は、前記物体の露光に関する計測が行われる計測装置を有して前記第2駆動装置の駆動により前記第2方向に移動する計測ステージに設けられる請求項3記載の露光装置。
【請求項5】
前記二次元平面と略直交する第3方向に沿った、前記保持部材と前記液体保持部材との間の第1ギャップを計測する第1計測装置と、
前記第1計測装置の計測結果に基づいて、前記第1ギャップを調整する第1調整装置とを有する請求項1から4のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記第1調整装置は、前記保持部材と前記液体保持部材とが互いに近接した際に、前記前記保持部材と前記液体保持部材との少なくとも一方の前記第3方向に沿った位置を調整することを特徴とする請求項5記載の露光装置。
【請求項7】
前記第2方向の前記保持部材と前記液体保持部材との間の第2ギャップを計測する第2計測装置と、
前記第2計測装置の計測結果に基づいて、前記第2ギャップを調整する第2調整装置と
をさらに備えたことを特徴とする請求項5または6記載の露光装置。
【請求項8】
前記第1移動体及び前記一対の第2移動体を有するステージユニットが複数設けられ、
前記保持部材は、前記複数のステージユニット間を相互に移動可能である請求項1から7のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項9】
前記第2移動体に支持された前記保持部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を計測する位置計測系をさらに備え、
前記複数のステージユニットは、前記一対の第2移動体の間に形成され、前記第2方向に沿って貫通した空間部をそれぞれ有し、
前記保持部材の前記二次元平面に実質的に平行な一面に計測面が設けられ、
前記位置計測系は、前記複数のステージユニットの一つの前記空間部内に前記計測面に対向してその一部が配置され、前記計測面に少なくとも1本の計測ビームを照射して該計測ビームの前記計測面からの光を受光するヘッドを有し、前記第2方向に平行な方向の他側を固定端として前記第2方向に沿って延びる片持ち支持構造の計測アームを含み、前記ヘッドの出力に基づいて前記複数のステージユニットの一つに保持される前記保持部材の少なくとも前記二次元平面内の位置情報を計測する請求項8記載の露光装置。
【請求項10】
前記保持部材は、その内部を光が進行可能な中実部を少なくとも一部に有し、
前記計測面は、前記保持部材の前記物体の載置面側に前記中実部に対向して配置され、
前記ヘッドは、前記物体の載置面とは反対側に前記中実部に対向して配置されている請求項9に記載の露光装置。
【請求項11】
前記計測面には、グレーティングが形成され、
前記ヘッドは、前記グレーティングに少なくとも1本の計測ビームを照射し、該計測ビームの前記グレーティングからの回折光を受光する請求項9又は10に記載の露光装置。
【請求項12】
前記グレーティングは、前記第1方向、及び前記二次元平面内で前記第2方向に垂直な第2方向をそれぞれ周期方向とする第1及び第2回折格子を含み、
前記ヘッドは、前記計測ビームとして前記第1及び第2回折格子にそれぞれ対応する第1方向計測用ビーム及び第2方向計測用ビームを照射し、前記第1方向計測用ビーム及び第2方向計測用ビームそれぞれの前記グレーティングからの回折光を受光し、前記位置計測系は、前記ヘッドの出力に基づいて、前記保持部材の前記第1及び第2方向に関する位置情報を計測する請求項11に記載の露光装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の露光装置を用いて物体を露光することと、
前記露光された物体を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2013−513224(P2013−513224A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552258(P2011−552258)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/JP2010/072180
【国際公開番号】WO2011/068254
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/JP2010/072180
【国際公開番号】WO2011/068254
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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