説明

露光装置

【課題】露光装置の経時変化等の原因により、露光時におけるマスク位置が露光対象基材の移動方向に直交する方向にずれたときに、マスク位置を精度よく補正することができる露光装置を提供する。
【解決手段】光源とマスク3との間に介在するように基準板4が配置されており、基準板4には、各マスク3毎に、マスク3が配置されるべき位置の基準を示す第1基準マーク41が設けられている。カメラ51により第1基準マーク41及びマスクアライメントマーク(スリット32)を検出し、制御部7は、検出された両者間の距離aに基づいて、フィルム移動方向に直交する方向におけるマスク3のずれを検出し、駆動部6によりマスク3の位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向に連続的に供給されるフィルム等の露光対象基材を連続的に露光する露光装置に関し、特に、露光時におけるマスク位置が露光対象基材の移動方向に直交する方向にずれたときに、マスク位置を精度よく補正できる露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶表示装置等のガラス基板の表面に貼付される偏光フィルムは、図4に示すような露光装置により製造される。この図4に示す露光装置においては、表面に所定の露光材料が塗布されたフィルム2が白矢印方向に連続的に供給され、図4における紙面手前方向から出射された露光光を複数本のスリット31が設けられたマスク3に透過させて、フィルム2上の露光材料に露光光をスキャンすることにより、フィルム移動方向に延びるように、帯状の露光領域を形成する(例えば、特許文献1)。
【0003】
マスク3は、フィルム移動方向の上流側及び下流側に、夫々フィルム移動方向に直交する方向に複数枚が適長間隔をおいて配置されてマスク列が構成されており、フィルム移動方向からみたときに、上流側のマスク列の隣接するマスク間に下流側のマスクが配置され、複数枚のマスクが千鳥状に配置されている。各マスク3には、露光光を透過させるスリット31とマスクアライメントマークとが設けられている。マスクアライメントマークは、例えばフィルム移動方向に直交する方向に延びるスリット32である。そして、露光開始時のマスク3の初期位置は、例えばフィルム2の先端に設けられた露光位置決定用マーク2bにより決定される。即ち、図4(b)に示すように、各マスク3の上方には、スリット32及び露光位置決定用マーク2bを検出するカメラ51が設けられており、各カメラ51による検出画像は制御部7に送信される。そして、制御部7は、例えばマスクアライメントマークとしてのスリット32を介して検出される露光位置決定用マーク2bの位置が、スリット32の中央に位置するように、例えばアクチュエータ等の駆動部6を制御する。これにより、露光開始時のマスク3の初期位置が決定される。
【0004】
また、フィルム移動方向における上流側には、アライメントマーカ8が設けられており、フィルム2の側部に蛇行検出用マーク2aを形成する。そして、フィルム2の側部付近における上方には、フィルム移動方向に直交する方向に配列されたマスク列と並ぶように、カメラ52が設けられており、フィルム2の側部に形成された蛇行検出用マーク2aを検出するように構成されている。
【0005】
マスク3の各スリット31は、フィルム2上への露光光照射領域が例えば液晶表示装置の1画素に対応する幅になるようにフィルム移動方向に延び、フィルム移動方向に直交する方向にスリット幅と同一ピッチで複数本設けられてスリット列が構成されており、1枚のマスク3につき2列のスリット列がフィルム移動方向に配置され、各スリット列には、相互に偏光方向が異なる露光光が照射される。そして、このスリット列の各スリット31は、フィルム移動方向からみたときに、相互に他方のスリット列のスリット31間に位置し、全てのスリット31が隣接するように配置されている。また、フィルム移動方向からみたときに、各マスク3のフィルム移動方向に直交する方向における一端部のスリット31は、フィルム移動方向に隣接する他のマスク3の他端部のスリットと隣接するように配置されている。
【0006】
以上のように構成された複数枚のマスク3及び各マスクのスリット31により、露光の際には、図5に示すように、各スリット31に対応するように帯状の露光領域21が複数本相互に隣接するように形成されていく。そして、偏光方向が相互に異なる露光光が照射されることにより、隣接する露光領域21間では、例えば配向方向が相互に異なる配向膜が形成されていく。このような露光装置においては、露光時にフィルム2が蛇行すると、これに伴い、露光光の照射位置が変化するため、例えば図5(b)に示すように、カメラ52により検出した蛇行検出用マーク2aの位置に基づいて、制御部7は、駆動部6により、マスク3の位置をフィルム2の蛇行量に合わせてアライメントする。このように、図4及び図5に示す従来の露光装置においては、フィルム2の先端に設けられた露光位置決定用マーク2bにより、マスク3の初期位置を決定し、露光時においては、フィルム2の蛇行量に合わせてマスク位置をアライメントしている。
【0007】
特許文献2には、ステージ上に載置された基板を露光する露光装置が開示されており、ステージに設けられたアライメントマークをその上方に配置したカメラで検出し、また、ステージ位置をレーザ測定器で検出して、双方の検出結果を比較することにより、マスク位置のずれを検出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/113933号
【特許文献2】特開第2004−259870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の露光装置においては、図6に示すように、露光装置の経時変化等の原因により、露光時にマスク位置がずれた場合、これを補正することができない。即ち、従来の露光装置においては、フィルム2の先端に設けられた露光位置決定用マーク2bにより、マスク3の初期位置を決定し、露光時には、フィルム2の蛇行量を補正するように全てのマスク3をフィルム2の蛇行量だけ移動させている。よって、露光時にマスク3自体の位置がずれた場合においては、このずれを補正できない。よって、例えばフィルム移動方向に直交する方向に複数枚のマスク3が配列されている場合においては、隣接するマスク間の距離が変化し、これにより、未露光又は過露光の領域が生じる露光不良となる。
【0010】
特許文献2に開示された露光装置は、連続的に供給されるフィルム等の露光対象基材を露光するものではない。よって、図4乃至図6に示すような露光装置に特許文献2の技術を適用することはできない。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、露光装置の経時変化等の原因により、露光時におけるマスク位置が露光対象基材の移動方向に直交する方向にずれたときに、マスク位置を精度よく補正することができる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る露光装置は、蛇行検出用マークが設けられた露光対象基材を第1方向に連続的に搬送しつつ前記第1方向に直交する第2方向に設けられた露光パターンを露光する露光装置において、
露光光を出射する光源と、
前記第2方向に関して分割され全体で前記露光パターンを構成する分割パターンが夫々形成されると共にマスクアライメントマークが夫々設けられた複数個のマスクと、
前記光源と前記マスクとの間又は前記マスクと前記露光対象基材との間に介在するように配置され、前記第2方向に関して夫々前記マスクが配置されるべき位置の基準となる複数個の第1基準マークと、前記露光対象基材に設けられた蛇行検出用マークとの相対的位置関係の基準となる第2基準マークとが設けられた基準部材と、
前記マスクアライメントマーク、前記第1基準マーク、前記第2基準マーク及び前記蛇行検出用マークを検出する検出部と、
前記マスク又は前記マスク及び前記基準部材を前記第2方向に駆動する駆動部と、
前記検出部により検出された前記マスクアライメントマーク、前記基準マーク及び前記蛇行検出用マークの位置を基に、前記駆動部により前記第2方向における前記マスクの位置を調節する制御部と、
を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る露光装置においては、例えば、前記制御部は、前記第1基準マークと前記マスクアライメントマークとの相対的位置関係に基づいて、前記マスクの位置を調節して、前記複数個のマスクの位置を決めることができる。
【0014】
また、例えば、前記制御部は、前記マスクアライメントマークと前記第1基準マーク、及び前記第2基準マークと前記蛇行検出用マークの相対的位置関係に基づいて、前記マスクの位置を前記露光対象基材との位置関係が一定になるように調節する。又は、例えば、前記制御部は、前記マスクアライメントマークと前記第1基準マーク、及び前記第2基準マークと前記蛇行検出用マークの相対的位置関係に基づいて、前記基準部材の位置を前記露光対象基材との位置関係が一定になるように調節し、前記マスクの位置を前記基準部材との位置関係が一定になるように調節する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る露光装置は、基準部材に各マスクに対応して夫々第1基準マークを設け、露光時にマスク間ピッチが変動しようとしても、マスクの位置は、検出部がマスクアライメントマークと第1基準マークとを同時に検出して、マスクアライメントマークの位置が第1基準マークの位置に一致するように、マスクの位置を制御部が調整するので、複数個のマスクは、そのマスク間ピッチが常に一定になるように制御される。よって、露光時の経時変化等によりマスク間ピッチが所定値からずれることはないため、高精度の露光が可能となる。
【0016】
また、本発明においては、露光開始時におけるマスクの初期位置は、検出部が露光対象基材の蛇行検出用マークも、マスクアライメントマークと第2基準マークと同時に検出しているので、露光対象基材の蛇行検出用マーク、第2基準マーク、第1基準マーク及びマスクアライメントマークを介して、前記露光対象部材に対する前記各マスクの位置関係を決めることができる。よって、露光位置決定用のマークが設けられていないフィルムも高精度で露光できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a),(b)は、本発明の実施形態に係る露光装置を示す図である。
【図2】(a),(b)は、本発明の第2実施形態に係る露光装置を示す図である。
【図3】(a),(b)は、本発明の第3実施形態に係る露光装置を示す図である。
【図4】(a),(b)は、従来の露光装置において、マスクの初期位置を決定する工程を示す図である。
【図5】(a)は、従来の露光装置による露光によりフィルムに形成される露光領域を示す図、(b)はフィルムの蛇行を補正する工程を示す図である。
【図6】露光時におけるマスクの位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1(a),図1(b)は、本発明の第1実施形態に係る露光装置を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る露光装置には、図4に示す従来の露光装置と同様に、表面に所定の露光材料(例えば配向膜材料)が塗布された露光対象部材としてのフィルム2が図1の紙面手前方向に連続的に供給される。フィルム移動方向における露光装置の上流側には、図4及び図5に示す従来の露光装置と同様に、アライメントマーカ8が設けられており、フィルム2の側部に蛇行検出用マーク2aを形成するようになっている。
【0019】
本実施形態の露光装置においては、フィルム移動方向(第1方向)に直交する方向(第2方向)に、複数個のマスク3が配置されている。このマスク3は、例えば、図4及び図5に示すように、平面視で、フィルム移動方向の上流側及び下流側に2列に3個ずつ適長間隔をおいて設けられており、フィルム移動方向からみたときに、上流側のマスク列の隣接するマスク間に下流側のマスクが配置され、6枚のマスク3が千鳥状に配置されている。各マスク3には、露光光が透過するスリット31(図4、図5参照)と、例えばフィルム移動方向に直交する方向のマスク位置を示すマスクアライメントマークとしてのスリット32とが設けられている。図1に示すように、各マスク3の上方には、例えば2焦点型のカメラ51が設けられており、焦点位置がマスク3の表面及び後述する基準板4の基準マーク41の位置になるように調節されている。各カメラ51による検出画像は制御部7に送信される。そして、制御部7は、例えばアクチュエータ等の駆動部6を制御してマスク3の第2方向の位置を調節する。
【0020】
マスク3の上方には、マスク3の露光用スリット31(図4,図5参照)に露光光を照射する光源が配置されており、フィルム2を第1方向に連続的に移動させつつ、この露光光を、複数本のスリット31を介してフィルム2上に照射することにより、フィルム2上の露光材料を露光光によりスキャンし、フィルム移動方向(第1方向)に延びる帯状の露光領域(図5参照)を形成する。
【0021】
本実施形態においては、光源とマスク3との間に介在するようにして、例えばガラス等の光透過性の材料からなる基準板4が配置されており、この基準板4にはマスク毎にマスク3が配置されるべき位置の基準を示す第1基準マーク41が設けられている。そして、カメラ51により、マスクアライメントマークのスリット32及び基準マーク41を検出し、検出画像は、制御部7に送信されるように構成されている。そして、制御部7は、カメラ51により検出されるスリット32及び基準板4の基準マーク41の位置に基づいて、駆動部6を制御し、駆動部6により、例えばマスク3及び基準板4をフィルム移動方向に直交する方向に駆動できるように構成されている。なお、本実施形態においては、マスク3が所定位置にあるときには、図1(b)に示すように、カメラ51側からみて、フィルム移動方向に直交する方向におけるスリット32の中心位置と基準マーク41とは、距離aだけ離隔している。
【0022】
フィルム移動方向における上流側には、図3及び図4に示す従来の露光装置と同様に、アライメントマーカ8が設けられており、フィルム2の側部に蛇行検出用マーク2aを形成する。そして、フィルム2の側部付近における上方には、フィルム移動方向に直交する方向に配列されたマスク列用カメラ51と並ぶように、カメラ52が設けられており、フィルム2の側部に形成された蛇行検出用マーク2aを検出するように構成されている。
【0023】
基準板4の側部は、フィルム2の側部の蛇行検出用マーク2aの上方まで延びて配置されている。そして、基準板4の側部には、蛇行検出用マーク2aとの相対的位置関係の基準となる第2基準マーク42が設けられている。本実施形態における検出部は、例えば2焦点型のカメラ52であり、カメラ52により、蛇行検出用マーク2a及び第2基準マーク42を検出する。制御部7は、マスク3の初期設定時に、蛇行検出用マーク2aを利用して、各マスク3の位置決めをし、又は、制御部7は、カメラ52により検出される蛇行検出用マーク2aの位置がフィルム移動方向に直交する方向にずれたときに、第2基準マーク42と蛇行検出用マーク2aとの位置関係から蛇行量を検出し、マスク3の位置を検出した蛇行量だけ移動させる。このとき、制御部7は、駆動部6により、例えばマスク3と共に基準板4もマスク3と同時一体的に移動させてもよいし、マスク3のみを移動させてもよい。但し、駆動部6によりマスク3のみを移動させる場合においては、基準マーク41に対するスリット32の相対的位置関係が変化するため、制御部7は、基準マーク41に対するスリット32の所定の位置関係を補正する。
【0024】
マスク3の各スリット31は、フィルム2上への露光光照射領域が例えば液晶表示装置の1画素に対応する幅になるようにフィルム移動方向に延び、フィルム移動方向に直交する方向にスリット幅と同一ピッチで複数本設けられてスリット列が構成されており、1枚のマスク3につき2列のスリット列がフィルム移動方向に配置され、各スリット列には、相互に偏光方向が異なる露光光が照射される。そして、このスリット列の各スリット31は、フィルム移動方向からみたときに、相互に他方のスリット列のスリット31間に位置し、全てのスリット31が隣接するように配置されている。また、フィルム移動方向からみたときに、各マスク3のフィルム移動方向に直交する方向における一端部のスリット31は、フィルム移動方向に隣接する他のマスク3の他端部のスリット31と隣接するように配置されている。
【0025】
このように構成された複数枚のマスク3及び各マスクのスリット31により、露光の際には、図5に示すように、各スリット31に対応するように帯状の露光領域21を複数本、相互に隣接するように形成する。そして、露光時にフィルム2が蛇行した場合においては、カメラ52により検出した蛇行検出用マーク2aの位置に基づいて、制御部7は、駆動部6により、マスク3の位置をフィルム2の蛇行量に合わせてアライメントすることもできる。
【0026】
次に、本実施形態に係る露光装置の動作について説明する。露光対象のフィルム2は、例えば供給リールにロール状に巻き取られた状態から、露光装置内に供給される。フィルム2の側部には、アライメントマーカ8により、蛇行検出用マーク2aが付された状態で、マスク3の下方位置に到達する。
【0027】
そして、カメラ51が基準板4の各第1基準マーク41と、各マスク3のマスクアライメントマークとしてのスリット32とを同時に検出し、この検出結果に基づいて、制御部7は、各第1基準マーク41の位置と、各スリット32の中心の位置との間の距離aを求める。一方、カメラ52は、基準板4の第2基準マーク42と、フィルム2の蛇行検出用マーク2aとを同時に検出し、この検出結果に基づいて、制御部7は、第2基準マーク42と蛇行検出用マーク2aとの間の距離を求める。これにより、制御部7は、フィルム2と、各マスク3との位置関係を、蛇行検出用マーク2a、第2基準マーク42、第1基準マーク41及びスリット32(マスクアライメントマーク)の位置の検出結果を基に、把握することができる。そして、この露光開始前のフィルム2と、各マスク3との位置関係を基に、複数個のマスク3のマスク間ピッチ及び複数列(図4,5は2列)間のマスクの配置関係を、所定のものに設定すべく、制御部7は駆動部6により各マスク3の位置を調整する。即ち、第1基準マーク41とスリット32の中心位置との間の距離aが所定のものになるように、各マスク3の位置を、基準板4の第1基準マーク41の位置を基準にして合わせる。このとき、マスク3のフィルム2に対する位置関係は、第2基準マーク42と蛇行検出用マーク2aを基に決める。この場合に、第2基準マーク42と蛇行検出用マーク2aとの間の距離をbとする。なお、駆動部6は、上述のマスク3の位置の決定に際し、マスク3の位置のみを移動させて調整すればよい。但し、第2基準マーク42と蛇行検出用マーク2aとが一致するように、基準板4も移動させて、基準板4の位置も調整することとしてもよい。このようにして、露光開始時のマスク3の初期位置が決定される。
【0028】
その後、フィルム2を第1方向に移動させつつ、露光光源から露光光を各マスク3に照射し、各マスク3のスリット31を介して、露光光をフィルム2上に照射して、露光光によりフィルム2をスキャンする。先ず、2列のマスク列のうち、フィルム移動方向上流側のマスク列のマスク3の更に上流側のスリット31の列を透過した露光光の照射により、フィルム2の表面の配向材料膜が照射された露光光の偏光方向に応じて光配向して配向膜が形成され、帯状の露光領域21(図5参照)が例えば表示装置の画素幅と同一の幅で、また、表示装置の画素幅と同一の幅ずつ離隔して形成されていく。そして、この露光領域間の未露光の領域には、上流側のマスク3のフィルム移動方向下流側のスリット列を透過した露光光が照射されて露光される。この露光光は、前記上流側のスリット列に透過された露光光とは偏光方向が異なるため、隣接する露光領域間で配向方向が異なる配向膜が交互に形成される。2列のマスク列のうち、フィルム移動方向の下流側に配置されたマスク3においても、その各マスク3の2列のスリット列31により、同様に帯状の露光領域21がその偏光方向が交互に異なるように形成される。
【0029】
このようにして、フィルム露光が行われる。この露光時には、カメラ51により基準板4の第1基準マーク41とマスク3のスリット32とが常時観察されており、制御部7及び駆動部6により、マスク3の基準板4に対する位置が常に一定になるように制御されている。即ち、カメラ51により、第1基準マーク41とスリット32とが撮像され、制御部7は、各マスク3について、第1基準マーク41の位置と、スリット32の中心位置との間の距離aが、常に、その各マスク3についての初期値に一致するように、駆動部6を介して、マスク位置を調整する。よって、プロセス中の経時変化等により、マスク3間のピッチ又はマスク位置が変動しようとしても、各マスク3の位置は、基準板4の第1基準マーク41を基に、基準板4に対して不動に制御される。
【0030】
これにより、1個の露光パターンを第2方向について複数個に分割して、夫々、個別のマスク3にその分割パターンを設けることにより、各マスク3の露光パターンをフィルム2上で結合して1個の露光パターンをフィルム上に再現しようとする場合、各マスク3の相互間の位置関係を、基準板4を使用して、常に一定に保持できる。しかし、フィルム2が第1方向へ連続的に搬送されている間に、フィルム2には蛇行が生じる場合がある。このように、フィルム2に蛇行が生じると、マスク3間の位置関係は一定であっても、フィルム2に露光されるパターンの位置は、フィルム2上で所定位置から偏倚する。
【0031】
そこで、本発明においては、蛇行検出用パターン2aを利用して、フィルム蛇行に対応して、マスク3の第2方向の位置も調整することが好ましい。即ち、カメラ51により、基準板4上の第1基準マーク41及びマスクアライメントマーク(スリット32)を検出し、カメラ52により、基準板4上の第2基準マーク42及び蛇行検出用マーク2aを検出しているので、図2(a)に示すように、フィルム2に蛇行が生じた場合、蛇行検出用マーク2aの位置の変動を、蛇行検出用マーク2aの位置と基準板4の第2基準マーク42との間の距離bの変動(b−Δb)として検出し、蛇行補正のためのマスク3の調整距離を、基準板4の第1基準位置41とマスク3のスリット32の中心位置との間の距離aの変動(a−Δb)として検出する。即ち、フィルム蛇行により、距離bが、その初期値をbとし、変動分をΔbとして、b0−Δbに変動した場合、図2(b)に示すように、各マスク3を、距離aが、その初期値をaとした場合、a−Δbになるように、駆動部6により、移動させる。但し、これらの数式は、図2に示すように、フィルム蛇行により、蛇行検出用マーク2a及びスリット32が、初期状態から第2基準マーク42及び第1基準マーク41を通り越して、図2(a)に示す白抜き矢印方向に移動した場合のものであり、フィルム蛇行が逆方向であるように、蛇行検出用マーク2aが初期状態から第2基準マーク42を通り越していない場合は、マスク3の基準板4に対する位置はa+Δbとなる。いずれにしても、フィルム2が蛇行により、第2方向に振れた場合に、マスク3もその振れ量だけ、同一方向に移動させればよい。このようにして、フィルム蛇行が生じた場合も、マスク3の位置を、スリット32と第1基準マーク41、及び第2基準マーク42と蛇行検出用マーク2aの相対的位置関係に基づいて、マスク3の位置とフィルム2の位置との関係が一定になるように調節することができる。よって、フィルム蛇行が生じても、複数個のマスク3によるフィルム上の露光パターンは、常に、フィルム上の所定の位置に形成される。
【0032】
なお、フィルム蛇行が生じた場合に、図2に示す実施形態は、マスク3のみを移動させるものであるが、図3(a)、(b)に示すように、フィルム蛇行が生じた場合に、マスク3の移動と共に基準板4も調整移動させてもよい。即ち、図3(a)に示す状態から、図3(b)に示すように、フィルム2が蛇行して、蛇行検出用マーク2aが第2方向に変動した場合、基準板4を、第2基準マーク42と蛇行検出用マーク2aとの間の距離bが初期値bに一致するように(初期値bのままであるように)、制御部7は駆動部6により基準板4を移動させる。また、この基準板4の移動に伴い、制御部7は駆動部6により、マスク3を、第1基準マーク41とスリット32との間の距離aが初期値aに一致するように(初期値aのままであるように)、移動させる。このようにして、フィルム蛇行に応じて、基準板4及び各マスク3を第2方向に移動させ、マスク3及び基準板4のフィルムに対する相対的に位置関係を、一定に保持する。よって、フィルム蛇行が生じても、複数個のマスク3によるフィルム上の露光パターンは、常に、フィルム上の所定の位置に形成される。
【0033】
以上のように、本実施形態においては、マスク毎にマスクが配置されるべき位置の基準を示す基準マーク41が設けられた基準板4が設けられていることにより、露光時にマスク3の位置がずれた場合においても、基準マーク41を基準にして、マスク位置を精度よく補正することができ、露光不良を確実に防止できる。このようにして、フィルム2には、フィルム移動方向(第1方向)に延びるようにして、例えば表示装置の画素幅と同一の幅で、帯状の偏光部21が形成され、第2方向に隣接する偏光部21の偏光方向が相互に異なる偏光フィルムを得ることができる。そして、この偏光部21の幅及び位置は高精度で、所定位置に制御される。
【0034】
なお、本実施形態においては、基準板4が光源とマスク3との間に介在するように設けられている場合を説明したが、基準板4はマスク3とフィルム2との間に介在するように設けられていてもよい。
【0035】
更に、本実施形態においては、マスクアライメントマークがフィルム移動方向に直交する方向に延びるスリット32である場合について説明したが、基準マーク41との間で相対的な位置関係をカメラ51等の検出部により認識できるものであれば、マスクアライメントマークの態様は限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、フィルム等の露光対象基材を一方向に移動させつつ連続的に露光する際に、マスク位置のずれを、基準板に設けた第1基準マークを指標として精度よく補正できるものであり、例えば液晶表示装置等の表面に貼付される偏光フィルムの製造に好適である。
【符号の説明】
【0037】
2:フィルム、2a:蛇行検出用マーク、2b:露光位置決定用マーク、3:マスク、31:スリット、32:スリット、4,40:基準板、41:第1基準マーク、42:第2基準マーク、51,52:カメラ、6:駆動部、7:制御部、8:アライメントマーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇行検出用マークが設けられた露光対象基材を第1方向に連続的に搬送しつつ前記第1方向に直交する第2方向に設けられた露光パターンを露光する露光装置において、
露光光を出射する光源と、
前記第2方向に関して分割され全体で前記露光パターンを構成する分割パターンが夫々形成されると共にマスクアライメントマークが夫々設けられた複数個のマスクと、
前記光源と前記マスクとの間又は前記マスクと前記露光対象基材との間に介在するように配置され、前記第2方向に関して夫々前記マスクが配置されるべき位置の基準となる複数個の第1基準マークと、前記露光対象基材に設けられた蛇行検出用マークとの相対的位置関係の基準となる第2基準マークとが設けられた基準部材と、
前記マスクアライメントマーク、前記第1基準マーク、前記第2基準マーク及び前記蛇行検出用マークを検出する検出部と、
前記マスク又は前記マスク及び前記基準部材を前記第2方向に駆動する駆動部と、
前記検出部により検出された前記マスクアライメントマーク、前記基準マーク及び前記蛇行検出用マークの位置を基に、前記駆動部により前記第2方向における前記マスクの位置を調節する制御部と、
を有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1基準マークと前記マスクアライメントマークとの相対的位置関係に基づいて、前記マスクの位置を調節して、前記複数個のマスクの位置を決めることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記マスクアライメントマークと前記第1基準マーク、及び前記第2基準マークと前記蛇行検出用マークの相対的位置関係に基づいて、前記マスクの位置を前記露光対象基材との位置関係が一定になるように調節することを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記マスクアライメントマークと前記第1基準マーク、及び前記第2基準マークと前記蛇行検出用マークの相対的位置関係に基づいて、前記基準部材の位置を前記露光対象基材との位置関係が一定になるように調節し、前記マスクの位置を前記基準部材との位置関係が一定になるように調節することを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−97276(P2013−97276A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241671(P2011−241671)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】