静電チャック電源
【課題】半導体ウェーハ処理装置内の静電チャック上に半導体ウェーハ等の基板を保持する方法、および装置を提供する。
【解決手段】任意の極性の出力電圧レベルにおいて、電流をソーシング及びシンキング両方に実施できる高圧直流電源104を、静電チャック114の少なくとも1つの埋込み電極118に結合し、漏れ電流、チャック対ウェーハ電位、後部ガス漏れレート等を含む最適チャッキングの任意の指標に応じて、チャッキング電圧を動的に制御する。
【解決手段】任意の極性の出力電圧レベルにおいて、電流をソーシング及びシンキング両方に実施できる高圧直流電源104を、静電チャック114の少なくとも1つの埋込み電極118に結合し、漏れ電流、チャック対ウェーハ電位、後部ガス漏れレート等を含む最適チャッキングの任意の指標に応じて、チャッキング電圧を動的に制御する。
【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は一般的に半導体ウェーハ処理装置内のワークピースを保持する方法および装置に関し、更に詳細には、チャックが半導体ウェーハを最も適切に保持するようにチャッキング電圧を静電チャックに供給する方法および装置に関する。
【従来の技術】
【0002】
静電チャックは、例えば半導体ウェーハのようなワークピースを半導体ウェーハ処理装置内のペデスタル上に、ウェーハが処理され得るように保持するために用いられる。静電チャックの設計は様々であるが、それらチャックは全て、チャックとウェーハの間に電界を確立するために、チャックに埋め込まれた1つ又は複数の電極へ一定電圧を供給するという原理に基づく。電界は、ウェーハと電極上にそれぞれ蓄積するように反対極性の電荷を誘発する。反対に分極された電荷の間の静電吸引力はウェーハをチャックに向かって引っ張り、それによってウェーハをチャック上に保持する。クーロンタイプのチャックにおいて、保持力の大きさはウェーハとチャック電極間の電位差に正比例する。チャック材料の抵抗率が比較的小さく、電荷が電極からチャック表面へ移動するJohnsen−Rahbekタイプのチャックにおいては、保持力の大きさはウェーハとチャック表面間の電位差に正比例する。
【0003】
最良のプロセス結果を与えるチャッキング電圧は様々なチャッキング電圧において多数の「ダミー」ウェーハを処理することによって実験的に決定される。従って、最良の結果を与えるチャッキング電圧はウェーハを処理するのに繰り返して用いられる。処理に際して、各ウェーハは、同じ一定チャッキング電圧を用いて保持される。チャッキング力、チャックの漏れ電流、後部ガス冷却効率、等に影響するプロセスパラメータのウェーハ処理期間中における変動は考慮されない。従って、全てのチャッキング状況に適合するように1つのチャッキング電圧が用いられる。次に考察するように、1つのサイズが全てに適合するというこの思考方法は処理の変則性、断続的なウェーハのスティッキング、または、実質的なヘリウム漏れへと導くことがあり得る。
【0004】
半導体ウェーハ処理装置において、静電チャックはペデスタルアセンブリの一部分を形成する。ペデスタルアセンブリは、ウェーハを加熱または冷却し、ウェーハバイアスを供給しプラズマ電力(陰極電極)を供給し、電力を静電チャックへ経路指定する各種構成要素を含む。静電チャックは、処理に際して、ウェーハをペデスタルにクランプするために用いられる。ウェーハの処理に用いられる材料およびプロセスは温度に対して極度に敏感であるので、温度制御はウェーハ処理の重要なアスペクトである。処理中の熱伝達の不十分性の結果としてウェーハ材料が極度の温度変動に曝されると、ウェーハプロセスの性能はウェーハ損傷をまねきかねない。従って、ペデスタルは、一般的に、エッチング、物理気相堆積(PVD)、或いは化学気相堆積(CVD)応用に用いられるようなヒートシンクまたはヒートソースを形成する。ウェーハとペデスタルの間で最も適切に熱を伝達するには、非常に大量のウェーハ表面をチャックの支持表面と物理的に接触させ、かつ表面を均一な力と接触させようと試行するために極めて均一に近い静電力を使用しなければならない。
【0005】
ウェーハ処理中に、チャッキング電圧が実質的に一定である一方、ウェーハを保持するチャッキング力は、所与のプロセスシーケンス又は処方の期間中にかなり変化する。一般に、チャンバ環境が変化したときに、ウェーハが比較的静止状態を維持するような大きい公称保持力を供給するために、公称一定チャッキング電圧がチャッキング電極へ印加される。ウェーハは静止しているが、熱伝達特性はかなり変化する。例えばプロセス処方が実施されるにつれて、チャンバ温度および圧力が変化する。チャッキング電極に印加される電圧が一定であれば、チャンバ環境のこの種の変動はウェーハを保持する力を変化させる。チャッキング力の可変性はチャックとウェーハの間の接触領域を変化させ、結果としてチャックからウェーハへの熱伝導ならびにウェーハの下からの後部ガス(例えばヘリウム)リークレートを変化させる。
【0006】
また、ウェーハが処理されるにつれて変動するチャッキング力は、ウェーハとウェーハの後部を汚染する特定の微粒子汚染物を生成するチャック表面の間に摩擦を生じさせる。その上、過度のチャッキング力は、プロセスが完了した後で、ウェーハを取り外すのに要する時間(チャック解除時間)を増大させ得る。チャック解除時間を最小化し、それによって、スループットを最大化するためには、良好な熱伝達を達成するのに必要な最小限のチャッキング力を供給することが望ましい。全てが一様に処理されるウェーハの最大スループットを達成するためには、ウェーハ毎に用いられるチャッキング力が、異なるウェーハを処理するときにも均一であることが保証されることも望ましい。
【0007】
ウェーハのチャック解除は、通常、チャッキング電圧に比較して反対の極性をもつ電圧を供給するか、または、ウェーハとチャックから残余電荷を除去するためにチャッキング電圧より小さい大きさの同じ極性をもつ電圧を供給することによって達成される。この種のチャック解除方法は当該技術分野においてよく知られていて、例えば、1995年10月17日付でBirang等に許可された共同譲渡済み米国特許第5,459,632号に記述されている。ウェーハをチャック解除するために用いられる方法は、一般に、チャッキング電圧の大きさに比例する一定デチャッキング電圧を印加する。酸化物ウェーハならびにシリコンウェーハ又は他のあらゆるタイプのウェーハ用として同じチャッキングおよびデチャッキング電圧が用いられる。この種の均一チャッキングおよびデチャッキング電圧は、デチャッキング電圧の印加が完了した後で、ウェーハを「スティッキング」させることがある。この種のスティッキングは、特にJohnsen−Rahbekタイプチャックにおいて問題である。
【0008】
既に言及したように、Johnsen−Rahbekタイプチャックにおいては、チャック本体は比較的小さい抵抗率の材料、例えば窒化アルミニウムで作成されているので、電荷はチャック電極からチャックの表面へ移動することが可能にされる。従って、チャック表面とウェーハの間の接触点においてウェーハを通って小さい電流が流れる。予測されるように、この電流流量は、チャック表面へのウェーハ後部接触点の抵抗と共に変化する。従って、抵抗率の大きい表面をもつ酸化物ウェーハは殆ど通さない。他方、抵抗率の小さい表面をもつシリコンウェーハはかなりの電流を通す。全ての形式のウェーハに対して単一チャッキング電圧が用いられると、幾らかのウェーハ(例えば伝導率が比較的大きいシリコンウェーハ)は、他のウェーハ(例えば伝導率が比較的小さい酸化物ウェーハ)の場合と異なる力によってチャックされるはずである。チェッキング力を増大するとウェーハとチャック表面間の接触領域が増大し、結果として、漏れ電流流量が増大する。チャッキング力を減らした場合にはこれと逆である。過度の漏れ電流がウェーハを流れる場合、ウェーハは、チャック表面から容易に除去されない電荷不均衡を生じる電子放出を経験することがあり得る。この種の不均衡は、デチャッキング電圧が印加された後で、ウェーハに残留電荷を残留させることになる。この残留電荷はウェーハ「スティッキング」の根本的原因である。しかし、種々異なるタイプのウェーハは種々異なる量の漏れ電流を処理できるので、全てのタイプのウェーハの「安全な」漏れ電流を保証する値にチャッキング電圧を限定するだけでは、結果的に、種々異なるタイプのウェーハが広範囲に亙って異なるチャッキング力によってチャックされることになる。従って、幾らかのウェーハは不十分にチャックされ、他のウェーハは過度にチャックされることがあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、或る1つのウェーハに関して最適チャッキングパラメータを決定し、チャッキング電圧を適応可能に制御することによって最適パラメータを達成するようにウェーハをチャックすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来の技術に関連する欠点はチャッキング電圧を静電チャックに供給する方法および装置に関する本発明によって克服される。ここにチャッキング電圧は最適チャッキングの指標に敏感である。指標には最適漏れ電流、及び/又は、プロセス及び/又は処理されるウェーハのタイプに関するウェーハとチャック表面間の最適電圧差が含まれる。被制御チャッキング電圧を供給することによって、本発明は、例えばウェーハ保持力、チャック漏れ電流、後部ガス圧力、後部ガス漏れレート、直流ウェーハバイアス等のような1つ又は複数のプロセスパラメータを最適化するようにチャッキング電圧を制御する。
【0011】
詳細には、本発明は任意の極性の出力電圧において電流のソーシングおよびシンキング両方が可能である高電圧直流電源を含む。電源は3つのモードにおいて融通性豊かに作動する、即ち、1)設定値信号が当該電源の出力電圧を接地に対す一定値に制御する一定電圧モード、2)電源がウェーハとチャックの間で一定電位差(ΔV)を達成する出力電圧を生成する電圧追跡モード、および、3)電源が一定チャック漏れ電流の大きさを維持するように出力電圧を変更する状態において一定であるような出力電流を生成する電流追跡モードである。処理されるウェーハのタイプまたはチャンバ内において実施されるプロセスタイプに応じて任意のモードを選定可能である。
【0012】
本発明の実例となる実施形態において、高圧直流電源は、ペデスタルベース上に支持された静電チャックを含む半導体ウェーハ処理装置内のペデスタルアセンブリに結合される。本ペデスタルアセンブリはRF電源、直流電源用制御回路、および、処理装置制御ユニットにも結合される。本ペデスタルアセンブリは、一般に、半導体ウェーハ処理装置の真空チャンバ内に設置される。静電チャックは、通常、本体内に埋め込まれた少なくとも1つのチャッキング電極を備えた誘電チャック本体を有する。静電チャックはペデスタルベースによって支持され、これに結合される。ペデスタルベースは、一般に、加熱および冷却エレメント、後部ガス(ヘリウム)移送導管、静電チャック及び種々の熱電対への電力配線、および、陰極電極を含む。RF電源は陰極電極に結合される。
【0013】
本発明の電源が一定電圧モードにおいて作動中であるとき、接地、即ち、チャンバの壁に対する特定の所要出力電圧を表示するために設定値信号が電源に供給される。次に、本電源は設定値信号に比例する一定電圧を生成する。
【0014】
本発明の電源が、電極からウェーハへの一定電位差(ΔV)を達成するために電圧追跡モードにおいて作動中であるとき、静電チャック電源制御回路は、例えば陰極電極に印加されたピークツーピーク又はピークRF電圧のような信号を利用し、実験的に導出された伝達関数を用いてウェーハ電位Vdcを算定する。算定されたウェーハ電位に応答して、電源はウェーハとチャック電極の間に一定電位差(ΔV=Vdc−Vchuck)が維持されるように、チャッキング電圧Vchuck、即ち、チャック電極への電圧を制御する。電位差は、直流電源からの出力電圧の動的調節を介して制御される。ペデスタルベースへ結合されたRF信号のピークツーピーク電圧はウェーハ電位を表す実例的信号である。この信号は電源に供給され、その時チャンバ内において起きている特定プロセスに関する所要電位差を表示する設定値信号と比較される。この比較の結果として得られる差信号は、ウェーハにかかる一定の力を維持しようと試みるようにチャッキング電圧を調節するために電源によって用いられる。
【0015】
電源が電流追跡モードにおいて作動中であるとき、設定値信号は、特定のウェーハタイプおよびチャンバ内で実施されるプロセスから独立した漏れ電流を確立する。出力電流が監視され、チャック漏れ電流を実質的に一定のレベルに維持するように電源チャッキング電圧が変更される。この仕方において、タイプの異なるウェーハが、電子放出、及び/又は、プロセスの終端におけるウェーハのスティッキングを引き起こす可能性のある過度の電流量をこれらのウェーハに流すことなしに、チャックされ得る。
【0016】
任意の極性の出力電圧における電流を電源全体がシンキング及びソーシング可能にする状態において、負電圧電源と正電圧電源を「背負わせる(ピギバッキング)」ことによって直流電源が形成される。解説的に図示される具体化例において、最大負電圧必要条件を超過する負ピーク電圧をもつ負電圧電源が、最大正電圧必要条件に負のピーク電圧を加えた電圧を超過する最大正電圧をもつ正電圧電源に結合される。負電圧電源の出力は、正電圧電源のための一定基準電圧を形成する。この仕方において、組合わされた出力を、装置の負と正の必要条件の間で必要とされるあらゆる電圧にスイングするためには、正電源だけが変更されることが必要である。更に、最大負から最大正電源電圧までの間の任意の電圧において当該装置がチャッキング装置に正の(電流ソース)または負の(電流シンク)電流を供給できるように、一定電流シンク回路によって電源の出力にそれぞれ予負荷がかけられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を組み込む半導体ウェーハ処理装置の装置構成図を示す。
【図2】本発明の可変直流電圧電源の詳細な構成図を示す。
【図3】電源の一実施形態の概略結線図を示す。
【図3A】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3B】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3C】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3D】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3E】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3F】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3G】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3H】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3I】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3J】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図4】図1および2に示す電源からの動作および出力の図表的表現を示す。
【発明の実施の形態】
【0018】
本発明の教示は添付図面と関連して以下の記述を考察することによって容易に理解され得る。
【0019】
理解を容易にするために、可能であれば、これらの図面に共通する同じエレメントを示すために同じ参照番号を用いた。
【0020】
図1は、1つ又は複数のプロセスパラメータを最適化するためにチャッキング電圧を生成する動的チャッキング電圧制御技法に関する本発明を具体化する半導体ウェーハ処理装置100の装置構成図である。詳細には、静電チャック電源104は、最適チャッキングの指標、即ち、ウェーハタイプおよび実施中のプロセスに関して当該ウェーハが最適にチャックされていることを示す指標に敏感な出力電圧を生成する。本発明は、例えば一定のウェーハ対チャック電位差、一定のチャック漏洩電流、一定のチャッキング力、一定の後部ガス漏れレート又は圧力、基板にかかる一定直流バイアス電圧などの特定プロセスパラメータを最適化するようにチャッキング電圧を制御する。以下に示す本発明の特定実施形態においては、特定のウェーハタイプ、及び/又は、プロセスに関する最適チャッキングが達成される一定電位差または一定漏れ電流のような一定の所要結果を達成するためにチャッキング電圧が動的に変化することを保証するフィードバックループが提供される。
【0021】
装置100はプロセスチャンバ102、可変高圧直流電源(静電チャック(ESC)電源104)、装置制御ユニット106、RF電源107、及び、チャッキング監視回路108を含む。プロセスチャンバ102はプロセス領域110を画定する真空エンクロージャを含む。ペデスタルアセンブリ124は、プロセス領域110に近接する半導体ウェーハ112をサポートし、チャンバ102の頂部に設置されたシャワーヘッド111を介してプロセスガスがプロセス領域110へ供給される。ペデスタルアセンブリは、ペデスタルベース122、加熱、及び/又は、冷却ハードウェア1216、および、静電チャック114を含む。加熱、及び/又は、冷却ハードウェア126は、通常、冷媒導管またはチューブ、抵抗性ヒータ、ウェーハの後部に熱伝達媒体(例へば、ヘリウム)を供給するための導管、等を含む。この種のプロセスチャンバはApplied
Materials,Inc.(Santa Clara、California)製のモデルeMxP+エッチングチャンバである。
【0022】
静電チャック114は、通常、少なくとも1つの埋込み電極118を含む誘電ボディ116を含む。誘電ボディ116は、一般に、例えばボルト又はクランプのような一般的手段によってペデスタルベース122へ取り付けられている取付板120に添付される。誘電ボディ116はポリイミド、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、等によって作成される。埋込み電極118は、通常、銅、モリブデン、チタン、または、タングステンである。以下に説明する本発明の実施形態において、静電チャックは、例えば単モリブデン電極を持つ窒化アルミニウムのような抵抗率の小さいセラミックス製のJohnsen−Rahbekチャックである。直流電圧(チャッキング電圧)は、導電性経路128を介して電極118に結合され、ウェーハ112とチャック電極118の間に電位差を確立する。
【0023】
チャッキング電圧はESC電源104によって発生および制御される。RF電源107は、陰極電極を形成する導電性エレメントであるペデスタルベース122へRF信号を結合する。RF電源106はRFソース130、および、陰極電極へRFエネルギーを能率的に結合するために直列接続されたRF整合ネットワーク132を含む。
【0024】
真空チャンバ102内において種々異なる化学作用を使用してウェーハ112を処理するために、プロセスチャンバ102のプロセス領域110内においてプラズマが形成される。プラズマは、RF電源106を介して高周波(RF)エネルギを陰極122へ供給することによって形成される。チャンバ・リッド134(およびシャワーヘッド111)として説明的に示される陽極電極は、一般的に、陰極電極122と反対のプロセスチャンバ102内に設置される。陽極と陰極の間で生成される電界はプロセスガスをイオン即ちプラズマ状態に励起する。
【0025】
ウェーハ112上のプロセス領域110に一旦プラズマが形成されると、プラズマ自体がウェーハ112を直流電位にバイアスする。チャック電極118は直流電圧によってバイアスされるので、ウェーハ112とチャック電極118の間に電位差(ΔV)がある。チャック電極と自己バイアスされたウェーハの間の電位差は反対に分極された電荷をウェーハの下側およびチャック内電極上に蓄積させる。チャックの誘電ボディが窒化アルミニウムのような抵抗率の小さい材料によって作成されている場合には、電極上の電荷は、Johnsen−Rahnek効果に従ってチャックの表面に移動するはずである。電荷の蓄積はウェーハと、ウェーハを静電的にチャック表面に保持するチャックとの間にクーロン引力を形成する。保持力は概してウェーハ112とチャック電極118の間の電位差(Ve―Vdc)の平方に比例する。チャックの誘電ボディが絶縁体であるならば、クーロン引力はチャック電極とウェーハの間にある。クーロン型チャックにおける保持力も同様にウェーハ112とチャック電極118の間の電位差(Ve−Vdc)の平方に比例する。ただし、クーロンチャックにおける充電表面間の距離は一般にJohnsen−Rahbekチャックにおける充電表面間距離よりも大きく、従って、チャッキング電圧が同じであるとすれば、チャッキング力は一般にJohnsen−Rahbekチャックの方が大きい。
【0026】
本発明は、監視されるプロセスパラメータに応答する最適チャッキング電圧を決定するために1つ又は複数のプロセスパラメータを監視する。監視されるパラメータは、ウェーハとチャックの間の電位差、チャックの漏れ電流、チャッキング力後部ガス圧力または漏れレート、または、ウェーハ直流バイアス、等であり得る。
【0027】
本発明の特定の一実施形態において、チャッキング監視回路108(RFプローブ108Aとして具体化されている)は、ウェーハとチャックの間の電位差をそれから導出することのできる信号Vrefを供給する。電源104の出力電圧は、ウェーハとチャックの間の一定電位差を維持するチャッキング電圧を生成するように調節される。
【0028】
チャンバ・パラメータの変動およびウェーハ電位の他の変化を補償するように電位差を調節するために、本発明は電位差の指標を測定し、その後で、一定差電位を確立するようにチャッキング電圧を制御する。一般的に、電位差は、チャンバにおいて後で達成されるはずの特定のプロセスに関する最適値として事前に定義される。この電位差を監視するために、陰極(ペデスタルベース122)へ結合されたRF信号のサンプルがRFプローブ108Aによって抽出される。RFプローブ108Aからの出力は直流信号(Vref)であり、その大きさは、陰極電極に結合されたピーク又はピークツーピークRF電圧を表す。この値は、この値をウェーハ上の直流電圧(Vdc)に近似する信号に変換する伝達関数への入力を形成する。所与装置に用いられる特定の伝達関数は、当該装置によって制御される特定の静電チャックの実験的研究から導出される。8インチセラミックチャックのチャッキング電圧を制御するのに使われる実例的な伝達関数を次に示す:
Vdc=((−1.032xVp)+347)
ここで、Vdcは推定ウェーハ電位、VpはピークRF電圧である。
【0029】
その代りに、信号Vrefを形成するサンプルは、ウェーハにかかる直流バイアスを表す直流バイアス電圧または、例えば、ウェーハとチャック電極の間のキャパシタンス、後部ガス圧、後部ガス漏れレート、等のような、電位差の大きさを計算するのに使用出来る他の任意の信号であっても差し支えない。信号に関する唯一の必要条件は、それがウェーハと静電チャックの間の電位差を表さなければならないことである。電圧追跡モードにおける動作について以下に詳細に示すように、このサンプル電圧(Vref)は、例えばESC電源がウェーハ112と静電チャック118の間の一定電位差を維持するようにその出力電圧を調節するように、ウェーハとチャックの間の最適電位差の指標としてESC電源によって用いられる。
【0030】
本発明の他の一実施形態において、チャッキング監視回路108はチャック漏れ電流を監視(電流監視回路108Bを用いて)し、およびESC電源104は一定の漏れ電流を達成するようにチャッキング電圧を調節する。同様に、種々様々なタイプのウェーハに関して、ウェーハを通る電流は、電子放出およびウェーハスティッキングを回避するように最適化される。
【0031】
チャッキング電圧最適化を実行するためには、ESC電源104は、次の3モードにおいて作動する可変高圧直流電源である。即ち、1)設定点信号が当該電源の出力電圧を、例えばチャンバ壁102のような接地に対する一定値に制御する固定電圧モード、2)当該電源がウェーハとチャックの間で一定の電位差を達成する出力電圧を生成する電圧追跡モード、3)当該電源が、一定の漏れ電流値を維持するように出力電圧を変化させる状態において一定であるような出力電流を生成する電流追跡モードである。処理されるウェーハのタイプ、または、チャンバ内で実施されるプロセスのタイプに応じて任意のモードを選定することが可能である。従って、本電源は様々なチャッキング電圧最適化技法を実行するための融通性に富んだプラットホームを提供する。
【0032】
所与のタイプのプロセス又はウェーハに関する最適チャッキング電圧を確立するために、装置制御ユニット106は、ESC電源104に設定点信号KVSPを供給する。また、装置制御ユニット106は、作動可能化信号KVENを電源104に供給する。設定点は、電源104が固定電圧モードで作動している時の所要電圧を表し、電源が電圧追跡モードで作動しているときの電極とウェーハの間の所要電位差を表し、電源が電流追跡モードで作動しているときの所要漏れ電流を表す。
【0033】
設定点および作動可能化信号に加えて、システムコントローラが追跡モード選択信号MODEを供給するか、または、電源内導電ジャンパの操作によってモード選択がハードワイヤードされ得る。このMODE信号は、当該電源が一定高圧出力、電圧追跡高圧出力、または、電流追跡高圧出力を生成するように電源モードを選定する。これらのモードの各々については、図2に関して以下に詳しく考察することとする。これらのモードの各々において、電源104は、+2.2mAから−1.lmAまでの範囲内の電流をソーシング又はシンキングすることのできる−2000ボルトから+1000ボルトまでの範囲内の高圧出力(V0)を生成する。また、電源104は、当該電源104が適切な限界内において、かつ事前定義された所定設定点KVSPに従って作動中であることを保証するためにシステム制御ユニット106によって用いられる電圧監視信号KVMONおよび電流監視信号CRMONも生成する。
【0034】
図2は高圧直流電源104の詳細な構成図を示す。電源104は、基準信号スケーリング及びプラズマ検出器200、設定点信号スケーリング回路202、加算器204、基準電源バイアス回路206、1対のドライバ208と210、1対の直流‐直流コンバータ電圧電源212と220、電圧監視回路214、電流監視回路224、1対の電流シンク216と226、および、RFフィルタ218を含む。本電源は、電圧電源220が可変電圧電源用固定電圧基準を生成するように接続された1対の電圧電源を含む。詳細には、基準電圧電源は、可変電圧電源212の負端子に結合されている一定の負基準電圧(例えば−2000ボルト)を生成するように、一定電圧によってバイアスされる。可変電圧電源212は、例えば、その出力端子間において0から+3000ボルトまで変化する。ただし、電源220の基準電圧に関しては、可変電圧電源212は、−2000ボルトから+1000ボルトまで変化するVoutにおける電圧を生成する。従って、高圧直流電源が生成される。
【0035】
この添加的機能は図4に示すグラフによって最もよく理解される。この場合、−2000ボルトの基準電圧400が0ボルトから+3000ボルトまでの可変電圧402に加えられ−2000ボルトから+1000ボルトまでの任意の正または負電圧を供給するように容易に制御可能な双極電源を提供する
【0036】
図2へ戻り、基準電圧スケーリング及びプラズマ検出器200は、ウェーハ電圧Vdcを表す信号(推定Vdc信号)を生成するために伝達関数を入力基準電圧に供給し、加算器204に結合される他の信号に比較可能なレベルまで推定Vdcを基準化する。ウェーハ電圧が直接測定されるならば、伝達関数は使用されず、信号だけが基準化される。その上、推定ウェーハ電圧は、推定ウェーハ電圧が事前に定義されたレベルに達するときのしきい値レベルに比較され、回路200はチャンバ内でプラズマを開始させようとする。これは、電流追跡モード動作にとって重要である。ウェーハから接地への導電経路を提供するプラズマ無しではチャックを通って漏れ電流が流れないので、プラズマが室チャンバに存在しないならば、電流追跡モードは使用できない。その上、回路200は、電源の作動モード、即ち、電源が一定電圧出力、電圧追跡出力、または、電流追跡出力を生成するかどうかを選択する回路を含む。スケーリング及びプラズマ検出器200の動作および構造は、図3Aの概略図に関して以下に更に詳細に記述することとする。
【0037】
設定点信号スケーリング回路202は、加算器204に結合される他の信号レベルと同等レベルへ設定点信号を基準化する。加算器204は、電圧監視回路214からの種々の信号、基準化された設定点信号、および、基準化された基準信号を組み合わせ、ドライバ210用入力電圧を形成する。加算器には、電源104に関する作動モードに依存して異なる信号が供給される。
【0038】
固定電圧モード作動中、電流監視信号(電流フィードバック)はアナログスイッチ228によって加算器204から接続が遮断される。アナログスイッチ230は、電圧監視信号(電圧フィードバック)および固定基準電圧の両方を加算器204へ接続する。従って、設定値信号は、電源から接地に対する絶対出力電圧を確立する。
【0039】
電圧追跡モードが選定されたとき、基準化済み設定値信号、基準化済み基準信号(ウェーハ電位を表す)、および電圧監視信号(3個の信号)が加算器204に結合され、電流監視信号は加算器204から接続が遮断される。従って、加算器204は、基準化済み設定値信号と基準化済み基準電圧の間の差(この差は望ましいウェーハからチャックへの電位差を表す)を電圧監視出力信号と比較し、ドライバ210へ供給される差信号を生成する。次に、ドライバはウェーハとチャックの間の所要電位差を生成する必要なチャッキング電圧を達成するように可変電圧電源を制御する。
【0040】
更に詳細には、基準電源バイアス回路206は、例えば0から15ボルトまでの範囲内のそれぞれの入力電圧に対して0から3000ボルトまでの範囲内の出力電圧を生成する例えば高圧直流‐直流コンバータのような基準電圧電源220の入力へドライバ208を介して供給されるバイアス電圧を確立する。入力バイアス電圧に応答して、基準電源220は(+)と(−)端子間で例えば2000ボルトの固定電圧固定出力電圧を生成する。基準電圧電源220用電圧フィードバックは電圧監視回路214から供給される。フィードバック信号は、ドライバへの入力信号がバイアス電圧とフィードバック電圧の組合わせであるように、ドライバ208への入力に位置する加算器207へ供給される。基準電圧電源220の出力電流は、電源220の(+)と(−)出力端子へ結合されている電流シンク226によって公称電流値に設定される。従って、電源が、例えば3.3mAを電源供給可能であれば、電流シンクは公称1.1mAの電流を連続的に吸収できる。公称電流はI1として識別される。基準電圧電源の電流必要条件は変化するので、電源が(+)端子から供給できる電流は約3.3mAまで増大可能である。
【0041】
基準電圧電源220の(−)端子に生成される負電圧(接地に対して)は、可変電圧電源212用基準電圧レベルとして用いられる。加算器204の出力は、一定電流を維持するために出力電圧が変化する状態において電流が一定であることを保証するために、例えば電位差を追跡するように、Vrefと設定値の間の差を追跡か、または、電源104からの出力電流を追跡する可変電圧を確立する。
【0042】
制御信号(差信号)はドライバ210を介して可変電圧電源212へ供給される。可変電圧電源212は、例えば、0から15ボルトまでの範囲内の入力電圧に応答して0から3000ボルトまでの範囲内の出力電圧を生成する高圧DC−DCコンバータである。電源212の(−)出力端子は基準電圧電源220の(−)出力端子端に結合される。従って、(+)端子は基準電圧(例えば−2000ボルト)だけ「オフセット」される。電流シンク216は、可変電圧電源212の(+)と(−)出力端子へ結合される。この電流シンクは、可変電源212から例えば2.2mAの公称電流(I2)を吸収する。
【0043】
電圧追跡モードおよび固定電圧モードにおいて、電圧監視回路214は 加算器204と加算器207の両方へフィードバック電圧を供給する。この電圧は、チャッキング電圧または電流を変動させる可能性のあるチャンバパラメータの過渡現象に対する電源104の応答を緩衝する。従って、負荷インピーダンスの大幅変動に直面しても、電源104は非常に安定している。
【0044】
電流追跡モードが選定されて、プラズマが存在するとき、回路200は、電流監視信号がドライバ210の入力に結合され、電圧基準信号が加算器204から接続遮断されるように、両方のスイッチ228と230を制御する信号を生成する。このモードにおいて、設定値信号は、出力電流Ioutが達成される電流値(望ましい漏れ電流)を示す。従って、加算器204は、ドライバ210および可変電圧電源212を制御するために用いられる差信号を生成するために、電流現行モニタリング信号を設定値信号と比較する。出力電圧の調節は、出力電流が設定値レベルに達するまで行われる。チャッキング電圧は、一定出力電流を維持するように、電源104によって動的に調節される。
【0045】
電流追跡モードを容易にするために、電流監視回路224は静電チャックに対する漏れ電流を表す電流監視信号を生成する。要するに、回路224は、接地に対する抵抗器232の電圧降下を測定し、次に、電圧監視回路214内を流れる電流を差し引くことによって、漏れ電流を算定する。結果は漏れ電流(Iout)の測定値だけである。
【0046】
RFフィルタ218は、チャックからのRFエネルギが電源104に入ることを阻止する。
【0047】
一定電圧モードにおいて、基準電圧用基準化回路200が無能化され、設定値信号KVSPが出力電圧を一定値に設定するように基準化済み基準電圧が所定値へクランプされる。当該一定値は、基準電圧電源が生成した基準電圧(例えば−2000ボルト)と、可変電圧電源の最高出力電圧(例えば、可変電圧電源212によって生成された最大電圧が+3000ボルトであると仮定して、最大電圧+1000ボルト)から当該基準電圧を差し引いた値との間の任意の値であり得る。一定電圧モードにおいては、一定電圧がチャックに供給される。一定電圧が供給されるが、チャックへ結合された電流は実質的に変化し得る。電流変動はウェーハ上のVdcを変化させるチャンバ環境に起因するか、または、電極電圧設定値の変化に起因する。或る時は電流が負(即ち、電源104は電流をシンクしなければならない)であり得るし、別の時は、電流が正である(即ち、電源104は電流をソーシングしなければならない)。各電圧電源220と212から公称量の電流をシンクするように電源104を配置構成することにより、この電源は、単一出力ポートを介して電流をソーシングすることもシンキングすることもできる。RF電力が下方へ傾斜するときはウェーハ処理の終端において、この能力は特に重要である。例えば、RF電力が下方へ傾斜すると、一定電圧を用いてウェーハをチャックされた状態に維持することが有利である。ただし、下方への傾斜に際して、チャックとウェーハの間の電位差の変化に応答してチャックからの電流サージが現れる。すなわち、RF電力が下方に傾斜するにつれてウェーハ電位Vdcが変化する。本発明は、ウェーハ上の一定チャッキング電圧を維持した状態において、この電流サージをシンクする。
【0048】
本発明の動作を更に説明すれば、正電流が必要であるときには、可変電圧電源はVout端子へ最大2.2mA(即ち、最大電流(例えば3.3mA)と電流シンク216電流(I2)(例えば1.1mA)に電流シンク226から供給可能な電流(I1)を加えた値の間の差)までの電流をソーシングする。一方、ESC電源104が電流をシンキングしなければならないときには、この電流は電源の(+)端子へ「押し込まれる」ことが出来ないので、電流シンク216は、必要な電流現行レベルを達成するために、Vout端子によって供給される電流に(+)端子からのあらゆる追加電流が加えられる。従って、2.2mAの全電流が電源104からプルされ、最大電流は可変電圧電源212によって供給される。即ち、3.3mAは電源212から、チャックへの出力電流2.2mA、電流シンク226電流1.1mA、および、電流シンク226を通って流れる電流2.2mAと共に基準電源220によって供給される0mA(最小電流)として供給される。同様に、特定の電圧レベルを維持するために、全電流1.1mAが電源104へ流入するときには、最大電流は基準電圧電源220によって供給される。即ち、3.3mAは電源220から、出力電流−1.1mA、対応する電流シンク226電流2.2mA、および、対応する、電流シンク216を通って流れる電流1.1mAと共に電源212によって供給される最小電流0mAとして供給される。
【0049】
電圧追跡モードにおいて、電源104の出力電圧Voutはチャックとウェーハの間の電位差を表すVrefを追跡する。可変電源212と電圧監視回路214と加算器204とドライバ210とによって表される電圧フィードバックループは設定値KVSPから基準電圧Vrefを差し引いた値に出力チャッキング電圧を維持しようと試みる。従って、チャックとウェーハの間に一定電位差が維持されるはずである。電圧追跡モード期間中、電流監視回路は加算器204へ信号を供給しない。すなわち、スイッチ228は開いている。設定点値と基準値の間の差(電圧監視回路によって緩衝された電圧フィードバック信号)がドライバ210に結合される。次に、ドライバは差電圧に従って可変電圧電源への入力電圧を変化させる。可変電圧電源212は、チャックとウェーハの間の一定電位差を達成するために基準電圧を追跡する電圧を端子Voutに生成する。この一定の力を維持した状態において、既に考察したように、電源は電流をシンクすることも、ソースすることもできる。
【0050】
電流追跡モードにおいて、電源104はそのために必要な電圧には関係なくチャック電極に届けられる一定電流(ウェーハから電子放出を生じない2から200μAの間の漏れ電流)を維持しようと試みる。残留電化の累積に起因するチャックへのウェーハの「スティッキング」を最小限化するときには、電流現行追跡モードが重要である。ウェーハを通る電流を最小限にすると放出および残留電荷蓄積を最小限にする。従って、電源は、電流監視回路224を用いて出力電流Ioutを監視し、出力電流を表す信号を加算器204へ供給する。電源204が電流追跡モードであるときには、加算器204は、当該電流に関する電流測定信号および設定点値にのみ作用する。プラズマ「オン」信号に応答して作動するアナログスイッチ228は電流監視信号を加算器204へ結合する。従って、出力電圧Voutは、設定値電流と合致する一定出力電流を維持しようとする傾向をもつ。所与のタイプのウェーハに関してウェーハ・スティッキングを回避しようと試みる場合、一般的に設定点電流値はウェーハのタイプに関係なく一定である。例えば、漏れ電流設定点は、酸化物ウェーハであってもシリコンウェーハであっても同じである。放射動作を回避する電流設定を行った場合、電荷放射を起こすことなしに所要の漏れ電流レベルを維持するためのチャッキング電圧は変化するはずである。設定点電流値は通常2から200μAまでの範囲の電流を生成する。ただし、好ましい範囲は2から20μAまでである。
【0051】
事前に定義された設定点電流値を使用する代わりに、ウェーハが存在し、プラズマが点火されているが、処理が開始される以前の状態において、装置は比較的高い電圧パルスをチャック電極へ供給することによって設定点を確立し得る。電流監視回路は、パルスが供給されるにつれて発展する漏れ電流(瞬間漏れ電流)を監視する。この瞬間漏れ電流は設定点漏れ電流として用いられるか、または、設定値は瞬間漏れ電流に比例する値である。
【0052】
電子放出を緩和することによって、プラズマが消された後で、例えば−200ボルトの負のデチャッキング電圧を供給することによりウェーハは容易にチャックから外すことができることに注意されたい。この種の負電圧は、ウェーハの後部の電荷をチャック表面から離れさせる。結果的に、吸引力が減少し、ウェーハが「ポップオフ」するか、又は、ウェーハが破損する危険なしに、ウェーハはチャック表面から容易に持ち上げられ得る。
【0053】
電流追跡モードは電流監視回路からのフィードバック信号のみを使用するが、電源は、電圧監視信号が電流監視信号と共に加算器204に供給されるように電流と電圧フィードバックを組み合わせることができる。加算器204は、チャッキング電圧制御の更に複雑な方式を達成する目的で、種々レベルの電圧および電流フィードバックを組み合わせるために使用できる。
【0054】
更に、他の制御信号はポート234において加算器204に供給され得る。これらの制御信号は、例えば後部ガス漏れレートインジケータ、ウェーハとチャックの間のキャパシタンスを表す信号、等のような最適結合を表す別の指標であり得る。この種の信号を使用するとき、当該信号に関する設定点は設定点入力KVSPにも適用できる。従って、チャッキング電圧は、特定のウェーハとプロセス組合わせに対する最適チャッキングを達成する目的で、後部ガス流量、ウェーハ対チャックキャパシタンス、等を変更するために使用できる。
【0055】
図3は、図3Aから3Jの適切な配置構成を示す。これらの図は創意に富んだ電源104の一実施形態の詳細な概略図結線図を示す。本発明を最もよく理解するために、読者は、以下の説明を読むと同時にこれらの図面を参照されたい。
【0056】
図3I、3J、及び3E,3F、3Gの一部は、基準信号基準化およびプラズマ検出回路200の詳細な結線図を示す。入力回路は、高い入力インピーダンスおよび基準信号Vrefに関するフィルタリングを提供するためにコンデンサC29を備えた抵抗器R49およびR50のパイ接続を含む。パイ回路に接続されている演算増幅器U8:Aは入力緩衝作用を提供する。演算増幅器U8:Aの出力は、演算増幅器U8:C、ダイオードCR10とCR11、及び、抵抗器R54とR51を含む絶対値生成回路に結合される。この回路は、基準信号の正および負の値が、正電圧として、基準化演算増幅器U8:Bの入力に結合されるように、入力電圧の絶対値を生成する。
【0057】
伝達関数は、抵抗器R52、R53、及び、分圧器R55を含む回路を用いて、その一部分が確立される。演算増幅器出力端子と負入力端子の間に接続された分圧器は、出力電圧が―R55/R52(Vin)に等しくなるように回路の利得を制御する。次に、この電圧は、直列接続された抵抗器R62、R63、及び、R64によって生成される直流レベルによってオフセットされる。抵抗器R60はU8:Bからの信号を増幅器U8:Dに結合し、抵抗器R39は基準化電圧を増幅器U8:Dに結合する。この回路によって8インチセラミック静電チャック用に確立される伝達関数を次に示す:
V=((−1.032xVin)+347)
ここで、
Vは演算増幅器U8:Bの入力における信号である。
Vinは回路200への入力である。
【0058】
増幅器U8:Bの利得は、全ての回路が伝達関数からの信号を約400:1に基準化するようにR39及びR61によって設定される。基準化された信号は、点A(図3B)及びC(図3C)において回路200から出る。
【0059】
チャンバ内プラズマの存在を検出するために、或る大きさ(例えば50ボルト)より大きい基準電圧が回路200の入力へ供給されたとき、コンパレータU2:Bの出力が状態を変えるようにコンパレータU2:Bは分圧器R55に結合される。コンパレータU2:Eは抵抗器R56とR57によって確立される閾値をもつ閾値検出器として配線される。十分な大きさの電圧が検出されたとき、コンパレータはプラズマが点火されていることを示すために状態を変える、すなわち、プラズマがチャンバ内に存在するときに基準電圧は実質的な大きさを持つ。状態を変えることによって、スイッチU9:Dは、プラズマが検出されたときに開き、プラズマが検出されないときに閉じる。スイッチU9:Dが閉じると、スイッチU9:Cが閉じられるようにダイオードCR15と抵抗器R82を介して接地への通路が電流を引く。このスイッチが閉じると、−500ボルトを表す信号が設定点値から差し引かれるように(図3Bの加算器204を用いて)、R59による電圧降下が演算増幅器U8:Dのこの入力へ供給される。この具体化例の設定点信号は正の値であると予測されることに注意されたい。他の具体化例における設定点信号は正または負であり、どちらの場合にも、このスイッチは実行される必要はない。
【0060】
図に示す具体化例を用いることによって、プラズマが検出されないとき電源は電圧追跡モードにおいて作動せず、ウェーハのチャックを解除するために設定点値から500ボルトを差し引いた電圧が用いられる、即ち、チャックに蓄積されたすべての残留電荷を放電するために負電圧がチャックに印加される。デチャッキング電圧は、プラズマの消火を示す値より大きいプラズマ検出閾値を確立することによって自動的に生成される。例えば、RF電力が下方に傾斜するにつれて(ただし、未だオフされていない)プラズマ検出回路が状態を切り替えるように、閾値は−380ボルトに選定可能である。従って、RFのレベルが低いとき、コンパレータU2:BはスイッチU9:Dを開かせ、スイッチU9:Cを閉じさせて、一定オフセット電圧を演算増幅器U8:Dへ供給し、一定−500ボルトを生成する。この一定電圧が、例えば450ボルトの設定点電圧から減じられると、−50ボルトのデチャッキング電圧が、RF電力の下降に応答してチャッキング電極へ自動的に供給される。
【0061】
モード選択ジャンパブロックW2は回路の特定エレメントに接続し、種々のモードを実行可能化する。例えば、一定電圧出力モードにおいては、スイッチU9:Bが作動可能になるようにピン6の+12ボルトがピン5に接続される。これは、一定オフセット電圧(例えば−1000ボルトを表す−12ボルト電源からR81による電圧降下)を演算増幅器U8:Dの入力に供給する。この信号は設定点信号から差し引かれ、負の設定点電圧を可能にする。モード選択用にはジャンパブロックが示されているが、その代りに電子的に選択可能なモード選択回路が実行され得る。
【0062】
図3Eに続いて、プラズマ検出信号はスイッチU1:C(電圧追跡および一定電圧作動中は閉じ、電流追跡モード中は開く)に結合する。回路200からの基準化された基準信号(または、オフセット信号)は抵抗器R65に結合される。加算器204は演算増幅器U3:Cおよび抵抗器R65、R38、R40、およびR36によって形成される。
【0063】
設定点信号KVSPはパイネットワーク(抵抗器R9とR10及びコンデンサC4)を介してバッファ演算増幅器U6:Aに結合される。バッファの出力は、演算増幅器U6:B及びそのサポート抗器R45、R47、及び、R44を含むスケーラ回路202に結合される。信号基準化の量は分圧器R43および演算増幅器の負入力に結合されている抵抗器R43とR42の組合わせによって設定される。演算増幅器U6:Bの出力はダイオードCR9を介して抵抗器R40、加算器204の入力抵抗器に結合される。回路202は、信号KVSPが回路202からん基準信号の大きさにマッチするように調節できることを保証する。
【0064】
加算器204において、基準信号((負の値)は、設定値信号(正の値)ならびに図3Cの出力回路において導出される出力電圧フィードバック信号D(正の値)と合計される。フィードバック信号は、以下に述べる電圧監視回路において発生するフィルタリングに起因して回路全体の利得を下げる減衰信号である。
【0065】
増幅器U3:CとU3:Dは例えばEMCO製モデルF30のような電圧電源U7用ドライバ(図2の210)を一緒に形成する。各ドライバはそれぞれ演算増幅器U3:CまたはU3:D、及び、NPNまたはPNPトランジスタQ6またはQ7を含む。ドライバは、電圧電源U7の入力(+)および(−)端子に0から15ボルトの信号を供給する対称回路を形成する。電源回路用出力±12ボルトであることに注意されたい。従って、電圧電源U7の制御用にはわずかに0から12ボルトが容易に利用可能である。従って、対称ドライバは例えば0から15ボルトの利用可能な全入力電圧スイングを作動可能化するように実行される。要するに、差信号は、一方のドライバ(演算増幅器U3:C)は入力(+)端子をドライブし、もう一方のドライバ(演算増幅器U3:D)は入力(−)端子をドライブするように、各ドライバに平等に分割および結合可能である。従って、理論的には24ボルトまでが電圧電源U7入力端子に供給され得る。ただし、実用的限界は、24ボルトから演算増幅器およびトランジスタのベース‐エミッタ接合の電圧降下、例えば6.2ボルト未満を差し引いた値である。
【0066】
詳細には、演算増幅器U3:Cは、コレクタが+12ボルトに接続された状態で、トランジスタQ6のベースを駆動する。演算増幅器U3:Dは、そのコレクタが−12ボルトに接続されたトランジスタQ7のベースをドライブする。各トランジスタQ6及びQ7のエミッタは、直流‐直流コンバータU7及びU4の負入力端子へ接続される。また、入力端子も、それぞれのフィルタコンデンサC22とC20を介して接地に結合される。抵抗器R36とダイオードCR16はトランジスタQ6のエミッタから演算増幅器U3:Cの入力へフィードバックを供給する。抵抗器R37、R33、R32、R34、R35、ダイオードCR17、及び、コンデンサC18はアクティブエレメント演算増幅器U3:DとU3:C、及び、トランジスタQ6とQ7と共に電圧電源212用対称ドライブ回路を提供する。この仕方において、差信号(設定値に負の基準電圧正と電圧フィードバック信号を加える)が増幅され、0から3000ボルトまでの出力電圧を比例的に生成する0から15ボルトの制御信号として電圧電源へ供給される。その上、平衡した12ボルトから導出された入力電圧を使用することにより、高圧モジュール104全体への入力における接地電流は小さく、従って、接地に対してオフセット電圧を生成しないはずである。
【0067】
基準電圧電源220(U4)は、電源U4用ドライバ入力電圧が一定基準電圧であるということを除けば、可変電圧電源212と同じ仕方においてドライブされる。基準電圧は抵抗器R31及び分圧器R2によって確立される。基準電圧は、ドライバ210に関連して説明したのと同じ回路構成の対称ドライバ(演算増幅器U3:AとU3:B及びそれらそれぞれのサポート回路)に結合される。従って、範囲0から15ボルト内の一定入力電圧は電圧電源U4の入力端子に供給され、範囲0から3000ボルトの一定出力電圧を生成する。例示される場合には、出力電圧は2000ボルトに設定されている。
【0068】
静電チャックがプロセスチャンバから除去されるとき電源104が作動不能状態にされていることを保証するために安全インタロック回路が装備される。コネクタP2はインタロックコネクタ(例えばピン1が+24ボルト、ピン2が+24ボルト、ピン3が共通24ボルト)であり、インタロック回路は直列接続されたダイオードCR4、CR5(ツェナーダイオード)及びCR6で形成される。リレーは、そのドライブコイルがダイオードCR5の両端に結合されるように接続される。リレースイッチは、コネクタP2が抜き取られるか、または、インタロック回路が外部的に不完全であるためにインタロックリレーが電力供給を失ったとき、リレースイッチが回路を開いて、それぞれのドライブ電圧から電圧電源U4とU7の接続を遮断するように、ドライバトランジスタQ6とQ7の間の通路内にそれぞれ配置される。それによって電圧供給源は効果的に無能化される。
【0069】
電源104は2つのタイプのゼロ出力を生成し得る、即ち、アクティブゼロ出力と浮動ゼロ出力である。供給源およびシンク電流が存在する状態において、差信号が真に出力電圧をゼロに設定したときアクティブゼロ出力が発生する。設定値信号がゼロに設定されると、ドライバはオフにされ、電源は浮動ゼロを生成する。浮動ゼロ状態における作動中は、電圧電源は、ゼロ入力電圧をもつことによって非作動化され、電源の出力ポートは単に、この状態において例えば接地に対して11MΩの抵抗器のような抵抗性負荷として作動する(作動不可能な)電流シンク回路216(図2及び図3C)によって負荷される。電流シンクの両端の電圧が或るレベル以下に減少したときは、電流シンクは非作動化し、作動不能状態になる。この時、電流シンクは抵抗性負荷として作動する。
【0070】
浮動ゼロを達成するために、ゼロ設定値が加算器204に供給され、電圧電源U7はその入力端にゼロの電圧を持つはずである。ただし、U4の入力端子がゼロ電圧であることを達成するために、一定基準電圧は接続が遮断されなければならない。閾値検出器(コンパレータU2:A及び抵抗器R7とR8)は、ゼロ設定値がいつ設定されるかを決定する。閾値検出器はバッファ演算増幅器U6:Aに結合され、PNPトランジスタQ1をドライブする。トランジスタは、ゼロ設定値が検出されたとき、バイアス電圧入力を接地に接続するスイッチU1:Aを制御する。従って、ドライバ208への入力が接地され、ゼロボルトがU4の入力端子へ供給されるはずである。浮動ゼロ作動は、ジャンパブロックW1内ジャンパを、トランジスタQ1がスイッチU1:Aから接続遮断されるように、調節することによって作動不可能化できる。
【0071】
ENABLE信号は、低ENABLE信号がスイッチU1:Aを開き、入力バイアスを接地から遮断し、スイッチU1:Dを開いて演算増幅器U3:Cの出力への入力の短絡を除去するように、スイッチU1:A及びU1:Dの位置を制御する。従って、低ENABLE信号は電源104を作動可能化する。高ENABLE信号はドライバ208へゼロバイアス電圧を供給し、ドライバ210を短絡して電源104を非作動化する。
【0072】
コンパレータU2:D、スイッチU1:BとU1:C及び抵抗器R79は電流追跡モード中に使用される。プラズマ検出回路200は点Bにプラズマ検出信号を供給する。この信号はコンパレータU2:Dに結合され、U2:Dは両スイッチU1:BとU1:Cの制御ポートに結合される。電源が電流追跡モードにある状態で、プラズマが検出されたとき、点Aにおける基準電圧がスイッチU1:Cによってドライバ210から接続遮断される。抵抗器R79を介して点Jから供給される出力電流を表す信号のフィードバックは、スイッチU1:Bを介してダイバー演算増幅器U3:Cの入力に結合される。従って、静電チャック用出力電圧は設定値によって決定され、その後で、チャックへの一定電流を達成するために電流追跡信号に従って調節される。
【0073】
基準電圧電源U4からの出力電圧は電流シンク226へ供給される。電流シンクは抵抗性負荷と同様に簡単である。ただし、更に安定した電流シンクは、2つのNPNトランジスタQ4とQ5、抵抗器R20、R21、R22およびR23、及び、ダイオードCR7とCR8を含む2ステージのアクティブ回路である。各ステージは、そのベースが抵抗器を介してコレクタに接続され、ダイオードと抵抗器を介してエミッタへ接続されたトランジスタを含む。各ステージは1500ボルトまでの電圧降下を扱うことが可能であり、従ってコンサバチブであり、各ステージは1000ボルトの降下を扱うように設計されている。(+)端子電圧は抵抗器R85を介して電流シンク226へ結合される。2個のトランジスタによる電流シンクは1.1mAを連続的にプルする。
【0074】
同様に、電流シンク216は可変電圧電源U7の出力端子に結合される。この電流シンクは、トランジスタQ8、Q9、およびQ10、抵抗器R66、R67、R68、R69、R70、R71、および、ダイオードCR12、CR13、CR14を含む3つのステージで構成される。この電流シンクは連続して2.2mAを汲み出す。
【0075】
基準電圧電源U4の(−)端子は可変電圧ソースU7の(−)端子へ接続される。従って、電源104の出力(Vout)は負の基準電圧(−2000ボルト)から、可変電圧電源(+3000ボルト)から利用可能な正の最大電圧から基準電圧(2000ボルト)を差し引いた例えば+1000ボルトに等しい正電圧まで変化し得る。図2に関して述べたように、電源は電流(例えば1.1mAまで)をシンク可能であり、電流(例えば2.2mAまで)をソース可能である。可変電圧電源からの出力電圧は、負荷抵抗器R86、及び、C27とL1を含むRFフィルタを介して出力ポートに結合される。
【0076】
電流追跡を容易にするように出力電流を監視するために、演算増幅器U5:Aが基準電圧電源U4の(+)端子に結合される。電源U4の正端子からの信号は並列接続されたコンデンサC12と抵抗器R18によってフィルタリングされる。更なるフィルタリングは入力から演算増幅器U5:Aの出力へ接続されるコンデンサC29によって提供される。抵抗器R18は電流シンクへの入力におけるサンプルポイントから接地に結合され、R19はサンプルポイントから演算増幅器U5:Aの負入力へ結合される。負の演算増幅器入力は、抵抗器R18とR19が並列接続されて、電流感知抵抗性エレメントを構成するような仮想接地である。これらの抵抗器において発展する電圧は電源104の出力電流を表す。抵抗器R27はバッファ演算増幅器U5:Bによってドライブされる。演算増幅器U5:Bは抵抗器R24およびR25を経て基準電源の負端子へ結合され、当該端子上の電圧を表す信号を生成する。この信号はR27を介して演算増幅器U5:Aの入力に結合される。その上、演算増幅器U6:Dは、電源104の出力の電圧を表す信号を生成する。この演算増幅器は抵抗器R29とR75及びコンデンサC28を介して電源の出力経路に結合される。演算増幅器U6:Dからの出力信号は、抵抗器R28を介して演算増幅器U5:Aの入力に結合される。従って、R27からの信号は基準電圧モニタを流れる電流を表し、R28を介して結合される信号は可変電圧モニタを流れる電流を表す。演算増幅器U5:Aの出力が静電チャックへ供給される電流を表すように、これら2つの信号は抵抗器R18とR19を通る電流サンプルから差し引かれる。この信号は緩衝され、電流監視信号であるCRMON出力として供給される。また、信号はポートBNC3上の電圧信号(1ボルトは300μAに等しい)として供給される。演算増幅器U5:Bからの出力は、直列接続された抵抗器R72とR73によって設定された閾値をもつ閾値検出器として構成されたU2:Cの入力に結合される。演算増幅器U2:Cの出力はトランジスタQ11をドライブし、および作動化するための駆動する電源がいつ作動中であるかを表示する発光ダイオード回路(DS2およびR74)を作動化および非作動化する。
【0077】
電圧監視回路は、電源104の出力電圧を表す電圧信号を生成するための演算増幅器U6:DとU6:Cを含む。演算増幅器U6:Cは、R76を介して演算増幅器へ結合される出力電圧と回路200からの点C上の信号、即ち、抵抗器R77を介して演算増幅器に結合される基準化済み基準電圧との間の差である差電圧(ΔV)を生成する。演算増幅器U6:Cの利得は抵抗器R78とR41によって制御される。演算増幅器の出力は電圧監視信号KVMONである。この信号は、電源が順調に作動中であると、正の数である設定点値に等価であるように意図されている。
【0078】
本発明を用いることにより、特定のタイプのウェーハとプロセスの組合わせに関して最適チャッキングを達成するために、種々のチャッキング電圧制御シナリオを柔軟に利用できる。一定電圧モードにおいて、静電チャックは従来の仕方において使用され得る。電圧追跡モードにおいて、種々のプロセスおよびウェーハのタイプを通じてチャックとウェーハの間の一定電位差を達成するために静電チャックが使用され得る。電流追跡モードにおいて、静電チャックは、電子放出を緩和するように、チャックを通って一定の漏れ電流を供給するために使用され得る。従って、適切なモードを選定することにより、プロセスが適切に実施され、ウェーハが微粒子汚染物質を生成しないか、または、電子放出を経験しないように、ウェーハは良好に制御された熱環境を経験する。また、事前に定義されたチャッキング電圧は各プロセスに関して最も適するように生成されるので、過度のチャッキング力が使用されず、ウェーハ容易にチャックから取り外すことができる。
【0079】
ここでは本発明の教示が組み込まれた様々な実施形態が詳細に図示および記述されているが、当該技術分野における当業者は、これらの教示が依然として組み込まれている他の多くの多様な実施形態を容易に考案することが可能である。
【発明の属する技術分野】
【0001】
本発明は一般的に半導体ウェーハ処理装置内のワークピースを保持する方法および装置に関し、更に詳細には、チャックが半導体ウェーハを最も適切に保持するようにチャッキング電圧を静電チャックに供給する方法および装置に関する。
【従来の技術】
【0002】
静電チャックは、例えば半導体ウェーハのようなワークピースを半導体ウェーハ処理装置内のペデスタル上に、ウェーハが処理され得るように保持するために用いられる。静電チャックの設計は様々であるが、それらチャックは全て、チャックとウェーハの間に電界を確立するために、チャックに埋め込まれた1つ又は複数の電極へ一定電圧を供給するという原理に基づく。電界は、ウェーハと電極上にそれぞれ蓄積するように反対極性の電荷を誘発する。反対に分極された電荷の間の静電吸引力はウェーハをチャックに向かって引っ張り、それによってウェーハをチャック上に保持する。クーロンタイプのチャックにおいて、保持力の大きさはウェーハとチャック電極間の電位差に正比例する。チャック材料の抵抗率が比較的小さく、電荷が電極からチャック表面へ移動するJohnsen−Rahbekタイプのチャックにおいては、保持力の大きさはウェーハとチャック表面間の電位差に正比例する。
【0003】
最良のプロセス結果を与えるチャッキング電圧は様々なチャッキング電圧において多数の「ダミー」ウェーハを処理することによって実験的に決定される。従って、最良の結果を与えるチャッキング電圧はウェーハを処理するのに繰り返して用いられる。処理に際して、各ウェーハは、同じ一定チャッキング電圧を用いて保持される。チャッキング力、チャックの漏れ電流、後部ガス冷却効率、等に影響するプロセスパラメータのウェーハ処理期間中における変動は考慮されない。従って、全てのチャッキング状況に適合するように1つのチャッキング電圧が用いられる。次に考察するように、1つのサイズが全てに適合するというこの思考方法は処理の変則性、断続的なウェーハのスティッキング、または、実質的なヘリウム漏れへと導くことがあり得る。
【0004】
半導体ウェーハ処理装置において、静電チャックはペデスタルアセンブリの一部分を形成する。ペデスタルアセンブリは、ウェーハを加熱または冷却し、ウェーハバイアスを供給しプラズマ電力(陰極電極)を供給し、電力を静電チャックへ経路指定する各種構成要素を含む。静電チャックは、処理に際して、ウェーハをペデスタルにクランプするために用いられる。ウェーハの処理に用いられる材料およびプロセスは温度に対して極度に敏感であるので、温度制御はウェーハ処理の重要なアスペクトである。処理中の熱伝達の不十分性の結果としてウェーハ材料が極度の温度変動に曝されると、ウェーハプロセスの性能はウェーハ損傷をまねきかねない。従って、ペデスタルは、一般的に、エッチング、物理気相堆積(PVD)、或いは化学気相堆積(CVD)応用に用いられるようなヒートシンクまたはヒートソースを形成する。ウェーハとペデスタルの間で最も適切に熱を伝達するには、非常に大量のウェーハ表面をチャックの支持表面と物理的に接触させ、かつ表面を均一な力と接触させようと試行するために極めて均一に近い静電力を使用しなければならない。
【0005】
ウェーハ処理中に、チャッキング電圧が実質的に一定である一方、ウェーハを保持するチャッキング力は、所与のプロセスシーケンス又は処方の期間中にかなり変化する。一般に、チャンバ環境が変化したときに、ウェーハが比較的静止状態を維持するような大きい公称保持力を供給するために、公称一定チャッキング電圧がチャッキング電極へ印加される。ウェーハは静止しているが、熱伝達特性はかなり変化する。例えばプロセス処方が実施されるにつれて、チャンバ温度および圧力が変化する。チャッキング電極に印加される電圧が一定であれば、チャンバ環境のこの種の変動はウェーハを保持する力を変化させる。チャッキング力の可変性はチャックとウェーハの間の接触領域を変化させ、結果としてチャックからウェーハへの熱伝導ならびにウェーハの下からの後部ガス(例えばヘリウム)リークレートを変化させる。
【0006】
また、ウェーハが処理されるにつれて変動するチャッキング力は、ウェーハとウェーハの後部を汚染する特定の微粒子汚染物を生成するチャック表面の間に摩擦を生じさせる。その上、過度のチャッキング力は、プロセスが完了した後で、ウェーハを取り外すのに要する時間(チャック解除時間)を増大させ得る。チャック解除時間を最小化し、それによって、スループットを最大化するためには、良好な熱伝達を達成するのに必要な最小限のチャッキング力を供給することが望ましい。全てが一様に処理されるウェーハの最大スループットを達成するためには、ウェーハ毎に用いられるチャッキング力が、異なるウェーハを処理するときにも均一であることが保証されることも望ましい。
【0007】
ウェーハのチャック解除は、通常、チャッキング電圧に比較して反対の極性をもつ電圧を供給するか、または、ウェーハとチャックから残余電荷を除去するためにチャッキング電圧より小さい大きさの同じ極性をもつ電圧を供給することによって達成される。この種のチャック解除方法は当該技術分野においてよく知られていて、例えば、1995年10月17日付でBirang等に許可された共同譲渡済み米国特許第5,459,632号に記述されている。ウェーハをチャック解除するために用いられる方法は、一般に、チャッキング電圧の大きさに比例する一定デチャッキング電圧を印加する。酸化物ウェーハならびにシリコンウェーハ又は他のあらゆるタイプのウェーハ用として同じチャッキングおよびデチャッキング電圧が用いられる。この種の均一チャッキングおよびデチャッキング電圧は、デチャッキング電圧の印加が完了した後で、ウェーハを「スティッキング」させることがある。この種のスティッキングは、特にJohnsen−Rahbekタイプチャックにおいて問題である。
【0008】
既に言及したように、Johnsen−Rahbekタイプチャックにおいては、チャック本体は比較的小さい抵抗率の材料、例えば窒化アルミニウムで作成されているので、電荷はチャック電極からチャックの表面へ移動することが可能にされる。従って、チャック表面とウェーハの間の接触点においてウェーハを通って小さい電流が流れる。予測されるように、この電流流量は、チャック表面へのウェーハ後部接触点の抵抗と共に変化する。従って、抵抗率の大きい表面をもつ酸化物ウェーハは殆ど通さない。他方、抵抗率の小さい表面をもつシリコンウェーハはかなりの電流を通す。全ての形式のウェーハに対して単一チャッキング電圧が用いられると、幾らかのウェーハ(例えば伝導率が比較的大きいシリコンウェーハ)は、他のウェーハ(例えば伝導率が比較的小さい酸化物ウェーハ)の場合と異なる力によってチャックされるはずである。チェッキング力を増大するとウェーハとチャック表面間の接触領域が増大し、結果として、漏れ電流流量が増大する。チャッキング力を減らした場合にはこれと逆である。過度の漏れ電流がウェーハを流れる場合、ウェーハは、チャック表面から容易に除去されない電荷不均衡を生じる電子放出を経験することがあり得る。この種の不均衡は、デチャッキング電圧が印加された後で、ウェーハに残留電荷を残留させることになる。この残留電荷はウェーハ「スティッキング」の根本的原因である。しかし、種々異なるタイプのウェーハは種々異なる量の漏れ電流を処理できるので、全てのタイプのウェーハの「安全な」漏れ電流を保証する値にチャッキング電圧を限定するだけでは、結果的に、種々異なるタイプのウェーハが広範囲に亙って異なるチャッキング力によってチャックされることになる。従って、幾らかのウェーハは不十分にチャックされ、他のウェーハは過度にチャックされることがあり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、或る1つのウェーハに関して最適チャッキングパラメータを決定し、チャッキング電圧を適応可能に制御することによって最適パラメータを達成するようにウェーハをチャックすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来の技術に関連する欠点はチャッキング電圧を静電チャックに供給する方法および装置に関する本発明によって克服される。ここにチャッキング電圧は最適チャッキングの指標に敏感である。指標には最適漏れ電流、及び/又は、プロセス及び/又は処理されるウェーハのタイプに関するウェーハとチャック表面間の最適電圧差が含まれる。被制御チャッキング電圧を供給することによって、本発明は、例えばウェーハ保持力、チャック漏れ電流、後部ガス圧力、後部ガス漏れレート、直流ウェーハバイアス等のような1つ又は複数のプロセスパラメータを最適化するようにチャッキング電圧を制御する。
【0011】
詳細には、本発明は任意の極性の出力電圧において電流のソーシングおよびシンキング両方が可能である高電圧直流電源を含む。電源は3つのモードにおいて融通性豊かに作動する、即ち、1)設定値信号が当該電源の出力電圧を接地に対す一定値に制御する一定電圧モード、2)電源がウェーハとチャックの間で一定電位差(ΔV)を達成する出力電圧を生成する電圧追跡モード、および、3)電源が一定チャック漏れ電流の大きさを維持するように出力電圧を変更する状態において一定であるような出力電流を生成する電流追跡モードである。処理されるウェーハのタイプまたはチャンバ内において実施されるプロセスタイプに応じて任意のモードを選定可能である。
【0012】
本発明の実例となる実施形態において、高圧直流電源は、ペデスタルベース上に支持された静電チャックを含む半導体ウェーハ処理装置内のペデスタルアセンブリに結合される。本ペデスタルアセンブリはRF電源、直流電源用制御回路、および、処理装置制御ユニットにも結合される。本ペデスタルアセンブリは、一般に、半導体ウェーハ処理装置の真空チャンバ内に設置される。静電チャックは、通常、本体内に埋め込まれた少なくとも1つのチャッキング電極を備えた誘電チャック本体を有する。静電チャックはペデスタルベースによって支持され、これに結合される。ペデスタルベースは、一般に、加熱および冷却エレメント、後部ガス(ヘリウム)移送導管、静電チャック及び種々の熱電対への電力配線、および、陰極電極を含む。RF電源は陰極電極に結合される。
【0013】
本発明の電源が一定電圧モードにおいて作動中であるとき、接地、即ち、チャンバの壁に対する特定の所要出力電圧を表示するために設定値信号が電源に供給される。次に、本電源は設定値信号に比例する一定電圧を生成する。
【0014】
本発明の電源が、電極からウェーハへの一定電位差(ΔV)を達成するために電圧追跡モードにおいて作動中であるとき、静電チャック電源制御回路は、例えば陰極電極に印加されたピークツーピーク又はピークRF電圧のような信号を利用し、実験的に導出された伝達関数を用いてウェーハ電位Vdcを算定する。算定されたウェーハ電位に応答して、電源はウェーハとチャック電極の間に一定電位差(ΔV=Vdc−Vchuck)が維持されるように、チャッキング電圧Vchuck、即ち、チャック電極への電圧を制御する。電位差は、直流電源からの出力電圧の動的調節を介して制御される。ペデスタルベースへ結合されたRF信号のピークツーピーク電圧はウェーハ電位を表す実例的信号である。この信号は電源に供給され、その時チャンバ内において起きている特定プロセスに関する所要電位差を表示する設定値信号と比較される。この比較の結果として得られる差信号は、ウェーハにかかる一定の力を維持しようと試みるようにチャッキング電圧を調節するために電源によって用いられる。
【0015】
電源が電流追跡モードにおいて作動中であるとき、設定値信号は、特定のウェーハタイプおよびチャンバ内で実施されるプロセスから独立した漏れ電流を確立する。出力電流が監視され、チャック漏れ電流を実質的に一定のレベルに維持するように電源チャッキング電圧が変更される。この仕方において、タイプの異なるウェーハが、電子放出、及び/又は、プロセスの終端におけるウェーハのスティッキングを引き起こす可能性のある過度の電流量をこれらのウェーハに流すことなしに、チャックされ得る。
【0016】
任意の極性の出力電圧における電流を電源全体がシンキング及びソーシング可能にする状態において、負電圧電源と正電圧電源を「背負わせる(ピギバッキング)」ことによって直流電源が形成される。解説的に図示される具体化例において、最大負電圧必要条件を超過する負ピーク電圧をもつ負電圧電源が、最大正電圧必要条件に負のピーク電圧を加えた電圧を超過する最大正電圧をもつ正電圧電源に結合される。負電圧電源の出力は、正電圧電源のための一定基準電圧を形成する。この仕方において、組合わされた出力を、装置の負と正の必要条件の間で必要とされるあらゆる電圧にスイングするためには、正電源だけが変更されることが必要である。更に、最大負から最大正電源電圧までの間の任意の電圧において当該装置がチャッキング装置に正の(電流ソース)または負の(電流シンク)電流を供給できるように、一定電流シンク回路によって電源の出力にそれぞれ予負荷がかけられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を組み込む半導体ウェーハ処理装置の装置構成図を示す。
【図2】本発明の可変直流電圧電源の詳細な構成図を示す。
【図3】電源の一実施形態の概略結線図を示す。
【図3A】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3B】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3C】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3D】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3E】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3F】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3G】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3H】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3I】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図3J】図1および2に示す可変直流電圧電源示の詳細な電気概略図結線図を示す。
【図4】図1および2に示す電源からの動作および出力の図表的表現を示す。
【発明の実施の形態】
【0018】
本発明の教示は添付図面と関連して以下の記述を考察することによって容易に理解され得る。
【0019】
理解を容易にするために、可能であれば、これらの図面に共通する同じエレメントを示すために同じ参照番号を用いた。
【0020】
図1は、1つ又は複数のプロセスパラメータを最適化するためにチャッキング電圧を生成する動的チャッキング電圧制御技法に関する本発明を具体化する半導体ウェーハ処理装置100の装置構成図である。詳細には、静電チャック電源104は、最適チャッキングの指標、即ち、ウェーハタイプおよび実施中のプロセスに関して当該ウェーハが最適にチャックされていることを示す指標に敏感な出力電圧を生成する。本発明は、例えば一定のウェーハ対チャック電位差、一定のチャック漏洩電流、一定のチャッキング力、一定の後部ガス漏れレート又は圧力、基板にかかる一定直流バイアス電圧などの特定プロセスパラメータを最適化するようにチャッキング電圧を制御する。以下に示す本発明の特定実施形態においては、特定のウェーハタイプ、及び/又は、プロセスに関する最適チャッキングが達成される一定電位差または一定漏れ電流のような一定の所要結果を達成するためにチャッキング電圧が動的に変化することを保証するフィードバックループが提供される。
【0021】
装置100はプロセスチャンバ102、可変高圧直流電源(静電チャック(ESC)電源104)、装置制御ユニット106、RF電源107、及び、チャッキング監視回路108を含む。プロセスチャンバ102はプロセス領域110を画定する真空エンクロージャを含む。ペデスタルアセンブリ124は、プロセス領域110に近接する半導体ウェーハ112をサポートし、チャンバ102の頂部に設置されたシャワーヘッド111を介してプロセスガスがプロセス領域110へ供給される。ペデスタルアセンブリは、ペデスタルベース122、加熱、及び/又は、冷却ハードウェア1216、および、静電チャック114を含む。加熱、及び/又は、冷却ハードウェア126は、通常、冷媒導管またはチューブ、抵抗性ヒータ、ウェーハの後部に熱伝達媒体(例へば、ヘリウム)を供給するための導管、等を含む。この種のプロセスチャンバはApplied
Materials,Inc.(Santa Clara、California)製のモデルeMxP+エッチングチャンバである。
【0022】
静電チャック114は、通常、少なくとも1つの埋込み電極118を含む誘電ボディ116を含む。誘電ボディ116は、一般に、例えばボルト又はクランプのような一般的手段によってペデスタルベース122へ取り付けられている取付板120に添付される。誘電ボディ116はポリイミド、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化ホウ素、等によって作成される。埋込み電極118は、通常、銅、モリブデン、チタン、または、タングステンである。以下に説明する本発明の実施形態において、静電チャックは、例えば単モリブデン電極を持つ窒化アルミニウムのような抵抗率の小さいセラミックス製のJohnsen−Rahbekチャックである。直流電圧(チャッキング電圧)は、導電性経路128を介して電極118に結合され、ウェーハ112とチャック電極118の間に電位差を確立する。
【0023】
チャッキング電圧はESC電源104によって発生および制御される。RF電源107は、陰極電極を形成する導電性エレメントであるペデスタルベース122へRF信号を結合する。RF電源106はRFソース130、および、陰極電極へRFエネルギーを能率的に結合するために直列接続されたRF整合ネットワーク132を含む。
【0024】
真空チャンバ102内において種々異なる化学作用を使用してウェーハ112を処理するために、プロセスチャンバ102のプロセス領域110内においてプラズマが形成される。プラズマは、RF電源106を介して高周波(RF)エネルギを陰極122へ供給することによって形成される。チャンバ・リッド134(およびシャワーヘッド111)として説明的に示される陽極電極は、一般的に、陰極電極122と反対のプロセスチャンバ102内に設置される。陽極と陰極の間で生成される電界はプロセスガスをイオン即ちプラズマ状態に励起する。
【0025】
ウェーハ112上のプロセス領域110に一旦プラズマが形成されると、プラズマ自体がウェーハ112を直流電位にバイアスする。チャック電極118は直流電圧によってバイアスされるので、ウェーハ112とチャック電極118の間に電位差(ΔV)がある。チャック電極と自己バイアスされたウェーハの間の電位差は反対に分極された電荷をウェーハの下側およびチャック内電極上に蓄積させる。チャックの誘電ボディが窒化アルミニウムのような抵抗率の小さい材料によって作成されている場合には、電極上の電荷は、Johnsen−Rahnek効果に従ってチャックの表面に移動するはずである。電荷の蓄積はウェーハと、ウェーハを静電的にチャック表面に保持するチャックとの間にクーロン引力を形成する。保持力は概してウェーハ112とチャック電極118の間の電位差(Ve―Vdc)の平方に比例する。チャックの誘電ボディが絶縁体であるならば、クーロン引力はチャック電極とウェーハの間にある。クーロン型チャックにおける保持力も同様にウェーハ112とチャック電極118の間の電位差(Ve−Vdc)の平方に比例する。ただし、クーロンチャックにおける充電表面間の距離は一般にJohnsen−Rahbekチャックにおける充電表面間距離よりも大きく、従って、チャッキング電圧が同じであるとすれば、チャッキング力は一般にJohnsen−Rahbekチャックの方が大きい。
【0026】
本発明は、監視されるプロセスパラメータに応答する最適チャッキング電圧を決定するために1つ又は複数のプロセスパラメータを監視する。監視されるパラメータは、ウェーハとチャックの間の電位差、チャックの漏れ電流、チャッキング力後部ガス圧力または漏れレート、または、ウェーハ直流バイアス、等であり得る。
【0027】
本発明の特定の一実施形態において、チャッキング監視回路108(RFプローブ108Aとして具体化されている)は、ウェーハとチャックの間の電位差をそれから導出することのできる信号Vrefを供給する。電源104の出力電圧は、ウェーハとチャックの間の一定電位差を維持するチャッキング電圧を生成するように調節される。
【0028】
チャンバ・パラメータの変動およびウェーハ電位の他の変化を補償するように電位差を調節するために、本発明は電位差の指標を測定し、その後で、一定差電位を確立するようにチャッキング電圧を制御する。一般的に、電位差は、チャンバにおいて後で達成されるはずの特定のプロセスに関する最適値として事前に定義される。この電位差を監視するために、陰極(ペデスタルベース122)へ結合されたRF信号のサンプルがRFプローブ108Aによって抽出される。RFプローブ108Aからの出力は直流信号(Vref)であり、その大きさは、陰極電極に結合されたピーク又はピークツーピークRF電圧を表す。この値は、この値をウェーハ上の直流電圧(Vdc)に近似する信号に変換する伝達関数への入力を形成する。所与装置に用いられる特定の伝達関数は、当該装置によって制御される特定の静電チャックの実験的研究から導出される。8インチセラミックチャックのチャッキング電圧を制御するのに使われる実例的な伝達関数を次に示す:
Vdc=((−1.032xVp)+347)
ここで、Vdcは推定ウェーハ電位、VpはピークRF電圧である。
【0029】
その代りに、信号Vrefを形成するサンプルは、ウェーハにかかる直流バイアスを表す直流バイアス電圧または、例えば、ウェーハとチャック電極の間のキャパシタンス、後部ガス圧、後部ガス漏れレート、等のような、電位差の大きさを計算するのに使用出来る他の任意の信号であっても差し支えない。信号に関する唯一の必要条件は、それがウェーハと静電チャックの間の電位差を表さなければならないことである。電圧追跡モードにおける動作について以下に詳細に示すように、このサンプル電圧(Vref)は、例えばESC電源がウェーハ112と静電チャック118の間の一定電位差を維持するようにその出力電圧を調節するように、ウェーハとチャックの間の最適電位差の指標としてESC電源によって用いられる。
【0030】
本発明の他の一実施形態において、チャッキング監視回路108はチャック漏れ電流を監視(電流監視回路108Bを用いて)し、およびESC電源104は一定の漏れ電流を達成するようにチャッキング電圧を調節する。同様に、種々様々なタイプのウェーハに関して、ウェーハを通る電流は、電子放出およびウェーハスティッキングを回避するように最適化される。
【0031】
チャッキング電圧最適化を実行するためには、ESC電源104は、次の3モードにおいて作動する可変高圧直流電源である。即ち、1)設定点信号が当該電源の出力電圧を、例えばチャンバ壁102のような接地に対する一定値に制御する固定電圧モード、2)当該電源がウェーハとチャックの間で一定の電位差を達成する出力電圧を生成する電圧追跡モード、3)当該電源が、一定の漏れ電流値を維持するように出力電圧を変化させる状態において一定であるような出力電流を生成する電流追跡モードである。処理されるウェーハのタイプ、または、チャンバ内で実施されるプロセスのタイプに応じて任意のモードを選定することが可能である。従って、本電源は様々なチャッキング電圧最適化技法を実行するための融通性に富んだプラットホームを提供する。
【0032】
所与のタイプのプロセス又はウェーハに関する最適チャッキング電圧を確立するために、装置制御ユニット106は、ESC電源104に設定点信号KVSPを供給する。また、装置制御ユニット106は、作動可能化信号KVENを電源104に供給する。設定点は、電源104が固定電圧モードで作動している時の所要電圧を表し、電源が電圧追跡モードで作動しているときの電極とウェーハの間の所要電位差を表し、電源が電流追跡モードで作動しているときの所要漏れ電流を表す。
【0033】
設定点および作動可能化信号に加えて、システムコントローラが追跡モード選択信号MODEを供給するか、または、電源内導電ジャンパの操作によってモード選択がハードワイヤードされ得る。このMODE信号は、当該電源が一定高圧出力、電圧追跡高圧出力、または、電流追跡高圧出力を生成するように電源モードを選定する。これらのモードの各々については、図2に関して以下に詳しく考察することとする。これらのモードの各々において、電源104は、+2.2mAから−1.lmAまでの範囲内の電流をソーシング又はシンキングすることのできる−2000ボルトから+1000ボルトまでの範囲内の高圧出力(V0)を生成する。また、電源104は、当該電源104が適切な限界内において、かつ事前定義された所定設定点KVSPに従って作動中であることを保証するためにシステム制御ユニット106によって用いられる電圧監視信号KVMONおよび電流監視信号CRMONも生成する。
【0034】
図2は高圧直流電源104の詳細な構成図を示す。電源104は、基準信号スケーリング及びプラズマ検出器200、設定点信号スケーリング回路202、加算器204、基準電源バイアス回路206、1対のドライバ208と210、1対の直流‐直流コンバータ電圧電源212と220、電圧監視回路214、電流監視回路224、1対の電流シンク216と226、および、RFフィルタ218を含む。本電源は、電圧電源220が可変電圧電源用固定電圧基準を生成するように接続された1対の電圧電源を含む。詳細には、基準電圧電源は、可変電圧電源212の負端子に結合されている一定の負基準電圧(例えば−2000ボルト)を生成するように、一定電圧によってバイアスされる。可変電圧電源212は、例えば、その出力端子間において0から+3000ボルトまで変化する。ただし、電源220の基準電圧に関しては、可変電圧電源212は、−2000ボルトから+1000ボルトまで変化するVoutにおける電圧を生成する。従って、高圧直流電源が生成される。
【0035】
この添加的機能は図4に示すグラフによって最もよく理解される。この場合、−2000ボルトの基準電圧400が0ボルトから+3000ボルトまでの可変電圧402に加えられ−2000ボルトから+1000ボルトまでの任意の正または負電圧を供給するように容易に制御可能な双極電源を提供する
【0036】
図2へ戻り、基準電圧スケーリング及びプラズマ検出器200は、ウェーハ電圧Vdcを表す信号(推定Vdc信号)を生成するために伝達関数を入力基準電圧に供給し、加算器204に結合される他の信号に比較可能なレベルまで推定Vdcを基準化する。ウェーハ電圧が直接測定されるならば、伝達関数は使用されず、信号だけが基準化される。その上、推定ウェーハ電圧は、推定ウェーハ電圧が事前に定義されたレベルに達するときのしきい値レベルに比較され、回路200はチャンバ内でプラズマを開始させようとする。これは、電流追跡モード動作にとって重要である。ウェーハから接地への導電経路を提供するプラズマ無しではチャックを通って漏れ電流が流れないので、プラズマが室チャンバに存在しないならば、電流追跡モードは使用できない。その上、回路200は、電源の作動モード、即ち、電源が一定電圧出力、電圧追跡出力、または、電流追跡出力を生成するかどうかを選択する回路を含む。スケーリング及びプラズマ検出器200の動作および構造は、図3Aの概略図に関して以下に更に詳細に記述することとする。
【0037】
設定点信号スケーリング回路202は、加算器204に結合される他の信号レベルと同等レベルへ設定点信号を基準化する。加算器204は、電圧監視回路214からの種々の信号、基準化された設定点信号、および、基準化された基準信号を組み合わせ、ドライバ210用入力電圧を形成する。加算器には、電源104に関する作動モードに依存して異なる信号が供給される。
【0038】
固定電圧モード作動中、電流監視信号(電流フィードバック)はアナログスイッチ228によって加算器204から接続が遮断される。アナログスイッチ230は、電圧監視信号(電圧フィードバック)および固定基準電圧の両方を加算器204へ接続する。従って、設定値信号は、電源から接地に対する絶対出力電圧を確立する。
【0039】
電圧追跡モードが選定されたとき、基準化済み設定値信号、基準化済み基準信号(ウェーハ電位を表す)、および電圧監視信号(3個の信号)が加算器204に結合され、電流監視信号は加算器204から接続が遮断される。従って、加算器204は、基準化済み設定値信号と基準化済み基準電圧の間の差(この差は望ましいウェーハからチャックへの電位差を表す)を電圧監視出力信号と比較し、ドライバ210へ供給される差信号を生成する。次に、ドライバはウェーハとチャックの間の所要電位差を生成する必要なチャッキング電圧を達成するように可変電圧電源を制御する。
【0040】
更に詳細には、基準電源バイアス回路206は、例えば0から15ボルトまでの範囲内のそれぞれの入力電圧に対して0から3000ボルトまでの範囲内の出力電圧を生成する例えば高圧直流‐直流コンバータのような基準電圧電源220の入力へドライバ208を介して供給されるバイアス電圧を確立する。入力バイアス電圧に応答して、基準電源220は(+)と(−)端子間で例えば2000ボルトの固定電圧固定出力電圧を生成する。基準電圧電源220用電圧フィードバックは電圧監視回路214から供給される。フィードバック信号は、ドライバへの入力信号がバイアス電圧とフィードバック電圧の組合わせであるように、ドライバ208への入力に位置する加算器207へ供給される。基準電圧電源220の出力電流は、電源220の(+)と(−)出力端子へ結合されている電流シンク226によって公称電流値に設定される。従って、電源が、例えば3.3mAを電源供給可能であれば、電流シンクは公称1.1mAの電流を連続的に吸収できる。公称電流はI1として識別される。基準電圧電源の電流必要条件は変化するので、電源が(+)端子から供給できる電流は約3.3mAまで増大可能である。
【0041】
基準電圧電源220の(−)端子に生成される負電圧(接地に対して)は、可変電圧電源212用基準電圧レベルとして用いられる。加算器204の出力は、一定電流を維持するために出力電圧が変化する状態において電流が一定であることを保証するために、例えば電位差を追跡するように、Vrefと設定値の間の差を追跡か、または、電源104からの出力電流を追跡する可変電圧を確立する。
【0042】
制御信号(差信号)はドライバ210を介して可変電圧電源212へ供給される。可変電圧電源212は、例えば、0から15ボルトまでの範囲内の入力電圧に応答して0から3000ボルトまでの範囲内の出力電圧を生成する高圧DC−DCコンバータである。電源212の(−)出力端子は基準電圧電源220の(−)出力端子端に結合される。従って、(+)端子は基準電圧(例えば−2000ボルト)だけ「オフセット」される。電流シンク216は、可変電圧電源212の(+)と(−)出力端子へ結合される。この電流シンクは、可変電源212から例えば2.2mAの公称電流(I2)を吸収する。
【0043】
電圧追跡モードおよび固定電圧モードにおいて、電圧監視回路214は 加算器204と加算器207の両方へフィードバック電圧を供給する。この電圧は、チャッキング電圧または電流を変動させる可能性のあるチャンバパラメータの過渡現象に対する電源104の応答を緩衝する。従って、負荷インピーダンスの大幅変動に直面しても、電源104は非常に安定している。
【0044】
電流追跡モードが選定されて、プラズマが存在するとき、回路200は、電流監視信号がドライバ210の入力に結合され、電圧基準信号が加算器204から接続遮断されるように、両方のスイッチ228と230を制御する信号を生成する。このモードにおいて、設定値信号は、出力電流Ioutが達成される電流値(望ましい漏れ電流)を示す。従って、加算器204は、ドライバ210および可変電圧電源212を制御するために用いられる差信号を生成するために、電流現行モニタリング信号を設定値信号と比較する。出力電圧の調節は、出力電流が設定値レベルに達するまで行われる。チャッキング電圧は、一定出力電流を維持するように、電源104によって動的に調節される。
【0045】
電流追跡モードを容易にするために、電流監視回路224は静電チャックに対する漏れ電流を表す電流監視信号を生成する。要するに、回路224は、接地に対する抵抗器232の電圧降下を測定し、次に、電圧監視回路214内を流れる電流を差し引くことによって、漏れ電流を算定する。結果は漏れ電流(Iout)の測定値だけである。
【0046】
RFフィルタ218は、チャックからのRFエネルギが電源104に入ることを阻止する。
【0047】
一定電圧モードにおいて、基準電圧用基準化回路200が無能化され、設定値信号KVSPが出力電圧を一定値に設定するように基準化済み基準電圧が所定値へクランプされる。当該一定値は、基準電圧電源が生成した基準電圧(例えば−2000ボルト)と、可変電圧電源の最高出力電圧(例えば、可変電圧電源212によって生成された最大電圧が+3000ボルトであると仮定して、最大電圧+1000ボルト)から当該基準電圧を差し引いた値との間の任意の値であり得る。一定電圧モードにおいては、一定電圧がチャックに供給される。一定電圧が供給されるが、チャックへ結合された電流は実質的に変化し得る。電流変動はウェーハ上のVdcを変化させるチャンバ環境に起因するか、または、電極電圧設定値の変化に起因する。或る時は電流が負(即ち、電源104は電流をシンクしなければならない)であり得るし、別の時は、電流が正である(即ち、電源104は電流をソーシングしなければならない)。各電圧電源220と212から公称量の電流をシンクするように電源104を配置構成することにより、この電源は、単一出力ポートを介して電流をソーシングすることもシンキングすることもできる。RF電力が下方へ傾斜するときはウェーハ処理の終端において、この能力は特に重要である。例えば、RF電力が下方へ傾斜すると、一定電圧を用いてウェーハをチャックされた状態に維持することが有利である。ただし、下方への傾斜に際して、チャックとウェーハの間の電位差の変化に応答してチャックからの電流サージが現れる。すなわち、RF電力が下方に傾斜するにつれてウェーハ電位Vdcが変化する。本発明は、ウェーハ上の一定チャッキング電圧を維持した状態において、この電流サージをシンクする。
【0048】
本発明の動作を更に説明すれば、正電流が必要であるときには、可変電圧電源はVout端子へ最大2.2mA(即ち、最大電流(例えば3.3mA)と電流シンク216電流(I2)(例えば1.1mA)に電流シンク226から供給可能な電流(I1)を加えた値の間の差)までの電流をソーシングする。一方、ESC電源104が電流をシンキングしなければならないときには、この電流は電源の(+)端子へ「押し込まれる」ことが出来ないので、電流シンク216は、必要な電流現行レベルを達成するために、Vout端子によって供給される電流に(+)端子からのあらゆる追加電流が加えられる。従って、2.2mAの全電流が電源104からプルされ、最大電流は可変電圧電源212によって供給される。即ち、3.3mAは電源212から、チャックへの出力電流2.2mA、電流シンク226電流1.1mA、および、電流シンク226を通って流れる電流2.2mAと共に基準電源220によって供給される0mA(最小電流)として供給される。同様に、特定の電圧レベルを維持するために、全電流1.1mAが電源104へ流入するときには、最大電流は基準電圧電源220によって供給される。即ち、3.3mAは電源220から、出力電流−1.1mA、対応する電流シンク226電流2.2mA、および、対応する、電流シンク216を通って流れる電流1.1mAと共に電源212によって供給される最小電流0mAとして供給される。
【0049】
電圧追跡モードにおいて、電源104の出力電圧Voutはチャックとウェーハの間の電位差を表すVrefを追跡する。可変電源212と電圧監視回路214と加算器204とドライバ210とによって表される電圧フィードバックループは設定値KVSPから基準電圧Vrefを差し引いた値に出力チャッキング電圧を維持しようと試みる。従って、チャックとウェーハの間に一定電位差が維持されるはずである。電圧追跡モード期間中、電流監視回路は加算器204へ信号を供給しない。すなわち、スイッチ228は開いている。設定点値と基準値の間の差(電圧監視回路によって緩衝された電圧フィードバック信号)がドライバ210に結合される。次に、ドライバは差電圧に従って可変電圧電源への入力電圧を変化させる。可変電圧電源212は、チャックとウェーハの間の一定電位差を達成するために基準電圧を追跡する電圧を端子Voutに生成する。この一定の力を維持した状態において、既に考察したように、電源は電流をシンクすることも、ソースすることもできる。
【0050】
電流追跡モードにおいて、電源104はそのために必要な電圧には関係なくチャック電極に届けられる一定電流(ウェーハから電子放出を生じない2から200μAの間の漏れ電流)を維持しようと試みる。残留電化の累積に起因するチャックへのウェーハの「スティッキング」を最小限化するときには、電流現行追跡モードが重要である。ウェーハを通る電流を最小限にすると放出および残留電荷蓄積を最小限にする。従って、電源は、電流監視回路224を用いて出力電流Ioutを監視し、出力電流を表す信号を加算器204へ供給する。電源204が電流追跡モードであるときには、加算器204は、当該電流に関する電流測定信号および設定点値にのみ作用する。プラズマ「オン」信号に応答して作動するアナログスイッチ228は電流監視信号を加算器204へ結合する。従って、出力電圧Voutは、設定値電流と合致する一定出力電流を維持しようとする傾向をもつ。所与のタイプのウェーハに関してウェーハ・スティッキングを回避しようと試みる場合、一般的に設定点電流値はウェーハのタイプに関係なく一定である。例えば、漏れ電流設定点は、酸化物ウェーハであってもシリコンウェーハであっても同じである。放射動作を回避する電流設定を行った場合、電荷放射を起こすことなしに所要の漏れ電流レベルを維持するためのチャッキング電圧は変化するはずである。設定点電流値は通常2から200μAまでの範囲の電流を生成する。ただし、好ましい範囲は2から20μAまでである。
【0051】
事前に定義された設定点電流値を使用する代わりに、ウェーハが存在し、プラズマが点火されているが、処理が開始される以前の状態において、装置は比較的高い電圧パルスをチャック電極へ供給することによって設定点を確立し得る。電流監視回路は、パルスが供給されるにつれて発展する漏れ電流(瞬間漏れ電流)を監視する。この瞬間漏れ電流は設定点漏れ電流として用いられるか、または、設定値は瞬間漏れ電流に比例する値である。
【0052】
電子放出を緩和することによって、プラズマが消された後で、例えば−200ボルトの負のデチャッキング電圧を供給することによりウェーハは容易にチャックから外すことができることに注意されたい。この種の負電圧は、ウェーハの後部の電荷をチャック表面から離れさせる。結果的に、吸引力が減少し、ウェーハが「ポップオフ」するか、又は、ウェーハが破損する危険なしに、ウェーハはチャック表面から容易に持ち上げられ得る。
【0053】
電流追跡モードは電流監視回路からのフィードバック信号のみを使用するが、電源は、電圧監視信号が電流監視信号と共に加算器204に供給されるように電流と電圧フィードバックを組み合わせることができる。加算器204は、チャッキング電圧制御の更に複雑な方式を達成する目的で、種々レベルの電圧および電流フィードバックを組み合わせるために使用できる。
【0054】
更に、他の制御信号はポート234において加算器204に供給され得る。これらの制御信号は、例えば後部ガス漏れレートインジケータ、ウェーハとチャックの間のキャパシタンスを表す信号、等のような最適結合を表す別の指標であり得る。この種の信号を使用するとき、当該信号に関する設定点は設定点入力KVSPにも適用できる。従って、チャッキング電圧は、特定のウェーハとプロセス組合わせに対する最適チャッキングを達成する目的で、後部ガス流量、ウェーハ対チャックキャパシタンス、等を変更するために使用できる。
【0055】
図3は、図3Aから3Jの適切な配置構成を示す。これらの図は創意に富んだ電源104の一実施形態の詳細な概略図結線図を示す。本発明を最もよく理解するために、読者は、以下の説明を読むと同時にこれらの図面を参照されたい。
【0056】
図3I、3J、及び3E,3F、3Gの一部は、基準信号基準化およびプラズマ検出回路200の詳細な結線図を示す。入力回路は、高い入力インピーダンスおよび基準信号Vrefに関するフィルタリングを提供するためにコンデンサC29を備えた抵抗器R49およびR50のパイ接続を含む。パイ回路に接続されている演算増幅器U8:Aは入力緩衝作用を提供する。演算増幅器U8:Aの出力は、演算増幅器U8:C、ダイオードCR10とCR11、及び、抵抗器R54とR51を含む絶対値生成回路に結合される。この回路は、基準信号の正および負の値が、正電圧として、基準化演算増幅器U8:Bの入力に結合されるように、入力電圧の絶対値を生成する。
【0057】
伝達関数は、抵抗器R52、R53、及び、分圧器R55を含む回路を用いて、その一部分が確立される。演算増幅器出力端子と負入力端子の間に接続された分圧器は、出力電圧が―R55/R52(Vin)に等しくなるように回路の利得を制御する。次に、この電圧は、直列接続された抵抗器R62、R63、及び、R64によって生成される直流レベルによってオフセットされる。抵抗器R60はU8:Bからの信号を増幅器U8:Dに結合し、抵抗器R39は基準化電圧を増幅器U8:Dに結合する。この回路によって8インチセラミック静電チャック用に確立される伝達関数を次に示す:
V=((−1.032xVin)+347)
ここで、
Vは演算増幅器U8:Bの入力における信号である。
Vinは回路200への入力である。
【0058】
増幅器U8:Bの利得は、全ての回路が伝達関数からの信号を約400:1に基準化するようにR39及びR61によって設定される。基準化された信号は、点A(図3B)及びC(図3C)において回路200から出る。
【0059】
チャンバ内プラズマの存在を検出するために、或る大きさ(例えば50ボルト)より大きい基準電圧が回路200の入力へ供給されたとき、コンパレータU2:Bの出力が状態を変えるようにコンパレータU2:Bは分圧器R55に結合される。コンパレータU2:Eは抵抗器R56とR57によって確立される閾値をもつ閾値検出器として配線される。十分な大きさの電圧が検出されたとき、コンパレータはプラズマが点火されていることを示すために状態を変える、すなわち、プラズマがチャンバ内に存在するときに基準電圧は実質的な大きさを持つ。状態を変えることによって、スイッチU9:Dは、プラズマが検出されたときに開き、プラズマが検出されないときに閉じる。スイッチU9:Dが閉じると、スイッチU9:Cが閉じられるようにダイオードCR15と抵抗器R82を介して接地への通路が電流を引く。このスイッチが閉じると、−500ボルトを表す信号が設定点値から差し引かれるように(図3Bの加算器204を用いて)、R59による電圧降下が演算増幅器U8:Dのこの入力へ供給される。この具体化例の設定点信号は正の値であると予測されることに注意されたい。他の具体化例における設定点信号は正または負であり、どちらの場合にも、このスイッチは実行される必要はない。
【0060】
図に示す具体化例を用いることによって、プラズマが検出されないとき電源は電圧追跡モードにおいて作動せず、ウェーハのチャックを解除するために設定点値から500ボルトを差し引いた電圧が用いられる、即ち、チャックに蓄積されたすべての残留電荷を放電するために負電圧がチャックに印加される。デチャッキング電圧は、プラズマの消火を示す値より大きいプラズマ検出閾値を確立することによって自動的に生成される。例えば、RF電力が下方に傾斜するにつれて(ただし、未だオフされていない)プラズマ検出回路が状態を切り替えるように、閾値は−380ボルトに選定可能である。従って、RFのレベルが低いとき、コンパレータU2:BはスイッチU9:Dを開かせ、スイッチU9:Cを閉じさせて、一定オフセット電圧を演算増幅器U8:Dへ供給し、一定−500ボルトを生成する。この一定電圧が、例えば450ボルトの設定点電圧から減じられると、−50ボルトのデチャッキング電圧が、RF電力の下降に応答してチャッキング電極へ自動的に供給される。
【0061】
モード選択ジャンパブロックW2は回路の特定エレメントに接続し、種々のモードを実行可能化する。例えば、一定電圧出力モードにおいては、スイッチU9:Bが作動可能になるようにピン6の+12ボルトがピン5に接続される。これは、一定オフセット電圧(例えば−1000ボルトを表す−12ボルト電源からR81による電圧降下)を演算増幅器U8:Dの入力に供給する。この信号は設定点信号から差し引かれ、負の設定点電圧を可能にする。モード選択用にはジャンパブロックが示されているが、その代りに電子的に選択可能なモード選択回路が実行され得る。
【0062】
図3Eに続いて、プラズマ検出信号はスイッチU1:C(電圧追跡および一定電圧作動中は閉じ、電流追跡モード中は開く)に結合する。回路200からの基準化された基準信号(または、オフセット信号)は抵抗器R65に結合される。加算器204は演算増幅器U3:Cおよび抵抗器R65、R38、R40、およびR36によって形成される。
【0063】
設定点信号KVSPはパイネットワーク(抵抗器R9とR10及びコンデンサC4)を介してバッファ演算増幅器U6:Aに結合される。バッファの出力は、演算増幅器U6:B及びそのサポート抗器R45、R47、及び、R44を含むスケーラ回路202に結合される。信号基準化の量は分圧器R43および演算増幅器の負入力に結合されている抵抗器R43とR42の組合わせによって設定される。演算増幅器U6:Bの出力はダイオードCR9を介して抵抗器R40、加算器204の入力抵抗器に結合される。回路202は、信号KVSPが回路202からん基準信号の大きさにマッチするように調節できることを保証する。
【0064】
加算器204において、基準信号((負の値)は、設定値信号(正の値)ならびに図3Cの出力回路において導出される出力電圧フィードバック信号D(正の値)と合計される。フィードバック信号は、以下に述べる電圧監視回路において発生するフィルタリングに起因して回路全体の利得を下げる減衰信号である。
【0065】
増幅器U3:CとU3:Dは例えばEMCO製モデルF30のような電圧電源U7用ドライバ(図2の210)を一緒に形成する。各ドライバはそれぞれ演算増幅器U3:CまたはU3:D、及び、NPNまたはPNPトランジスタQ6またはQ7を含む。ドライバは、電圧電源U7の入力(+)および(−)端子に0から15ボルトの信号を供給する対称回路を形成する。電源回路用出力±12ボルトであることに注意されたい。従って、電圧電源U7の制御用にはわずかに0から12ボルトが容易に利用可能である。従って、対称ドライバは例えば0から15ボルトの利用可能な全入力電圧スイングを作動可能化するように実行される。要するに、差信号は、一方のドライバ(演算増幅器U3:C)は入力(+)端子をドライブし、もう一方のドライバ(演算増幅器U3:D)は入力(−)端子をドライブするように、各ドライバに平等に分割および結合可能である。従って、理論的には24ボルトまでが電圧電源U7入力端子に供給され得る。ただし、実用的限界は、24ボルトから演算増幅器およびトランジスタのベース‐エミッタ接合の電圧降下、例えば6.2ボルト未満を差し引いた値である。
【0066】
詳細には、演算増幅器U3:Cは、コレクタが+12ボルトに接続された状態で、トランジスタQ6のベースを駆動する。演算増幅器U3:Dは、そのコレクタが−12ボルトに接続されたトランジスタQ7のベースをドライブする。各トランジスタQ6及びQ7のエミッタは、直流‐直流コンバータU7及びU4の負入力端子へ接続される。また、入力端子も、それぞれのフィルタコンデンサC22とC20を介して接地に結合される。抵抗器R36とダイオードCR16はトランジスタQ6のエミッタから演算増幅器U3:Cの入力へフィードバックを供給する。抵抗器R37、R33、R32、R34、R35、ダイオードCR17、及び、コンデンサC18はアクティブエレメント演算増幅器U3:DとU3:C、及び、トランジスタQ6とQ7と共に電圧電源212用対称ドライブ回路を提供する。この仕方において、差信号(設定値に負の基準電圧正と電圧フィードバック信号を加える)が増幅され、0から3000ボルトまでの出力電圧を比例的に生成する0から15ボルトの制御信号として電圧電源へ供給される。その上、平衡した12ボルトから導出された入力電圧を使用することにより、高圧モジュール104全体への入力における接地電流は小さく、従って、接地に対してオフセット電圧を生成しないはずである。
【0067】
基準電圧電源220(U4)は、電源U4用ドライバ入力電圧が一定基準電圧であるということを除けば、可変電圧電源212と同じ仕方においてドライブされる。基準電圧は抵抗器R31及び分圧器R2によって確立される。基準電圧は、ドライバ210に関連して説明したのと同じ回路構成の対称ドライバ(演算増幅器U3:AとU3:B及びそれらそれぞれのサポート回路)に結合される。従って、範囲0から15ボルト内の一定入力電圧は電圧電源U4の入力端子に供給され、範囲0から3000ボルトの一定出力電圧を生成する。例示される場合には、出力電圧は2000ボルトに設定されている。
【0068】
静電チャックがプロセスチャンバから除去されるとき電源104が作動不能状態にされていることを保証するために安全インタロック回路が装備される。コネクタP2はインタロックコネクタ(例えばピン1が+24ボルト、ピン2が+24ボルト、ピン3が共通24ボルト)であり、インタロック回路は直列接続されたダイオードCR4、CR5(ツェナーダイオード)及びCR6で形成される。リレーは、そのドライブコイルがダイオードCR5の両端に結合されるように接続される。リレースイッチは、コネクタP2が抜き取られるか、または、インタロック回路が外部的に不完全であるためにインタロックリレーが電力供給を失ったとき、リレースイッチが回路を開いて、それぞれのドライブ電圧から電圧電源U4とU7の接続を遮断するように、ドライバトランジスタQ6とQ7の間の通路内にそれぞれ配置される。それによって電圧供給源は効果的に無能化される。
【0069】
電源104は2つのタイプのゼロ出力を生成し得る、即ち、アクティブゼロ出力と浮動ゼロ出力である。供給源およびシンク電流が存在する状態において、差信号が真に出力電圧をゼロに設定したときアクティブゼロ出力が発生する。設定値信号がゼロに設定されると、ドライバはオフにされ、電源は浮動ゼロを生成する。浮動ゼロ状態における作動中は、電圧電源は、ゼロ入力電圧をもつことによって非作動化され、電源の出力ポートは単に、この状態において例えば接地に対して11MΩの抵抗器のような抵抗性負荷として作動する(作動不可能な)電流シンク回路216(図2及び図3C)によって負荷される。電流シンクの両端の電圧が或るレベル以下に減少したときは、電流シンクは非作動化し、作動不能状態になる。この時、電流シンクは抵抗性負荷として作動する。
【0070】
浮動ゼロを達成するために、ゼロ設定値が加算器204に供給され、電圧電源U7はその入力端にゼロの電圧を持つはずである。ただし、U4の入力端子がゼロ電圧であることを達成するために、一定基準電圧は接続が遮断されなければならない。閾値検出器(コンパレータU2:A及び抵抗器R7とR8)は、ゼロ設定値がいつ設定されるかを決定する。閾値検出器はバッファ演算増幅器U6:Aに結合され、PNPトランジスタQ1をドライブする。トランジスタは、ゼロ設定値が検出されたとき、バイアス電圧入力を接地に接続するスイッチU1:Aを制御する。従って、ドライバ208への入力が接地され、ゼロボルトがU4の入力端子へ供給されるはずである。浮動ゼロ作動は、ジャンパブロックW1内ジャンパを、トランジスタQ1がスイッチU1:Aから接続遮断されるように、調節することによって作動不可能化できる。
【0071】
ENABLE信号は、低ENABLE信号がスイッチU1:Aを開き、入力バイアスを接地から遮断し、スイッチU1:Dを開いて演算増幅器U3:Cの出力への入力の短絡を除去するように、スイッチU1:A及びU1:Dの位置を制御する。従って、低ENABLE信号は電源104を作動可能化する。高ENABLE信号はドライバ208へゼロバイアス電圧を供給し、ドライバ210を短絡して電源104を非作動化する。
【0072】
コンパレータU2:D、スイッチU1:BとU1:C及び抵抗器R79は電流追跡モード中に使用される。プラズマ検出回路200は点Bにプラズマ検出信号を供給する。この信号はコンパレータU2:Dに結合され、U2:Dは両スイッチU1:BとU1:Cの制御ポートに結合される。電源が電流追跡モードにある状態で、プラズマが検出されたとき、点Aにおける基準電圧がスイッチU1:Cによってドライバ210から接続遮断される。抵抗器R79を介して点Jから供給される出力電流を表す信号のフィードバックは、スイッチU1:Bを介してダイバー演算増幅器U3:Cの入力に結合される。従って、静電チャック用出力電圧は設定値によって決定され、その後で、チャックへの一定電流を達成するために電流追跡信号に従って調節される。
【0073】
基準電圧電源U4からの出力電圧は電流シンク226へ供給される。電流シンクは抵抗性負荷と同様に簡単である。ただし、更に安定した電流シンクは、2つのNPNトランジスタQ4とQ5、抵抗器R20、R21、R22およびR23、及び、ダイオードCR7とCR8を含む2ステージのアクティブ回路である。各ステージは、そのベースが抵抗器を介してコレクタに接続され、ダイオードと抵抗器を介してエミッタへ接続されたトランジスタを含む。各ステージは1500ボルトまでの電圧降下を扱うことが可能であり、従ってコンサバチブであり、各ステージは1000ボルトの降下を扱うように設計されている。(+)端子電圧は抵抗器R85を介して電流シンク226へ結合される。2個のトランジスタによる電流シンクは1.1mAを連続的にプルする。
【0074】
同様に、電流シンク216は可変電圧電源U7の出力端子に結合される。この電流シンクは、トランジスタQ8、Q9、およびQ10、抵抗器R66、R67、R68、R69、R70、R71、および、ダイオードCR12、CR13、CR14を含む3つのステージで構成される。この電流シンクは連続して2.2mAを汲み出す。
【0075】
基準電圧電源U4の(−)端子は可変電圧ソースU7の(−)端子へ接続される。従って、電源104の出力(Vout)は負の基準電圧(−2000ボルト)から、可変電圧電源(+3000ボルト)から利用可能な正の最大電圧から基準電圧(2000ボルト)を差し引いた例えば+1000ボルトに等しい正電圧まで変化し得る。図2に関して述べたように、電源は電流(例えば1.1mAまで)をシンク可能であり、電流(例えば2.2mAまで)をソース可能である。可変電圧電源からの出力電圧は、負荷抵抗器R86、及び、C27とL1を含むRFフィルタを介して出力ポートに結合される。
【0076】
電流追跡を容易にするように出力電流を監視するために、演算増幅器U5:Aが基準電圧電源U4の(+)端子に結合される。電源U4の正端子からの信号は並列接続されたコンデンサC12と抵抗器R18によってフィルタリングされる。更なるフィルタリングは入力から演算増幅器U5:Aの出力へ接続されるコンデンサC29によって提供される。抵抗器R18は電流シンクへの入力におけるサンプルポイントから接地に結合され、R19はサンプルポイントから演算増幅器U5:Aの負入力へ結合される。負の演算増幅器入力は、抵抗器R18とR19が並列接続されて、電流感知抵抗性エレメントを構成するような仮想接地である。これらの抵抗器において発展する電圧は電源104の出力電流を表す。抵抗器R27はバッファ演算増幅器U5:Bによってドライブされる。演算増幅器U5:Bは抵抗器R24およびR25を経て基準電源の負端子へ結合され、当該端子上の電圧を表す信号を生成する。この信号はR27を介して演算増幅器U5:Aの入力に結合される。その上、演算増幅器U6:Dは、電源104の出力の電圧を表す信号を生成する。この演算増幅器は抵抗器R29とR75及びコンデンサC28を介して電源の出力経路に結合される。演算増幅器U6:Dからの出力信号は、抵抗器R28を介して演算増幅器U5:Aの入力に結合される。従って、R27からの信号は基準電圧モニタを流れる電流を表し、R28を介して結合される信号は可変電圧モニタを流れる電流を表す。演算増幅器U5:Aの出力が静電チャックへ供給される電流を表すように、これら2つの信号は抵抗器R18とR19を通る電流サンプルから差し引かれる。この信号は緩衝され、電流監視信号であるCRMON出力として供給される。また、信号はポートBNC3上の電圧信号(1ボルトは300μAに等しい)として供給される。演算増幅器U5:Bからの出力は、直列接続された抵抗器R72とR73によって設定された閾値をもつ閾値検出器として構成されたU2:Cの入力に結合される。演算増幅器U2:Cの出力はトランジスタQ11をドライブし、および作動化するための駆動する電源がいつ作動中であるかを表示する発光ダイオード回路(DS2およびR74)を作動化および非作動化する。
【0077】
電圧監視回路は、電源104の出力電圧を表す電圧信号を生成するための演算増幅器U6:DとU6:Cを含む。演算増幅器U6:Cは、R76を介して演算増幅器へ結合される出力電圧と回路200からの点C上の信号、即ち、抵抗器R77を介して演算増幅器に結合される基準化済み基準電圧との間の差である差電圧(ΔV)を生成する。演算増幅器U6:Cの利得は抵抗器R78とR41によって制御される。演算増幅器の出力は電圧監視信号KVMONである。この信号は、電源が順調に作動中であると、正の数である設定点値に等価であるように意図されている。
【0078】
本発明を用いることにより、特定のタイプのウェーハとプロセスの組合わせに関して最適チャッキングを達成するために、種々のチャッキング電圧制御シナリオを柔軟に利用できる。一定電圧モードにおいて、静電チャックは従来の仕方において使用され得る。電圧追跡モードにおいて、種々のプロセスおよびウェーハのタイプを通じてチャックとウェーハの間の一定電位差を達成するために静電チャックが使用され得る。電流追跡モードにおいて、静電チャックは、電子放出を緩和するように、チャックを通って一定の漏れ電流を供給するために使用され得る。従って、適切なモードを選定することにより、プロセスが適切に実施され、ウェーハが微粒子汚染物質を生成しないか、または、電子放出を経験しないように、ウェーハは良好に制御された熱環境を経験する。また、事前に定義されたチャッキング電圧は各プロセスに関して最も適するように生成されるので、過度のチャッキング力が使用されず、ウェーハ容易にチャックから取り外すことができる。
【0079】
ここでは本発明の教示が組み込まれた様々な実施形態が詳細に図示および記述されているが、当該技術分野における当業者は、これらの教示が依然として組み込まれている他の多くの多様な実施形態を容易に考案することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体処理装置において例えば半導体ウェーハのような基板を保持する装置であって、
基板支持表面の下に埋め込まれた電極を備える静電チャックと、
前記静電チャックの前記電極へ結合され、前記基板と前記静電チャックの間の電位差によって前記基板が保持されるように可変チャッキング電圧を前記電極へ供給するESC電源であって、更に、
接地に対して基準である一定基準電圧出力をもつ基準電圧電源と、
前記一定基準電圧出力を基準とした可変電圧出力をもつ可変電圧電源であって、接地に対する前記可変電圧電源の出力電圧が可変チャッキング電圧であり、
記出力電圧が前記一定基準電圧出力に等しい限界を持つ第1出力電圧と、前記可変電圧電源から供給可能な最大可変電圧出力から前記一定基準電圧出力を差し引いた出力に等しい限界をもつ第2出力電圧とを有する、可変電圧電源と、
前記ESC電源が、一定電圧モード、電圧追跡モード、又は電流追跡モードで作動することを可能にするプラズマ検出回路と、
前記基準電圧電源から一定電流を汲み出す前記基準電圧電源へ結合された第1電流シンク回路と、
前記可変電圧電源から一定電流を汲み出す前記可変電圧電源へ結合された第2電流シンク回路と、を備え、前記第1電流シンク回路が少なくとも1つのトランジスタを含む能動回路である、電源と、
前記静電チャックに結合され、前記半導体処理装置内にプラズマを生成するために使用されるRF信号のピークピーク又はピーク電圧を測定し、前記ピークピーク又はピーク電圧からDC信号を生成するRFプローブを含むチャッキング監視回路と、
前記ESC電源に結合され、前記ESC電源が前記電圧追跡モードで作動するときに前記プラズマ検出回路によって前記DC信号から生成されるチャッキングインジケータ値に応答して、動的に前記電位差を所定値に維持するように前記ESC電源を制御するシステム制御ユニットと、
を備える、基板保持装置。
【請求項2】
前記基準電圧電源が前記基準電圧電源に前記一定基準電圧を生成させるようにバイアス電圧が供給された制御入力端子を有する可変電圧電源である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2電流シンク回路が少なくとも1つのトランジスタを含む能動回路である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ESC電源が、前記ESC電源から前記静電チャックへ流入する漏れ電流を表す電流監視信号を生成するように、更に電流監視回路を備え、前記ESC電源が前記電流追跡モードで作動するときに一定漏れ電流を維持するように前記出力電圧が変更される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ESC電源が前記電圧追跡モード又は一定電圧モードで作動するときに、前記ESC電源が更に電源安定性を維持するように前記可変電圧電源および前記基準電圧電源用電圧フィードバック信号を生成する電圧監視回路を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記プラズマ検出回路は、前記プラズマ検出回路によって前記DC信号から生成される前記チャッキングインジケータ値の大きさに基づいて前記プラズマが検出されないときに前記電流追跡モードから前記一定電圧モード又は前記電圧追跡モードに切り換える、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記プラズマ検出回路が、前記チャッキングインジケータ値の大きさが或る大きさより大きい場合にプラズマが存在すると決定する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記プラズマ検出回路は、所定の電圧より小さいウェーハ上のバイアス電圧を表すチャッキングインジケータ値が測定された場合に、前記静電チャックへ、前記基板のチャッキングを解除する電圧を前記ESC電源に供給させる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
半導体処理装置内に基板を保持する方法であって、
チャッキング電極を含む静電チャックの基板支持表面上において基板を支持するステップと、
前記基板を静電的に保持する電位差を生成するように、前記チャッキング電極と前記基板との間に可変直流チャッキング電圧を印加するステップと、
RF電源によって前記半導体処理装置内の陰極電極に供給し、前記半導体処理装置内にプラズマを生成するために使用されるRF信号のピークピーク又はピーク電圧を測定するステップと、
前記ピークピーク又はピーク電圧からチャッキングインジケータ値を生成するステップと、
前記チャッキングインジケータ値の大きさに基づいて、一定電圧モード、電圧追跡モード、又は電流追跡モードの作動モードを選択するステップと、
或る大きさを有する前記チャッキングインジケータ値の前記大きさに応答して、電圧追跡モードを用いて動的に前記電位差を所定値に維持するステップと、を備え、
前記電位差は前記チャッキングインジケータ値によって表される、基板保持方法。
【請求項10】
前記選択するステップが前記チャッキングインジケータ値の前記大きさに基づいて更にプラズマの存在を検出するステップを備え、前記プラズマが検出されない場合、前記電流追跡モードを無能化するステップを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
更にプラズマ強度を検出するステップと、前記プラズマ強度が所定のレベル未満であるときに前記基板のチャッキングを解除する電圧を供給するステップと、を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項1】
半導体処理装置において例えば半導体ウェーハのような基板を保持する装置であって、
基板支持表面の下に埋め込まれた電極を備える静電チャックと、
前記静電チャックの前記電極へ結合され、前記基板と前記静電チャックの間の電位差によって前記基板が保持されるように可変チャッキング電圧を前記電極へ供給するESC電源であって、更に、
接地に対して基準である一定基準電圧出力をもつ基準電圧電源と、
前記一定基準電圧出力を基準とした可変電圧出力をもつ可変電圧電源であって、接地に対する前記可変電圧電源の出力電圧が可変チャッキング電圧であり、
記出力電圧が前記一定基準電圧出力に等しい限界を持つ第1出力電圧と、前記可変電圧電源から供給可能な最大可変電圧出力から前記一定基準電圧出力を差し引いた出力に等しい限界をもつ第2出力電圧とを有する、可変電圧電源と、
前記ESC電源が、一定電圧モード、電圧追跡モード、又は電流追跡モードで作動することを可能にするプラズマ検出回路と、
前記基準電圧電源から一定電流を汲み出す前記基準電圧電源へ結合された第1電流シンク回路と、
前記可変電圧電源から一定電流を汲み出す前記可変電圧電源へ結合された第2電流シンク回路と、を備え、前記第1電流シンク回路が少なくとも1つのトランジスタを含む能動回路である、電源と、
前記静電チャックに結合され、前記半導体処理装置内にプラズマを生成するために使用されるRF信号のピークピーク又はピーク電圧を測定し、前記ピークピーク又はピーク電圧からDC信号を生成するRFプローブを含むチャッキング監視回路と、
前記ESC電源に結合され、前記ESC電源が前記電圧追跡モードで作動するときに前記プラズマ検出回路によって前記DC信号から生成されるチャッキングインジケータ値に応答して、動的に前記電位差を所定値に維持するように前記ESC電源を制御するシステム制御ユニットと、
を備える、基板保持装置。
【請求項2】
前記基準電圧電源が前記基準電圧電源に前記一定基準電圧を生成させるようにバイアス電圧が供給された制御入力端子を有する可変電圧電源である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2電流シンク回路が少なくとも1つのトランジスタを含む能動回路である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ESC電源が、前記ESC電源から前記静電チャックへ流入する漏れ電流を表す電流監視信号を生成するように、更に電流監視回路を備え、前記ESC電源が前記電流追跡モードで作動するときに一定漏れ電流を維持するように前記出力電圧が変更される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ESC電源が前記電圧追跡モード又は一定電圧モードで作動するときに、前記ESC電源が更に電源安定性を維持するように前記可変電圧電源および前記基準電圧電源用電圧フィードバック信号を生成する電圧監視回路を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記プラズマ検出回路は、前記プラズマ検出回路によって前記DC信号から生成される前記チャッキングインジケータ値の大きさに基づいて前記プラズマが検出されないときに前記電流追跡モードから前記一定電圧モード又は前記電圧追跡モードに切り換える、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記プラズマ検出回路が、前記チャッキングインジケータ値の大きさが或る大きさより大きい場合にプラズマが存在すると決定する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記プラズマ検出回路は、所定の電圧より小さいウェーハ上のバイアス電圧を表すチャッキングインジケータ値が測定された場合に、前記静電チャックへ、前記基板のチャッキングを解除する電圧を前記ESC電源に供給させる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
半導体処理装置内に基板を保持する方法であって、
チャッキング電極を含む静電チャックの基板支持表面上において基板を支持するステップと、
前記基板を静電的に保持する電位差を生成するように、前記チャッキング電極と前記基板との間に可変直流チャッキング電圧を印加するステップと、
RF電源によって前記半導体処理装置内の陰極電極に供給し、前記半導体処理装置内にプラズマを生成するために使用されるRF信号のピークピーク又はピーク電圧を測定するステップと、
前記ピークピーク又はピーク電圧からチャッキングインジケータ値を生成するステップと、
前記チャッキングインジケータ値の大きさに基づいて、一定電圧モード、電圧追跡モード、又は電流追跡モードの作動モードを選択するステップと、
或る大きさを有する前記チャッキングインジケータ値の前記大きさに応答して、電圧追跡モードを用いて動的に前記電位差を所定値に維持するステップと、を備え、
前記電位差は前記チャッキングインジケータ値によって表される、基板保持方法。
【請求項10】
前記選択するステップが前記チャッキングインジケータ値の前記大きさに基づいて更にプラズマの存在を検出するステップを備え、前記プラズマが検出されない場合、前記電流追跡モードを無能化するステップを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
更にプラズマ強度を検出するステップと、前記プラズマ強度が所定のレベル未満であるときに前記基板のチャッキングを解除する電圧を供給するステップと、を備える、請求項9に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図4】
【図2】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図3H】
【図3I】
【図3J】
【図4】
【公開番号】特開2011−238934(P2011−238934A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109948(P2011−109948)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2000−542796(P2000−542796)の分割
【原出願日】平成11年3月31日(1999.3.31)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2000−542796(P2000−542796)の分割
【原出願日】平成11年3月31日(1999.3.31)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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