説明

非晶質−結晶質タンデムナノ構造化太陽電池

【課題】基板の表面上に配設された複数の細長いナノ構造体、及び細長いナノ構造体上にコンフォーマルに堆積して複数の光活性接合を形成する多層膜を含んでなる光起電力デバイスを提供する。
【解決手段】基板102表面上に複数の細長いナノ構造体101を生成し、及び多層膜103をコンフォーマルに堆積させて複数の光活性接合を形成する段階を含んでなり、複数の光活性接合は異なる波長の光を捕獲するように設計される。ソーラーパネルは1以上の光起電力デバイスを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に太陽電池に関し、さらに詳しくは細長いナノ構造体上にコンフォーマルに集成された積層多重接合アレイを含むかかる太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、太陽電池の製造で最も常用されている材料はシリコン(Si)であり、かかる太陽電池は日光を電気に変換するために使用される。このような目的のためには単一接合及び多重接合のpn型太陽電池が使用されているが、いずれもこの技術の製造及び使用に関係するコストを顕著に低減させるのに十分なほど効率的でない。その結果、従来の電気供給源との競争により、かかる太陽電池技術の広汎な使用は妨げられている。
【0003】
大抵の電子デバイス及び光電子デバイスでは、接合の形成が必要となる。例えば、ある導電型の材料を反対の導電型の異種材料に接触させて配置することでヘテロ接合が形成される。別法として、単一タイプの材料からなる異種ドープ層を対合させることでpn接合(又はホモ接合)を形成できる。導電型の変化及び/又はバンドギャップの変動に原因するヘテロ接合での急激なバンドベンディングは、高密度の界面状態を引き起こし、それが電荷キャリヤーの再結合をもたらすことがある。さらに、製造中に接合の位置に導入された欠陥が電荷キャリヤーの再結合部位として作用してデバイスの性能を低下させることがある。
【0004】
既存の太陽電池では、光励起電子がバンドギャップを超えて有し得るエネルギーを(フォノンとして知られる)格子振動との相互作用の結果として急速に失って再結合が増加することで効率の損失が起こる。このような損失だけで、標準電池の変換効率は約44%に制限される。加えて、点欠陥(格子間不純物)、金属クラスター、線欠陥(転位)、平面欠陥(積層欠陥)及び/又は結晶粒界に関連した半導体結晶中のトラップ状態による光生成電子及び正孔の再結合はさらに効率を低下させる。このような後者の効率低下は適当な性質(特に、光生成キャリヤーの長い拡散距離)を有する他の材料を使用することで解消できるが、それでもこの技術を従来の電気供給源とコスト的に同等なものにするには至らない。
【0005】
半導体は一般に使用する材料のバンドギャップより低いエネルギーをもった光を吸収しないという事実のためにさらなる損失が起こる。光起電力損失のすべてを考慮に入れて、Shockley及びQueisserは、単一接合電池の性能が1.45電子ボルト(eV)のバンドギャップを有する最適電池について30%をわずかに上回る効率に制限されることを証明できた(Shockley and Queisser,“Detailed Balance Limit of Efficiency of p−n Junction Solar Cells”,J.Appl.Phys.,1961,32(3),pp.510−519)。さらに最近の計算では、単一接合に関するこの「限界効率」は29%であると証明されている(Kerr et al.,“Lifetime and efficiency of limits of crystalline silicon solar cells”,Proc.29th IEEE Photovoltaic Specialists Conference,2002,pp.438−441)。
【0006】
PVデバイスを構成する材料の吸収能力もまた、電池の効率に影響を及ぼすことがある。可変バンドギャップ材料で形成されたi型半導体吸収剤層をp型半導体層とn型半導体層との間に配置したpin型薄膜太陽電池が記載されている。米国特許第5,252,142号を参照されたい。可変バンドギャップのi型吸収剤は、向上した光電変換効率をもたらす。
【0007】
多重接合型太陽電池もまた、向上した効率を有することが実証されている。向上した性能は、異なるバンドギャップをもった積層接合を組み込んで光スペクトルの一層広い領域を捕獲することで達成できる。かかるデバイスは、通例、積層pn接合又は積層pin接合を用いて製造される。このようなアレイ中における各組の接合は、しばしばセルといわれる。典型的な多重接合型太陽電池は、互いに積層された2つ又は3つのセルを含んでいる。多重接合型太陽電池に関する、積層物中のセル数の関数としての最適バンドギャップ及び理論効率がMarti及びAraujoによって理論的に解析された(A.Marti and G.L.Araujo,Sol.Ener.Mater.Sol.Cells,199643(2),pp.203−222)。
【0008】
ナノ構造体
pn接合ダイオードアレイ中におけるシリコンナノワイヤは記載されている(Peng et al.,“Fabrication of Large−Area Silicon Nanowire p−n Junction Diode Arrays”,Adv.Mater.,2004,vol.16,pp.73−76)。しかし、かかるアレイは光起電力デバイスで使用するように形成されていない上、かかるアレイが太陽電池の効率を高めるために役立ち得ることも示唆されていない。
【0009】
太陽電池デバイス中におけるシリコンナノ構造体は記載されている(Ji et al.,“Silicon Nanostructures by Metal Induced Growth (MIG) for Solar Cell Emitters”,Proc.IEEE,2002,pp.1314−1317)。かかるデバイスでは、ニッケル(Ni)予備層上にSiをスパッタリングすることにより、微晶質Si薄膜中に埋め込まれた状態でSiナノワイヤを形成でき、Siナノワイヤが薄膜の内部で成長するか否かはその厚さで決定される。しかし、かかるナノワイヤは能動光起電(PV)要素でない。これらは単に反射防止能力の点で役立つにすぎない。
【0010】
ナノ構造体が能動PV要素であるような、シリコンナノ構造体を含む太陽電池は、2005年3月16日に提出されかつ同じ譲受人に譲渡された同時係属米国特許出願第11/081,967号に記載されている。この特定の特許出願では、電荷分離接合は主としてナノ構造体そのものの内部に含まれていて、一般にかかるナノ構造体の合成中にドーピングの変更が要求される。
【0011】
上述の説明の結果、ナノ構造化された足場上に多重接合セルを組み込むことは、従来の電気供給源と同等な効率をもった太陽電池を生み出すことができる。このように、PVデバイスに関する新しい構成を探求する必要は今なお存在している。これは特に、光吸収時における光トラッピングの向上及び短い電荷輸送経路から利益を得ることができるナノ構造化デバイスについて言える。
【特許文献1】米国特許第5,252,142号明細書
【非特許文献1】Shockley and Queisser,“Detailed Balance Limit of Efficiency of p−n Junction Solar Cells”,J.Appl.Phys.,1961,32(3),pp.510−519
【非特許文献2】Kerr et al.,“Lifetime and Efficiency of Limits of Crystalline Silicon Solar Cells”,Proc.29th IEEE Photovoltaic Specialists Conference,2002,pp.438−441
【非特許文献3】A.Marti and G.L.Araujo,Sol.Ener.Mater.Sol.Cells,199643(2),pp.203−222
【非特許文献4】Peng et al.,“Fabrication of Large−Area Silicon Nanowire p−n Junction Diode Arrays”,Adv.Mater.,2004,vol.16,pp.73−76
【非特許文献5】Ji et al.,“Silicon Nanostructures by Metal Induced Growth (MIG) for Solar Cell Emitters”,Proc.IEEE,2002,pp.1314−1317
【非特許文献6】米国特許出願第11/081,967号
【発明の開示】
【0012】
若干の実施形態では、光起電力デバイスは、基板の表面上に配設された複数の細長いナノ構造体、及び細長いナノ構造体上にコンフォーマルに堆積した多層膜を含んでなる。多層膜は複数の光活性接合を含んでいる。細長いナノ構造体上に堆積した光活性接合のアレイは、広域スペクトルの光を捕獲するための手段を提供し得る。細長いナノ構造体は、光吸収を最適化するための多重光路を生み出すための手段を提供し得る。
【0013】
若干の実施形態では、光起電力デバイスの製造方法は、基板表面上に複数の細長いナノ構造体を生成する段階、及び多層膜をコンフォーマルに堆積させる段階を含んでなる。多層膜は複数の光活性接合を含んでいる。
【0014】
若干の実施形態では、ソーラーパネルは1以上の光起電力デバイスを含んでなり、ソーラーパネルはかかるデバイスを周囲の大気環境から隔離すると共に電力の発生を可能にする。
【0015】
以上、本発明に関する以下の詳しい説明を一層よく理解できるようにするため、本発明の特徴をかなり大まかに略述した。本発明の特許請求の範囲の内容をなす本発明の追加の特徴及び利点は以下に記載される。
【0016】
添付の図面を参照しながら以下の説明を考察することで、本発明及びその利点を一層完全に理解できよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
若干の実施形態では、本発明は光起電(PV)デバイスに関し、かかるデバイスは細長いナノ構造体及び細長いナノ構造体上にコンフォーマルに配設された多層膜を含み得る。多層膜は、pn接合及びpin接合のような複数の光活性接合を含み得る。これらの光活性接合は、多重接合アレイ中の各セルを分離するトンネル接合と積層し得る。多重接合アレイ中の各セルは直列に配列でき、pn接合、pin接合及びこれらの組合せを含み得る。若干の実施形態では、細長いナノ構造体は第1の光活性接合の一部であってよく、p型層又はn型層のように適当にドープされていてよい。別の実施形態では、細長いナノ構造体は導電性であり、したがって光活性接合の一部でなくてもよい。
【0018】
以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を可能にするため、特定の細目(例えば、特定の数量、サイズなど)が記載される。しかし、かかる特定の細目なしでも本発明を実施できることは当業者にとって自明であろう。多くの場合、かかる細目は本発明の完全な理解を得るためには不要であると共に、関連技術分野の当業者のスキルの範囲内に含まれるので、かかる考慮事項などに関する細目は省略されている。
【0019】
図面全般について言えば、図は本発明の特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明をそれに限定するためのものでないことはもちろんである。
【0020】
本明細書中で使用する用語の大部分は当業者にとって認識し得るものであろうが、本発明の理解を助けるために以下の定義を示す。しかし、明確に定義されていない場合、用語は当業者によって現在容認されている意味を有するものと解釈すべきであることを理解すべきである。
【0021】
本明細書中で定義される「光起電力デバイス」は、1以上のホトダイオードを含むと共に、光起電効果を利用して起電力(e.m.f.)を生み出すデバイスである。Penguin Dictionary of Electronics,Third Edition,V.Illingworth,Ed.,Penguin Books,London,1998を参照されたい。例示的なかかるデバイスは「太陽電池」であり、太陽電池はその分光応答が太陽からの日中放射に対して最適化されているホトダイオードである。
【0022】
本明細書中で定義される「ナノスケール」は、一般に1μm未満の寸法をいう。
【0023】
本明細書中で定義される「ナノ構造体」は、一般に2以上の寸法についてナノスケールである構造体をいう。
【0024】
本明細書中で定義される「細長いナノ構造体」は、2以上の寸法についてナノスケールであるナノ構造体をいう。例示的なかかる細長いナノ構造体には、特に限定されないが、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブなどがある。
【0025】
本明細書中で定義される「ナノワイヤ」は、一般に、通例は2以上の寸法についてサブミクロン(<1μm)であると共に主として円筒形の形状を有する細長いナノ構造体である。これらはしばしば単結晶である。
【0026】
本明細書中で定義される「コンフォーマル」は、構造体を被覆する被膜について、被膜が主として構造体の形状にならう(即ち、その形状に従う)ことをいう。しかし、この用語は広義に解釈すべきであって、少なくとも若干の実施形態では被覆構造体間の空隙を実質的に満たすことも許す。単一のコンフォーマル層の厚さは、被覆される構造体の様々な部分に沿って変化し得る。
【0027】
本明細書中で定義される「半導体材料」は、一般に金属と絶縁体との中間の導電率を有する材料であって、かかる材料はその価電子帯と伝導帯との間にエネルギーギャップ(又はバンドギャップ)を有する。純粋な非ドープト状態では、かかる半導体材料は通例「真性」であるといわれる。
【0028】
本明細書中で定義される「pドーピング」は、真性半導体材料の導電率を高めると共に、フェルミ準位を価電子帯に向かって移動させて接合を形成し得るのに有効な正孔を導入する不純物による半導体材料のドーピングをいう。例示的なかかるpドーピングは、シリコン(Si)への少量のホウ素(B)の添加である。
【0029】
本明細書中で定義される「nドーピング」は、真性半導体材料の導電率を高めると共に、フェルミ準位を伝導帯に向かって移動させて接合を形成し得るのに有効な電子を導入する不純物による半導体材料のドーピングをいう。例示的なかかるnドーピングは、シリコン(Si)への少量のリン(P)の添加である。
【0030】
本明細書中で定義される「電荷分離接合」は、ポテンシャル障壁及び電界勾配の存在によって電子及び正孔の分離を可能にする異なるタイプの材料(例えば、異なるドーパント及び/又はバルク組成物を有する材料)間の境界からなる。
【0031】
光起電力デバイスに関して本明細書中で定義される「ヘテロ接合」は、異なるバンドギャップを有する2種の異なる半導体材料の接触によって形成された電荷分離接合である。
【0032】
本明細書中で定義される「能動PV要素」は、電荷分離接合の形成に関与するPVデバイスの構成要素である。
【0033】
本明細書中で定義される「pn型光起電力デバイス」は、pドープ半導体とnドープ半導体との接触によって形成された電荷分離接合を含む1以上のホトダイオードを含んでなるデバイスである。
【0034】
本明細書中で定義される「pin型光起電力デバイス」は、3種の材料の積層物であって、1つの層はp型にドープされており(主として正孔伝導用)、1つの層はドープされておらず(即ち、真性であり)、残りの層はn型にドープされている(主として電子伝導用)。
【0035】
本明細書中で定義される「多重接合」は、pn接合及び/又はpin接合を含み得る積層光活性接合のタンデムアレイである。各光活性接合は、トンネル接合によって隣接するセルから分離できる。
【0036】
本明細書中で定義される「太陽電池」は、本質的に、太陽放射からのエネルギー変換用の光起電力デバイスである。
【0037】
本明細書中で定義される「ナノテンプレート」は、ナノスケール寸法を有する細孔又はカラムのアレイを含む無機又は有機膜である。細孔は、一般に、膜の平面に対して実質的に垂直な方向に沿って膜を貫通している。
【0038】
デバイス
図1について説明すれば、若干の実施形態では、本発明は多重接合ナノ構造体に基づく光起電力デバイスに関するものであり、かかるデバイスは下記の構成要素(a)及び(b)を含み得る。
【0039】
(a)基板102上に配設された複数の細長いナノ構造体。細長いナノ構造体は、例えば結晶質シリコンナノワイヤを含み得ると共に、一実施形態ではpドープ半導体であり、別の実施形態ではnドープ半導体であり得る。別法として、これらは導体として役立つように縮退ドープトシリコン又は他の金属材料であってもよい。
【0040】
(b)細長いナノ構造体の回りにコンフォーマルに配設された多層膜103。多層膜103の少なくとも一部は、一実施形態では光活性接合の構成要素をなし得る。若干の実施形態では、光活性接合はpn接合であり得ると共に、他の実施形態ではpin接合であり得る。さらに別の実施形態では、多層膜103の少なくとも一部はトンネル接合からなり得る。
【0041】
若干の実施形態では、透明導電性材料(TCM)104の層が多層膜103上に堆積している。TCM104は複数の細長いナノ構造体間の空隙を実質的に満たし得る。加えて、TCM104は複数の細長いナノ構造体の上方に公称的に平らな表面を形成し得る。さらに、通例はデバイスを外部回路に接続するために機能し得る上部接点105及び下部接点(図示せず)が設けられている。(常にではないが)通例、下部電極は基板と一体化されている(下記参照)。
【0042】
細長いナノ構造体101は、通例、約100nmないし約100μmの範囲内の長さ及び約5nmないし約1μmの範囲内の幅を有する。若干の実施形態では、ナノ構造体は基板102の平面に対して実質的に垂直な方位で基板102上に配列しており、前記ナノ構造体101の大部分は45°を超える角をなしている。他の実施形態では、ナノ構造体101は主としてランダムな状態で基板102上に配設されている。
【0043】
細長いナノ構造体101は、様々な実施形態に従って光起電力デバイスを与えるのに適した任意の材料からなり得る。好適な半導体材料には、特に限定されないが、シリコン(Si)、シリコン−ゲルマニウム(SiGe)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、GaInP、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)、窒化インジウム(InN)、セレン(Se)、テルル化カドミウム(CdTe)、Cd−O−Te、Cd−Mn−O−Te、ZnTe、Zn−O−Te、Zn−Mn−O−Te、MnTe、Mn−O−Te、銅酸化物、炭素、Cu−In−Ga−Se、Cu−In−Se及びこれらの組合せがある。好適な半導体材料には、特に限定されないが、縮退ドープトシリコン、アルミニウム(Al)や白金(Pt)やパラジウム(Pd)や銀(Ag)のような金属材料、カーボンナノチューブ及びこれらの組合せがある。
【0044】
若干の実施形態では、多層膜103の特定の層は、pドープ半導体及びnドープ半導体である組成物を含み得る。非ドープト層も組み込むことができ、これは真性層及びトンネル接合として作用する層を含み得る。一実施形態では、多層膜103は積層されたpn接合のセルを構成し得る。別の実施形態では、多層膜103は積層されたpin接合のセルを構成し得る。さらに別の実施形態では、多層膜103は積層されたpn接合及びpin接合の組合せを構成し得る。若干の実施形態では、セルはトンネル接合として役立つ層で分離することができる(下記参照)。
【0045】
多層膜103のうちで光活性接合を構成する部分の組成は、例えば、非晶質シリコン(a−Si)、非晶質シリコン−ゲルマニウム(a−SiGe)、ナノ結晶質シリコン(nc−Si)及び非晶質シリコンカーバイド(a−SiC)であり得る。一実施形態では、かかる材料は増加するバンドギャップエネルギーをもった層をなすようにして細長いナノ構造体101の回りに配列できる。
【0046】
通例、多層膜103は5〜50000Åの範囲内の厚さを有し得る。多層膜103中の個々の層の厚さを決定するのは困難であり得るが、異なるバンドギャップエネルギーの接合間における電流整合を最適化するように厚さを調整すればよい。つまり、所定の層の厚さは、個々のセル(即ち、各々の光活性接合)で発生される光電流が実質的に同等となるように選択すればよい。
【0047】
若干の実施形態では、多層膜103の特定の層はトンネル接合を含み得る。かかる場合、材料組成は金属酸化物(例えば、酸化亜鉛)又は高ドープト非晶質Si層であり得る。
【0048】
若干の実施形態では、細長いナノ構造体はnドープ半導体であり得るが、pドープされていてもよい。しかし、デバイス中に光活性接合を形成するためには、ナノ構造体のドーピングは多層膜中の隣接層のドーピングと反対になるようにすべきである。図2は、本発明の一実施形態に係る、基板202上に配設された簡単な多重pn接合デバイス200を示している。図2について説明すれば、細長いナノ構造体201は例えばnドープ半導体であり、第1のpドープト層210を含む第1のpn接合(第1のセル)の第1の要素として組み込むことができる。第2のpn接合はnドープト層220及びpドープト層230を含み得ると共に、これはトンネル接合240で分離されている。多層膜203の各層は、細長いナノ構造体201の回りに順次かつコンフォーマルに堆積させることができる。当業者には、異なる波長の光を捕獲するため、2つのpn接合間でバンドギャップを変化させることの利益が認められよう。
【0049】
図3について説明すれば、別の実施形態では、細長いナノ構造体301の回りに堆積させた多層膜303(図2中の203を参照されたい)に追加の層を付加して新しい多層膜300を生み出すことができる。追加の層は別のトンネル接合340を含み得る。さらに、pドープト層350及びnドープト層360を含む第3のpn接合が存在し得る。原則として、任意の数の層を付加することで、介在するトンネル接合を含む任意の数のpn接合を生み出すことができる。かかる堆積光活性接合の数は、基板302上に堆積させた互いに隣接する細長いナノ構造体301間の空隙に対して各層が導入する厚さ、及び電流整合を確保する能力に依存し得る。かくして各々の光活性接合(即ち、セル)は、セル間において実質的に同等な光電流を確保するため、材料のバンドギャップエネルギーに依存する厚さをもった構成層を有し得る。
【0050】
さらに図3は、本発明の一実施形態に従ってドープト結晶質シリコン(c−Si)を基礎セルとして有する多重接合デバイスを示している。下部セルは、半導性のドープトナノワイヤ301及び反対のドーピングを受けながらワイヤの回りに配設された第1のコンフォーマル堆積層(図2中の210を参照されたい)を含み得る。層350及び360ヲ含む最も外側のセル(上部セル)は、実質的に非晶質のシリコンであり得る。最後に、中間セル(図2中の220/230を参照されたい)は、非晶質シリコン−ゲルマニウム(a−SiGe)のような中間のバンドギャップエネルギーをもった材料からなり得る。別の実施形態では、下部から上部に向かって積層されたセルは、それぞれc−Si、a−SiGe及び非晶質シリコンカーバイド(a−SiC)であり得る。
【0051】
図4に示すように、デバイス400の細長いナノ構造体401は導体であり、積層多重接合構造物の一部になり得ない。この実施形態では、細長いナノ構造体401は基板402上に配設された電極として役立ち得る。多層膜403は、(第1のpドープト層410及び第1のnドープト層420を含む)第1のpn接合、(第2のpドープト層430及び第2のnドープト層440を含む)第2のpn接合、及び第1のpn接合と第2のpn接合との間のトンネル接合450を含み得る。この実施形態は2つのpn接合を有するデバイス400を説明しているが、当業者には、細長いナノ構造体401の回りに(適当なトンネル接合を中間に配置した)3つのpn接合を積層し得ることが認められよう。追加の実施形態では、任意の数のpn接合を積層することができる。この場合にも、空間的制約及び電流整合が、組み込むことができるpn接合の正確な数を決定する上での制限因子になり得る。
【0052】
例示目的のために述べれば、細長いナノ構造体401が導電性である実施形態に従い、下記の材料構成を(各セルが光活性接合を含む)三セルデバイスにおいて使用できる。410及び420を含む下部セル(図4を参照されたい)はa−SiGeであり得る。430及び440を含む中間セルは、中間のバンドギャップエネルギーを得るために異なるSi:Ge比を有するa−SiGeであり得る。最後に、中間セルの回りにコンフォーマルに配設される上部セル(図示せず)はa−Siであり得る。3種の材料の別の構成としては、例えば、下部セルから上部セルに向かって表して、ナノ結晶質シリコン(nc−Si)、(水素含有量を変化させることで中間のバンドギャップエネルギーを有する)a−Si層、及びa−Siが使用できる。さらに別の構成では、下部セルはnc−Siであり、中間セルはa−SiGeであり、上部セルはa−Siであり得る。当業者には、適当なドーピングによって光活性接合を生み出すのに適した任意の組合せの3種の材料が積層セルを形成できることが認められよう。例えば、上述の上部セルの各々はバルク材料としてa−Siの代わりにa−SiCを有していてもよい。
【0053】
前記に例示したように、デバイスは積層pn接合を有することができる。図5に示すように、デバイスはまた、代わりに積層pin接合をコンフォーマルに堆積させるための足場として役立つ導電性の細長いナノ構造体501を基板502上に含むこともできる。デバイス500は、2つの積層pin接合を画定する多層膜503を含み得る。第1のかかる接合は、第1のnドープト層510、第1の真性層525及び第1のpドープト層520を含んでいる。同様に、第2の接合は第2のnドープト層530、第2の真性層535及び第2のpドープト層540を含んでいる。第1及び第2のpin接合はトンネル接合550によって分離されている。デバイス500は2つの積層pin接合を有するデバイスを示しているが、当業者には、上記に略述した制約の範囲内で細長いナノ構造体501の回りに任意の数のpin接合を積層し得ることが認められよう。
【0054】
若干の実施形態では、上記のデバイスはさらに、基板上に位置し又は基板と一体をなすと共に、それから細長い半導性のナノ構造体が延び出ているナノ多孔質テンプレートを含んでいる。これは、しばしば、かかるナノ構造体をテンプレート中で成長させる場合に当てはまる。図6について説明すれば、若干の実施形態では、成層基板102は基板支持体102a上に存在するナノ多孔質テンプレート102c及び/又は導電層102bを含み得る。
【0055】
若干の実施形態では、多孔質ナノテンプレート102cは、陽極処理酸化アルミニウム(AAO)、二酸化シリコン(SiO)、窒化ホウ素(BN)、窒化シリコン(Si)などからなる群から選択される材料からなる。若干の実施形態では、多孔質ナノテンプレート102cは約0.1〜約100μmの厚さ(又は平均厚さ)を有し得ると共に、多孔質ナノテンプレートは約1nmないし約1μmの細孔径(又は平均細孔径)及び約10〜約1012/cmの細孔密度を有し得る。
【0056】
透明導電性材料の層を使用するデバイス実施形態では、透明導電性材料は透明導電性酸化物(TCO)であり得る。若干のかかる実施形態では、透明導電性酸化物は酸化インジウムスズ(ITO)である。若干の他のかかる実施形態では、透明導電性酸化物はドープトZnOである。通例、導電性透明材料は約0.05〜約1μmの厚さを有する。
【0057】
若干の実施形態では、基板は下部接点を提供する。若干の実施形態では、透明導電性材料の層は上部接点を提供する。所期の用途に応じ、デバイスは上部及び/又は下部から照明されるように構成できる。
【0058】
デバイスの製造
若干の実施形態では、本発明は、本発明の一実施形態に従って、上述のような多重接合ナノ構造体に基づく光起電力デバイスを製造するための方法700(図7)に関する。図2〜5と関連させながら図7について説明すれば、段階701で基板上に複数の細長いナノ構造体を設ける。細長いナノ構造体は、若干の実施形態では半導体(図2〜3)であり、他の実施形態では導体(図4〜5)である。段階702では、細長いナノ構造体上に多層膜をコンフォーマルに堆積させるが、各層の材料は若干の実施形態では適当なドーピングを受ける。他の実施形態では、かかる材料は真性であることもあり、或いはトンネル接合として役立つこともある。段階703では、多層膜上に透明導電性材料を層として堆積させる。段階704では、デバイスを外部回路に接続するために機能し得る上部接点及び下部接点を形成する。上部接点はTCM上に配設でき、下部接点は細長いナノ構造体の反対側にある基板の表面上に配設するか、又は基板中に組み込むことができる。
【0059】
上述した方法に関する若干のかかる実施形態では、細長いナノ構造体は、化学蒸着(CVD)、金属有機物CVD(MOCVD)、プラズマ強化CVD(PECVD)、ホットワイヤ化学蒸着(HWCVD)、原子層堆積、電気化学堆積、溶液型化学堆積及びこれらの組合せからなる群から選択される方法により成長させることで設けられる。若干のかかる実施形態では、細長いナノ構造体は、触媒を用いて金属ナノ粒子から成長させることで設けられる。この場合、金属ナノ粒子はナノ多孔質テンプレート中に存在し得ると共に、金属ナノ粒子は金(Au)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び鉄(Fe)からなる群から選択される金属を含み得る。
【0060】
若干の実施形態では、細長いナノ構造体を成長させるため、2005年3月27日に提出されかつ同じ譲受人に譲渡された米国特許出願第11/141,613号に記載されているようなナノ多孔質テンプレートが使用される。
【0061】
上述した方法に関する若干のかかる実施形態では、多層膜をコンフォーマルに堆積させる段階は、CVD、MOCVD、PECVD、HWCVD、スパッタリング及びこれらの組合せからなる群から選択される技術を用いて実施される。
【0062】
ソーラーパネル
若干の実施形態では、本発明は、本明細書中に開示されたような多重接合ナノ構造体に基づく光起電力デバイスの1以上を含み得るソーラーパネルに関する。かかるソーラーパネルは、各デバイスを周囲の大気環境から隔離すると共に電力の発生を可能にする。
【0063】
最後に、本発明の実施形態は、高い効率を示すと共に光誘起劣化に対して抵抗性を有し得る多重接合ナノ構造化光起電力デバイスを提供する。本明細書中に開示された実施形態に従って製造されたPVセルは、光の吸収を最適化すると共に、ヘテロ接合界面での再結合を最小限に抑えることができる。他の利益としては、特に主としてシリコンを基材とするセルを含む実施形態における低いコスト及び製造の容易さがある。細長いナノ構造体が導電性を有する実施形態は、電流整合がさらに容易なセルを提供し得る。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は本発明の特定の実施形態を実証するために示される。当業者であれば、以下の実施例中に開示される方法は本発明の例示的な実施形態を表すものにすぎないことが理解されるはずである。しかし、本開示に照らせば、本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱することなく、記載された特定の実施形態中に多くの変更を行うことができ、それでも同じ結果又は類似の結果が得られることが当業者には理解されるはずである。
【0065】
実施例1
以下の実験例は、本明細書中に開示されるようなナノワイヤ成長のための実施形態を実証するために示される。これらは本発明を例示するものであり、したがって限定するものではない。図8aは、57nmの平均直径を有する長い高密度シリコンナノワイヤの成長を示している。図8bは、182nmの平均直径を有する短い低密度シリコンナノワイヤを示している。最後に、図8cは70nmの平均直径を有するシリコンナノワイヤのランダム化アレイを示している。
【0066】
実施例2
以下の実験例は、本明細書中に開示されるようにナノワイヤの回りに層をコンフォーマルに堆積させるための実施形態を実証するために示される。これらは本発明を例示するものであり、したがって限定するものではない。図9aは、長い高密度シリコンナノワイヤ上にa−Siをコンフォーマルに堆積させてなる高密度ワイヤを示している。図9bは、c−Siナノワイヤ900上にコンフォーマルに堆積させたa−Siの断面図を示している。a−Si層はCVDで導入した。a−Siの第1の層910は真性であり、第2の層920はnドープされている。
【0067】
上述の実施形態に関して上記に記載した構造、機能及び操作のあるものは本発明を実施するためには不要であり、単に本発明の例示的な実施形態を完全なものにするため説明中に含めてあることが理解されよう。さらに、上記に引用した特許及び刊行物中に記載された特定の構造、機能及び操作を本発明と共に実施できるが、これらはそれの実施にとって不可欠ではないことも理解されよう。したがって、特許請求の範囲で定義される本発明の技術思想及び技術的範囲から実際に逸脱することなしに、詳しく記載されたやり方とは異なるやり方で本発明を実施してもよいことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係る光起電力デバイスの部分断面図を示している。
【図2】本発明の一実施形態に係る、2つのpn接合をもった多重接合デバイス中の半導性ナノ構造体を示している。
【図3】本発明の一実施形態に係る、3つのpn接合をもった多重接合デバイス中の半導性ナノ構造体を示している。
【図4】本発明の一実施形態に係る、2つのpn接合をもった多重接合デバイス中の導電性ナノ構造体を示している。
【図5】本発明の一実施形態に係る、2つのpin接合をもった多重接合デバイス中の導電性ナノ構造体を示している。
【図6】本発明の一実施形態に係る、その上にナノ構造体を合成した基板の構成要素を示している。
【図7】本発明の一実施形態に係る、光起電力デバイスの製造方法の段階を示している。
【図8】図8a〜cは、本発明の一実施形態に係る、基板表面上に成長させた細長いナノ構造体を示している。
【図9】図9a〜bは、本発明の一実施形態に係る、細長いナノ構造体の回りに堆積させた多層膜を示している。
【符号の説明】
【0069】
100 光起電力デバイス
101 細長いナノ構造体
102 基板
103 多層膜
104 透明導電性材料の層
105 上部接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、
光起電デバイスの基板の表面上に配設された複数の細長いナノ構造体、及び
複数の細長いナノ構造体上にコンフォーマルに堆積して複数の光活性接合を形成する多層膜
を含んでなる光起電力デバイス。
【請求項2】
多層膜が、金属酸化物、非晶質シリコン、非晶質シリコン−ゲルマニウム(SiGe)、ナノ結晶質シリコン及び非晶質シリコンカーバイド(SiC)の1種以上からなる、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項3】
複数の細長いナノ構造体がシリコンナノワイヤからなる、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項4】
多層膜の層が5〜50000Åの範囲内の相対厚さを有する、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項5】
相対厚さは電流整合が得られるように選択される、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項6】
複数の光活性接合が1以上のpn接合を含む、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項7】
複数の光活性接合が1以上のpin接合を含む、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項8】
多層膜がさらに1以上のトンネル接合を含む、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項9】
複数の細長いナノ構造体が第1の光活性接合中に組み込まれている、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項10】
複数の細長いナノ構造体が導体である、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項11】
さらに、複数の細長いナノ構造体間の空隙を満たすと共に複数の細長いナノ構造体の上方に平らな表面を与えるようにして多層膜上にコンフォーマルに配設された透明導電性材料(TCM)を含む、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項12】
さらに、光起電力デバイスを外部回路に接続するために機能し得る上部接点及び下部接点を含み、上部接点はTCM上に配設されており、下部接点は細長いナノ構造体の反対側にある基板の表面上に配設されるか、又は基板中に組み込まれている、請求項11記載の光起電力デバイス。
【請求項13】
光起電力デバイスの製造方法であって、
基板表面上に複数の細長いナノ構造体を生成する段階、及び
複数の細長いナノ構造体上に多層膜をコンフォーマルに堆積させることで複数の光活性接合を形成する段階
を含んでなる方法。
【請求項14】
形成される複数の光活性接合の1以上が、pn接合、pin接合及びトンネル接合の1以上からなる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
さらに、複数の細長いナノ構造体間の空隙を満たすと共に複数の細長いナノ構造体の上方に平らな表面を与えるようにして多層膜上に導電性透明材料をコンフォーマルに配設する段階を含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
さらに、光起電力デバイスを外部回路に接続するために機能し得る上部接点及び下部接点を形成する段階を含む、請求項13記載の方法。
【請求項17】
細長いナノ構造体が、CVD、MOCVD、PECVD、HWCVD、原子層堆積、電気化学堆積、溶液型化学堆積及びこれらの組合せからなる群から選択される方法により成長させることで得られる、請求項13記載の方法。
【請求項18】
細長いナノ構造体が、触媒を用いて金属ナノ粒子から成長させることで得られる、請求項13記載の方法。
【請求項19】
金属ナノ粒子がナノ多孔質テンプレート中に存在する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
金属ナノ粒子が、金(Au)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び鉄(Fe)からなる群から選択される金属からなる、請求項18記載の方法。
【請求項21】
多層膜をコンフォーマルに堆積させる段階が、CVD、MOCVD、PECVD、HWCVD、スパッタリング及びこれらの組合せからなる群から選択される技術を用いて実施される、請求項13記載の方法。
【請求項22】
請求項1記載の光起電力デバイスの1以上を含んでなるソーラーパネルであって、かかるデバイスを周囲の大気環境から隔離すると共に電力の発生を可能にするソーラーパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−135740(P2008−135740A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296185(P2007−296185)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】