説明

面内容量型MEMS加速度計

【課題】MEMS製造技術を用いた単一チップ上に作られた面内加速度計と面外加速度計の両方を含む超頑強、かつ、高性能な、3軸加速度計を提供する。
【解決手段】物体に堅固に取り付けられた基板付きの面内加速度計及び一体成形の材料からなる、基板104の上方に可動自在に所定の距離を離間される、プルーフマス102を含む。プルーフマスは102、プルーフマスと基板との間に異なる高さの隙間を形成するためにプルーフマスから下に伸びる複数の電極突部116を含む。プルーフマス102は、物体が加速しているときに、複数の基板電極108,110の各々の上面に平行な方向に動く構成で、隙間の領域の変化及び基板とプルーフマスとの間の容量の変更をもたらす。面内加速度計は面外加速度計の製造に使用される技術と同じ技術を用いて製造可能で高い衝撃用に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の属する技術分野
本発明は加速度計及びその他の力検出装置に関し、より具体的には基板上の複数の電極の上方に位置する一体成形の材料から形成されたプルーフマスを含む超頑強な、面内MEMS容量型加速度計に関する。基板が加速すると、プルーフマスは基板の上面に平行な方向に移動し、プルーフマスと基板との間の容量を変える。この容量の変化を変位の測定及び基板が付けられている物体の加速度の特定に使用することが可能である。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
加速度計は全ての種類の車用のナビゲーション及び誘導システムに一般に用いられる慣性計測装置(IMU)内の重要な要素である。一般的なIMUはリニア加速度計、ジャイロ回転速度センサー、及び関連電子機器を各々含む3つの均等なモジュールからなる。こうした3軸IMUは航空機や宇宙船から精密誘導ミサイルや大砲弾にわたる範囲の航空宇宙応用内のナビゲーション、誘導及びデータ測定システムに用いられる。こうした用途の多くで、IMUは極度の振動及び衝撃負荷にさらされる。このため、こうした過酷な条件に耐えるように設計されなければならない。
【0003】
過酷な衝撃負荷に耐えることができる慣性計測装置は超頑強IMUとして知られる。こうした高性能IMUは重力の数千倍の力にさらされたときでさえ完全に機能的であり続ける。高性能加速度計及びその他の部品の使用はIMUが搭載された車や自動推進体の信頼できる、一貫した、精密な誘導を可能にする。
【0004】
微小重力解像度、高感度、高直線性及び低バイアスドリフト付き高性能加速度計は超頑強IMUの使用に必須である。伝統的に、IMUは大型機械式加速度計及び従来の回転型ジャイロを含んでいた。しかし、最新のIMU、特に超頑強で高性能のIMUは微小電気機械(MEMS)製造技術を用いて製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MEMS製造技術は微小重力解像度を達成しながら大質量、大容量及び小減衰が同時に加速度計で得られるのを確実にするのに重要な役割を果たす。シリコン容量型加速度計は超頑強IMUのために非常に魅力的になるいくつかの利点を有する。シリコン容量型加速度計は高感度、かつ、良好な直流応答及びノイズ特性、低ドリフト、低温感度、低電力消費及び簡単な構造を有する。MEMS製造技術を用いて単一チップ上に超頑強な、高性能の3軸加速度計を構築することは有利である。しかし、このためには、同じ製造技術を用いたチップ上の面外及び面内両方の加速度計の組み立てが必要である。
【0006】
既知の面内加速度計の構成は、側壁間で感知間隔が形成され感知が感知間隔の大きさによって決定されるMEMS櫛指加速度計を含む。従来のMEMS櫛指加速度計が図7に示され、全体で番号700で記される。加速度計700は2つのアンカー704にバネで付けられ複数の可動指706を有するプルーフマス又は感知プレート702を含む。可動指706は可動及び固定指の間に側部の隙間が形成された状態で複数の固定指708と交互に配置される。側部の隙間の最小サイズは面内加速度計700を製造するのに用いられる乾式反応性イオンエッチング(DRIE)技術のアスペクト比に基づきプレート厚さの約1/10から1/15の間に制限される。これは75μm(ミクロン)厚のプレートの最小の側部の隙間が5.0から7.5μmの間であることを意味する。既存のDRIE技術で可能な最小の大きさは10μmの隙間の生成である。75μmの厚さのプレートに、この技術を用いてMEMS櫛指、面内加速度計を製造することは不可能である。
【0007】
マイクロマシニングとバルクマイクロマシニングとを組み合わせた他の製造技術を、側部の隙間を1.1μmに減らすのに用いることが可能である。ポリシリコン蒸着技術が一例である。しかしながら、こうした技術の処理フローは非常に複雑で、低収率となる。さらに、結果として生じる構造は脆弱で、高い衝撃の用途に向かない構造になる。こうした既存の技術は超頑強なMEMS加速度計の製造に用いることができない。
【0008】
加えて、従来の櫛指加速度計の構成には非線形性問題が内在している。線形性を向上するために、側部の隙間の変化は小さい差動容量出力をもたらす小さい範囲に制限されなければならない。
【0009】
これらの制限を考えると、同じMEMS製造技術を用いた単一チップ上に作られた面内加速度計と面外加速度計の両方を含む超頑強、かつ、高性能な、3軸加速度計が切実に求められている。本発明はこのニーズを扱う。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は物体の面内加速度を特定するためのシステムおよび方法に関する。同システムおよび方法は当業者には以下の数個の図面と併せて後述の同発明の詳細な説明からより簡単に明らかになるであろう。
【0011】
物体の面内加速度を特定するためのシステムが開示され、物体に強固に取り付けられた基板付きの面内加速度計及び一体成形の材料からなる、基板の上方に可動可能に所定の距離を離間されるプルーフマスを含む。複数の第1の基板電極が基板から上に延び、同じく基板から上に延びる複数の第2の基板電極と交互になっている。各基板電極は平面的な上面を有する。複数の第1の基板電極は互いに電気的に接続され、複数の第2の基板電極も互いに電気的に接続される。プルーフマスはプルーフマスと基板との間に異なる高さの隙間を形成するためにプルーフマスから下に延びる複数の電極突部を含む。第1のコンデンサはプルーフマスと複数の第1の基板電極との間に形成され、第2のコンデンサはプルーフマスと複数の第2の基板電極との間に形成される。プルーフマスはプルーフマスが均衡位置にあるとき、複数の電極突部の各々が1つの第1の基板電極の一部及び隣接する第2の基板電極の一部の上方に配置される状態で、物体の速度が一定のとき、均衡位置に保持される構成である。プルーフマスは物体が加速しているときに複数の基板電極の各々の上面に平行な方向に動く構成である。これにより各基板電極の上面とプルーフマスとの間の隙間の領域の変化が起きる。
【0012】
物体の面内加速度を測定する方法もまた開示されている。この方法は:基板の物体への堅牢な取り付け;プルーフマスと基板との間の異なる高さの隙間を形成するための基板の上方に所定の距離の均衡位置へのプルーフマスの固定;第1の基板電極と第2の基板電極が基板上に交互に配置される、プルーフマスと複数の第1の基板電極との間への第1の差動コンデンサの形成とプルーフマスと複数の第2の基板電極との間への第2の差動コンデンサの形成と;物体に加速力を加えることによる均衡位置から基板電極の平面的な上面に平行な方向へのプルーフマスの移動と;第1の差動コンデンサ内の容量の第1の変化の測定と;第2の差動コンデンサ内の容量の第2の変化の測定と;測定された容量の変化を物体の加速度を表す電圧に変換するための回路の使用のステップを含む。
【0013】
物体の面内加速度を測定する追加の方法もまた開示される。その方法は:物体への基板の堅牢な取り付け;プルーフマスが1方向のみに動くように拘束される、プルーフマスの基板の上方でのぶら下げ;基板電極の上の平面に平行な方向にプルーフマスが動くときに各基板電極の上の平面とプルーフマスとの間の領域が変化するように各電極突部が2つの基板電極の上方で心出しされた状態でプルーフマスが複数の電極突部を含む、プルーフマスと基板との間への差動コンデンサの形成と;物体に加速力を加えることによるプルーフマスの移動と;各基板電極とプルーフマスとの間の容量の変化の測定と;回路を用いた、測定された容量の変化から物体の加速度を表す電圧への変換と;各基板電極の上の平面とプルーフマスとの間の領域の変化に比例する回路からの電圧を出力する工程を含む。
【0014】
物体の面内加速度を特定するためのシステムおよび方法を如何に実施するかを当業者が容易に理解できるように、次の図を参照して同システムおよび方法の好ましい実施形態を以下に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】基板の上方に懸架されトッピング・ウエハで包まれたプルーフマスを示す本発明による面内加速度計の断面図である。
【図2】プルーフマスが初期位置にある図1に示される面内加速度計の一部の詳細図である。
【図3】プルーフマスが加速による変位の後に第2の位置にある図1に示される面内加速度計の追加の詳細図である。
【図4】本発明の面内加速度計によって形成されたコンデンサのための等価回路を示す回路図である。
【図5】容量の変化の形式の加速度計からの入力を受け、入力をプルーフマスの加速度を表す電圧出力に変換する本発明のセンサー・インターフェース回路の機能ブロック図である。
【図6】乾式反応性(DRIE)処理によって形成されたプルーフマス上の電極突部を示す、本発明の面内加速度計の代替実施形態の断面図である。
【図7】側部の感知間隔を形成するための固定指が可動指と交互に配置された状態の先行技術の面内加速度計の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
単一チップ上の面内加速度計と面外加速度計の両方を含む超頑強、かつ、高性能の3軸の慣性計測装置の切迫した必要性がある。この目的に適した斬新な面外MEMS加速度計が2007年10月26日に出願された「均衡の取れたガス減衰付き懸架加速度計」という名称の米国特許出願番号11/978,090に記載される。本明細書に参照として組み込まれる出願は、非対称なプルーフマス付き懸架容量型加速度計を記載する。懸架感知プレートは実質的に空洞の第1の側と中空でない第2の側を含む。この出願に記載される面外加速度計は感知構造としての75μm(ミクロン)のシリコン・オン・インシュレータ(SOI)層を用いる。そうした非対称な非中空/中空のプルーフマスセンサー構造は比較的厚いプルーフマス及びプルーフマスと面外懸架加速度計の基板との間の狭い垂直隙間のために表面マイクロマシニング揺動構造より高い感度を示す。
【0017】
この開示は、面外懸架加速度計の製造に使用される技術に似た技術を用いて製造可能な面内加速度計を記述する。この製造技術の例は、また、本明細書に参照として組み込まれる2010年6月15日に発行された「高性能MEMS加速度計のためのウエハ処理フロー」の名称の米国特許番号7,736,931に開示される。
【0018】
この開示は基板の上方に配置されたプルーフマスが基板の上面に平行な方向に動くのに伴い差動容量を測定する超頑強な、面内MEMS加速度計を記載する。高性能な、超頑強、かつ、低ノイズの、面内加速度計を得るために、プルーフマスのサイズを大きくし、感知間隔を減少し、減衰を減少することが必要である。しかし、厚いプルーフマスMEMSの処理において、面外加速度計に典型的な垂直隙間を小さくするより、図7の従来の直列加速度計に示されるように、面内加速度計に典型的な側部隙間を小さくする方がはるかにより困難である。
【0019】
本発明は面外加速度計の製造に使用される技術と同じ技術を用いて製造可能なオフセット櫛指、面内加速度計である。面内加速度計は厚いプルーフマス及び1.0μmもの小ささに製造可能な垂直隙間を使用してよい。容量の測定に隙間の変化の変わりに領域の変化を使用するので、本開示に記載される面内加速度計は加速度に関する線形変化を有する。これは、また開ループ加速度計の設計に適している。何よりまず、製造処理フローは同じ製造技術を使用して単一チップ上の面内加速度計及び面外加速度計の製造を可能にする、既存の面外加速度計と同じである。
【0020】
面内加速度計の本実施形態を詳細に記載し、その実施例を図面に示す。限定ではなく説明および例示の目的のために、面内、オフセット、櫛指加速度計の断面図を図1に示し、全体として参照番号100で示す。面内加速度計100はプルーフマス102、基板104及びトッピング・ウエハ106を含む。トッピング・ウエハはプルーフマス102のための衝撃保護を設け、基板104に接着されたガラスフリットでも良い。トッピング・ウエハ106を基板104に接着するのに融着又は共晶接合が用いられても良い。加速度計100は又プルーフマス102周囲のガードリング105を含んでも良い。基板104は物体に堅牢に取り付けられ、プルーフマス102と基板104との間の容量の差動変化を測定することにより、物体の加速度を特定するための加速度計100を可能にする、バネ103または他の適切な手段によって基板104の上方にプルーフマス102は懸架される。1つの実施形態において、プルーフマス102は基板104に融着されるウエハに可動可能に付けられて良い。
【0021】
図2は、また、プルーフマス102及び基板104の詳細を示す、加速度計100の一部の詳細図である。基板104はシリコン・オン・インシュレータ(SOI)材を備えてよい。図示のように、基板104は基板104から上に延びる複数の第1の基板電極108及び、同じく基板104から上に延びる複数の第2の基板電極110を含む。第1の及び第2の基板電極108、110は基板104上の交互のパターンに配列される。換言すると、第1の基板電極108の各々に対して直接隣接する基板電極は第2の基板電極110の1つで、第2の基板電極110の各々に対して直接隣接する基板電極は第1の基板電極108の1つである。第1の及び第2の基板電極の各々は基板104の平面状の上面114から所定の距離上方に平面状の上面112を有する。第1の及び第2の基板電極108、110の平面状の上面112は基板104の平面状の上面114に平行に配置される。1つの実施形態において、基板電極108、110は約0.5μmから約4μmの範囲の高さを有する。
【0022】
図2は、また、プルーフマス102から基板104の方に下に延びる複数の電極突部116を示す。プルーフマス102は一体成形の材料から形成される。実施形態の一つでは、材料はシリコンのような半導体である。プルーフマス102は一体成形の材料から形成されるので、突部116はプルーフマス102から材料を除去することで形成される。突部はプルーフマス102の一体部分で別個には成形されない。各電極突部116は下の平面状の面118を有する。図1〜図3に示される典型的な実施形態において、電極突部116は下の平面状の面118に対して54.7°の角度で各電極突部116上に側壁を作る、水酸化カリウム(KOH)エッチング処理を用いて形成される。窪み120が、例えば2つの電極突部116の間に、各電極突部116に隣接する領域に形成される。窪み120は電極突部116の下の平面状の面118に平行な平面状の窪み面122を含む。
【0023】
加速度計100のプルーフマス102はプルーフマス102と基板104との間に隙間124が形成されるように基板104の所定距離上方に位置する。電極突部116が下に延び第1の及び第2の基板電極108、110が基板の頂の上に位置するので、プルーフマス102と基板104との間の隙間124の高さはプルーフマス102の長さLに沿って変化する。
【0024】
プルーフマス102は1つ以上のバネ103によって基板104の上方に可動自在に配置される。バネの設計は高感度と低いクロストークを得るために重要である。クロストークは1つの回路から別の回路への不要な容量結合である。面内加速度計100は単一軸に沿った加速度を測定する設計なので、クロストークを除去する設計である。
【0025】
バネの設計の主要な矛盾は感度とクロストークの調和である。バネはx方向に弾力がありz方向及びy方向に堅くあるべきである。図2に示されるように、x方向はプルーフマス102の長さに添って延び、電極突部116の下の平面状の面に平行である。y方向はx方向に垂直で、z方向は図2に示すようにページの外に真っ直ぐ延びる。y方向とz方向で剛性を達成し、x方向で柔軟性を維持するために、またクロストークを防ぐために、バネはx方向に非常に薄く、y方向とz方向に比較的厚くあるべきである。1つの典型的な実施形態において、x方向のバネの幅はプルーフマス102のx方向の幅と同じである。換言すると、バネとプルーフマスは同じ厚さを有する。
【0026】
バネの設計において、バネの共振周波数の1次モードは共振周波数の2次及び3次モードに近づけないようにしなければならない。バネの設計パラメータが下の表1に示される。
【0027】
【表1】

【0028】
表から見て取れるように、容量感度は1次モードの共振周波数に左右される。1次モードの周波数が低いほど容量感度は高い。クロストークは2次モードの共振周波数に左右される。2次モードの周波数が高いほど容量感度は低い。容量感度が固定だと、バネがより薄いとより低いクロストークの達成が可能である。バネの最小幅は使用される製造処理の能力、例えば、乾式反応性イオンエッチング(DRIE)処理のアスペクト比によって、制限される。
【0029】
基板104が付けられる物体が静止している、または均衡位置にあるとき、すなわち物体の速度が一定(加速なし)のとき、複数の電極突部の各々が1つの第1の基板電極108の一部及び隣接する第2の基板電極110の一部に重なるようにプルーフマス102はバネ130によって基板104の上方に適所に保持される。
【0030】
第1の基板電極108の各々は互いに電気的に接続され、第2の基板電極の各々は同様に互いに電気的に接続される。その結果、第1のコンデンサはプルーフマス102と複数の第1の基板電極108との間に形成され、第2のコンデンサはプルーフマス102と複数の第2の基板電極110との間に形成される。1つの典型的な実施形態において、基板電極108、110は、物体の加速度がゼロに等しいとき、すなわち、プルーフマス102が均衡位置にあるとき、第1のコンデンサの容量が第2のコンデンサの容量に等しいように、対称に配列される。基板電極の両グループが固定されているので、基板104が加速されプルーフマス102が、電極突部116と共に、x方向に、すなわち、第1の及び第2の基板電極の平面状の上面112に平行に動くとき、隙間124の領域及び各コンデンサの全容量は変化する。
【0031】
図2に示すように、プルーフマス102上の電極突部116の形状及び位置のために、各第1の基板電極108は電極突部の下の平面状の面118と第1の基板電極108の平面状の上面112との間の第1の容量C1、及びプルーフマス102の窪みの平面状の面122と第1の電極108の平面状の上面112との間の第2の容量C1’を有する。同様に各第2の電極突部は電極突部の下の平面状の面118と第2の基板電極110の平面状の上面112との間の第1の容量C2、及びプルーフマス102の窪みの平面状の面122と第2の電極110の平面状の上面112との間の第2の容量C2’を有する。
【0032】
加速力aがプルーフマス102に加えられると、プルーフマス102は図2に示される均衡位置から図3に示される第2の位置に動く。プルーフマス102が均衡位置から動くにつれて、プルーフマス102と基板電極108、110との間の隙間124内の領域変化のために容量C2は増え容量C1は減る。一方、プルーフマスが均衡位置から動くにつれ容量C2’は減り容量C1’は増える。換言すると、プルーフマス102が、図示のように、x方向に動くにつれ、プルーフマス102と第1の電極基板108の平面状の上面112との間の隙間124の領域が増え、プルーフマス102と第2の電極基板110の平面状の上面との間124の隙間の領域が減る。
【0033】
プルーフマス102の長さLに沿って隙間124の高さが変わる。例えば、図2に示すように、隙間124は電極突部116の下の平面状の面118と基板電極108、110の平面状の上面112との間に第1の高さh1、及び窪みの平面状の面122と基板電極108、110の平面状の上面112との間に第2の高さh2を有してよい。
【0034】
第2の高さh2は第1の高さh1よりはるかに大きい。例えば、h2はh1の10倍から20倍大きくてよい。容量は電極間の距離と共に減少する。h1とh2の間の高さの差の結果、容量C1はC1’よりはるかに大きく容量C2はC2’よりはるかに大きい。そのため容量の合計の差動変化はC1及びC2に影響される。
【0035】
加速度計100の前述の構造にはいくつかの利点がある。第1に、(50μmより大きい)厚いプルーフマスが用いられる場合、隙間124の小さい高さh1は先行技術の直列加速度計の側部隙間より簡単に既知の工程能力で得られる。加えて、上記のオフセット櫛指直列加速度計100内の高G負荷でのスティクション問題が無い。加速度計100は、また横櫛指構造より頑丈で、かつ、超頑強な装置での使用に適している。
【0036】
図4は面内加速度計100によって作られた回路への等価回路を示す。図示のように、回路は2つのコンデンサを含む。容量C1の第1のコンデンサはプルーフマス102と第1の基板電極108との間に形成される。容量C2の第2のコンデンサはプルーフマス102と第2の基板電極110との間に形成される。また、第1の基板電極108の各々は互いに電気的に接続される。同様に、第2の基板電極110の各々は互いに電気的に接続される。そのため図4に示すように、第1の及び第2のコンデンサは一連の小さいコンデンサからなる。容量C1はC1 = C1.1 + C1.2 +・・・+ C1.nのように、こうした個々のより小さいコンデンサの容量の合計に等しい。ここでnは基板104上の第1の基板電極108の数を表す整数である。同様に、容量C2はC2 = C2.1 + C2.2 +・・・+ C2.nのように、プルーフマス102と第2の電極110との間に形成される個々のより小さいコンデンサの容量の合計に等しい。ここでnは基板104上の第2の基板電極110の数を表す整数である。
【0037】
1つの典型的な実施形態において、C1及びC2の公称静電容量値はプルーフマス102と基板電極108、110が対称に配置されるとき、すなわち第1の基板電極108と電極突部116との間の重なりの領域を隣接する第2の基板電極110と同電極突部116との間の重なりに等しくするように、各電極突部116が第1の基板電極108と第2の基板電極110の上方に揃えられるとき、約7.5pF(ピコファラッド)で等しくなる。図2は基板電極108、110の上方に対称に配置された電極突部116付きのプルーフマス102を示す。
【0038】
C1及びC2のための容量値の差はプルーフマス102と基板104との間の溶着のずれによって生じることがある。現在の溶着ずれの公差は5μm、つまりC1及びC2の公称静電容量は2.75から13.75pFまでの違いが生じることがある。
【0039】
加速度計100の全電気容量Csumは容量C1と容量C2の合計に等しい。それゆえ、C1とC2の共通モード容量変化は、取り消されるため、差動変化のみ増幅される。これは、共通容量変化につながるz軸クロストークが最小化されることを意味する。
【0040】
図5は、プルーフマス102と基板電極108、110との間の容量の測定された差を基板104の加速度、ひいては基板が堅固に付けられた物体の加速度を表す出力電圧に変換するための、面内加速度計100と連動してよい回路の例である。図5に示すように、回路はC1とC2を釣り合わせ、バイアス・オフセットを最小化するために使用されて良い内蔵コンデンサ配列を含んでよい。C1_trimは0.2〜10 pFのトリミング範囲を提供する。コンデンサ配列は19 fF +/− 20%ステップの9ビットのプログラム可能性を含む。全差動入力感知コンデンサは次の通りである: 。C1T = C1 + C1_trim。C2T=C2 + C2_trim。
【0041】
1つの典型的な実施形態において、プルーフマスの1次固有共振周波数は1890 Hzで、x軸に沿った桁(ビーム)の最大曲がりは約2.1μmである。溶着ずれの公差が5μmなので、電極突部116と基板電極108、110との間の最小重なりは2.1μmより大きくなければならない。そのため、配置設計の重なりは7.1μmより大きくなければならない。
【0042】
1つの典型的な実施形態において、各基板電極108、110の幅は15μmで、最高5μmのずれでも基板電極が電極突部116によって覆われることを確実にするために電極突部116の幅は20μmである。公差のずれを減らすことが可能であれば、基板電極の幅も減らすことが可能である。その場合、基板電極の数を増やすことが可能で、加速度計100の感度が増す。オーストラリアのEVグループから入手可能なEVG SmartView(登録商標)自動接着揃えシステムのような溶着揃え機械を用いて1μm未満のずれ公差の達成が可能である。
【0043】
本発明による面内加速度計の代替設計が図6に示され全体で参照番号600で示される。面内加速度計600は前記面内加速度計と同様に、プルーフマス602、基板604及びトッピング・ウエハ606を含む。図示のように、プルーフマス602は基板の上方に可動自在に配置される。面内加速度計100に関して記載された電極と同様に、基板604は互いに電気的に接続される複数の第1の基板電極608及び、同じく互いに電気的に接続される複数の第2の基板電極610を含む。
【0044】
図1に示される面内加速度計100と違って、面内加速度計600は水酸化カリウム(KOH)よりは乾式反応性イオンエッチング(DRIE)処理によって形成される複数の電極指616を有する。その結果、電極指616の側壁は54.7度の斜面であるよりは垂直である。電極指616の垂直側壁はC1及びC2の並列な浮遊容量の最小化を助ける。加えて、側突起620は高衝撃負荷中にバネが割れないようにするために加速度計600の構造に加えられても良い。
【0045】
好ましい実施形態システムを参照して物体の面内加速度を特定するためのシステムおよび方法が示され説明されるが、添付の特許請求の範囲に記載される本発明およびその均等物の要旨を逸脱しない範囲でこの開示のシステムおよび方法に様々な変更を行っても良いことは当業者には容易に理解できるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に堅固に付けられた基板と;
前記基板から上に延び、前記基板から上に延びる複数の第2の基板電極と交互になる、各基板電極が平面状の上面を有し、複数の第1の基板電極が互いに電気的に接続され、前記複数の第2の基板電極が互いに電気的に接続される、前記複数の第1の基板電極と;
一体成形の材料から形成される、前記基板の所定距離上方に配置され、プルーフマスと前記基板との間に様々な高さの隙間を形成するために前記プルーフマスから下方に延びる複数の電極突部を含む、第1のコンデンサが前記プルーフマスと前記複数の第1の基板電極との間に形成され、第2のコンデンサが前記プルーフマスと前記複数の第2の基板電極との間に形成される前記プルーフマスとを備え;
前記プルーフマスは前記プルーフマスが均衡位置にあるとき、前記複数の電極突部の各々が1つの第1の基板電極の一部及び隣接する第2の基板電極の一部の上方に配置される状態で、前記物体の速度が一定のとき、均衡位置に保持される構成で;かつ、
前記プルーフマスは前記物体が加速しているときに前記複数の基板電極の各々の前記上面に平行な方向に動く構成で、各前記基板電極の前記上面と前記プルーフマスとの間の前記隙間の領域を変化させる、面内加速度計。
【請求項2】
前記プルーフマスが、一体成形のシリコンから形成される請求項1に記載の面内加速度計。
【請求項3】
前記プルーフマスが前記均衡位置にあるとき、前記第1のコンデンサの容量が前記第2のコンデンサの容量に等しい請求項1に記載の面内加速度計。
【請求項4】
前記複数の電極突部が、各前記指の側壁が垂直になるように、深堀反応性イオンエッチング(DRIE)処理を用いて形成された複数の指を備える請求項1に記載の面内加速度計。
【請求項5】
前記複数の電極突部が、前記突部の前記側壁が54.7度の角度を有するように水酸化カリウム(KOH)を用いて前記材料からエッチングされる請求項1に記載の面内加速度計。
【請求項6】
前記プルーフマスが、隣接する電極突部の各対の間に形成された第1の平面状の面と、各前記電極突部に形成された第2の平面状の面とを含み、前記第1の及び第2の平面状の面の両方が各前記基板電極の前記平面状の上面に平行である請求項1に記載の面内加速度計。
【請求項7】
各前記第1の平面状の面と前記基板電極の1つの対応する平面状の上面との間の第1の距離が、各前記第2の平面状の面と前記基板電極の1つの同じ平面状の上面との間の第2の距離より大きい請求項6に記載の面内加速度計。
【請求項8】
前記第1の距離が、前記第2の距離より少なくとも10倍大きい請求項7に記載の面内加速度計。
【請求項9】
前記プルーフマスが、前記基板電極の前記上の平面状の面に平行な方向のみの運動を可能にするバネによって前記均衡位置に保たれる請求項1に記載の面内加速度計。
【請求項10】
前記基板電極の前記平面状の上面に垂直な方向の前記バネのクロストークが、3%未満の請求項9に記載の面内加速度計。
【請求項11】
前記プルーフマスが、75μmの厚さを有する請求項1に記載の面内加速度計。
【請求項12】
各基板電極の高さが、2μmから4μmの間である請求項1に記載の面内加速度計。
【請求項13】
前記プルーフマスの周囲のガードリングを、さらに備える請求項1に記載の面内加速度計。
【請求項14】
前記プルーフマスに衝撃保護を設ける構成のトッピング・ウエハをさらに備える請求項1に記載の面内加速度計。
【請求項15】
前記プルーフマスが前記基板に溶着されたウエハに可動自在に付けられた請求項1に記載の面内加速度計。
【請求項16】
物体への基板の堅固な取り付けと;
前記プルーフマスと前記基板との間に異なる高さの隙間を形成するための前記基板の所定距離上方の位置へのプルーフマスの固定と;
前記第1の基板電極及び第2の基板電極が前記基板上に交互に配置される、前記プルーフマスと複数の第1の基板電極との間の第1の差動コンデンサの形成及び、前記プルーフマスと複数の第2の基板電極との間の第2の差動コンデンサの形成と;
加速力を前記物体に加えることによる前記基板電極の平面状の上面に平行な方向の均衡位置からの前記プルーフマスの移動と;
前記第1の差動コンデンサ内の容量の第1の変化の測定と;
前記第2の差動コンデンサ内の容量の第2の変化の測定と;
前記測定された容量の変化を前記物体の加速度を表す電圧へ変換するための回路を使用する工程を備える物体の面内加速度の測定の方法。
【請求項17】
容量の前記第1の変化と容量の前記第2の変化との前記回路における合算を備える請求項16に記載の方法。
【請求項18】
差動変化を増幅するための並びに前記第1の及び第2のコンデンサで測定された共通の容量変化を最小化するための前記回路を使用する請求項16に記載の方法。
【請求項19】
第1の差動コンデンサ及び第2の差動コンデンサの前記形成工程が、隣接する第1の及び第2の基板電極の各対の間の前記プルーフマスの電極突部の心出しを備える請求項16に記載の方法。
【請求項20】
物体への基板の堅固な取り付けと;
プルーフマスが1つの方向にのみ動くように制約される、前記プルーフマスの前記基板の上方への懸架と;
前記プルーフマスが複数の電極突部を含み、各電極突部が2つの基板電極の上で心出しされ、前記プルーフマスが前記基板電極の上の平面状の面に平行な方向に動くときに各基板電極の上の平面状の面と前記プルーフマスとの間の領域が変化するような、前記プルーフマスと前記基板との間の差動コンデンサの形成と;
前記物体に加速力を加えることによる前記プルーフマスの移動と;
各基板電極と前記プルーフマスとの間の容量の変化の測定と;
前記測定された容量の変化を前記物体の加速度を表す電圧へ変換するための回路の使用と;
各基板電極の上の平面状の面と前記プルーフマスとの間の領域の前記変化に比例する、前記回路からの電圧を出力する工程を備える、物体の面内加速度を特定するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−141299(P2012−141299A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272954(P2011−272954)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(506283927)ローズマウント・エアロスペース・インコーポレーテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】ROSEMOUNT AEROSPACE INC.
【Fターム(参考)】