説明

頭部着用ビデオシステムにおける動的視差修正のためのシステムと方法

【課題】表示装置と頭部着用ビデオソースとの間の変位距離に起因する視差を、修正する動的視差修正システムおよび方法を提示する。
【解決手段】上記システムは、表示装置、上記ビデオソース、およびコントローラを備える。上記ビデオソースは、対象を撮像しビデオデータを提供する。コントローラは、オフセット・ビデオデータを形成するために、上記ビデオソースから提供されるビデオデータを電気的にオフセット処理する。表示装置は、上記オフセット・ビデオデータを受信し当該データを表示する。表示装置は、視覚支援用としてユーザの眼前に直接置かれ、上記ビデオソースは、ユーザの眼の側面に配置される。表示装置は、縦列と横列とからなるピクセルのXY配列を含み、上記オフセット・ビデオデータは、X方向の何個かのピクセルの縦列のオフセットと、Y方向の何個かのピクセルの横列の別のオフセットと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に視差修正のためのシステムに関連する。より詳細に言えば、本発明は、頭部装着ディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)における動的視差修正のためのシステムと方法に関するもので、HMDは、ユーザの眼の前に直接置かれる。
【背景技術】
【0002】
頭部に着用される視覚支援装置は、一般的に支援する眼の前または両眼の前に置かれる。これらのシステムは、直接的なビュー用光学装置から、デジタルカメラによる支援へと移行しており、これらのシステム構成は、頭部装着ディスプレイ(HMD)が、瞳までの距離1インチ(2.54cm)で、支援するユーザの眼の前に直接置かれることが要求される。このHMDの設置は、支援する眼の前に直接置かれるカメラの開口との共同設置を困難にする。従って、カメラの開口は、HMDの前またはHMDの片側のいずれかに移動させる必要がある。
【0003】
例えば、デジタルカメラを、支援する眼の光軸から100mmほど側面に置いたとき、ディスプレイは、支援する眼の光軸の中央周辺に一般的に置かれるので、したがってデジタルカメラの開口とデジタルカメラのイメージディスプレイとの間に変位(displacement)が生じる。この変位は、カメラを通して見る対象の見かけ上の位置と、対象の空間(即ち、実際の空間)で見る対象の実際の位置との間で、不一致を発生させる。認識空間と対象空間との間で修正すべきこの値(オフセット)は、視差と呼ばれる。
【0004】
図1は、視差による誤差の例を示す。図に見られるように、ユーザは、頭部装着ビデオ装置を介して、周囲10を見ている。ユーザは、近い範囲内に道具12を見て、この道具を取ろうとする。視差のために、道具12を認識する位置を間違える。対象空間における道具12の実際の位置は、点線で示す道具14の箇所に示される。
【0005】
頭部装着ビデオ装置を介して対象を見るユーザの場合、この視差が、ビデオシステムの実用性を低減させることになる。人間の視覚心理システムは、生まれついての入口開口部を通して認識する世界に、無意識に順応する。この生まれついての入口開口部とは、人間の眼における瞳孔が該当する。手作業における手と眼との特有の連携は、この先天性の特徴に基づいている。人間が行う通常の作業、例えば徒歩または走行は、上記のような潜在意識のプロセスに依存する。いくつかの固定距離で視差を除去するように位置合わせされた固定のシステムは、異なる距離の全てにおいて、位置合わせを誤ることになる。この事象は、次のようなとき特に現実として発生する。例えば、ビデオシステムを、対象との視差を遠方で除去するように位置合わせし、ユーザが、ユーザの腕の範囲内に置かれた図1の道具12のような対象を、近い範囲に置こうとするときに、位置合わせを誤る事象が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記で説明したように、本発明は、動的なビデオイメージ再調整のためのシステムを提示することで視差問題に対処する。この結果、システムで得られるイメージを、全ての距離において実世界と一致するようにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的の観点において、上記ニーズおよび他のニーズにも合うように、本発明は、動的視差修正システムを提示する。なお、このシステムは、対象を撮影し、ビデオデータを提供する頭部着用(head borne)ビデオソースを含む。上記頭部着用ビデオソースから提供される上記ビデオデータを電気的にオフセット処理するために、オフセット・ビデオデータを形成するためのコントローラが、システムに含まれる。表示装置は、上記オフセット・ビデオデータを受信し、上記オフセット・ビデオデータをユーザの眼に対して表示する。上記表示装置は、視覚支援用としてユーザの眼の前に直接置くように設定され、上記頭部着用ビデオソースは、ユーザの眼の側面に変位して設定される。上記オフセット・ビデオデータは、上記表示装置と上記頭部着用ビデオソースとの間の変位に起因する視差を修正する。
【0008】
上記表示装置は、縦列および横列の各々のピクセルからなるXY配列を含み、上記オフセット・ビデオデータは、XY配列のX方向内にいくつかのピクセルの縦列のオフセットを含む。もう1つの方法として、上記オフセット・ビデオデータは、XY配列のY方向内にいくつかのピクセルの横列のオフセットを含むことができる。さらに、上記オフセット・ビデオデータは、XY配列のX方向内にいくつかのピクセルの縦列のオフセットと、XY配列のY方向内にいくつかのピクセルの横列の別のオフセットと、を含むことができる。
【0009】
幾何学的に、ユーザの眼の光軸は、上記ビデオソースによって撮影される対象の距離Dまで延び、上記ビデオソースの開口の光軸は、ユーザの眼の光軸に並行して延びる。側面方向の上記変位は、上記ユーザの眼の光軸と上記ビデオソースの開口の光軸との間のフランクフォート(Frankfort)平面内で、水平方向の変位距離dとなる。上記オフセット・ビデオデータは、水平方向の上記変位距離dと上記対象までの距離Dとに基づく。
【0010】
さらに、水平オフセット角度θDは、下式で形成され、
θD=tan-1d/D
ここで、dは、上記ユーザの眼の光軸および上記ビデオソースの開口の光軸の間における水平方向の変位距離である。
【0011】
上記表示装置は、縦列および横列の各々のピクセルからなるXY配列を含み、上記オフセット・ビデオデータは、下式の水平オフセットを含む。
offsetcolumns=#Columns/FOVhorzD
ここで、offsetcolumnsは、縦列内の水平オフセット量であり、FOVhorzは、上記ビデオソースの水平方向の視野範囲であり、#Columnsは、上記表示装置の縦列の総数である。
【0012】
さらに加えて、垂直オフセット角度φDは、また下式で形成することができ、
φD=tan-1/D
ここで、dは、上記ユーザの眼の光軸および上記ビデオソースの開口の光軸の間における垂直方向の変位距離である。上記オフセット・ビデオデータは、下式の垂直オフセットを含む。
offsetrows=#Rows/FOVvertD
ここで、offsetrowsは、横列での垂直オフセット量であり、FOVvertは、上記ビデオソースの垂直方向の視野範囲であり、#Rowsは、上記表示装置の横列の総数である。
【0013】
動的視差修正システムは、上記ビデオソースからの上記ビデオデータをデジタル・ビデオデータに変換するために、上記ビデオソースと上記表示装置との間に配置される表示用電子モジュールを含む。上記表示用電子モジュールは、上記コントローラからのオフセット・コマンドを受信し、上記デジタル・ビデオデータを上記オフセット・ビデオデータに修正するように設定される。前記表示用電子モジュールおよび前記コントローラは、単一ユニットに一体化することができる。焦点位置用エンコーダは、上記ビデオソースによって撮像される対象物までの距離Dを決定するために前記コントローラに結合することができ、上記距離Dは、視差を修正するのに使用される。
【0014】
上記表示装置は、頭部搭載ディスプレイ(HMD:helmet mounted display)または頭部装着暗視ゴーグル(head mounted night vision goggle)の部品にすることができる。
【0015】
本発明の別の実施態様は、ビデオソースおよび表示装置を有する頭部着用カメラシステムための動的視差修正方法を含み、上記表示装置は、視覚支援用としてユーザの眼の前に直接置くように設定され、上記ビデオソースは、ユーザの眼の側面に変位して設定される。上記方法は、(a)ビデオデータを提供するために、上記ビデオソースで対象を撮像するステップと、(b)対象までの焦点距離を決定するステップと、(c)オフセット・ビデオデータを形成するために、ステップ(b)で決定した前記焦点距離、および前記ユーザの眼と前記ビデオソースの開口との間の変位距離に基づき、前記ビデオデータをオフセット処理するステップと、(d)前記表示装置でオフセット・ビデオデータを表示するステップと、を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に記載する一般的な記述および詳細な記述は、典型的な事例ではあるが、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【0017】
本発明は、添付図面を参照して読めば、以下の詳細な記述により最も良く理解することができる。
【0018】
これから説明するように、本発明は、ビデオイメージを動的に再調整することにより、イメージを全ての方向において現実世界と同一にする。このために、本発明は、興味ある対象が係わる範囲を決定できるので、動的な調整は、この決定した範囲内で遂行することができる。一実施例において、本発明は、ユーザの興味ある対象までの距離を決定するためにカメラ焦点機構の絶対位置(または手動のフォーカスノブ(focus knob)による角度方向)を使用し、そしてユーザの表示装置に示されるイメージに、適切な量の視差修正を適用する。この方法において、興味ある対象の見かけ上の位置は、対象の空間内の真実の位置として正しく認識される。
【0019】
本発明の一実施例において、ビデオは、ユーザにLCDまたはLEDディスプレイのようなデジタルの表示装置上で提供される。これらのディスプレイは、縦列および横列のピクセルの配列から構成される。ビデオデータをディスプレイに送信するタイミングを制御することで、本発明は、ユーザにイメージを表示するときにイメージ内にオフセット処理を導入する。表示空間でイメージを移動させることで、本発明は、対象の見かけ上の位置と対象空間内の実際の位置との間にある差異を除去する。
【0020】
表示上でイメージを移動させて得る結果は、イメージを移動させた方向において、横列及び/又は縦列のピクセルを損失することになる。ディスプレイの反対側の端部における横列及び/又は縦列のピクセルは、任意の強度の値で表示する。何故なら、(カメラとディスプレイとの間のピクセル分解が、1対1の関係にあると仮定すると、)端部でのピクセルは、もはやカメラの視野内にないので、イメージデータを提供することはないからである。従って、イメージを移動させることは、使用可能なイメージサイズを削減することなので、ユーザの有効な視野範囲においてイメージの減少を招くことになる。しかしながら、収束用のカメラ位置角度を遠距離よりもより近い距離に設定することにより、この負の効果を、最小化することができる。
【0021】
次に図2に関連して、頭部着用ビデオシステムにおける動的視差修正システムを示す。動的視差修正システムを、20として大まかに表す。システム20は、表示用電子モジュール24にビデオデータを提供するビデオソース23を含み、表示用電子モジュール24は、表示装置25上に表示するためのデジタル・ピクセルデータを形成する。また、システム20に含まれるものとして、21で示される焦点絶対位置用エンコーダがあり、これは、マイクロコントローラ22に焦点位置データを提供する。焦点絶対位置用エンコーダ21は、図に示すようにビデオソース23上に置かれた、フォーカスノブ26が示す方向を符号化する。マイクロコントローラ22は、焦点絶対位置用エンコーダ21から受信した焦点位置データを、後述するX、Y方向のオフセット用制御信号に変換する。このX、Y方向のオフセット用制御信号は、表示用電子モジュール24に提供され、この電子モジュールは、表示装置25上で表示するためのオフセット・ビデオデータを、順番に提供する。
【0022】
ビデオソース23は、ユーザの眼の光軸の側面に置くように設定できる、いずれかのカメラ装置であることが好ましい。図2に示す一実施例において、ビデオソース23は、手動のフォーカスノブ26を含み、このフォーカスノブは、ユーザが、ビデオカメラのレンズを興味ある対象に焦点を合わせるように調整することを可能にする。表示装置25は、ユーザの眼の光軸周辺に置くように設定される、いずれかのディスプレイにすることができる。表示装置は、ビデオソース23から受信したビデオデータで表示されるイメージのオフセット用ピクセルイメージを提供する。表示装置25上で表示されるピクセルのX、Y配列、およびビデオソース23から提供されるビデオデータは、1対1対応を有することが可能であり、または何か別の関係を有することも可能で、例えば高分解能のビデオカメラに対して低減した分解能のディスプレイから得られる対応にすることも可能である。
【0023】
別の実施例として、フォーカスノブ26は、ビデオソース23のズームレンズ操作を可能にするために、モータ(未表示)によって制御することも可能である。この場合の実施例において、焦点絶対位置用エンコーダ21は、ズームレンズ筒を含むことにより、興味ある対象までの焦点距離を決定することができる。焦点距離検出回路を、ズームレンズ筒の焦点距離を検出し出力するように含めることができる。更なる実施例として、ビデオソース23は、赤外線距離計のような距離計を含めることができ、この赤外線距離計は、目標物に赤外線ビームの焦点を合わせ、目標物から反射される赤外線を受信することができる。焦点絶対位置用エンコーダ21に含まれる位置感知装置は、反射されたビームの変位を検出し、射程範囲の符号化信号すなわち目標物の位置を提供する。
【0024】
マイクロコントローラは、記録媒体に格納されるソフトウェアプログラムにより提供されるプロセッサ実行機能を有する、いかなるタイプのコントローラにもすることができる。または、マイクロコントローラは、集積回路によって提供されるハードウェアプログラムにより提供される実行機能を有する、いかなるタイプのコントローラにもすることができる。マイクロコントローラ22が、X、Y方向のオフセット用制御信号を計算する方法を、以下に説明する。
【0025】
図3Aおよび図3Bに関して、カメラ23は、ユーザの眼32からの変位距離によって、オフセットが存在することを示している。図3Aおよび図3Bは、以下のことを除いて互いに類似している。異なることは、図3Aにおいて、カメラ23は、ユーザの眼32の右側に水平方向に変位距離dだけずれて、水平面上に置かれ、一方で、図3Bにおいて、カメラ23は、垂直方向においてユーザの眼32から(上方向または下方向)に変位距離d’だけずれて、垂直面上に置かれている。水平面上の変位距離及び/又は垂直面上の変位距離は、一般的に100mm近くの範囲内である。カメラ23は、図に37として示す光軸を有し、ユーザの眼は、図に35として示す光軸を有する。両方の光軸は、互いに並行で示される。
【0026】
ユーザは、表示装置25に表示される対象31を見ることで支援される。図3Aに示すように、カメラ23は、対象31を水平方向のオフセット角度θDで撮像している。一方、図3Bにおいて、カメラ23は、対象31を垂直方向のオフセット角度φDで撮像している。両方の図において、対象31は、ユーザが見えるように、表示装置25上にピクセルイメージで表示される。焦点距離は、調整可能であり、ユーザの眼と興味ある対象31との間の距離Dが該当する。
【0027】
図3Aを使用して、マイクロコントローラ22が、X方向のオフセット用制御信号を計算する方法を、以下に例証する。この実施例において、X方向のオフセット単位は、水平方向のピクセルであって、表示装置25上のピクセルの縦列と同等にすることができる。この例証の目的のために以下のことを仮定する。水平方向の変位距離dを、103mmとする。カメラ23の視野(FOV:field-of-view)は、水平(HFOV)軸に沿って40度とする。表示装置25の水平方向の分解能は、1280ピクセルである。カメラ23の光軸は、未支援の眼32の光軸と並行である。カメラの開口は、ビューアのフランクフォート平面上で未支援の眼と一致する線上にあり、また、興味ある対象31は、焦点距離Dの所にある。
【0028】
水平方向のオフセット角度θDは、下記の(式1)で与えられる。
θD=tan-1d/D ……(式1)
修正率'Chorz'は、(式2)で与えられ、1度当りの縦列の単位において以下のように与えられる(FOVは40度で、水平方向の表示分解能は1280ピクセルの条件)。
horz=#Columns/FOVhorz ……(式2)
=1280/40
=32縦列/度
ここで、#Columnsは、デジタル表示内の縦列の総数、すなわち1280ピクセルの縦列である(この例証の場合)。表示装置上でのイメージ移動は、すなわち縦列におけるオフセットの量は、以下の(式3)で与えられる。ここで、θDは、カメラの視線36とカメラの光軸37との間の水平方向のオフセット角度である。
offsetcolumns=ChorzD ……(式3)
【0029】
同様な方法で、図3Bを使用して、マイクロコントローラ22が、Y方向のオフセット用制御信号を計算する方法を、以下に例証する。この実施例において、Y方向のオフセット単位は、垂直方向のピクセルであって、表示装置25上のピクセルの横列と同等にすることができる。この例証の目的のために以下のことを仮定する。垂直方向の変位距離d’を、103mmとする。カメラ23の視野(FOV:field-of-view)は、垂直(VFOV)軸に沿って30度とする。表示装置25の垂直方向の分解能は、1024ピクセルである。カメラ23の光軸は、未支援の眼32の光軸と並行である。カメラの開口は、未支援の眼の垂直線上にあり、興味ある対象31は、焦点距離Dの所にある。
【0030】
垂直方向のオフセット角度φDは、下記の(式4)で与えられる。
φD=tan-1d’/D ……(式4)
修正率'Cvert'は、(式5)で与えられ、1度当りの横列の単位において以下のように与えられる(垂直方向のFOVは30度で、垂直方向の表示分解能は1024ピクセルの条件)。
vert=#Rows/FOVvert ……(式5)
=1024/30
=34横列/度
ここで、#Rowsは、デジタル表示内の横列の総数、すなわち1024ピクセルの横列である(この例証の場合)。表示装置上でのイメージ移動は、すなわち横列におけるオフセットの量は、以下の(式6)で与えられる。ここで、φDは、カメラの視線36とカメラの光軸37との間の垂直方向のオフセット角度である。
offsetrows=CvertD ……(式6)
【0031】
次に図4に関連して、観測者(ユーザの眼)と観測対象(興味ある対象)との間の距離に対応して、#Columnsのオフセット量をプロットした図を示す。より詳細に言えば、図4は、観測者とビデオカメラとの間で水平方向の変位103mmにより生じた視差を、補正するのに必要な縦列の数に関する水平方向のイメージオフセットをプロットしている。支援する眼の右側に置かれたカメラのために、ディスプレイ内で視差を修正することは、イメージを右側に移動することになる。
【0032】
図4に示すプロットは、40度と同等のHFOVを有するカメラ/HMDシステムためのプロットである。見て判るように、視差を除去するのに必要なイメージの移動量は、観測者との距離が短くなるにつれ、非線形的に増加する。2フィート(61cm)の焦点距離において、SXGA用高分解能ディスプレイの可視領域の25%が、視野外に移動させることになり、したがって、有効な表示用HFOVを、ほぼ25%を減少させることになる。接近した焦点距離でHFOVの損失を避けるために、カメラの光軸を左側にバイアス角度(bias angle)をかけることができれば、そこで水平方向のオフセット角度θDを減少させることができる。
【0033】
図4に示すプロットと類似のプロットを、観測者(ユーザの眼)と観測対象(興味ある対象)との間の距離に対応する#Rowsのオフセット量のために作成することもできる。
【0034】
最後に、図5は、4.8度のバイアス角度を導入した以外は、図4を作成したときと同一条件で、水平方向の#Columnsでのイメージオフセットを求めた結果を示す。このときのカメラ角度で、視差を除去するのに必要なディスプレイオフセットは、4フィート(122cm)でゼロに低減される。2フィート(61cm)において、必要なオフセットは、図4におけるHFOVの24%に比較して、152縦列すなわちHFOVの12%となる。4フィート(122cm)を超えると、ディスプレイオフセットは負の値となり、このことは、ビデオイメージを反対方向に、すなわちディスプレイの端部側に移動させる必要がある。従って、このときのカメラ角度は、反対の符号と共に視差エラーを招くことになる。10フィート(305cm)の焦点距離のために、視差を補正するのに必要な水平方向のディスプレイオフセットは、−93縦列すなわちHFOVの7.2%になる。40フィート(1219cm)の距離で、水平方向のディスプレイオフセットは、139縦列すなわちHFOVの11%になる。
【0035】
上記で説明した実施例は、いかなる頭部着用カメラシステムにも使用することができ、このようなシステムは、頭部装着暗視ゴーグルおよび頭部装着リアリティ・メディエーター装置(reality mediator device)を含むことができる。
【0036】
ここでは、本発明を、特定の実施例に関連して記述し説明してきたが、本発明は、示した詳細内容に限定されるものではない。むしろ、種々の変形例が、クレームの思考範囲および同等な範囲において詳細な形で実施することができ、かつ本発明の範囲から逸脱することなく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】カメラで撮影される対象および観察者によって対象空間で観察される同一対象との間での、視差オフセットの関連配置を示す図である。
【図2】本発明の一実施例において、頭部着用ビデオシステム内で視差を動的に修正するためのシステムのブロック図である。
【図3A】ユーザによって観測され、ビデオカメラによって撮像される対象であって、イメージの表示を、水平方向の変位距離によりカメラの開口から移動させるような対象の平面図である。
【図3B】ユーザによって観測され、ビデオカメラによって撮像される対象であって、イメージの表示を、垂直方向の変位距離によりカメラの開口から移動させるような対象の側面図である。
【図4】本発明の一実施例において、興味ある対象までの観測距離の関数として、ディスプレイ上で移動させるのに必要な縦列の数をプロットした図である。
【図5】本発明の一実施例において、カメラの撮像角度にバイアス角度を導入した状態で、興味ある対象までの観測距離の関数として、ディスプレイ上で移動させるのに必要な縦列の数をプロットした図である。
【符号の説明】
【0038】
21 焦点絶対位置用エンコーダ
22 マイクロコントローラ
23 ビデオソース
24 表示用電子モジュール
25 表示装置
26 フォーカスノブ
31 対象
32 ユーザの眼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象を撮像してビデオデータを提供するための頭部着用ビデオソースと、
オフセット・ビデオデータを形成するために、前記頭部着用ビデオソースから提供される前記ビデオデータを電気的にオフセット処理するコントローラと、
前記オフセット・ビデオデータを受信して前記オフセット・ビデオデータをユーザの眼に表示するための表示装置と、を備え、
前記表示装置は、視覚支援用としてユーザの眼の前に直接置くように設定され、前記頭部着用ビデオソースは、ユーザの眼の側面に変位して設定され、
前記オフセット・ビデオデータは、前記表示装置と前記頭部着用ビデオソースとの間の変位に起因する視差を修正する、動的視差修正システム。
【請求項2】
前記表示装置は、縦列および横列の各々のピクセルからなるXY配列を含み、
前記オフセット・ビデオデータは、XY配列のX方向内にいくつかのピクセルの縦列のオフセットを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記表示装置は、縦列および横列の各々のピクセルからなるXY配列を含み、
前記オフセット・ビデオデータは、XY配列のY方向内にいくつかのピクセルの横列のオフセットを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記表示装置は、縦列および横列の各々のピクセルからなるXY配列を含み、
前記オフセット・ビデオデータは、XY配列のX方向内にいくつかのピクセルの縦列のオフセットと、XY配列のY方向内にいくつかのピクセルの横列の別のオフセットと、を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ユーザの眼の光軸は、前記ビデオソースによって撮影される対象までの距離Dまで延び、
前記ビデオソースの開口の光軸は、前記ユーザの眼の前記光軸に並行して延び、
側面への前記変位は、前記ユーザの眼の前記光軸と前記ビデオソースの開口の前記光軸との間のフランクフォート(Frankfort)平面内で、水平方向の変位距離dとなり、
前記オフセット・ビデオデータは、前記水平方向の変位距離dと前記対象までの距離Dとに基づく請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
水平オフセット角度θDは、下式で形成され、
θD=tan-1d/D、
ここで、dは、前記ユーザの眼の前記光軸と前記ビデオソースの開口の前記光軸との間の水平方向の変位距離であり、
前記表示装置は、縦列および横列の各々のピクセルからなるXY配列を含み、
前記オフセット・ビデオデータは、下式の水平オフセットを含み、
offsetcolumns=#Columns/FOVhorzD
ここで、offsetcolumnsは、縦列内の水平オフセット量であり、
FOVhorzは、前記ビデオソースの水平方向の視野範囲であり、
#Columnsは、前記表示装置内の縦列の総数である請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
垂直オフセット角度φDは、下式で形成され、
φD=tan-1/D、
ここで、dは、前記ユーザの眼の前記光軸と前記ビデオソースの開口の前記光軸との間の垂直方向の変位距離であり、
前記表示装置は、縦列および横列の各々のピクセルからなるXY配列を含み、
前記オフセット・ビデオデータは、下式の垂直オフセットを含み、
offsetrows=#Rows/FOVvertD
ここで、offsetrowsは、横列内での垂直オフセット量であり、
FOVvertは、前記ビデオソースの垂直方向の視野範囲であり、
#Rowsは、前記表示装置内の横列の総数である請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記ビデオソースからの前記ビデオデータをデジタル・ビデオデータに変換するために、前記ビデオソースと前記表示装置との間に配置される表示用電子モジュールを含み、
前記表示用電子モジュールは、前記コントローラからのオフセット・コマンドを受信し、前記デジタル・ビデオデータを前記オフセット・ビデオデータに修正するように設定される請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記表示用電子モジュールおよび前記コントローラは、単一ユニットに一体化される請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記ビデオソースによって撮像される対象物までの距離Dを決定するために、前記コントローラに結合された焦点位置用エンコーダを含み、
前記距離Dは、前記視差を修正するのに使用される請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記表示装置は、頭部搭載ディスプレイ(HMD:helmet mounted display)である請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記表示装置および前記ビデオソースは、頭部装着暗視ゴーグル(head mounted night vision goggle)の部分である請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
ビデオソースおよび表示装置を有する頭部着用カメラシステムであって、前記表示装置は、視覚支援用としてユーザの眼の前に直接置くように設定され、前記ビデオソースは、ユーザの眼の側面に変位して設定されるカメラシステムにおいて、
(a)ビデオデータを提供するために、前記ビデオソースで対象を撮像するステップと、
(b)対象までの焦点距離を決定するステップと、
(c)オフセット・ビデオデータを形成するために、ステップ(b)で決定した前記焦点距離、および前記ユーザの眼と前記ビデオソースの開口との間の変位距離に基づき、前記ビデオデータをオフセット処理するステップと、
(d)前記表示装置で前記オフセット・ビデオデータを表示するステップと、を備え、
前記ビデオデータをオフセットする処理が、視差を修正する、動的視差修正方法。
【請求項14】
前記ビデオデータは、縦列および横列の各々のピクセルからなるXY配列を形成するのに使用され、
前記オフセット・ビデオデータを形成するために、ステップ(c)は、前記XY配列のX方向において、いくつかの縦列ピクセルによって前記ビデオデータを移動させることを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ビデオデータは、縦列および横列の各々のピクセルからなるXY配列を形成するのに使用され、
前記オフセット・ビデオデータを形成するために、ステップ(c)は、前記XY配列のY方向において、いくつかの横列ピクセルによって前記ビデオデータを移動させることを含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ビデオデータは、縦列および横列の各々のピクセルからなるXY配列を形成するのに使用され、
前記オフセット・ビデオデータを形成するために、ステップ(c)は、前記XY配列の前記X方向のいくつかの縦列ピクセル、および前記Y方向のいくつかの横列ピクセルによって、前記ビデオデータを移動させることを含む請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(a)は、アナログ・ビデオデータを提供することを含み、
ステップ(c)は、前記ビデオデータをオフセット処理する前に、前記アナログ・ビデオデータをデジタル・ビデオデータに変換することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記ビデオソースは、前記ユーザの眼の右側に変位して設定され、
ステップ(c)は、前記表示装置の右側に前記対象のイメージを移動させることを含む請求項13に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(c)で生成されるオフセット量を最小化するために、前記ビデオソースの前記開口を前記ユーザの眼の光軸方向にバイアス(bias)させるステップを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象までの焦点距離を決定するために、ステップ(b)が、前記ビデオソース上に置かれたフォーカスノブ(focus knob)の角度方向を符号化することを含む請求項13に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−134616(P2008−134616A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−263328(P2007−263328)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(505194077)アイティーティー マニュファクチャリング エンタープライジーズ, インコーポレイテッド (114)
【Fターム(参考)】