説明

飲酒運転抑止システム

【課題】可能な限り安全な手法により飲酒状態の運転者が自発的に運転操作を止めるように促す飲酒運転抑止システムを提供する。
【解決手段】飲酒運転抑止システム1は、サンルーフアクチュエータ、ウィンドウアクチュエータ22a〜22nは、アルコール検知センサ10により運転者の飲酒状態が検知され、かつ天候検知センサ12により車両外の降雨及び降雪が検出されたときは、サンルーフ20及びウィンドウ24a〜24nを開く。これにより、判断力、反射能力等が低下した飲酒者に対しても、感覚的に不快感と車室内の内装への懸念とを与えて、降雨又は降雪が不快となり内装への影響が心配となった運転者に運転操作続行の意欲を低下させ、自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを期待できる。また、車両の運動性能の変更、運転特性の変更及び視界不良を引き起こすものではないため、安全性も担保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲酒運転抑止システムに関し、特に、運転者が飲酒状態にあるときに運転者に運転操作を止めるように促す飲酒運転抑止システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、盗難された車両の奪回を支援するシステムが提案されている。例えば、特許文献1では、システムが車両の盗難を検知した場合に、警音器の吹鳴、ブレーキ音の発生、窓を開放しての大音量スピーカ出力、空調の変則制御、ブレーキ操作の受付拒否、自律的な急加速等の奪回支援処理を実行することにより、盗難行為者の運転操作の停止を促し、盗難された車両の奪回を支援する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2006−264471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年では飲酒運転が社会的に非常に問題となっている。このため、飲酒状態の運転者に対しても、運転操作の停止を促すシステムが望まれている。しかしながら、盗難行為者と異なり、飲酒状態の運転者の場合は運転者の判断力、反射能力等が定常時に比べて低下している。そのため、飲酒運転抑止システムにおいては、可能な限り安全な手法によって自発的に飲酒状態の運転者が運転操作を止めるように促すシステムが望ましい。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可能な限り安全な手法により飲酒状態の運転者が自発的に運転操作を止めるように促す飲酒運転抑止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両を運転する運転者の飲酒状態を検知する飲酒検知手段と、車両外の降雨及び降雪の少なくともいずれかを検出する天候検出手段と、車両のルーフ及び車窓の少なくともいずれかの開閉を行う開閉手段と、を備え、開閉手段は、飲酒検知手段により運転者の飲酒状態が検知され、かつ天候検出手段により車両外の降雨及び降雪の少なくともいずれかが検出されたときは、車両のルーフ及び車窓の少なくともいずれかを開く、飲酒運転抑止システムである。
【0006】
この構成によれば、開閉手段は、飲酒検知手段により運転者の飲酒状態が検知され、かつ天候検出手段により車両外の降雨及び降雪の少なくともいずれかが検出されたときは、車両のルーフ及び車窓の少なくともいずれかを開く。そのため、判断力、反射能力等が低下した飲酒者に対しても感覚的に降雨又は降雪による不快感を与え、車室内の内装への影響についての懸念を与えることができ、降雨又は降雪が不快となり内装への影響が心配となった運転者に運転操作を続行する意欲を低下させ、自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを期待できる。また、この構成によれば、車両の運動性能の変更、運転特性の変更及び視界不良を引き起こすものではないため、安全性も担保される。
【0007】
なお、本発明においては、「車窓」とは車両側面に配置された窓又は開口部を意味し、「ルーフ」とは車両天井に配置された窓又は開口部を意味するものとする。
【0008】
この場合、開閉手段は、飲酒検知手段により検知された運転者の飲酒状態におけるアルコール摂取量が多いほど、車両のルーフ及び車窓を開く度合いを大きくすることが好適である。
【0009】
この構成によれば、開閉手段は、飲酒検知手段により検知された運転者の飲酒状態におけるアルコール摂取量が多いほど、車両のルーフ及び車窓を開く度合いを大きくするため、運転者の酔いがひどいほど、運転者に降雨又は降雪による不快感と車室内の内装への影響についての懸念とを与えることができ、飲酒運転を抑止することができる。
【0010】
一方、開閉手段は、車両のルーフ及び車窓のいずれかにおける降雨量及び降雪量のいずれかが多いルーフ及び車窓から開くことが好適である。
【0011】
この構成によれば、開閉手段は、車両のルーフ及び車窓のいずれかにおける降雨量及び降雪量のいずれかが多いルーフ及び車窓から開くため、一層効率良く運転者に降雨又は降雪による不快感と車室内の内装への影響についての懸念とを与えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の飲酒運転抑止システムによれば、飲酒状態の運転者に自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを期待でき、安全性も担保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る飲酒運転抑止システムについて添付図面を参照して説明する。図1は第1実施形態に係る飲酒運転抑止システムの構成を示すブロック図である。本実施形態の飲酒運転抑止システムは、自動車に内蔵され、飲酒状態の運転者に対し自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを促すように構成されている。図1に示すように、本実施形態の飲酒運転抑止システム1は、アルコール検知センサ10、天候検知センサ12、雨滴強度計測センサ14、アクチュエーション判断部16、サンルーフアクチュエータ18、サンルーフ20、ウィンドウアクチュエータ22a〜22n及びウィンドウ24a〜24nを備えて構成されている。
【0014】
アルコール検知センサ10は、運転者の飲酒状態を検知するためのものであり、特許請求の範囲に記載の飲酒検知手段として機能する。アルコール検知センサ10としては、半導体を用いたもの、燃料電池を用いたもの、赤外線を用いたものを適用することができる。
【0015】
半導体を用いたアルコール検知センサは、半導体の中にもともと流れている電子の量が、車室内の空気中のアルコールにより吸収され、変化する特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、半導体内の電子の量が変化することにより、センサ内の電気抵抗も変化するため、その電気抵抗の強さからアルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0016】
燃料電池を用いたアルコール検知センサは、車室内の空気中のアルコールから電子を作り出すことのできる燃料電池の特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、アルコールにより作り出された電子の多さが、電気の流れの強さになるため、その電流の強さから、アルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0017】
赤外線を用いたアルコール検知センサは、赤外線が、車室内の空気中のアルコールにより吸収されることによる特性を利用する。この原理のアルコール検知センサでは、アルコールにより吸収された赤外線を、光検出器で電気信号に変換し、電気信号をマイクロプロセッサーで解析することにより、アルコールの有無や運転者の呼気中アルコール濃度を推定することができる。
【0018】
なお、業務用車両におけるアルコール検知センサ10としては、運転者の呼気中や血中のアルコール濃度を直接測定するものとしても良い。
【0019】
天候検知センサ12は、車両外の降雨、降雪あるいは強風等の荒天を検出するためのものである。天候検知センサ12としては、レーダ雨量計、風向計、風力計を適用することができる。特に、天候検知センサ12としては、ドップラーレーダ式の雨量計を適用することもできる。ドップラーレーダ式の雨量計は、1〜50GHzのレーダ波によるドップラー効果を利用して雨滴がレーダから遠ざかる、あるいは近づくという雨滴の移動速度を観測することが可能なものであり、霧雨程度の降雨や、降雨と降雪の相違を検出することができるため好ましい。
【0020】
雨滴強度計測センサ14は、車両のサンルーフ20及びウィンドウ24a〜24nそれぞれの外表面に設置され、各部の降雨量及び降雪量を検出するためのものである。天候検知センサ12及び雨滴強度計測センサ14は、特許請求の範囲に記載の天候検出手段として機能する。
【0021】
アクチュエーション判断部16は、アルコール検知センサ10、天候検知センサ12及び雨滴強度計測センサ14からの情報に基づいて、サンルーフアクチュエータ18及びウィンドウアクチュエータ22a〜22nに指令信号を与えるためのもので、物理的にはECU(Electric Control Unit)等のマイクロコンピュータのハードウェアおよびソフトウェアを利用して構成されている。
【0022】
サンルーフアクチュエータ18及びウィンドウアクチュエータ22a〜22nは、アクチュエーション判断部16からの指令信号に基づき、それぞれサンルーフ20及びウィンドウ24a〜24nを開閉するためのもので、特許請求の範囲に記載の開閉手段として機能する。
【0023】
次に、図2を参照して本実施形態の飲酒運転抑止システムの動作について説明する。本実施形態の飲酒防止システム1は、運転者がエンジンを始動した状態から動作を開始する。図2は、第1実施形態に係る飲酒運転抑止システムの動作を示すフロー図である。図2に示すように、天候検知センサ12及び雨滴強度計測センサ14は、車外の天候が降雨、降雪あるいは強風等の荒天時であるか否かを検知する(S11)。荒天時である場合には、アルコール検知センサ10が運転者の飲酒状態の検知を行う(S12)。
【0024】
アルコール検知センサ10が運転者の呼気中のアルコール濃度を酒気帯び状態の規定値である15mg/L以上と検出した場合は(S13)、サンルーフアクチュエータ18はサンルーフ20を開ける(S14)。もし、アルコール検知センサ10が運転者の呼気中のアルコール濃度を酒酔い状態の規定値である25mg/Lと検出した場合は(S15)、ウィンドウアクチュエータ22a〜22nはウィンドウ24a〜24nを全て開ける(S16)。この場合において、サンルーフ20及びウィンドウ24a〜24n各々の開度を運転者の飲酒量に応じて大きくしても良い。
【0025】
本実施形態によれば、サンルーフアクチュエータ18及びウィンドウアクチュエータ22a〜22nは、アルコール検知センサ10により運転者の飲酒状態が検知され、かつ天候検知センサ12及び雨滴強度計測センサ14により車両外の降雨及び降雪の少なくともいずれかが検出されたときは、車両のサンルーフ20及びウィンドウ24a〜24nのいずれかを開く。そのため、判断力、反射能力等が低下した飲酒者に対しても感覚的に降雨又は降雪による不快感を与え、車室内の内装への影響についての懸念を与えることができ、降雨又は降雪が不快となり内装への影響が心配となった運転者に運転操作を続行する意欲を低下させ、自発的に車両を停止させて運転操作を止めることを期待できる。また、この構成によれば、車両の運動性能の変更、運転特性の変更及び視界不良を引き起こすものではないため、安全性も担保される。
【0026】
また、本実施形態によれば、サンルーフアクチュエータ18及びウィンドウアクチュエータ22a〜22nは、アルコール検知センサ10により検知された運転者の飲酒状態におけるアルコール摂取量が多いほど、サンルーフ20及びウィンドウ24a〜24nを開く度合いを大きくするため、運転者の酔いがひどいほど、運転者に降雨又は降雪による不快感と車室内の内装への影響についての懸念とを与えることができ、飲酒運転を抑止することができる。さらに、この構成によれば、必要以上に車室内の内装に降雨、降雪による悪影響を与えないようにできるという利点も有する。
【0027】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態に係る飲酒運転抑止システムの動作を示すフロー図である。本実施形態においては、雨滴強度が高い窓ほど優先的に開くようにする点が上記第1実施形態と異なる。図3に示すように、本実施形態では、荒天時であるかの判断(S21)、アルコール検知(S22,S23)を第1実施形態と同様に行った後、雨滴強度計測センサ14により、車両のサンルーフ20及びウィンドウ24a〜24nそれぞれの降雨量及び降雪量を検出する(S24)。
【0028】
アクチュエーション判断部16は、雨滴強度計測センサ14からの雨滴強度と、予め定められた車両のサンルーフ20及びウィンドウ24a〜24nそれぞれの重み係数とから、これらを開放する優先度を決定する。サンルーフ20及びウィンドウ24a〜24nの重み係数は、例えば、サンルーフ20が一番大きく、前部のウィンドウから後部のウィンドウに至るにつれて小さくなるようにすることができる。このようにして、(各部の雨滴強度×各部の重み係数=優先度)とすることにより、サンルーフ20及びウィンドウ24a〜24nを開く優先度を決定することができる。サンルーフアクチュエータ18及びウィンドウアクチュエータ22a〜22nは、このようにして決定された優先度に従い、サンルーフ20及びウィンドウ24a〜24nを開く(S25)。
【0029】
なお、この場合において、天候検知センサ12及び雨滴強度計測センサ14により降雨、降雪の向き、風向を計測し、風上のウィンドウの開度を風下のウィンドウの開度より大きくすることにより、風の通路を確保し、風雨の吸い込み及び通り抜けを促進することができる。
【0030】
本実施形態によれば、サンルーフアクチュエータ18及びウィンドウアクチュエータ22a〜22nは、車両のサンルーフ20及びウィンドウ24a〜24nのいずれかにおける降雨量、降雪量及び風量が多いルーフ及び車窓から開くため、一層効率良く運転者に降雨又は降雪による不快感と車室内の内装への影響についての懸念とを与えることができる。また、本実施形態によれば、ウィンドウアクチュエータ22a〜22nは、風上のウィンドウの開度を風下のウィンドウの開度より大きくすることにより、風の通路を確保し、風雨の吸い込み及び通り抜けを促進することができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態に係る飲酒運転抑止システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る飲酒運転抑止システムの動作を示すフロー図である。
【図3】第2実施形態に係る飲酒運転抑止システムの動作を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0033】
1…飲酒運転抑止システム、10…アルコール検知センサ、12…天候検知センサ、14…雨滴強度計測センサ、16…アクチュエーション判断部、18…サンルーフアクチュエータ、20…サンルーフ、22a〜22n…ウィンドウアクチュエータ、24a〜24n…ウィンドウ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転する運転者の飲酒状態を検知する飲酒検知手段と、
前記車両外の降雨及び降雪の少なくともいずれかを検出する天候検出手段と、
前記車両のルーフ及び車窓の少なくともいずれかの開閉を行う開閉手段と、
を備え、
前記開閉手段は、前記飲酒検知手段により運転者の飲酒状態が検知され、かつ前記天候検出手段により前記車両外の降雨及び降雪の少なくともいずれかが検出されたときは、前記車両のルーフ及び車窓の少なくともいずれかを開く、飲酒運転抑止システム。
【請求項2】
前記開閉手段は、前記飲酒検知手段により検知された運転者の飲酒状態におけるアルコール摂取量が多いほど、前記車両のルーフ及び車窓を開く度合いを大きくする、請求項1に記載の飲酒運転抑止システム。
【請求項3】
前記開閉手段は、前記車両のルーフ及び車窓のいずれかにおける降雨量及び降雪量のいずれかが多いルーフ及び車窓から開く、請求項1又は2に記載の飲酒運転抑止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−184048(P2008−184048A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19652(P2007−19652)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】