説明

駆動装置及びロボット装置

【課題】回転情報の制御の精度低下を抑制できる駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置は、中空部、及び中空部から外周面へ通じる貫通孔を有する第1軸部材と、中空部に挿入され、第1軸部材と動力伝達部を介して連結された第2軸部材と、第1軸部材を回転させる駆動部と、第1軸部材と第2軸部材とのうちの一方の軸部材に設けられたスケールを有し、一方の軸部材の回転に関する情報を検出する検出部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置及びロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業ロボット等の駆動部分には、ギヤ付きモータ等の駆動装置が用いられることがある。ギヤ付きモータは、例えば、中空のモータ軸を有するモータと、モータ軸に連結された減速機と、モータ軸の中空部に挿入されて減速機の出力側に連結された出力軸とを備える(例えば、特許文献1参照)。減速機は、例えば、1つ以上のギヤを含んで構成される。
【0003】
ギヤ付きモータには、モータの回転軸と減速機の出力軸の少なくとも一方の軸に、回転数等の回転情報を検出するエンコーダが設けられることがある。エンコーダは、例えば、回転数を検出する対象の軸に設けられたスケールの変位を光学的に検出する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−70284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ギヤ付きモータは、減速機のギヤにグリス等の潤滑剤や防錆剤等の液体が用いられることがあり、この液体がモータの回転軸と減速機の出力軸とを介してエンコーダまで流れる可能性がある。エンコーダは、例えばスケールが上記の液体で覆われると、検出精度が低下する可能性がある。結果として、このギヤ付きモータが搭載された機械の動作の精度が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑み成されたものであって、回転情報の制御の精度低下を抑制できる駆動装置及びロボット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、中空部、及び中空部から外周面へ通じる貫通孔を有する第1軸部材と、中空部に挿入され、第1軸部材と動力伝達部を介して連結された第2軸部材と、第1軸部材を回転させる駆動部と、第1軸部材と第2軸部材とのうちの一方の軸部材に設けられたスケールを有し、一方の軸部材の回転に関する情報を検出する検出部と、を備える駆動装置が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様に従えば、中空部を有する第1軸部材と、中空部に挿入され、第1軸部材の一端側に配置された動力伝達部を介して第1軸部材と連結された第2軸部材と、第1軸部材を回転させる駆動部と、第1軸部材の他端側に配置された第1のスケールと第2軸部材に配置された第2のスケールとを有し、第1軸部材と第2軸部材とのうちの一方の軸部材に設けられたスケールを有し、一方の軸部材の回転に関する情報を検出する検出部と、第1軸部材の他端側から一端側に向けて第1軸部材の中空部にガスを流すガス供給部と、を備える駆動装置が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様に従えば、中空部を有する第1軸部材と、中空部に挿入され、第1軸部材の一端側に配置された動力伝達部を介して第1軸部材と連結された第2軸部材と、第1軸部材を回転させる駆動部と、第1軸部材の他端側に配置された第1のスケールと第2軸部材に配置された第2のスケールとを有し、第1軸部材と第2軸部材との少なくとも一方の軸部材の回転に関する情報を検出する検出部と、第1軸部材が回転している状態において第1軸部材の中空部に流入する流体を中空部の外部へ排出する第1の排出部、及び第1軸部材が回転していない状態において第1軸部材の中空部に流入する流体を中空部の外部へ排出する第2の排出部を選択的に制御する制御部と、を備える駆動装置が提供される。
【0010】
本発明の第4の態様に従えば、軸部材と、軸部材を駆動する第1ないし第3の態様の駆動装置と、を備えるロボット装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転情報の制御の精度低下を抑制できる駆動装置及びロボット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の駆動装置を示す図である。
【図2】第1実施形態の駆動装置の第1スケール及び第2スケールを示す図である。
【図3】第1実施形態の駆動装置の検出部を示す図である。
【図4】第1実施形態の駆動装置の一部を拡大して示す図である。
【図5】第1実施形態の駆動装置の第1軸部材及び第2軸部材を示す図である。
【図6】第2実施形態の駆動装置を示す図である。
【図7】第2実施形態の駆動装置の一部を拡大して示す図である。
【図8】第3実施形態のロボット装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の駆動装置の概略構成を示す図である。図1に示す駆動装置1Aは、モータ(駆動部)2と、モータ2を保持するケーシング(駆動部本体)3と、モータ2によって回転するモータ軸(第1軸部材)4と、出力軸(第2軸部材)5と、モータ軸4の回転を出力軸5へ伝える減速機(動力伝達部)6と、モータ軸4と出力軸5の少なくとも一方の回転に関する情報を検出する検出部7と、駆動装置1Aの各部を制御する制御部8とを備える。
【0014】
駆動装置1Aは、モータ2で発生するトルクによってモータ軸4を回転させ、モータ軸4の回転を減速機6により減速させた回転速度で、出力軸5を回転させることができる。モータ軸4及び出力軸5は、それぞれ、回転軸10まわりに回転可能に設けられている。本実施形態の検出部7は、モータ軸4の回転に関する情報を検出する第1エンコーダ11と、出力軸5の回転に関する情報を検出する第2エンコーダ12とを有する。制御部8は、検出部7の検出結果に基づいてモータ2を制御してモータ軸4の回転情報(例えば、回転速度等)を制御し、結果として出力軸5の回転情報(例えば回転速度等)を制御することができる。なお、制御部8は、駆動装置1Aの外部の装置、例えば駆動装置1Aが実装されたロボット装置を制御する制御装置であってもよい。
【0015】
以下、各図に示すXYZ直交座標系を参照しつつ、各部材の位置関係について説明する。このXYZ直交座標系において、Z軸はモータ軸4及び出力軸5の回転軸10に平行であり、X軸及びY軸は、それぞれZ軸に直交し、かつ互いに直交する。
【0016】
本実施形態のモータ2は、モータ軸4の外周面15に取り付けられた磁石16と、磁石16を囲むように回転軸10の周囲に配置されたコイル17とを有する。モータ2は、モータ2の外部からコイル17へ供給される電力により発生する磁界から磁石16が受ける力によって、磁石16とモータ軸4とを一体として回転させることができる。
【0017】
本実施形態の磁石16は、その一部が直接的に又は他の部材を介して間接的にモータ軸4の外周面15と当接しており、他の一部がモータ軸4の外周面15との間に空隙18を形成するようにモータ軸4の外周面15から離れている。
【0018】
なお、モータ軸4は、モータ2の一部であってもよく、この場合に駆動部は、磁石16及びコイル17を含んで構成される。モータ2は、モータ軸4を回転させる動力を発生するものであれば、その構成を適宜変更することができる。例えば、磁石16は、永久磁石でもよいし、電磁石でもよい。モータ2は、磁石16が電磁石であって、コイル17に代えて永久磁石が設けられている構成でもよい。
【0019】
本実施形態のモータ軸4は、中空の略円筒形状である。モータ軸4は、中空部19と、モータ軸4の外周面15及び内周面20を結ぶ貫通孔21とを有する。モータ軸4は、第1軸受22を介してケーシング3に回転自在に支持されている。本実施形態において、モータ軸4は、磁石16よりも回転軸10の一端側(−Z側)の部分(ここでは端部)にて減速機6と接続されている。
【0020】
本実施形態において、モータ軸4の貫通孔21は、減速機6と第1エンコーダ11の第1スケール23との間に配置されている。本実施形態のモータ軸4は、複数の貫通孔21を有する。複数の貫通孔21は、回転軸10の軸方向と周方向の各方向に並んでいる。
【0021】
本実施形態の貫通孔21は、モータ軸4の内周面20から外周面15に向って、外周面15の法線方向に対してモータ軸4の他端側(+Z側)へ近づくように傾斜して延びている。すなわち、貫通孔21は、モータ軸4の外周面15側の開口の位置が内周面20側の開口の位置に対して+Z側(モータ軸4の検出部7側)にずれている。本実施形態において、複数の貫通孔21のうちの少なくとも1つは、外周面15側の開口が外周面15と磁石16との間の空隙18へ通じるように、配置されている。
【0022】
なお、貫通孔21の数と形状と寸法と配置とのうちの少なくとも一つは、適宜、変更可能である。例えば、貫通孔の数は、1つでもよい。貫通孔21の少なくとも1つは、モータ軸4の外周面15の法線方向に延びる形状でもよいし、モータ軸4の内周面20から外周面15に向って、外周面15の法線方向に対してモータ軸4の一端側(−Z側)へ近づくように傾斜して延びる形状でもよい。また、貫通孔21の形状は、モータ軸4の径方向で内径が均一なストレート状でもよいし、モータ軸4の内周面20から外周面15に向って内径が縮小又は拡大するテーパ状でもよい。
【0023】
また、貫通孔21の少なくとも1つの寸法は、他の貫通孔21と同じでも異なっていてもよい。複数の貫通孔21のうち2つ以上の貫通孔21は、モータ4の回転軸(例えば、回転軸10)の軸方向に並んで配列されていてもよいし、モータ4の回転軸の周方向に並んで配列されていてもよく、モータ4の回転軸のまわりに螺旋状に並んで配列されていてもよい。
【0024】
本実施形態の出力軸5は、略円柱形状であり、モータ軸4の中空部19にモータ軸4と同軸状態で挿通されている。出力軸5は、モータ軸4に対して偏心していてもよい。出力軸5は、回転軸の軸方向の他端側(+Z側)にモータ軸4よりも突出している。出力軸5の+Z側の端部は、ケーシング3と連結された検出部本体24に、第2軸受25を介して回転自在に支持されている。出力軸5は、減速機6を介してモータ軸4と連結されている。
【0025】
減速機6は、回転軸10の一端側(−Z側)にてケーシング3に保持されている。減速機6は、例えば波動歯車減速機等であり、1つ又は2つ以上のギヤやギヤを支持する軸受等を含んで構成される。本実施形態の減速機6は、モータ軸4の回転を1つ以上のギヤを介して出力軸5へ伝えることによって、出力軸5をモータ軸4とは異なる回転速度で回転させることができる。
【0026】
なお、動力伝達部は、モータ軸4の回転を出力軸5へ伝えるものであれば、その構成を適宜変更することができる。例えば、動力伝達部は、出力軸5をモータ軸4と同じ回転速度で回転させてもよいし、出力軸5をモータ軸4よりも速い回転速度で回転させてもよい。すなわち、動力伝達部の変速比は、1未満でもよいし、1以上でもよい。また、動力伝達部の変速比は、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。
【0027】
検出部7の第1エンコーダ11は、第1スケール23と、第1スケール23へ光を照射する第1照明部26と、第1スケール23を介した光を受光する第1受光部27とを有する。第1スケール23は、モータ軸4のうち磁石16よりも回転軸10の他端側(+Z側)の部分(ここでは端部)に、回転軸10と直交して取り付けられている。第1照明部26及び第1受光部27は、検出部本体24に取り付けられている。
【0028】
検出部7の第2エンコーダ12は、第2スケール28と、第2スケール28へ光を照射する第2照明部29と、第2スケール28を介した光を受光する第2受光部30とを有する。第2スケール28は、出力軸5のうち磁石16よりも回転軸10の他端側(+Z側)の部分(ここでは端部)に、回転軸10と直交して取り付けられている。第2照明部29及び第2受光部30は、検出部本体24に取り付けられている。
【0029】
第1照明部26及び第2照明部29は、それぞれ、例えばLED等の発光素子を含んで構成される。第1照明部26は、第1スケール23と対向して配置されている。第2照明部29は、第2スケール28と対向して配置されている。第1受光部27及び第2受光部30は、それぞれ、例えばフォトダイオード等の光電変換素子を含んで構成される。第1受光部27は、第1照明部26から射出されて第1スケール23で反射した光が入射する位置に、配置されている。第2受光部30は、第2照明部29から射出されて第2スケール28で反射した光が入射する位置に、配置されている。
【0030】
図2は、第1実施形態の駆動装置の第1スケール及び第2スケールを示す平面図である。図3は、第1実施形態の駆動装置の検出部の機能構成を示すブロック図である。
【0031】
図2に示す第1スケール23は、インクリメンタルパターン(以下、第1のINCパターン31という)と、回転軸10からの放射方向(径方向)で第1のINCパターン31よりも内側に配置されたアブソリュートパターン(以下、第1のABSパターン32という)とを有する。第1受光部27は、第1のINCパターン31で反射した光と、第1のABSパターン32で反射した光をそれぞれ検出することができる。
【0032】
第2スケール28は、インクリメンタルパターン(以下、第2のINCパターン33という)と、回転軸10からの放射方向で第2のINCパターン33よりも内側に配置されたアブソリュートパターン(以下、第2のABSパターン34という)とを有する。第2受光部30は、第2のINCパターン33で反射した光と、第2のABSパターン34で反射した光をそれぞれ検出することができる。
【0033】
本実施形態において、検出部7の第1エンコーダ12は、第2エンコーダ11と同様の構成である。ここでは、第1エンコーダ11の構成について代表的に説明する。第1スケール23の第1のABSパターン32は、回転方向の絶対位置情報を表すものであり、例えば所定数のM系列符合で構成される。第1のINCパターン31は、回転方向の相対位置情報を表すものであり、例えばパルスのパターンで構成される。第1のINCパターン31は、例えば、上記絶対位置情報の内挿用に用いられたり、回転方向の算出に用いられたりする。
【0034】
第1のABSパターン32と第1のINCパターン31は、それぞれ、符合が1(H)となる光の反射部と、符合が0(L)となる光の吸収部とを有する。光の反射部は、例えば、金、アルミニウム、クロム、銅等の反射率が高い部材で形成される。光の吸収部は、例えば、黒色塗料が塗布された層、黒色アルマイト層、めっき層(例えば、ニッケルめっき層)、酸化クロム層等の光を吸収する層で形成される。
【0035】
図3に示す第1エンコーダ11は、第1受光部27を制御するとともに第1受光部27からの信号を処理する第1信号処理部35を有する。本実施形態の第1信号処理部35は、増幅部や二値化部、フィルタ部、A/D変換部、演算処理部等を含む。第1信号処理部35は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の半導体装置(演算回路)により構成される。第1信号処理部35は、各種処理を実行させるプログラムが実装されたコンピュータシステムにより構成されていてもよい。
【0036】
第1信号処理部35は、第1受光部27を制御して、第1受光部27に所定のタイミングで入射した光の光量等に基づく情報(例えば、検出信号)を第1受光部27から受信することができる。第1信号処理部35は、第1のABSパターン32で反射した光に関する第1受光部27の検出結果と、第1のABSパターン32の符合とを照合することによって、第1のABSパターン32の回転位置、すなわちモータ軸4の回転位置を検出することができる。
【0037】
また、第1信号処理部35は、第1のINCパターン31で反射した光に関して所定の時間間隔で検出した第1受光部27の検出結果を比較することによって、所定の時間間隔における第1のINCパターン31の回転位置の変化量、すなわちモータ軸4の回転方向を加味した回転速度を検出することができる。
【0038】
第1信号処理部35は、モータ軸の回転に関する情報、例えばモータ軸4の回転位置を示す情報と回転速度を示す情報の少なくとも一方を第1上位システム36へ送信する。本実施形態において、第1上位システム36は、制御部8の一部である。制御部8は、第1上位システム36が第1信号処理部35から受信した情報に基づいてモータ2を制御し、結果としてモータ軸4の回転情報(例えば、回転位置、回転数、回転速度等)を制御することができる。
【0039】
また、第2エンコーダ12は、第1信号処理部35と同様の第2信号処理部37を有し、出力軸5の回転に関する情報を第2上位システム38へ送信することができる。本実施形態において、第2上位システム38は制御部8の一部であり、制御部8は、第2上位システム38が第2信号処理部37から受信した情報に基づいてモータ2を制御し、結果としてモータ軸4の回転情報(例えば、回転位置、回転数、回転速度等)を制御することができる。
【0040】
なお、制御部8は、出力軸5の回転速度とモータ軸4の回転速度とのうちのの一方の回転速度、及び減速機6の変速比(減速比)を用いて、出力軸5の回転速度とモータ軸4の回転速度の他方の回転速度の推定値を算出することもできる。制御部8は、回転速度の推定値と計測値とを比較すること等で、第1エンコーダ11の検出結果と第2エンコーダ12の検出結果の整合性を調べること等もできる。このように、出力軸5の回転速度とモータ軸4の回転速度とのうちの一方の回転速度を用いて他方の回転速度を求めることもできるので、第1エンコーダ11又は第2エンコーダ12は、設けられていなくてもよい。また、駆動装置1Aは、第1信号処理部35が制御部8の一部であって、第1エンコーダ11が第1信号処理部35を含んでいなくてもよい。
【0041】
ところで、減速機6は、ギヤあるいは軸受を潤滑するグリス等の潤滑剤や防錆剤等の液体とともに使用されることがある。この液体は、モータ軸4の中空部19を伝って、減速機6から検出部7へ向って流れる可能性がある。この液体が第1スケール23又は第2スケール28を覆うと、検出部7の検出精度が低下する可能性がある。また、この液体が検出部7のスケール以外の構成要素に付着した場合にも検出部7の検出精度が低下する可能性がある。
【0042】
また、図1に示すように、本実施形態の駆動装置1Aは、中空部19へ流入した流体L(例えば、液体と気体の少なくとも一方を含む物体)を中空部19の外部へ排出可能な第1の排出部40及び第2の排出部41を備えており、流体Lが検出部7へ付着することによる検出精度の低下を抑制することができる。なお、本実施形態においては、一例として、流体Lは液体であるとして説明する。
【0043】
本実施形態において、第1の排出部40は、モータ軸4を含んで構成されている。第1の排出部40においてモータ2が回転すると、中空部19の内部の液体Lの少なくとも一部は、モータ2の回転により遠心力を受けて、貫通孔21を通って中空部19の外部へ排出される。貫通孔21は、中空部19から貫通孔21への液体Lの流路が鋭角に折れ曲がらないように傾斜しているので、中空部19から貫通孔21へ液体Lが流れやすくなるように形成されている。また、本実施形態において、第1の排出部40は、中空部19の内部の液体Lの少なくとも一部をモータ軸4等の軸方向とは異なる方向に貫通孔21を介して中空部19の外部へ排出することができる。
【0044】
本実施形態において、貫通孔21を通った液体Lは、磁石16とモータ軸4の外周面15との間の空隙18に収容される。本実施形態において、空隙18には、液体Lを保持する液体保持体42が配置されている。液体保持体42は、液体Lを吸着可能な部材で構成される。液体保持体42に保持された液体Lは、空隙18から漏れ出すことが抑制される。
【0045】
なお、空隙18の内側に容器が配置されており、この容器は、貫通孔21を通った液体Lを収容してもよい。すなわち、貫通孔21を通った液体Lの少なくとも一部は、空隙18の周囲の壁面により構成される収容室(収容部)に収容されてもよいし、空隙18に配置された液体保持体42(収容部)に収容されてもよく、空隙18に配置された容器(収容部)に収容されてもよい。
【0046】
本実施形態において、空隙18は、磁石16とモータ軸4の外周面15との間に設けられた封止部材43により封止されている。封止部材43は、例えば非磁性体の金具等で構成される。空隙18の内部へ流入した液体Lは、空隙18の外側に漏れ出すことが封止部材43によって抑制される。
【0047】
本実施形態の中空部19の内部の液体Lの少なくとも一部は、モータ軸4が回転していない状態であっても貫通孔21を通って中空部19の外部へ排出される。換言すると、駆動装置1Aは、モータ軸4が中空部19から外周面15へ通じる貫通孔21を有しているので、減速機6からの液体Lが検出部7へ到達することを抑制可能である。また、駆動装置1Aは、モータ軸4が回転している状態では液体Lが遠心力を受けて中空部19の外部へ排出されやすくなるので、減速機6からの液体Lが検出部7へ到達することを格段に抑制可能である。
【0048】
図4は、第1実施形態の駆動装置の一部を拡大して示す図である。図5は、第1実施形態の駆動装置の第1軸部材及び第2軸部材を示す図である。
【0049】
図1、図4及び図5に示すように、本実施形態において、第2の排出部41は、ガス供給部44を含んで構成されている。ガス供給部44は、モータ軸4の中空部19に接続された流路45へガスGを供給することができる。流路45は、菅部材46の内部に形成されている。菅部材46は、モータ軸4の外側から出力軸5まで延びる延在部47と、延在部47から屈曲してモータ軸4と出力軸5との間に挿入された屈曲部48とを含む。屈曲部48は、出力軸5と交差する部分で出力軸5を通す孔部49を有する。
【0050】
ガス供給部44から流路45へ供給されたガスGは、流路45を介して中空部19へ流入し、中空部19を回転軸10の他端側(+Z側)から一端側(−Z側)へ向って流れる。これにより、中空部19内の液体Lは、回転軸10の一端側(−Z側)から他端側(+Z側)へ向って流れることが抑制される。本実施形態の駆動装置1Aは、オイルシール等で液体Lの流れを抑制する構成と比較して、オイルシールの摩擦による抵抗(動力ロス)の発生や粉塵等の発生を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の菅部材46は、モータ軸4と接触しないように配置されている。モータ軸4の内周面20と菅部材46の外周面との間隔は、菅部材46の内周面と出力軸5の外周面との間隔よりも小さく設定されている。これにより、中空部19の内部のガスGは、モータ軸4の内周面20と菅部材46の外周面との間から漏れることが抑制される。
【0052】
本実施形態において、中空部19を−Z側へ流れるガスGは、貫通孔21へ向う場合には鋭角に折れ曲がって流れることになるので、貫通孔21を通って中空部19の外部へ漏れることが抑制される。
【0053】
本実施形態において、中空部19のうち減速機6よりも他端側(−Z側)の部分に、フィルタ50が配置されている。フィルタ50は、ガスGによって中空部19から減速機6側へ押し返された液体Lの少なくとも一部を吸収することができる。
【0054】
本実施形態の制御部8は、停止しているモータ2を回転させること及び回転しているモータ2を停止させることができる。すなわち、制御部8は、モータ2を制御することによって発生する遠心力を制御できるので、第1の排出部40を制御することができる。また、本実施形態の制御部8は、ガス供給部44を制御することによって、中空部19の内部の液体Lを第2の排出部41により排出させることができる。例えば、本実施形態の制御部8は、モータ軸4が回転していない状態でガス供給部44にガスGを流路45へ供給させることができる。このように、本実施形態における制御部8は、例えばモータ2の回転状態に応じて、第1の排出部40と第2の排出部41とを選択的に制御することができる。
【0055】
なお、制御部8は、モータ軸4が回転している状態で第2の排出部41を制御して液体Lを排出させてもよい。また、制御部8は、負荷に動力を供給する動作とは別に、モータを回転させて第1の排出部40により液体Lを排出させてもよい。また、モータ軸4に貫通孔21が設けられている場合に、駆動装置1Aは、第2の排出部41を備えていなくてもよい。また、第2の排出部41が設けられている場合に、モータ軸4に貫通孔21が設けられていなくてもよい。
【0056】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態において第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略することがある。
【0057】
図6は、第2実施形態の駆動装置を示す図である。図7は、第2実施形態の駆動装置の一部を拡大して示す図である。本実施形態の駆動装置1Bは、出力軸60及びガス供給部44を備える。
【0058】
図6及び図7に示すように、本実施形態の出力軸60は、内部に形成された流路61を有する。流路61の流入口は、接続部材65を介してガス供給部44に接続されている。本実施形態の接続部材65は、出力軸60とほぼ平行に延びる管状であり、その一端部が出力軸60の流路61へ挿入されている。
【0059】
流路61の流出口62は、モータ軸4の内周面20と出力軸60の外周面63との間に配置されている。流出口62は、出力軸5の径方向に延びる孔部64における出力軸60の外周面63側の開口である。孔部64は、出力軸60の内周面から外周面63に向うにつれて、出力軸60の一端側(−Z側)へ近づくように傾斜している。
【0060】
本実施形態において、モータ軸4と出力軸60との間隔は、流出口62に対して減速機6とは反対側で減速機6と同じ側よりも小さくなっている。本実施形態において、出力軸60の外周面63は、流出口62に対して減速機6とは反対側の部分の少なくとも一部でモータ軸4の内周面20に向って突出している。これにより、中空部19の内部のガスGは、モータ軸4の内周面20と出力軸60の外周面63との間から+Z側へ漏れることが抑制される。
【0061】
ガス供給部44から流路61へ供給されたガスGは、流路61を介してモータ軸4の中空部19へ流入し、中空部19を回転軸10の他端側(+Z側)から一端側(−Z側)へ向って流れる。これにより、中空部19内の液体Lは、回転軸10の一端側(−Z側)から他端側(+Z側)へ向って流れることが抑制される。
【0062】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。図8は、第3実施形態のロボット装置の概略構成(指部分の先端)を示す図である。図8に示すロボット装置100は、末節部101と、中節部102と、末節部101と中節部102とを接続する関節部103とを備える。ロボット装置100は、中節部102で発生した動力で末節部101を動かすことによって、各種処理を実行することができる。なお、上記実施形態で説明した駆動装置は、ロボット装置100のアーム部を駆動する駆動部として用いてもよい。
【0063】
中節部102は、上記の実施形態で説明した駆動装置104(例えば、駆動装置1A)と、駆動装置104を収容する筐体105と、駆動装置104の出力軸と接続された回転軸部材106と、回転軸部材106に固定された第1歯車107とを有する。回転軸部材106は、駆動装置104の出力軸の一部でもよい。第1歯車107は、例えばベベルギヤである。関節部103は、筐体105に基端が固定されて筐体105から突出する支持部108と、支持部108に固定されて支持された軸部109と、軸部109に回転可能に取り付けられた第2歯車110を有する。軸部109は、末節部101の一部である接続部111を貫通しており、末節部101を軸部109のまわりで回転可能なように、末節部101を支持している。第2歯車110は、末節部101の接続部111に固定されている。第2歯車110は、例えばベベルギヤであり、第1歯車107と噛み合わされている。
【0064】
本実施形態のロボット装置100は、駆動装置104の駆動によって回転軸部材106が回転し、回転軸部材106と一体的に第1歯車107が回転する。第1歯車107が回転すると、第1歯車107の回転が第2歯車110に伝達され、第2歯車110が回転する。第2歯車110が回転すると、接続部111が回転することによって、末節部101が軸部109を中心に回転する。本実施形態のロボット装置100は、駆動装置104の回転数制御の低下が抑制されているので、末節部101の動作を高精度に制御することができる。
【0065】
本発明の適用範囲は、上記の実施形態に限定されない。上記の実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、上記の実施形態で説明した要件の1以上を用いない場合もある。
【符号の説明】
【0066】
1A・・・駆動装置、1B・・・駆動装置、2・・・モータ(駆動部)、4・・・モータ軸(第1軸部材)、5・・・出力軸(第2軸部材)、6・・・減速機(動力伝達部)、7・・・検出部、8・・・制御部、G・・・ガス、L・・・液体(流体)、15・・・外周面、16・・・磁石、18・・・空隙、19・・・中空部、21・・・貫通孔、23・・・第1スケール、28・・・第2スケール、40・・・第1の排出部、41・・・第2の排出部、44・・・ガス供給部、45・・・流路、60・・・出力軸(第2軸部材)、61・・・流路、62・・・流出口(開口)、100・・・ロボット装置、104・・・駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部、及び前記中空部から外周面へ通じる貫通孔を有する第1軸部材と、
前記中空部に挿入され、前記第1軸部材と動力伝達部を介して連結された第2軸部材と、
前記第1軸部材を回転させる駆動部と、
前記第1軸部材と前記第2軸部材とのうちの一方の軸部材に設けられたスケールを有し、前記一方の軸部材の回転に関する情報を検出する検出部と、を備える駆動装置。
【請求項2】
前記第1軸部材が回転している状態において前記貫通孔を通り前記第1軸部材の外部へ排出される流体を収容する収容部を備える、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記第1軸部材の外周面に取り付けられた磁石を含み、
前記磁石は、前記外周面における前記貫通孔の開口との間に前記収容部が配置される空隙を有する、請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第1軸部材の中空部にガスを流すガス供給部を備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記第1軸部材が回転していない状態において前記ガス供給部から前記第1軸部材の中空部に前記ガスを供給させる制御部を備える、請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
中空部を有する第1軸部材と、
前記中空部に挿入され、前記第1軸部材の一端側に配置された動力伝達部を介して前記第1軸部材と連結された第2軸部材と、
前記第1軸部材を回転させる駆動部と、
前記第1軸部材と前記第2軸部材とのうちの一方の軸部材に設けられたスケールを有し、前記一方の軸部材の回転に関する情報を検出する検出部と、
前記第1軸部材の前記他端側から前記一端側に向けて前記第1軸部材の中空部にガスを流すガス供給部と、を備える駆動装置。
【請求項7】
前記ガス供給部は、前記第1軸部材と前記第2軸部材との間に配置される開口を有する流路を介して前記ガスを供給し、
前記流路は、前記第1軸部材の外側から前記第2軸部材まで延びる延在部と、前記延在部から屈曲して前記第1軸部材と前記第2軸部材との間に挿入されて前記第2軸部材と交差する部分で前記第2軸部材を通す孔部を有する屈曲部とを含む、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記ガス供給部は、前記第2軸部材の内部に設けられて前記第1軸部材と前記第2軸部材との間に配置される開口を有する流路を介して前記ガスを供給する、請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記第1軸部材は、前記中空部から外周面へ通じる貫通孔を有し、
前記流路の開口は、前記貫通孔よりも前記他端側に配置されている、請求項7又は8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記貫通孔の少なくとも一部は、前記第1軸部材の外周面の法線方向に対して前記第1軸部材の一端側へ近づくように傾斜している、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記検出部は、前記スケールを介した光を受光する受光部を有する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項12】
中空部を有する第1軸部材と、
前記中空部に挿入され、前記第1軸部材の一端側に配置された動力伝達部を介して前記第1軸部材と連結された第2軸部材と、
前記第1軸部材を回転させる駆動部と、
前記第1軸部材の他端側に配置された第1のスケールと前記第2軸部材に配置された第2のスケールとを有し、前記第1軸部材と前記第2軸部材との少なくとも一方の軸部材の回転に関する情報を検出する検出部と、
前記第1軸部材が回転している状態において前記第1軸部材の中空部に流入する流体を前記中空部の外部へ排出する第1の排出部、及び前記第1軸部材が回転していない状態において前記第1軸部材の中空部に流入する流体を前記中空部の外部へ排出する第2の排出部を選択的に制御する制御部と、を備える駆動装置。
【請求項13】
軸部材と、
前記軸部材を駆動する請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の駆動装置と、を備えるロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−231604(P2012−231604A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98407(P2011−98407)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】