説明

駐車ブレーキ制御装置

【課題】駐車ブレーキにおけるロック制御時に、サービスブレーキにより発生させられる大きなW/C圧によってパッド磨耗が大きくなること等を防止する。
【解決手段】駐車ブレーキにおけるロック制御時に、ドライバのブレーキペダルの操作に基づくサービスブレーキにより発生させられるW/C圧が大きい場合(ステップ205)、W/C圧が目標W/C圧上限値TPWCUよりも低下させる(ステップ220)。これにより、サービスブレーキにより発生させられる大きなW/C圧によってパッド磨耗が大きくなることを防止できる。また、キャリパやブレーキ機構の体格重量等が大きくなることを防止でき、キャリパやブレーキ機構の小型化を図ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パーキングブレーキ(以下、EPB(Electric parking brake)という)のロック制御を行う駐車ブレーキ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、駐車時の車両の移動を規制するためにパーキングブレーキが用いられており、例えば、パーキングブレーキとして、操作レバーによってブレーキケーブルを引っ張ることで操作力をブレーキ機構に伝える手動式のものや、モータの回転力を利用してケーブルを引っ張ることでモータ回転力をブレーキ機構に伝える電動式のもの等がある。
【0003】
電動式のパーキングブレーキであるEPBでは、ロック時には、モータをロック側に回転(正回転)させてモータ回転力をブレーキ機構(アクチュエータ)に伝えると共に、ブレーキ力を発生させた状態でモータ駆動を停止させ、リリース時には、モータをリリース側に回転(逆回転)させることでブレーキ力を解除する。
【0004】
このようなロック・リリース制御が行われるEPBにおいて、駐車ブレーキ時のモータの出力を減らすために、サービスブレーキの加圧機能を利用したものが開示されている。具体的には、あまり大きなブレーキ力を発生させる必要がないような比較的負荷の小さい平坦路では駐車ブレーキ用のモータのみを作動させ、大きなブレーキ力を発生させる必要がある比較的負荷の大きい坂路では駐車ブレーキでは不足する分をサービスブレーキで補うことで、車両のずり落ちが生じないようにするために必要なブレーキ力を確保する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2007−519568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のようにサービスブレーキにてブレーキ力を補うような場合、ドライバがブレーキペダルを高踏力で踏み込んでいて駐車保持に必要な液圧以上のホイールシリンダ(以下、W/Cという)圧が発生していると、駐車時のブレーキ力が必要以上に大きくなる。このため、ブレーキパッドがブレーキロータに過度に押し付けられ、強い押し付け力に対応できるようにブレーキパッド、キャリパ、ブレーキ機構の耐久強度条件が厳しくなって、これらの体格重量等が大きくなるという問題が生じる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、駐車ブレーキにおけるロック制御時に、サービスブレーキにより発生させられる大きなW/C圧によってパッドの強度が不足したり、キャリパやブレーキ機構の体格重量等が大きくなることを防止できる駐車ブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、EPBに相当する第1ブレーキ手段(2)と、サービスブレーキに相当する第2ブレーキ手段(1)とを有する駐車ブレーキ制御装置に対して、ホイールシリンダ圧の目標上限値(TPWCU)を設定する上限値設定手段(200)と、第1ブレーキ手段(2)によってブレーキ力を発生させるに当たり、第2ブレーキ手段によって発生されているホイールシリンダ圧が目標上限値(TPWCU)を超えているか否かを判定する第1判定手段(215)と、第1判定手段(215)によってホイールシリンダ圧が目標上限値(TPWCU)より大きいと判定された場合、ホイールシリンダ圧を目標上限値(TPWCU)以下まで減圧する減圧手段(220)と、ホイールシリンダ圧が目標上限値(TPWCU)以下までに低下させられたときに、第1ブレーキ手段(2)にて電動モータ(10)を回転駆動する制御手段(230〜245)とを備えることを特徴としている。
【0008】
このように、第2ブレーキ手段(1)により発生させられるW/C圧が目標上限値(TPWCU)よりも大きい場合、W/C圧を目標上限値(TPWCU)以下まで低下させるようにしている。これにより、第2ブレーキ手段(1)により発生させられる大きなW/C圧によってパッドが破壊されることを防止できる。また、キャリパやブレーキ機構の体格重量等が大きくなることを防止でき、キャリパやブレーキ機構の小型化を図ることが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、ホイールシリンダ圧の目標下限値(TPWCL)を設定する下限値設定手段(200)と、第1ブレーキ手段(2)によってブレーキ力を発生させるに当たり、第2ブレーキ手段によって発生されているホイールシリンダ圧が目標下限値(TPWCL)を超えているか否かを判定する第2判定手段(205)と、第2判定手段(205)によってホイールシリンダ圧が目標下限値(TPWCL)より小さいと判定された場合、ホイールシリンダ圧を目標下限値(TPWCL)以上まで増加する増圧手段(210)と、を含み、制御手段(230〜245)は、ホイールシリンダ圧を目標下限値(TPWCL)から目標上限値(TPWCU)の範囲内のときに、第1ブレーキ手段(2)にて電動モータ(10)を回転駆動することを特徴としている。
【0010】
このように、第2ブレーキ手段(1)により発生させられるW/C圧が目標下限値(TPWCL)よりも小さい場合、W/C圧を目標下限値(TPWCL)以上に高くなるようにしている。これにより、モータ(10)等の小型化を図ることが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、下限値設定手段(200)にて、前記車両を駐車する路面勾配が大きいほど目標下限値(TPWCL)を大きな値に設定することを特徴ととする。
【0012】
このように、路面勾配に応じて目標下限値(TPWCL)を設定することにより、駐車を維持できる最低限のブレーキ力に対応するW/C圧を路面勾配に対応して設定することが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、下限値設定手段(200)にて、前記車両の車重が大きいほど目標下限値(TPWCL)を大きな値に設定することを特徴としている。
【0014】
このように、車重に応じて目標下限値(TPWCL)を設定することにより、駐車を維持できる最低限のブレーキ力に対応するW/C圧を車重に対応して設定することが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、下限値設定手段(200)にて、ブレーキパッド(11)の温度が高いほど目標下限値(TPWCL)を大きな値に設定することを特徴としている。
【0016】
このように、ブレーキパッド(11)の温度に応じて目標下限値(TPWCL)を設定することにより、駐車を維持できる最低限のブレーキ力に対応するW/C圧をブレーキパッド(11)の温度に対応して設定することが可能となる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、上限値設定手段(200)にて、目標下限値(TPWCL)に対して所定値(α)を足した値を目標上限値(TPWCU)として設定することを特徴としている。
【0018】
このように、目標下限値(TPWCL)に対して所定値(α)を足した値を目標上限値(TPWCU)として設定することができる。定数(α)の値が小さければ小さいほどブレーキパッド(11)にかかる力を少なくできるし、キャリパやブレーキ機構に対する耐久強度条件を緩和できるが、制御のロバスト性を考慮すると定数(α)の値をある程度の大きさにするのが好ましい。
【0019】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、後輪系にディスクブレーキタイプのEPBを適用している車両用ブレーキシステムを例に挙げて説明する。図1は、本実施形態にかかる駐車ブレーキ制御装置が適用された車両用のブレーキシステムの全体概要を示した模式図である。また、図2は、ブレーキシステムに備えられる後輪系のブレーキ機構の断面模式図である。以下、これらの図を参照して説明する。
【0022】
図1に示すように、ブレーキシステムは、ドライバの踏力に基づいてブレーキ力を発生させる第2ブレーキ手段に相当するサービスブレーキ1と駐車時に車両の移動を規制するための第1ブレーキ手段に相当するEPB2とが備えられている。
【0023】
サービスブレーキ1は、ドライバによるブレーキペダル3の踏み込みに応じた踏力を倍力装置4にて倍力したのち、この倍力された踏力に応じたブレーキ液圧をマスタシリンダ(以下、M/Cという)5内に発生させ、このブレーキ液圧を各車輪のブレーキ機構に備えられたホイールシリンダ(以下、W/Cという)6に伝えることでブレーキ力を発生させる。また、M/C5とW/C6との間にブレーキ液圧制御用のアクチュエータ7が備えられており、サービスブレーキ1により発生させるブレーキ力を調整し、車両の安全性を向上させるための各種制御(例えば、アンチスキッド制御等)を行える構造とされている。
【0024】
アクチュエータ7を用いた各種制御は、ESC(Electronic Stability Control)−ECU8にて実行される。例えば、ESC−ECU8からアクチュエータ7に備えられる図示しない各種制御弁やポンプ駆動用のモータを制御するための制御電流を出力することにより、アクチュエータ7に備えられる油圧回路を制御し、W/C6に伝えられるW/C圧を制御する。これにより、車輪スリップの回避などを行い、車両の安全性を向上させる。例えば、アクチュエータ7は、各車輪毎に、W/C6に対してM/C5内に発生させられたブレーキ液圧もしくはポンプ駆動により発生させられたブレーキ液圧が加えられることを制御する増圧制御弁や、各W/C6内のブレーキ液をリザーバに供給することでW/C圧を減少させる減圧制御弁等を備えており、W/C圧を増圧・保持・減圧制御できる構成とされている。このアクチュエータ7の構成に関しては、従来より周知となっているため、ここでは詳細については省略する。
【0025】
一方、EPB2は、モータ10にてブレーキ機構を制御することでブレーキ力を発生させるものであり、モータ10の駆動を制御するEPB制御装置(以下、EPB−ECUという)9を有して構成されている。
【0026】
ブレーキ機構は、本実施形態のブレーキシステムにおいてブレーキ力を発生させる機械的構造であり、前輪系のブレーキ機構はサービスブレーキ1の操作によってブレーキ力を発生させる構造とされているが、後輪系のブレーキ機構は、サービスブレーキ1の操作とEPB2の操作の双方に対してブレーキ力を発生させる共用の構造とされている。前輪系のブレーキ機構は、後輪系のブレーキ機構に対して、EPB2の操作に基づいてブレーキ力を発生させる機構をなくした従来から一般的に用いられているブレーキ機構であるため、ここでは説明を省略し、以下の説明では後輪系のブレーキ機構について説明する。
【0027】
後輪系のブレーキ機構では、サービスブレーキ1を作動させたときだけでなくEPB2を作動させたときにも、図2に示すブレーキパッド11を押圧し、ブレーキパッド11によってブレーキディスク12を挟み込むことにより、ブレーキパッド11とブレーキディスク12との間に摩擦力を発生させ、ブレーキ力を発生させる。
【0028】
具体的には、ブレーキ機構は、図1に示すキャリパ13内において、図2に示すようにブレーキパッド11を押圧するためのW/C6のボディ14に直接固定されているモータ10を回転させるとにより、モータ10の駆動軸10aに備えられた平歯車15を回転させ、平歯車15に噛合わされた平歯車16にモータ10の回転力を伝えることによりブレーキパッド11を移動させ、EPB2によるブレーキ力を発生させる。
【0029】
キャリパ13内には、W/C6およびブレーキパッド11に加えて、ブレーキパッド11に挟み込まれるようにしてブレーキディスク12の端面の一部が収容されている。W/C6は、シリンダ状のボディ14の中空部14a内に通路14bを通じてブレーキ液圧を導入することで、W/C圧を発生させられるようになっており、中空部14a内に回転軸17、推進軸18、ピストン19などを備えて構成されている。
【0030】
回転軸17は、一端がボディ14に形成された挿入孔14cを通じて平歯車16に連結され、平歯車16が回動させられると、平歯車16の回動に伴って回動させられる。この回転軸17における平歯車16と連結された端部とは反対側の端部において、回転軸17の外周面には雄ネジ溝17aが形成されている。一方、回転軸17の他端は、挿入孔14cに挿入されることで軸支されている。具体的には、挿入孔14cには、Oリング20と共に軸受け21が備えられており、Oリング20にて回転軸17と挿入孔14cの内壁面との間を通じてブレーキ液が漏れ出さないようにされながら、軸受け21により回転軸17の他端を軸支持している。
【0031】
推進軸18は、中空状の筒部材にて構成され、内壁面に回転軸17の雄ネジ溝17aと螺合する雌ネジ溝18aが形成されている。この推進軸18は、例えば回転防止用のキーを備えた円柱状もしくは多角柱状に構成されることで、回転軸17が回動しても回転軸17の回動中心を中心として回動させられない構造になっている。このため、回転軸17が回動させられると、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いにより、回転軸17の回転力を推進軸18を回転軸17の軸方向に移動させる力に変換する。推進軸18は、モータ10の駆動が停止されると、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いによる摩擦力により同じ位置で止まるようになっており、目標制動力になったときにモータ10の駆動を停止すれば、その位置に推進軸18を保持することができる。
【0032】
ピストン19は、推進軸18の外周を囲むように配置されるもので、有底の円筒部材もしくは多角筒部材にて構成され、外周面がボディ14に形成された中空部14aの内壁面と接するように配置されている。ピストン19の外周面とボディ14の内壁面との間のブレーキ液洩れが生じないように、ボディ14の内壁面にシール部材22が備えられ、ピストン19の端面にW/C圧を付与できる構造とされている。また、ピストン19は、推進軸18が回転しても回転軸17の回動中心を中心として回動させられないように、推進軸18に回転防止用のキーが備えられる場合にはそのキーが摺動するキー溝が備えられ、推進軸18が多角柱状とされる場合にはそれと対応する形状の多角筒状とされる。
【0033】
このピストン19の先端にブレーキパッド11が配置され、ピストン19の移動に伴ってブレーキパッド11を紙面左右方向に移動させるようになっている。具体的には、ピストン19は、推進軸18の移動に伴って紙面左方向に移動可能で、かつ、ピストン19の端部(ブレーキパッド11が配置された端部と反対側の端部)にW/C圧が付与されることで推進軸18から独立して紙面左方向に移動可能な構成とされている。そして、推進軸18が初期位置(モータ10が回転させられる前の状態)のときに、中空部14a内のブレーキ液圧が付与されていない状態(W/C圧=0)であれば、図示しないリターンスプリングもしくは中空部14a内の負圧によりピストン19が紙面右方向に移動させられ、ブレーキパッド11をブレーキディスク12から離間させられるようになっている。また、モータ10が回転させられて推進軸18が初期位置から紙面左方向に移動させられているときにW/C圧が0になると、移動した推進軸18によってピストン19の紙面右方向への移動が規制され、ブレーキパッド11がその場所で保持される。
【0034】
このように構成されたブレーキ機構では、サービスブレーキ1が操作されると、それにより発生させられたW/C圧に基づいてピストン19が紙面左方向に移動させられることでブレーキパッド11がブレーキディスク12に押圧され、ブレーキ力を発生させる。また、EPB2が操作されると、モータ10が駆動されることで平歯車15が回転させられ、それに伴って平歯車16および回転軸17が回転させられるため、雄ネジ溝17aおよび雌ネジ溝18aの噛合いに基づいて推進軸18がブレーキディスク12側(紙面左方向)に移動させられる。そして、それに伴ってピストン19も同方向に移動させられることでブレーキパッド11がブレーキディスク12に押圧され、ブレーキ力を発生させる。このため、サービスブレーキ1の操作とEPB2の操作の双方に対してブレーキ力を発生させる共用のブレーキ機構とすることが可能となる。
【0035】
また、サービスブレーキ1が作動されることでW/C圧が発生させられている状態でEPB2が操作されると、W/C圧によってピストン19が既に紙面左方向に移動させられているため、推進軸18に掛かる負荷が軽減される。このため、推進軸18がピストン19に当接するまではモータ10はほぼ無負荷状態で駆動される。そして、推進軸18がピストン19に当接するとピストン19を紙面左方向の押す押圧力が加えられ、EPB2によるブレーキ力が発生させられるようになっている。
【0036】
EPB−ECU9は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムにしたがってモータ10の回転を制御することにより駐車ブレーキ制御を行うものである。このEPB−ECU9が本発明の駐車ブレーキ制御装置に相当する。EPB−ECU9は、例えば車室内のインストルメントパネル(図示せず)に備えられた操作スイッチ(SW)23の操作状態に応じた信号や、車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ(前後Gセンサ)24およびW/C圧センサ25の検出信号を入力し、操作SW23の操作状態や車両の前後方向の加速度およびW/C圧に応じてモータ10を駆動する。さらに、EPB−ECU9は、インストルメントパネルに備えられたロック/リリース表示ランプ26に対してモータ10の駆動状態に応じて、ロック中であるかリリース中であるかを示す信号を出力する。
【0037】
具体的には、EPB−ECU9は、モータ10に流される電流(モータ電流)をモータ10の上流側もしくは下流側で検出するモータ電流検出、モータ10に印加されているモータ電圧を検出するモータ電圧検出、ロック制御を終了させるときのモータカット電流(目標電流値)を演算するモータカット電流演算、モータ電流がモータカット電流に達したか否かの判定、操作SW23の操作状態に基づいくモータ10の制御など、ロック・リリース制御を実行するための各種機能部を有している。このEPB−ECU9により操作SW23の状態やモータ電流に基づいてモータ10を正回転や逆回転させたりモータ10の回転を停止させることで、EPB2をロック・リリースする制御を行う。
【0038】
続いて、上記のように構成されたブレーキシステムを用いてEPB−ECU9が上記各種機能部および図示しない内蔵のROMに記憶されたプログラムに従って実行する駐車ブレーキ制御について説明する。図3は、駐車ブレーキ制御処理の詳細を示したフローチャートである。
【0039】
まず、ステップ100において時間計測用カウンタやフラグリセットなどの一般的な初期化処理を行ったのち、ステップ110に進み、時間tが経過したか否かを判定する。ここでいう時間tは、制御周期を規定するものである。つまり、初期化処理が終了してからの時間もしくは前回本ステップで肯定判定されたときからの経過時間が時間tが経過するまで繰り返し本ステップでの判定が行われるようにすることで、時間tが経過するごとに駐車ブレーキ制御が実行されるようにしている。
【0040】
続く、ステップ120では、操作SW23がオンしているか否かを判定する。操作SW23がオンの状態とはドライバがEPB2を作動させてロック状態にしようとしていることを意味し、オフの状態とはドライバがEPB2をリリース状態にしようとしていることを意味している。このため、本ステップで肯定判定されればステップ130に進み、ロック状態フラグFLOCKがオンしているか否かを判定する。ここで、ロック状態フラグFLOCKとは、EPB2を作動させてロック状態になったときにオンされるフラグであり、このロック状態フラグFLOCKがオンになっているときには既にEPB2の作動が完了して所望のブレーキ力が発生させられている状態となる。したがって、ここで否定判定された場合にのみステップ140のロック制御処理に進み、肯定判定された場合には既にロック制御処理が完了しているためステップ150に進む。
【0041】
ロック制御処理では、モータ10を回転させることによりEPB2を作動させ、EPB2にて所望のブレーキ力を発生させられる位置でモータ10の回転を停止し、この状態を維持するという処理を行う。図4にロック制御処理の詳細を示したフローチャートを示し、この図を参照してロック制御処理について説明する。
【0042】
まず、ステップ200では、目標W/C圧上限値TPWCUおよび目標W/C圧下限値TPWCLを設定する。目標W/C圧上限値TPWCUおよび目標W/C圧下限値TPWCLは、サービスブレーキ1により発生させされるW/C圧の許容範囲を規定するものであり、このW/C圧がこの許容範囲内に収まるようにすることで、駐車ブレーキ時に過度のW/C圧が発生することを抑制する。
【0043】
目標W/C圧下限値TPWCLは、駐車を維持できる最低限のブレーキ力に対応するW/C圧を意味しており、駐車させる場所の路面勾配等によって決まる値である。本実施形態では、路面勾配に対応する目標W/C圧下限値TPWCLの値をマップ化しておき、路面勾配もしく路面勾配相当量を求め、そのマップから求めた路面勾配もしくは路面勾配相当量と対応する値を抽出することにより目標W/C圧下限値TPWCLを求めている。一方、目標W/C圧上限値TPWCUは、上記許容範囲が目標W/C圧下限値TPWCLから所定幅となるように設定された値であり、目標W/C圧下限値TPWCL+定数αの値としてある。定数αの値は小さければ小さいほどブレーキパッド11にかかる力を少なくできるし、キャリパやブレーキ機構に対する耐久強度条件を緩和できるが、制御のロバスト性を考慮するとある程度の大きさであるのが好ましい。
【0044】
図5は、その一例を示したマップであり、路面勾配相当量となる車両前後Gと目標W/C圧下限値TPWCLおよび目標W/C圧上限値TPWCUの関係を示したマップである。この図に示すように、車両前後Gの大きさ、つまり路面勾配の大きさに比例して目標W/C圧下限値TPWCLが大きくなるようなマップとしてあり、目標W/C圧上限値TPWCUがそれよりも定数αだけシフトされた値に設定されることで許容範囲が所定幅となるようにしてある。このため、本実施形態の場合、前後Gセンサ24の検出信号に基づいて前後Gを演算し、演算した前後Gと対応する目標W/C圧下限値TPWCLを図5に示すマップから読み出すことにより、目標W/C圧下限値TPWCLを求めると共に、それに対して定数αを加算することで目標W/C圧上限値TPWCUを求めている。
【0045】
このようにして目標W/C圧上限値TPWCUおよび目標W/C圧下限値TPWCLが設定されると、ステップ205に進み、現在のW/C圧PWCが目標W/C圧下限値TPWCLよりも大きいか否かを判定する。ここで否定判定されれば、まだW/Cを加圧させても良いため、ステップ210に進んでESC−ECU8に対してW/C加圧指示を出力する。これにより、ESC−ECU8は図示しない増圧制御弁を連通状態のままにすることでW/Cが加圧可能な状態とする。一方、ここで肯定判定されれば、すでにW/Cを加圧する必要はなくなっているため、ステップ215に進む。
【0046】
ステップ215では、現在のW/C圧PWCが目標W/C圧上限値TPWCUよりも小さいか否かを判定する。ここで否定判定されれば、W/C圧が大きくなり過ぎていてW/Cを減圧させる必要があるため、ステップ220に進んでESC−ECU8に対してW/C減圧指示を出力する。これにより、ESC−ECU8は図示しない減圧制御弁を連通状態にすることでW/C内のブレーキ液を図示しないリザーバに移動させ、W/Cを減圧させる。一方、ここで肯定判定されれば、W/C圧が許容範囲内であるため、ステップ225に進む。そして、ESC−ECU8に対してW/C圧保持指示を出力する。これにより、ESC−ECU8は図示しない増圧制御弁および減圧制御弁を遮断状態にすることでW/C圧を保持させる。
【0047】
続いて、ステップ230に進み、ロック制御時間カウンタCTLが予め決められた最小ロック制御時間KTLMINを超えているか否かを判定する。ロック制御時間カウンタCTLとは、ロック制御が開始されてからの経過時間を計測するカウンタであり、ロック制御処理開始と同時にカウントを始める。最小ロック制御時間KTLMINとは、ロック制御に掛かると想定される最小時間のことであり、モータ10の回転速度などに応じて予め決まる値である。後述するステップ240のように、モータ電流IMOTORが目標電流値IMCUTに到達した時にEPB2が発生させたブレーキ力が所望の値に到達した、もしくは近づいたと判定するが、モータ10への電流供給初期時の突入電流などによりモータ電流IMOTORがその目標電流値IMCUTを超えることもあり得る。このため、ロック制御時間カウンタCTLを最小ロック制御時間KTLMINと比較することで、制御初期時をマスクでき、突入電流などによる誤判定を防止することが可能となる。
【0048】
したがって、ロック制御時間カウンタCTLが最小時間を超えていない状態であれば、まだロック制御が継続されることになるため、ステップ235に進んでリリース状態フラグをオフすると共にロック制御時間カウンタCTLをインクリメントし、モータロック駆動をオン、つまりモータ10を正回転させる。これにより、モータ10の正回転に伴って平歯車15が駆動され、平歯車16および回転軸17が回転し、雄ネジ溝17aおよび雌ネジ溝18aの噛合いに基づいて推進軸18がブレーキディスク12側に移動させられ、それに伴ってピストン19も同方向に移動させられることでブレーキパッド11がブレーキディスク12側に移動させられる。
【0049】
一方、ステップ230で肯定判定されると、ステップ240に進み、今回の制御周期のときのモータ電流IMOTORが目標電流値IMCUTを超えているか否かを判定する。モータ電流IMOTORはモータ10に加えられる負荷に応じて変動するが、本実施形態の場合にはモータ10に加えられる負荷はブレーキパッド11をブレーキディスク12に押し付けている押圧力に相当するため、モータ電流IMOTORが発生させた押圧力と対応した値となる。このため、モータ電流IMOTORが目標電流値IMCUTを超えていれば発生させた押圧力により所望のブレーキ力を発生させられた状態、つまりEPB2によりブレーキパッド11の摩擦面がブレーキディスク12の内壁面にある程度の力で押さえ付けられた状態となる。したがって、本ステップで肯定判定されるまではステップ235の処理を繰り返し、肯定判定されるとステップ245に進む。
【0050】
そして、ステップ245において、ロックが完了したことを意味するロック状態フラグFLOCKをオンすると共にロック制御時間カウンタCTLを0にし、モータロック駆動をオフ(停止)する。これにより、モータ10の回転が停止され、回転軸17の回転が停止させられて、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いによる摩擦力により、推進軸18が同じ位置に保持されるため、その時に発生させたブレーキ力が保持される。これにより、駐車中の車両の移動が規制される。さらに、そのとき発生しているW/C圧PWCをロック制御終了時W/C圧PLMCとして記憶しておく。
【0051】
その後、ステップ250に進み、ESC−ECU8に対してW/C圧非制御指示を出力する。これにより、サービスブレーキ1によるW/C圧が解除され、EPB2による駐車ブレーキにて駐車が維持される。このようにして、ロック制御処理が完了する。
【0052】
一方、図3のステップ120で否定判定された場合にはステップ160に進み、リリース状態フラグFRELがオンしているか否かを判定する。ここで、リリース状態フラグFRELとは、EPB2を作動させてリリース状態、つまりEPB2によるブレーキ力を解除した状態になったときにオンされるフラグであり、このリリース状態フラグFRELがオンになっているときには既にEPB2の作動が完了してブレーキ力が解除させられている状態となる。したがって、ここで否定判定された場合にのみステップ170のリリース制御処理に進み、肯定判定された場合には既にリリース制御処理が完了しているためステップ150に進む。
【0053】
リリース制御処理では、モータ10を回転させることによりEPB2を作動させ、EPB−ECU9にて発生させられているブレーキ力を解除するという処理を行う。図6にリリース制御処理の詳細を示したフローチャートを示し、この図を参照してリリース制御処理について説明する。
【0054】
まず、ステップ300では、リリース時目標W/C圧TPWCを設定する。リリース時には、ロック時よりも少し高いW/C圧を発生させることによりモータ10に掛かる負荷を軽減させる。このため、リリース時目標W/C圧TPWCをロック制御終了時W/C圧PLMCに対して定数Cを加えた値としている。
【0055】
続いて、ステップ305に進み、W/C圧PWCがリリース時目標W/C圧TPWCよりも大きいか否かを判定する。ここで否定判定されれば、まだW/Cを加圧させる必要があるため、ステップ310に進んでESC−ECU8に対してW/C加圧指示を出力する。これにより、ESC−ECU8は図示しない増圧制御弁を連通状態のままにすることでW/Cが加圧可能な状態とする。一方、ここで肯定判定されれば、すでにW/Cを加圧する必要はなくなっているため、ステップ315に進み、ESC−ECU8に対してW/C圧保持指示を出力する。これにより、ESC−ECU8は図示しない増圧制御弁および減圧制御弁を遮断状態にすることでW/C圧を保持させる。
【0056】
続いて、ステップ320に進み、リリース駆動時間KTRを設定する。リリース駆動時間KTRは、ロック制御時にモータ10によって推進軸18やピストン19およびブレーキパッド11を移動させた量が多いほど長くなる。このため、本実施形態では、図7に示すロック制御終了時W/C圧PLMCに対するリリース駆動時間KTRの特性MAP(PLMC)に基づいて、ロック制御終了時W/C圧PLMCを設定している。すなわち、ロック制御に掛けられたW/C圧が高ければそれだけピストン19がブレーキパッド11側に移動させられているため、それを初期位置に戻すのに時間が掛かる。このため、ロック制御終了時W/C圧PLMCが大きくなる程特性MAP(PLMC)が大きくなるようにし、その特性MAP(PLMC)をリリース駆動時間KTRとして設定している。
【0057】
この後、ステップ325に進み、リリース駆動時間を計測するリリース制御時間カウンタCTRがステップ320で設定されたリリース駆動時間KTRを超えているか否かを判定する。リリース制御時間カウンタCTRとは、リリース制御が開始されてからの経過時間を計測するカウンタであり、リリース制御処理開始と同時にカウントを始める。
【0058】
そして、リリース制御時間カウンタCTRがリリース駆動時間KTRを超えていない状態であれば、まだリリース制御が継続されることになるため、ステップ330に進んでロック状態フラグFLOCKをオフすると共にリリース制御時間カウンタCTRをインクリメントし、モータリリース駆動をオン、つまりモータ10を逆回転させる。これにより、モータ10の逆回転に伴って、回転軸17が回転され、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いによる摩擦力に基づいて推進軸18がブレーキディスク12から離れる方向に移動させられる。これにより、ピストン19およびブレーキパッド11も同方向に移動させられる。
【0059】
一方、ステップ325で肯定判定されると、リリースが完了したことを意味するリリース状態フラグFRELをオンすると共にリリース制御時間カウンタCTRを0にし、モータリリース駆動をオフする。したがって、モータ10の回転が停止され、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いによる摩擦力により、ブレーキパッド11がブレーキディスク12から離れた状態のままで保持される。その後、ステップ340に進み、ESC−ECU8に対してW/C圧非制御指示を出力する。このようにして、リリース制御処理が完了する。
【0060】
このようにして、ロック制御処理およびリリース制御処理が終了すると、図3のステップ150におけるロック・リリース表示処理を行う。図8にロック・リリース表示処理の詳細を示したフローチャートを示し、この図を参照してロック・リリース表示処理について説明する。
【0061】
ステップ400では、ロック状態フラグFLOCKがオンされているか否かを判定する。ここで肯定判定されればステップ405に進んでロック・リリース表示ランプ26を点灯させ、否定判定されればステップ410に進んでロック・リリース表示ランプ26を消灯する。このように、ロック状態であればロック・リリース表示ランプ26を点灯し、リリース状態もしくはリリース制御が開始された状態のときにはロック・リリース表示ランプ26を消灯する。これにより、ドライバにロック状態であるか否かを認識させることが可能となる。このようにして、ロック・リリース表示処理が完了し、これに伴って駐車ブレーキ制御処理が完了する。
【0062】
図9および図10は、このような駐車ブレーキ制御処理を実行したときのタイミングチャートであり、図9は、ロック制御時にドライバが高踏力でブレーキペダル3を踏み込んでいる場合のタイミングチャート、図10は、ロック制御時にドライバが低踏力でブレーキペダル3を踏み込んでいる場合のタイミングチャートである。
【0063】
図9に示されるように、ドライバの踏力に基づいて発生させられているW/C圧が目標W/C圧上限値TPWCUよりも高い場合、時点T1において操作SW23がオンされると同時にESC−ECU8に対してW/C圧減圧指示が出力される。これにより、図示しない減圧制御弁が連通状態とされ、W/C内のブレーキ液が図示しないリザーバに供給させられ、W/C圧が減少させられる。
【0064】
続いて、時点T2においてW/C圧が目標W/C圧上限値TPWCUよりも低下すると、ESC−ECU8に対してW/C圧保持指示が出力される。これにより、モータ10がオンされ、推進軸18がブレーキパッド11側に移動させられる。このとき、発生させられたW/C圧に基づいてピストン19がブレーキパッド11側に既に移動させられているため、推進軸18がピストン19に当接するまでモータ10に対する負荷が無い状態となり、モータ電流IMOTORは一定値となる。
【0065】
その後、時点T3において推進軸18がピストン19に当接すると、モータ10に対する負荷が発生するため、モータ電流IMOTORが上昇していき、時点T4においてモータ電流IMOTORが目標電流値IMCUTに達すると、モータロック駆動が停止させられる。これにより、ESC−ECU8に対してW/C圧非制御指示が出される。この後、W/C圧は、ドライバがブレーキペダル3を踏み込んでいるときの踏力に応じた値に戻る。
【0066】
また、図10に示されるように、ドライバの踏力に基づいて発生させられているW/C圧が目標W/C圧下限値TPWCLよりも低い場合、時点T1において操作SW23がオンされると同時にESC−ECU8に対してW/C圧増圧指示が出力される。これにより、図示しない増圧制御弁が連通状態にされた状態でモータが駆動され、ポンプ加圧によってW/C圧が増圧される。
【0067】
続いて、時点T2においてW/C圧が目標W/C圧下限値TPWCLよりも増加すると、ESC−ECU8に対してW/C圧保持指示が出力される。これにより、モータ10がオンされ、推進軸18がブレーキパッド11側に移動させられる。この後の動作に関しては、図9のときと同様であり、時点T3において推進軸18がピストン19に当接し、時点T4においてモータ電流IMOTORが目標電流値IMCUTに達すると、モータロック駆動が停止させられ、ESC−ECU8に対してW/C圧非制御指示が出される。
【0068】
以上説明したように、本実施形態では、駐車ブレーキにおけるロック制御時に、ドライバのブレーキペダル3の操作に基づくサービスブレーキ1により発生させられるW/C圧が大きい場合、W/C圧が目標W/C圧上限値TPWCUよりも低下させるようにしている。これにより、サービスブレーキ1により発生させられる大きなW/C圧によってブレーキパッド11に過大な力がかかることを防止できる。また、キャリパやブレーキ機構の体格重量等が大きくなることを防止でき、キャリパやブレーキ機構の小型化を図ることが可能となる。
【0069】
さらに、本実施形態の場合、駐車ブレーキにおけるロック制御時に、ドライバのブレーキペダル3の操作に基づくサービスブレーキ1により発生させられるW/C圧が小さい場合、アクチュエータ7によってW/C圧が目標W/C圧下限値TPWCLよりも高くなるようにしている。これにより、モータ10等の小型化を図ることが可能となる。すなわち、サービスブレーキ1により発生させられるW/C圧が小さい場合、応答性などを確保するためにモータ10等の大型化などが必要になる。しかしながら、本実施形態では、W/C圧が目標W/C圧下限値TPWCLよりも高くなるようにしているため、モータ10等を大型化する必要が無くなり、モータ10の小型化を図ることが可能となる。
【0070】
(他の実施形態)
上記実施形態では、図5に示すように目標W/C圧下限値TPWCLを駐車させる場所の路面勾配によって決めているが、駐車させる場所の路面勾配の他、車重およびブレーキパッド11の温度などによって決めることもできるし、それらのうちの複数に基づいて決めることもできる。具体的には、車重に関しては、重くなるほど大きな制動力が必要になるため、車重が重くなるのに比例して目標W/C圧下限値TPWCLが大きな値となるようにすることができる。また、ブレーキパッド11の温度に関しては、ブレーキパッド11が温度低下に伴って体積収縮が生じてブレーキ力が低下することから、ブレーキパッド11の温度が高いほど目標W/C圧下限値TPWCLが小さな値となるようにすることができる。
【0071】
なお、車重に関しては、従来よりサスペンションなどに備えられる車重センサによって測定できるし、乗員の着座を検出する乗員センサによって推定できるため、それらのセンサの検出信号をEPB−ECU9に入力するようにすれば良い。また、ブレーキパッド11の温度に関しては、温度センサを設置してその検出信号をEPB−ECU9に入力するようにしても良いし、EPB−ECU9にてブレーキ使用頻度から推定しても良い。
【0072】
また、上記実施形態では、W/C圧を検出するのにW/C圧センサ25を用いる場合について説明したが、W/C圧センサ25に代えてM/C圧センサを用いても良いし、ブレーキペダル3の操作量(踏力やストローク)から推定しても構わない。ただし、EPB2を作動させてロック制御を行う際にブレーキペダル3に加えれているのが低踏力であった場合、ESC−ECU8にてブレーキペダル3に加えられた踏力以上のW/C圧を発生させるようにしているため、M/C圧センサの検出信号やブレーキペダル3の操作量に基づくW/C圧推定では正確なW/C圧を得ることができない。このため、M/C圧センサやブレーキペダル3の操作量に基づいてW/C圧を検出するのであれば、ESC−ECU8によるW/C圧の増圧時に、増圧時間に応じたW/C圧の推定を行うようにするのが好ましい。
【0073】
また、上記実施形態では、モータ10をオンするタイミングをW/C圧が目標値に達してからにしていたが、操作SW23のオンと同時に駆動開始してもよい。つまり、モータ10をオフするタイミングでW/C圧が目標W/C圧上限値TPWCUと目標W/C圧下限値TPWCLの間となっていれば良い。これにより、ロック、リリース制御の応答時間を短くすることができる。
【0074】
なお、各図中に示したステップは、各種処理を実行する手段に対応するものである。すなわち、EPB−ECU9のうち、ステップ150のロック制御処理を実行する部分がロック制御手段、ステップ200の目標W/C圧上限値TPWCUや目標W/C圧下限値TPWCLを設定する部分が上限値設定手段や下限値設定手段、ステップ205の判定処理を実行する部分が第2判定手段、ステップ210のW/C加圧指示を実行する部分が増圧手段、ステップ215の判定処理を実行する部分が第1判定手段、ステップ220のW/C減圧指示を実行する部分が減圧手段、ステップ230〜ステップ245のモータロック駆動などを実行する部分が制御手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる駐車ブレーキ制御装置が適用された車両用のブレーキシステムの全体概要を示した模式図である。
【図2】図1に示したブレーキシステムに備えられる後輪系のブレーキ機構の断面模式図である。
【図3】駐車ブレーキ制御処理の詳細を示したフローチャートである。
【図4】ロック制御処理の詳細を示したフローチャートである。
【図5】路面勾配相当量となる車両前後Gと目標W/C圧下限値TPWCLおよび目標W/C圧上限値TPWCUの関係を示したマップである。
【図6】リリース制御処理の詳細を示したフローチャートである。
【図7】ロック制御終了時W/C圧PLMCに対するリリース駆動時間KTRの特性MAP(PLMC)を表したマップである。
【図8】ロック・リリース表示処理の詳細を示したフローチャートである。
【図9】駐車ブレーキ制御処理を実行したときのタイミングチャートである。
【図10】駐車ブレーキ制御処理を実行したときのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1…サービスブレーキ、2…EPB、5…M/C、6…W/C、7…ESCアクチュエータ、8…ESC−ECU、9…EPB−ECU、10…モータ、11…ブレーキパッド、12…ブレーキディスク、13…キャリパ、14…ボディ、14a…中空部、14b…通路、17…回転軸、17a…雄ネジ溝、18…推進軸、18a…雌ネジ溝、19…ピストン、23…操作SW、24…前後Gセンサ、24…W/C圧センサ、25…ロック・リリース表示ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ(10)が回転駆動されるとブレーキパッド(11)が車輪に取り付けられたブレーキディスク(12)に向かう方向に移動してブレーキ力が発生する第1ブレーキ手段(2)と、ドライバによってブレーキペダル(3)が操作されることによりホイールシリンダ圧が発生されると前記ブレーキパッド(11)が前記車輪に取り付けられたブレーキディスク(12)に向かう方向に移動してブレーキ力が発生する第2ブレーキ手段(1)とを有する車両に適用される駐車ブレーキ制御装置であって、
前記ホイールシリンダ圧の目標上限値(TPWCU)を設定する上限値設定手段(200)と、
前記第1ブレーキ手段(2)によって前記ブレーキ力を発生させるに当たり、前記第2ブレーキ手段によって発生されている前記ホイールシリンダ圧が前記目標上限値(TPWCU)を超えているか否かを判定する第1判定手段(215)と、
前記第1判定手段(215)によって前記ホイールシリンダ圧が前記目標上限値(TPWCU)より大きいと判定された場合、前記ホイールシリンダ圧を前記目標上限値(TPWCU)以下まで減圧する減圧手段(220)と、
前記ホイールシリンダ圧が前記目標上限値(TPWCU)以下までに低下させられたときに、前記第1ブレーキ手段(2)にて前記電動モータ(10)を回転駆動する制御手段(230〜245)と、を具備していることを特徴とする駐車ブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記ホイールシリンダ圧の目標下限値(TPWCL)を設定する下限値設定手段(200)と、
前記第1ブレーキ手段(2)によって前記ブレーキ力を発生させるに当たり、前記第2ブレーキ手段によって発生されている前記ホイールシリンダ圧が前記目標下限値(TPWCL)を超えているか否かを判定する第2判定手段(205)と、
前記第2判定手段(205)によって前記ホイールシリンダ圧が前記目標下限値(TPWCL)より小さいと判定された場合、前記ホイールシリンダ圧を前記目標下限値(TPWCL)以上まで増加する増圧手段(210)と、を含み、
前記制御手段(230〜245)は、前記ホイールシリンダ圧を前記目標下限値(TPWCL)から前記目標上限値(TPWCU)の範囲内のときに、前記第1ブレーキ手段(2)にて前記電動モータ(10)を回転駆動することを特徴とする請求項1に記載の駐車ブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記下限値設定手段(200)は、前記車両を駐車する路面勾配が大きいほど前記目標下限値(TPWCL)を大きな値に設定することを特徴とする請求項2に記載の駐車ブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記下限値設定手段(200)は、前記車両の車重が大きいほど前記目標下限値(TPWCL)を大きな値に設定することを特徴とする請求項2または3に記載の駐車ブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記下限値設定手段(200)は、前記ブレーキパッド(11)の温度が高いほど前記目標下限値(TPWCL)を大きな値に設定することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の駐車ブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記上限値設定手段(200)は、前記目標下限値(TPWCL)に対して所定値(α)を足した値を前記目標上限値(TPWCU)として設定することを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載の駐車ブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−286171(P2009−286171A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137963(P2008−137963)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】