高周波モジュール
【課題】通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路から電力増幅器までを構成する回路要素を一体化して小型化できるとともに、良好な特性を有する高周波モジュールを提供する。
【解決手段】複数の誘電体層11〜18を積層してなる積層基板に、複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路DIP10と、各送受信系を送信系TXと受信系RXに切り替えるスイッチ回路SW10、20と、各送信系TXの通過周波数での送信信号を増幅する高周波増幅用半導体素子及び整合回路MAT10、20からなる電力増幅器AMP10、20とを設けてなる。
【解決手段】複数の誘電体層11〜18を積層してなる積層基板に、複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路DIP10と、各送受信系を送信系TXと受信系RXに切り替えるスイッチ回路SW10、20と、各送信系TXの通過周波数での送信信号を増幅する高周波増幅用半導体素子及び整合回路MAT10、20からなる電力増幅器AMP10、20とを設けてなる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高周波モジュールに関し、特にデュアルバンド用移動無線端末に好適な送信用電力増幅器、スイッチ回路、カップラ(方向性結合器)、分波回路により構成される送信用の高周波モジュールに関するものである。
【0002】
【従来技術】近年、1つの送受信系を採用している通常の携帯電話機に対し、デュアルバンド方式を採用した携帯電話機が提案されている。デュアルバンド方式の携帯電話機は、1台の携帯電話機内に2つの送受信系を搭載するもので、地域性や使用目的等に合った送受信系を選択して送信することができるようにした利便性の高い機器として期待されているものである。
【0003】近年の欧州においては、通信帯域の異なる複数の送受信系としてGSM方式/DCS方式の双方を搭載したデュアルバンド方式の携帯電話機が採用されている。
【0004】図10は、GSM/DCSデュアルバンド方式の携帯電話機のブロック図(高周波回路部)を示す。高周波回路部は通過帯域の異なる2つの送受信系を各送受信系GSM/DCSに分波し、且つ送受信系DCS、GSMにおいてそれぞれ送信系TXと受信系RXとの切替を行うローパスフィルタ、スイッチ回路、及び分波回路からなるスイッチモジュールASM1を備えると共に、送受信系DCSの送信系TX、受信系RXと、送受信系GSMの送信系TX、受信系RXとを備える。
【0005】送信系TXは、各送受信系ともにカップラCOP100、200、電力増幅器AMP100、200を備える。電力増幅器AMP100、200は、電力増幅回路MMICと整合回路とからそれぞれ構成されている。
【0006】送信時には、TX側電力増幅器AMP100、またはAMP200で増幅された送信信号は、カップラCOP100またはCOP200、さらにローパスフィルタ、スイッチ回路、分波回路からなる高周波スイッチモジュールASM1を経由してアンテナANTから高周波信号として送信される。
【0007】一方、受信系RXは帯域通過フィルタBPF300、400および低ノイズ増幅器AMP300、400を備える。受信時には、アンテナANTで受信された高周波信号は高周波スイッチモジュールASM1を介して取り出され、帯域通過フィルタBPF300、またはBPF400にて受信帯域近傍の不要信号が除去された後、RX側低ノイズ増幅器AMP300、またはAMP400にて増幅される。
【0008】デュアルバンド方式の携帯電話機では各送受信系の構成に必要な回路を搭載する必要があるが、それぞれ個別の専用部品を用いて回路を構成すれば、機器の大型化、高コスト化を招来することとなる。そこで、共通可能な回路部分は、可及的に共通化するようにして機器の小型化、低コスト化を有利に展開する事が要請されている。またさらに、携帯電話の大部分の電力を消費する送信用電力増幅器の電力付加効率を向上させることが要求されている。
【0009】このような要求に対して、例えば、特開平11−225088号公報には小型化を図るマルチバンド用高周波スイッチモジュールASM1が開示されている。
【0010】図11は、このマルチバンド用高周波スイッチモジュールASM1を示すもので、通過帯域の異なる2つの送受信系を各送受信系に分けるノッチ回路からなる分波回路と、前記各送受信系を送信系と受信系に切りかえるスイッチ回路SWと、各送信系に配置されたローパスフィルタLPFとから構成され、前記分波回路はLC素子が並列接続されたノッチ回路を2つ用い、各ノッチ回路の一端同士は接続されて2系統の送受信系に共通の共通端子とされ、一方、各ノッチ回路の他端はスイッチ回路SWに接続されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】今日、デュアルバンド方式においては、高周波スイッチを構成する部品をプリント配線基板上に実装するタイプに代えて、上記特開平11−225088号公報に開示されるように、高周波スイッチを部分的に一体化してモジュール化することは行われているが、高周波スイッチモジュールおよび送信用電力増幅器、カップラの各部品をプリント基板上に実装しているため、かかる態様ではこれ以上の小型化は限界である。
【0012】また、高周波スイッチモジュール、送信用電力増幅器の各部品をプリント配線基板上にそれぞれ実装した場合、そのままでは携帯電話機の高周波回路部としての特性を満足することは稀で、部品間に特性調整用の回路がさらに必要となるという設計時の制約と、その付設回路分だけ機器の大型化を招き、さらにその付設回路分だけの電力損失が発生することによる電力増幅器の電力付加効率の劣化を招くという問題があった。
【0013】本発明は、かかる問題点を解消するためになされたもので、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路から電力増幅器までを構成する回路要素を一体化して小型化できるとともに、良好な特性を有する高周波モジュールを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の高周波モジュールは、複数の誘電体層を積層してなる積層基板に、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路と、該分波回路に接続され、前記各送受信系を送信系と受信系に切り替えるスイッチ回路と、該スイッチ回路に接続され、各送信系の通過帯域での送信信号を増幅する高周波増幅用半導体素子及び整合回路からなる電力増幅器とを設けてなることを特徴とする。
【0015】このような高周波モジュールでは、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路から電力増幅器までを構成する回路要素を一体化して小型化できるとともに、各部品を同時設計する事ができるため、モジュールとして最適な特性調整を行なうことができる。従って、各部品間に特性調整用の回路を設ける必要がなく、低ロス化が実現でき、且つ携帯無線端末の設計工程を短縮できるためコスト削減を図ることができる。
【0016】本発明の高周波モジュールでは、電力増幅器と、スイッチ回路との間に、干渉防止接地用パターンが設けられていることが望ましい。強力な電磁波を放出する電力増幅器と、各送受信系を送信系と受信系に切り替えるスイッチ回路との間に、干渉防止接地用パターンを設けたので、電力増幅器とスイッチ回路の間の電磁結合により信号が他の回路へ漏れることを防ぐことができ、良好な特性を有する高周波モジュールを提供することができる。
【0017】また、積層基板表面及び誘電体層間に干渉防止接地用パターンが設けられ、これらの干渉防止接地用パターンがビアホール導体で接続されていることが望ましい。これにより、電力増幅器の電磁波が積層基板内部を介してスイッチ回路等へ漏出することを有効に防止できる。
【0018】さらに、本発明では、高周波増幅用半導体素子の周辺部の積層基板表面及び/又は内部に、整合回路を構成する分布定数線路を形成してなることが望ましい。このような構成を採用することにより、電力増幅器の出力レベルの低下、電力付加効率の劣化を防ぐことができるとともに、高周波送信モジュールの小型化を図ることができる。
【0019】また、高周波増幅用半導体素子とスイッチ回路の間に、整合回路を構成する分布定数線路が形成されていることが望ましい。これにより、高周波増幅用半導体素子とスイッチ回路の間が最短経路で接続され、電力増幅器の出力レベルの低下、電力付加効率の劣化を防ぐことができるとともに、高周波送信モジュールの小型化を図ることができる。
【0020】さらに、本発明では、積層基板に、電力増幅器、スイッチ回路、分波回路が順次設けられていることが望ましい。高周波信号の流れる方向に電力増幅器、スイッチ回路、分波回路を順次設けることにより、高周波信号の流れる経路が最短となり、本モジュールの電気的性能を最大限まで引き出すことができる。
【0021】また、本発明では、整合回路を構成する分布定数線路と、スイッチ回路を構成する分布定数線路とが、積層基板の上方から見て重ならないことが望ましい。これにより、電磁波を放出する電力増幅器から電磁結合により信号がスイッチ回路へ漏れることを抑制することができる。
【0022】さらに、本発明では、分波回路が、誘電体層間に形成されたコンデンサ用導体パターンと分布定数線路を有し、スイッチ回路が、積層基板表面に搭載された集中定数素子を有し、電力増幅器が、前記積層基板表面のキャビティ内に設けられた高周波増幅用半導体素子と、前記誘電体層間及び積層基板表面に形成された分布定数線路と、前記積層基板表面に搭載された集中定数素子とを有することが望ましい。
【0023】さらに、本発明では、誘電体層の比誘電率が15〜25であることが望ましい。これにより、各回路を構成する分布定数線路長を短縮することができ、小型化できる。
【0024】また、本発明では、積層基板下面周辺部に、信号用端子パターン、接地用端子パターン及びバイアス用端子パターンが形成され、これらの端子パターンが、前記積層基板の側面に形成された端面スルーホール電極と接続され、前記積層基板下面中心部に、前記接地用端子パターンと接続された接地用パターンが形成され、該接地用パターン表面に複数箇所が露出するようにオーバーコートガラスが被覆され、前記接地用パターンにサーマルビアが接続されていることが望ましい。これにより、高周波モジュールの熱による出力レベル、電力付加効率などの特性劣化を防ぐことができる。
【0025】さらに、分波回路は、多層基板に内蔵されたローパスフィルタおよび/またはハイパスフィルタを有していることが望ましい。さらに、整合回路は、多層基板の最表面または内部に形成された分布定数線路およびコンデンサからなるローパスフィルタ機能を有していることが望ましい。これにより、高周波増幅用半導体素子から発生する不要信号を低減することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る高周波モジュールのブロック図である。高周波モジュールRFM10は、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系DCS、GSMに分ける分波回路DIP10と、各送受信系DCS、GSMを送信系TXと受信系RXとにそれぞれ切りかえるスイッチ回路SW10、SW20と、スイッチ回路SW10、SW20の各送信系TX側に設けられた、増幅器AMP10、AMP20の出力をモニタするカップラCOP10、COP20と、増幅器AMP10、AMP20を構成する整合回路MAT10、MAT20、増幅回路MMIC10、MMIC20で構成されている。
【0027】増幅回路MMIC10、MMIC20は、入力信号を増幅させる機能を持ち、小型化、高効率化を図るためにGaAs HBT(ガリウム砒素ヘテロジャンクションバイポーラトランジスタ)構造を有した半導体素子で形成されている。なお、本実施例ではGaAs HBT 半導体素子を増幅回路MMIC10、MMIC20に用いているが、P−HEMT構造のGaAs 半導体素子やシリコントランジスタで形成された半導体素子を用いてもよい。
【0028】整合回路MAT10、MAT20は、それぞれ増幅回路MMIC10、MMIC20の出力インピーダンスである0.5〜2Ωを30〜50Ωまでのインピーダンスに変換させる機能のほか、増幅回路MMIC10、MMIC20の増幅性能を最大限まで引き出すための機能、及びカップラCOP10、COP20と電力増幅器AMP10、AMP20間のインピーダンスを調整するためのものである。この電力増幅器AMP10、AMP20は前述の増幅回路MMIC10、MMIC20と整合回路MAT10、MAT20とから構成されている。
【0029】図2は、図1に示す高周波モジュールの回路図で、本発明の高周波モジュールはDCS方式(1800MHz帯)の送受信系とGSM方式(900MHz帯)の送受信系とから構成され、両者の信号は分波回路DIP10で回路的に分離される。
【0030】アンテナANTは分波回路DIP10を介してスイッチ回路SW10、SW20に接続されている。すなわち、アンテナANTから受信されたDCS方式の受信信号は分波回路DIP10を経てDCS側の送受信系へ導かれ、GSM方式の受信信号は分波回路DIP10を経てGSM側の送受信系に導かれる。
【0031】DCS側の回路構成について説明すると、スイッチ回路SW10は受信系RXと送信系TXとを切りかえるものである。送受信の切替は例えば時分割方式が採用されている。スイッチ回路SW10の送信系TX側には、増幅回路MMIC10と整合回路MAT10とから構成される増幅器AMP10と、整合回路MAT10と接続されているカップラCOP10が設けられている。
【0032】整合回路MAT10は分布定数線路STLD4、STLD5、STLD6、STLD7、STLD8、STLD9、インダクタLD3、コンデンサCD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11、CD12、CD13、CD14、チップ抵抗RD3からなり、分布定数線路STLD4、STLD5、インダクタLD3、コンデンサCD6、CD7によりローパスフィルタを構成している。このローパスフィルタは、増幅回路MMIC10の出力インピーダンス(0.5〜2Ω程度)とカップラCOP10の入力インピーダンス(30〜50Ω程度)とのインピーダンス整合を行うとともに、前記増幅回路MMIC10から発生する不要信号を低減するという機能を有する。
【0033】また、分布定数線路STLD7は、コンデンサCD10とによりショートスタブを構成し、増幅回路MMIC10の出力インピーダンス(0.5〜2Ω程度)とカップラCOP10の入力インピーダンス(30〜50Ω程度)とのインピーダンス整合を行うとともに、オープンスタブ回路を組むSTLD6とともに、高調波成分の抑制、および増幅回路MMIC10の増幅性能を最大限まで引き出す役割を担っている。
【0034】さらに、分布定数線路STLD8、STLD9は、3段アンプを構成する増幅回路MMIC10の中段アンプと最終段アンプ、および初段アンプと中段アンプとの間のインピーダンス整合を行なう役割を担っている。
【0035】コンデンサCD8は、増幅回路MMIC10の出力端子から増幅回路MMIC10へのフィードバック回路を形成しており、増幅回路MMIC10の発振防止の役割を持つ。コンデンサCD11、12、13、14はバイパスコンデンサとして機能する。また、コンデンサCD9は増幅回路MMIC10の入力側にDC成分が流れ込むことを防ぐ役割を持つ。
【0036】なお、増幅回路MMIC10には、増幅器AMP10、20の出力を制御するためのAPC回路、およびGSM側とDCS側の出力を切りかえるための回路も含まれている。なお、本機能は、増幅回路MMIC20に含んでいてもかまわない。
【0037】カップラCOP10は分布定数線路STLD2およびコンデンサCD15からなるローパスフィルタを構成している。このローパスフィルタにより、前記電力増幅器AMP10から発生する不要信号を低減することができる。なお、カップラCOP10は、ローパスフィルタの機能を必ずしも持たせる必要はなく、コンデンサCD15を設けずDCS帯域の周波数を通過させるための分布定数線路STLD2だけで構成しても良い。
【0038】また、結合線路STLD20を分布定数線路STLD2に近接させて、容量結合、及び磁気結合を形成することにより、送信回路TX側の増幅回路MMIC10からの出力の一部を取り出してモニタレベルとしてDCS Monitor端子に帰還させている。結合線路STLD20のスイッチ回路SW10側には、終端抵抗RD2が接続されている。
【0039】カップラCOP10と増幅器AMP10とは直流成分カット用コンデンサCD5を介して接続されている。
【0040】また、カップラCOP10は、スイッチ回路SW10を構成するPINダイオードDD1のカソードに接続されている。さらに、PINダイオードDD1のカソードは、高周波領域での通過特性を劣化させず且つPINダイオードDD1を駆動するための直流電流を流すために、インダクタLD2を介して接地されている。
【0041】また、PINダイオードDD1のアノードは、分波回路DIP10のローパスフィルタLPF10に接続されると共に、スイッチ回路SW10のLC回路LCDおよび直流成分カット用のコンデンサCD4を介してDCS側のRX端子に接続されている。このLC回路LCDは、インダクタとコンデンサから構成されており、インダクタが積層基板にチップ部品として搭載され、コンデンサは積層基板内に内蔵されている。LC回路LCDは分布定数線路で構成しても良い。
【0042】LC回路LCDとコンデンサCD4との接続点はPINダイオードDD2のカソードに接続され、PINダイオードDD2のアノードはコンデンサCD3を介して接地され、PINダイオードDD2のアノードとコンデンサCD3との接続点は、PINダイオードDD2に流れる電流を制御するための制御抵抗RD1を介してDCS側の制御端子Vcに接続されている。
【0043】直流成分カット用コンデンサCD5をカップラCOP10と増幅器AMP10との間に配置することで、DCS側の制御端子VcからPINダイオードDD1を介して流れ込む制御電流が、増幅器AMP10に流れ込むことを防ぐ事ができ、さらに増幅器AMP10を構成する増幅回路MMIC10のコレクタ電流が整合回路MAT10、インダクタLD2を介してGNDに流れ込む事を防ぐことができる。
【0044】また、直流成分カット用コンデンサCD5により、増幅器AMP10と、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10及びカップラCOP10とを分離することができ、モジュールとしての電気的不具合をそれぞれチェックすることが可能となる。なお、直流成分カット用コンデンサCD5は、スイッチ回路SW10とカップラCOP10との間に配置しても良く、この場合でも同様の効果を得ることができる。さらに、カップラCOP10と増幅器AMP10との間、及びスイッチ回路SW10とカップラCOP10との間の両方に直流成分カット用コンデンサCD5を配置することもできる。
【0045】分波回路DIP10は、ローパスフィルタLPF10とコンデンサCD1、CD2およびインダクタLD1とから形成されている。ローパスフィルタLPF10は、分布定数線路STLD1及び分布定数線路STLD1に平行に配置されたコンデンサCD16、その他のコンデンサにより構成されている。ローパスフィルタLPF10は、電力増幅器AMP10が発生する高調波成分を低減させるとともに、分波回路DIP10のインピーダンスの微調整を行なうという機能を有する。また、インダクタLD1は分波回路機能を持つとともに、ESD対策回路としても機能するよう設計されている。
【0046】次にGSM側の回路構成について説明すると、スイッチ回路SW20は受信系RXと送信系TXとを切りかえるものである。送受信の切替は例えば時分割方式が採用されている。スイッチ回路SW20の送信系TX側には、増幅回路MMIC20と整合回路MAT20とから構成される増幅器AMP20と、整合回路MAT20と接続されているカップラCOP20が設けられている。
【0047】整合回路MAT20は分布定数線路STLG4、STLG5、STLG6、STLG7と、コンデンサCG6、CG7、CG8、CG9、CG10、CG11、CG12と、チップ抵抗RG3からなり、分布定数線路STLG4、コンデンサCG6、CG7によりローパスフィルタを構成している。
【0048】このローパスフィルタにより、増幅回路MMIC20の出力インピーダンス(0.5〜2Ω程度)とカップラCOP20の入力インピーダンス(30〜50Ω程度)とのインピーダンス整合を行うとともに、前記増幅回路MMIC20から発生する不要信号を低減することができる。
【0049】分布定数線路STLG5もまた、コンデンサCG10とによりショートスタブを構成し、増幅回路MMIC20の出力インピーダンス(0.5〜2Ω程度)とカップラCOP20の入力インピーダンス(30〜50Ω程度)とのインピーダンス整合を行うとともに、高調波成分の抑制、および増幅回路MMIC20の増幅性能を最大限まで引き出す役割を担っている。
【0050】さらに、分布定数線路STLG6、STLG7は、3段アンプを構成する増幅回路MMIC20の中段アンプと最終段アンプ、および初段アンプと中段アンプとの間のインピーダンス整合を行なう役割を担っている。
【0051】コンデンサCG8は、増幅回路MMIC20の出力端子から増幅回路MMIC20へのフィードバック回路を形成しており、増幅回路MMIC20の発振防止の役割を持つ。コンデンサCG11、12はバイパスコンデンサとして機能する。また、コンデンサCG9は増幅回路MMIC20の入力側にDC成分が流れ込むことを防ぐ役割を持つ。
【0052】すなわち、整合回路MAT20は、増幅回路MMIC20の出力インピーダンス(0.5〜2Ω程度)とカップラCOP20の入力インピーダンス(30〜50Ω程度)とのインピーダンス整合を行うと共に、高調波成分の抑制を行い、増幅回路MMIC20の増幅性能を最大限まで引き出す役割を担っている。
【0053】カップラCOP20は分布定数線路STLG2およびコンデンサCG13からなるローパスフィルタを構成している。このローパスフィルタにより、前記電力増幅器AMP20から発生する不要信号を低減することができる。なお、カップラCOP20は、ローパスフィルタの機能を必ずしも持たせる必要はなく、コンデンサCG13を設けずにGSM帯域の周波数を通過させるための分布定数線路STLG2だけで構成しても良い。
【0054】また、結合線路(分布定数線路)STLG20を分布定数線路STLG2に近接させて、容量結合、及び磁気結合を形成することにより、送信系TX側の増幅回路MMIC20からの出力の一部を取り出してモニタレベルとしてGSM Monitor端子に帰還させている。結合線路STLG20のスイッチ回路SW20側には終端抵抗RG2により終端されている。
【0055】カップラCOP20と増幅器AMP20とは直流成分カット用コンデンサCG5を介して接続されている。また、カップラCOP20は、PINダイオードDG1のカソードに接続されている。さらに、PINダイオードDG1のカソードは、インダクタLG2を介して接地されている。
【0056】また、PINダイオードDG1のアノードは、分波回路DIP10のローパスフィルタLPF20に接続されると共に、LC回路LCGおよび直流成分カット用のコンデンサCG4を介してGSM側のRX端子に接続されている。LC回路LCGとコンデンサCG4との接続点はPINダイオードDG2のカソードに接続され、PINダイオードDG2のアノードはコンデンサCG3を介して接地され、PINダイオードDG2のアノードとコンデンサCG3との接続点は制御抵抗RG1を介してGSM側の制御端子Vcに接続されている。
【0057】LC回路LCGはインダクタとコンデンサとから構成されており、インダクタがチップ部品として積層基板に搭載され、コンデンサが積層基板内に内蔵されている。LC回路LCGは分布定数線路で構成してもよい。
【0058】直流成分カット用コンデンサCG5をカップラCOP20と増幅器AMP20との間に配置することで、GSM側の制御端子VcからPINダイオードDG1を介して流れ込む制御電流が、増幅器AMP20に流れ込むことを防ぐ事ができ、さらに増幅器AMP20を構成する増幅回路MMIC20のコレクタ電流が整合回路MAT20、インダクタLG2を介してGNDに流れ込む事を防ぐことができる。また、直流成分カット用コンデンサCG5により、増幅器AMP20と、分波回路DIP10、スイッチ回路SW20及びカップラCOP20とを分離することができ、モジュールとしての電気的不具合をそれぞれチェックすることが可能となる。なお、直流成分カット用コンデンサCG5は、スイッチ回路SW20とカップラCOP20との間に配置してもかまわない。
【0059】PINダイオードDG1とローパスフィルタLPF20との間には、直流成分カット用コンデンサCG2が配置されている。
【0060】GSM側に接続される分波回路DIP10は、ローパスフィルタLPF20とコンデンサCG1およびインダクタLG1、LG3とから形成されている。ローパスフィルタLPF20は、分布定数線路STLG1及び分布定数線路STLG1に平行に配置されたコンデンサCG14、その他のコンデンサにより構成されている。このローパスフィルタLPF20は、電力増幅器AMP20が発生する高調波成分を低減させるとともに、分波回路DIP10のインピーダンスの微調整を行なうという機能を有する。また、インダクタLG3はESD対策のための機能を持つように設計されている。
【0061】本発明の送信用高周波モジュールREM10では、誘電体層を複数積層してなる積層基板上に、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10、SW20、カップラCOP10、COP20、整合回路MAT10、MAT20を構成する、コンデンサ、インダクタ、ダイオード等のチップ部品(集中定数素子)を設け、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10、SW20、カップラCOP10、COP20、整合回路MAT10、MAT20の少なくとも一部が積層基板内に設けられている。
【0062】即ち、図2の形態では、分波回路DIP10の一部を構成するローパスフィルタLPF10、20が内蔵され、カップラCOP10、20を構成する分布定数線路STLD2、STLG2及び結合線路STLD20、STLG20、整合回路MAT10、20を構成する分布定数線路STLD7、STLD8、STLD9、STLG5、STLG6、STLG7が、誘電体層間に導体パターンとして内蔵されており、さらに整合回路MAT10、20を構成するSTLD4、STLD5、STLD6、STLG4が導体パターンとして積層基板の表面に形成されている。
【0063】また、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10、20、カップラCOP10、20、整合回路MAT10、20のそれぞれ一部を構成する例えばPINダイオードなどのチップ部品が最上層の誘電体層上(積層基板上面)に実装されている。
【0064】即ち、分波回路DIP10が、誘電体層間に形成されたコンデンサ用導体パターンと分布定数線路、チップ部品を有し、スイッチ回路SW10、20が、積層基板表面に搭載されたダイオード、抵抗、コンデンサ、インダクタのチップ部品と、誘電体層間に形成されたコンデンサ用導体パターンとを有し、カップラCOP10、20が、誘電体層間に形成された分布定数線路と、積層基板表面に搭載されたコンデンサ、抵抗のチップ部品とを有し、電力増幅器AMP10、AMP20が、積層基板表面のキャビティ内に設けられた高周波増幅用半導体素子と、誘電体層間に形成された分布定数線路と、積層基板表面に搭載されたコンデンサ、抵抗のチップ部品、分布定数線路とを有している。
【0065】具体的には、図2において、符号を囲んだ回路要素は誘電体層間に内蔵導体パターンとして形成されており、符号の下に下線を引いた素子はチップ部品(集中定数素子)として構成されている。
【0066】図3は、本発明に係る高周波モジュールの一部切欠斜視図である。図3に示すように、高周波モジュールはセラミックなどからなる同一寸法形状の8層の誘電体層11、12・・・18が積層されて積層基板が構成されており、この積層基板の上面及び側面は金属からなるシールドカバー10で被覆され、さらに積層基板の側面には所定位置に形成された複数の端面スルーホール電極21が上面から底面に亘るように形成されている。
【0067】また、シールドカバー10は、側面の所定位置に設けられた接地用の端面スルーホール電極21の少なくとも1つ以上と半田などの導体で固定されている。なお、図3では、誘電体層11〜18の上面の導体パターンは作図上一部省略されている。
【0068】誘電体層11〜18は低温焼成用のセラミックスで、セラミックグリーンシートの表面に導電ペーストを塗布して上述した各回路を構成する導体パターン(図2で符号を囲んだ回路要素)をそれぞれ形成した後、導体パターンが形成されたグリーンシートを積層し、所要の圧力と温度の下で熱圧着し焼成して形成されている。また、各誘電体層11〜18には複数の層にわたって回路を構成乃至は接続するために必要なビアホール導体が適宣形成されている。最上層の誘電体層11上には、各種のパターンのほか、PINダイオードなどチップ部品(集中定数素子)23が複数実装されている。
【0069】図4は、各誘電体層11〜18を分解して示すもので、(a)は誘電体層11の表面、(b)は誘電体層12の表面、(c)は誘電体層13の表面、(d)は誘電体層14の表面、(e)は誘電体層15の表面、(f)は誘電体層16の表面、(g)は誘電体層17の表面、(h)は誘電体層18の表面、(i)は誘電体層18の裏面を示している。尚、図4においてもパターン等が一部省略されている。また、図4(e)、(f)のスイッチ回路SW10、20のLC回路LCD、LCGとして分布定数線路を用いた例を記載した。
【0070】図4(a)には、整合回路MAT10、20を構成する分布定数線路およびチップ部品の配置と、増幅回路MMIC10、MMIC20の配置を示しており、この例では低温焼成セラミックで形成された積層基板の表面に形成された2つのキャビティ25内にそれぞれ増幅器AMP10、AMP20を構成する増幅回路MMIC10、MMIC20が配置され、それぞれの増幅回路MMIC10、MMIC20に接続される整合回路MAT10、MAT20を構成する、STLD4〜6、STLG4の分布定数線路と、コンデンサ等のチップ部品23がキャビティ25の周辺の誘電体層11表面に搭載され、整合回路MAT10、20を構成するSTLD7〜9、STLG5〜7の分布定数線路がキャビティ25の周辺の積層基板内部に形成されている。
【0071】また増幅器AMP10、AMP20を駆動、または制御するための入力端子、電源端子もまた、キャビティ25の周辺に配置されている。このような配置とする事により、無駄な配線の引きまわしを行なう必要がなくなり、増幅器AMP10、AMP20を駆動、または制御する電源電圧の低下またはインピーダンスのズレに起因する出力レベルの低下、電力付加効率の劣化を防ぐことができる。さらに、無駄な配線の引きまわしを行なう必要がなく、最適な配置が可能となるため、増幅器AMP10、AMP20の小型化を図る事ができ、しいては高周波送信モジュールの小型化を図る事ができる。
【0072】また、異なる周波数の送信信号(例えばGSMとDCS)を増幅する増幅器AMP10、AMP20を構成する整合回路MAT10、MAT20を、モジュール小型化のため近接して配置した場合、GSMの送信信号の高調波が整合回路MAT10とMAT20間の電磁結合により、DCSの整合回路MAT10を介してアンテナ端子から出力されてしまうという不具合が発生する。そのため、この例では近接する整合回路MAT10とMAT20の間に接地用パターン27を積層基板の表面、及び内部に配置している。
【0073】このような構造とすることにより、整合回路MAT20の分布定数線路から発生した電場は整合回路MAT10との間に形成された接地用パターン27との間に集中するため、整合回路MAT10を介してアンテナ端子ANTに出力される高調波を極減させることができる。さらに、接地用パターン27は、整合回路MAT10、MAT20を形成する接地用コンデンサのパッドとしても使用することができ、小型化に寄与することができる。接地用パターン27は、各誘電体層11〜18に形成されており、それらがビアホール導体により、誘電体層18の下面に形成された接地用パターン37に接続されている。
【0074】さらに図4(a)、(e)、(f)には、増幅器AMP10、AMP20を構成する整合回路MAT10、MAT20、及びカップラCOP10、COP20の配置が示されており、カップラCOP10、20、および整合回路MAT10、20が、積層基板の両側に、それぞれDCS側のカップラCOP10、整合回路MAT10と、GSM側のカップラCOP20、整合回路MAT20を分離して配置されている。図5に積層基板を上方から見た模式図を記載する。これによりDCS側回路とGSM側回路との電磁気的結合を低減することができ、電磁結合により信号が他の回路へ漏れることを防ぐことができる。
【0075】また、本発明のモジュールを構成するセラミック積層基板の長手方向の片側一端部に、増幅器AMP10、20が、他方側端部に、カップラCOP10、20、スイッチ回路SW10、20、分波回路DIP10が設けられ、分離されており、カップラCOP10、20間にスイッチ回路SW10、20、分波回路DIP10が設けられている。即ち、基板の長手方向に増幅器AMP10、20、スイッチ回路SW10、20、分波回路DIP10が、信号が流れる方向に最短経路となるように順次形成されている。このような配置とすることにより、高周波信号の流れが最短となり、本モジュールの電気的性能を最大限まで引き出すことが可能となる。
【0076】さらに、基板の長手方向に増幅器AMP10、20、スイッチ回路SW10、20、分波回路DIP10が順次形成され、整合回路MAT10、MAT20の分布定数線路と、カップラCOP10、20、スイッチ回路SW10、20の分布定数線路とが、基板上方から見て重ならないように形成されている。
【0077】そして、本発明の高周波モジュールでは、増幅器AMP10、20と、スイッチ回路SW10、20、カップラCOP10、20との間に干渉防止接地用パターン29が設けられている。この干渉防止接地用パターン29は、基板上面、誘電体層12上面にそれぞれ形成されており、これら干渉防止接地用パターン29はビアホール導体で接続され、さらに誘電体層18の裏面の接地用パターン37に接続されている。この干渉防止接地用パターン29により、電力増幅器AMP10、20と、該電力増幅器の出力をモニタするためのカップラCOP10、20および通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路DIP10、前記各送受信系を送信系と受信系に切り替えるスイッチ回路SW10、20とが分離され、電力増幅器AMP10、20と、カップラCOP10、20、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10、20との間の電磁結合により信号が他の回路へ漏れることを抑制することができる。
【0078】図6は、高周波モジュールを構成するセラミック積層基板の断面図を示すもので、増幅器AMP10、AMP20を構成する整合回路MAT10、MAT20がAの領域に、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路DIP10、各送受信系DCS、GSMを送信系TXと受信系RXとにそれぞれ切りかえるスイッチ回路SW10、20、カップラCOP10、20を構成する分布定数線路がBの領域に形成されており、増幅器AMP10、AMP20を構成する整合回路MAT10、MAT20の分布定数線路と、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10、20、カップラCOP10、20を構成する分布定数線路が、積層基板の積層方向からみて重ならないように形成されている。
【0079】このような構成とすることにより、整合回路MAT10、MAT20から電磁結合により信号が他の回路へ漏れることを防ぐことができる。
【0080】また、積層基板の表面から4層の誘電体層の一部が2段階の凹を2個隣設して形成するように取り除かれ(2段キャビティ)、表層から1段目の凹表面には信号用パターン及び接地用パターンが形成され、表層から2段目の凹表面上に形成された接地用パターン45上に増幅回路MMIC10、20が導電性ペースト47を用いてそれぞれ実装されている。また、増幅回路MMIC10、20の入出力電極が、誘電体層の表面から1段目の凹表面に形成された信号用パターン及び接地用パターンにワイヤにより接続されている。
【0081】また、積層基板の下面、即ち誘電体層18の裏面には、図4(i)に示すように、基板の最下層下面周辺部に外部との接続のための信号用端子パターン、接地用パターン、およびバイアス供給用端子パターン等の端子パターン35が形成され、さらに側面の所定位置には所要数の端面スルーホール電極21が上面から底面に亘るように形成され、低温焼成多層基板の最下層下面周辺部に形成されている信号用端子パターン、接地用端子パターン、およびバイアス供給用端子パターン等の端子パターン35と接続されている。
【0082】また、低温焼成多層基板の最下層下面中央部には、少なくとも1つ以上のLGA構造の接地用パターン37が形成されており、前記低温焼成多層基板の最下層下面周辺部に形成された接地用端子パターンとも接続されている。
【0083】さらに、低温焼成多層基板の最下層下面中央部に形成されたLGA構造の接地用パターン37は、図6に示したように前述した放熱を促進させるためのサーマルビア39と接続されている。これら低温焼成多層基板の最下層下面に形成された接地用パターン37は、例えば、携帯端末のプリント配線基板に接続される。
【0084】このように低温焼成多層基板の最下層下面中央部に形成されたLGA構造の接地用パターン37とサーマルビア39が接続されることにより、増幅回路MMIC10またはMMIC20に発生した熱はサーマルビア39、低温焼成多層基板の最下層下面中央部に形成されたLGA構造の接地用パターン37を介しプリント配線基板へと放熱されるため、増幅器AMP10、20の熱による出力レベル、電力付加効率などの特性劣化を防ぐことができる。
【0085】なお、前記低温焼成多層基板の最下層下面中央部に形成されたLGA構造の接地用パターン37は、最下層下面周辺部に形成された外部との接続のための信号用端子パターン、およびバイアス供給用端子パターンに接しない程度の1つの大きな接地用パターン37で形成しても良い。このように接地用パターン37が大きい場合、プリント配線基板との接続のための半田印刷が不均一となり、プリント配線基板との接続に不良が発生するため、最下層下面中央部に形成された接地用パターン37上に、少なくとも1つ以上の接地用パターン37が露出するようにオーバーコートガラス41を塗布して形成されている。図4(i)に斜線を引いた部分がオーバーコートガラス41とされている。
【0086】また、図6に示すように、複数層積層された誘電体層からなる積層体の表面一部を取り除き形成された2段キャビティ25の底面に増幅回路MMIC10又はMMIC20を搭載するための接地用パターン45が形成されており、接地用パターン45の下面から積層基板の裏面に形成されている接地用パターン37まで、複数本のサーマルビア39が形成されている。このような構造とすることにより、増幅回路MMIC10又はMMIC20の動作時に発生する熱の放散をサーマルビア39を介して促進させることができ、増幅器AMP10、20の熱による出力レベル、電力付加効率などの特性劣化を防ぐことができる。なお、放熱を促進させるサーマルビア39は、増幅回路MMIC10またはMMIC20の中で最も熱を発生させるトランジスタフィンガーの下面に、トランジスタフィンガーと同等以上の面積を占有するように形成されている。
【0087】また、サーマルビア39を形成する導体は、低熱抵抗導体である銀、又は銅を用いることにより、増幅器AMP10、20の熱による出力レベル、電力付加効率などの特性劣化を防ぐことができる。
【0088】高周波モジュールにおいて、本モジュールを構成する増幅回路MMIC10、MMIC20の駆動電圧が低下すると、増幅器AMP10、AMP20の出力レベル、および電力付加効率が劣化するため、増幅回路MMIC10、MMIC20に電圧を供給する役割を持つ整合回路MAT10、20を形成する分布定数線路、コンデンサ用導体パターン、ビアホール導体の導体材料として、低抵抗導体である銀、または銅を用いることが望ましい。これにより、増幅器AMP10、20の駆動電圧の低下を最小限に抑制することが可能となる。
【0089】さらに、増幅回路MMIC10、又はMMIC20をAgまたはAuSnなどの導電性ペースト47を用いてキャビティ25底面に固定するとともに、Auなどの細線(ワイア)により増幅回路MMIC10、および/又はMMIC20上の信号パターン、接地用パターンと基板面に形成した信号用パターン、接地用パターンとを電気的に接続することにより、小面積化、薄型化、低価格化を実現できる。
【0090】また、多層基板に設けたキャビティ25内はエポキシ系などの樹脂51で充填されている。これにより、キャビティ25内の増幅回路MMIC10、又はMMIC20は完全に固定され、また外部からの異物混入などを防止でき、増幅回路MMIC10、又はMMIC20を保護することができる。
【0091】尚、図7に示すように、増幅回路MMIC10、又はMMIC20をセラミック積層体表面に形成されたキャビティ55内に金あるいはアルミニウムなどのバンプ57を用いてフリップチップボンディング法を用いて搭載しても良い。この場合には、フリップチップボンディング法を用いて搭載することにより小面積化、薄型化、低価格化を促進できる。
【0092】低温焼成積層基板の比誘電率と波長との関係は、λg=ν0/{(εr×μr)1/2f0}の式にて示すことができる。高周波モジュールを構成する低温焼成積層基板は、通常よく高周波モジュールに使用される比誘電率が5〜7の誘電体材料に比べ、比誘電率が15〜25、特に18〜20の高誘電率の誘電体材料を用いて形成されている。このような誘電体材料としては、例えば、MgTiO3−CaTiO3を主成分し、これにB2O3、Li2CO3等の助剤を添加して構成されたものが知られている。これにより、各回路を構成する分布定数線路長を約57%に短縮することができ、小型化に有利となる。
【0093】また、低温焼成積層基板を形成する誘電体材料の磁器Qが1000以上(測定周波数2GHz)の高Q材料を用いることにより、誘電体損失を低減でき、しいては比誘電率15〜25の高誘電率材料を用いることによる波長短縮効果と相俟って、本高周波送信モジュールを構成する各フィルタの低損失下を図ることができる。これにより本高周波送信モジュールの高出力化、高効率化が可能となる。
【0094】図8は比誘電率18.7、磁器Qが2000(測定周波数2GHz)の高Q材料を用いてスイッチ回路を構成した場合と、比誘電率6.1、磁器Q500(測定周波数2GHz)の誘電体材料を用いてスイッチ回路を構成した場合を比較したもので、(a)はスイッチ回路を示す図、(b)はスイッチ回路のローパスフィルタ特性を示す図である。また、(a)のSL1の長さは、比誘電率18.7の場合には6.68mm、比誘電率6.1の場合には11.53mm、SL2の長さは、比誘電率18.7の場合には9.1mm、比誘電率6.1の場合には16mmであり、スイッチ回路のSL2のロスは、送信側で、比誘電率18.7の場合には0.034dB、比誘電率6.1の場合には0.074dB、受信側で、比誘電率18.7の場合には0.078dB、比誘電率6.1の場合には0.183dBであった。
【0095】このスイッチ回路全体における損失は、送信側で、比誘電率18.7の場合には0.254dB、比誘電率6.1の場合には0.484dB、受信側で、比誘電率18.7の場合には0.112dB、比誘電率6.1の場合には0.257dBであった。
【0096】これより、前記高誘電率、高Q材料を用いてスイッチ回路を構成することにより、小型化、および低損失化に寄与することがわかる。
【0097】なお、上記形態においては、STLD2とSTLD20、STLG2とSTLG20を平行に配置して、ラインの縁でカップリングする場合を示したが、例えば、積層体内において主分布定数線路STLD2、STLG2を上層の誘電体層に、結合線路STLD20、STLG20を1層または所要数だけ下層の誘電体層に配置し、あるいは逆に主分布定数線路STLD2、STLG2を下層の誘電体層に、結合線路STLD20、STLG20を1層または所要数だけ上層の誘電体層に配置してカップリングさせても同様である事はいうまでもない。
【0098】なお、本形態では図3に示すように8層の誘電体層からなる積層基板の例で説明したが、誘電体層の層数はこれに限定されない。
【0099】本発明の高周波モジュールでは、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路DIP10と、各送受信系DCS、GSMを送信系TXと受信系RXとにそれぞれ切りかえるスイッチ回路SW10、20と、スイッチ回路SW10、20の各送信系TX側に設けられた、カップラCOP10、20と、増幅器AMP10、20の整合回路MAT10、20と、増幅回路MMIC10、20とを同一積層基板にモジュール化することにより、従来の各部品をプリント配線基板上に実装して接続したものに比して約1/4以下にプリント配線基板における実装面積を削減でき、小型化を実現できる。しかも、小型化しても、電力増幅器AMP10、20と、カップラCOP10、20、スイッチ回路SW10、20との間に、干渉防止接地用パターン29を設けたので、電力増幅器AMP10、20とカップラCOP10、20等の間の電磁結合により信号が他の回路へ漏れることを防ぐことができる。
【0100】また、各部品を一体化した高周波モジュールをプリント配線基板に実装するため、プリント配線基板上に各部品を接続するための配線を形成する必要がなく、従って低ロス化、しいてはアンテナ端での電力付加効率を飛躍的に改善することができる。
【0101】さらに本発明の高周波モジュールでは各部品を同時設計する事ができるため、モジュールとして最適な特性調整を行なう事ができる。従って、各部品間に特性調整用の回路を設ける必要がなく、低ロス化が実現でき、且つ携帯無線端末の設計工程を短縮できるためコスト削減を図る事ができる。
【0102】そして、誘電体層として低温焼成セラミックを用いるため、複数の誘電体層と、その複数の誘電体層上の分布定数線路およびコンデンサを形成するコンデンサ導体パターン等とを一体焼成できる。従って、製造工程の短縮化が可能となり、コストダウンを図る事ができる。
【0103】図9は、本発明の他の形態を示すもので、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路DIP10が、多層基板に内蔵されたローパスフィルタおよびハイパスフィルタとを用いて構成されている。即ち、DCS側は、ハイパスフィルタHPF10とコンデンサCD1およびインダクタLD1とから構成されている。
【0104】ハイパスフィルタHPF10は、信号ラインに介設されたコンデンサCD2、このコンデンサCD2の両端に2本の平行な分布定数線路STLD1−1、STLD1−2及びこれらの他端の接続点と接地間に接続された短寸法の分布定数線路STLD1−3を備えると共にコンデンサCD2の両端と接地間に接続された2本のコンデンサCD2−1、CD2−2とから構成されている。このハイパスフィルタHPF10も積層基板に内蔵されている。ハイパスフィルタHPF10とダイオードDD1との間には、直流成分カット用コンデンサが配置されている。
【0105】またGSM側は、ローパスフィルタLPF20とコンデンサCG1およびインダクタLG1とから形成されている。ローパスフィルタLPF20は、分布定数線路STLG1及び分布定数線路STLG1に平行に配置されたコンデンサCG14、その他のコンデンサにより構成されている。
【0106】これにより、図2に示す分波回路DIP10と同様に通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分けることができるとともに、GSM側の通過減衰量を大きくとることが可能であるため、GSM帯域に対するアイソレーションをさらに大きく取ることができる。即ち、本高周波モジュールのアイソレーションをさらに改善することができる。
【0107】
【発明の効果】本発明の高周波モジュールは、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路から電力増幅器までを構成する回路要素を一体化することで、従来の各部品をプリント配線基板上に実装して接続したものに比して約1/4以下にプリント配線基板における実装面積を削減でき、小型化を実現できるとともに、アンテナ端子における電力付加効率を飛躍的に改善できる良好な特性を有する高周波モジュールを提供することができる。
【0108】また、本発明の高周波モジュールでは各部品を同時設計する事ができるため、モジュールとして最適な特性調整を行なう事ができる。従って、各部品間に特性調整用の回路を設ける必要がなく、低ロス化が実現でき、且つ携帯無線端末の設計工程を短縮できるためコスト削減を図る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高周波モジュールのブロック図である。
【図2】本発明の高周波モジュールの回路図である。
【図3】本発明の高周波モジュールの一部切欠斜視図である。
【図4】本発明の高周波モジュールの各誘電体層を示す平面図である。
【図5】本発明の高周波モジュールの回路配置を説明するための模式図である。
【図6】本発明の高周波モジュールの断面図である。
【図7】増幅回路をバンプで実装した例を示す断面図である。
【図8】(a)はスイッチ回路を示す回路図であり、(b)は誘電体層を高誘電率材料形成した場合と、低誘電率で形成した場合のローパスフィルタ特性を示すグラフである。
【図9】本発明の高周波モジュールの他の形態を示す回路図である。
【図10】従来の高周波モジュールのブロック図である。
【図11】従来のスイッチモジュールのブロック図である。
【符号の説明】
DIP10・・・分波回路
SW10、SW20・・・スイッチ回路
AMP10、AMP20・・・電力増幅器
MAT10、MAT20・・・整合回路
MMIC10、MMIC20・・・増幅回路
29・・・干渉防止接地用パターン
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高周波モジュールに関し、特にデュアルバンド用移動無線端末に好適な送信用電力増幅器、スイッチ回路、カップラ(方向性結合器)、分波回路により構成される送信用の高周波モジュールに関するものである。
【0002】
【従来技術】近年、1つの送受信系を採用している通常の携帯電話機に対し、デュアルバンド方式を採用した携帯電話機が提案されている。デュアルバンド方式の携帯電話機は、1台の携帯電話機内に2つの送受信系を搭載するもので、地域性や使用目的等に合った送受信系を選択して送信することができるようにした利便性の高い機器として期待されているものである。
【0003】近年の欧州においては、通信帯域の異なる複数の送受信系としてGSM方式/DCS方式の双方を搭載したデュアルバンド方式の携帯電話機が採用されている。
【0004】図10は、GSM/DCSデュアルバンド方式の携帯電話機のブロック図(高周波回路部)を示す。高周波回路部は通過帯域の異なる2つの送受信系を各送受信系GSM/DCSに分波し、且つ送受信系DCS、GSMにおいてそれぞれ送信系TXと受信系RXとの切替を行うローパスフィルタ、スイッチ回路、及び分波回路からなるスイッチモジュールASM1を備えると共に、送受信系DCSの送信系TX、受信系RXと、送受信系GSMの送信系TX、受信系RXとを備える。
【0005】送信系TXは、各送受信系ともにカップラCOP100、200、電力増幅器AMP100、200を備える。電力増幅器AMP100、200は、電力増幅回路MMICと整合回路とからそれぞれ構成されている。
【0006】送信時には、TX側電力増幅器AMP100、またはAMP200で増幅された送信信号は、カップラCOP100またはCOP200、さらにローパスフィルタ、スイッチ回路、分波回路からなる高周波スイッチモジュールASM1を経由してアンテナANTから高周波信号として送信される。
【0007】一方、受信系RXは帯域通過フィルタBPF300、400および低ノイズ増幅器AMP300、400を備える。受信時には、アンテナANTで受信された高周波信号は高周波スイッチモジュールASM1を介して取り出され、帯域通過フィルタBPF300、またはBPF400にて受信帯域近傍の不要信号が除去された後、RX側低ノイズ増幅器AMP300、またはAMP400にて増幅される。
【0008】デュアルバンド方式の携帯電話機では各送受信系の構成に必要な回路を搭載する必要があるが、それぞれ個別の専用部品を用いて回路を構成すれば、機器の大型化、高コスト化を招来することとなる。そこで、共通可能な回路部分は、可及的に共通化するようにして機器の小型化、低コスト化を有利に展開する事が要請されている。またさらに、携帯電話の大部分の電力を消費する送信用電力増幅器の電力付加効率を向上させることが要求されている。
【0009】このような要求に対して、例えば、特開平11−225088号公報には小型化を図るマルチバンド用高周波スイッチモジュールASM1が開示されている。
【0010】図11は、このマルチバンド用高周波スイッチモジュールASM1を示すもので、通過帯域の異なる2つの送受信系を各送受信系に分けるノッチ回路からなる分波回路と、前記各送受信系を送信系と受信系に切りかえるスイッチ回路SWと、各送信系に配置されたローパスフィルタLPFとから構成され、前記分波回路はLC素子が並列接続されたノッチ回路を2つ用い、各ノッチ回路の一端同士は接続されて2系統の送受信系に共通の共通端子とされ、一方、各ノッチ回路の他端はスイッチ回路SWに接続されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】今日、デュアルバンド方式においては、高周波スイッチを構成する部品をプリント配線基板上に実装するタイプに代えて、上記特開平11−225088号公報に開示されるように、高周波スイッチを部分的に一体化してモジュール化することは行われているが、高周波スイッチモジュールおよび送信用電力増幅器、カップラの各部品をプリント基板上に実装しているため、かかる態様ではこれ以上の小型化は限界である。
【0012】また、高周波スイッチモジュール、送信用電力増幅器の各部品をプリント配線基板上にそれぞれ実装した場合、そのままでは携帯電話機の高周波回路部としての特性を満足することは稀で、部品間に特性調整用の回路がさらに必要となるという設計時の制約と、その付設回路分だけ機器の大型化を招き、さらにその付設回路分だけの電力損失が発生することによる電力増幅器の電力付加効率の劣化を招くという問題があった。
【0013】本発明は、かかる問題点を解消するためになされたもので、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路から電力増幅器までを構成する回路要素を一体化して小型化できるとともに、良好な特性を有する高周波モジュールを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の高周波モジュールは、複数の誘電体層を積層してなる積層基板に、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路と、該分波回路に接続され、前記各送受信系を送信系と受信系に切り替えるスイッチ回路と、該スイッチ回路に接続され、各送信系の通過帯域での送信信号を増幅する高周波増幅用半導体素子及び整合回路からなる電力増幅器とを設けてなることを特徴とする。
【0015】このような高周波モジュールでは、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路から電力増幅器までを構成する回路要素を一体化して小型化できるとともに、各部品を同時設計する事ができるため、モジュールとして最適な特性調整を行なうことができる。従って、各部品間に特性調整用の回路を設ける必要がなく、低ロス化が実現でき、且つ携帯無線端末の設計工程を短縮できるためコスト削減を図ることができる。
【0016】本発明の高周波モジュールでは、電力増幅器と、スイッチ回路との間に、干渉防止接地用パターンが設けられていることが望ましい。強力な電磁波を放出する電力増幅器と、各送受信系を送信系と受信系に切り替えるスイッチ回路との間に、干渉防止接地用パターンを設けたので、電力増幅器とスイッチ回路の間の電磁結合により信号が他の回路へ漏れることを防ぐことができ、良好な特性を有する高周波モジュールを提供することができる。
【0017】また、積層基板表面及び誘電体層間に干渉防止接地用パターンが設けられ、これらの干渉防止接地用パターンがビアホール導体で接続されていることが望ましい。これにより、電力増幅器の電磁波が積層基板内部を介してスイッチ回路等へ漏出することを有効に防止できる。
【0018】さらに、本発明では、高周波増幅用半導体素子の周辺部の積層基板表面及び/又は内部に、整合回路を構成する分布定数線路を形成してなることが望ましい。このような構成を採用することにより、電力増幅器の出力レベルの低下、電力付加効率の劣化を防ぐことができるとともに、高周波送信モジュールの小型化を図ることができる。
【0019】また、高周波増幅用半導体素子とスイッチ回路の間に、整合回路を構成する分布定数線路が形成されていることが望ましい。これにより、高周波増幅用半導体素子とスイッチ回路の間が最短経路で接続され、電力増幅器の出力レベルの低下、電力付加効率の劣化を防ぐことができるとともに、高周波送信モジュールの小型化を図ることができる。
【0020】さらに、本発明では、積層基板に、電力増幅器、スイッチ回路、分波回路が順次設けられていることが望ましい。高周波信号の流れる方向に電力増幅器、スイッチ回路、分波回路を順次設けることにより、高周波信号の流れる経路が最短となり、本モジュールの電気的性能を最大限まで引き出すことができる。
【0021】また、本発明では、整合回路を構成する分布定数線路と、スイッチ回路を構成する分布定数線路とが、積層基板の上方から見て重ならないことが望ましい。これにより、電磁波を放出する電力増幅器から電磁結合により信号がスイッチ回路へ漏れることを抑制することができる。
【0022】さらに、本発明では、分波回路が、誘電体層間に形成されたコンデンサ用導体パターンと分布定数線路を有し、スイッチ回路が、積層基板表面に搭載された集中定数素子を有し、電力増幅器が、前記積層基板表面のキャビティ内に設けられた高周波増幅用半導体素子と、前記誘電体層間及び積層基板表面に形成された分布定数線路と、前記積層基板表面に搭載された集中定数素子とを有することが望ましい。
【0023】さらに、本発明では、誘電体層の比誘電率が15〜25であることが望ましい。これにより、各回路を構成する分布定数線路長を短縮することができ、小型化できる。
【0024】また、本発明では、積層基板下面周辺部に、信号用端子パターン、接地用端子パターン及びバイアス用端子パターンが形成され、これらの端子パターンが、前記積層基板の側面に形成された端面スルーホール電極と接続され、前記積層基板下面中心部に、前記接地用端子パターンと接続された接地用パターンが形成され、該接地用パターン表面に複数箇所が露出するようにオーバーコートガラスが被覆され、前記接地用パターンにサーマルビアが接続されていることが望ましい。これにより、高周波モジュールの熱による出力レベル、電力付加効率などの特性劣化を防ぐことができる。
【0025】さらに、分波回路は、多層基板に内蔵されたローパスフィルタおよび/またはハイパスフィルタを有していることが望ましい。さらに、整合回路は、多層基板の最表面または内部に形成された分布定数線路およびコンデンサからなるローパスフィルタ機能を有していることが望ましい。これにより、高周波増幅用半導体素子から発生する不要信号を低減することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る高周波モジュールのブロック図である。高周波モジュールRFM10は、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系DCS、GSMに分ける分波回路DIP10と、各送受信系DCS、GSMを送信系TXと受信系RXとにそれぞれ切りかえるスイッチ回路SW10、SW20と、スイッチ回路SW10、SW20の各送信系TX側に設けられた、増幅器AMP10、AMP20の出力をモニタするカップラCOP10、COP20と、増幅器AMP10、AMP20を構成する整合回路MAT10、MAT20、増幅回路MMIC10、MMIC20で構成されている。
【0027】増幅回路MMIC10、MMIC20は、入力信号を増幅させる機能を持ち、小型化、高効率化を図るためにGaAs HBT(ガリウム砒素ヘテロジャンクションバイポーラトランジスタ)構造を有した半導体素子で形成されている。なお、本実施例ではGaAs HBT 半導体素子を増幅回路MMIC10、MMIC20に用いているが、P−HEMT構造のGaAs 半導体素子やシリコントランジスタで形成された半導体素子を用いてもよい。
【0028】整合回路MAT10、MAT20は、それぞれ増幅回路MMIC10、MMIC20の出力インピーダンスである0.5〜2Ωを30〜50Ωまでのインピーダンスに変換させる機能のほか、増幅回路MMIC10、MMIC20の増幅性能を最大限まで引き出すための機能、及びカップラCOP10、COP20と電力増幅器AMP10、AMP20間のインピーダンスを調整するためのものである。この電力増幅器AMP10、AMP20は前述の増幅回路MMIC10、MMIC20と整合回路MAT10、MAT20とから構成されている。
【0029】図2は、図1に示す高周波モジュールの回路図で、本発明の高周波モジュールはDCS方式(1800MHz帯)の送受信系とGSM方式(900MHz帯)の送受信系とから構成され、両者の信号は分波回路DIP10で回路的に分離される。
【0030】アンテナANTは分波回路DIP10を介してスイッチ回路SW10、SW20に接続されている。すなわち、アンテナANTから受信されたDCS方式の受信信号は分波回路DIP10を経てDCS側の送受信系へ導かれ、GSM方式の受信信号は分波回路DIP10を経てGSM側の送受信系に導かれる。
【0031】DCS側の回路構成について説明すると、スイッチ回路SW10は受信系RXと送信系TXとを切りかえるものである。送受信の切替は例えば時分割方式が採用されている。スイッチ回路SW10の送信系TX側には、増幅回路MMIC10と整合回路MAT10とから構成される増幅器AMP10と、整合回路MAT10と接続されているカップラCOP10が設けられている。
【0032】整合回路MAT10は分布定数線路STLD4、STLD5、STLD6、STLD7、STLD8、STLD9、インダクタLD3、コンデンサCD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11、CD12、CD13、CD14、チップ抵抗RD3からなり、分布定数線路STLD4、STLD5、インダクタLD3、コンデンサCD6、CD7によりローパスフィルタを構成している。このローパスフィルタは、増幅回路MMIC10の出力インピーダンス(0.5〜2Ω程度)とカップラCOP10の入力インピーダンス(30〜50Ω程度)とのインピーダンス整合を行うとともに、前記増幅回路MMIC10から発生する不要信号を低減するという機能を有する。
【0033】また、分布定数線路STLD7は、コンデンサCD10とによりショートスタブを構成し、増幅回路MMIC10の出力インピーダンス(0.5〜2Ω程度)とカップラCOP10の入力インピーダンス(30〜50Ω程度)とのインピーダンス整合を行うとともに、オープンスタブ回路を組むSTLD6とともに、高調波成分の抑制、および増幅回路MMIC10の増幅性能を最大限まで引き出す役割を担っている。
【0034】さらに、分布定数線路STLD8、STLD9は、3段アンプを構成する増幅回路MMIC10の中段アンプと最終段アンプ、および初段アンプと中段アンプとの間のインピーダンス整合を行なう役割を担っている。
【0035】コンデンサCD8は、増幅回路MMIC10の出力端子から増幅回路MMIC10へのフィードバック回路を形成しており、増幅回路MMIC10の発振防止の役割を持つ。コンデンサCD11、12、13、14はバイパスコンデンサとして機能する。また、コンデンサCD9は増幅回路MMIC10の入力側にDC成分が流れ込むことを防ぐ役割を持つ。
【0036】なお、増幅回路MMIC10には、増幅器AMP10、20の出力を制御するためのAPC回路、およびGSM側とDCS側の出力を切りかえるための回路も含まれている。なお、本機能は、増幅回路MMIC20に含んでいてもかまわない。
【0037】カップラCOP10は分布定数線路STLD2およびコンデンサCD15からなるローパスフィルタを構成している。このローパスフィルタにより、前記電力増幅器AMP10から発生する不要信号を低減することができる。なお、カップラCOP10は、ローパスフィルタの機能を必ずしも持たせる必要はなく、コンデンサCD15を設けずDCS帯域の周波数を通過させるための分布定数線路STLD2だけで構成しても良い。
【0038】また、結合線路STLD20を分布定数線路STLD2に近接させて、容量結合、及び磁気結合を形成することにより、送信回路TX側の増幅回路MMIC10からの出力の一部を取り出してモニタレベルとしてDCS Monitor端子に帰還させている。結合線路STLD20のスイッチ回路SW10側には、終端抵抗RD2が接続されている。
【0039】カップラCOP10と増幅器AMP10とは直流成分カット用コンデンサCD5を介して接続されている。
【0040】また、カップラCOP10は、スイッチ回路SW10を構成するPINダイオードDD1のカソードに接続されている。さらに、PINダイオードDD1のカソードは、高周波領域での通過特性を劣化させず且つPINダイオードDD1を駆動するための直流電流を流すために、インダクタLD2を介して接地されている。
【0041】また、PINダイオードDD1のアノードは、分波回路DIP10のローパスフィルタLPF10に接続されると共に、スイッチ回路SW10のLC回路LCDおよび直流成分カット用のコンデンサCD4を介してDCS側のRX端子に接続されている。このLC回路LCDは、インダクタとコンデンサから構成されており、インダクタが積層基板にチップ部品として搭載され、コンデンサは積層基板内に内蔵されている。LC回路LCDは分布定数線路で構成しても良い。
【0042】LC回路LCDとコンデンサCD4との接続点はPINダイオードDD2のカソードに接続され、PINダイオードDD2のアノードはコンデンサCD3を介して接地され、PINダイオードDD2のアノードとコンデンサCD3との接続点は、PINダイオードDD2に流れる電流を制御するための制御抵抗RD1を介してDCS側の制御端子Vcに接続されている。
【0043】直流成分カット用コンデンサCD5をカップラCOP10と増幅器AMP10との間に配置することで、DCS側の制御端子VcからPINダイオードDD1を介して流れ込む制御電流が、増幅器AMP10に流れ込むことを防ぐ事ができ、さらに増幅器AMP10を構成する増幅回路MMIC10のコレクタ電流が整合回路MAT10、インダクタLD2を介してGNDに流れ込む事を防ぐことができる。
【0044】また、直流成分カット用コンデンサCD5により、増幅器AMP10と、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10及びカップラCOP10とを分離することができ、モジュールとしての電気的不具合をそれぞれチェックすることが可能となる。なお、直流成分カット用コンデンサCD5は、スイッチ回路SW10とカップラCOP10との間に配置しても良く、この場合でも同様の効果を得ることができる。さらに、カップラCOP10と増幅器AMP10との間、及びスイッチ回路SW10とカップラCOP10との間の両方に直流成分カット用コンデンサCD5を配置することもできる。
【0045】分波回路DIP10は、ローパスフィルタLPF10とコンデンサCD1、CD2およびインダクタLD1とから形成されている。ローパスフィルタLPF10は、分布定数線路STLD1及び分布定数線路STLD1に平行に配置されたコンデンサCD16、その他のコンデンサにより構成されている。ローパスフィルタLPF10は、電力増幅器AMP10が発生する高調波成分を低減させるとともに、分波回路DIP10のインピーダンスの微調整を行なうという機能を有する。また、インダクタLD1は分波回路機能を持つとともに、ESD対策回路としても機能するよう設計されている。
【0046】次にGSM側の回路構成について説明すると、スイッチ回路SW20は受信系RXと送信系TXとを切りかえるものである。送受信の切替は例えば時分割方式が採用されている。スイッチ回路SW20の送信系TX側には、増幅回路MMIC20と整合回路MAT20とから構成される増幅器AMP20と、整合回路MAT20と接続されているカップラCOP20が設けられている。
【0047】整合回路MAT20は分布定数線路STLG4、STLG5、STLG6、STLG7と、コンデンサCG6、CG7、CG8、CG9、CG10、CG11、CG12と、チップ抵抗RG3からなり、分布定数線路STLG4、コンデンサCG6、CG7によりローパスフィルタを構成している。
【0048】このローパスフィルタにより、増幅回路MMIC20の出力インピーダンス(0.5〜2Ω程度)とカップラCOP20の入力インピーダンス(30〜50Ω程度)とのインピーダンス整合を行うとともに、前記増幅回路MMIC20から発生する不要信号を低減することができる。
【0049】分布定数線路STLG5もまた、コンデンサCG10とによりショートスタブを構成し、増幅回路MMIC20の出力インピーダンス(0.5〜2Ω程度)とカップラCOP20の入力インピーダンス(30〜50Ω程度)とのインピーダンス整合を行うとともに、高調波成分の抑制、および増幅回路MMIC20の増幅性能を最大限まで引き出す役割を担っている。
【0050】さらに、分布定数線路STLG6、STLG7は、3段アンプを構成する増幅回路MMIC20の中段アンプと最終段アンプ、および初段アンプと中段アンプとの間のインピーダンス整合を行なう役割を担っている。
【0051】コンデンサCG8は、増幅回路MMIC20の出力端子から増幅回路MMIC20へのフィードバック回路を形成しており、増幅回路MMIC20の発振防止の役割を持つ。コンデンサCG11、12はバイパスコンデンサとして機能する。また、コンデンサCG9は増幅回路MMIC20の入力側にDC成分が流れ込むことを防ぐ役割を持つ。
【0052】すなわち、整合回路MAT20は、増幅回路MMIC20の出力インピーダンス(0.5〜2Ω程度)とカップラCOP20の入力インピーダンス(30〜50Ω程度)とのインピーダンス整合を行うと共に、高調波成分の抑制を行い、増幅回路MMIC20の増幅性能を最大限まで引き出す役割を担っている。
【0053】カップラCOP20は分布定数線路STLG2およびコンデンサCG13からなるローパスフィルタを構成している。このローパスフィルタにより、前記電力増幅器AMP20から発生する不要信号を低減することができる。なお、カップラCOP20は、ローパスフィルタの機能を必ずしも持たせる必要はなく、コンデンサCG13を設けずにGSM帯域の周波数を通過させるための分布定数線路STLG2だけで構成しても良い。
【0054】また、結合線路(分布定数線路)STLG20を分布定数線路STLG2に近接させて、容量結合、及び磁気結合を形成することにより、送信系TX側の増幅回路MMIC20からの出力の一部を取り出してモニタレベルとしてGSM Monitor端子に帰還させている。結合線路STLG20のスイッチ回路SW20側には終端抵抗RG2により終端されている。
【0055】カップラCOP20と増幅器AMP20とは直流成分カット用コンデンサCG5を介して接続されている。また、カップラCOP20は、PINダイオードDG1のカソードに接続されている。さらに、PINダイオードDG1のカソードは、インダクタLG2を介して接地されている。
【0056】また、PINダイオードDG1のアノードは、分波回路DIP10のローパスフィルタLPF20に接続されると共に、LC回路LCGおよび直流成分カット用のコンデンサCG4を介してGSM側のRX端子に接続されている。LC回路LCGとコンデンサCG4との接続点はPINダイオードDG2のカソードに接続され、PINダイオードDG2のアノードはコンデンサCG3を介して接地され、PINダイオードDG2のアノードとコンデンサCG3との接続点は制御抵抗RG1を介してGSM側の制御端子Vcに接続されている。
【0057】LC回路LCGはインダクタとコンデンサとから構成されており、インダクタがチップ部品として積層基板に搭載され、コンデンサが積層基板内に内蔵されている。LC回路LCGは分布定数線路で構成してもよい。
【0058】直流成分カット用コンデンサCG5をカップラCOP20と増幅器AMP20との間に配置することで、GSM側の制御端子VcからPINダイオードDG1を介して流れ込む制御電流が、増幅器AMP20に流れ込むことを防ぐ事ができ、さらに増幅器AMP20を構成する増幅回路MMIC20のコレクタ電流が整合回路MAT20、インダクタLG2を介してGNDに流れ込む事を防ぐことができる。また、直流成分カット用コンデンサCG5により、増幅器AMP20と、分波回路DIP10、スイッチ回路SW20及びカップラCOP20とを分離することができ、モジュールとしての電気的不具合をそれぞれチェックすることが可能となる。なお、直流成分カット用コンデンサCG5は、スイッチ回路SW20とカップラCOP20との間に配置してもかまわない。
【0059】PINダイオードDG1とローパスフィルタLPF20との間には、直流成分カット用コンデンサCG2が配置されている。
【0060】GSM側に接続される分波回路DIP10は、ローパスフィルタLPF20とコンデンサCG1およびインダクタLG1、LG3とから形成されている。ローパスフィルタLPF20は、分布定数線路STLG1及び分布定数線路STLG1に平行に配置されたコンデンサCG14、その他のコンデンサにより構成されている。このローパスフィルタLPF20は、電力増幅器AMP20が発生する高調波成分を低減させるとともに、分波回路DIP10のインピーダンスの微調整を行なうという機能を有する。また、インダクタLG3はESD対策のための機能を持つように設計されている。
【0061】本発明の送信用高周波モジュールREM10では、誘電体層を複数積層してなる積層基板上に、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10、SW20、カップラCOP10、COP20、整合回路MAT10、MAT20を構成する、コンデンサ、インダクタ、ダイオード等のチップ部品(集中定数素子)を設け、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10、SW20、カップラCOP10、COP20、整合回路MAT10、MAT20の少なくとも一部が積層基板内に設けられている。
【0062】即ち、図2の形態では、分波回路DIP10の一部を構成するローパスフィルタLPF10、20が内蔵され、カップラCOP10、20を構成する分布定数線路STLD2、STLG2及び結合線路STLD20、STLG20、整合回路MAT10、20を構成する分布定数線路STLD7、STLD8、STLD9、STLG5、STLG6、STLG7が、誘電体層間に導体パターンとして内蔵されており、さらに整合回路MAT10、20を構成するSTLD4、STLD5、STLD6、STLG4が導体パターンとして積層基板の表面に形成されている。
【0063】また、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10、20、カップラCOP10、20、整合回路MAT10、20のそれぞれ一部を構成する例えばPINダイオードなどのチップ部品が最上層の誘電体層上(積層基板上面)に実装されている。
【0064】即ち、分波回路DIP10が、誘電体層間に形成されたコンデンサ用導体パターンと分布定数線路、チップ部品を有し、スイッチ回路SW10、20が、積層基板表面に搭載されたダイオード、抵抗、コンデンサ、インダクタのチップ部品と、誘電体層間に形成されたコンデンサ用導体パターンとを有し、カップラCOP10、20が、誘電体層間に形成された分布定数線路と、積層基板表面に搭載されたコンデンサ、抵抗のチップ部品とを有し、電力増幅器AMP10、AMP20が、積層基板表面のキャビティ内に設けられた高周波増幅用半導体素子と、誘電体層間に形成された分布定数線路と、積層基板表面に搭載されたコンデンサ、抵抗のチップ部品、分布定数線路とを有している。
【0065】具体的には、図2において、符号を囲んだ回路要素は誘電体層間に内蔵導体パターンとして形成されており、符号の下に下線を引いた素子はチップ部品(集中定数素子)として構成されている。
【0066】図3は、本発明に係る高周波モジュールの一部切欠斜視図である。図3に示すように、高周波モジュールはセラミックなどからなる同一寸法形状の8層の誘電体層11、12・・・18が積層されて積層基板が構成されており、この積層基板の上面及び側面は金属からなるシールドカバー10で被覆され、さらに積層基板の側面には所定位置に形成された複数の端面スルーホール電極21が上面から底面に亘るように形成されている。
【0067】また、シールドカバー10は、側面の所定位置に設けられた接地用の端面スルーホール電極21の少なくとも1つ以上と半田などの導体で固定されている。なお、図3では、誘電体層11〜18の上面の導体パターンは作図上一部省略されている。
【0068】誘電体層11〜18は低温焼成用のセラミックスで、セラミックグリーンシートの表面に導電ペーストを塗布して上述した各回路を構成する導体パターン(図2で符号を囲んだ回路要素)をそれぞれ形成した後、導体パターンが形成されたグリーンシートを積層し、所要の圧力と温度の下で熱圧着し焼成して形成されている。また、各誘電体層11〜18には複数の層にわたって回路を構成乃至は接続するために必要なビアホール導体が適宣形成されている。最上層の誘電体層11上には、各種のパターンのほか、PINダイオードなどチップ部品(集中定数素子)23が複数実装されている。
【0069】図4は、各誘電体層11〜18を分解して示すもので、(a)は誘電体層11の表面、(b)は誘電体層12の表面、(c)は誘電体層13の表面、(d)は誘電体層14の表面、(e)は誘電体層15の表面、(f)は誘電体層16の表面、(g)は誘電体層17の表面、(h)は誘電体層18の表面、(i)は誘電体層18の裏面を示している。尚、図4においてもパターン等が一部省略されている。また、図4(e)、(f)のスイッチ回路SW10、20のLC回路LCD、LCGとして分布定数線路を用いた例を記載した。
【0070】図4(a)には、整合回路MAT10、20を構成する分布定数線路およびチップ部品の配置と、増幅回路MMIC10、MMIC20の配置を示しており、この例では低温焼成セラミックで形成された積層基板の表面に形成された2つのキャビティ25内にそれぞれ増幅器AMP10、AMP20を構成する増幅回路MMIC10、MMIC20が配置され、それぞれの増幅回路MMIC10、MMIC20に接続される整合回路MAT10、MAT20を構成する、STLD4〜6、STLG4の分布定数線路と、コンデンサ等のチップ部品23がキャビティ25の周辺の誘電体層11表面に搭載され、整合回路MAT10、20を構成するSTLD7〜9、STLG5〜7の分布定数線路がキャビティ25の周辺の積層基板内部に形成されている。
【0071】また増幅器AMP10、AMP20を駆動、または制御するための入力端子、電源端子もまた、キャビティ25の周辺に配置されている。このような配置とする事により、無駄な配線の引きまわしを行なう必要がなくなり、増幅器AMP10、AMP20を駆動、または制御する電源電圧の低下またはインピーダンスのズレに起因する出力レベルの低下、電力付加効率の劣化を防ぐことができる。さらに、無駄な配線の引きまわしを行なう必要がなく、最適な配置が可能となるため、増幅器AMP10、AMP20の小型化を図る事ができ、しいては高周波送信モジュールの小型化を図る事ができる。
【0072】また、異なる周波数の送信信号(例えばGSMとDCS)を増幅する増幅器AMP10、AMP20を構成する整合回路MAT10、MAT20を、モジュール小型化のため近接して配置した場合、GSMの送信信号の高調波が整合回路MAT10とMAT20間の電磁結合により、DCSの整合回路MAT10を介してアンテナ端子から出力されてしまうという不具合が発生する。そのため、この例では近接する整合回路MAT10とMAT20の間に接地用パターン27を積層基板の表面、及び内部に配置している。
【0073】このような構造とすることにより、整合回路MAT20の分布定数線路から発生した電場は整合回路MAT10との間に形成された接地用パターン27との間に集中するため、整合回路MAT10を介してアンテナ端子ANTに出力される高調波を極減させることができる。さらに、接地用パターン27は、整合回路MAT10、MAT20を形成する接地用コンデンサのパッドとしても使用することができ、小型化に寄与することができる。接地用パターン27は、各誘電体層11〜18に形成されており、それらがビアホール導体により、誘電体層18の下面に形成された接地用パターン37に接続されている。
【0074】さらに図4(a)、(e)、(f)には、増幅器AMP10、AMP20を構成する整合回路MAT10、MAT20、及びカップラCOP10、COP20の配置が示されており、カップラCOP10、20、および整合回路MAT10、20が、積層基板の両側に、それぞれDCS側のカップラCOP10、整合回路MAT10と、GSM側のカップラCOP20、整合回路MAT20を分離して配置されている。図5に積層基板を上方から見た模式図を記載する。これによりDCS側回路とGSM側回路との電磁気的結合を低減することができ、電磁結合により信号が他の回路へ漏れることを防ぐことができる。
【0075】また、本発明のモジュールを構成するセラミック積層基板の長手方向の片側一端部に、増幅器AMP10、20が、他方側端部に、カップラCOP10、20、スイッチ回路SW10、20、分波回路DIP10が設けられ、分離されており、カップラCOP10、20間にスイッチ回路SW10、20、分波回路DIP10が設けられている。即ち、基板の長手方向に増幅器AMP10、20、スイッチ回路SW10、20、分波回路DIP10が、信号が流れる方向に最短経路となるように順次形成されている。このような配置とすることにより、高周波信号の流れが最短となり、本モジュールの電気的性能を最大限まで引き出すことが可能となる。
【0076】さらに、基板の長手方向に増幅器AMP10、20、スイッチ回路SW10、20、分波回路DIP10が順次形成され、整合回路MAT10、MAT20の分布定数線路と、カップラCOP10、20、スイッチ回路SW10、20の分布定数線路とが、基板上方から見て重ならないように形成されている。
【0077】そして、本発明の高周波モジュールでは、増幅器AMP10、20と、スイッチ回路SW10、20、カップラCOP10、20との間に干渉防止接地用パターン29が設けられている。この干渉防止接地用パターン29は、基板上面、誘電体層12上面にそれぞれ形成されており、これら干渉防止接地用パターン29はビアホール導体で接続され、さらに誘電体層18の裏面の接地用パターン37に接続されている。この干渉防止接地用パターン29により、電力増幅器AMP10、20と、該電力増幅器の出力をモニタするためのカップラCOP10、20および通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路DIP10、前記各送受信系を送信系と受信系に切り替えるスイッチ回路SW10、20とが分離され、電力増幅器AMP10、20と、カップラCOP10、20、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10、20との間の電磁結合により信号が他の回路へ漏れることを抑制することができる。
【0078】図6は、高周波モジュールを構成するセラミック積層基板の断面図を示すもので、増幅器AMP10、AMP20を構成する整合回路MAT10、MAT20がAの領域に、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路DIP10、各送受信系DCS、GSMを送信系TXと受信系RXとにそれぞれ切りかえるスイッチ回路SW10、20、カップラCOP10、20を構成する分布定数線路がBの領域に形成されており、増幅器AMP10、AMP20を構成する整合回路MAT10、MAT20の分布定数線路と、分波回路DIP10、スイッチ回路SW10、20、カップラCOP10、20を構成する分布定数線路が、積層基板の積層方向からみて重ならないように形成されている。
【0079】このような構成とすることにより、整合回路MAT10、MAT20から電磁結合により信号が他の回路へ漏れることを防ぐことができる。
【0080】また、積層基板の表面から4層の誘電体層の一部が2段階の凹を2個隣設して形成するように取り除かれ(2段キャビティ)、表層から1段目の凹表面には信号用パターン及び接地用パターンが形成され、表層から2段目の凹表面上に形成された接地用パターン45上に増幅回路MMIC10、20が導電性ペースト47を用いてそれぞれ実装されている。また、増幅回路MMIC10、20の入出力電極が、誘電体層の表面から1段目の凹表面に形成された信号用パターン及び接地用パターンにワイヤにより接続されている。
【0081】また、積層基板の下面、即ち誘電体層18の裏面には、図4(i)に示すように、基板の最下層下面周辺部に外部との接続のための信号用端子パターン、接地用パターン、およびバイアス供給用端子パターン等の端子パターン35が形成され、さらに側面の所定位置には所要数の端面スルーホール電極21が上面から底面に亘るように形成され、低温焼成多層基板の最下層下面周辺部に形成されている信号用端子パターン、接地用端子パターン、およびバイアス供給用端子パターン等の端子パターン35と接続されている。
【0082】また、低温焼成多層基板の最下層下面中央部には、少なくとも1つ以上のLGA構造の接地用パターン37が形成されており、前記低温焼成多層基板の最下層下面周辺部に形成された接地用端子パターンとも接続されている。
【0083】さらに、低温焼成多層基板の最下層下面中央部に形成されたLGA構造の接地用パターン37は、図6に示したように前述した放熱を促進させるためのサーマルビア39と接続されている。これら低温焼成多層基板の最下層下面に形成された接地用パターン37は、例えば、携帯端末のプリント配線基板に接続される。
【0084】このように低温焼成多層基板の最下層下面中央部に形成されたLGA構造の接地用パターン37とサーマルビア39が接続されることにより、増幅回路MMIC10またはMMIC20に発生した熱はサーマルビア39、低温焼成多層基板の最下層下面中央部に形成されたLGA構造の接地用パターン37を介しプリント配線基板へと放熱されるため、増幅器AMP10、20の熱による出力レベル、電力付加効率などの特性劣化を防ぐことができる。
【0085】なお、前記低温焼成多層基板の最下層下面中央部に形成されたLGA構造の接地用パターン37は、最下層下面周辺部に形成された外部との接続のための信号用端子パターン、およびバイアス供給用端子パターンに接しない程度の1つの大きな接地用パターン37で形成しても良い。このように接地用パターン37が大きい場合、プリント配線基板との接続のための半田印刷が不均一となり、プリント配線基板との接続に不良が発生するため、最下層下面中央部に形成された接地用パターン37上に、少なくとも1つ以上の接地用パターン37が露出するようにオーバーコートガラス41を塗布して形成されている。図4(i)に斜線を引いた部分がオーバーコートガラス41とされている。
【0086】また、図6に示すように、複数層積層された誘電体層からなる積層体の表面一部を取り除き形成された2段キャビティ25の底面に増幅回路MMIC10又はMMIC20を搭載するための接地用パターン45が形成されており、接地用パターン45の下面から積層基板の裏面に形成されている接地用パターン37まで、複数本のサーマルビア39が形成されている。このような構造とすることにより、増幅回路MMIC10又はMMIC20の動作時に発生する熱の放散をサーマルビア39を介して促進させることができ、増幅器AMP10、20の熱による出力レベル、電力付加効率などの特性劣化を防ぐことができる。なお、放熱を促進させるサーマルビア39は、増幅回路MMIC10またはMMIC20の中で最も熱を発生させるトランジスタフィンガーの下面に、トランジスタフィンガーと同等以上の面積を占有するように形成されている。
【0087】また、サーマルビア39を形成する導体は、低熱抵抗導体である銀、又は銅を用いることにより、増幅器AMP10、20の熱による出力レベル、電力付加効率などの特性劣化を防ぐことができる。
【0088】高周波モジュールにおいて、本モジュールを構成する増幅回路MMIC10、MMIC20の駆動電圧が低下すると、増幅器AMP10、AMP20の出力レベル、および電力付加効率が劣化するため、増幅回路MMIC10、MMIC20に電圧を供給する役割を持つ整合回路MAT10、20を形成する分布定数線路、コンデンサ用導体パターン、ビアホール導体の導体材料として、低抵抗導体である銀、または銅を用いることが望ましい。これにより、増幅器AMP10、20の駆動電圧の低下を最小限に抑制することが可能となる。
【0089】さらに、増幅回路MMIC10、又はMMIC20をAgまたはAuSnなどの導電性ペースト47を用いてキャビティ25底面に固定するとともに、Auなどの細線(ワイア)により増幅回路MMIC10、および/又はMMIC20上の信号パターン、接地用パターンと基板面に形成した信号用パターン、接地用パターンとを電気的に接続することにより、小面積化、薄型化、低価格化を実現できる。
【0090】また、多層基板に設けたキャビティ25内はエポキシ系などの樹脂51で充填されている。これにより、キャビティ25内の増幅回路MMIC10、又はMMIC20は完全に固定され、また外部からの異物混入などを防止でき、増幅回路MMIC10、又はMMIC20を保護することができる。
【0091】尚、図7に示すように、増幅回路MMIC10、又はMMIC20をセラミック積層体表面に形成されたキャビティ55内に金あるいはアルミニウムなどのバンプ57を用いてフリップチップボンディング法を用いて搭載しても良い。この場合には、フリップチップボンディング法を用いて搭載することにより小面積化、薄型化、低価格化を促進できる。
【0092】低温焼成積層基板の比誘電率と波長との関係は、λg=ν0/{(εr×μr)1/2f0}の式にて示すことができる。高周波モジュールを構成する低温焼成積層基板は、通常よく高周波モジュールに使用される比誘電率が5〜7の誘電体材料に比べ、比誘電率が15〜25、特に18〜20の高誘電率の誘電体材料を用いて形成されている。このような誘電体材料としては、例えば、MgTiO3−CaTiO3を主成分し、これにB2O3、Li2CO3等の助剤を添加して構成されたものが知られている。これにより、各回路を構成する分布定数線路長を約57%に短縮することができ、小型化に有利となる。
【0093】また、低温焼成積層基板を形成する誘電体材料の磁器Qが1000以上(測定周波数2GHz)の高Q材料を用いることにより、誘電体損失を低減でき、しいては比誘電率15〜25の高誘電率材料を用いることによる波長短縮効果と相俟って、本高周波送信モジュールを構成する各フィルタの低損失下を図ることができる。これにより本高周波送信モジュールの高出力化、高効率化が可能となる。
【0094】図8は比誘電率18.7、磁器Qが2000(測定周波数2GHz)の高Q材料を用いてスイッチ回路を構成した場合と、比誘電率6.1、磁器Q500(測定周波数2GHz)の誘電体材料を用いてスイッチ回路を構成した場合を比較したもので、(a)はスイッチ回路を示す図、(b)はスイッチ回路のローパスフィルタ特性を示す図である。また、(a)のSL1の長さは、比誘電率18.7の場合には6.68mm、比誘電率6.1の場合には11.53mm、SL2の長さは、比誘電率18.7の場合には9.1mm、比誘電率6.1の場合には16mmであり、スイッチ回路のSL2のロスは、送信側で、比誘電率18.7の場合には0.034dB、比誘電率6.1の場合には0.074dB、受信側で、比誘電率18.7の場合には0.078dB、比誘電率6.1の場合には0.183dBであった。
【0095】このスイッチ回路全体における損失は、送信側で、比誘電率18.7の場合には0.254dB、比誘電率6.1の場合には0.484dB、受信側で、比誘電率18.7の場合には0.112dB、比誘電率6.1の場合には0.257dBであった。
【0096】これより、前記高誘電率、高Q材料を用いてスイッチ回路を構成することにより、小型化、および低損失化に寄与することがわかる。
【0097】なお、上記形態においては、STLD2とSTLD20、STLG2とSTLG20を平行に配置して、ラインの縁でカップリングする場合を示したが、例えば、積層体内において主分布定数線路STLD2、STLG2を上層の誘電体層に、結合線路STLD20、STLG20を1層または所要数だけ下層の誘電体層に配置し、あるいは逆に主分布定数線路STLD2、STLG2を下層の誘電体層に、結合線路STLD20、STLG20を1層または所要数だけ上層の誘電体層に配置してカップリングさせても同様である事はいうまでもない。
【0098】なお、本形態では図3に示すように8層の誘電体層からなる積層基板の例で説明したが、誘電体層の層数はこれに限定されない。
【0099】本発明の高周波モジュールでは、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路DIP10と、各送受信系DCS、GSMを送信系TXと受信系RXとにそれぞれ切りかえるスイッチ回路SW10、20と、スイッチ回路SW10、20の各送信系TX側に設けられた、カップラCOP10、20と、増幅器AMP10、20の整合回路MAT10、20と、増幅回路MMIC10、20とを同一積層基板にモジュール化することにより、従来の各部品をプリント配線基板上に実装して接続したものに比して約1/4以下にプリント配線基板における実装面積を削減でき、小型化を実現できる。しかも、小型化しても、電力増幅器AMP10、20と、カップラCOP10、20、スイッチ回路SW10、20との間に、干渉防止接地用パターン29を設けたので、電力増幅器AMP10、20とカップラCOP10、20等の間の電磁結合により信号が他の回路へ漏れることを防ぐことができる。
【0100】また、各部品を一体化した高周波モジュールをプリント配線基板に実装するため、プリント配線基板上に各部品を接続するための配線を形成する必要がなく、従って低ロス化、しいてはアンテナ端での電力付加効率を飛躍的に改善することができる。
【0101】さらに本発明の高周波モジュールでは各部品を同時設計する事ができるため、モジュールとして最適な特性調整を行なう事ができる。従って、各部品間に特性調整用の回路を設ける必要がなく、低ロス化が実現でき、且つ携帯無線端末の設計工程を短縮できるためコスト削減を図る事ができる。
【0102】そして、誘電体層として低温焼成セラミックを用いるため、複数の誘電体層と、その複数の誘電体層上の分布定数線路およびコンデンサを形成するコンデンサ導体パターン等とを一体焼成できる。従って、製造工程の短縮化が可能となり、コストダウンを図る事ができる。
【0103】図9は、本発明の他の形態を示すもので、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路DIP10が、多層基板に内蔵されたローパスフィルタおよびハイパスフィルタとを用いて構成されている。即ち、DCS側は、ハイパスフィルタHPF10とコンデンサCD1およびインダクタLD1とから構成されている。
【0104】ハイパスフィルタHPF10は、信号ラインに介設されたコンデンサCD2、このコンデンサCD2の両端に2本の平行な分布定数線路STLD1−1、STLD1−2及びこれらの他端の接続点と接地間に接続された短寸法の分布定数線路STLD1−3を備えると共にコンデンサCD2の両端と接地間に接続された2本のコンデンサCD2−1、CD2−2とから構成されている。このハイパスフィルタHPF10も積層基板に内蔵されている。ハイパスフィルタHPF10とダイオードDD1との間には、直流成分カット用コンデンサが配置されている。
【0105】またGSM側は、ローパスフィルタLPF20とコンデンサCG1およびインダクタLG1とから形成されている。ローパスフィルタLPF20は、分布定数線路STLG1及び分布定数線路STLG1に平行に配置されたコンデンサCG14、その他のコンデンサにより構成されている。
【0106】これにより、図2に示す分波回路DIP10と同様に通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分けることができるとともに、GSM側の通過減衰量を大きくとることが可能であるため、GSM帯域に対するアイソレーションをさらに大きく取ることができる。即ち、本高周波モジュールのアイソレーションをさらに改善することができる。
【0107】
【発明の効果】本発明の高周波モジュールは、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路から電力増幅器までを構成する回路要素を一体化することで、従来の各部品をプリント配線基板上に実装して接続したものに比して約1/4以下にプリント配線基板における実装面積を削減でき、小型化を実現できるとともに、アンテナ端子における電力付加効率を飛躍的に改善できる良好な特性を有する高周波モジュールを提供することができる。
【0108】また、本発明の高周波モジュールでは各部品を同時設計する事ができるため、モジュールとして最適な特性調整を行なう事ができる。従って、各部品間に特性調整用の回路を設ける必要がなく、低ロス化が実現でき、且つ携帯無線端末の設計工程を短縮できるためコスト削減を図る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高周波モジュールのブロック図である。
【図2】本発明の高周波モジュールの回路図である。
【図3】本発明の高周波モジュールの一部切欠斜視図である。
【図4】本発明の高周波モジュールの各誘電体層を示す平面図である。
【図5】本発明の高周波モジュールの回路配置を説明するための模式図である。
【図6】本発明の高周波モジュールの断面図である。
【図7】増幅回路をバンプで実装した例を示す断面図である。
【図8】(a)はスイッチ回路を示す回路図であり、(b)は誘電体層を高誘電率材料形成した場合と、低誘電率で形成した場合のローパスフィルタ特性を示すグラフである。
【図9】本発明の高周波モジュールの他の形態を示す回路図である。
【図10】従来の高周波モジュールのブロック図である。
【図11】従来のスイッチモジュールのブロック図である。
【符号の説明】
DIP10・・・分波回路
SW10、SW20・・・スイッチ回路
AMP10、AMP20・・・電力増幅器
MAT10、MAT20・・・整合回路
MMIC10、MMIC20・・・増幅回路
29・・・干渉防止接地用パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】複数の誘電体層を積層してなる積層基板に、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路と、該分波回路に接続され、前記各送受信系を送信系と受信系に切り替えるスイッチ回路と、該スイッチ回路に接続され、各送信系の通過帯域での送信信号を増幅する高周波増幅用半導体素子及び整合回路からなる電力増幅器とを設けてなることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】電力増幅器と、スイッチ回路との間に、干渉防止接地用パターンが設けられていることを特徴とする請求項1記載の高周波モジュール。
【請求項3】積層基板表面及び誘電体層間に干渉防止接地用パターンが設けられ、これらの干渉防止接地用パターンがビアホール導体で接続されていることを特徴とする請求項2記載の高周波モジュール。
【請求項4】高周波増幅用半導体素子の周辺部の積層基板表面及び/又は内部に、整合回路を構成する分布定数線路を形成してなることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項5】高周波増幅用半導体素子とスイッチ回路の間に、整合回路を構成する分布定数線路が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項6】積層基板に、電力増幅器、スイッチ回路、分波回路が順次設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項7】整合回路を構成する分布定数線路と、スイッチ回路を構成する分布定数線路とが、積層基板の上方から見て重ならないことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項8】分波回路が、誘電体層間に形成されたコンデンサ用導体パターンと分布定数線路を有し、スイッチ回路が、積層基板表面に搭載された集中定数素子を有し、電力増幅器が、前記積層基板表面のキャビティ内に設けられた高周波増幅用半導体素子と、前記誘電体層間及び積層基板表面に形成された分布定数線路と、前記積層基板表面に搭載された集中定数素子とを有することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項9】誘電体層の比誘電率が15〜25であることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項10】積層基板下面周辺部に、信号用端子パターン、接地用端子パターン及びバイアス用端子パターンが形成され、これらの端子パターンが、前記積層基板の側面に形成された端面スルーホール電極と接続され、前記積層基板下面中心部に、前記接地用端子パターンと接続された接地用パターンが形成され、該接地用パターン表面に複数箇所が露出するようにオーバーコートガラスが被覆され、前記接地用パターンにサーマルビアが接続されていることを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項1】複数の誘電体層を積層してなる積層基板に、通過帯域の異なる複数の送受信系を各送受信系に分ける分波回路と、該分波回路に接続され、前記各送受信系を送信系と受信系に切り替えるスイッチ回路と、該スイッチ回路に接続され、各送信系の通過帯域での送信信号を増幅する高周波増幅用半導体素子及び整合回路からなる電力増幅器とを設けてなることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】電力増幅器と、スイッチ回路との間に、干渉防止接地用パターンが設けられていることを特徴とする請求項1記載の高周波モジュール。
【請求項3】積層基板表面及び誘電体層間に干渉防止接地用パターンが設けられ、これらの干渉防止接地用パターンがビアホール導体で接続されていることを特徴とする請求項2記載の高周波モジュール。
【請求項4】高周波増幅用半導体素子の周辺部の積層基板表面及び/又は内部に、整合回路を構成する分布定数線路を形成してなることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項5】高周波増幅用半導体素子とスイッチ回路の間に、整合回路を構成する分布定数線路が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項6】積層基板に、電力増幅器、スイッチ回路、分波回路が順次設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項7】整合回路を構成する分布定数線路と、スイッチ回路を構成する分布定数線路とが、積層基板の上方から見て重ならないことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項8】分波回路が、誘電体層間に形成されたコンデンサ用導体パターンと分布定数線路を有し、スイッチ回路が、積層基板表面に搭載された集中定数素子を有し、電力増幅器が、前記積層基板表面のキャビティ内に設けられた高周波増幅用半導体素子と、前記誘電体層間及び積層基板表面に形成された分布定数線路と、前記積層基板表面に搭載された集中定数素子とを有することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項9】誘電体層の比誘電率が15〜25であることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項10】積層基板下面周辺部に、信号用端子パターン、接地用端子パターン及びバイアス用端子パターンが形成され、これらの端子パターンが、前記積層基板の側面に形成された端面スルーホール電極と接続され、前記積層基板下面中心部に、前記接地用端子パターンと接続された接地用パターンが形成され、該接地用パターン表面に複数箇所が露出するようにオーバーコートガラスが被覆され、前記接地用パターンにサーマルビアが接続されていることを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれかに記載の高周波モジュール。
【図1】
【図2】
【図5】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図11】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図5】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図11】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2003−8469(P2003−8469A)
【公開日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−188331(P2001−188331)
【出願日】平成13年6月21日(2001.6.21)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成13年6月21日(2001.6.21)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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