説明

高周波モジュール

【課題】二次実装時において、配線基板上にフリップチップ実装され封止樹脂で被覆された弾性表面波素子と配線基板との間の気密破壊を抑制した高周波モジュールを提供する。
【解決手段】本発明の高周波モジュールは、圧電基板21の一方主面上外周に沿って環状封止電極24が設けられ、環状封止電極24の内側領域にIDT電極22とこのIDT電極22に接続する入出力電極23とが設けられた弾性表面波素子2が、複数の誘電体層11および複数の導体層12からなる積層構造を有する配線基板1の表面にフリップチップ実装されるとともに、その他の表面実装部品が配線基板1の表面に実装され、弾性表面波素子2およびその他の表面実装部品を封止するように配線基板1の表面が封止樹脂層4で被覆された高周波モジュールにおいて、封止樹脂層4には、配線基板1における積層方向から見て封止樹脂層4を分割するように弾性表面波素子2に沿って溝状空隙部41が形成されていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として携帯電話等の無線通信端末機に搭載され、弾性表面波素子を表面実装してなる高周波モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、無線LANの市場は右肩上がりの成長が想定されており、第3世代の携帯電話の生産数は、急激に増加している。携帯電話は第3世代に進歩するに従って、カメラ内蔵、テレビの受信、他の無線通信(ブルーツース、無線LAN、WiMAX)との併用化も進んでおり、高周波回路の占有面積は年々減少している。その為、携帯電話の部品は小形軽量化および複合化がめざましく、個々の性能をアップしつつ、部品点数の削減、低消費電力化への要求に対応する必要がある。このような要求を実現するため、チップセットの集積化および性能向上が進んでおり、同様に周辺の高周波部品も集積化した高周波モジュールが提案されている。
【0003】
高周波モジュールに実装される高周波部品のうち、圧電基板の一方主面に励振電極や入出力電極等が形成されてなる弾性表面波(SAW)素子は、励振電極に水分、塵埃等の異物が付着しないようにかつ弾性表面波の伝搬を妨げないように中空状態で気密封止する必要がある。
【0004】
そこで、図9に示すように、圧電基板81の励振電極82や入出力電極83が形成された面を下方に向けて、弾性表面波素子8を配線基板91上にフリップチップ実装した高周波モジュールが提案されている(例えば特許文献1参照)。かかる構造によれば、励振電極82および入出力電極83の周囲に環状封止電極84を配置し、半田92によって配線基板91表面の配線層93に入出力電極83および環状封止電極84を接合することによって、励振電極82接合部および入出力電極83接合部が配線基板91の表面と弾性表面波素子8の圧電基板81および環状封止電極84接合部で囲まれた気密空間内に封止されている。この環状封止電極84は接地電極として機能させることができる。
【0005】
そして、フリップチップ実装された弾性表面波素子8およびその他実装された高周波部品(半導体チップ94など)を保護するために、これらの実装部品を封止するように配線基板91の表面は封止樹脂95で被覆されている。なお、この封止樹脂95は、製造時の利便性から、上側から吸引して搬送できるように上面が平坦になっている。
【特許文献1】特開2005−123909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図9に示すように、1つの配線基板91上に弾性表面波素子8とともに半導体チップ94やチップコンデンサなどの表面実装部品(不図示)を実装してなる高周波モジュールを、マザーボードに無鉛半田などで二次実装すると、弾性表面波素子8と配線基板91の表面とを接合している入出力電極83接合部、環状封止電極84接合部の半田92が再溶融し、この溶融した半田92が気密空間側に移動する結果、気密空間の気密破壊や入出力電極83と環状封止電極84とが半田92によって短絡するなどの問題があった。
【0007】
これは、弾性表面波素子8のフリップチップ実装に用いられる半田92が二次実装に用いる半田より高融点かつ接続信頼性に優れた非鉛材料を選択できない点が背景にある。二次実装の為リフロー炉に投入した際、入出力電極83接続部および環状封止電極84接続部に使用される半田92は、再溶融が起こり固相から液相に変わる。このとき、封止樹脂95が吸湿した水分や未反応性生成物が気化、脱ガスされることによって、環状封止電極84接続部の内外(気密空間と外部)で圧力差が生じる。したがって、溶融した半田92が気密空間側に向かって流れ込み、短絡、断線に至るのである。
【0008】
対策手段として、樹脂封止せず金属ケースで配線基板を被覆する方法が考えられる。ところが、金属ケースで配線基板を被覆する場合、例えば配線基板の側面に半田を介して接続されるが、高周波配線とのショートを避ける為、金属ケースと高周波配線との間には必要最小限の間隔を設ける必要がある。したがって、小型化を目的とする高周波モジュールにとっては望ましい対策ではない。一方、樹脂ケースで配線基板を被覆したとしても、コスト的に課題は残る。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、二次実装時において、配線基板上にフリップチップ実装され封止樹脂で被覆された弾性表面波素子と配線基板との間の気密破壊を抑制する高周波モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、二次実装時の加熱によって半田が再溶融する前に弾性表面波素子の環状封止電極(環状封止電極)近傍の封止樹脂から水分が放出されるような構造を採用することで、上記目的を達成することを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち本発明の高周波モジュールは、圧電基板の一方主面上に外周に沿って環状封止電極が設けられ、該環状封止電極の内側領域にIDT電極と該IDT電極に接続する入出力電極とが設けられた弾性表面波素子が、複数の誘電体層および複数の導体層からなる積層構造を有する配線基板の表面にフリップチップ実装されるとともに、その他の表面実装部品が前記配線基板の表面に実装され、前記弾性表面波素子および前記その他の表面実装部品を封止するように上面平坦に形成された封止樹脂層で前記配線基板の表面が被覆された高周波モジュールにおいて、前記封止樹脂層には、前記配線基板における積層方向から見て前記封止樹脂層を分割するように前記弾性表面波素子に沿って溝状空隙部が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の高周波モジュールは、圧電基板の一方主面上に外周に沿って環状封止電極が設けられ、該環状封止電極の内側領域にIDT電極と該IDT電極に接続する入出力電極とが設けられた弾性表面波素子が、複数の誘電体層および複数の導体層からなる積層構造を有する配線基板の表面にフリップチップ実装されるとともに、その他の表面実装部品が前記配線基板の表面に実装され、前記弾性表面波素子および前記その他の表面実装部品を封止するように上面平坦に形成された封止樹脂層で前記配線基板の表面が被覆された高周波モジュールにおいて、前記封止樹脂層には、前記配線基板における積層方向から見て複数の孔状空隙部が前記弾性表面波素子に沿って該弾性表面波素子との間隔未満の間隔で列をなすように形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、二次実装リフローの際に環状封止電極接合部に悪影響を及ぼしていた環状封止電極接合部の近傍に存在する封止樹脂中から、これに含まれる水分や未反応ガス成分が半田の再溶融までの間に溝状空隙部または孔状空隙部を通して外部に放出され除去されることとなるため、半田の気密空間側への流れ込みが発生せず、弾性表面波素子と配線基板との間の気密性を向上、すなわち気密破壊を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る高周波モジュールの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明の高周波モジュールの一実施形態を示す概略平面図、図2は図1に示す矢印方向に見たときの高周波モジュールの概略説明図である。
【0016】
図1および図2に示すように、本発明の高周波モジュールを構成する配線基板1は、複数の誘電体層11および複数の平面導体層12からなる積層構造になっている。誘電体層11の厚みは5〜200μm程度であり、平面導体層12の厚みは2〜20μm程度になっている。また、異なる層に形成された平面導体層12等を接続するために、各誘電体層11を貫通する直径30〜200μmのビアホール導体13が形成されている。そして、この配線基板1の表面には、弾性表面波素子2がいわゆるフリップチップ実装され、その搭載部には、弾性表面波素子2をフリップチップ実装するための電極パッド群(入出力電極用パッド14と環状封止電極用パッド15)が形成されている。
【0017】
配線基板1を構成する誘電体材料としては、セラミック等が挙げられ、特に限定されるものではない。ただし、ガラス粉末、あるいはガラス粉末とセラミックフィラー粉末との混合物を焼成してなるガラスセラミック焼結体からなることによって、電極、平面導体層、ビアホール導体などをCu、Ag、Au、Ni、Pt、Pd又はそれらの混合物などを使用することが可能である。
【0018】
ここで用いられるガラス成分としては、少なくともSiOを含み、Al、B、ZnO、PbO、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物のうちの少なくとも1種を含有したものであって、例えば、SiO−B系、SiO−B−Al系−MO系(但し、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnを示す)等のホウケイ酸ガラス、アルカリ珪酸ガラス、Ba系ガラス、Pb系ガラス、Bi系ガラス等が挙げられる。これらのガラスは、焼成によって結晶が析出する結晶化ガラスであることが基板強度を高める上で望ましい。
【0019】
また、セラミックフィラーとしては、クォーツ、クリストバライト等のSiOや、Al、ZrO、ムライト、フォルステライト、エンスタタイト、スピネル、マグネシア等が好適に用いられる。ガラス成分およびフィラー成分の割合としては、ガラス成分10〜70重量%と、セラミックフィラー成分30〜90重量%の割合からなることが基板強度を高める上で望ましい。
【0020】
配線基板1の表面にフリップチップ実装される弾性表面波素子2は、例えばタンタル酸リチウム、ランタン−ガリウム−ニオブ系単結晶、四ホウ酸リチウム単結晶等の圧電性の単結晶から成る圧電基板21の一方主面上に、図3に示すように、励振電極であるインターデジタルトランスデューサー電極(本発明では、櫛歯状電極及び反射器電極を含み、以下、IDT電極という)22が形成されるとともにこのIDT電極22と接続する入出力電極23が形成され、さらに圧電基板21の一方主面上外周に沿って環状封止電極24が形成されたものである。ここで、IDT電極22は圧電基板21の略中央領域に配置され、入出力電極23は所定のIDT電極22から延びる位置に配置されている。
【0021】
環状封止電極24は、後述するように、弾性表面波素子2が配線基板1上に実装された際に、IDT電極22が接する空間であって圧電基板21と配線基板1の表面との間の間隙によって形成される空間を気密封止するものである。本例では、この環状封止電極24は接地電極として機能するようになっている。なお、圧電基板21上の電極は、アルミニウム、銅などで例えばフォトリソグラフィ技術により形成され、その表面にクロム、ニッケル、金などのメッキ層が形成されたものである。
【0022】
一方、図4に示すように、配線基板1表面の弾性表面波素子2が実装される領域には、入出力電極23に対応して入出力電極用パッド14が設けられるとともに、これらを囲むように環状封止電極用パッド15が形成されている。
【0023】
そして、配線基板1の表面と圧電基板21の一方主面(IDT電極22が形成された面)との間に所定間隙を形成するように、入出力電極23と入出力電極用パッド14とが半田接合されるとともに、環状封止電極24と環状封止電極用パッド15とが半田接合されて、配線基板1上に弾性表面波素子2がフリップチップ実装される。かかる構成によって、積層方向から見て環状封止電極24に囲まれた領域は気密空間を形成し、励振電極であるIDT電極22がこの気密空間内に気密封止される。
【0024】
その他、配線基板1の表面には半導体チップ(パワーアンプIC)31、チップコンデンサ32、チップインダクタ33などの表面実装部品が実装されており、全ての実装部品が実装された後、これらの実装部品の保護などのためにエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、あるいは後述する光硬化樹脂などからなる封止樹脂層4で表面実装部品が封止される。この封止樹脂層4は、弾性表面波素子2や半導体チップ31のボンディングワイヤなど全ての表面実装部品を封止するように、一番高い表面実装部品に合わせた層厚みで上面(表面)が平坦になるように配線基板1の表面に被覆されるものである。
【0025】
そして、封止樹脂層4には、配線基板1の積層方向から見てこれを分割するように弾性表面波素子2に沿って溝状空隙部41が形成されていることが重要である。この溝状空隙部41が弾性表面波素子2に沿って形成されるとは、二次実装時の加熱によって弾性表面波素子2の環状封止電極24接合部近傍の封止樹脂層4から水分が外部に放出されるような位置に形成されることである。これにより、二次実装する際に環状封止電極接合部の半田に悪影響を及ぼす環状封止電極接合部近傍の封止樹脂層4中の水分は、半田の融点よりも水の沸点が低いことから、半田が再溶融する直前までに溝状空隙部41から外部に放出されるため、半田5が気密空間に侵入して気密破壊などを生じさせてしまうことを抑止できる。
【0026】
ここで、分割するようにとは、封止樹脂層4が弾性表面波素子2側とその他の表面実装部品(他の弾性表面波素子2の場合もある)側とに仕切られることを意味している。また、弾性表面波素子2に沿ってとは、原則として配線基板1の積層方向から見て周囲に形成されるが、図1に示すように、弾性表面波素子2が配線基板1の側面(縁)に近接する位置に配置され封止樹脂層4の側面から水分が放出されるような状況にある場合は、封止樹脂層4の側面(積層方向からみて配線基板1の側面)以外の部分に形成されることを意味するものである。
【0027】
溝状空隙部41は、水分放出の観点から、封止樹脂層4の上面から下面ぎりぎり(配線基板1の表面付近)まで形成されているのが好ましい。また、その幅は例えば後述のレーザー加工では0.05mm以上0.2mm以下程度が採用されるが、他の実装部品の配置との関係や吸引搬送に支障をきたさない程度であれば特に限定はない。さらに、溝状空隙部41が形成される位置は、弾性表面波素子に対して水分放出の効果が発揮される領域である必要があり、好ましくは積層方向から見て弾性表面波素子2の外周から0.05mm乃至0.3mm程度の距離の範囲の領域内に設定される。
【0028】
溝状空隙部41の形成にあっては、封止樹脂層4を硬化させた後、この封止樹脂層4にレーザー加工を施す方法が挙げられる。ここで、特に配線基板1の表面に配線導体がある場合は、この配線導体を切削しないようにする必要があることから、配線基板1の表面付近までの深さの溝状空隙部41を形成するようにレーザー装置の出力は調整される。
【0029】
また、レーザー加工以外の方法も採用できる。その他の加工方法としては、トランスファモールド工法を挙げることができる。具体的には、図5に示すように、弾性表面波素子2およびその他の実装部品の実装、半導体チップ31の固着およびワイヤボンディング終了後、溝状空隙部41を形成するようにかたどられた金型61を配線基板1の表面上にセットし、金型61の一部に設けられた注入口611から封止樹脂(熱硬化性樹脂)を注入し、完全に封止樹脂を充填した後、注入口611に圧力を加えながら密閉する。そのままの状態で減圧しながら150℃に加熱し、封止樹脂の硬化処理を行なう。その後、金型611を取り外すことで、レーザー加工と同様に溝状空隙部41を形成することができる。
【0030】
その他の方法として、封止樹脂として熱硬化性樹脂の代わりに光硬化樹脂42を使用した方法も採用できる。具体的には、図6に示すように、弾性表面波素子2およびその他の実装部品の実装、半導体チップ31の固着およびワイヤボンディング終了後、光硬化樹脂42を配線基板1の表面上に塗布する。その後、空隙部を形成する領域に光が照射されないようなマスクパターン62を光硬化樹脂42の上面に接触しないようにセットした後、光硬化樹脂が硬化する条件で上方向から光を照射した。その後、高周波モジュールを現像液に浸し、スプレー噴射処理を行い、未硬化部421を除去することで、空隙部を形成することができる。
【0031】
なお、溝状空隙部41を形成した後、吸引搬送に支障がある場合や外観を考慮して、封止樹脂層4の上面にシールを貼り付けてもよい。このシールは、金属を混入させたもので、シールド機能を有するものであってもよい。
【0032】
これまでは溝状空隙部41を形成する本発明の実施形態について説明してきたが、これにかえて複数の孔状空隙部43を形成する発明も好ましく採用できる。
【0033】
具体的には、図7に示すように、封止樹脂層4に、配線基板1における積層方向から見て複数の孔状空隙部43が弾性表面波素子2に沿ってこの弾性表面波素子2との間隔未満の間隔で列をなすように形成されているものである。図7においては、弾性表面波素子2の長辺に沿って7個の孔状空隙部43が一列に形成され、弾性表面波素子2の短辺に沿って5個の孔状空隙部43が一列に形成されている。
【0034】
弾性表面波素子2と孔状空隙部43との距離(間隔)は、溝状空隙部41の形成される位置と同様に積層方向から見て弾性表面波素子2の外周から0.05mm乃至0.3mm程度の距離の範囲の領域内に設定される。そして、複数の孔状空隙部43における隣り合う孔状空隙部43と孔状空隙部43との間隔は、弾性表面波素子2の気密封止に悪影響を及ぼさない程度に封止樹脂層4から水分を放出できる範囲で、少なくとも弾性表面波素子2と孔状空隙部43との距離(間隔)未満に設定される。孔状空隙部43が横断面円形の場合、その径は例えばレーザー加工で形成するときは0.05mm以上0.2mm以下程度に形成され、深さも溝状空隙部41と同様に封止樹脂層4の上面から下面ぎりぎり(配線基板1の表面付近)まで形成されているのが好ましい。
【0035】
孔状空隙部43としては、横断面円形に限らず、横断面多角形でもよく、例えば横断面四角形の場合は横断面形状における短軸方向(弾性表面波素子と孔状空隙部を結ぶ線分方向)の距離(幅)が溝状空隙部41と同様の幅に形成され、長軸方向(弾性表面波素子に沿う方向)は適宜決定される。
【0036】
また、孔状空隙部43の製造は、溝状空隙部41の製造と同様に、レーザー加工の他、金型を用いたトランスファーモールド、封止樹脂層4を光硬化樹脂を用いて未硬化部を形成する方法が採用できる。
【0037】
なお、図7に示す実施形態においては、封止樹脂層4からの水分放出手段として全ての弾性表面波素子に沿った位置に孔状空隙部43を設けた構成になっているが、図1に示す溝状空隙部41と図7に示す孔状空隙部43とを組み合わせた構成であってもよい。
【0038】
一般に高周波モジュールは、図8の一点鎖線で囲まれる領域に示されるような回路構成を有している。送信信号入力端子71から入力された送信信号はバンドパスフィルタ72で不要成分を除去され、電力増幅器73で信号増幅される。増幅された送信信号は、デュプレクサ74を経てアンテナ接続端子75に送られる。そして、アンテナから空中へ放射されるようになっている。
【0039】
一方、アンテナで受け取り、アンテナ接続端子75から入力された受信信号は、デュプレクサ74を経て、受信信号出力端子76から出力される。そして、受信信号出力端子76から出力された受信信号は、入力整合回路を介してローノイズアンプへ入力され、その後、復調機能をもつ受信回路へ入力され、携帯電話の場合は音声として出力されるようになっている。
【0040】
これまで述べた弾性表面波素子2は図8中のデュプレクサ74における送信信号を通過させる送信用フィルタ、受信信号を通過させる受信用フィルタとして使用されるとともに、電力増幅器73の前段のバンドパスフィルタ72等として使用されるものである。また、半導体チップ31は図8中の電力増幅器73の構成部品として使用されるものである。
【0041】
最後に、本発明の製造方法および効果確認の結果について説明する。
【0042】
ガラス粉末またはガラス粉末とセラミックフィラー粉末との混合物に有機バインダー有機溶剤などを添加混合してスラリーを作製した後、ドクターブレード法やカレンダーロール法などによって、所定の厚みのセラミックグリーンシートを作製した。その後、このセラミックグリーンシートにビアホール導体を形成するための貫通穴をマイクロドリルやパンチング、レーザー加工などによって形成した後、貫通穴内に、Cu、Ag、Au、Ni、Pt、Pd又はそれらの混合物などの導体のペーストをスクリーン印刷法などによって充填するとともに、平面導体層となる種々の導体パターンを印刷した。そして、ビアホール導体および平面導体層を形成したセラミックグリーンシートを積層圧着した後、850〜1000℃の温度で焼成することによって、配線基板を作製した。
【0043】
次に、圧電基板(タンタル酸リチウム単結晶の38.7°Yカット、熱膨張係数14〜16ppm/℃)上にAl−Cu(2重量%)合金から成る電極を成膜し、その後レジスト塗布、パターンニング、剥離を繰り返し、IDT電極、入出力電極、環状封止電極(接地電極)、保護膜を形成し、弾性表面波素子を作製し、熱膨張係数が8.5ppm/℃の配線基板(セラミック積層基板)上に実装した。実装に際しては、環状封止電極及び入出力電極に高温半田をスクリーン印刷にて塗布し、リフローにて実装を行った。この弾性表面波素子の実装構造によれば、IDT電極の周囲を環状封止電極(接地電極)で取り囲こむようにして気密性を確保している。また、弾性表面波素子と同時にコンデンサチップなどのチップ部品の実装を行い、リフローにて半田を固着させた。さらに、銀ペーストにて半導体チップを接着した後、金線によるワイヤボンディングで導通をさせた。
【0044】
さらに、エポキシ樹脂に対してフィラーとして溶融シリカを添加した熱硬化性樹脂を多層基板の表面上に塗布した。そして、減圧した真空乾燥機内にて150℃に加熱し、封止樹脂の硬化処理を行なった。このとき用いた熱硬化性樹脂は、飽和吸水量が重量比0.2%のエポキシ樹脂であり、事前テストにより飽和吸水状態から200℃にて3時間の乾燥を実施した場合において、吸水する前の重量に戻ることが確認されたものである。
【0045】
またさらに、封止樹脂層には、配線基板における積層方向から見て封止樹脂層を分割するように弾性表面波素子に沿って溝状空隙部を形成した。具体的には、弾性表面波素子に沿って弾性表面波素子の外周から距離約0.08mm程度の位置に、約0.1mmの幅、配線基板表面付近までの深さのスリットをレーザー加工で形成し、本発明の高周波モジュールを得た。
【0046】
上記の手順で作製した本発明の高周波モジュールとスリットを形成していない従来の高周波モジュールとについて比較した。試験の条件として、温度60℃、湿度60%の雰囲気下で40時間吸湿処理した後、リフロー加熱(ピーク温度260℃)を3回繰り返し、不良率を比較したところ、従来構造の高周波モジュールサンプルでは不良率が約40%あったのに対し、本発明の構造であるスリットを形成した高周波モジュールサンプルでは不良率は0%に改善されることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の高周波モジュールの一実施形態を示す概略平面図である。
【図2】図1に示す矢印方向に見たときの高周波モジュールの概略説明図である。
【図3】図2に示す弾性表面波素子2の圧電基板21一方主面の説明図である。
【図4】図2に示す配線基板1表面の弾性表面波素子2が実装される領域の説明図である。
【図5】本発明の高周波モジュールの一製造方法の説明図である
【図6】本発明の高周波モジュールの他の製造方法の説明図である。
【図7】本発明の高周波モジュールの他の実施形態を示す概略平面図である。
【図8】本発明の高周波モジュールの回路構成例を示すブロック図である。
【図9】従来の高周波モジュールの概略断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1・・・配線基板
11・・誘電体層
12・・平面導体層
13・・ビアホール導体
14・・入出力電極用パッド
15・・環状封止電極用パッド
2・・・弾性表面波素子
21・・圧電基板
22・・IDT電極
23・・入出力電極
24・・環状封止電極
31・・半導体チップ
32・・チップコンデンサ
33・・チップインダクタ
4・・・封止樹脂
41・・溝状空隙部
42・・光硬化樹脂
421・未硬化部
43・・孔状空隙部
5・・・半田
61・・金型
611・注入口
62・・マスクパターン
71・・送信信号入力端子
72・・バンドパスフィルタ
73・・電力増幅器
74・・デュプレクサ
75・・アンテナ接続端子
76・・受信信号出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の一方主面上に外周に沿って環状封止電極が設けられ、該環状封止電極の内側領域にIDT電極と該IDT電極に接続する入出力電極とが設けられた弾性表面波素子が、複数の誘電体層および複数の導体層からなる積層構造を有する配線基板の表面にフリップチップ実装されるとともに、その他の表面実装部品が前記配線基板の表面に実装され、前記弾性表面波素子および前記その他の表面実装部品を封止するように上面平坦に形成された封止樹脂層で前記配線基板の表面が被覆された高周波モジュールにおいて、前記封止樹脂層には、前記配線基板における積層方向から見て前記封止樹脂層を分割するように前記弾性表面波素子に沿って溝状空隙部が形成されていることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】
圧電基板の一方主面上に外周に沿って環状封止電極が設けられ、該環状封止電極の内側領域にIDT電極と該IDT電極に接続する入出力電極とが設けられた弾性表面波素子が、複数の誘電体層および複数の導体層からなる積層構造を有する配線基板の表面にフリップチップ実装されるとともに、その他の表面実装部品が前記配線基板の表面に実装され、前記弾性表面波素子および前記その他の表面実装部品を封止するように上面平坦に形成された封止樹脂層で前記配線基板の表面が被覆された高周波モジュールにおいて、前記封止樹脂層には、前記配線基板における積層方向から見て複数の孔状空隙部が前記弾性表面波素子に沿って該弾性表面波素子との間隔未満の間隔で列をなすように形成されていることを特徴とする高周波モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−258776(P2007−258776A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76661(P2006−76661)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】