説明

高湿分利用ガスタービン

【課題】
圧縮機吸気空気に湿分を加える吸気加湿器を備えたガスタービンは、シンプルサイクルガスタービンと比べ圧縮機の吸込み流量が小さい。また、吸気加湿器を備えたガスタービンは、起動時には通常、圧縮機吸気への加湿を行わない。そのため、圧縮機駆動のために要する動力が大きい。
【解決手段】
圧縮機吸気空気に湿分を加える吸気加湿器を備えたガスタービンにおいて、圧縮機から抽気して直接大気に排出される吸気空気の流量を削減可能な空気排出量抑制手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンに供給される空気を加湿および再熱して、高湿分の燃焼ガスによりタービンを駆動することで、出力と効率向上を図る高湿分利用ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンに供給される空気を加湿および再熱して、高湿分の燃焼ガスによりタービンを駆動する高湿分ガスタービンの運転制御に関する技術に関し、燃焼用空気温度が変動した場合でも、安定かつ高速にプラントを起動可能にするために、タービン起動時の回転数に基づいて、燃焼器に供給する燃料流量を制御する技術が特許文献1に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−57607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高湿分利用ガスタービンは、シンプルサイクルガスタービンと比べ、圧縮機の吸込み流量が小さい。また、高湿分利用ガスタービンは、起動時には圧縮機吸気への加湿を行わない。そのため、高湿分利用ガスタービンは起動のために要する動力が大きい。つまり、高湿分利用ガスタービンの駆動モータは、シンプルサイクルガスタービンを駆動する駆動モータに比べて大容量となり、設置スペースの拡大と、コストが増加する可能性がある。また、駆動モータが小容量であると、起動時に燃焼器への供給される空気流量が低減し、ガスタービンの排気温度が上昇するという問題もある。
【0005】
特許文献1には、高湿分利用ガスタービンの運転制御と制御装置について開示されているが、高湿分利用ガスタービンの圧縮機とタービンの流量バランスに起因したガスタービン圧縮機の起動に関しては記載されていない。
【0006】
本発明の目的は、圧縮機吸気空気に湿分を加える吸気加湿器を備えたガスタービンにおいて、圧縮機駆動のために要する動力を削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、圧縮機吸気空気に湿分を加える吸気加湿器を備えたガスタービンにおいて、圧縮機から抽気して直接大気に排出される吸気空気の流量を削減可能な空気排出量抑制手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圧縮機吸気空気に湿分を加える吸気加湿器を備えたガスタービンにおいて、圧縮機駆動のために必要な動力を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(比較例)
比較例として、従来の高湿分利用ガスタービンを図10を用いて説明する。図10は比較例である高湿分利用ガスタービンの概略図を示す。
【0010】
始めに、高湿分利用サイクル内で圧縮機に吸込まれた大気が湿分空気となり、最終的に外部に排ガスとして放出されるまでの動作を説明する。圧縮機吸気に湿分を加える吸気加湿器である混合器12では吸気空気41に水61が噴霧され、湿分空気42が生成される。混合器12で生成された湿分空気42は圧縮機1で圧縮される。圧縮機1で生成された圧縮空気はガスパス出口で一度、全流量が抽気される。圧縮機出口から抽気された高圧空気43は冷却器10に供給され、水回収装置9からの回収水と加湿装置11からの回収水63とで冷却される。冷却器10で冷却された高圧空気44は、冷却器10で加熱された水64と、給水加熱器7で加熱された水66とを用いて加湿装置11で加湿される。加湿装置11で加湿された湿分空気45は再生熱交換器6に供給され、タービン3からの排ガス48で過熱される。そして、再生熱交換器6で生成された湿分空気46は燃焼器2に供給される。燃焼器2に供給された湿分空気46は、燃焼器2で燃料31と混合燃焼する。そして、生成された燃焼ガス47はタービン3に流入し、タービン3を回転駆動させる。タービン3から排出された排ガス48は、再生熱交換器6で熱回収された後、排ガス52として給水加熱器7に供給される。給水加熱器7で水65と熱交換した排ガス52は、排ガス53として排ガス再加熱器8に供給される。排ガス再加熱器8にて排ガス50と熱交換した排ガス53は、排ガス49として水回収装置9に供給される。水回収装置9にて、排ガス49は冷却水62で冷却され、排ガス49中の湿分は凝縮し、水として回収される。水回収装置9から排出された排ガス50は、排ガス再加熱器8にて排ガス53と熱交換することにより、排ガス51として系外に排出される。この排ガス51は、排ガス再過熱器8で加熱されることにより、白煙の発生可能性が抑えられている。なお、圧縮機1とタービン3とは中間軸により連結されている。また、タービン3により発生した軸動力を電力に変換する発電機4も圧縮機1の回転軸に連結されている。
【0011】
次に、図10を用いて、水の循環系統について説明する。排ガス49を冷却し水分を回収する水回収装置9に水を供給するために、本比較例の高湿分利用ガスタービンシステムは水を系統内に補給する水タンク13を備える。水タンク13から供給される水は冷却器14に供給され、冷却される。水回収装置9は、この冷却された冷却水62で排ガス再加熱器8から排出された排ガス49を冷却し湿分を凝縮させて水分を回収する。また、水回収装置9から排出された水は再び冷却器14に供給されるとともに、ガスタービン側に供給するために水を前処理する水処理装置15にも供給される。水処理装置15により処理された水61は、吸気空気41に水61を噴霧し湿分空気42を生成する混合器12に供給される、一方、水処理装置15により処理された水63は、高圧空気43を冷却する冷却器10にも供給される。冷却器10に供給された水63は冷却器10で加熱され、加熱された水64が加湿装置11に供給される。水64は、加湿装置11にて、冷却器10から供給された高圧空気44を加湿するために利用される。使用後の水は再び冷却器10に供給されるとともに、給水加熱器7にも供給される。給水加熱器7では、排ガス52を熱源とし加湿装置11から排出された給水循環系の水65を加熱して加熱水66を生成する。この加熱水66は加湿装置11に供給される。このように加湿装置11には、冷却器
10からだけではなく給水加熱器7からも加熱された水が加湿装置11に供給されている。
【0012】
高湿分利用ガスタービンは定格運転時、混合器12にて圧縮機吸気が加湿され、さらに圧縮機1出口から抽気された高圧空気43にも加湿装置11にて湿分が追加されるので、追加された湿分だけ空気流量が増加する。通常のシンプルサイクルガスタービンにおけるタービンと圧縮機の流量バランスは、タービンの作動流量を100%とした場合、圧縮機の作動空気流量は98%、燃焼器で供給される燃料流量は2%となる。しかし、高湿分を利用したガスタービンでは、圧縮機から全量抽気された高圧空気43に湿分が加えられることで、空気流量が約20%増加する。従って、高湿分利用ガスタービンでは、この空気流量の増加を考慮し、圧縮機の吸込み流量をシンプルサイクルガスタービンに対して約
78%にする必要がある。
【0013】
高湿分利用ガスタービンの起動時には、シンプルサイクルガスタービンと同様、圧縮機の安定起動のために、圧縮機における旋回失速やサージング現象を回避する必要がある。ここで、サージングとは、圧力比を上げていくと、ある圧力比において急に強い音響を伴う圧力と流れの激しい脈動と機械の振動を引き起こし運転が不安定になる現象である。
【0014】
高湿分利用ガスタービンの起動時において、圧縮機の吸入空気に湿分を加えると、圧縮機の後段側の翼負荷が増加して、サージマージンが低下する恐れがある。また、圧縮機から抽気される抽気空気を、加湿装置により加湿すると、タービン流量が多くなり、タービンと連結された圧縮機の作動圧力比が上昇し、サージマージンが減少する。そのため、高湿分利用ガスタービンの起動時には、圧縮機吸気に湿分を追加しないことが望ましい。
【0015】
高湿分利用ガスタービンでは、タービンと圧縮機の流量比率は、定格運転時の圧縮機吸気への加湿を考慮して設定されている。そのため、圧縮機吸気に加湿しない起動時には、流量バランスは保持されない。すなわち、ガスタービン起動時の湿分を追加しない場合、タービンへの作動流量がシンプルサイクルガスタービンに比べて小流量であるため、圧縮機の駆動動力が相対的に減少する。
【0016】
この駆動動力の相対的減少を補うための方策の一つとして、圧縮機の駆動モータを大容量化にすることが考えられる。しかし駆動モータを大容量化すると、ガスタービンの設置スペースが拡大し、コストも増加する。ガスタービンの本体部分は、箱型のエンクロージャ内に収納されているため、既存のガスタービンを高湿分利用サイクルへ転用する場合、駆動モータが大容量化することで、既存のエンクロージャ内に設置することが不可能となる恐れがある。
【0017】
また、駆動モータの容量が不足している状態でガスタービンを駆動すると、軸流圧縮機の後段側で流れがチョークし、燃焼器への空気流量が低減し、タービンの排気温度が高温となる可能性がある。この排気温度が、設定している排気温度制御ラインを超えた場合、ガスタービンがトリップし、安定な起動を確保できなくなる。
【実施例1】
【0018】
以下、図1,図2を用いて本発明の実施例1である高湿分利用ガスタービンの圧縮機の構造について説明する。図1は、実施例1である高湿分利用ガスタービンの軸流圧縮機1における主流流路の断面図を示す。なお、図1では中間部の静翼と動翼とは省略し、静翼と動翼とを省略した圧縮機流路を点線で表記する。図2は、図1のA−A断面図を示す。なお図2では、簡単のため翼の断面図は省略した。圧縮機1は、タービン3と同じ回転軸で回転する圧縮機ロータと、その回転する圧縮機ロータに植設された動翼71と、動翼
71の前後間に位置し外側のケーシング73に固定された静翼72とで構成される。圧縮機主流流体である空気42が通過する圧縮機1の流路は圧縮機ロータ74の外周面である内面81とケーシング73の内周面である外面82とで形成される。また、ケーシング
73には、抽気スリット91,抽気口92が設けられ、周方向に複数の抽気配管93(図2では4本である)が配置されている。圧縮機の前段側の静翼72には、起動時の旋回失速防止とサージマージンを確保するために、翼の角度を可変にできる可変機構101を備える。
【0019】
本実施例の特徴は、圧縮機の中間段もしくは後段側の静翼に、前段側の静翼72の可変機構101とは別の、可変機構102を備えたことである。図1では可変機構102は1段の静翼にしか設けられていないが、可変機構102は複数段の静翼に設けても構わない。
【0020】
図3を用いて、ガスタービン起動時の動作について説明する。図3(a)は本実施例の高湿分利用ガスタービンの簡略化した系統図を示す。図3(b)は、圧縮機の回転数に対する可変静翼の開度を示す。図3(c)は、圧縮機の回転数に対する抽気弁開度を示す。圧縮機1を安定に起動するために、圧縮機の前段側の可変機構101を備えた静翼72および、抽気口92および抽気配管93がスケジューリングされる。可変の静翼72は、ガスタービンの回転数によって制御され、起動時からある回転数までは、角度は開度最小の状態とし、圧縮機前段側の翼列のマッチングを向上させる。そして、回転数の増加に伴い、開度を徐々に開き、定格回転数で最大となるように、スケジュールされている。また、抽気も回転数により制御され、起動時からある回転数までは抽気弁を開度最大とし、ある回転数以降は開度最小とし、開度最小での抽気空気は、タービンの翼冷却に利用される。抽気弁の開度最大の場合、抽気された圧縮空気の一部は、タービンの翼冷却系統に導入され、その他は、タービンの排気ダクトを介して、大気へ放出される。
【0021】
圧縮機の中間段もしくは後段側の静翼に可変機構102を有しない圧縮機を用いた高湿分利用ガスタービンでは、起動時における抽気の空気流量は、圧縮機吸込み流量の約20〜25%と大きい。従って、高湿分利用ガスタービンの起動時は、この抽気流量を低減させることで、燃焼器2へ供給される空気量を増やし、タービンを駆動する作動流体流量を増加させ、圧縮機の駆動モータ402容量を出来る限り小さくする必要がある。
【0022】
圧縮機起動時における抽気の目的には、圧縮機前段側における翼列のストール抑制と、圧縮機後段側の翼列のチョーク抑制がある。圧縮機の前段側の静翼72が可変機構101を具備することにより、翼列のチョーク抑制が可能になる。本実施例の高湿分利用ガスタービンでは、圧縮機の中間段もしくは後段側の静翼に可変機構102を備えることで、圧縮機中段もしくは後段側の翼列のチョーク抑制が可能となり、抽気流量を低減することができる。これにより、燃焼器2へ供給される圧縮空気の流量を増やすことができるため、タービンの作動流体流量を増加させ、圧縮機の駆動モータ402容量を低減することができる。また、圧縮機翼列のマッチングを最適にすることが可能となるので、部分回転数での圧縮機の効率向上と安定起動の信頼性も向上できる。
【0023】
本実施例のガスタービンのように、圧縮機の途中段から抽気して直接大気に排出される空気の流量を削減可能な空気排出量抑制手段を備えることで、燃焼器へ供給可能な空気量やタービンの作動流体流量を増やすことができ、起動時に必要な圧縮機駆動力を削減できる。本実施例のガスタービンの空気排出量抑制手段は、前段側静翼に設けられた可変機構101と、中間段もしくは後段側静翼に設けられた可変機構102である。
【0024】
なお、本実施例で圧縮機前段側翼とは、圧縮機起動時に適切に空気を抽気しない場合の問題点として、特にストールが懸念される位置に設置された翼を意味する。同様に、圧縮機後段側翼とは、特にチョークが懸念される位置に設置された翼を意味する。また、圧縮機中間段翼とは、前段側翼と後段側翼との間に設置された圧縮機翼を意味する。
【実施例2】
【0025】
本発明の実施例2である高湿分利用ガスタービンを、図4,図5,図6を用いて説明する。なお、図1−図3と重複する機器については、番号を同一とし、詳細な説明は省略する。図4は、実施例2である高湿分利用ガスタービンの軸流圧縮機1における主流流路の断面図を示す。なお、図4では中間部の静翼と動翼とは省略し、静翼と動翼とを省略した圧縮機流路を点線で表記する。図5は、図4のA−A断面図を示す。なお図4では、簡単のため翼の断面図は省略した。図6は、実施例2である高湿分利用ガスタービンの簡略化した系統図を示す。
【0026】
本実施例の高湿分利用ガスタービンは、実施例1と同様、圧縮機中段または後段に可変機構102を設けた静翼を単数または複数備えている。さらに、可変機構102を設けたことによる圧縮機起動時の抽気量削減効果を利用し、タービンの排気ダクトを介して大気へ放出される抽気系統を省略した。すなわち、圧縮機から抽気され、ケーシング73の周方向に配置された複数の抽気配管94を通過する空気の全量をタービンの翼冷却に用いるよう構成している。翼冷却用の空気は、可変機構102を有しない圧縮機の起動時に大気へ放出される空気に比べて極少量であるため、抽気部へ設けられた配管の径をはるかに小さくすることが可能である。
【0027】
本実施例の高湿分ガスタービンは、実施例1と同様、抽気流量の低減により、圧縮機駆動モータの大容量化を抑制することができる。その上、抽気配管の径をはるかに小さくできるので、組立時や点検時における作業性を向上することが出来る。大幅なコスト低減も見込める。また本実施例のガスタービンでは、起動時に抽気された空気の全量がタービン翼の冷却に有効利用されているため、起動時に排気ダクトを介して大気に放出する空気がなく、効率の高い運転が可能である。
【実施例3】
【0028】
本発明の実施例3である高湿分利用ガスタービンを、図7を用いて説明する。図1と重複する機器については、番号を同一とし、詳細な説明は省略する。図7は、実施例3である高湿分利用ガスタービンの軸流圧縮機1における主流流路の断面図を示す。なお、図7では中間部の静翼と動翼とは省略し、静翼と動翼とを省略した圧縮機流路を点線で表記する。
【0029】
本実施例の高湿分利用ガスタービンは、実施例1と同様、圧縮機中段または後段に可変機構102を設けた静翼を単数または複数備えている。さらに、可変機構102を設けたことによる圧縮機起動時の抽気量削減効果を利用し、抽気系統を省略した。すなわち、圧縮機1に流入した空気の全量が燃焼器2に流入するよう構成している。
【0030】
本実施例のガスタービンは、起動時に圧縮機1からの空気を抽気しないため、圧縮機吸気空気の全量を燃焼用空気として利用できる。そのため、圧縮機1の駆動に用いる駆動モータ容量を低減できる。また、抽気配管が不要なため、コストを低減できる。組立時や、点検時における作業性も向上できる。さらに、通常の圧縮機ケーシングは、抽気口の加工のため、抽気口部で分割され、この分割部分がボルトで締結されている。本実施例のように抽気口を設けない圧縮機を用いれば、定格運転時の圧縮機ケーシングの温度変化による、抽気口部のケーシングの接触面からの空気漏れをなくすことができ、圧縮機の効率を向上できる。そして、ケーシング構造を単純化することができるので、コスト低減も可能である。また、高湿分利用ガスタービンの定格運転時には、圧縮機の吸気に水噴霧するが、圧縮機の側壁付近では、水分が蒸発されずに、ドレインとなって蓄積する恐れがある。このドレインの蓄積は、構造が複雑な抽気部で特に起こりやすく、抽気配管を含む抽気部はドレインの蓄積による影響で腐食する可能性がある。本実施例のガスタービンの圧縮機には、ドレインが蓄積し易い抽気部が存在しないため、ドレインの蓄積による腐食を抑制することができ、ガスタービンの信頼性を向上できる。
【0031】
なお、本実施例のガスタービンではタービン翼の冷却に圧縮機抽気空気を用いない。タービン翼の冷却用空気としては、例えば、加湿装置11で加湿された後の湿分空気45などが利用可能である。
【実施例4】
【0032】
本発明の実施例4である高湿分利用ガスタービンを、図8を用いて説明する。図8は、実施例4である高湿分利用ガスタービンの系統図を示す。なお、図10と重複する機器については、番号を同一とし、詳細な説明は省略する。本実施例のガスタービンの特徴は、圧縮機1から抽気された抽気空気を昇圧する別置圧縮機201を有する点である。この別置圧縮機201はモータ202で駆動される。
【0033】
高湿分利用ガスタービンの起動時には、圧縮機で抽気した抽気空気をタービンの作動流体として利用することが望ましい。そのため、圧縮機から抽気した抽気空気301をモータ202で駆動される別置圧縮機201へ導入する。抽気空気301は、圧縮機1で圧縮され加湿装置11で加湿,再生熱交換器6で熱交換した加湿空気46の圧力よりも高圧になるように、別置圧縮機201で昇圧される。昇圧された圧縮空気302は、燃焼器2へ供給され、加湿空気46と同様に、燃料31と混合され、燃焼空気として利用される。この燃焼ガス47はタービン3へ供給され、タービン3を駆動する。このように構成することで、圧縮機1から抽気された空気は大気へ放出することなく、燃焼用空気として有効利用できる。圧縮機1で吸込んだ空気の全流量をタービンの作動空気として使用することができ、圧縮機を起動する駆動モータ大容量化の抑制,効率の向上が可能である。
【0034】
なお、ガスタービンを駆動する駆動モータ402に対して、昇圧用の別置圧縮機201は、容量が小さいので、駆動モータを大容量化するのに比べて、コスト的には安価である。
【実施例5】
【0035】
本発明の実施例5である高湿分利用ガスタービンを、図9を用いて説明する。図9は、実施例5である高湿分利用ガスタービンの系統図を示す。なお、図8,図10と重複する機器については、番号を同一とし、詳細な説明は省略する。本実施例のガスタービンの特徴は、別置圧縮機201で昇圧した抽気空気303を加湿装置11に供給する点である。
【0036】
本実施例のガスタービンの動作について説明する。圧縮機から抽気した抽気空気301は、モータ202で駆動される別置圧縮機201へ導入される。そして、圧縮機1で圧縮され、冷却器10で冷却された後、加湿装置11に供給される圧縮空気44の圧力よりも高圧になるように、別置圧縮機201で昇圧される。昇圧された圧縮空気303は、加湿装置11へ供給され、加湿装置11で、圧縮空気44と混合され、加湿される。この混合された湿分空気45は、再生熱交換器6で熱交換した後、燃焼器2で燃料と混合され、燃焼ガス47でタービン3を駆動する。
【0037】
本実施例のガスタービンでは、圧縮機1から抽気された抽気空気301を別置圧縮機
201で昇圧して加湿装置11へ導入し、最終的にタービンの作動ガスとして利用しているので、圧縮機を起動する駆動モータの大容量化を抑制することができる。また、別置圧縮機201で昇圧した圧縮空気303を加湿装置11へ導入して圧縮空気と混合させるため、配管内で流体を混合するよりも混合促進の効果が高い。また、起動時に、圧縮機抽気空気にも加湿装置11による加湿がなされるため、空気流量が増加することにより駆動モータの大容量化抑制効果はさらに高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1である高湿分利用ガスタービンの軸流圧縮機1における主流流路の断面図を示す。
【図2】図1のA−A断面図を示す。
【図3】(a)は、本実施例の高湿分利用ガスタービンの簡略化した系統図を示す。(b)は、圧縮機の回転数に対する可変静翼の開度を示す。(c)は、圧縮機の回転数に対する抽気弁開度を示す。
【図4】実施例2である高湿分利用ガスタービンの軸流圧縮機1における主流流路の断面図を示す。
【図5】図4のA−A断面図を示す。
【図6】実施例2である高湿分利用ガスタービンの簡略化した系統図を示す。
【図7】実施例3である高湿分利用ガスタービンの軸流圧縮機1における主流流路の断面図を示す。
【図8】実施例4である高湿分利用ガスタービンの系統図を示す。
【図9】実施例5である高湿分利用ガスタービンの系統図を示す。
【図10】比較例である高湿分利用ガスタービンの概略図を示す。
【符号の説明】
【0039】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
4 発電機
6 再生熱交換器
7 給水加熱器
11 加湿装置
12 混合器
71 動翼
72 静翼
73 ケーシング
91 抽気スリット、
92 抽気口
93,94 抽気配管
101,102 可変機構
201 別置圧縮機
402 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機吸気空気に湿分を加える吸気加湿器を備えたガスタービンにおいて、
前記圧縮機から抽気して直接大気に排出される空気の流量を削減可能な空気排出量抑制手段を備えたことを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された圧縮空気と燃料とを混合燃焼させる燃焼器と、該燃焼器で生成された燃焼ガスで駆動するタービンと、前記圧縮機の吸気空気に湿分を加える吸気加湿器とを備えたガスタービンにおいて、
前記圧縮機は抽気口を有し、起動時に前記抽気口からの空気の抽気量を抑制可能な抽気空気量抑制手段を設けたことを特徴とする高湿分利用ガスタービン。
【請求項3】
請求項2に記載のガスタービンにおいて、
前記抽気空気量抑制手段は、前記圧縮機の中段または後段側静翼に設けられた翼の角度を可変にできる可変機構であることを特徴とするガスタービン。
【請求項4】
請求項3に記載のガスタービンにおいて、
前記圧縮機の抽気空気の全量が、タービン翼の冷却流路に供給されるよう構成されたことを特徴とするガスタービン。
【請求項5】
請求項3に記載のガスタービンにおいて、
前記圧縮機の吸気空気の全量が、前記燃焼器に供給されるよう構成されたことを特徴とするガスタービン。
【請求項6】
請求項5に記載のガスタービンにおいて、
前記圧縮機から抽気された空気を圧縮する別置圧縮機を有することを特徴とするガスタービン。
【請求項7】
空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された圧縮空気と燃料とを混合燃焼させる燃焼器と、該燃焼器で生成された燃焼ガスで駆動するタービンと、前記圧縮機の吸気空気に湿分を加える吸気加湿器とを備えたガスタービンにおいて、
前記圧縮機は中段または後段側静翼に翼の角度を可変にできる可変機構を有し、
前記圧縮機の吸気空気の全量が前記燃焼器に供給されるよう構成されたことを特徴とするガスタービン。
【請求項8】
空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機で圧縮された圧縮空気を水との熱交換により冷却する冷却器と、該冷却器で冷却された圧縮空気を加湿する加湿装置と、該加湿装置で加湿された空気を昇温する再生熱交換器と、該再生熱交換器で昇温された空気と燃料とを混合燃焼する燃焼器と、該燃焼器で生成された燃焼ガスにより駆動されるタービンと、該タービンを駆動させた燃焼ガスである排ガスを、前記再生熱交換器で空気と熱交換させた後、前記加湿装置に供給する水と熱交換させる給水加熱器と、該給水加熱器で水と熱交換した排ガス中の水分を凝縮させて回収する水回収装置と、前記圧縮機の吸気空気に湿分を加える吸気加湿器とを備えたガスタービンにおいて、
前記圧縮機は途中段から空気を抽気する抽気口を有し、該抽気口から抽気された抽気空気の全量を圧縮する別置圧縮機を有し、該別置圧縮機で圧縮された抽気空気の全量が前記加湿装置に流入するよう構成されたことを特徴とするガスタービン。
【請求項9】
圧縮機吸気空気に湿分を加える吸気加湿器を備えたガスタービンの運転方法において、
起動時に、前記圧縮機途中段から空気を抽気して直接大気に排出する際、圧縮機に設けられた空気排出量抑制手段を用いて排出空気量を削減することを特徴とするガスタービンの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−196399(P2008−196399A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32839(P2007−32839)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】