説明

高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物、高熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、それを用いた半導体パッケージとその製造方法

【課題】 被着体との密着性に優れ、加工ブレードの摩耗率が十分に小さく、且つ、硬化後に優れた熱伝導性を発揮する高熱伝導性フィルム状接着剤を得ることが可能な高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物、高熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、それを用いた半導体パッケージとその製造方法を提供すること。
【解決手段】 エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、無機充填剤(C)及びフェノキシ樹脂(D)を含有しており、前記無機充填剤(C)が、下記(i)〜(iii):
(i)平均粒径が0.1〜5.0μm、
(ii)モース硬度が1〜8、
(iii)熱伝導率が30W/(m・K)以上、
の全条件を満たし、且つ、
前記無機充填剤(C)の含有量が30〜70体積%であることを特徴とする高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物、高熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、それを用いた半導体パッケージとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化及び高機能化が進む中で、その内部に搭載される半導体パッケージにおいても高機能化が進んでおり、半導体パッケージ内部の半導体素子の処理速度はより高速化されている。しかしながら、処理速度の高速化に伴って半導体素子表面には熱が発生しやすくなるため、発生した熱によって、例えば、半導体素子の動作スピードが低下したり、電子機器の動作不良が引き起こされるといった問題があった。
【0003】
このような熱による悪影響を排除するため、半導体パッケージの構成部材には、発生した熱をパッケージ外部へ逃がす熱伝導性が要求されている。また、半導体素子及び配線基板間、もしくは半導体素子同士間を接合するいわゆるダイアタッチ材料においては、高い熱伝導性と共に、十分な絶縁性、接着信頼性が要求されている。
【0004】
さらに、このようなダイアタッチ材料としては、従来はペースト形態で使用されることが多くあったが、半導体パッケージの高機能化に伴ってパッケージ内部の高密度実装化が要求されていることから、樹脂流れや樹脂はい上がり等による半導体素子やワイヤーパッド等の他部材の汚染を防止するため、近年ではフィルム形態(ダイアタッチフィルム)での使用が増加している。
【0005】
しかしながら、ダイアタッチフィルムをウェハ裏面に貼り合わせる際や、ダイアタッチフィルムが設けられた半導体素子を実装するいわゆるダイアタッチ工程においては、ウェハ裏面や、特に半導体素子が搭載される配線基板の表面は必ずしも平滑な面状態ではないため、前記貼り合わせ時や前記搭載時にダイアタッチフィルムの粘度が高いとダイアタッチフィルムと被着体との間の密着性が低下して両者の界面に空気を巻き込むことがある。巻き込まれた空気はダイアタッチフィルムの加熱硬化後の接着力を低下させるだけでなく、パッケージクラックの原因となるといった問題があった。
【0006】
従来、いわゆるダイアタッチフィルムとして用いることができる材料としては、例えば、特許文献1において水酸化アルミニウムと二酸化ケイ素とからなる熱伝導性フィラー及びシリコン系樹脂からなる熱伝導部材のシートが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載されている熱伝導部材のシートにおいては、ある程度高い熱伝導性を有してはいるものの、被着体との密着性については未だ問題があった。
【0007】
また、特許文献2においては、酸化ケイ素等の無機フィラーを含有するエポキシ樹脂からなる接着シートが記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の接着シートにおいては、高い熱伝導性と絶縁性、及び、ある程度の粘着性を有するものの、やはり被着体に対する密着性については未だ不十分であった。
【0008】
さらに、特許文献3においては、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び特定のアルミナ粉末を含有する樹脂からなるフィルム状接着剤が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載されているフィルム状接着剤においては、高い熱伝導性及び絶縁性を有してはいるものの、被着体に対する密着性については未だ不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−286809号公報
【特許文献2】特開2008−280436号公報
【特許文献3】特開2007−246861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
半導体パッケージの製造工程においては、ダイアタッチフィルムと半導体素子が形成されたウェハとを同時に切断するいわゆるダイシング工程において、ダイアタッチフィルムによる加工ブレードの摩耗率が小さいことも必要である。
【0011】
しかしながら、ダイアタッチフィルムの熱伝導性を向上させるために上記特許文献1〜3に記載されているような水酸化アルミニウム等の熱伝導性の無機充填剤を用いると、ダイアタッチフィルムによる加工ブレードの摩耗率が大きくなり、切断工程(ダイシング工程)の開始後しばらくは所定の切断ができるものの、次第にダイアタッチフィルムの切断量が不十分になり、図1に示すように、ダイアタッチフィルムがフルカットされない部分ができてしまうといった加工不良が生じることを本発明者らは見出した。
【0012】
また、この不具合が生じないようにするためにブレードの交換頻度を多くすると生産性が低下するためコストアップに繋がり、他方、摩耗される量の小さいブレードを使用するとウェハに欠けができてしまうチッピング等が発生するため歩留低下を引き起こしてしまうといった問題があることを本発明者らは見出した。
【0013】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、被着体との密着性に優れ、加工ブレードの摩耗率が十分に小さく、且つ、硬化後に優れた熱伝導性を発揮する高熱伝導性フィルム状接着剤を得ることが可能な高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物、高熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、それを用いた半導体パッケージとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、フィルム状接着剤において80℃における溶融粘度が10000Pa・s以下となるようにすることにより、熱圧着によって被着体との優れた密着性が得られることを見出し、さらに、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、フェノキシ樹脂、及び、特定の含有量の特定の無機充填剤を含有せしめた高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物を用いることにより、前記溶融特性を有し、加工ブレードの摩耗率が十分に小さく、且つ、硬化後に優れた熱伝導性を発揮する高熱伝導性フィルム状接着剤を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物は、
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、無機充填剤(C)及びフェノキシ樹脂(D)を含有しており、前記無機充填剤(C)が、下記(i)〜(iii):
(i)平均粒径が0.1〜5.0μm、
(ii)モース硬度が1〜8、
(iii)熱伝導率が30W/(m・K)以上、
の全条件を満たし、且つ、
前記無機充填剤(C)の含有量が30〜70体積%であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物においては、前記エポキシ樹脂(A)が下記式(1):
【0017】
【化1】

【0018】
[式(1)中、nは0〜10の整数を示す。]
で表わされるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂であることが好ましく、前記無機充填剤(C)が窒化アルミニウムであることが好ましい。
【0019】
また、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤は、前記本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物を加熱乾燥することによって得られ、厚さが10〜150μmであることを特徴とするものであり、レオメーターにて20℃から10℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される80℃における溶融粘度が10000Pa・s以下であり、熱硬化後の熱伝導率が1.0W/(m・K)以上であることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明の半導体パッケージの製造方法は、
表面に半導体回路が形成されたウェハの裏面に、前記本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤を熱圧着して接着剤層を設ける第1の工程と、
前記ウェハとダイシングテープとを前記接着剤層を介して接着した後に、前記ウェハと前記接着剤層とを同時にダイシングすることにより前記ウェハと前記接着剤層とを備える半導体素子を得る第2の工程と、
前記接着剤層からダイシングテープを脱離し、前記半導体素子と配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着せしめる第3の工程と、
前記高熱伝導性フィルム状接着剤を熱硬化せしめる第4の工程と、
を含むことを特徴とするものであり、本発明の半導体パッケージは、前記本発明の半導体パッケージの製造方法により得られることを特徴とするものである。
【0021】
なお、本発明の構成によって前記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明においては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、フェノキシ樹脂、及び、特定の含有量の特定の無機充填剤を含有する高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物を用いることにより、特定の温度範囲において特定の低い溶融粘度となる高熱伝導性フィルム状接着剤が得られる。従って、例えば、特許文献2に記載されているような単に半硬化状態(Bステージ状態)にあることによって粘着性を向上させた接着シートや、特許文献3に記載されているような引張強度等を向上させることにより接着性を向上させたフィルム状接着剤と比較して、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤は、前記特定の温度範囲で熱圧着することにより表面に凹凸がある被着体との界面を隙間なく埋めることができるため、より優れた密着性を発揮することができると本発明者らは推察する。
【0022】
また、本発明においては、特定の硬度及び粒径を有する無機充填剤を特定の含有量で含有することにより、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物を用いて得られた高熱伝導性フィルム状接着剤においては、加工ブレードの摩耗率を小さくすることができると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、被着体との密着性に優れ、加工ブレードの摩耗率が十分に小さく、且つ、硬化後に優れた熱伝導性を発揮する高熱伝導性フィルム状接着剤を得ることが可能な高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物、高熱伝導性フィルム状接着剤、並びに、それを用いた半導体パッケージとその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来のダイシング工程において加工ブレードが摩耗したことにより生じた加工不良をディスプレー上に表示した中間調画像を示す写真である。
【図2A】本発明の半導体パッケージの製造方法の第1の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2B】本発明の半導体パッケージの製造方法の第2の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2C】本発明の半導体パッケージの製造方法の第3の工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2D】本発明の半導体パッケージの製造方法のボンディングワイヤーを接続する工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2E】本発明の半導体パッケージの製造方法により製造される半導体パッケージの好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0026】
先ず、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物について説明する。本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、無機充填剤(C)及びフェノキシ樹脂(D)を含有しており、前記無機充填剤(C)が、下記(i)〜(iii):
(i)平均粒径が0.1〜5.0μm、
(ii)モース硬度が1〜8、
(iii)熱伝導率が30W/(m・K)以上、
の全条件を満たし、且つ、前記無機充填剤(C)の含有量が30〜70体積%であることを特徴とするものである。
【0027】
本発明に係るエポキシ樹脂(A)は、エポキシ基を有する熱硬化性樹脂であり、このようなエポキシ樹脂(A)としては、重量平均分子量が300〜2000であることが好ましく、300〜1500であることがより好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であると単量体や2量体が増えて結晶性が強くなるため、フィルム状接着剤が脆弱になる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとフィルム状接着剤の溶融粘度が高くなるため、配線基板に圧着する際に基板上の凹凸を埋め込むことが十分にできず、配線基板との密着性が低下する傾向にある。なお、本発明において、重量平均分子量とはゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)(商品名:HLC−82A(東ソー(株)製)、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelG2000HXL(東ソー(株)製)(2本)、G4000HXL(東ソー(株)製)(1本)、温度:38℃、速度:1.0ml/min)により測定され、標準ポリスチレン(商品名:A−1000、東ソー(株)製)で換算した値である。
【0028】
前記エポキシ樹脂(A)としては、液体、固体又は半固体のいずれであってもよい。本発明において前記液体とは、軟化点が50℃未満であることをいい、前記固体とは、軟化点が60℃以上であることをいい、前記半固体とは、軟化点が前記液体の軟化点と固体の軟化点との間(50℃以上60℃未満)にあることをいう。前記エポキシ樹脂(A)としては、好適な温度範囲(例えば60〜120℃)で低溶融粘度に到達することができるフィルム状接着剤を得られるという観点から、軟化点が100℃以下であることが好ましい。なお、本発明において、軟化点とは、軟化点試験(環球式)法(測定条件:JIS−2817に準拠)により測定した値である。
【0029】
前記エポキシ樹脂(A)において、硬化体の架橋密度が高くなり、結果として、配合される無機充填剤(C)同士の接触確率が高く接触面積が広くなることでより高い熱伝導率が得られるという観点から、エポキシ当量は500g/eq以下であることが好ましく、150〜450g/eqであることがより好ましい。なお、本発明において、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)をいう。
【0030】
前記エポキシ樹脂(A)の骨格としては、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型、ビフェニル型、フルオレンビスフェノール型、トリアジン型、ナフトール型、ナフタレンジオール型、トリフェニルメタン型、テトラフェニル型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、トリメチロールメタン型等が挙げられるが、樹脂の結晶性が低く、良好な外観を有するフィルム状接着剤を得られるという観点から、トリフェニルメタン型、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型であることが好ましく、より架橋密度が高くなり、フィルム状接着剤を硬化せしめたときに分子構造の秩序性が向上し熱伝導性が向上する傾向にあるという観点から、前記エポキシ樹脂(A)としては、下記式(1):
【0031】
【化2】

【0032】
[式(1)中、nは0〜10の整数を示す。]
で表わされるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0033】
前記エポキシ樹脂(A)としては1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いる場合には、例えば、組成物の粘度の調節がしやすく、フィルム状接着剤とウェハとを熱圧着せしめる工程(ウェハラミネート工程)を低温(好ましくは40〜80℃)で実施した場合においてもウェハとフィルム状接着剤との密着性が発揮される傾向にあるという観点から、軟化点が50〜100℃であるエポキシ樹脂(a1)と軟化点が50℃未満であるエポキシ樹脂(a2)とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0034】
前記エポキシ樹脂(a1)としては、室温で固体又は半固体であり、軟化点が50〜100℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。軟化点が前記下限未満であると、得られるフィルム状接着剤の粘度が低下するため、常温においてフィルム形状を保持することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られるフィルム状接着剤において、好適な温度範囲(例えば60〜120℃)で低溶融粘度に到達することが困難となる傾向にある。
【0035】
前記エポキシ樹脂(a1)としては、重量平均分子量が500を超えて2000以下であることが好ましく、600〜1200であることがより好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であると単量体や2量体が増えて結晶性が強くなるため、フィルム状接着剤が脆弱になる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとフィルム状接着剤の溶融粘度が高くなるため、配線基板に圧着する際に基板上の凹凸を埋め込むことが十分にできず、配線基板との密着性が低下する傾向にある。
【0036】
このようなエポキシ樹脂(a1)の骨格としては、樹脂の結晶性が低く、良好な外観を有するフィルム状接着剤を得られるという観点から、トリフェニルメタン型、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型であることが好ましく、より架橋密度が高くなり、フィルム状接着剤を硬化せしめたときに分子構造の秩序性が向上し熱伝導性が向上する傾向にあるという観点から、前記エポキシ樹脂(a1)としては、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましく、上記式(1)で表わされるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂がさらに好ましい。
【0037】
前記エポキシ樹脂(a2)としては、フィルム状接着剤とウェハとを熱圧着せしめる工程(ウェハラミネート工程)を低温(好ましくは40〜80℃)で実施した場合においてもウェハとフィルム状接着剤との密着性が発揮される傾向にあるという観点から、軟化点が50℃未満であることが好ましく、軟化点が40℃以下であることがより好ましい。このようなエポキシ樹脂(a2)としては、重量平均分子量が300〜500であることが好ましく、350〜450であることがより好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であると単量体が増えて結晶性が強くなるため、フィルム状接着剤が脆弱になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶融粘度が高くなるため、ウェハラミネート工程の際にウェハとフィルム状接着剤との密着性が低下する傾向にある。
【0038】
このようなエポキシ樹脂(a2)の骨格としては、樹脂の結晶性が低く、良好な外観を有するフィルム状接着剤を得られるという観点から、オリゴマータイプの液状エポキシ樹脂であるビスフェノールA型、ビスフェノールA/F混合型、ビスフェノールF型、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型であることが好ましく、溶融粘度が低くより結晶性が低いという観点から、前記エポキシ樹脂(a2)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA/F混合型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0039】
前記エポキシ樹脂(a1)及び前記エポキシ樹脂(a2)の割合としては、質量比(a1:a2)が95:5〜30:70であることが好ましく、70:30〜40:60であることがより好ましい。エポキシ樹脂(a1)の含有量が前記下限未満であると、フィルム状接着剤のフィルムタック性が強くなりカバーフィルムやダイシングテープから剥離しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると組成物の粘度が高くなり、得られるフィルム状接着剤の性状が脆くなる傾向にある。
【0040】
前記エポキシ樹脂(A)としては、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物における含有量が5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満であると硬化せしめたときに架橋密度が高くなる樹脂成分が少なくなるため、フィルム状接着剤の熱伝導率が向上しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると主成分がオリゴマーとなるため、少しの温度変化でもフィルム状態(フィルムタック性等)が変化しやすくなる傾向にある。
【0041】
本発明に係るエポキシ樹脂硬化剤(B)としては、アミン類、酸無水物類、多価フェノール類等の公知の硬化剤を用いることができるが、前記エポキシ樹脂(A)及び前記フェノキシ樹脂(D)が低溶融粘度となる温度範囲を超える高温で硬化性を発揮し、速硬化性を有し、さらに、室温での長期保存が可能な保存安定性の高いフィルム状接着剤用組成物が得られるという観点から、潜在性硬化剤を用いることが好ましい。前記潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、イミダゾール類、ヒドラジド類、三弗化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン塩、及びこれらの変性物やマイクロカプセル型のものを挙げることができる。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
前記エポキシ樹脂硬化剤(B)の含有量は、通常、前記エポキシ樹脂(A)に対して0.5〜50質量%であり、1〜10質量%であることが好ましい。含有量が前記下限未満であると硬化時間が長くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると過剰の硬化剤がフィルム状接着剤中に残り、残硬化剤が水分を吸着するため、フィルム状接着剤を半導体に組み込んだ後の信頼性試験において不良が起こりやすくなる傾向にある。
【0043】
本発明に係る無機充填剤(C)は、高充填化が可能で流動性を有するという観点から粒状であり、その平均粒径は0.1〜5.0μmであることが必要である。平均粒径が前記下限未満であると充填剤同士が接触しにくくなり、フィルム状接着剤の熱伝導率が低くなる。他方、平均粒径が前記上限を超えるとロールナイフコーター等の塗工機で薄型のフィルム状接着剤を製造する際に、充填剤がきっかけとなりフィルム表面にスジを発生しやすくなったり、フィルム状接着剤による加工ブレードの摩耗率が大きくなる。さらに、前記無機充填剤(C)の平均粒径としては、熱伝導性を担保しつつ5μm以下の極薄フィルムを作製する場合には、0.5〜2.0μmであることが好ましい。なお、本発明において、平均粒径とは、レーザー回折・散乱法(測定条件:分散媒−ヘキサメタりん酸ナトリウム、レーザー波長:780nm、測定装置:マイクロトラックMT3300EX)により測定した粒子径分布において、粒子の全体積を100%としたとき粒子径の体積分率の累積カーブにおいて50%累積となるときの粒子径をいう。
【0044】
本発明に係る無機充填剤(C)は、モース硬度が1〜8である。モース硬度が前記上限を超えるとフィルム状接着剤による加工ブレードの摩耗率が大きくなる。また、前記無機充填剤(C)のモース硬度としては、フィルム状接着剤において程よい磨耗性を担保することで加工ブレードの刃先の樹脂目詰まりを防止するという観点から、3〜8であることが好ましい。なお、本発明において、モース硬度とは、10段階モース硬度計を用い、測定物に対し硬度の小さい鉱物から順番にこすり合わせ、測定物に傷がつくかつかないかを目測し、測定物の硬度を判定した値をいう。
【0045】
本発明に係る無機充填剤(C)は、熱伝導率が30W/以上(m・K)である。熱伝導率が前記下限未満であると目的の熱伝導率を担保するためにより多くの無機充填剤を配合することになり、その結果、フィルム状接着剤の溶融粘度が上昇し、配線基板に圧着する際に基板の凹凸を埋め込むことが十分にできず、配線基板との密着性が低下する。また、前記無機充填剤(C)の熱伝導率としては、少ない充填量で高い熱伝導率を担保するという観点から、100W/(m・K)以上であることが特に好ましい。なお、本発明において、充填剤の熱伝導率とは、レーザーフラッシュ法(測定条件:レーザーパルス幅0.4ms、レーザー波長1.06μm、測定装置:(株)アルバック製TC7000型)により熱拡散率を測定し、この値とフィラー種の密度と比熱との積により算出した値をいう。
【0046】
本発明に係る無機充填剤(C)の材質としては、電気絶縁性及び前記熱伝導率を有するものであればよく、例えば、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、前記無機充填剤(C)としては、フィルム状接着剤において、硬化後に優れた熱伝導性が発揮されるという観点から、窒化アルミニウムが好ましい。また、前記無機充填剤(C)としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いる場合には、より高い熱伝導率を有するフィルム状接着剤を得ることができるという観点から、前記無機充填剤(C)のうちの少なくとも1種が窒化アルミニウムであることがより好ましく、前記無機充填剤(C)の全量に対して50体積%以上が窒化アルミニウムであることがさらに好ましい。
【0047】
本発明に係る無機充填剤(C)は、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物における含有量が30〜70体積%である。含有量が前記下限未満であるとフィルム状接着剤における硬化後の熱伝導率が低下し、半導体パッケージに用いたときにパッケージ外部への放熱効率が低下する。他方、前記上限を超えるとバインダーとして働くエポキシ樹脂(A)及びフェノキシ樹脂(D)の含有量が相対的に少なくなるため、フィルム状接着剤の性状が脆くなる。また、前記含有量は、熱硬化後のフィルム状接着剤において高い熱伝導率(好ましくは1.0W/(m・K)以上)が得られ、且つ、フィルム状接着剤の溶融粘度の上昇が抑制でき、配線基板に圧着する際に基板上の凹凸を十分に埋め込んで基板との密着性が担保できる傾向にあるという観点から、40〜60体積%であることが特に好ましい。
【0048】
本発明に係るフェノキシ樹脂(D)は、重量平均分子量が10000以上の熱可塑性樹脂である。このようなフェノキシ樹脂(D)を用いることにより、得られるフィルム状接着剤において、室温におけるタック性や脆さが解消される。
【0049】
前記フェノキシ樹脂(D)としては、重量平均分子量が30000〜100000であることが好ましく、40000〜70000であることがより好ましい。重量平均分子量が前記下限未満であるとフィルム状接着剤の支持性が弱くなり、脆弱性が強くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶融粘度が高くなる傾向にある。また、前記フェノキシ樹脂(D)としては、ガラス転移温度(Tg)が40〜90℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が前記下限未満であるとフィルム状接着剤の常温におけるフィルムタック性が強くなり、カバーフィルムやダイシングテープから剥離しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとフィルム状接着剤の溶融粘度が高くなるため、配線基板に圧着する際に基板上の凹凸を埋め込むことが十分にできず、配線基板との密着性が低下する傾向にある。
【0050】
前記フェノキシ樹脂(D)の骨格としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールA/F型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールA/S型、カルド骨格型等が挙げられるが、前記エポキシ樹脂(A)と構造が類似しているために相溶性がよく、また、溶融粘度が低く接着性もよいという観点からは、ビスフェノールA型であることが好ましく、好適な温度範囲(例えば60〜120℃)で低溶融粘度に到達することができるフィルム状接着剤が得られるという観点からはビスフェノールA/F型であることが好ましく、高耐熱性を有するという観点からはカルド骨格型であることが好ましい。このようなフェノキシ樹脂(D)としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとから得られるビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンとから得られるビスフェノールA/F型フェノキシ樹脂等が挙げられる。前記フェノキシ樹脂(D)としては、これのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、例えば、YP−50S(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、YP−70(ビスフェノールA/F型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、FX−316(ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)、及び、FX−280S(カルド骨格型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造(株)製)等の市販のフェノキシ樹脂を前記フェノキシ樹脂(D)として用いてもよい。
【0051】
前記フェノキシ樹脂(D)としては、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物における含有量が1〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい。前記含有量が前記下限未満であるとフィルム状接着剤のフィルムタック性が強くなり、カバーフィルムやダイシングテープから剥離しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとフィルム状接着剤の溶融粘度が高くなるため、配線基板に圧着する際に基板上の凹凸を埋め込むことが十分にできず、配線基板との密着性が低下する傾向にある。
【0052】
本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物としては、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記無機充填剤(C)及び前記フェノキシ樹脂(D)の他に、本発明の効果を阻害しない範囲において、例えば、前記無機充填剤(C)以外の充填剤、カップリング剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤、ブタジエン系ゴムやシリコーンゴム等の応力緩和剤等の添加剤を含有していてもよい。本発明においては、前記エポキシ樹脂(A)と前記無機充填剤(B)との界面を補強することができ、優れた破壊強度及び接着性を有するフィルム状接着剤が得られるという観点から、カップリング剤を含有していることが好ましく、このようなカップリング剤としては、アミノ基、エポキシ基を含有したものがより好ましい。また、このような添加剤を含有する場合、その含有量は、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物において、3質量%以下であることが好ましい。
【0053】
次いで、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤について説明する。本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤は、前記高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物を加熱乾燥することによって得られることを特徴とする。
【0054】
本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤の製造方法の好適な一実施形態としては、前記高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物を溶媒に溶解させたワニスを離型処理した基材に塗工し、加熱乾燥を施す方法が挙げられるが、この方法に特に制限されるものではない。
【0055】
前記溶媒としては、公知の溶媒を適宜採用することができ、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、モノグライム、ジグライム等のエーテル類、及びこれらの混合物等が挙げられる。前記離型処理した基材としては、公知の基材に離型処理したものを適宜採用することができ、例えば、離型処理されたポリプロピレン(PP)、離型処理されたポリエチレン(PE)、離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。前記塗工方法としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ロールナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーター等が挙げられる。
【0056】
前記加熱乾燥は、前記高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物の硬化開始温度未満の温度で行う。このような温度としては、使用する樹脂の種類により異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、40〜100℃であることが好ましく、60〜100℃であることがより好ましい。温度が前記下限未満であるとフィルム状接着剤に残存する溶媒量が多くなり、フィルムタック性が強くなる傾向にあり、他方、硬化開始温度以上となると前記高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物が硬化してしまい、フィルム状接着剤の接着性が低下する傾向にある。また、前記加熱乾燥の時間としては、例えば、10〜60分間であることが好ましい。
【0057】
このように得られた本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤としては、厚さが10〜150μmであることが好ましい。厚さが前記下限未満であると配線基板表面の凹凸を十分に埋め込めず、十分な密着性が担保できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると製造時において溶媒を除去することが困難になるため、残存溶媒量が多くなり、フィルムタック性が強くなる傾向にある。
【0058】
本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤においては、レオメーターにて20℃から10℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される80℃における溶融粘度が10000Pa・s以下となることができる。前記溶融粘度としては、10〜10000Pa・sであることがより好ましい。溶融粘度が前記下限未満であると、ウェハと接着する際において、樹脂流れや樹脂はい上がり等によって他の部材を汚染する傾向にあり、他方、溶融粘度が前記上限を超えると、フィルム状接着剤をウェハ裏面や凹凸のある配線基板の表面に貼り合わせる際に被着体との界面に空気を巻き込みやすくなる傾向にある。
【0059】
本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤は、このような溶融粘度特性を有するため、好適な温度範囲(例えば60〜120℃)で被着体へ圧着することが可能であり、被着体に対して優れた密着性を発揮する。なお、本発明において、溶融粘度とは、所定の温度における溶融樹脂の粘性抵抗を測定することにより得られる値であり、80℃における溶融粘度とは、レオメーター(商品名:RS150、Haake社製)を用い、温度範囲20〜100℃、昇温速度10℃/minでの粘性抵抗の変化を測定し、得られた温度−粘性抵抗曲線において温度が80℃のときの粘性抵抗をいう。
【0060】
また、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤は、熱硬化後において、熱伝導率が1.0W/(m・K)以上とすることができる。前記熱伝導率としては、1.5W/(m・K)以上であることがより好ましい。熱伝導率が前記下限未満であると、発生した熱をパッケージ外部へ逃がしにくくなる傾向にある。本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤は硬化後にこのような優れた熱伝導率を発揮するため、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤をウェハや配線基板等の被着体に密着させ、熱硬化せしめることによって、半導体パッケージ外部への放熱効率が向上する。なお、本発明において、このような熱硬化後のフィルム状接着剤の熱伝導率とは、熱伝導率測定装置(商品名:HC−110、英弘精機(株)製)を用いて、熱流計法(JIS−A1412に準拠)により熱伝導率を測定した値をいう。
【0061】
前記熱硬化は、前記高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物の硬化開始温度以上の温度で行う。このような温度としては、使用する樹脂の種類により異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、120〜180℃であることが好ましく、120〜140℃であることがより好ましい。温度が硬化開始温度未満であると熱硬化が十分に進まず、熱硬化後のフィルム状接着剤の強度や熱伝導性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると硬化過程中にフィルム状接着剤中のエポキシ樹脂、硬化剤や添加剤等が揮発して接着剤層が発泡しやすくなる傾向にある。また、前記硬化処理の時間としては、例えば、10〜180分間であることが好ましい。さらに、前記熱硬化においては、0.1〜10MPa程度の圧力をかけることがより好ましい。
【0062】
次いで、図面を参照しながら本発明の半導体パッケージの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図2A〜図2Eは、本発明の半導体パッケージの製造方法の各工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【0063】
本発明の半導体パッケージの製造方法においては、先ず、第1の工程として、図2Aに示すように、表面に半導体回路が形成されたウェハ1の裏面に、前記本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤を熱圧着して接着剤層2を設ける。
【0064】
ウェハ1としては、表面に半導体回路が形成されたウェハを適宜用いることができ、例えば、シリコンウェハ、SiCウェハ、GaSウェハ等が挙げられる。接着剤層2としては、前記本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤を1層で単独で用いても2層以上を積層して用いてもよい。
【0065】
このような接着剤層2をウェハ1の裏面に設ける方法としては、前記高熱伝導性フィルム状接着剤をウェハ1の裏面に積層させることが可能な方法を適宜採用することができ、ウェハ1の裏面に前記高熱伝導性フィルム状接着剤を貼り合せた後、2層以上を積層する場合には所望の厚さとなるまで順次高熱伝導性フィルム状接着剤を積層させる方法や、高熱伝導性フィルム状接着剤を予め目的の厚さに積層した後にウェハ1の裏面に貼り合せる方法等を挙げることができる。また、このような接着剤層2をウェハ1の裏面に設ける際に用いる装置としては特に制限されず、例えば、ロールラミネーター等のような公知の装置を適宜用いることができる。
【0066】
接着剤層2をウェハ1の裏面に設ける際には、前記高熱伝導性フィルム状接着剤の溶融粘度が10000Pa・s以下となる温度以上であって且つ前記高熱伝導性フィルム状接着剤の熱硬化開始温度未満である温度範囲内の温度において前記高熱伝導性フィルム状接着剤をウェハ1の裏面に張り合わせることが好ましい。このような温度条件としては、使用する樹脂の種類により異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、40〜100℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。温度が前記下限未満であると、接着剤層2とウェハ1との界面に空気が巻き込まれやすくなる傾向にあり、接着剤層2が2層以上積層したものである場合には、前記高熱伝導性フィルム状接着剤の層間の接着が不十分になる傾向にある。他方、熱硬化開始温度以上となると前記高熱伝導性フィルム状接着剤が硬化してしまい、配線基板に接着するときの接着性が低下する傾向にある。また、このような熱圧着の時間としては、例えば1〜180秒間程度であることが好ましい。
【0067】
また、接着剤層2をウェハ1の裏面に設ける際には、0.1〜1MPa程度の圧力をかけることが好ましい。圧力が前記下限未満では、接着剤層2をウェハ1と貼り合わせるために時間がかかり、更にはボイドの発生を十分に防止できなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、接着剤のはみ出しを制御できなくなる傾向にある。
【0068】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第2の工程として、図2Bに示すように、ウェハ1とダイシングテープ3とを接着剤層2を介して接着した後に、ウェハ1と接着剤層2とを同時にダイシングすることによりウェハ1と接着剤層2とを備える半導体素子4を得る。
【0069】
ダイシングテープ3としては特に制限されず、適宜公知のダイシングテープを用いることができる。更に、ダイシングに用いる装置も特に制限されず、適宜公知のダイシング装置を用いることができる。
【0070】
本発明においては、接着剤層2が前記本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物を用いて得られる高熱伝導性フィルム状接着剤からなるため、ダイシング装置の加工ブレードの摩耗率が十分に小さい。例えば、厚さが100μmのシリコンウェハと高熱伝導性フィルム状接着剤からなる厚さが20μmの接着剤層とを、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC−ZH2030−SE(DD)、DISCO社製/Z2:NBC−ZH127F−SE(BB)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD−6340、DISCO社製)にて3.0×3.0mmサイズにダイシングを実施した場合には、カット長さ20mにおける加工ブレードの摩耗率を5.0%以下とすることができる。磨耗率が前記上限を超えると、ダイシング工程中に高熱伝導性フィルム状接着剤がフルカットされないといった不具合を生じる。また、加工ブレードの摩耗率や交換頻度も多くなり、コストアップや生産性低下の問題を生じる。
【0071】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第3の工程として、図2Cに示すように、接着剤層2からダイシングテープ3を脱離し、半導体素子4と配線基板5とを接着剤層2を介して熱圧着せしめる。
【0072】
配線基板5としては、表面に半導体回路が形成された基板を適宜用いることができ、例えば、プリント回路基板(PCB)、各種リードフレーム、及び、基板表面に抵抗素子やコンデンサー等の電子部品が搭載されているものが挙げられる。また、配線基板5として別の半導体素子を用いることにより、接着剤層2を介して半導体素子を複数個積層することもできる。
【0073】
このような配線基板5に半導体素子4を実装する方法としては特に制限されず、接着剤層2を利用して半導体素子4を配線基板5又は配線基板5の表面上に搭載された電子部品に接着させることが可能な従来の方法を適宜採用することができる。このような実装方法としては、上部からの加熱機能を有するフリップチップボンダーを用いた実装技術を用いる方法、下部からのみの加熱機能を有するダイボンダーを用いる方法、ラミネーターを用いる方法等の従来公知の加熱、加圧方法を挙げることができる。
【0074】
このように、前記高熱伝導性フィルム状接着剤からなる接着剤層2を用いて半導体素子4を配線基板5上に実装することで、電子部品により生じる配線基板5上の凹凸に、前記高熱伝導性フィルム状接着剤を追従させながら半導体素子4と配線基板5とを密着して固定することが可能となる。
【0075】
配線基板5と半導体素子4とを接着する際には、前記高熱伝導性フィルム状接着剤の溶融粘度が10000Pa・s以下となる温度以上であって且つ前記高熱伝導性フィルム状接着剤の熱硬化開始温度未満である温度範囲内の温度において配線基板5と半導体素子4を接着することが好ましい。このような温度条件下において配線基板5と半導体素子4とを接着することで、接着剤層2と配線基板5との界面に空気が巻き込まれにくくなる傾向にある。このような温度条件、時間条件及び圧力条件としては、前記第1の工程で述べたとおりである。
【0076】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第4の工程として、前記高熱伝導性フィルム状接着剤を熱硬化せしめる。前記熱硬化の温度としては、前記高熱伝導性フィルム状接着剤の熱硬化開始温度以上であれば特に制限がなく、使用する樹脂の種類により異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、120〜180℃であることが好ましく、120〜130℃であることがより好ましい。温度が熱硬化開始温度未満であると、熱硬化が十分に進まず、接着層2の強度や熱伝導性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると硬化過程中にフィルム状接着剤中のエポキシ樹脂、硬化剤や添加剤等が揮発して発泡しやすくなる傾向にある。また、前記硬化処理の時間としては、例えば、10〜180分間であることが好ましく、さらに、前記熱硬化においては、0.1〜10MPa程度の圧力をかけることがより好ましい。本発明においては、前記高熱伝導性フィルム状接着剤を熱硬化せしめることにより、優れた破壊強度及び熱伝導率を有する接着層2が得られ、配線基板5と半導体素子4とが強固に接着された半導体パッケージを得ることができる。
【0077】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、図2Dに示すように、配線基板5と半導体素子4とをボンディングワイヤー6を介して接続することが好ましい。このような接続方法としては特に制限されず、従来公知の方法、例えば、ワイヤーボンディング方式の方法、TAB(Tape Automated Bonding)方式の方法等を適宜採用することができる。
【0078】
次いで、図2Eに示すように、封止樹脂7により配線基板5と半導体素子4とを封止することが好ましく、このようにして半導体パッケージ8を得ることができる。封止樹脂7としては特に制限されず、半導体パッケージの製造に用いることができる適宜公知の封止樹脂を用いることができる。また、封止樹脂7を用いる方法としても特に制限されず、適宜公知の方法を採用することが可能である。
【0079】
このような本発明の半導体パッケージの製造方法によれば、ウェハ1との界面及び配線基板5上の凹凸を高熱伝導性フィルム状接着剤からなる接着剤層2によって埋め込むことができるため、ウェハ1と接着剤層2との間及び配線基板5と半導体素子4との間に空間を生じることなく半導体素子4を配線基板5に固定することができる。また、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、前記本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物を用いた高熱伝導性フィルム状接着剤を用いているため、加工ブレードの摩耗率を少なくすることができる。さらに、本発明の製造方法により製造された半導体パッケージは、接着層に用いている高熱伝導性フィルム状接着剤が硬化後に優れた熱伝導性を発揮するため、パッケージ外部への放熱効率が高い。
【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、熱伝導率、溶融粘度及び加工ブレード摩耗率はそれぞれ以下に示す方法により測定した。
【0081】
(熱伝導率の測定)
得られたフィルム状接着剤を一辺50mm以上の四角片に切り取り、厚みが5mm以上になるように切り取った試料を積層し、直径50mm、厚さ5mmの円盤状金型の上に置き、圧縮プレス成型機を用いて温度150℃、圧力2MPaにおいて10分間加熱して取り出した後、さらに乾燥機中において温度180℃で1時間加熱することによりフィルム状接着剤を熱硬化させ、直径50mm、厚さ5mmの円盤状試験片を得た。この試験片について、熱伝導率測定装置(商品名:HC−110、英弘精機(株)製)を用いて、熱流計法(JIS−A1412に準拠)により熱伝導率(W/(m・K))を測定した。
【0082】
(溶融粘度の測定)
得られたフィルム状接着剤を2.5×2.5cmサイズに切り取り、真空ラミネーター装置(商品名:MVLP−500、(株)名機製作所製)を用いて温度50℃、圧力0.3MPa、貼り合わせ時間10秒間の条件で、フィルム状接着剤を300μmの厚みまで積層して貼り合わせた試験片を得た。この試験片について、レオメーター(RS150、Haake社製)を用い、温度範囲20〜100℃、昇温速度10℃/minでの粘性抵抗の変化を測定し、得られた温度−粘性抵抗曲線から80℃における溶融粘度(Pa・s)を算出した。
【0083】
(加工ブレード摩耗率の測定)
先ず、得られたフィルム状接着剤をマニュアルラミネーター(商品名:FM−114、テクノビジョン社製)を用いて温度70℃、圧力0.3MPaにおいてダミーシリコンウェハ(8inchサイズ、厚さ100μm)に貼り合わせ、次いで、同マニュアルラミネーターを用いて室温、圧力0.3MPaにおいてフィルム状接着剤のダミーシリコンウェハと反対の面側にダイシングテープ(商品名:G−11、リンテック(株)製)及びダイシングフレーム(商品名:DTF2−8−1H001、DISCO社製)を貼り合わせて試験片とした。この試験片について、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC−ZH2030−SE(DD)、DISCO社製/Z2:NBC−ZH127F−SE(BB)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD−6340、DISCO社製)にて3.0×3.0mmサイズにダイシングを実施した。ダイシング前(加工前)と20mカット時点(加工後)とにおいてセットアップを実施し、非接触式(レーザー式)によりブレード刃先出し量を測定して、加工後におけるブレード磨耗量(加工前のブレード刃先出し量−加工後のブレード刃先出し量)を算出した。この磨耗量から、次式:
加工ブレード磨耗率(%)=(加工後のブレード磨耗量)÷(加工前のブレード刃先出し量)×100
により、加工ブレード磨耗率(%)を算出した。
【0084】
(実施例1)
先ず、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(商品名:EPPN−501H、重量平均分子量:1000、軟化点:55℃、固体、エポキシ当量:167、日本化薬(株)製)55質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD−128、重量平均分子量:400、軟化点:25℃以下、液体、エポキシ当量:190、新日化エポキシ製造(株)製)49質量部、及び、ビスフェノールA/F型フェノキシ樹脂(商品名:YP−70、重量平均分子量:55000、Tg:70℃、新日化エポキシ製造(株)製)30質量部を秤量し、91質量部のメチルイソブチルケトン(MIBK)を溶媒として500mlのセパラブルフラスコ中において温度110℃で2時間加熱攪拌し、樹脂ワニスを得た。次いで、この樹脂ワニス225質量部を800mlのプラネタリーミキサーに移し、窒化アルミニウム(商品名:Hグレード、平均粒径1.1μm、モース硬度8、熱伝導率200W/(m・K)、(株)トクヤマ製)355質量部、イミダゾール型硬化剤(商品名:2PHZ−PW、四国化成(株)製)9質量部を加えて室温において1時間攪拌混合後、真空脱泡して混合ワニスを得た。次いで、得られた混合ワニスを厚さ50μmの離型処理されたPETフィルム上に塗布して加熱乾燥(100℃で10分間保持)し、厚さが20μmであるフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤の溶融粘度及び加工ブレード摩耗率、並びに、熱硬化後の熱伝導率を測定した。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0085】
(実施例2)
窒化アルミニウム(商品名:Hグレード、平均粒径1.1μm、モース硬度8、熱伝導率200W/(m・K)、(株)トクヤマ製)の使用量を489質量部に代えたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤について実施例1と同様の測定を行った。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0086】
(実施例3)
窒化アルミニウム(商品名:Hグレード、平均粒径1.1μm、モース硬度8、熱伝導率200W/(m・K)、(株)トクヤマ製)の使用量を267質量部に代えたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤について実施例1と同様の測定を行った。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0087】
(実施例4)
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(商品名:EPPN−501H、重量平均分子量:1000、軟化点:55℃、固体、エポキシ当量:167、日本化薬(株)製)をクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:ECON−1020−80、重量平均分子量:1200、軟化点:80℃、固体、エポキシ当量:200、日本化薬(株)製)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤について実施例1と同様の測定を行った。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0088】
(実施例5)
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(商品名:EPPN−501H、重量平均分子量:1000、軟化点:55℃、固体、エポキシ当量:167、日本化薬(株)製)をビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD−011、重量平均分子量:1000、軟化点:70℃、固体、エポキシ当量:450、新日化エポキシ製造(株)製)に代えたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤について実施例1と同様の測定を行った。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0089】
(実施例6)
窒化アルミニウム(商品名:Hグレード、平均粒径1.1μm、モース硬度8、熱伝導率200W/(m・K)、(株)トクヤマ製)に代えて、窒化アルミニウム(商品名:5.0μm窒化アルミニウム、平均粒径5.0μm、モース硬度8、熱伝導率200W/(m・K)、(株)トクヤマ製)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤について実施例1と同様の測定を行った。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0090】
(実施例7)
窒化アルミニウム(商品名:5.0μm窒化アルミニウム、平均粒径5.0μm、モース硬度8、熱伝導率200W/(m・K)、(株)トクヤマ製)の使用量を489質量部に代えたこと以外は実施例6と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤について実施例1と同様の測定を行った。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0091】
(実施例8)
窒化アルミニウム(商品名:5.0μm窒化アルミニウム、平均粒径5.0μm、モース硬度8、熱伝導率200W/(m・K)、(株)トクヤマ製)の使用量を267質量部に代えたこと以外は実施例6と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤について実施例1と同様の測定を行った。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0092】
(比較例1)
窒化アルミニウム(商品名:Hグレード、平均粒径1.1μm、モース硬度8、熱伝導率200W/(m・K)、(株)トクヤマ製)355質量部に代えて球状シリカ(商品名:FB−3SDX、平均粒径3.0μm、モース硬度7、熱伝導率1.0W/(m・K)、電気化学工業(株)製)を237質量部使用したこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤について実施例1と同様の測定を行った。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0093】
(比較例2)
窒化アルミニウム(商品名:Hグレード、平均粒径1.1μm、モース硬度8、熱伝導率200W/(m・K)、(株)トクヤマ製)355質量部に代えて酸化マグネシウム(商品名:クールフィラー、平均粒径40μm、モース硬度5.5、熱伝導率13W/(m・K)、タテホ化学工業(株)製)を385質量部使用したこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤について実施例1と同様の測定を行った。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0094】
(比較例3)
窒化アルミニウム(商品名:Hグレード、平均粒径1.1μm、モース硬度8、熱伝導率200W/(m・K)、(株)トクヤマ製)355質量部に代えて球状アルミナ(商品名:AX3−15R、平均粒径3.0μm、モース硬度9、熱伝導率36W/(m・K)、新日鉄マテリアルズ(株)製)を409質量部使用したこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤について実施例1と同様の測定を行った。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0095】
(比較例4)
窒化アルミニウム(商品名:Hグレード、平均粒径1.1μm、モース硬度8、熱伝導率200W/(m・K)、(株)トクヤマ製)355質量部に代えて窒化ホウ素(商品名:HP−01、平均粒径10μm、モース硬度2、熱伝導率60W/(m・K)、水島合金鉄(株)製)を247質量部使用したこと以外は実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を得た。得られたフィルム状接着剤について実施例1と同様の測定を行った。得られた結果をフィルム状接着剤の組成と共に表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜8で得られた高熱伝導性フィルム状接着剤は、80℃において十分に低い溶融粘度を有し、加工ブレードの摩耗率が十分に小さく、且つ、硬化後に優れた熱伝導性を発揮することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0098】
以上説明したように、本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物によれば、被着体との密着性に優れ、加工ブレードの摩耗率が十分に小さく、且つ、硬化後に優れた熱伝導性を発揮する高熱伝導性フィルム状接着剤を得ることが可能となる。
【0099】
また、本発明の半導体パッケージの製造方法によれば、ウェハとの界面や配線基板上の凹凸を本発明の高熱伝導性フィルム状接着剤からなる接着剤層によって埋め込むことができるため、配線基板と半導体素子との間に空間を生じることなく半導体素子を配線基板に固定することができ、また、加工ブレードの摩耗率を少なくすることができる。
【0100】
さらに、本発明の半導体パッケージは、接着剤層に用いている高熱伝導性フィルム状接着剤が硬化後に優れた熱伝導性を発揮するため、パッケージ外部への放熱効率が高い。
【0101】
従って、本発明は半導体パッケージ内の半導体素子と配線基板との間や半導体素子と半導体素子との間を接合するための技術として非常に有用である。
【符号の説明】
【0102】
1…ウェハ、2…接着剤層、3…ダイシングテープ、4…半導体素子、5…配線基板、6…ボンディングワイヤー、7…封止樹脂、8…半導体パッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、無機充填剤(C)及びフェノキシ樹脂(D)を含有しており、前記無機充填剤(C)が、下記(i)〜(iii):
(i)平均粒径が0.1〜5.0μm、
(ii)モース硬度が1〜8、
(iii)熱伝導率が30W/(m・K)以上、
の全条件を満たし、且つ、
前記無機充填剤(C)の含有量が30〜70体積%であることを特徴とする高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)が下記式(1):
【化1】

[式(1)中、nは0〜10の整数を示す。]
で表わされるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。
【請求項3】
前記無機充填剤(C)が窒化アルミニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の高熱伝導性フィルム状接着剤用組成物を加熱乾燥することによって得られ、厚さが10〜150μmであることを特徴とする高熱伝導性フィルム状接着剤。
【請求項5】
レオメーターにて20℃から10℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される80℃における溶融粘度が10000Pa・s以下であり、
熱硬化後の熱伝導率が1.0W/(m・K)以上であること、
を特徴とする請求項4に記載の高熱伝導性フィルム状接着剤。
【請求項6】
表面に半導体回路が形成されたウェハの裏面に、請求項4又は5に記載の高熱伝導性フィルム状接着剤を熱圧着して接着剤層を設ける第1の工程と、
前記ウェハとダイシングテープとを前記接着剤層を介して接着した後に、前記ウェハと前記接着剤層とを同時にダイシングすることにより前記ウェハと前記接着剤層とを備える半導体素子を得る第2の工程と、
前記接着剤層からダイシングテープを脱離し、前記半導体素子と配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着せしめる第3の工程と、
前記高熱伝導性フィルム状接着剤を熱硬化せしめる第4の工程と、
を含むことを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により得られることを特徴とする半導体パッケージ。

【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−207222(P2012−207222A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58702(P2012−58702)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】