説明

高耐熱性ゲル組成物、コーティング剤及び封止方法

【課題】
煩雑な処理や高価な組成物を必要とすることなく、電気接点障害を生じず、透明で優れた耐熱性を有する高耐熱性ゲル組成物、コーティング剤及びコーティング方法を提供する。
【解決手段】
(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体を50質量%以上100質量%以下含む架橋性シリル基含有有機重合体と、(B)硬化触媒と、を含み、ちょう度が20以上であるようにした。(C)可塑剤をさらに含むことが好ましく、前記可塑剤(C)が、トリメリット酸エステル類であることがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐熱性ゲル組成物、コーティング剤及び封止方法に関し、さらに詳しくは、耐熱性に優れ、透明で、電子部品等に対して良好な密着性を有し、電気接点障害を生じない高耐熱性ゲル組成物、コーティング剤及び該コーティング剤を用いて電子部品をコーティング、ポッティング、ディッピング又はモールディング(本発明においては、以上を合わせてコーティングないし封止と称する)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気・電子分野、光学・オプトエレクトロニクス、センサーなどの分野でコーティング剤やポッティング剤として、シリコーンゲル組成物やウレタンゲル組成物が用いられてきた。特にシリコーンゲル組成物は、電気・電子分野では、部品のポッティング、封止用として、特にパワートランジスター、IC、コンデンサー等の制御用回路素子を被覆し、熱的及び機械的障害から保護するための被覆材料として使用されている。
【0003】
しかしながら、シリコーンゲル組成物は、一般に低分子量環状シロキサンを含有しており、この低分子量シロキサンによる電気接点障害が問題となっている。低分子量シロキサン対策として、低分子量シロキサンを除去する方法や、含有量を低減させる方法等が検討されているが、いずれも煩雑な処理や高価な組成物を必要とするなど問題があった(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0004】
上記問題を解決するために、シリコーンゲル組成物以外の材料に切り替えることも検討されてきた。例えば、特許文献5は架橋性シリル基含有有機重合体と、エポキシ樹脂及び/又はポリオールである液状有機化合物とを含むゲル組成物を開示している。しかしながら、近年、電子基盤が高温化で使用される機会が増えており、特許文献5記載のゲル組成物では耐熱性が不十分である。
【特許文献1】特開平6−329803号公報
【特許文献2】特開2001−26648号公報
【特許文献3】特開平6−136270号公報
【特許文献4】特開平6−321966号公報
【特許文献5】特開2004−190010号公報
【特許文献6】特開昭52−73998号公報
【特許文献7】特開昭55−9669号公報
【特許文献8】特開昭59−122541号公報
【特許文献9】特開昭60−6747号公報
【特許文献10】特開昭61−233043号公報
【特許文献11】特開昭63−112642号公報
【特許文献12】特開平3−79627号公報
【特許文献13】特開平4−283259号公報
【特許文献14】特開平5−70531号公報
【特許文献15】特開平5−287186号公報
【特許文献16】特開平11−80571号公報
【特許文献17】特開平11−116763号公報
【特許文献18】特開平11−130931号公報
【特許文献19】特開平11−100427号公報
【特許文献20】特開2000−143757号公報
【特許文献21】特開2000−169544号公報
【特許文献22】特開2002−212415号公報
【特許文献23】特許第3030020号公報
【特許文献24】特許第3295663号公報
【特許文献25】特許第3313360号公報
【特許文献26】特許第3317353号公報
【特許文献27】特許第3350011号公報
【特許文献28】特開昭59−78223号公報
【特許文献29】特開昭60−228516号公報
【特許文献30】特開2001−40037号公報
【特許文献31】特開2004−51830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した問題点に鑑みなされたもので、煩雑な処理や高価な組成物を必要とすることなく、電気接点障害を生じず、透明で優れた耐熱性を有する高耐熱性ゲル組成物、コーティング剤及びコーティング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の高耐熱性ゲル組成物は、(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体を50質量%以上100質量%以下含む架橋性シリル基含有有機重合体と、(B)硬化触媒とを含み、ちょう度が20以上であることを特徴とする。なお、本発明において、ゲル組成物とは、硬化後にゲル状となる組成物を意味するものである。
【0007】
本発明の高耐熱性ゲル組成物が、(C)可塑剤をさらに含むことが好ましく、前記可塑剤(C)が、トリメリット酸エステル類であることがより好ましい。
【0008】
前記架橋性シリル基含有ビニル系重合体が、架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体であることが好適である。なお、本発明において、アクリルとメタクリルをあわせて(メタ)アクリルと称する。
【0009】
本発明のコーティング剤は、前記本発明の高耐熱性ゲル組成物を含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の封止方法は、前記本発明のコーティング剤を用いて電子部品等を封止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高耐熱性ゲル組成物及び本発明のコーティング剤によれば、煩雑な処理や高価な組成物を必要とすることなく、電気接点障害を生じず、透明で優れた耐熱性を有する高耐熱性ゲル組成物及びコーティング剤を提供することができ、本発明の封止方法により、煩雑な処理や高価な組成物を必要とすることなく、電気接点障害を生じず、優れた耐熱性を有するように、電子部品を封止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これらの実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0013】
本発明の高耐熱性ゲル組成物は、下記成分(A)及び(B)を含有し、ちょう度が20以上であることを特徴とする。
(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体を50質量%以上100質量%以下含む架橋性シリル基含有有機重合体、
(B)(A)に対する硬化触媒。
【0014】
前記(A)成分は、架橋性シリル基含有有機重合体中の架橋性シリル基含有ビニル系重合体の含有割合が50質量%以上の重合体であり、具体的には、架橋性シリル基含有ビニル系重合体単独、又は架橋性シリル基含有ビニル系重合体と架橋性シリル基を有する非ビニル系重合体との混合物であり、該混合物中のビニル系重合体の含有割合が50質量%以上のものが挙げられる。前記架橋性シリル基含有ビニル系重合体の主鎖は、ビニル系モノマーにより構成されるが、成分(A)中のビニル系モノマーが質量比で50%以上含まれる範囲内であれば、ビニル系モノマーを他の化合物と重合させた重合体を用いても良い。
【0015】
前記(A)成分において、優れた耐熱性を得るために、架橋性シリル基含有ビニル系重合体を50質量%以上含む必要があり、架橋性シリル基含有有機重合体中の架橋性シリル基含有ビニル系重合体の含有割合が70〜100質量%であることがより好ましい。
【0016】
前記(A)成分として用いられる架橋性シリル基含有機重合体としては、従来公知のものを広く使用でき、分子内に、シロキサン結合を形成することによって架橋してゴム状硬化物を形成する、シリル基を含有する有機重合体であれば、特に限定されない。このような架橋性シリル基含有有機重合体としては、例えば、特許文献6〜31中に開示されているものを挙げることができる。上記架橋性シリル基含有有機重合体としては具体的には、分子内に架橋性シリル基を含有する、主鎖がそれぞれオルガノシロキサンを含有していてもよい、ビニル系重合体、ビニル変性ポリオキシアルキレン重合体、ポリオキシアルキレン重合体、ポリエステル重合体、アクリル酸エステル重合体、メタアクリル酸エステル重合体、及びこれらの共重合体、並びにこれらの混合物等が好適な例として挙げられる。
【0017】
前記架橋性シリル基は、特に限定はないが、分子内に1〜6個含まれるのが一般的である。架橋性シリル基の位置は特に限定されず、有機重合体分子鎖の末端あるいは内部にあってもよく、両方にあってもよいが、分子鎖末端にあることが好ましい。更に、架橋性シリル基は、架橋しやすく製造しやすい下記一般式(1)で示されるものが好ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
〔式(1)中、Rは炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基であり、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。Rが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。Xは水酸基又は加水分解性基であり、ハロゲン原子、水素原子、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基及びアミノオキシ基から選択される基が好ましく、アルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が最も好ましい。Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。nは1〜3である。〕
【0020】
前記架橋性シリル基含有有機重合体において、架橋性シリル基が複数存在する場合、これらは同じであっても異なっていても良く、さらに、前記式(1)中のnの数も同じであっても異なっていても良い。また、含有される架橋性シリル基の異なる有機重合体を2種以上用いても良い。
【0021】
前記成分(A)に含まれる架橋性シリル基含有ビニル系重合体の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルパーフルオロブチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2,2−ジパーフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチルパーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族ビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。これらビニル系モノマーの中では(メタ)アクリル系モノマーが特に好ましい。
【0022】
前記架橋性シリル基含有ビニル系重合体の製造法は、特に限定されないが、例えば、特許文献30及び31に開示されているような制御ラジカル重合法が好ましく、リビングラジカル重合法がより好ましく、原子移動ラジカル重合法がさらに好ましい。
【0023】
上記成分(B)としては、成分(A)に対し硬化触媒の作用を示すものであれば、特に限定されないが、例えば、有機金属化合物やアミン類等が挙げられ、特にシラノール縮合触媒を用いることが好ましい。前記硬化触媒(B)としては、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジメチルマレート、ジブチル錫ジエチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジブチル錫ジトリデシルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジエチルマレート、ジオクチル錫ジイソオクチルマレート等の4価のスズ化合物類;オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫等の2価のスズ化合物類;モノブチル錫トリスオクトエートやモノブチル錫トリイソプロポキシド等のモノブチル錫化合物やモノオクチル錫化合物等のモノアルキル錫類;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉄、カルボン酸チタニウム、カルボン酸鉛、カルボン酸バナジウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸カルシウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸バリウム、カルボン酸マンガン、カルボン酸セリウム、カルボン酸ニッケル、カルボン酸コバルト、カルボン酸亜鉛、カルボン酸アルミニウム等のカルボン酸(2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、バーサチック酸、オレイン酸、ナフテン酸等)金属塩、あるいはこれらと後述のラウリルアミン等のアミン系化合物との反応物および混合物;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、ブチルステアリルアミン等の脂肪族第二アミン類;トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の脂肪族第三アミン類;トリアリルアミン、オレイルアミン、などの脂肪族不飽和アミン類;ラウリルアニリン、ステアリルアニリン、トリフェニルアミン等の芳香族アミン類;および、その他のアミン類として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等のアミン系化合物、あるいはこれらのアミン系化合物のカルボン酸等との塩;ラウリルアミンとオクチル酸錫の反応物あるいは混合物のようなアミン系化合物と有機錫化合物との反応物および混合物;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン等のアミノ基を有するシランカップリング剤;等のシラノール縮合触媒、さらには他の酸性触媒、塩基性触媒等の公知のシラノール縮合触媒等が挙げられる。
【0024】
成分(B)の配合割合は特に限定されないが、架橋速度、硬化物の物性などの点から、架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、1〜20質量部用いることがより好ましい。これらの硬化触媒は、単独で使用しても良く、2種以上併用しても良い。
【0025】
本発明において、ゲル組成物のちょう度を20以上にする方法は特に限定されないが、成分(C)可塑剤を添加することによりちょう度を調整することが好適である。可塑剤としては特に限定されないが、物性の調整、性状の調節等の点から、例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジブチルセバケート、コハク酸イソデシル等の非芳香族二塩基酸エステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシリノール酸メチル等の脂肪族エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;トリメリット酸エステル類;ポリスチレンやポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、ポリクロロプレン;塩素化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル、等の炭化水素系油;プロセスオイル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールとこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体等のポリエーテル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤類;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類等が挙げられる。また、架橋性シリル基を1個未満含むものも可塑剤として同様に使用できる。特にトリメリット酸エステル類が耐熱性が高く、粘度が低いため好ましい。
【0026】
成分(C)の配合割合は特に限定されないが、架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して、0〜1000質量部が好ましく、50〜500質量部用いることがより好ましく、100〜400質量部用いることがさらに好ましい。これら可塑剤は、単独で使用しても良く、2種以上併用しても良い。
【0027】
また、本発明の高耐熱性ゲル組成物に、更に、シランカップリング剤を添加することが好ましい。シランカップリング剤としては、具体的には、アミノ基や、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基、イソシアネート基、イソシアヌレート、ハロゲン等の官能基をもったシランカップリング剤が例示でき、その具体例としては、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類等が挙げられる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、ブロックイソシアネートシラン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。これらのシランカップリング剤については、1種あるいは2種以上のものを同時に使用することも可能である。
【0028】
本発明の高耐熱性ゲル組成物には、ゲル状組成物としての性能を阻害しない限りにおいて、上記した成分に加えて、適宜充填剤や顔料、可塑剤、接着付与剤、安定剤、ワックス、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、揺変剤、着色剤等の公知の添加剤を配合することができる。例えば、着色剤又は顔料を用いると、本発明の高耐熱性ゲル組成物によりコーティングする部品を意識的に外部から見えないようにすることができ好ましい。
【0029】
本発明の高耐熱性ゲル組成物は、必要に応じて1液型とすることもできるし、2液型とすることもできる。また、硬化促進のために、本発明の高耐熱性ゲル組成物に水を加えたり、加熱しても良い。
【0030】
本発明の高耐熱性ゲル組成物は、コーティング剤として好適に用いられる。本発明の高耐熱性ゲル組成物を含有する本発明のコーティング剤は、耐熱性に優れ、電子・電気部品(本発明では、電子部品と称す)等に対して良好な密着性を有し、電気接点障害を生じないため、電子部品等をコーティング、ポッティング、ディッピング、又はモールディングするためのコーティング剤として特に好適に用いられる。
【実施例】
【0031】
以下に本発明の実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、この実施例は例示的に示されるもので、限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0032】
(実施例1)
表1に示すように、架橋性シリル基含有ビニル系重合体としてSA−120S(株式会社カネカ製)100質量部、可塑剤としてARUFON UP−1000(東亜合成(株)製)200質量部、酸化防止剤としてイルガノックス245(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)2質量部を配合し、撹拌しながら100℃まで加熱する。この温度を保持しながら1時間減圧状態下で撹拌し、系中の水分を除去した後、室温まで冷却する。冷却後硬化触媒としてネオスタンU−220(日東化成(株)製)を2質量部添加し、さらに減圧条件下で10分間撹拌を行い、目的組成物を得た。
【0033】
【表1】

【0034】
表1における各配合物質の配合割合は質量部で示され、*1〜*7は次の通りである。
*1)架橋性シリル基含有ビニル系重合体、商品名SA−120S:株式会社カネカ製(ビニル系重合体の主鎖を構成するモノマー単位:100%(メタ)アクリル系モノマー)
*2)架橋性シリル基含有ビニル系重合体、商品名SA―310S:株式会社カネカ製(ビニル系重合体の主鎖を構成するモノマー単位:100%(メタ)アクリル系モノマー)
*3)架橋性シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体、MSポリマー S203:株式会社カネカ製の商品名(重合体の主鎖におけるビニル系モノマーの含有量0%)
*4)アクリル系重合体、商品名ARUFON UP−1000:東亞合成(株)製(可塑剤)
*5)トリメリット酸エステル、商品名トリメックス NewNSK:花王(株)製(可塑剤)
*6)フェノール系酸化防止剤、商品名イルガノックス 245:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
*7)錫系硬化触媒、商品名ネオスタン U−220:日東化成(株)製
【0035】
前記得られた目的組成物に対し、下記試験を行った。結果を表2に示す。
1.耐熱性試験
前記得られた目的組成物を23℃50%RH雰囲気下で7日間養生し、硬化物を得た。この硬化物を130℃雰囲気下に30日間放置し、取り出した後に硬化物の状態を観察する。評価基準は下記の通りである。
○:変化なし、×:軟化、液状化
【0036】
2.シロキサンの分析
上記耐熱性試験と同様の方法で得られた硬化物1gにクロロホルム10mLを加えて24時間可溶物を抽出した。この液をガスクロマトグラフィー分析にかけ、低分子環状シロキサン(D3〜D11)が検出されるか分析を行う。シロキサンが検出されなかった場合を○、検出された場合を×とした。
【0037】
3.ちょう度測定
上記耐熱性試験と同様の方法で得られた硬化物をJIS K 2220 7.ちょう度試験方法に準じ、1/4円すいを用いてちょう度を測定した。評価基準は下記の通りである。
○:20以上、×:20未満
【0038】
4.ブリード
上記耐熱性試験と同様の方法で得られた硬化物を23℃50%RH条件下に30日間放置した後、触手により液状分がブリードしていないか確認した。ブリードなしを○、ブリードありを×とした。
【0039】
5.透明性
前記得られた目的組成物を直径5cmの紙コップ(予めマジックで底に○印を書き込んでおく)に約15mmの深さになるように流し込み、23℃50%RH条件下で7日養生硬化させる。養生後に底の○印が目視できるかを確認した。○印が確認された場合を○、確認不可能であった場合を×とした。
【0040】
6.粘度
前記得られた目的組成物の23℃条件下における粘度をJIS K 6833 「6.3粘度」のBH型粘度計を用いて測定する。
【0041】
【表2】

【0042】
表2に示した如く、実施例1〜6の組成物は、ちょう度が20以上であり、優れた耐熱性を有し、シロキサンが検出されないため接点障害の問題が解消されており、ブリード、透明性及び粘度に関して良好な結果を示した。一方、比較例1の組成物はちょう度が20未満で硬度に問題があり、架橋性シリル基含有有機重合体中の架橋性シリル基含有ビニル系重合体の配合割合が40質量%である比較例2の組成物は耐熱性が悪かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)架橋性シリル基含有ビニル系重合体を50質量%以上100質量%以下含む架橋性シリル基含有有機重合体と、
(B)硬化触媒と、
を含み、ちょう度が20以上であることを特徴とする高耐熱性ゲル組成物。
【請求項2】
(C)可塑剤をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の高耐熱性ゲル組成物。
【請求項3】
前記架橋性シリル基含有ビニル系重合体が架橋性シリル基含有(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の高耐熱性ゲル組成物。
【請求項4】
前記可塑剤(C)が、トリメリット酸エステル類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の高耐熱性ゲル組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の高耐熱性ゲル組成物を含むことを特徴とするコーティング剤。
【請求項6】
請求項5記載のコーティング剤を用いて電子部品を封止することを特徴とする封止方法。


【公開番号】特開2006−188632(P2006−188632A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2817(P2005−2817)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】