説明

高表面積繊維を有する改良された複合ろ材

本発明は、高表面積繊維及びそれから製造される改良されたフィルター複合材に向けられる。さらに詳しくは、該複合材は好ましくは、増大された吸収及び強度のための高表面積繊維を有する翼状部のある繊維の層と追加のろ過のためのメルトブローン層を含む。一つの好適な態様において、高表面積繊維は、複数の溝ないし流路を規定する複数の突起を持つ中間領域を有するが、これによって繊維の表面積が増大する。一つの好適な態様において、高表面積繊維は約140,000cm/g以上の比表面積と約1.0〜約2.0のデニールを有する。本発明の高表面積繊維は、熱可塑性ポリマーと溶解性の鞘を用い、二成分押出法を用いて製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2006年11月3日出願の米国特許出願第11/592,370号の一部継続出願である。前記出願特許は引用によって本明細書に明示的に援用する。
【0002】
本発明は一般的に、増大された耐久性、吸収性及びその他の所望の性質を示す複合材に関する。さらに詳しくは、本発明は、増大された吸収のために高表面積特性を有する翼状部のある繊維(winged-fiber)の層を含む複合材に向けられる。
【背景技術】
【0003】
メルトブローン(meltblown)複合材は当該技術分野でろ過技術及び用途と共に使用されることで良く知られている。メルトブローイングは、繊維状ウェブ又は層をポリマー又は樹脂から直接製造するためのプロセスで、高速気流又はその他の適当な力を使用してフィラメントを繊細化している。メルトブローン繊維は最も一般的にはポリプロピレンから製造される。これはメルトブローン法から容易に形成され、簡単に静電気的に帯電して帯電材となる。メルトブローイングでは一般的に直径2μm〜5μmの範囲の直径を有するマイクロ繊維が製造されるが、そのようなマイクロ繊維は、メルトブローン装置のポリマー処理量などの処理パラメーターを変更することによって及び高メルトフローポリマーを使用することによって、0.5μmほどの直径にすることもできる。極めて小さい直径を有するメルトブローン繊維を製造する能力は、精密ろ過用途にとって特に有用である。メルトブローン繊維はろ過に有効であることが分かっているが、いくつかの欠点もある。大部分のメルトブローン繊維は脆弱で裂けやすいので、多数のメルトブローン繊維層を積み重ね及び層化したり、支持体又はスクリムと組み合わせたメルトブローン繊維層を使用してそれらの強度及びろ過特性を最大化する必要がある。その結果、重くて高価なメルトブローン複合材となる。
【0004】
メルトブローン繊維の代替はガラスマクロ繊維で、これも当該技術分野ではろ過用途におけるそれらの使用が良く知られている。ガラスマイクロ繊維はそれらの微小直径を頼りにろ過特性の増大を図っている。さらに、ガラスマイクロ繊維は長さが短く、皮膚刺激物であることが知られている。このため不織布への加工時に問題及び制限が生じる。
【0005】
メルトブローン繊維の別の代替はエレクトロスパン繊維である。エレクトロスパン繊維も当該技術分野ではろ過用途におけるそれらの使用が良く知られている。エレクトロスパン繊維は、0.1〜1.0ミクロンの範囲のことが多く、ろ過特性の増大はそれらの微小直径に依存している。エレクトロスピニング(電気紡糸)は非常にゆっくりとしたプロセスなので、現実的にはごく少量しか使用できない。これらの繊維も非常に脆弱なので、強度及びプリーツ加工性を提供するその他の不織布層と組み合わせて使用されることが多い。
【0006】
従来の複合材は、熱可塑性樹脂を押し出してウェブ又は層を形成させ、これを様々な不織布複合材又はラミネート、例えばスパンボンド(spunbound)−メルトブローン−スパンボンド(SMS)複合材又はスパンボンド−メルトブローン−プリーツ加工複合材に加工することによって製造される。このような構成において、メルトブローン層はコアのろ過エレメントとして機能し、スパンボンド層は複合材全体を強化する。しかしながら、このような複合材があるにもかかわらず、追加の支持体を必要とせず、独立型フィルターとして機能できる高効率の繊維層を有する改良された複合材を求める需要が存在する。さらに、高効率繊維層をメルトブローン層又は別の翼状部の無い繊維層と組み合わせることに対する需要もある。さらに、高表面積特性を有する新規な翼状部のある繊維の層を用いて形成された、増大された耐久性、強度、吸収及びろ過能力を有する改良された複合材を求める需要もある。
【0007】
液体又は粒子を吸収及びろ過できる繊維は当該技術分野で知られている。繊維表面は、液体又は粒子を保持するそれらの能力を増強するために化学的又は物理的に処理されることが多い。例えば、繊維の表面積を増大するために、表面を粗くして溝ないし流路を作り出す。当該技術分野で公知のいくつかの吸収性繊維は、流体の流れに影響を及ぼす疎水性又は親水性の化学薬品で処理されている。
【0008】
吸収用に使用される一つのそのような繊維は、Eastman Chemical Companyが最初に開発し、Fiber Innovation Technologiesから市販されている4DG繊維である。図1を参照すると、4DG繊維の断面図が描かれている。これは表面キャピラリー繊維としても知られている。図1の先行技術の繊維は、脊椎部の一つの側から突出する少なくとも3本のアームの一セット(第一の溝のセットを規定する)と、脊椎部の第二の側から突出する少なくとも3本のアームの第二のセット(第二の溝のセットを規定する)を開示している。先行技術繊維のアームと溝は、繊維の長さ方向に沿って流体を毛管現象によって輸送するのに十分深く狭い溝が創製されるように不規則な形状を有している。さらに、図1の先行技術繊維は大きいデニールを有しており、ナノ繊維が必要とされるようなある種の用途ではその使用が制限される。
【0009】
4DG繊維は、特異的な断面形状を有する繊維を提供することによって溝の深さを増大しようとしている。しかしながら、4DG繊維及び類似の形状を有するその他の繊維にはいつかの不利益がある。多くのそのような繊維は約50〜60ミクロン未満の直径の繊維に紡ぐことができないため、それらの潜在的用途が制限される。4DG繊維で達成可能な最小デニールは約3である。さらに、繊維のアーム間の溝が大きいために、紡糸工程中にアームが破損することが多い。このような繊維は限定的な数のアーム及び溝しか持たないため表面積対体積比が比較的低く、吸収できる流体の量が制限される。最後に、4DG繊維のサイズ及び形状のために、ファブリック形成時にアームが絡み合い易く、高密度及び圧縮された材料になりがちである。このため、そのろ過及び吸収特性が減退する。
【0010】
これまで表面の毛管特性を促進するために表面に深い溝ないし流路を有する特殊な繊維を創製しようとする多数の試みがあった。そのような繊維は多数の脚部(leg)、典型的には8本の脚部を利用して表面に深い溝ないし流路を形成している。これらの繊維の表面は、流体の流れをより容易に確保及び促進し、ひいては流体の移動に役立つ適当な処理法で処理することができる。これらの繊維の多くは高度の嵩密度を有しているので絶縁用途に適切である。アームは粒子を捕捉及び捕獲できるので、ろ過用途又は表面活性化のための表面処理にも有用である。
【0011】
表面溝を有する繊維は、特殊な紡糸口金を用いて単一成分繊維として製造される。繊維は押出及び溶融され、溶融ポリマーが紡糸ビーム及び紡糸口金キャピラリーを通して送り出されて所望の形状に形成される。次に繊維は紡糸口金から排出されると急冷され、その後延伸されてより強く繊細な繊維になる。しかしながら、該繊維の深い溝又はアームのために、この繊維は業界で好まれ使用される通常の繊維サイズに製造することができない。業界で現在使用されている大部分の繊維はフィラメントあたり1〜3デニールであるが、上記のような増大した表面積を有する繊維の大部分は現在入手可能なのは6デニール以上である。6以上のデニールを有する繊維は極度に粗く、加工が困難で、それらの使用は限定される。
【0012】
従来の単一成分丸繊維は当該技術分野で一般に使用されている。単一成分丸繊維の断面デザインは典型的には円形である。単一成分丸繊維に関する一つの問題は、繊維の表面積を増大させるには断面積も増大させることになるので、大きいデニールの繊維が得られることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
増大した表面積、すなわち当該技術分野で公知の典型的な繊維の表面積の少なくとも2〜3倍の表面積と、表面毛管特性を促進するために表面に深い溝ないし流路を有しながら、業界で使用されるような通常の繊維サイズを維持した繊維が求められている。本発明は、増大した表面積と多数の表面溝ないし流路とを有しながら小さいデニールサイズを維持した繊維、及び改良された複合材におけるそのような繊維の使用を開示する。
【0014】
本発明は、上記問題及びその他の問題を解決し、従来の繊維及びこの種の複合材ではもたらされなかった利点及び側面を提供するために提供される。本発明の特徴及び利点の十分な解説は以下の詳細な説明に委ねる(添付の図面を参照しながら進める)。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の側面は改良された複合材を提供することである。該複合材は、第一の側と第二の側を有する第一の繊維層を有する。該複合材は、第一の繊維層の第一の側に接着された翼状部のある翼状部のある繊維の層を有する。該翼状部のある翼状部のある繊維の層は高表面積繊維のウェブを有する。該高表面積繊維は、中間領域を有する断面を持つ内部繊維を有する。該中間領域は、中間領域から中間領域の周囲に沿って延びる複数の突起を有する。この複数の突起は複数の溝ないし流路を規定する。一態様においては、溶解性外鞘が高表面積繊維を包囲している。一態様において、繊維層はメルトブローン繊維又はエレクトロスパン繊維を含む。
【0016】
別の態様において、該複合材は第一の繊維層の第二の側に接着された第三の層を有する。第三の層は、翼状部のある翼状部のある繊維の層、スクリム層、ガラスマイクロ繊維層、エレクトロスパンウェブ又はその他のメルトブローン材の層である。
【0017】
翼状部のある翼状部のある繊維の層は高表面積繊維のウェブを含む。該高表面積繊維は、中間領域を有する断面を持つ内部繊維を有する。該中間領域は、中間領域から中間領域の周囲に沿って延びる複数の突起を有する。この複数の突起は複数の溝ないし流路を規定する。該繊維は溶解性の外鞘も有する。外鞘は内部繊維を包囲している。
【0018】
本発明の第二の側面は改良された複合材を提供することである。該複合材は、第一の側と第二の側を有する第一のメルトブローン又はエレクトロスパン繊維層を有する。該複合材は、第一のメルトブローン又はエレクトロスパン繊維層の第一の側に接着された翼状部のある翼状部のある繊維の層を有する。該翼状部のある翼状部のある繊維の層は高表面積繊維のウェブを有する。該高表面積繊維は内部繊維を有し、その内部繊維は熱可塑性ポリマーである。該内部繊維は縦軸を有する断面を持ち、該縦軸は縦軸から延びる複数の突起を有する。縦軸の周囲に沿って、複数の突起は複数の溝ないし流路を規定する。該溝ないし流路は、約200ナノメートル〜約1000ナノメートルの幅を有する。内部繊維は、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの断面長及び約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの断面幅を有する。内部繊維の断面は、約100,000cm/g〜約1,000,000cm/gの表面積を有する。
【0019】
本発明はさらに、改良された複合材の製造法にも向けられる。該方法において、ステップは、第一の側と第二の側を有する第一の繊維層を準備することを含む。内部繊維と外鞘の同時押出によって形成された、高表面積繊維のウェブを有する翼状部のある翼状部のある繊維の層も準備する。内部繊維は熱可塑性ポリマーで、外鞘は溶解性ポリマーである。内部繊維は中間領域を有する断面を持つ。中間領域は、中間領域から中間領域の周囲に沿って延びる複数の突起を有する。この複数の突起は複数の溝ないし流路を規定する。内部繊維及び外鞘は溶融紡糸されて二成分繊維を形成する。外鞘は溶媒で除去され、高表面積繊維、又は翼状部のある翼状部のある繊維が得られる。翼状部のある繊維はウェブ又は層に成形される。翼状部のある繊維の層は第一の繊維層の第一の側に接着されて複合材が形成される。
【0020】
本発明の別の側面において、テキスタイル製品が提供される。該テキスタイル製品は複合材を有する。該複合材は、第一の側と第二の側を有する第一の繊維層を含む。該複合材は、繊維層の第一の側に接着された翼状部のある繊維の層を有する。該翼状部のある繊維の層は高表面積繊維のウェブを含む。
【0021】
このように、本発明は、翼状部のある繊維の層とメルトブローン又はエレクトロスパン繊維層から製造された、増大した耐久性及び吸収性を有する複合材を提供する。
本発明のこれら及びその他の側面は、特許請求の範囲に記載された発明を裏付ける図面を検討しながら以下の好適な態様の説明を読むと、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は先行技術繊維の断面斜視図を示す。
【図2】図2は本発明の一態様による外鞘を有する繊維の断面図を示す。
【図3】図3は本発明の一態様による単一繊維の断面図を示す。
【図4】図4は本発明の一態様による外鞘を持たない繊維の断面図を示す。
【図5】図5は本発明の一態様による円形の形状を有する繊維の断面図を示す。
【図6】図6は本発明の一態様による不織布の断面図を示す。
【図7】図7は先行技術の不織布の断面図を示す。
【図8】図8は、丸繊維、4DG繊維、及び本発明の繊維のフィラメントあたりのデニール対比表面積を比較するグラフを示す。
【図9】図9は本発明の一態様による複合材の斜視図を示す。
【図10】図10は本発明の一態様による複合材の製造法の略図を示す。
【図11】図11は本発明の一態様による複合材の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
下記の説明において、いくつかの図面全体を通じて同種の参照文字は同種又は対応する部品を示す。同じく下記の説明において、当然のことながら、“前方”、“後方”、“前”、“後”、“右”、“左”、“上方へ”、“下方へ”などの用語は便宜的用語であって、制限的用語とみなされるべきではない。以下、図面全般を参照するが、図は本発明の好適な態様を説明するためのものであって、本発明をそれに限定することを意図したものではない。
【0024】
図面を参照すると、図9は、一般的に参照番号30で示された本発明の複合材の斜視図を示す。図9に示されているように、複合材30は、一般的に繊維層32及び翼状部のある繊維の層34を含む。第一の繊維層32は第一の側36と第二の側38を有する。本発明の好適な態様において、繊維層32はメルトブローン繊維層である。メルトブローン層は、溶融熱可塑性ポリマーをフィラメントを形成するために複数のスループットを通して押し出すことによって形成されたメルトブローン繊維を含む。メルトブローン繊維の直径を削減する一つの方法は、高速ガス流を用いてフィラメントを繊細化することによる。所望の用途に応じて、メルトブローン繊維は、好ましくはポリマーから形成され、さらに好ましくはポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド又は熱可塑性エラストマー、例えば、これらに限定されないが、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、例えばポリエーテル、ポリエーテルエステル、及びPBAX及びエラストマー系オレフィンから形成される。一態様において、エラストマー、さらに詳しくはTPUは、伸縮性及び回復性のほか、複合材に対して増強された強度を提供するために好適である。
【0025】
メルトブローンTPU繊維を使用する一つの利点は、該繊維が粘着性(“sticky”又は“tacky”)を有しているために、メルトブローン繊維層が、気流が複合材の次の層に到達する前に粒子を捕獲するプレフィルターとして機能するのに役立つことである。この粘着性は、多層フィルターを製造する全般的工程において積層ステップの必要性を削減又は排除するのにも役立つ。これについては以下に記載する。
【0026】
本発明の別の態様において、第一の層32は、その他の繊維、例えば、これらに限定されないが、エレクトロスパン繊維、ガラスマイクロ繊維、4DG繊維(上記)、又はその他の不織布材料を含むこともできる。例えば、第一の層32は、セルロース、ウール、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はその他のマイクロ繊維(これらに限定されない)のようなステープル繊維(短繊維)から製造された不織布であってもよい。さらに、不織布は湿式堆積法(wetlaid process)から製造することもできる。繊維がTPUのように本来粘着性でない場合、該繊維は粘着スプレー又は接着剤、例えば、これらに限定されないが、ガラス転移温度の低いアクリル樹脂、ラテックス、ポリウレタン化合物、又はその他のガラス転移温度の低い自己架橋性材料で処理すればよい。
【0027】
再度図9を参照する。複合材30の翼状部のある繊維の層34は、複数の高表面積繊維を含む。図2〜4は、一般的に参照番号10で示されている本発明の高表面積繊維の断面を開示している。図2に示されているように、繊維10は、一般的に内部繊維12と外鞘14を含む。繊維10は一般的に、高加工性を可能にする楕円形の断面に押出できる二つの異なるポリマー組成物から構築される。あるいは、断面は円形又は所望のその他の形状でもよい。本発明の繊維10を製造する押出プロセス及び方法は以下にさらに詳細に説明する。
【0028】
さらに図2〜4に示されているように、内部繊維12の断面は一般的に翼状部のある形状又はアメーバ様形状を有する。内部繊維12は中間領域16を有する。これは内部繊維12の中心に延びる縦軸17である。縦軸17は、縦軸17から延びる複数の突起18を有する(図2〜4に描かれている)。好適な態様において、複数の突起は縦軸17の周囲に沿って延びている。代替の断面形状、例えば、これに限定されないが、円形などの形状も、ハブとして形成される中間領域16を有することになろう(突起はハブから延びている)。複数の突起18は、単一繊維の表面積及び表面キャピラリーを増大する。好適な態様において、複数の突起18は図4に示すように複数の溝ないし流路20を規定する。一態様において、複数の溝ないし流路20は均一間隔で配置されている。溝ないし流路20は繊維10の長さ方向に沿って、繊維10内の液体の吸収を促進する表面キャピラリー部分を作り出している。さらに、溝ないし流路20は、残屑及びゴミのような粒子を捕獲して繊維10内に保持することも可能にする。従って、本発明の繊維は、図3に示すように、繊維の長さ方向に沿って延びる複数の縦キャピラリー溝ないし流路21を有する。本発明はまた、複数の突起18のために内部繊維12の断面表面積も劇的に増大している。内部繊維12によって作り出された増大した表面積は、繊維10の製造時に使用されるセグメントの数に依存する。これについては以下に詳細に説明する。
【0029】
好ましくは、溝ないし流路20は約200ナノメートルの幅を有するナノサイズである。あるいは、溝ないし流路20は200ナノメートル〜1000ナノメートルのこともあり得る。溝ないし流路20の幅は異なる用途に適合するように調整できる。本発明のナノサイズ溝ないし流路は、繊維10をマイクロろ過又はマイクロ吸収が必要な用途に使用することを可能にする。例えば、ある種のろ過機構は約300ナノメートルの溝ないし流路サイズを必要とする。各繊維の溝ないし流路サイズは調整できるので、本発明は異なる溝ないし流路サイズを持つ繊維を有する複合材30を創製するのに使用できる。例えば、フィルターのような複合材は200ナノメートルの溝ないし流路及び500ナノメートルの溝ないし流路を有する繊維束を含みうる。一態様において、溝ないし流路が約200ナノメートルの幅を有する場合、中間部16から延びる突起18は約32個ある。さらに、溝ないし流路は、それらのろ過及び吸収特性をさらに増強するために化学的に処理されてもよい。
【0030】
本発明の好適な態様において、内部繊維12は当該技術分野で公知の熱可塑性ポリマーである。様々な熱可塑性ポリマーが使用できる。例えばポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、熱可塑性ウレタン(TPU)、コポリエステル、又は液晶ポリマーなどであるが、これらに限定されない。
【0031】
好適な態様において、繊維の断面は高度に柔軟で、固体(充実)内部を有する。あるいは、一態様において、内部、又は内部繊維の中間領域部分は空隙である。中心の空隙は流体の流れのための追加の溝ないし流路を形成する。図5は、内部繊維12の中間領域16を欠いた本発明の繊維の断面を示す。外鞘14は、翼状部のある繊維の形状を形成するのに役立っている。これについては以下で詳細に解説する。
【0032】
あるいは、別の態様において、内部繊維12の中間領域16は、押出プロセス中に円形の形状に形成することもできる。この空隙のおかげで内部繊維12はより剛性を持ち、中心部の空隙のためにより曲げ抵抗性を有するようにもなる。さらに、中心の空隙は流体の流れのための追加の溝ないし流路を形成する。空隙を有する円形断面の繊維はそれ自体の方向へ折れ曲がりにくい。
【0033】
図2は、外鞘14を有する繊維10の断面図を示す。好適な態様において、外鞘14は溶解性の熱可塑性樹脂、例えばポリラクチド(PLA)、コポリエステル(PETG)、ポリビニルアルコール(PVA)、又はエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)などであるが、これらに限定されない。当該技術分野で公知の様々な溶解性熱可塑性樹脂が、本発明に関連して外鞘14として使用できると考えられる。好適な態様において、外鞘14は図2に示すように内部繊維12を包囲している。
【0034】
本発明の一側面は、繊維のデニールを1〜3に維持しながら繊維の表面積を増大することである。好適な態様において、繊維のデニールは約1.0〜約2.0である。しかしながら、代替において、繊維のデニールは約1.0〜約20.0の範囲であってもよい。
【0035】
デニールは糸の繊度を測定するのに使用される単位で、9,000メートルの糸のグラムで表した質量に等しい。本発明の好適な態様において、1デニール繊維の比表面積は約28,000及び約200,000cm/gである。繊維のcm/gの単位で表された比表面積は、以下の等式によって求められる。
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、
α=形状係数=P/4πA
ここで、
L=長さ、K 9×10cm
ρ=密度、K 1.38g/cm
デニール=線密度
P=周囲長
A=断面積
本発明の好適な態様の比表面積は、当該技術分野で公知の典型的な4DG繊維より約57〜60倍大きい。図8に示されているように、本発明の繊維の比表面積は、同じデニールを有する従来の丸繊維又は典型的な4DG繊維より著しく大きい。例えば、3デニールの丸繊維は1653cm/gの比表面積を有する。3デニールの4DG繊維は4900cm/gの比表面積を有する。これに対し、3デニールの本発明の繊維は約80,000cm/gを超える比表面積を有する。本発明の一態様において、内部繊維の断面は約140,000cm/g以上の比表面積を有する。本発明は、多数の突起及び多数の溝ないし流路という独特の形状のために大きい比表面積を達成している。本発明の好適な態様は約1.0〜約2.0の繊維デニールを有するが、4DG繊維は3未満のデニールのものを製造できないので上記の比較を選択した。
【0038】
好適な態様において、内部繊維12は約20マイクロメートルの断面長及び約10マイクロメートルの断面幅を有するが、これによって約1.5デニールの繊維がもたらされる。デニールは繊維の線密度のことで、9,000メートルの繊維のグラムで表された重量である。別の態様において、内部繊維12は約10マイクロメートルの断面長及び約10マイクロメートルの幅を有する。本発明の内部繊維12は約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの断面長及び約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの断面幅を有する。あるいは、本発明の別の態様において、繊維は3以上のデニールを有しうるが、そうすると著しく大きい表面積を有する大きい繊維が提供されることになろう。
【0039】
本発明の繊維の製造法は当該技術分野で公知の押出技術を使用する。典型的には、二成分繊維は、同時押出、又は同じフィラメントもしくは繊維に含有される二つのポリマーを用いて両ポリマーを同じ紡糸口金から押し出すことによって形成される。押出プロセスでは、濃厚で粘稠なポリマーを紡糸口金を通して押し出し、半固体繊維を形成する。本発明の好適な態様では、押出システムは、二つのポリマーを適切に方向付け及びチャネリングし、より均一な形状にすることによって記載のような繊維を形成する。プレート上の孔の数は繊維に存在するセグメントの数に対応する。次にこれらのフィラメントは固化される。本発明の好適な態様は溶融紡糸を用いて繊維を形成するが、当該技術分野で公知のその他の方法を用いてもよい。例えば、二つのポリマーを注意深く選択し、押出プロセスを制御することにより、セグメント化パイ押出システム(segmented pie extrusion system)を用いて、縦軸から延びる突起を有する繊維を形成することもできる。
【0040】
好適な態様の製造法は、熱可塑性ポリマー(内部繊維12)と溶解性熱可塑性ポリマー(外鞘14)を含む二成分繊維を押し出すことによって開始される。二成分繊維は、任意の数の所望の孔と断面形状を有する紡糸口金を通して押し出される。好適な態様において、紡糸口金の断面は高加工性のために楕円形であるが、代替的に円形断面又はその他の所望形状も使用できる。
【0041】
あるいは、繊維の最終断面形状、すなわち上記の翼状部のある形状は、押出プロセスから形成されるセグメントの数によって決定される。セグメントはパイ片に似ており、“セグメント化されたパイ状(segmented-pie)”二成分繊維と呼ばれる。先行技術の典型的な繊維は16のセグメントから形成されるが、本発明の高表面積断面を達成するためには、繊維は少なくとも4つのセグメントを持たねばならない。
【0042】
本発明の一態様において、押し出された二成分繊維は少なくとも4つのセグメントを有する。あるいは、本発明の別の態様において、内部繊維の翼状部のある形状断面は、64のセグメントを有する二成分繊維から形成されているため、極めて高い表面積が得られる。図2〜4に示されているキャタピラー様形状は、64のセグメント化パイ押出によって生じた思いがけない結果であった。24を超えるセグメントを有する二成分繊維を形成するのは困難で、先行技術の繊維は、それらが持ちうるセグメントの数が限定されている。
【0043】
セグメントの形状及びサイズを制御する一つの方法は、押出プロセス中に二成分繊維の温度、粘度、又は圧力を変えることによる。溶融紡糸は、繊維を紡糸口金から異なる断面形状、例えば円形、三葉形、五角形、八角形、及びその他の形状に押し出すことができる。本発明の一態様の二成分セグメントは、64までのいずれかの数のパイセグメントを有するセグメント化パイに似ている。好適な態様において、セグメントは内部繊維12と溶解性外鞘14との間で交互になっている。外鞘14が洗浄除去されると、残りのセグメントが吸収及びろ過の基礎を形成する複数の突起を規定するので、セグメントが交互になることは重要である。突起の数は生じる全表面積に正比例する。このようにして精密かつ所定の表面を有する繊維を形成することができる。
【0044】
好適な態様において、二成分繊維の押出及び溶融紡糸後、二成分繊維は翼状部のある繊維のウェブ又は層に形成することができる。二成分繊維は一緒に結合させてフィルターのような複合材にすることができる。あるいは、二成分繊維は衣服のような織物にすることもできる。本発明の翼状部のある繊維の一つの利点は、外鞘をウェブの製造後まで除去する必要のないことである。このことは、翼状部のある繊維の取扱い性を向上させ、製造に伴うコストも削減する。図6は本発明の不織布を示すが、翼状部のある繊維が如何に一緒に集合してウェブ34を形成しているかを示している。図6に示されているように、繊維はぎっしり詰め込まれているが、繊維の形状及び溝ないし流路のサイズのために、互いに隣接して配置されても絡み合うことなく束を形成できている。その上、テキスタイルファブリックは外鞘がまだ残っているときに製造できるため、この鞘がさらに繊維の相互絡み合いを防止している。図7は、繊維が絡み合っている先行技術のファブリックを示す。本発明の翼状部のある繊維は先行技術で公知の他の繊維のように絡み合わないので、本発明の溝ないし流路の有効性は損なわれておらず、吸収又はろ過に利用できる状態である。外側成分は翼状部のある繊維の層34の形成後に除去できる。従って、本発明の繊維及びそれらの突起は絡み合うことはない。
【0045】
翼状部のある繊維の層34が形成されたら、ファブリックは溶媒、例えば、これらに限定されないが、NaOH、酸、又は水分散性ポリマーの場合、水を使用して洗浄し、可溶性外鞘を除去する。あるいは、所望であれば、二成分繊維は翼状部のある繊維の層34の形成前に洗浄することもできる。
【0046】
本発明の翼状部のある繊維の層34を形成するには、高表面積繊維10をいくつかの異なる技術、例えば熱的、化学的、又は機械的接着を用いて接着すればよい。一態様において、翼状部のある繊維の層34は水流絡合(hydroentanglement)を用いて形成される。これは、流体力学的な力を用いて繊維を絡ませ接着するのに使用されるメカニズムである。あるいは、翼状部のある繊維の層34は、スパンボンド又は梳毛(carded)ウェブの繊維を機械的に配向し絡み合わせるニードルパンチによって製造することもできる。ニードルパンチは、多数の棘付きフェルト針をウェブに繰り返し出し入れすることによって達成される。ニードルパンチ及び水流絡合は密集構造を形成するので、外鞘が除去されると、翼は所定の位置で解放されて高透過性の構造を形成する。ファブリックの最終用途によってどの接着技術を使用すべきかが決まる。例えば、不織布を大粒子のろ過に使用する場合、その不織布はランダムに絡み合った繊維であるが織物ではないスパンボンド繊維を用いて製造すればよい。不織布が小粒子のろ過用に必要な場合、その不織布はメルトブローン繊維から製造すればよい。これは高速気流又は別の適当な力を利用して繊維を一緒に結合している。あるいは、フィラメントを押し出し、該フィラメントを巻縮し、切断してステープル繊維(短繊維)にして、それからウェブを形成し、次いで上記の一つ又は複数の方法によって接着して不織布を形成することもできる。同じステープル又はフラメント繊維を用いて、織物構造、編物構造又は編組構造を形成することもできる。
【0047】
本発明の別の態様において、二成分繊維を紡糸し、繊維の長さを短いセグメントに切断してベール(俵、bale)にすることによってステープル不織布を製造することもできる。次に、該ベールを湿式堆積法又は梳毛(カーディング)によって広げて均一なウェブにし、その後、当該技術分野で公知の熱−機械的手段によって接着する。
【0048】
図9に、複合材30をインラインで製造するための装置(一般的に70とする)と、全3層が一つの機械で集積される様子が図示されている。あるいは、複合材の層を独立して製造し、後に一体化し接着することによって複合材にしてもよい。好適な態様において、翼状部のある繊維の層34は、複合材30にする前に完全に加工されている。すなわち、外鞘14は除去されている。外鞘14は複合材形成前に翼状部のある繊維の層34から除去されるのが好適である。そうすると、外鞘14を溶かす洗浄が他の層の組成及び完全性を妨害しない。
【0049】
図10に示されている装置70は、翼状部のある繊維の層34を保持する第一のロール50を含む。図10の好適な態様において、翼状部のある繊維の層34は装置に供給され、そこにメルトブローン繊維40がメルトブローンウェブ製造部52から適用されて翼状部のある繊維の層34に堆積し、メルトブローン繊維層45になる。
【0050】
接着を所望するなら、翼状部のある繊維の層34を繊維層32の第一の側36に、当該技術分野で公知の方法、例えば、これらに限定されないが、水圧式ニードリング、サーマルカレンダリング、超音波及び/又は接着剤接着を用いて接着する。複合材30を形成する場合の層の位置決め及び配置は、得られる複合材30の性質をどう所望するかによる。例えば、一態様において、複合材30はメルトブローン繊維層45と翼状部のある繊維の層34を接着することによって形成できる(MW)。この配置は、気流が最初に翼状部のある繊維の層34に接触してより多くの粒子及び残屑が捕獲及び保持された後にメルトブローン繊維層45を通過するろ過用途にとって最適である。
【0051】
次に図11を参照すると、代替の態様において第二の翼状部のある繊維の層42を繊維層32の第二の側38に配置することができる。それによって3層(順に、翼状部のある繊維の層、メルトブローン層、及び翼状部のある繊維の層)を有するろ材が創製される。
【0052】
図10は、この第二の翼状部のある繊維の層42の追加法を示している。第二のロール54が第二の翼状部のある繊維の層42を保持し、これが第一のメルトブローン層45の第二の側38に適用される(この配置は、翼状部のある、メルトブローン、翼状部のあるの略で“WMW”と呼ばれる)。第二のロール54及び第二の翼状部のある繊維の層42は、第二の翼状部のある繊維の層を複合材に追加する場合にのみ、図10に示されているように必要となる。2層しか使用されない場合(例えば、図9に示され、上に記載したような一つの翼状部のある繊維の層ともう一つの繊維層)、第二のロール54と第二の翼状部のある繊維の層42は不要である。別の態様において、ガラスマイクロ繊維層を第一のメルトブローン繊維層45の第二の側38に接着し、翼状部のある繊維の層34をメルトブローン繊維層45の第一の側36に接着することもできる(WMG)。これは、異なるサイズの粒子を選択的にろ過できる勾配深度フィルター(gradient depth filter)となる。あるいは、層のいずれかの組合せを使用することもできる。例えば、メルトブローン繊維層、翼状部のある繊維の層、及び別のメルトブローン繊維層(MWM);スパンボンドスクリム層、メルトブローン層、及び翼状部のある繊維の層(SMW);エレクトロスパン繊維層及び翼状部のある繊維の層(EW);翼状部のある繊維の層、エレクトロスパン繊維層、及び翼状部のある繊維の層(WEW);スパンボンドスクリム層、エレクトロスパン繊維層、及び翼状部のある繊維の層(SEW);翼状部のある繊維の層、エレクトロスパン繊維層、及びガラス層(WEG);又はエレクトロスパン繊維層、翼状部のある繊維の層、及びエレクトロスパン繊維層(EWE)などであるが、これらに限定されない。翼状部のある繊維の層の強さのためにプリーツ加工も支持できるので、メルトブローン繊維層及び翼状部のある繊維の層をプリーツ加工することも本発明の範囲に含まれる。
【0053】
好ましくは、ほとんど又は全く接着を必要としないことである。しかしながら、接着が必要な場合、図10に示されているように、翼状部のある繊維−メルトブローン−翼状部のある繊維の層は熱接着ロール56及び58の間を通過する。一態様において、接着ロール56及び58は熱接着用途のために加熱されるが、カレンダー接着、超音波接着、接着剤接着、及び水流絡合も、可能な代替手段である。
【0054】
複合材30の層は、各層の表面積が妨害されないようにというだけでなく最適のろ過及び吸収を提供するために最大化されるように接着されうる。例えば、一態様において、超音波摩擦又はキルティングは、実施が容易で、接着される層の表面積のわずか1〜5%以下しか利用しないので、望ましい。別の態様においては熱接着が使用できるが、そのような技術は通常、層の表面積の約8〜10%まで使用する。接着剤技術も接着に使用できるが、接着剤技術は、接着される層の表面積の約1〜20%を喪失する。複合材の所望の用途に応じて、いくつかの異なる接着技術が当該技術分野で利用可能であり、また知られている。
【0055】
本発明の繊維10は、衣服などに使用する従来の織物の製造にも使用できる。本発明の繊維10は強いので、従来の編物及び編組技術にも繊維10の完全性を損なうことなく使用できる。
【0056】
当該技術分野では多数の繊維が知られているが、本発明は、織布及び不織布両方用の複合材30を形成するのに使用できるデニール数の小さい高表面積繊維10を開示している。本発明の複合材30は、当該技術分野で公知の従来の複合材よりも高い断熱能を有し、改良されたろ材を形成する。さらに、本発明の複合材は、より強く、より柔軟で、より通気性が高い。前述のように、翼状部のある形状の繊維は圧縮に対する回復力があるので、溝ないし流路が塞がれず、吸収能だけでなくより大きい毛管/吸上げ能も有する。さらに、これらの翼状部のある繊維はナノサイズの粒子を捕獲する能力も有する。本発明の翼状部のある繊維は丈夫で剪断抵抗性を有しているので、該翼状部のある繊維は高圧に耐えられ、液体ろ過のほか、高圧を必要とする注文の多いエアロゾルろ過用途にも使用できる。従って、本発明は、織布又は不織布から製造された高効率低圧力降下フィルターを提供する。
【0057】
本発明の用途はたくさんある。一例として、本発明は、室内清浄用の液体又は空気をろ過するためのろ材製造用の不織布に使用できる。さらに別の例として、本発明の翼状部のある繊維は、従来の丸繊維と共に使用して多層繊維を得ることもできる(紡糸口金を用いて組み合わせるか又は製造工程後に組み合わせればよい)。本発明の翼状部のある繊維を従来の丸繊維と組み合わせるか挟み込むことによって、多数の物理的性質を有し、費用効果的でもある単一製品を得ることが可能になる。
【0058】
本発明は改良された拭き取り(ワイプ)材料にも使用できる。典型的な用途では、拭き取り材は赤ちゃん用おしり拭きのように事前に液体を含んでいる。しかしながら、本発明は、ゴミや塵の粒子を後に何らの粒子も残さずに捕らえる拭き取り製品を創製する能力を可能にする。なぜならば、繊維の溝ないし流路内の液体がそこに残っていて、まだ溶解作用があり、清掃プロセスを補助するからである。さらに、本発明は、衛生及び音響材料、断熱、ジオテキスタイル材料、建設材料、並びにシートクッション及びマットレスのような圧縮性能材料にも使用できる。
【0059】
上記の説明を読めば当業者には何らかの変更及び改良が思い浮かぶであろう。上記の例は本発明の側面を明確にする目的を果たすために提供されたものであって、それらが本発明の範囲を制限する役割を果たすためのものでないことは当業者には明らかであろう。すべての変更及び改良は、ここでは簡潔さ及び読みやすさのために割愛されているが、以下の特許請求の範囲の中に適正に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10 高表面積繊維
12 内部繊維
14 外鞘
16 中間領域
17 縦軸
18 突起
20 溝ないし流路
30 複合材
32 繊維層
34 翼状部のある繊維の層
36 第一の側
38 第二の側
40 メルトブローン繊維
42 第二の翼状部のある繊維の層
45 メルトブローン繊維層
50 第一のロール
52 メルトブローンウェブ製造部
54 第二のロール
56 熱接着ロール
58 熱接着ロール
70 装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材であって、
第一の側と第二の側を有する繊維層と;
前記繊維層の第一の側に隣接する翼状部のある繊維の層とを含み;
前記翼状部のある繊維の層は高表面積繊維を含み、前記高表面積繊維は中間領域を含む断面を有し、前記中間領域は中間領域から中間領域の周囲に沿って延びる複数の突起を有し、前記複数の突起は複数の溝ないし流路を規定する複合材。
【請求項2】
溶解性の外鞘をさらに含み、前記溶解性外鞘は高表面積繊維を包囲している、請求項1に記載の複合材。
【請求項3】
高表面積繊維の溶解性外鞘が、ポリラクチド(PLA)、コポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)又はエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)を含む、請求項2に記載の複合材。
【請求項4】
繊維層の第二の側に隣接する第二の翼状部のある繊維の層をさらに含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項5】
繊維層の第二の側に隣接するスクリム層をさらに含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項6】
繊維層の第二の側に隣接するガラス層をさらに含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項7】
繊維層がメルトブローン繊維層を含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項8】
メルトブローン繊維層が、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリエーテル、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド(PBAX)、及びエラストマー系オレフィンからなる群から選ばれる複数のメルトブローン繊維を含む、請求項7に記載の複合材。
【請求項9】
繊維層がガラス繊維を含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項10】
繊維層がポリオレフィンメルトブローンを含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項11】
繊維層がエレクトロスパンウェブを含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項12】
繊維層が不織布材料を含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項13】
不織布材料がステープル繊維を含む、請求項12に記載の複合材。
【請求項14】
ステープル繊維が、セルロース繊維、ポリプロピレン繊維、ウール繊維、アクリル樹脂、モダクリル繊維、ポリエチレン繊維、及びマイクロ繊維からなる群から選ばれる、請求項13に記載の複合材。
【請求項15】
不織布材料が湿式堆積法から製造される、請求項12に記載の複合材。
【請求項16】
材料の化学コーティングを繊維層上にさらに含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項17】
繊維層が翼状部のある繊維の層に接着されている、請求項1に記載の複合材。
【請求項18】
繊維層と翼状部のある繊維の層間の接着が、超音波接着、熱接着、化学接着、接着剤接着、ニードルパンチ及び水流絡合を含む群から選ばれる方法によって作り出される、請求項17に記載の複合材。
【請求項19】
高表面積繊維が熱可塑性ポリマーである、請求項1に記載の複合材。
【請求項20】
高表面積繊維の複数の溝ないし流路が均一間隔で配置されている、請求項1に記載の複合材。
【請求項21】
高表面積繊維の複数の突起が翼状部のある形状の構造を定義している、請求項1に記載の複合材。
【請求項22】
高表面積繊維の複数の溝ないし流路が、約200ナノメートル〜約1000ナノメートルの溝ないし流路幅を有する、請求項1に記載の複合材。
【請求項23】
高表面積繊維の断面が、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの断面長を有する、請求項1に記載の複合材。
【請求項24】
高表面積繊維の断面が、約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの断面幅を有する、請求項1に記載の複合材。
【請求項25】
高表面積繊維が約1.0〜20.0のデニールを有する、請求項1に記載の複合材。
【請求項26】
高表面積繊維が、約140,000cm/g以上の比表面積を有する断面を持つ、請求項1に記載の複合材。
【請求項27】
高表面積繊維の中間領域が中心に空隙を有する円形の構造を形成する、請求項1に記載の複合材。
【請求項28】
高表面積繊維の中間領域がハブである、請求項1に記載の複合材。
【請求項29】
高表面積繊維の中間領域が縦軸である、請求項1に記載の複合材。
【請求項30】
複合材であって、
第一の側と第二の側を有する第一の繊維層と;
前記第一の繊維層の第一の側に隣接する翼状部のある繊維の層とを含み;
前記翼状部のある繊維の層は高表面積繊維のウェブを含み、前記高表面積繊維は縦軸を含む断面を有する熱可塑性ポリマーを含み、前記縦軸は縦軸から縦軸の周囲に沿って延びる複数の突起を有し、前記複数の突起は複数の溝ないし流路を規定し、前記複数の溝ないし流路は約200ナノメートル〜約1000ナノメートルの幅を有し;
前記高表面積繊維は、それぞれ約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの断面長と約1マイクロメートル〜約100マイクロメートルの断面幅を有し;そして
内部繊維の断面は約100,000cm/g〜約1,000,000cm/gの表面積を有する複合材。
【請求項31】
複合材の製造法であって、該方法は、
a)高表面積繊維のウェブを有する翼状部のある繊維の層を、内部繊維と外鞘を少なくとも一つのプレートを通して同時押し出しすることによって提供し、前記内部繊維は熱可塑性ポリマーであり、前記外鞘は溶解性ポリマーであり、前記内部繊維は中間領域を含む断面を有し、前記中間領域は中間領域から中間領域の周囲に沿って延びる複数の突起を有し、前記複数の突起は複数の溝ないし流路を規定し;
前記内部繊維と前記外鞘を溶融紡糸して二成分繊維を形成し;
前記外鞘を前記二成分繊維から溶媒を用いて除去して高表面積繊維を得;そして
b)繊維層を前記翼状部のある繊維の層に隣接して配置することにおいて、前記繊維層は第一の側と第二の側を有しており、前記翼状部のある繊維の層は前記繊維層の第一の側に隣接して配置されることによって複合材を形成する
ステップを含む方法。
【請求項32】
翼状部のある繊維の層を繊維層の第一の側に接着するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
繊維層を翼状部のある繊維の層に接着するステップが、超音波接着、熱接着、接着剤接着、又は水流絡合を利用する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
二成分繊維が少なくとも4つのセグメントを有する、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
溶融紡糸ステップが内部繊維と外鞘を交互にする、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
繊維層の第二の側に隣接して第二の翼状部のある繊維の層を配置するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
複合材を含むテキスタイル製品であって、
前記複合材は、第一の側と第二の側を有するメルトブローン層、前記メルトブローン繊維層の第一の側に隣接する翼状部のある繊維の層を含み、前記翼状部のある繊維の層は高表面積翼状部のある繊維のウェブを含むテキスタイル製品。
【請求項38】
複合材が不織布のフィルターである、請求項37に記載のテキスタイル製品。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【公表番号】特表2010−509099(P2010−509099A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536253(P2009−536253)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/023159
【国際公開番号】WO2008/057426
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(509127675)アラッソ・インダストリーズ・インコーポレーテッド (2)
【出願人】(509128465)ノース・カロライナ・ステート・ユニバーシティ (2)
【出願人】(309035969)
【出願人】(309035970)
【Fターム(参考)】