説明

2次元画像検出装置

【課題】診断に障害となるアーチファクトの生起がなく歩留まりが向上した2次元画像検出装置の供給を可能にする。
【解決手段】2次元画像検出装置2の良否を判定する基準である判定欠陥画素数および判定欠陥サイズの値について、頻繁に診断に使用される画像中央部より使用頻度の少ない画像周辺部で大きな値とすることにより、歩留まりを良好に維持すると同時にアーチファクトの生起がない2次元画像検出装置2の供給が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線等の放射線、可視光、赤外光等の電磁波情報に基づいて画像を検出する2次元画像検出装置に関し、特に2次元画像検出装置の良否判定手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁波情報を電荷情報に変換する変換層を半導体で構成した2次元画像検出装置が開発されている。該変換層は、2次元の行列状に配置されたTFT(Thin Film Transistor)で構成されるアクティブマトリックス基板の上に例えばアモルファス・セレン膜を蒸着して形成され、X線情報を電荷情報に変換するX線変換層として機能する。従来の2次元画像検出装置は、該X線変換層とアクティブマトリックス基板等で構成され、例えばX線診断装置で被検者を透過したX線の画像を検出するフラットパネル型X線検出器(FPD)として使用されている。
【0003】
図6はFPD3の概略構成を示す図であり、X線変換層で生じた電荷を読み出す電荷読み出し回路の概略を示す図である。図6において、アクティブマトリックス基板を構成するTFTガラス30には、上面に図示しないX線変換層が形成され、各画素に対応して画素電極31が2次元マトリックス状配列で形成されている。電荷読み出し回路は、蓄積容量32Aやスイッチング素子としてのTFTスイッチ32Bおよび電気配線32a、32bなどからなり、各画素電極31ごとに1個の蓄積容量32AとTFTスイッチ32Bが配備されている。また、TFTガラス30の電荷読み出し回路の後段にはゲートドライバ35と電荷を電圧に変換する増幅器36およびマルチプレクサ37に加えてA/D変換器38が別デバイスとしてTFTガラス30とは別体の外付けの形式で配備接続されている。
【0004】
被検者を透過したX線像がX線変換層に投影され、像の濃淡に比例した電荷信号がX線変換層内に発生する。該電荷信号は画素電極31を介して蓄積容量32Aに収集され、TFTスイッチ32Bを経由して外部に画像信号として読み出される。
【0005】
X線変換層およびTFTガラス30には製造プロセス等において欠陥画素を生起することがある。該欠陥画素を放置して画像信号を読み出した場合、画像上のアーチファクトとなり診断に重大な障害を生じるため、欠陥画素を補間する手法が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−49939号公報
【特許文献2】特開2006−280853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、多数の欠陥画素、あるいは大きな欠陥領域が存在する場合は補間処理を行っても診断に重大な障害を生じる恐れがあるアーチファクトを発生する場合がある。該アーチファクトの発生を防止するために、欠陥画素数あるいは欠陥画素の集合体の大きさが一定量を超える場合には当該2次元画像検出装置は不良品と判定される。このため製造プロセスの状態によっては歩留まりが悪くなることがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フラットパネル型X線検出部と、前記フラットパネル型X線検出部の欠陥画素を抽出し補間する欠陥画素補間処理部を備えた2次元画像検出装置において、前記抽出された欠陥画素数と判定欠陥画素数を比較し、あるいは/および前記抽出された欠陥画素の集合体の大きさと判定欠陥サイズを比較し前記フラットパネル型X線検出部の良否を判定する良否判定手段を備えるものである。さらに本発明は、前記判定欠陥画素数および判定欠陥サイズが画像中央部と画像周辺部で異なる値である。したがって、歩留まりが向上しかつ診断に障害を与えない2次元画像検出装置の供給が可能である。
【発明の効果】
【0009】
頻繁に診断に使用される画像中央部と使用頻度の少ない画像周辺部で良否を判定する基準である判定欠陥画素数および判定欠陥サイズを異なる値とすることにより、診断に障害となるアーチファクトの生起がなく歩留まりが向上した2次元画像検出装置の供給が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例による2次元画像検出装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例による2次元画像検出装置の応用例を示す図である。
【図3】本発明の実施例による2次元画像検出装置の画像中央部と画像周辺部を示す図である。
【図4】本発明の実施例による2次元画像検出装置の操作、動作の概要を示す図である。
【図5】変形例による2次元画像検出装置の画像中央部と画像周辺部を示す図である。
【図6】FPDの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による2次元画像検出装置は、FPDと、欠陥画素を抽出し補間する欠陥画素補間処理部と、2次元画像検出装置の良否を判定する良否判定部で構成される。
【0012】
本発明による2次元画像検出装置を一般撮影に使用する場合には、例えば検出領域432mm×432mmを有するFPDの画像中央部を、前記検出領域の中央に位置させたX線フィルム(縦432mm、横356mm)相当部分と定義し、画像周辺部を画像中央部の両側部分と定義する。
【実施例】
【0013】
本発明の実施例について図1〜図4を参照して説明する。図1は、本発明の実施例による2次元画像検出装置2の概略構成を示す図である。図2は、本発明の実施例による2次元画像検出装置2の応用例を示す図である。図3は、本発明の実施例による2次元画像検出装置2の画像中央部と画像周辺部を示す図である。図4は、本発明の実施例による2次元画像検出装置2の操作、動作の概要を示す図である。
【0014】
本発明の実施例による2次元画像検出装置2は、図1に示すとおり、2次元のX線情報を画像信号に変換して出力するFPD3と、画像信号から欠陥画素を抽出し周辺の正常な画素値で補間する欠陥画素補間処理部4と、画像中央部における良否判定結果と画像周辺部における良否判定結果から画像全体の良否を判定する良否判定部5で構成される。FPD3はフラットパネル型X線検出部を構成する。
【0015】
本発明の実施例による2次元画像検出装置2は、例えば一般X線撮影装置に応用される。該一般X線撮影装置は、図2に示すとおり、X線を曝射するX線管1と、該X線管1を制御するX線管制御部7と、2次元画像検出装置2と、X線画像を生成する画像処理部6と、2次元画像検出装置2を構成するFPD3を制御するFPD制御部8等で構成される。被検者MはFPD3に近接してX線管1との間に載置され、被検者MのX線透過像が撮影される。なお図2において図1と同じ符号で示す部品は図1と同じものなので説明は省略する。
【0016】
FPD3の構成は、背景技術の項で図6を参照して説明したとおりである。FPD3の検出領域(入力面サイズ)は図3に示すとおり例えば432mm×432mmであり、画素数は2880ピクセル×2880ピクセルである。2次元マトリックス状に配列されている各画素の位置は座標(i、j)で示され、i、jともに1〜2880の整数である。画像中央部は幅356mmの帯状部分(大きさがX線フィルムと同一)であり、i=253〜2627、j=1〜2880の画素で構成される。画像周辺部は画像中央部の両側の部分であり、i=1〜252、および2628〜2880、j=1〜2880の画素で構成される。
【0017】
欠陥画素補間処理部4は、画像信号から欠陥画素を抽出する欠陥画素抽出部41と、欠陥画素の位置情報を欠陥情報K(i、j)として記憶する欠陥情報記憶部42と、記憶されている欠陥画素位置の画素値を周辺の正常な画素値で補間修正する補正部43で構成される。なお、欠陥画素補間処理部4の構成は公知の技術であり、本発明とは特に関係ないのでこれ以上の説明は省略する。
【0018】
良否判定部5は、画像中央部における欠陥画素数および欠陥画素の集合体の最大サイズより画像中央部の良否を判定する中央部良否判定部51と画像周辺部における欠陥画素数および欠陥画素の集合体の最大サイズより画像周辺部の良否を判定する周辺部良否判定部52と画像全体の良否を判定する総合判定部53で構成される。
【0019】
本発明の実施例による2次元画像検出装置2について、良否判定のための操作、動作等を図4を参照して説明する。ステップ(以下動作順の番号の前に「S」の符号を付す)1において、操作者は図示しない操作部を介して欠陥画素抽出部41に対して欠陥画素の抽出と装置の良否判定動作開始の指令を送信する。欠陥画素抽出部41は公知の欠陥画素の抽出手法、例えばリーク電流(暗電流)量が異常な画素を検出して欠陥画素とする手法等により、欠陥画素を抽出する。S2において、欠陥情報記憶部42は抽出された前記欠陥画素の位置情報を欠陥情報K(i、j)として記憶する。
【0020】
S3において、中央部良否判定部51は欠陥情報記憶部42に記憶されている欠陥情報K(i、j)の内、i=253〜2627、j=1〜2880に含まれる欠陥情報K(i、j)を計数し画像中央部における欠陥画素数NKCを得る。S4において、中央部良否判定部51は保存している判定欠陥画素数NLCと前記欠陥画素数NKCを比較し、NKC<NLCであればS5に進み、NKC≧NLCであればS12へ進む。
【0021】
S5において、中央部良否判定部51はS3で計数された欠陥情報K(i、j)の内、欠陥画素が隣接して構成される欠陥画素の集合体を抽出し、該抽出された集合体の中から、構成する欠陥画素数が最多な集合体を検索する。該集合体の欠陥画素数を最大サイズMKCとする。S6において、中央部良否判定部51は保存している判定欠陥サイズMLCと最大サイズMKCを比較し、MKC<MLCであればS7に進み、MKC≧MLCであればS12へ進む。
【0022】
S7において、周辺部良否判定部52は欠陥情報記憶部42に記憶されている欠陥情報K(i、j)の内、i=1〜252、および2628〜2880、j=1〜2880に含まれる欠陥情報K(i、j)を計数し画像周辺部における欠陥画素数NKAを得る。S8において、周辺部良否判定部52は保存している判定欠陥画素数NLAと前記欠陥画素数NKAを比較し、NKA<NLAであればS9に進み、NKA≧NLAであればS12へ進む。ただし、NLA>NLCである。
【0023】
S9において、周辺部良否判定部52はS7で計数された欠陥情報K(i、j)の内、欠陥画素が隣接して構成される欠陥画素の集合体を抽出し、該抽出された集合体の中から、構成する欠陥画素数が最多な集合体を検索する。該集合体の欠陥画素数を最大サイズMKAとする。S10において、周辺部良否判定部52は保存している判定欠陥サイズMLAと最大サイズMKAを比較し、MKA<MLAであればS11に進み、MKA≧MLAであればS12へ進む。ただし、MLA>MLCである。
【0024】
S11において、総合判定部53は2次元画像検出装置2が良品であると判定し、図示しない表示器に「良品」を表示し、良否判定動作を終了する。S12において、総合判定部53は2次元画像検出装置2が不良品であると判定し、図示しない表示器に「不良品」を表示し、良否判定動作を終了する。
【0025】
本発明は以上の構成であるから、2次元画像検出装置2の良否を判定する基準である判定欠陥画素数および判定欠陥サイズの値について、頻繁に診断に使用される画像中央部より使用頻度の少ない画像周辺部で大きな値とすることにより、診断に障害となるアーチファクトの生起がなく歩留まりが向上した2次元画像検出装置2の供給が可能である。
【0026】
図に示す実施例では、図3に示すとおり画像中央部が帯状の長方形であるが、図5に示すように画像周辺部に囲まれた正方形あるいは長方形でも本発明は適用可能であり、検出領域の縦横の長さにも制限はない。2次元画像検出装置2の応用例として医用X線撮影装置を挙げたが、X線非破壊検査装置にも応用可能である。また実施例では、2次元画像検出装置2はX線画像の検出装置であるが、可視光の画像の検出装置にも本発明は適用可能である。上述のとおり本発明は図示例に限定されるものではなく種々の変形例を包含する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、X線等の放射線、可視光、赤外光等の電磁波情報に基づいて画像を検出する2次元画像検出装置に関し、特に2次元画像検出装置の良否判定手段に利用の可能性がある。
【符号の説明】
【0028】
1 X線管
2 2次元画像検出装置
3 FPD
4 欠陥画素補間処理部
5 良否判定部
6 画像処理部
7 X線管制御部
8 FPD制御部
30 TFTガラス
31 画素電極
32A 蓄積容量
32a 電気配線
32B TFTスイッチ
32b 電気配線
35 ゲートドライバ
36 増幅器
37 マルチプレクサ
38 A/D変換器
41 欠陥画素抽出部
42 欠陥情報記憶部
43 補正部
51 中央部良否判定部
52 周辺部良否判定部
53 総合判定部
M 被検者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットパネル型X線検出部と、前記フラットパネル型X線検出部の欠陥画素を抽出し補間する欠陥画素補間処理部を備えた2次元画像検出装置において、前記抽出された欠陥画素数と判定欠陥画素数を比較し、あるいは/および前記抽出された欠陥画素の集合体の大きさと判定欠陥サイズを比較し前記フラットパネル型X線検出部の良否を判定する良否判定手段を備えることを特徴とする2次元画像検出装置。
【請求項2】
前記判定欠陥画素数および判定欠陥サイズが画像中央部と画像周辺部で異なる値であることを特徴とする請求項1記載の2次元画像検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−249621(P2010−249621A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98545(P2009−98545)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】