説明

2次電池を有する燃料電池システム

本発明は、負荷に電力を供給するための電源システムである。本電源システムは、負荷に接続するための第1と第2の電源配線と、第1と第2の電源配線の間に接続された燃料電池を有する燃料電池システムと、第1と第2の電源配線の間に燃料電池と並列に接続された2次電源システムと、燃料電池と前記第1の電源配線との間の接続を開閉するためのスイッチと、2次電源システムとスイッチとを制御するための制御部とを備える。この制御部は、燃料電池を第1の電源配線に接続する際に、2次電源システムを制御して、2次電源システムの両端電圧を上昇させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、燃料電池と2次電池とを備える電源システムに関する。
【背景技術】
燃料電池は、環境に優しいクリーンな電源として注目されている。通常は、燃料電池単体では負荷変動に対処するのが困難な場合があるので、燃料電池と2次電池とを組み合わせたハイブリッド電源システムが提案されている。ハイブリッド電源システムでは、燃料電池の不調時や起動時といった特定の状態においては、燃料電池の出力を停止して2次電池からの電力のみで電力を供給することが望まれている。
しかし、ハイブリッド電源システムの内部で燃料電池をシステムから切り離すためには大きな容量のスイッチが必要であった。さらに、燃料電池をシステムに接続する際において、燃料電池から過大な電流が流れる可能性があるという問題も生じていた。
【発明の開示】
本発明は、この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池と2次電池とを組み合わせた電源システムにおいて、2次電池のみで電力を供給する作動モードを実現する技術を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様は、負荷に電力を供給するための電源システムであって、前記負荷に接続するための第1と第2の電源配線と、前記第1と第2の電源配線の間に接続された燃料電池を有する燃料電池システムと、前記第1と第2の電源配線の間に前記燃料電池と並列に接続された2次電源システムと、前記燃料電池と前記第1の電源配線との間の接続を開閉するためのスイッチと、前記2次電源システムと前記スイッチとを制御するための制御部とを備え、前記制御部は、前記燃料電池を前記第1の電源配線に接続する際に、前記2次電源システムを制御して、前記2次電源システムの両端電圧を上昇させることを特徴とする。
本発明の第1の態様の電源システムによれば、燃料電池を電源配線に接続する際に、燃料電池と並列に接続された2次電源システムの両端電圧を上昇させるので、燃料電池を電源システムに接続する際に発生し得る燃料電池から過大な電流を抑制することができる。
上記電源システムにおいて、さらに、前記燃料電池と前記第1の電源配線との間に接続された逆流防止デバイスを備え、前記制御部は、前記燃料電池を前記第1の電源配線に接続する際に、前記2次電源システムの両端電圧を前記燃料電池の開放時の両端電圧以上の高さの第1の電圧に上昇させるようにしても良い。
こうすれば、燃料電池を電源システムに接続する際に燃料電池から流れる電流をゼロにすることができるので、接続後に2次電源システムの両端電圧を徐々に下げることにより、燃料電池からの出力電流を緩やかに大きくすることができる。
上記電源システムにおいて、前記制御部は、前記燃料電池を前記第1の電源配線に接続した後に、前記2次電源システムの両端電圧を前記燃料電池の開放時の両端電圧よりも低い第2の電圧に下降させるようにしても良い。
こうすれば、燃料電池が接続された後に、燃料電池の開放時の両端電圧よりも低い電圧で最適に作動するように構成された2次電源システムや燃料電池を効率的に運転することができる。2次電源システムが燃料電池の開放時の両端電圧よりも低い電圧で最適に作動するように構成されているのは、燃料電池が接続されているときには燃料電池の開放時の両端電圧よりも低い電圧で作動することを想定して2次電源システムが設計されているからである。
上記電源システムにおいて、前記制御部は、前記第1の電源配線からの前記燃料電池の切り離しに応じて、前記2次電源システムの両端電圧を前記燃料電池の開放時の両端電圧よりも低い電圧に下降させるようにしても良い。
こうすれば、燃料電池が切り離されたときには、燃料電池の開放時の両端電圧よりも低い電圧で最適に作動するように構成された2次電源システムを効率的に運転することができる。
上記電源システムにおいて、前記2次電源システムは、充電可能な2次電池と、前記2次電池から入力される直流の入力電力の電圧を昇降して直流電力を出力可能なDC−DCコンバータとを備えており、前記制御部は、前記第1の電源配線からの前記燃料電池の切り離しに応じて、前記DC−DCコンバータの出力電圧が前記燃料電池の開放時の両端電圧よりも前記2次電池の出力電圧に近づくような制御を開始するようにしても良い。
こうすれば、燃料電池が切り離されたときには、2次電源システムが有するDC−DCコンバータを効率的に運転することができる。DC−DCコンバータの効率は、出力電圧が燃料電池の開放時の両端電圧よりも入力電圧に近いほうが効率が良いからである。なお、本明細書では、「充電可能な2次電池」は、バッテリだけでなくキャパシタをも含む広い意味を有する。
上記電源システムにおいて、前記2次電源システムは、充電可能な2次電池と、前記2次電池から入力される直流の入力電力の電圧を昇降して直流の出力電力を出力可能なDC−DCコンバータとを備えており、前記制御部は、前記第1の電源配線からの前記燃料電池の切り離しに応じて、前記DC−DCコンバータの出力電圧が前記2次電池の出力電圧に近づくような制御を開始するようにしても良い。
こうすれば、燃料電池が切り離されたときに、2次電源システムが有するDC−DCコンバータを最も効率的に運転することができる。DC−DCコンバータの効率は、出力電圧が入力電圧に近づくほど効率が良くなるからである。
上記電源システムにおいて、前記制御部は、前記燃料電池が所定の大きさの電力を供給できない状態にあるときに、前記第1の電源配線から前記燃料電池を切り離すように構成しても良い。
本発明の第2の態様は、負荷に電力を供給するための電源システムであって、前記負荷の一端に対してその一端が接続される逆流防止デバイスと前記負荷の他端と前記逆流防止デバイスの他端との間に接続された燃料電池とを有する燃料電池システムと、前記燃料電池と並列に接続された2次電源システムと、前記2次電源システムを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記2次電源システムの両端電圧を、前記燃料電池の開放時の両端電圧以上の高さとして前記燃料電池の出力を停止する特定の制御モードを有することを特徴とする。
本発明の第2の態様の電源システムは、2次電源システムの両端電圧を燃料電池の開放時の両端電圧以上の高さとして燃料電池の出力を停止させる特定の制御モードを有するので、スイッチを介することなく燃料電池をハイブリッド電源システムに装備することができる。
上記電源システムにおいて、前記制御部は、前記燃料電池の起動と前記燃料電池の異常の少なくとも一方を含む特定の状態に前記燃料電池がある場合に、前記特定の制御モードで制御を行うようにしても良い。
上記電源システムにおいて、前記2次電源システムは、充電可能な2次電池と、前記2次電池から入力される直流の入力電力の電圧を昇降して直流の出力電力を出力可能なDC−DCコンバータとを備えており、前記2次電池は、所定の電力を出力しているときの両端電圧が前記燃料電池の開放時の両端電圧以上の高さとなるように構成されており、前記DC−DCコンバータは、前記2次電池と前記燃料電池とを短絡させる作動モードである短絡モードを有し、前記特定の制御モードは、前記DC−DCコンバータの作動モードを前記短絡モードとする制御モードであるようにしても良い。
こうすれば、2次電池の出力電圧が燃料電池や負荷に直接印加されるので、燃料電池の出力を停止するとともにスイッチング損失を回避して燃料電池の出力停止時における電源システムの高効率化を図ることができる。短絡モードは、たとえば2次電池と燃料電池や負荷との間に短絡用のスイッチを設けることによって実現することができる。
上記電源システムにおいて、前記2次電池は、第1電源電極と第2電源電極とを有し、前記DC−DCコンバータは、第1負荷電極と、第2負荷電極と、第1スイッチの一端と第2スイッチの一端とが第1接続点で直列に接続された直列回路であって、前記第1電源電極に前記第1スイッチの他端が接続されるとともに、前記第2電源電極に前記第2スイッチの他端が接続された第2電源側直列回路と、第3スイッチの一端と第4スイッチの一端とが第2接続点で直列に接続された直列回路であって、前記第1負荷電極に前記第3スイッチの他端が接続されるとともに、前記第2負荷電極に前記第4スイッチの他端が接続された負荷側直列回路と、前記第1接続点と前記第2接続点との間に接続されたインダクタンスと、を備え、前記第2電源電極は、前記第2負荷電極に接続されており、前記前記短絡モードは、前記制御部が、前記第1スイッチと前記第3スイッチとを閉じるとともに、前記接続制御スイッチと前記第2スイッチと前記第4スイッチとを開く作動モードであるようにしても良い。
こうすれば、短絡用のスイッチを省略して簡易に信頼性の高いシステムを実現することができる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ハイブリッド電源システムおよびその制御装置や制御方法、それらのシステムを備える移動体(たとえば燃料電池自動車)およびその制御方法、それらのシステムまたは方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、および電力供給方法等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1実施例としてのハイブリッド電源システムを備える電気自動車の概略構成図である。
図2は、2次電源システム20とFCシステム30とがモータ駆動回路40に電力を供給する様子を示すブロック図である。
図3は、2次電源システム20の出力電圧の制御によって分担比率が変動する様子を示す説明図である。
図4は、本発明の第1実施例におけるDC−DCコンバータ21と2次電池23とを有する2次電源システム20の構成を示す説明図である。
図5は、本発明の第1実施例のDC−DCコンバータ21における入出力電圧比と変換効率との間の関係を示す説明図である。
図6は、本発明の第1実施例におけるハイブリッド電源システムの作動の様子を示すタイムチャートである。
図7は、本発明の第1実施例におけるハイブリッド電源システムの制御内容を示すフローチャートである。
図8は、ステップS120で行われるFCシステム接続制御の内容を示すフローチャートである。
図9は、DC−DCコンバータ電圧指令のロジックを示すフローチャートである。
図10は、本発明の第2実施例におけるハイブリッド電源システムを備える電気自動車の概略構成図である。
図11は、本発明の第2実施例の2次電源システム20aの構成を示す説明図である。
図12は、本発明の第2実施例におけるハイブリッド電源システム100aの制御内容を示すフローチャートである。
図13は、DC−DCコンバータ制御指令のロジックを示すフローチャートである。
図14は、通常制御モードにおいて電力供給時に制御部300aが4つのスイッチQ1、Q2、Q3、Q4の各ゲート端子に印可する電圧を時系列で表すタイムチャートである。
図15は、負荷200に電力を供給するときの双方向DC−DCコンバータ回路21aの作動状態を示す説明図である。
図16は、双方向DC−DCコンバータ回路21aの短絡モードにおける作動の様子を示す説明図である。
図17は、短絡モードにおけるハイブリッド電源システム100aの作動状態を示す説明図である。
図18は、駆動回路の要求電力の指令内容を決定するための処理の一例を示すフローチャートである。
図19は、2次電池23aの定電力放電曲線を表すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.本発明の第1実施例におけるハイブリッド電源システムの構成:
B.本発明の第1実施例におけるハイブリッド電源システムの作動:
C.本発明の第2実施例におけるハイブリッド電源システムの構成:
D.本発明の第2実施例におけるハイブリッド電源システムの作動:
A.本発明の第1実施例におけるハイブリッド電源システムの構成:
図1は、本発明の第1実施例としてのハイブリッド電源システムを備える電気自動車の概略構成図である。この電気自動車(以下、単に「車両システム」と呼ぶ)は、ハイブリッド電源システム100と、車輪を含む負荷200と、制御部300と、を備えている。ハイブリッド電源システム100は、2本の電源配線12,14の間に互いに並列に接続された2次電源システム20と燃料電池システム30(「FCシステム」とも呼ぶ)とを有している。2次電源システム20と燃料電池システム30には、両端電圧を測定するための電圧計22,36がそれぞれ設けられている。また、燃料電池システム30と、第1の電源配線12との間には、FCスイッチ32と、逆流防止用ダイオードD1とが直列に接続されている。
電源配線12,14は、負荷200のモータ駆動回路40に接続されている。モータ駆動回路40は、モータ42を駆動するための回路であり、例えばトランジスタインバータで構成されている。モータ42で発生した動力は、ギヤ機構44を介して車輪駆動軸46に伝達される。
制御部300は、FCシステム30と、FCスイッチ32と、モータ駆動回路40とに電気的に接続されており、これらの回路の制御を含む各種の制御を実行する。制御部300の各種の制御動作は、制御部300に内蔵されている図示しないメモリ内に格納されたコンピュータプログラムを、制御部300が実行することによって実現される。このメモリとしては、ROMやハードディスクなどの種々の記録媒体を利用することが可能である。
モータ駆動回路40は、ハイブリッド電源システム100から供給された直流電力を三相交流電力に変換してモータ42に供給する。供給される三相交流電力の大きさは、図示しないアクセルからの入力に応じて制御部300が制御するモータ駆動回路40によって決定される。このように、モータ42に供給される三相交流電力の大きさがハイブリッド電源システム100の出力電圧には依存しないように車両システムが構成されている。
図2は、2次電源システム20とFCシステム30とがモータ駆動回路40に電力を供給する様子を示すブロック図である。図2(a)は、モータ駆動回路40の要求電力がFCシステム30の出力電力であるFC電力よりも大きい場合を、図2(b)は、モータ駆動回路40の要求電力がFC電力よりも小さい場合を示している。
モータ駆動回路40の駆動回路要求電力がFC電力よりも大きい場合には、FCシステム30とともに2次電源システム20も同時にモータ駆動回路40に電力を供給する(図2(a))。たとえば図示しないアクセルが踏み込まれて瞬間的に駆動回路要求電力が大きくなったときに、2次電源システム20とFCシステム30の双方が電力を供給することになる。
モータ駆動回路40の駆動回路要求電力がFC電力よりも小さい場合には、FC電力のうちの余剰電力が2次電源システム20に供給され、後述する2次電池に充電される(図2(b))。たとえばアイドリング中に駆動回路要求電力が小さくなったときには、FCシステム30は、モータ駆動回路40と2次電源システム20の双方に電力を供給することになる。
なお、モータ42の回生制動によってモータ駆動回路40から電力が供給されるときには、2次電源システム20のみにその電力が供給される。FCシステム30と電源配線12との間には、FCシステム30の保護のための逆流防止用のダイオードD1が備えられているからである(図1)。
図3は、2次電源システム20の出力電圧の調整によってFCシステム30の出力が制御される様子を示す説明図である。図3(a)は、FCシステム30の出力電圧であるFC電圧と出力電流であるFC電流との間の関係を示している。図3(a)から分かるように、FC電圧が高くなるとFC電流が小さくなり、FC電圧が低くなるとFC電流が大きくなる関係にある。
具体的には、FC電圧がVのときには、FC電流はIであり、FC電力はPである。FC電圧がVに下降すると、FC電流はIに、FC電力はPにそれぞれ上昇する。しかし、VからさらにFC電圧が下降しても、FC電流の増加は飽和しつつあり、FC電流とFC電圧の積であるFC電力は逆に下降し始める。
なお、ハイブリッド電源システム100は、FCシステム30を保護するためにFC電圧が運用最小電圧Vmin未満とならないように構成されている。この結果、FCシステム30は、開放電圧OCVと運用最小電圧Vminの間の出力電圧で運用されることになる。
図3(b)は、2次電源システム20が並列に接続されたFCシステム30(図1)の電力供給状態を示している。電力Ptは、ある瞬間の駆動回路要求電力(図2)である。FC電力は、「−」のハッチングが施された領域として示してあり、2次電源電力は、「+」のハッチングが施された領域として示してある。FC電力は、図3(a)に示されたものと同一である。
たとえば2次電源電圧がVのときには、FC電力の値は駆動回路要求電力Ptよりも小さいPなので、2次電源システム20は、駆動回路要求電力PtとPの差分(=Pt−P)の電力を供給することになる。一方、2次電源電圧がVに下降すると、FC電力の値は駆動回路要求電力Ptよりも大きいPに上昇するので、FC電力のうちの余剰電力(=P−Pt)が2次電源システム20に供給されることになる(図2(b))。このように、ハイブリッド電源システム100は、2次電源電圧(2次電源システム20の出力電圧)を調整することによってFC電力を制御可能であることが分かる。
これにより、たとえば後述する2次電池の充電状態に応じて、FCシステム30の出力を調整することができる。たとえば2次電池の充電量が少ない場合には、2次電源電圧を小さくすることが好ましい。こうすれば、FCシステム30の出力を大きくし、2次電池への充電の機会を多くすることができるからである。一方、2次電池の充電量が過大である場合には、2次電源電圧を大きくすることが好ましい。こうすれば、FCシステム30の出力を小さくし、2次電池の放電の機会を多くすることができるからである。
図4は、本発明の第1実施例におけるDC−DCコンバータ21と2次電池23とを有する2次電源システム20の構成を示す説明図である。DC−DCコンバータ21は、2つのスイッチQ1、Q2と、トランスTと、ダイオードD2と、コンデンサCとを有している。2次電源システム20は、2つのターミナルT12、T14に所定の範囲で任意の電圧の直流電力を出力することができる。
このDC−DCコンバータ21は、図4から分かるようにフライバック方式の双方向コンバータとして構成されている。この双方向コンバータは、2次電池23から電力を供給することも、FCシステム30やモータ駆動回路40からの電力を2次電池23に充電することもできる。
2次電源システム20による電力の供給は、制御部300がスイッチQ2を「オン」に固定して、スイッチQ1をオンオフ動作させることによって行われる。スイッチQ1をオンオフ動作させると、スイッチQ1が「オン」となった瞬間にトランスTの1次側巻き線(2次電池23側)に磁気エネルギが蓄積され、スイッチQ1が「オフ」となった瞬間に2次側巻き線(出力側)に起電力が発生する。2次電源システム20の出力電圧は、スイッチQ1のデューティ(オンオフ比)を変化させることによって制御可能である。一方、2次電池23の充電は、制御部300がスイッチQ1を「ON」に固定して、スイッチQ2をオンオフ動作させることによって行われる。
図5は、本発明の第1実施例のDC−DCコンバータ21における入出力電圧比と変換効率との間の関係を示す説明図である。入出力電圧比は、DC−DCコンバータ21の出力電圧を入力電圧で除した値である。変換効率は、DC−DCコンバータ21出力電力を入力電力で除した値である。図5から分かるように、入出力電圧比が「1」のときに変換効率のピークがあるので、2次電源システム20の出力電圧と2次電池23の出力電圧とが等しくなる状態で運用される場合が多くなるようにハイブリッド電源システム100を構成することが好ましい。
B.本発明の第1実施例におけるハイブリッド電源システムの作動:
図6は、本発明の第1実施例におけるハイブリッド電源システムの作動の様子を示すタイムチャートである。図6は、一例としてのシーケンス、すなわち、(1)FCシステム30の起動、(2)ハイブリッド電源システムの通常運転、(3)FCシステム30の不調、(4)ハイブリッド電源システムの通常運転といったシーケンスにおけるハイブリッド電源システム100の状態を示している。
ハイブリッド電源システム100の状態としては、FCスイッチ32の動作状態、DC−DCコンバータ21指令電圧、およびFC電流がタイムチャートとして示されている。また、本明細書において、ハイブリッド電源システムの通常運転とは、FCシステム30と2次電池23の両方から電力が供給可能な並列運転状態を意味している。
FCシステム30の起動時には、制御部300は、FCスイッチ32をオフにしている(図6(a)の時刻t)。FCシステム30の起動とは、たとえば水素ガスを発生する図示しない改質器が所定の品質の水素ガスを発生できるようになってFCシステム30が所定の性能を発揮できるようにする処理をいう。FCシステム30の起動時には、FCスイッチ32がオフにされているので、所定の性能を発揮できる状態になってからFCシステム30が電力の供給を開始することになる。この結果、FCシステム30の起動時には、FC電流が流れないことになる(図6(c))。
FCシステム30の起動時には、DC−DCコンバータ21の指令電圧は、電圧Vに設定されている。電圧Vは、2次電池23が最も効率良く運転できるときの2次電池23の出力電圧である。DC−DCコンバータ21の指令電圧を電圧Vに設定するのは、DC−DCコンバータ21の入出力電圧比を「1」として、変換効率を高めるためである。
ただし、FCシステム30の起動が完了に近づくと、制御部300は、DC−DCコンバータ21の指令電圧を電圧Vに上昇させる。電圧Vは、FCシステム30の開放電圧OCV(図3)よりも高い電圧である(時刻t)。DC−DCコンバータ21の指令電圧をFCシステム30の開放電圧よりも高い電圧とするのは、FCスイッチ32(図1)をオンにしたときに、FCシステム30から急激に大きな電流が流れないようにするためである。
FCスイッチ32がオンにされると、ハイブリッド電源システム100の通常運転が開始される。なお、DC−DCコンバータ21の出力電圧がFCシステム30の開放電圧OCVよりも高い状態で接続されても、逆流防止用のダイオードD1があるので逆流は生じない。
ハイブリッド電源システムの通常運転の開始時には、DC−DCコンバータ21の出力電圧がFCシステム30の開放電圧OCVよりも高いので、FC電流は流れない(時刻t)。しかし、その後、2次電源電圧であるDC−DCコンバータ21の出力電圧が下降してFCシステム30の開放電圧OCVより小さくなると、FC電流が流れ始める(図6(c)、図3(b))。このように、本実施例の構成では、DC−DCコンバータ21の出力電圧を徐々に降下させることにより、FC電流を徐々に大きくすることができる。
ハイブリッド電源システムの通常運転(期間t〜t)では、制御部300は、前述のように2次電池23の充電状態に応じてDC−DCコンバータ21の指令電圧を決定する。指令電圧は、電圧V近傍で調整されるようにハイブリッド電源システム100が構成されていることが好ましい。これにより、ハイブリッド電源システム100は、システム全体として通常運転で最も効率の良い作動状態となるからである。
通常運転中にFCシステム30の不調が検知されると、制御部300は、ハイブリッド電源システム100からFCシステム30を切り離す(時刻t)。FCシステム30の不調の検知は、たとえばFCシステム30内部で生成される水素ガスの品質やFCシステム30の内部抵抗の観測値に基づいて行うことができる。FCシステム30の切り離しは、FCスイッチ32をオフにすることにより行われる。
ハイブリッド電源システム100からのFCシステム30の切り離しが確認されると、制御部300は、DC−DCコンバータ21の指令電圧が電圧Vに固定される。これにより、2次電源システム20を高い変換効率で運転することができる。
FCシステム30の回復が確認されると、制御部300は、ハイブリッド電源システム100にFCシステム30を接続するための処理を行う。FCシステム30の回復の確認も、たとえばFCシステム30内部で生成される水素ガスの品質やFCシステム30の内部抵抗の観測値に基づいて行うことができる。FCシステム30を接続するための処理とは、DC−DCコンバータ21の出力電圧を電圧Vまで上昇させる操作である(時刻t)。
FCシステム30の回復後(時刻t以降)の接続で行われる処理は、前述のFCシステム30の起動後の接続で行われる処理とほぼ同一である。ただし、FCシステム30の回復後の接続で行われる処理は、接続後におけるDC−DCコンバータ21の出力電圧の下降速度がFCシステム30の起動後の接続で行われる処理よりも緩やかに設定されている。このような処理を行うのは、一度不調となったFCシステム30が再度不調となりやすいことを考慮したものである。
図7は、本発明の第1実施例におけるハイブリッド電源システム100の制御内容を示すフローチャートである。ステップS110では、制御部300は、FCシステム30の接続の可否を判定する。FCシステム30の接続の可否は、前述のようにFCシステム30内部で生成される水素ガスの品質に基づいて行うことができる。FCシステム30の接続が可能と判定されると、制御部300は、接続フラグを「ON」にセットする。ステップS120では、制御部300は、FCシステム30をハイブリッド電源システム100に接続するためのの制御を行う。
図8は、ステップS120で行われるFCシステム接続制御の内容を示すフローチャートである。ステップS121では、制御部300は、FCスイッチ32が「ON」と「OFF」のいずれであるかを判定する。この判定は、たとえばFCシステム30の出力電圧と2次電源システム20の出力電圧とを比較することにより行うことができる。FCシステム30の出力電圧と2次電源システム20の出力電圧は、それぞれ電圧計36と電圧計22を用いて計測することができる。
具体的には、両者が常にほぼ同一である場合には、FCスイッチ32が「ON」であると判定されて、後述するステップS125に処理が進む。一方、両者が一致しない場合には、FCスイッチ32が「OFF」であると判定されて、ステップS122に処理が進む。
ステップS122では、制御部300は、セットされた接続フラグが「ON」であるか否かを判断する。接続フラグが「OFF」の場合、すなわち接続不可の場合には、後述するステップS130(図7)に処理が進む。一方、接続フラグが「ON」のとき、すなわち接続可の場合には、ステップS123に処理が進む。
ステップS123では、制御部300は、2次電源電圧がFC開放電圧OCVよりも高いか否かを判定する。2次電源電圧がFC開放電圧OCVよりも高いと判定されると、ステップS124に処理が進む。ステップS124では、制御部300は、FCスイッチ32を「ON」にしてFCシステム30をハイブリッド電源システム100に接続する。一方、2次電源電圧がFC開放電圧OCVよりも高いと判定されなかった場合には、後述するステップS130(図7)に処理が進む。
一方、ステップS125では、制御部300は、ステップS122と同様にセットされた接続フラグが「ON」であるか否かを判断する。接続フラグが「OFF」の場合には、直ちにFCスイッチ32を「OFF」にしてFCシステム30をハイブリッド電源システム100から切り離して、ステップS130に処理が進む。一方、接続フラグが「ON」の場合には、FCシステム30をハイブリッド電源システム100から切り離すことなくステップS130に処理が進む。ステップS130では、制御部300が有する電圧司令部310(図4)は、DC−DCコンバータ21の指令電圧を決定する。
図9は、DC−DCコンバータ電圧指令のロジックを示すフローチャートである。ステップS131では、電圧司令部310は、ステップS121と同様にFCスイッチ32が「ON」と「OFF」のいずれであるかを判定する。FCスイッチ32が「ON」であると判定されると、ステップS135に処理が進む。ステップS135では、前述の通常制御が行われる。一方、FCスイッチ32が「OFF」であると判定されると、ステップS132に処理が進む。
ステップS132では、電圧司令部310は、セットされた接続フラグが「ON」と「OFF」のいずれであるか否かを判断する。接続フラグが「OFF」の場合、すなわち接続不可の場合には、ステップS133に処理が進む。ステップS133では、電圧司令部310は、DC−DCコンバータ21の指令電圧を2次電池23の出力電圧に一致させるように調整する。FCシステム30が切り離された状態でDC−DCコンバータ21の変換効率を高めて2次電源システム20を効率的に運転するためである。
一方、接続フラグが「ON」のとき、すなわち接続可の場合には、ステップS134に処理が進む。ステップS134では、電圧司令部310は、DC−DCコンバータ21の指令電圧をFCシステム開放電圧OCVより高い電圧に設定する。これにより、ステップS120においてFCシステム30の接続が可能となる(ステップS123、S124)。
このように、燃料電池であるFCシステム30を電源配線に接続する際に、FCシステム30と並列に接続された2次電源システム20の両端電圧を通常運転において取り得る値よりも上昇させるので、FCシステム30を電源システムに接続する際に発生し得る燃料電池から過大な電流を抑制することができる。
C.本発明の第2実施例におけるハイブリッド電源システムの構成:
図10は、本発明の第2実施例におけるハイブリッド電源システムを備える電気自動車の概略構成図である。この電気自動車は、2次電源システム20と制御部300とが、それぞれ2次電源システム20aと制御部300aとに置き換えられているとともに、第1実施例において燃料電池システム30と電源配線12との間に直列に接続されたFCスイッチ32が削除されている点で第1実施例の車両システム(図1)と異なる。
図11は、2次電源システム20aの構成を示す説明図である。2次電源システム20aは、双方向DC−DCコンバータ回路21aと、充電可能な2次電池23aとを備えている。2次電池23aは、充電率が所定の値以上の場合には、想定される駆動回路要求電力の最大値の電力を供給する場合において、FCシステム30の開放電圧OCVよりも高い電圧で電力を供給することができるように構成されている。なお、本実施例では、想定される駆動回路要求電力の最大値は、特許請求の範囲における「所定の電力」に相当する。
双方向DC−DCコンバータ回路21aは、2次電池側直列回路と、負荷側直列回路と、インダクタンスLと、コンデンサCと、を備えている。2次電池側直列回路は、スイッチQ1とスイッチQ2とを備えている。負荷側直列回路は、スイッチQ3とスイッチQ4とを備えている。なお、本実施例では、4つのスイッチQ1、Q2、Q3、Q4としてMOS−FETを使用している。
2次電池側直列回路の2つのスイッチQ1、Q2は、2次電池23a側に以下のように接続されている。スイッチQ1の一端とスイッチQ2の一端は、接続点J1で接続されている。スイッチQ1の他端は、2次電池23aのカソードに接続されている。スイッチQ2の他端は、2次電池23aのアノードに接続されている。2つのスイッチQ1、Q2のゲート端子は、制御部300aに接続されている。
負荷側直列回路の2つのスイッチQ3、Q4は、負荷200側に以下のように接続されている。スイッチQ3の一端とスイッチQ4の一端は、接続点J2で接続されている。スイッチQ3の他端は、負荷200のカソードに接続されている。スイッチQ4の他端は、負荷200のアノードに接続されている。2つのスイッチQ3、Q4のゲート端子は、制御部300aに接続されている。
また、インダクタンスLは、接続点J1と接続点J2との間に接続されている。2次電池23aのアノードは、負荷200のアノードに接続されている。
双方向DC−DCコンバータ回路21aは、2次電池側直列回路から負荷側直列回路に電力を供給するモードと、負荷側直列回路から2次電池側直列回路に向かって電力を供給するモードとの2つのモードで双方向に作動することができる。このような動作は、制御部300aが4つのスイッチQ1、Q2、Q3、Q4の開閉動作を適切に行うことによって実現される。
D.本発明の第2実施例におけるハイブリッド電源システムの作動:
図12は、本発明の第2実施例におけるハイブリッド電源システム100aの制御内容を示すフローチャートである。ステップS210では、制御部300aは、FCシステム30の出力の可否を判定する。この判定は、FCシステム30に電力を出力させても良いか否かの判定であり、本実施例では、第1実施例における接続の可否の判定と同一の内容の判定である。FCシステム30の出力が可能と判定されると、制御部300aは、出力フラグを「ON」にセットする。なお、出力フラグの初期状態は「OFF」である。
ステップS220では、制御部300aが有する電圧司令部310a(図11)は、DC−DCコンバータ21aの制御指令の内容を決定する。DC−DCコンバータ21aは、通常制御モードと短絡モードの2つの作動モードを有する。
通常制御モードは、第1実施例のDC−DCコンバータ21と同様に所定の範囲で任意の電圧の直流電力を出力する作動モードである。短絡モードは、2次電池23aと駆動回路40を短絡させてDC−DCコンバータ21aにおける熱損失を抑制する作動モードである。なお、短絡モードの詳細については後述する。
図13は、DC−DCコンバータ制御指令のロジックを示すフローチャートである。ステップS222では、電圧司令部310aは、セットされた出力フラグが「ON」と「OFF」のいずれであるか否かを判断する。この結果、出力フラグが「OFF」の場合、すなわち出力不可の場合には、ステップS224に処理が進められる。一方、出力フラグが「ON」の場合、すなわち出力可能の場合には、ステップS226に処理が進められる。
ステップS266では、電圧司令部310aは、通常制御を行う。すなわち、電圧司令部310aは、第1実施例と同様に2次電池23aの充電状態に応じてDC−DCコンバータ21aの指令電圧を調整する。
図14は、通常制御モードにおいて電力供給時に制御部300aが4つのスイッチQ1、Q2、Q3、Q4の各ゲート端子に印可する電圧を時系列で表すタイムチャートである。このような電圧の印可によって、4つのスイッチQ1、Q2、Q3、Q4のオンオフ制御(開閉)が行われ、これにより2次電池23aからの直流電力が昇圧されて負荷200に供給される。
図15は、負荷200に電力を供給するときの双方向DC−DCコンバータ回路21aの作動状態を示す説明図である。具体的には、4つのスイッチQ1、Q2、Q3、Q4のオンオフ制御によって以下の電圧変換動作が行われている。
(1)時刻t10(図14)では、2つのスイッチQ1、Q4がオンにされ、2つのスイッチQ2、Q3がオフにされる(図15(a))。これにより、インダクタンスLが2次電源3側に接続される。この時に、インダクタンスLに磁気エネルギが蓄積される。
(2)時刻t11では、2つのスイッチQ1、Q4がオフにされ、2つのスイッチQ2、Q3がオンにされる(図15(b))。これにより、インダクタンスLが負荷200側に接続される。この時に、インダクタンスLに蓄積された磁気エネルギが負荷200側に電力として供給される。
負荷200側に供給される電力の電圧は、制御部300aがデューティ比(ON−OFF比)を調整することによって制御することができる。デューティ比を大きくすれば、負荷200側に供給される電力の電圧を高くすることができ、デューティ比を小さくすれば、負荷200側に供給される電力の電圧を低くすることができる。さらに、デューティ比を小さくすれば、負荷200側から2次電池23a側に電力を供給して、2次電池23aを充電することもできる。
ここで、デューティ比(ON−OFF比)における「ON」と「OFF」は、以下のように定義される。「ON」は、2つのスイッチQ1、Q4がオンにされ、2つのスイッチQ2、Q3がオフにされる状態である(図15(a))。「OFF」は、2つのスイッチQ1、Q4がオフにされ、2つのスイッチQ2、Q3がオンにされる状態である(図15(b))。
このように、双方向DC−DCコンバータ回路21aは、第1実施例の双方向DC−DCコンバータ回路21と同様に、FCシステム30と2次電池23aとで適切に分担して負荷200側に電力を供給するために電圧変換動作を行っている。
一方、ステップS224(図13)では、制御部300aは、作動モードが短絡モードとなるようにDC−DCコンバータ21aを制御する。
図16は、双方向DC−DCコンバータ回路21aの短絡モードにおける作動の様子を示す説明図である。制御部300aは、2つのスイッチQ1、Q3をオンに固定するとともに、2つのスイッチQ2、Q4をオフに固定する。このような制御によって、インダクタンスLを介して負荷200側と2次電池23a側がスイッチング動作なしで接続されることになる。
図17は、短絡モードにおけるハイブリッド電源システム100aの作動状態を示す説明図である。図17から分かるように、負荷200と2次電池23aとが電線とインダクタンスLだけで接続されている。電線もインダクタンスLも電力損失をほとんど生じさせないので、双方向DC−DCコンバータ回路21aにおけるスイッチング損失その他の電力損失はほとんどゼロとなることが分かる。
双方向DC−DCコンバータ回路21aが短絡モードにある場合には、FCシステム30は電力を出力しないことになる。双方向DC−DCコンバータ回路21aの短絡モードにおける出力電圧は、FCシステム30の開放端電圧よりも高い2次電池23aの出力電圧に等しくなるからである。
ステップS230(図12)では、制御部300aは、駆動回路の要求電力を指令する。駆動回路の要求電力は、本実施例では、ハイブリッド電源システム100aの出力可能な電力を考慮して決定される。
図18は、駆動回路の要求電力の指令内容を決定するための処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、双方向DC−DCコンバータ回路21aの作動モードが短絡モードにある場合に、ハイブリッド電源システム100aが出力可能な電力、すなわち、2次電池23aが出力可能な電力に要求電力を制限する処理である。ハイブリッド電源システム100aが出力可能な電力は、短絡モードにおいては2次電池23aの出力可能電力に等しいからである。
なお、2次電池23aは、前述のように、本実施例では、充電率が所定の値以上の場合には、想定される駆動回路要求電力の最大値の電力を供給する場合において、FCシステム30の開放電圧OCVよりも高い電圧で電力を供給することができるように構成されている。
ステップS231では、制御部300aは、第1実施例と同様に図示しないアクセルからの入力に応じて駆動回路の要求電力を推定する。
ステップS232では、制御部300aは、双方向DC−DCコンバータ回路21aの作動モードが通常制御モードか短絡モードのいずれであるかを判断する。この結果、作動モードが通常制御モードである場合には処理がステップS233に進み、作動モードが短絡モードである場合には処理がステップS234に進む。
ステップS233では、制御部300aは、ステップS231で推定された要求電力を調整することなく駆動回路の要求電力として決定する。一方、ステップS234では、制御部300aは、2次電池23aの出力可能電力を推定する。2次電池23aの出力可能電力は、2次電池23aの充電状態に応じて変動するからである。
図19は、2次電池23aの定電力放電曲線を表すグラフである。定電力放電曲線とは、一定の電力を出力させるときの電圧と充電率との関係を表す曲線である。この図からわかるように、2次電池23aは、充電率が0%近傍と100%近傍の2個所で内部抵抗が大きく変動するので、充電率が0%近傍や100%近傍にある場合には、電圧計22でこの変動を計測することによって、そのことを推定することができる。
さらに、2次電池23aが他の充電率の状態にある場合には、充電率が0%近傍と100%近傍の2個所のいずれかに到達したときを基準として充放電の電流値を時間積分することによって充電率を推定することができる。
ステップS235では、制御部300aは、駆動回路の要求電力が2次電池23aの出力可能電力を上回っていないかどうかを判断する。この判断は、たとえば駆動回路の要求電力で電力を供給した場合に2次電池23aの出力電圧が予め定められた所定の時間以内にFCシステム30の開放端電圧以下とならないか否かという基準に基づいて行うことができる。この結果、上回っていない場合には、ステップS231で推定された要求電力がそのまま駆動回路の要求電力として決定され(S233)、上回っている場合には、ステップS236に処理が進められる。
ステップS236では、制御部300aは、2次電池23aの出力可能電力に応じて要求電力を調整する。この調整は、本実施例では、2次電池23aの出力電圧が所定の時間以内でFCシステム30の開放端電圧以下とならないように制限することにより行われる。こうすれば、出力可能状態にないFCシステム30から電力の出力を不意に起こさせないようにすることができるからである。
このように、第2実施例では、2次電池23aは充電率が所定の値以上の場合には駆動回路要求電圧に拘わらずFCシステム30の開放電圧OCVよりも高い電圧で電力を供給することができるように構成されているとともに、2次電池23aの充電率が低下した場合には出力電圧が所定の時間内にはFCシステム30の開放端電圧以下とならないように駆動回路要求電力を調整するように構成されている。これにより、FCシステム30からの不測の出力を抑制しつつ、FCシステム30をスイッチを介することなくハイブリッド電源システムに装備することができる。
さらに、本実施例では、FCシステム30が電力を出力することができないときには、ハイブリッド電源システム100aは、双方向DC−DCコンバータ回路21aにおけるスイッチング損失を回避して高い効率で電力を供給することができるという利点もある。
なお、駆動回路の要求電力が2次電池23aの出力可能電力を上回っていないかどうかの判断基準は、上述のものに限られず燃料電池の特性や2次電池の特性といったシステムの特性に応じて決定することができる。さらに、2次電池23aの出力電圧を監視するとともに、その低下に応じて直ちに駆動回路の要求電力に制限を加えるように構成しても良い。
また、「2次電池」は、充電可能であれば良く、バッテリだけでなくキャパシタをも含む広い意味を有する。
E.変型例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
E−1.第1実施例では、FCシステム30をハイブリッド電源システム100に接続する際に、2次電源システム20の両端電圧をFCシステム30の開放電圧よりも高くしているが、たとえば開放電圧の近傍(開放電圧未満)の電圧まで上昇させるように構成しても良い。FCシステム30をハイブリッド電源システム100に接続しようとする際に、2次電源システム20の両端電圧が上昇していれば開放電圧に達していなくても、上昇した分だけ燃料電池であるFCシステム30からの過大な電流を抑制することができるからである。
E−2.第1実施例では、DC−DCコンバータとしてフライバック方式あるいはON−OFF方式と呼ばれる方式を採用しているが、たとえばフォーワード方式やプッシュプル方式を採用しても良い。また、上記実施例では、変圧器を用いたDC−DCコンバータ21が使用されているが、変圧器を用いないDC−DCコンバータであっても良い。
E−3.第1実施例では、電源配線12とFCシステム30との間に逆流防止用ダイオードD1が接続されているが、たとえばFCシステム30への電流の逆流を防止するようにオンオフ制御されたスイッチであっても良い。この場合には、このスイッチが特許請求の範囲における「逆流防止デバイス」に相当する。
E−4.第2実施例では、2次電池は、所定の電力(想定される駆動回路要求電力の最大値)を出力しているときの両端電圧が燃料電池の開放時の両端電圧以上の高さとなるように構成されているが、これより低い電圧であるように構成しても良い。DC−DCコンバータによって昇圧するよう構成にしても、2次電源システムの両端電圧を燃料電池の開放時の両端電圧以上の高さとする特定の制御モードを実現することができるからである。ただし、前者のように構成すれば、DC−DCコンバータの作動モードを短絡モードとしたときにおいて、特定の制御モードを実現することができるという利点がある。
E−5.第2実施例では、DC−DCコンバータにおいて昇圧や降圧に使用される4つのスイッチQ1、Q2、Q3、Q4のオンオフの組合せによって2次電池と負荷や燃料電池との間が短絡されているが、たとえば2次電池と燃料電池や負荷との間に短絡用のスイッチを設けることによって短絡モード実現するようにしても良い。ただし、4つのスイッチQ1、Q2、Q3、Q4のオンオフの組合せによって短絡モードを実現すれば、短絡用のスイッチを省略して簡易に信頼性の高いシステムを実現することができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
この発明は、燃料電池を備える電源システムに適用可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を供給するための電源システムであって、
前記負荷に接続するための第1と第2の電源配線と、
前記第1と第2の電源配線の間に接続された燃料電池を有する燃料電池システムと、
前記第1と第2の電源配線の間に前記燃料電池と並列に接続された2次電源システムと、
前記燃料電池と前記第1の電源配線との間の接続を開閉するためのスイッチと、
前記2次電源システムと前記スイッチとを制御するための制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記燃料電池を前記第1の電源配線に接続する際に、前記2次電源システムを制御して、前記2次電源システムの両端電圧を上昇させることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
請求項1記載の電源システムであって、さらに、
前記燃料電池と前記第1の電源配線との間に接続された逆流防止デバイスを備え、
前記制御部は、前記燃料電池を前記第1の電源配線に接続する際に、前記2次電源システムの両端電圧を前記燃料電池の開放時の両端電圧以上の高さの第1の電圧に上昇させる、電源システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電源システムであって、
前記制御部は、前記燃料電池を前記第1の電源配線に接続した後に、前記2次電源システムの両端電圧を前記燃料電池の開放時の両端電圧よりも低い第2の電圧に下降させる、電源システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の電源システムであって、
前記制御部は、前記第1の電源配線からの前記燃料電池の切り離しに応じて、前記2次電源システムの両端電圧を前記燃料電池の開放時の両端電圧よりも低い電圧に下降させる、電源システム。
【請求項5】
請求項4記載の電源システムであって、
前記2次電源システムは、充電可能な2次電池と、前記2次電池から入力される直流の入力電力の電圧を昇降して直流電力を出力可能なDC−DCコンバータとを備えており、
前記制御部は、前記第1の電源配線からの前記燃料電池の切り離しに応じて、前記DC−DCコンバータの出力電圧が前記燃料電池の開放時の両端電圧よりも前記2次電池の出力電圧に近づくような制御を開始する、電源システム。
【請求項6】
請求項4記載の電源システムであって、
前記2次電源システムは、充電可能な2次電池と、前記2次電池から入力される直流の入力電力の電圧を昇降して直流の出力電力を出力可能なDC−DCコンバータとを備えており、
前記制御部は、前記第1の電源配線からの前記燃料電池の切り離しに応じて、前記DC−DCコンバータの出力電圧が前記2次電池の出力電圧に近づくような制御を開始する、電源システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の電源システムであって、
前記制御部は、前記燃料電池が所定の大きさの電力を供給できない状態にあるときに、前記第1の電源配線から前記燃料電池を切り離すように構成されている、電源システム。
【請求項8】
負荷に電力を供給するために電源システムを制御する制御装置であって、
前記電源システムは、
前記負荷に接続するための第1と第2の電源配線と、
前記第1と第2の電源配線の間に接続された燃料電池を有する燃料電池システムと、
前記第1と第2の電源配線の間に前記燃料電池と並列に接続された2次電源システムと、
前記燃料電池と前記第1の電源配線との間の接続を開閉するためのスイッチと、
を備え、
前記制御装置は、前記スイッチを制御して前記燃料電池を前記第1の電源配線に接続する際に、前記2次電源システムを制御して前記2次電源システムの両端電圧を上昇させることを特徴とする、制御装置。
【請求項9】
負荷に電力を供給するための方法であって、
(a)前記負荷に接続するための第1と第2の電源配線と、前記第1と第2の電源配線の間に接続された燃料電池を有する燃料電池システムと、前記第1と第2の電源配線の間に前記燃料電池と並列に接続された2次電源システムと、前記燃料電池と前記第1の電源配線との間の接続を開閉するためのスイッチと、を準備する工程と、
(b)前記2次電源システムと前記スイッチとを制御する工程と、
を備え、
前記工程(b)は、前記スイッチを制御して前記燃料電池を前記第1の電源配線に接続する際に、前記2次電源システムを制御して前記2次電源システムの両端電圧を上昇させる工程を含むことを特徴とする、電力供給方法。
【請求項10】
負荷に電力を供給するための電源システムであって、
前記負荷の一端に対してその一端が接続される逆流防止デバイスと、前記負荷の他端と前記逆流防止デバイスの他端との間に接続された燃料電池と、を有する燃料電池システムと、
前記燃料電池と並列に接続された2次電源システムと、
前記2次電源システムを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記2次電源システムの両端電圧を、前記燃料電池の開放時の両端電圧以上の高さとして前記燃料電池の出力を停止させる特定の制御モードを有することを特徴とする、電源システム。
【請求項11】
請求項10記載の電源システムであって、
前記制御部は、前記燃料電池の起動と前記燃料電池の異常の少なくとも一方を含む特定の状態に前記燃料電池がある場合に、前記特定の制御モードで制御を行う、電源システム。
【請求項12】
請求項10または11に記載の電源システムであって、
前記2次電源システムは、充電可能な2次電池と、前記2次電池から入力された直流の入力電力の電圧を昇降して直流の出力電力を出力可能なDC−DCコンバータとを備えており、
前記2次電池は、所定の電力を出力しているときの両端電圧が前記燃料電池の開放時の両端電圧以上の高さとなるように構成されており、
前記DC−DCコンバータは、前記2次電池と前記燃料電池とを短絡させる作動モードである短絡モードを有し、
前記特定の制御モードは、前記DC−DCコンバータの作動モードを前記短絡モードとする制御モードである、電源システム。
【請求項13】
請求項12記載の電源システムであって、
前記2次電池は、第1電源電極と第2電源電極とを有し、
前記DC−DCコンバータは、
第1負荷電極と、
第2負荷電極と、
第1スイッチの一端と第2スイッチの一端とが第1接続点で直列に接続された直列回路であって、前記第1電源電極に前記第1スイッチの他端が接続されるとともに、前記第2電源電極に前記第2スイッチの他端が接続された第2電源側直列回路と、
第3スイッチの一端と第4スイッチの一端とが第2接続点で直列に接続された直列回路であって、前記第1負荷電極に前記第3スイッチの他端が接続されるとともに、前記第2負荷電極に前記第4スイッチの他端が接続された負荷側直列回路と、
前記第1接続点と前記第2接続点との間に接続されたインダクタンスと、
を備え、
前記第2電源電極は、前記第2負荷電極に接続されており、
前記前記短絡モードは、前記制御部が、前記第1スイッチと前記第3スイッチとを閉じるとともに、前記接続制御スイッチと前記第2スイッチと前記第4スイッチとを開く作動モードである、電源システム。
【請求項14】
燃料電池を搭載する燃料電池自動車であって、
請求項10ないし13に記載の電源システムと、
前記電源システムから供給された電力に応じて車輪を回転駆動する駆動部と、
を備え、
前記制御部は、
前記2次電源システムが供給可能な電力である供給可能電力を推定する2次電源システム監視部と、
前記推定された供給可能電力に応じて、前記駆動部の要求電力を制限する要求電力決定部と、
を備えることを特徴とする、燃料電池自動車。
【請求項15】
請求項14記載の燃料電池自動車であって、
前記2次電源システム監視部は、前記2次電源システムが供給している電力の電圧を計測し、
前記要求電力決定部は、さらに、前記計測された電圧に応じて前記駆動部の要求電力を制限する、燃料電池自動車。
【請求項16】
負荷に電力を供給するために電源システムを制御する制御装置であって、
前記電源システムは、
前記負荷の一端に対してその一端が接続される逆流防止デバイスと、前記負荷の他端と前記逆流防止デバイスの他端との間に接続された燃料電池と、を有する燃料電池システムと、
前記燃料電池と並列に接続された2次電源システムと、
を備え、
前記制御装置は、前記2次電源システムを制御して、前記2次電源システムの両端電圧を前記燃料電池の開放時の両端電圧以上の高さとする特定の制御モードを有することを特徴とする、制御装置。
【請求項17】
負荷に電力を供給するための方法であって、
(a)前記負荷の一端に対してその一端が接続される逆流防止デバイスと、前記負荷の他端と前記逆流防止デバイスの他端との間に接続された燃料電池と、を有する燃料電池システムを準備する工程と、
(b)前記2次電源システムを制御する工程と、
を備え、
前記工程(b)は、前記2次電源システムの両端電圧を、前記燃料電池の開放時の両端電圧以上の高さとする特定の制御モードを有することを特徴とする、電力供給方法。

【国際公開番号】WO2004/055929
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【発行日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560605(P2004−560605)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015498
【国際出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】