説明

2速油圧モータの手動変速切換弁

【課題】自動変速切換弁に使用する同一のハウジングの構造を変更することなく使用し、かつ該ハウジングに嵌挿する大径スプールの構造を変えて手動変速切換できるようにする。
【解決手段】手動変速切換弁20は、ハウジング21内に両端がプラグ22、23により閉じられた大径スプール穴24に軸方向に移動可能に嵌合され一側端面に設けられた中空穴25を有する2速スプール26と、2速スプール26の中空穴25の肩部27とプラグ22の端面にとの間を離隔する方向に付勢するばね部材28と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械用のクローラーを駆動するための2速油圧モータに関し、さらに詳細には、2速油圧モータに作用する負荷の大きさにより低速と高速の切換を自動的に行う自動変速切換弁を、改良して該2速油圧モータに作用する負荷の大きさに関係なく低速と高速の切換をパイロット圧力で行うことができる2速油圧モータの手動変速切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2速油圧モータに作用する負荷の大きさにより低速と高速の切換を自動的に行う自動変速切換弁は、2速スプールが外部からのパイロット圧力を受けて高速側位置へ切換わる。この2速スプールには、外部からのパイロット圧力による力と、その力に対抗するスプリングによる力、及び油圧モータの高圧ポートの圧力による力が作用している。油圧モータに作用する負荷が大きくなり、油圧モータの高圧ポートの圧力が所定の圧力以上に高くなったときに切換弁は低速側位置に切換わる。油圧モータの負荷が小さくなり、油圧モータの高圧ポートの圧力が所定の圧力以下になったときに切換弁は高速側位置に切換わる、油圧モータに作用する負荷の大きさにより低速と高速の切換を自動的に行う自動変速切換弁の技術が本出願人によって提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、2速油圧モータに手動変速自動切換弁の一例として、特許文献2の図8に示すものは、2速制御弁40に、給排ライン3との接続ポート、給排ライン4との接続ポート、シリンダライン7との接続ポート、ドレンライン8との接続ポート、シャトル弁90と接続する2つのポートの、計6つのポートが必要な構造となっている(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−16585号公報
【特許文献2】特開2000−346007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すハウジングに形成された切換弁のポートと、特許文献2に示すハウジングに形成された切換弁のポートとは、ポートの数が異なるため、切換弁のハウジングを共通化することはできない。
本発明は、係る課題を解決するためになされたもので、特許文献1に開示されている自動変速切換弁に示す同一のハウジングの構造を変更することなく使用し、かつ該ハウジングに嵌挿する大径スプールの構造を変えて手動変速切換弁として使用することが可能な2速油圧モータの手動変速切換弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2速油圧モータの低速状態と高速状態を切換える手動変速切換弁において、前記手動変速切換弁はハウジング内に両端が閉じられ大径スプール穴に軸方向に移動可能に嵌合され片側端面が閉じられた中空の2速スプールと、
前記2速スプールの中空穴の底面と両端が閉じられた前記大径スプール穴の一側端面との間を離隔する方向に付勢するスプリングと、を有し、
前記大径スプール穴の他側端面と前記2速スプールの端面との外側端部にはパイロット圧力室が形成され、油圧モータの高圧ポート圧力を前記切換弁のほぼ中央に設けた中央ポートに導くようにし、
前記中央ポートに導かれた前記高圧ポート圧力は前記2速スプール外周円筒面に作用し、前記中央ポートの左右両側にドレンラインと接続するドレンポートをそれぞれ設け、
前記中央ポートの左右両側で前記ドレンポートの外側にシャトル弁と接続するポートをそれぞれ設け、前記中央ポートの左右両側で前記シャトル弁と接続するポートの外側に前記油圧モータの給排ラインと接続するポートをそれぞれ設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、自動変速切換弁に示す同一のハウジングを改良することなく使用し、かつ該ハウジングに嵌挿する大径スプールの構造を変えて手動変速切換弁として使用することが可能な2速油圧モータの手動変速切換弁を提供することができる。
よって、本発明により自動変速切換弁と手動変速切換弁とのハウジングを共通化することができ、自動・手動変速切換弁の両方を大量生産する場合の生産性が向上し、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る2速油圧モータの手動変速切換弁が低速側位置にあるときの概略断面図を含む油圧回路図を示す。
【図2】図1の同切換弁が高速側位置にあるときの概略断面図を含む油圧回路図を示す。
【図3】図1の同切換弁が低速側位置にあるときの油圧回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る2速油圧モータの手動変速切換弁(以下、手動変速切換弁と云う)について図面により詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係る手動変速切換弁20が低速側位置にあるときの概略断面図を含む油圧回路図である。
図1に示すように、油圧モータ11の低速状態と高速状態を切換える手動変速切換弁20は、ハウジング21内に両端がプラグ22、23により閉じられた大径スプール穴24に軸方向に移動可能に嵌合され一側端面(図1で右端面)に設けられた中空穴25を有する2速スプール26と、前記2速スプール26の中空穴25の肩部27と前記プラグ22の端面にとの間を離隔する方向に付勢するばね部材28と、を有する。
【0010】
前記2速スプール26の他側端面(図1で左端面)にはパイロット圧力室29が形成され、前記パイロット圧力室29は方向切換弁12を介してタンク(図示しない)に接続され、前記油圧モータ11の高圧ポート圧力Pabを前記手動変速切換弁20のほぼ中央に設けた中央ポートA・B30に常に導くようにし、前記中央ポートA・B30に導かれた前記高圧ポート圧力Pabは前記2速スプール26の外周円筒面に作用し、前記中央ポートA・B30の左右両側にドレンラインDRと接続するドレンポート31、32をそれぞれ設け、前記中央ポートA・B30の左右両側で前記ドレンポート31、32の外側にシャトル弁13と接続するポートA”33、及びポートB”34をそれぞれ設け、前記中央ポートA・B30の左右両側で前記シャトル弁13に接続するポートA”33及びポートB”34の外側に前記油圧モータ11の給排ライン14及び15と接続するポートA’35及びポートB’36をそれぞれ設けている。また、前記2速スプール26の円筒外周部には溝部37、38及び39が設けられている。
【0011】
本発明の実施の形態に係る手動変速切換弁20を有する油圧回路は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
図1に示すように、方向切換弁12とタンク(図示しない)とを連通することにより、パイロット圧力室29に圧油が供給されないので、2速スプール26はばね部材28の弾発力により、プラグ23に押し付けられた状態となり、シャトル弁13と接続するポートA”33及びB”34は2速スプール26の溝部37及び38を介してドレンポート31及び32と連通しており、コントロールピスト16には圧油に供給されないため、油圧モータ11は低速側位置の状態となる。
【0012】
図2に示すように、パイロット圧力室29に方向切換弁12を介して外部パイロット圧力Ppを供給すると、2速スプール26のパイロット圧力室29側の端面に外部パイロット圧力Ppによる荷重が作用し、ばね部材28の弾発力に打ち勝って2速スプール26がプラグ22に押し付けられた状態となり、シャトル弁13と接続するポートA”33及びポートB”34は2速スプール26の溝部37及び39を介してポートA’35及びポートB’36と連通しており、コントロールピストン16には油圧モータ11の給排ライン14と15との内で高圧の方の圧力が作用し、油圧モータ11は高速側位置の状態となる。
【0013】
図3は、手動変速切換弁10が低速側位置にあるときの油圧回路図を示すもので、図1の概略断面図の部分を油圧回路図で表したものである。
【符号の説明】
【0014】
11 油圧モータ 12 方向切換弁
13 シャトル弁 14,15 給排ライン
16 コントロールピストン
20 手動変速切換弁 21 ハウジング
22、23 プラグ 24 大径スプール穴
26 2速スプール 27 肩部
28 ばね部材 29 パイロット圧力室
30 中央ポートA・B 31、32 ドレーンポート
33 ポートA” 34 ポートB”
35 ポートA’ 36 ポートB’

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2速油圧モータの低速状態と高速状態を切換える手動変速切換弁において、
前記手動変速切換弁はハウジング内に両端が閉じられ大径スプール穴に軸方向に移動可能に嵌合され片側端面が閉じられた中空の2速スプールと、
前記2速スプールの中空穴の底面と両端が閉じられた前記大径スプール穴の一側端面との間を離隔する方向に付勢するばね部材と、を有し、
前記大径スプールの他側端面と前記2速スプールの端面との外側端部にはパイロット圧力室が形成され、油圧モータの高圧ポート圧力を前記切換弁のほぼ中央に設けた中央ポートに導くようにし、
前記中央ポートに導かれた前記高圧ポート圧力は前記2速スプール外周円筒面に作用し、前記中央ポートの左右両側にドレンラインと接続するドレンポートをそれぞれ設け、
前記中央ポートの左右両側で前記ドレンポートの外側にシャトル弁と接続するポートをそれぞれ設け、前記中央ポートの左右両側で前記シャトル弁と接続するポートの外側に前記油圧モータの給排ラインと接続するポートをそれぞれ設けたことを特徴とする2速油圧モータの手動変速切換弁。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−29126(P2013−29126A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164123(P2011−164123)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】