説明

2重化コンピュータネットワークシステム、ネットワーク接続装置および障害検知・対処方法

【課題】1系統ネットワークのアプリケーションの適用を容易化し、システムの信頼性を向上させる。
【解決手段】ネットワークSW20a,20bは、それぞれ、A系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3b接続され、また、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bは、それぞれ、2分岐接続装置10a,10b接続される。ここで、2分岐接続装置10a,10bは、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bそれぞれからの伝送路11を2つの伝送路12,13に分岐させ、ネットワークSW20a,20bに接続させている。現用系のA系コンピュータ1aは、ネットワークSW20a,20bへ監視用パケットを送信して得られる応答パケットの受信状況に基づき、通信障害の有無を判定し、ネットワークSW20a,20bの両方との間の通信障害を検知したときには、自身は待機系に遷移し、B系コンピュータ1bを現用系に遷移させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータおよびネットワークを2重化した2重化コンピュータネットワークシステム、並びに、その2重化コンピュータネットワークシステムで用いられるネットワーク接続装置および障害検知・処方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント制御など高信頼制御が求められる制御システムなどでは、その高信頼制御を実現するために、しばしば、制御用のコンピュータが2重化され、さらには、その制御用のコンピュータを接続するネットワークも2重化される。2重化すれば、一方に障害が発生しても、他方により所定のシステム動作を継続することができる。
【0003】
特許文献1には、スイッチングハブを用いてリング状または直線状の幹線伝送路を構成し、その幹線伝送路に2重化コンピュータを接続した2重化ネットワークの例が開示されている。その2重化ネットワークにおける幹線伝送路は、単に、同じ幹線伝送路に属するスイッチングハブをリング状または直線状に接続するだけでなく、適宜、第1の幹線伝送路に属するスイッチングハブと第2の幹線伝送路に属するスイッチングハブとを接続している。従って、この2重化ネットワークでは、一方の幹線伝送路に属するスイッチングハブに障害が生じても、そのスイッチングハブを迂回して、2重化された幹線伝送路を維持することが可能であるので、信頼性の高い2重化ネットワークが実現される。
【0004】
また、特許文献2には、端末(例えば、コンピュータ)の1つの通信ポートを、スイッチングハブを用いて構成された2重化された幹線伝送路のネットワークに接続するためのブリッジ装置の構成方法が開示されている。このブリッジ装置は、端末の通信ポートに接続され多伝送路を2つの伝送路に分岐させるものである。従って、端末に1つの通信ポートがあれば、このブリッジ装置を用いることにより、その端末を2重化ネットワークに接続することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−004854号公報
【特許文献2】特開2004−120042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1に開示されているような2重化ネットワークにコンピュータを接続する場合には、そのコンピュータには、2つのネットワークのそれぞれに同じパケットを送出することが可能な2つの通信ポートが必要となる。通常、そのような通信ポートは、2つのLAN(Local Area Network)接続ボードを用いることによって実現される。このことは、コンピュータが2重化ネットワークに同一のパケットを送出しようとする場合には、アプリケーションプログラム(以下、アプリケーションという)のレベルで2系統の通信を識別する必要があることを意味する。
【0007】
ところで、ネットワークが2重化されていない1系統のネットワークである場合には、コンピュータは、アプリケーションレベルで2系統の通信を識別する必要がない。すなわち、通信を伴う一般のアプリケーションを2重化ネットワークに適用する場合には、そのアプリケーションの改修が必要となる。アプリケーションの改修には、そのアプリケーションの規模にもよるが、一般に、多大なコストを必要とする。
【0008】
そこで、特許文献2に記載のブリッジ装置を用いた場合には、コンピュータ側の通信ポートが1つで済むようになるので、アプリケーションの改修はほとんどしなくても済むようになる。しかしながら、特許文献2では、コンピュータ(端末)が2重化される場合について、そのブリッジ装置がどのように用いられ、どのように動作するのかについては何ら言及されていない。コンピュータもネットワークも2重化されたシステムにおいては、より信頼性の高い動作が求められるが、特許文献2には、それに関連する記載は一切されていない。
【0009】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑み、1系統のネットワークを対象として開発されたシステムのアプリケーションをできるだけ改修せずに適用することができ、かつ、信頼性を向上させることが可能な2重化コンピュータネットワークシステム、ならびに、その2重化コンピュータネットワークシステムで用いられるネットワーク接続装置および障害検知・対処方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る2重化コンピュータネットワークシステムは、互いに独立に動作する2つのネットワークからなる2重化ネットワークと、それぞれが2つのコンピュータからなる複数の2重化コンピュータと、その複数の2重化コンピュータのそれぞれを2重化ネットワークに接続するネットワーク接続装置と、を含んで構成される。
【0011】
そして、そのネットワーク接続装置は、2重化ネットワークの第1のネットワークに接続された第1のネットワークスイッチと、2重化ネットワークの第2のネットワークに接続された第2のネットワークスイッチと、2重化コンピュータの第1のコンピュータに接続された伝送路を、第1のネットワークスイッチに接続する伝送路および第2のネットワークスイッチに接続する伝送路に分岐させる第1の2分岐接続装置と、2重化コンピュータの第2のコンピュータに接続された伝送路を、第1のネットワークスイッチに接続する伝送路および第2のネットワークスイッチに接続する伝送路に分岐させる第2の2分岐接続装置と、を含んで構成される。
【0012】
このとき、第1のコンピュータおよび第2のコンピュータの一方は、アプリケーションの実行状態にある現用系コンピュータである。また、他方は、アプリケーションの実行待機状態にある待機系コンピュータである。
【0013】
現用系コンピュータは、第1のネットワークスイッチおよび第2のネットワークスイッチのそれぞれに対して所定の監視用パケットを送信し、その監視用パケットに対する第1のネットワークスイッチおよび第2のネットワークスイッチのそれぞれからの応答パケットの受信状況に基づき、第1のネットワークスイッチおよび第2のネットワークスイッチそれぞれとの間の通信障害の有無を検知し、第1のネットワークスイッチとの間および第2のネットワークスイッチとの間の両方に通信障害を検知した場合には、待機系コンピュータに対して、自身が待機系状態へ遷移する旨を通知し、自身の動作状態を待機系に遷移させる。また、待機系コンピュータは、現用系コンピュータから待機系状態へ遷移する旨の通知を受けたとき、自身の動作状態を現用系に遷移させる。
【0014】
以上のように構成された2重化コンピュータネットワークシステムにおいては、2重化コンピュータの第1のコンピュータおよび第2のコンピュータのそれぞれは、第1の2分岐接続装置または第2の2分岐装置を介して、第1のネットワークスイッチまたは第2のネットワークスイッチに接続されている。従って、第1のコンピュータおよび第2のコンピュータのそれぞれは、通信ポートが1つあればよく、その結果、第1のコンピュータおよび第2のコンピュータにおけるアプリケーションでは、1系統のネットワークを対象としたアプリケーションをほとんどそのまま使用することが可能である。
【0015】
また、第1のコンピュータおよび第2のコンピュータのそれぞれは、第1のネットワークスイッチとの間および第2のネットワークスイッチとの間で、監視用パケットを送信し、その監視用パケットに対する応答パケットを受信することにより、それぞれにおける通信障害を検知する。従って、2重化コンピュータと2重化ネットワークを接続する部分についても詳細な障害検知、および、その障害検知時の対応が可能となるので、より信頼性の高い2重化コンピュータネットワークシステムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1系統のネットワークを対象として開発されたアプリケーションをできるだけ改修せずに適用することができ、かつ、信頼性を向上させることが可能な2重化コンピュータネットワークシステム、ならびに、その2重化コンピュータネットワークシステムで用いられるネットワーク接続装置および障害検知・対処方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る2重化コンピュータネットワークシステムの構成の例を示した図。
【図2】本発明の実施形態に係るネットワーク接続装置において、現用系コンピュータとA系ネットワークおよびB系ネットワークとの間に構成されるパケットの伝送経路の例を示した図。
【図3】本発明の実施形態に係るネットワーク接続装置に含まれるネットワークSWおよび2分岐接続装置の詳細な構成の例を示した図。
【図4】本発明の実施形態に係るネットワーク接続装置における障害監視処理実行時の伝送路の接続状況を示した図。
【図5】本発明の実施形態に係るネットワーク接続装置において、障害検知のために用いられる監視パケットおよびその応答パケットの構成の例を示した図。
【図6】本発明の実施形態に係るネットワーク接続装置における障害発生の第1の例とその対処方法の例を示した図。
【図7】本発明の実施形態に係るネットワーク接続装置における障害発生の第2の例とその対処方法の例を示した図。
【図8】本発明の実施形態に係るネットワーク接続装置における障害発生の第3の例とその対処方法の例を示した図。
【図9】本発明の実施形態に係るネットワーク接続装置における障害発生の第4の例とその対処方法の例を示した図。
【図10】A系コンピュータ(現用系)およびB系コンピュータ(待機系)における監視用パケットに対するネットワークSWからの応答パケットの受信状況ごとに推定される障害部位および障害検知時の動作を一覧表として示した図。
【図11】A系コンピュータ(現用系)における障害監視処理の処理フローの例を示した図。
【図12】B系コンピュータ(待機系)における障害監視処理の処理フローの例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る2重化コンピュータネットワークシステムの構成の例を示した図である。図1に示すように、2重化コンピュータネットワークシステム100は、A系ネットワーク3aとB系ネットワーク3bとからなる2重化ネットワーク3と、A系コンピュータ1aとB系コンピュータ1bとからなる2重化コンピュータ1と、2重化コンピュータ1を2重化ネットワーク3に接続するネットワーク接続装置2と、を含んで構成される。
【0020】
なお、図1では、2重化ネットワーク3にネットワーク接続装置2を介して接続される2重化コンピュータ1は、3つしか描かれていないが、2重化コンピュータ1の数は、いくつでもよく、とくに3つに限定されるわけではない。
【0021】
また、本実施形態では、2重化コンピュータ1(A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1b)は、いわゆるホットスタンバイの2重化方式が採られている。すなわち、2重化コンピュータ1の一方(A系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1b)は、あらかじめ定められたアプリケーションを実行する現用系コンピュータとして動作し、また、他方(B系コンピュータ1bまたはA系コンピュータ1a)は、そのアプリケーションの実行を待機している待機系コンピュータとして動作する。なお、図1では、A系コンピュータ1aを現用系コンピュータとし、B系コンピュータ1bを待機系コンピュータとしている。
【0022】
一般に、ホットスタンバイの2重化コンピュータ1では、現用系コンピュータの正常機能が喪失された場合や、現用系コンピュータと2重化ネットワーク3との間の通信に障害が発生した場合などには、現用系コンピュータは、待機系コンピュータとなり、それまでの待機系コンピュータが現用系コンピュータとなって、所定のアプリケーションを継続して実行する。
【0023】
また、図1において、A系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3bは、それぞれ、リング状または直線状のネットワークとして構成され、互いに独立に同時に動作する。従って、ある2重化コンピュータ1(#1)の現用系コンピュータから送出されたパケットは、後記するネットワーク接続装置2の働きによって、2つの同一のパケットに分離され、それぞれ別個に、A系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3bを経由して、宛先(送信先)となる、例えば、2重化コンピュータ1(#n)の現用系コンピュータへ届けられる。ただし、本実施形態では、実際に2重化コンピュータ1(#n)の現用系コンピュータへ届けられるのは、そのうちの一方のパケットだけとしている。なお、その詳細については、別途、説明する。
【0024】
さらに、図1に示すように、ネットワーク接続装置2は、2つのネットワークスイッチ(以下、ネットワークSWと略す)20と、2つの2分岐接続装置10と、を含んで構成される。
【0025】
ネットワークSW20は、例えば、一般のスイッチングハブなどを用いて構成することができ、その基本機能は、A系ネットワーク3aまたはB系ネットワーク3b上で送受信されるパケットから当該ネットワーク接続装置2に接続されているA系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1b宛のパケットを取り出し、その取り出したパケットをA系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1bへ送信することにある。
【0026】
なお、詳細は後記するが、ネットワークSW20は、A系ネットワーク3aから送信された監視パケットに応答して、所定の応答パケットを返送する機能など、一般のスイッチングハブが有していない伝送経路を診断する機能なども有している。
【0027】
また、2分岐接続装置10は、1つの伝送路を2つの伝送路に分岐する装置であるとともに、2つの伝送路を1つの伝送路に合流させる装置である。すなわち、2分岐接続装置10は、A系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1bに接続された伝送路を、A系ネットワーク3aに到る伝送路とB系ネットワーク3bに到る伝送路とに分岐させ、また、A系ネットワーク3aからの伝送路とB系ネットワーク3bからの伝送路とを、A系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1bに接続された伝送路に合流させる。
【0028】
図2は、本発明の実施形態に係るネットワーク接続装置2において、現用系コンピュータとA系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3bとの間に構成されるパケットの伝送経路の例を示した図である。なお、図2において、太い実線は、動作中の伝送経路を表し、破線は、待機中の伝送経路を表す。
【0029】
図2(a)に示すように、A系コンピュータ1aが現用系であるときには、A系コンピュータ1aは、動作中の伝送路により、2分岐接続装置10aおよびネットワークSW20aを介してA系ネットワーク3aに接続され、さらに、2分岐接続装置10aおよびネットワークSW20bを介してB系ネットワーク3bに接続される。
【0030】
また、図2(b)に示すように、B系コンピュータ1bが現用系であるときには、B系コンピュータ1bは、動作中の伝送路により、2分岐接続装置10bおよびネットワークSW20aを介してA系ネットワーク3aに接続され、さらに、2分岐接続装置10bおよびネットワークSW20bを介してB系ネットワーク3bに接続される。
【0031】
以上のように、ネットワークSW20および2分岐接続装置10の基本機能は、いずれも、2重化コンピュータ1(A系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3b)と2重化ネットワーク3(A系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3b)との間の伝送路を切替えることにある。
【0032】
続いて、図3を参照して、ネットワーク接続装置2のさらに詳細な構成および機能について説明する。図3は、本発明の実施形態に係るネットワーク接続装置2に含まれるネットワークSW20および2分岐接続装置10の詳細な構成の例を示した図である。
【0033】
前記したように、2分岐接続装置10は、1つの伝送路を2つの伝送路に分岐する装置であり、また、2つの伝送路を1つの伝送路に合流させる装置である。すなわち、2分岐接続装置10においては、A系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1bに接続された伝送路11は、A系ネットワーク3aに到る伝送路12とB系ネットワーク3bに到る伝送路13とに分岐される。
【0034】
一般に、伝送路は、送信伝送路と受信伝送路がペアになって構成されているが、2分岐接続装置10におけるパケットの送受信処理は、送信伝送路と受信伝送路とでは、一部異なっているので、以下に補足する。
【0035】
2分岐接続装置10において、A系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1bからパケットが送信される側の送信伝送路については、伝送路11を、電気的に単純に、伝送路12と伝送路13とに分岐するものであればよい。そうすれば、A系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1bの現用系コンピュータから出力されたパケットは、2分岐接続装置10によって同じパケットがA系ネットワーク3a側の伝送路12にも、B系ネットワーク3b側の伝送路12にも送出されることになる。なお、B系コンピュータ1bまたはA系コンピュータ1aの待機系コンピュータからは、待機中であるため、A系ネットワーク3aまたはB系ネットワーク3bに到るパケットは送出されない。
【0036】
それに対し、A系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1bがパケットを受信する側の送信伝送路については、伝送路12、伝送路13および伝送路11は、ハードウエアの構成として切り離される。これは、伝送路12からのパケットと伝送路13からのパケットとの衝突を回避することを目的としたものである。そこで、2分岐接続装置10には、パケットの衝突を調整するための伝送制御を行う受信パケット伝送制御部14が設けられている。
【0037】
すなわち、受信パケット伝送制御部14には、例えば、受信パケットを一時的に記憶するパケットバッファメモリが設けられ、A系ネットワーク3aからのパケットおよびB系ネットワーク3bからのパケットは、いったんそのパケットバッファメモリに記憶された後、順次、A系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1bに接続された伝送路11に送出される。
【0038】
さらに、図3を参照しつつ、ネットワークSW20の詳細な構成および機能について説明する。ネットワークSW20は、ネットワーク送受信パケット伝送制御部21、経路切替部22、監視用パケット伝送制御部23、現用系接続SW制御部24、重複パケット廃棄処理部25などを含んで構成される。
【0039】
ここで、ネットワーク送受信パケット伝送制御部21は、いわゆる一般のスイッチングハブそのものに対応する構成および機能を有し、A系ネットワーク3aまたはB系ネットワーク3bの幹線伝送路の一部を構成する。
【0040】
すなわち、ネットワーク送受信パケット伝送制御部21には、図示しない複数の通信ポート(各通信ポートは、入力伝送路および出力伝送路の接続端子を有している)が設けられている。そして、ネットワーク送受信パケット伝送制御部21は、ある通信ポートの入力伝送路から入力されたパケットに含まれる送信先アドレスに応じて、適宜、そのパケットを出力する通信ポートを決定し、前記入力されたパケットを、前記決定された通信ポートに接続された出力伝送路へ送出する。
【0041】
経路切替部22は、ネットワーク送受信パケット伝送制御部21に接続されている伝送路211に接続すべき伝送路を、A系コンピュータ1aに到る伝送路221およびB系コンピュータ1bに到る伝送路222から一方を選択し、その接続関係を切替える装置である。すなわち、伝送路221には、スイッチSWaが設けられ、伝送路222には、スイッチSWbが設けられ、そのうち一方がオンし、他方がオフする。なお、図3では、スイッチSWaがオン、スイッチSWbがオフしている。
【0042】
スイッチSWa,SWbのオン・オフ制御は、後記する現用系接続SW制御部24から供給される現用系指示信号によって行われる。ここで、現用系指示信号は、現用系となっているA系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1bを指示する信号であり、スイッチSWa,SWbは、現用系となっているA系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1b側に接続される伝送路221,222上のものがオンし、他方がオフする。
【0043】
従って、ネットワークSW20a,20bは、そのとき現用系となっているA系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1bに到る伝送路を接続し、待機系となっているB系コンピュータ1bまたはA系コンピュータ1aに到る伝送路を切断、つまり、閉塞する。
【0044】
なお、これらのスイッチSWa,SWbは、ハードウエア的に伝送路を切断するものに限定されるものではない。例えば、ネットワークSW20にマイクロプロセッサが設けられているような場合には、そのマイクロプロセッサがプログラム制御でA系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1bとの間でパケットの送受信をするか、または、送受信を停止するかによって、スイッチSWa,SWbのオン・オフを実現してもよい。
【0045】
監視用パケット伝送制御部23は、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのそれぞれから自装置(ネットワークSW20)宛に送信された監視用パケットを受信すると、そのとき自装置が正常に動作している場合には、自装置が正常であることを示す情報を含んだ応答パケットを、送信元のA系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのそれぞれに返送する。
【0046】
ここで、本実施形態では、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのそれぞれから送信される監視用パケットには、自身の動作状態を示す情報、すなわち、自身が現用系であるかまたは待機系であるかを示す情報が含まれているとする。現用系接続SW制御部24は、監視用パケット伝送制御部23によって受信された監視用パケットからその現用系であるかまたは待機系であるかを示す情報を取り出し、その情報に基づき、経路切替部22に対し、現用系指示信号を出力する。現用系指示信号は、例えば、1ビットのフラグ信号であり、“0”の場合、A系コンピュータ1aが現用系、“1”の場合、B系コンピュータ1bが現用系などと定める。
【0047】
ところで、前記したように、A系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3bは互いに独立して動作する。従って、ある2重化コンピュータ1の現用系コンピュータ1a(または1b)から送信されたパケットは、A系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3bの両方を経由して、宛先の2重化コンピュータ1の現用系コンピュータ1a(または1b)へ届けられる。その場合、宛先の現用系コンピュータ1a(または1b)は、同じパケットを2重に受信することになる。その場合、一方のパケットを廃棄する必要がある。
【0048】
重複パケットの廃棄処理は、現用系コンピュータ1a(または1b)自身で行うことができる。しかしながら、その廃棄処理は、現用系コンピュータ1a(または1b)の処理負荷を増大させることになり、また、1系統のネットワークで構成されていたアプリケーションの一部に改変を加えることが必要になる場合がある。
【0049】
そこで、ここでは、ネットワークSW20a,20bのそれぞれに重複パケット廃棄処理部25を設け、重複パケット廃棄処理部25で重複パケットの一方のパケットを廃棄する。すなわち、ネットワークSW20a(20b)の重複パケット廃棄処理部25は、ネットワーク送受信パケット伝送制御部21で受信されたパケットから現用系コンピュータ1a(または1b)宛のパケットを取り出し、同じネットワーク接続装置2内にある他方のネットワークSW20b(20a)の重複パケット廃棄処理部25で同様にして取り出されたパケットと比較して、例えば、そのパケットと同じパケットが他方のネットワークSW20b(20a)の重複パケット廃棄処理部25ですでに取り出されていた(すなわち、先着のパケットがあった)場合には、その取り出したパケット(後着のパケット)を廃棄する。
【0050】
以上のようにして、現用系コンピュータ1a(または1b)は、重複したパケットを受信しなくて済むことになる。
【0051】
続いて、図4以降の図面を参照しつつ、ネットワーク接続装置2における障害の診断および対処方法について説明する。ここで、図4は、ネットワーク接続装置2における障害監視処理実行時の伝送路の接続状況を示した図、また、図5は、障害検知のために用いられる監視パケットおよびその応答パケットの構成の例を示した図である。
【0052】
本実施形態では、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのそれぞれは、ネットワークSW20a,20bに対し、所定の時間(例えば、1秒)ごとに監視パケットを送信し、その応答パケットの有無に基づき、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのそれぞれと、ネットワークSW20a,20bのそれぞれと、の間で生じる通信障害を検知する。
【0053】
この通信障害検知には、図4に示すように、A系コンピュータ1aとネットワークSW20a,20bとを接続する伝送路、および、B系コンピュータ1bとネットワークSW20a,20bとを接続する伝送路が用いられる。なお、図4では、これらの伝送路は、太い実線で示されており、破線で示されたA系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3bは、この通信障害検知には関与しない。
【0054】
ここで、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのそれぞれは、ネットワークSW20a,20bとの間で、監視用パケットおよびその応答パケットの送受信を、いわゆるUDP(User Datagram Protocol)通信に従って行う。すなわち、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bは、それぞれ、ネットワークSW20a,20bに対し、図5(a)に示すような構成の監視用パケットを送信する。また、ネットワークSW20a,20bは、それぞれ、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bに対し、図5(b)に示すような構成の応答パケットを送信する。
【0055】
なお、図5(a),(b)において、送信先アドレスは、当該パケットの送信先のMACアドレス(Media Access Control address)、送信元アドレスは、当該パケットの送信元のMACアドレスである。また、フレーム長/タイプは、当該フレーム(本明細書では、パケットとフレームは、同じ意味であるとする)のフレーム長または上位プロトコルの識別情報である。また、IP(Internet Protocol)ヘッダは、IP通信で用いられるパケットのヘッダ、UDPヘッダは、UDP通信で用いられるパケットのヘッダである。
【0056】
また、図5(a)に示すように、監視パケットのデータ部には、ネットワークSW20a,20bに対する状態報告要求情報や、監視パケットを送信するA系コンピュータ1aまたはB系コンピュータ1b自身の現用系情報(現用系であるか、待機系であるかを示す情報)などが含まれている。なお、この現用系情報は、ネットワークSW20a,20bの現用系接続SW制御部24(図3参照)で用いられる情報である。
【0057】
また、図5(b)に示すように、応答パケットのデータ部には、ネットワークSW20a,20bの動作状態情報などが含まれている。ここで、動作状態情報は、ネットワークSW20a,20bが正常に動作していることを示す情報などであり、その動作状態情報に、現用系接続SW制御部24がそのとき保持している現用系情報を含んでいてもよい。
【0058】
これに対し、ネットワークSW20a,20bの監視用パケット伝送制御部23は、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのそれぞれから送信される監視パケットを受信し、その監視パケットのIPヘッダおよびUDPヘッダと自身の通信ポートに割当てられたIPアドレスおよび監視専用のポート番号とによって、自身宛ての監視パケットであることを認識すると、その監視パケットに応答する応答パケットを、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのそれぞれに返送する。
【0059】
A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのそれぞれは、ネットワークSW20a,20bのそれぞれから返送される応答パケット受信の有無に基づき、通信障害の状況や障害箇所を推定し、その障害に対処するための処理を実行する。以下、図6〜図9を用いて、障害発生の例とその対処方法の例について説明する。
【0060】
図6は、ネットワーク接続装置2における障害発生の第1の例とその対処方法の例を示した図である。ここでは、2分岐接続装置10aとネットワークSW20aの間の伝送路(図6(a)で×印部分)に障害が発生し、他に障害はないことを想定する。その場合には、A系コンピュータ1aは、ネットワークSW20aからの応答パケットを得ることができないが、ネットワークSW20bからの応答パケットを得ることができる。従って、このとき、A系コンピュータ1aは、ネットワークSW20aとの間の通信障害を検知したと判定する。
【0061】
この場合、図6(b)に示すように、現用系であるA系コンピュータ1aは、ネットワークSW20aおよびA系ネットワーク3aを介して、他の2重化コンピュータ1の現用系コンピュータとの間で通信をすることができなくなるが、2分岐接続装置10a、ネットワークSW20bおよびB系ネットワーク3bを介して、他の2重化コンピュータ1の現用系コンピュータとの間で通信を継続することができる。
【0062】
そこで、現用系であるA系コンピュータ1aがネットワークSW20aとの間の通信障害を検知した場合には、図6(b)に示すように、そのA系コンピュータ1aは、A系ネットワーク3aとの間で通信障害が生じたことを表すアラームを、自身に付属する表示装置などに出力する。なお、同様の障害は、ネットワークSW20aそのものに障害が生じた場合にも発生する。
【0063】
また、図6において、太い実線の伝送路は、障害監視処理または、他の2重化コンピュータ1との通信で使用される伝送路であることを表し、破線の伝送路は、使用されない、または、使用できない伝送路であることを表す(以下、図7〜図9において同じ)。
【0064】
図7は、ネットワーク接続装置2における障害発生の第2の例とその対処方法の例を示した図である。ここでは、2分岐接続装置10aとネットワークSW20bの間の伝送路(図7(a)で×印部分)に障害が発生し、他に障害はないことを想定する。その場合には、A系コンピュータ1aは、ネットワークSW20bからの応答パケットを得ることができないが、ネットワークSW20aからの応答パケットを得ることができる。従って、このとき、A系コンピュータ1aは、ネットワークSW20bとの間の通信障害を検知したと判定する。
【0065】
この場合、図7(b)に示すように、現用系であるA系コンピュータ1aは、ネットワークSW20bおよびA系ネットワーク3bを介して、他の2重化コンピュータ1の現用系コンピュータとの間で通信をすることができなくなるが、2分岐接続装置10a、ネットワークSW20aおよびA系ネットワーク3aを介して、他の2重化コンピュータ1の現用系コンピュータとの間で通信を継続することができる。
【0066】
そこで、現用系であるA系コンピュータ1aがネットワークSW20bとの間の通信障害を検知した場合には、図7(b)に示すように、そのA系コンピュータ1aは、B系ネットワーク3bとの間で通信障害が生じたことを表すアラームを、自身に付属する表示装置などに出力する。なお、同様の障害は、ネットワークSW20bそのものに障害が生じた場合にも発生する。
【0067】
図8は、ネットワーク接続装置2における障害発生の第3の例とその対処方法の例を示した図である。ここでは、2分岐接続装置10aと現用系であるA系コンピュータ1aとをつなぐ伝送路(図8(a)で×印部分)に障害が発生し、他に障害はないことを想定する。その場合には、A系コンピュータ1aは、ネットワークSW20aからもネットワークSW20bからも応答パケットを得ることができない。すなわち、A系コンピュータ1aは、ネットワークSW20aとの間の通信障害およびネットワークSW20bとの間の通信障害を同時に検知する。
【0068】
この場合、図8(b)に示すように、現用系であるA系コンピュータ1aは、A系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3bのいずれに対しても、その伝送経路が切断されたことになるので、他の2重化コンピュータ1の現用系コンピュータとの間で通信をすることが全くできなくなる。
【0069】
そこで、この場合には、現用系であるA系コンピュータ1aは、自身が待機系の動作状態に遷移することをB系コンピュータ1bへ通知し、自身の動作状態を待機系に遷移させる。また、その通知を受けたB系コンピュータ1bは、自身の動作状態を現用系に遷移させる。その結果、現用系となったB系コンピュータ1bは、2分岐接続装置10b、ネットワークSW20aおよびA系ネットワーク3aを介して、または、2分岐接続装置10b、ネットワークSW20bおよびB系ネットワーク3bを介して、他の2重化コンピュータ1の現用系コンピュータとの間で通信を行うことができる。
【0070】
なお、このとき、A系コンピュータ1aは、図8(b)に示すように、両系ネットワークとの間で通信障害が生じ、現用系を切替えることを表すアラームを、自身に付属する表示装置などに出力する。なお、同様の障害は、2分岐装置10aそのものに障害が生じた場合にも発生する。
【0071】
図9は、ネットワーク接続装置2における障害発生の第4の例とその対処方法の例を示した図である。ここでは、2分岐接続装置10bと待機系であるB系コンピュータ1bとをつなぐ伝送路(図9(a)で×印部分)に障害が発生し、他に障害はないことを想定する。その場合には、B系コンピュータ1bは、ネットワークSW20aからもネットワークSW20bからも応答パケットを得ることができない。すなわち、B系コンピュータ1bは、ネットワークSW20aとの間の通信障害およびネットワークSW20bとの間の通信障害を同時に検知する。
【0072】
この場合、図9(b)に示すように、待機系であるB系コンピュータ1bは、A系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3bのいずれに対しても、その伝送経路が切断されたことになるので、他の2重化コンピュータ1の現用系コンピュータとの間で通信をすることはできなくなる。しかしながら、B系コンピュータ1bは、待機系でため、他の2重化コンピュータ1の現用系コンピュータとの間で通信をすることはない。
【0073】
そこで、この場合には、図9(b)に示すように、A系およびB系の両系のネットワークとの間で通信障害が生じたことを表すアラームを、自身に付属する表示装置などに出力し、障害の回復、修理が必要なことを保守員に知らせればよい。なお、このアラームは、アラームの内容を現用系であるA系コンピュータ1aに通知し、A系コンピュータ1aに付属する表示装置などに出力してもよい。
【0074】
なお、図示を省略したが、待機系のB系コンピュータ1bがネットワークSW20aとの間だけの通信障害や、ネットワークSW20bとの間だけの通信障害を検知する場合もあるが、これらの場合も、当面の間はその障害が問題となることがないので、図9(b)の場合のように、B系コンピュータ1bは、それらの障害が生じたことを表すアラームを自身に付属する表示装置などに出力すればよい。
【0075】
以上、図6〜図9を用いて説明した現用系であるA系コンピュータ1aおよび待機系であるB系コンピュータ1bにおける障害検知の例とその障害検知時の対処方法をまとめると、次の図10のようになる。すなわち、図10は、A系コンピュータ1a(現用系)およびB系コンピュータ1b(待機系)における監視用パケットに対するネットワークSW20a,20bからの応答パケットの受信状況ごとに推定される障害部位および障害検知時の動作を一覧表として示した図である。
【0076】
なお、図10において、A系側ネットワークSWはネットワークSW20aであり、B系側ネットワークSWはネットワークSW20bである。また、○印は、ネットワークSW20a,20bから、正常であることを示す応答パケットを所定の時間内に受信したことを表し、×印は、ネットワークSW20a,20bから、正常であることを示す応答パケットを所定の時間内に受信しなかったこと、つまり、異常であったことを表している。また、図10では、推定障害部位の欄では、伝送路部分の推定障害については記載を省略している。
【0077】
図11は、A系コンピュータ1a(現用系)における障害監視処理の処理フローの例を示した図である。図11に示すように、現用系のA系コンピュータ1aは、所定の時間(例えば、1秒)ごとに監視パケットをネットワークSW20a,20bに送信する(ステップS10)。すなわち、ステップS10から終了までの処理は、その所定の時間ごとに繰り返し実行される。
【0078】
次に、A系コンピュータ1aは、送信した監視用パケットに応答して、ネットワークSW20a,20bから送信される応答パケットを受信し(ステップS11)、その応答状況に基づき、障害の内容を判定する。このとき、その応答パケットの受信処理では、タイムアウト監視により、例えば、3秒間待ってもネットワークSW20a,20bからの応答パケットを受信しなかった場合には、監視パケットの送信をリトライする。そして、監視パケットの送信を、例えば、4回リトライしてもネットワークSW20a,20bからの応答パケットを受信しなかった場合には、ネットワークSW20a,20bは異常である、すなわち、障害があると判定する。
【0079】
次に、A系コンピュータ1aは、ネットワークSW20a,20bからの応答パケットの受信状況に基づき、ネットワークSW20a,20bの障害状況を判定し(ステップS12)、A系側のネットワークSW20a、B系側のネットワークSW20aの両方ともに正常と判定した場合には(ステップS12でYes)、障害は検知されなかったものとして、そのまま処理を終了する。
【0080】
一方、A系側のネットワークSW20a、B系側のネットワークSW20aの両方ともに正常と判定されなかった場合には(ステップS12でNo)、A系コンピュータ1aは、所定のアラームを表示装置などに出力する(ステップS13)。なお、そのアラームの出力では、図10(a)に示したような応答パケットの受信状況に基づき、推定される障害部位や障害状況などを表示装置に表示する。
【0081】
さらに、A系コンピュータ1aは、A系側のネットワークSW20a、B系側のネットワークSW20aの両方ともに異常であるか否かを判定し(ステップS14)、両方ともに異常であった場合には(ステップS14でYes)、A系側の2分岐接続装置10aに関連する障害と推定され、現用系の動作を維持することが困難になる。そこで、A系コンピュータ1aは、B系コンピュータ1bに対し、現用系/待機系の交替を通知し(ステップS15)、自身の動作状態を待機系に遷移させ(ステップS16)、処理を終了する。これに対し、ステップS14の判定で、両方ともに異常でなかった場合には(ステップS14でNo)、そのまま処理を終了する。
【0082】
図12は、B系コンピュータ1b(待機系)における障害監視処理の処理フローの例を示した図である。図12に示すように、待機系のB系コンピュータ1bは、現用系のA系コンピュータ1aと同様に、所定の時間(例えば、1秒)ごとに監視パケットをネットワークSW20a,20bに送信し(ステップS20)、その後、終了までの処理を繰り返し実行する。
【0083】
次に、B系コンピュータ1bは、ネットワークSW20a,20bから送信される応答パケットを受信するが(ステップS21)、その応答パケットを所定の時間内に受信しない場合などの処理は、現用系のA系コンピュータ1aが行う処理と同じである。
【0084】
次に、B系コンピュータ1bは、ネットワークSW20a,20bからの応答パケットの受信状況に基づき、ネットワークSW20a,20bの障害状況を判定し(ステップS22)、A系側のネットワークSW20a、B系側のネットワークSW20aの両方ともに正常と判定されなかった場合には(ステップS22でNo)、所定のアラームを表示装置などに出力し(ステップS23、処理を終了する。なお、そのアラームの出力では、図10(b)に示したような応答パケットの受信状況に基づき、推定される障害部位や障害状況などを表示装置に表示する。
【0085】
一方、ステップS22の判定で、両方ともに正常と判定された場合には(ステップS22でYes)、B系コンピュータ1bは、さらに、A系コンピュータ1aから現用系/待機系の交替を通知があったか否かを判定する(ステップS24)。そして、その判定で、現用系/待機系の交替の通知があった場合には(ステップS24でYes)、B系コンピュータ1bは、自身の動作状態を現用系に遷移させ(ステップS25)、処理を終了し、また、現用系/待機系の交替の通知がなった場合には(ステップS24でNo)、そのまま処理を終了する。
【0086】
なお、A系コンピュータ1aとB系コンピュータ1bとの間で行われる現用系/待機系の交替処理は、通常のホットスタンバイの2重系コンピュータの現用系と待機系で行われる現用系/待機系の交替処理と同じであるので、その説明を省略する。
【0087】
以上、本発明の実施形態によれば、2つの2分岐接続装置10a,10bを用いることにより、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのそれぞれは、1つの通信ポートを介して、A系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3bの両方に接続される。従って、従来の1系統のネットワークを対象に開発されたアプリケーションをほとんど改変することなく、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのアプリケーションとして利用することができる。
【0088】
本願発明の実施形態では、2重化コンピュータ1であるA系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bは、2つのネットワークSW20a,20bおよび2つの2分岐接続装置10a,10bを含んで構成されたネットワーク接続装置2を介して、2重化ネットワーク3であるA系ネットワーク3aおよびB系ネットワーク3bに接続されている。このネットワーク接続装置2においては、A系コンピュータ1aおよびB系コンピュータ1bのそれぞれが、ネットワークSW20a,20bとの間で監視パケットおよび応答パケットを送信し合うことにより、障害を検知することができ、かつ、その障害に対処することができるようにされている。従って、ネットワーク接続装置2の部分の信頼性を向上させることができ、さらには、A系コンピュータ1aとB系コンピュータ1bとからなる2重化コンピュータ1を複数個、A系ネットワーク3aとB系ネットワーク3bとからなる2重化ネットワーク3で接続して構成した2重化コンピュータネットワークシステム100の信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0089】
1 2重化コンピュータ
1a A系コンピュータ(第1のコンピュータ)
1b B系コンピュータ(第2のコンピュータ)
2 ネットワーク接続装置
3 2重化ネットワーク
3a A系ネットワーク(第1のネットワーク)
3b B系ネットワーク(第2のネットワーク)
10 2分岐接続装置
10a 2分岐接続装置(第1の2分岐接続装置)
10b 2分岐接続装置(第2の2分岐接続装置)
14 受信パケット伝送制御部
20 ネットワークSW
20b ネットワークSW(第1のネットワークスイッチ)
20a ネットワークSW(第2のネットワークスイッチ)
21 ネットワーク送受信パケット伝送制御部
22 経路切替部
23 監視用パケット伝送制御部
24 現用系接続SW制御部
25 重複パケット廃棄処理部
100 2重化コンピュータネットワークシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが2つのコンピュータからなる複数の2重化コンピュータと、前記複数の2重化コンピュータのそれぞれを、互いに独立に動作する2つのネットワークからなる2重化ネットワークに接続するネットワーク接続装置と、を含んで構成された2重化コンピュータネットワークシステムであって、
前記ネットワーク接続装置は、
前記2重化ネットワークの第1のネットワークに接続された第1のネットワークスイッチと、
前記2重化ネットワークの第2のネットワークに接続された第2のネットワークスイッチと、
前記2重化コンピュータの第1のコンピュータに接続された伝送路を、前記第1のネットワークスイッチに接続する伝送路および前記第2のネットワークスイッチに接続する伝送路に分岐させる第1の2分岐接続装置と、
前記2重化コンピュータの第2のコンピュータに接続された伝送路を、前記第1のネットワークスイッチに接続する伝送路および前記第2のネットワークスイッチに接続する伝送路に分岐させる第2の2分岐接続装置と、
を含んで構成され、
前記第1のコンピュータおよび前記第2のコンピュータの一方は、アプリケーションを実行中の現用系の状態にある現用系コンピュータであり、他方は、前記アプリケーションの実行を待機している待機系の状態にある待機系コンピュータであり、
前記現用系コンピュータは、
前記第1のネットワークスイッチおよび前記第2のネットワークスイッチのそれぞれに対して所定の監視用パケットを送信し、その監視用パケットに対する前記第1のネットワークスイッチおよび前記第2のネットワークスイッチのそれぞれからの応答パケットの受信状況に基づき、前記第1のネットワークスイッチおよび前記第2のネットワークスイッチそれぞれとの間の通信障害の有無を検知し、
前記第1のネットワークスイッチとの間および前記第2のネットワークスイッチとの間の両方に通信障害を検知した場合には、前記待機系コンピュータに対して、自身が待機系状態へ遷移する旨を通知し、自身の動作状態を待機系に遷移させ、
前記待機系コンピュータは、
前記現用系コンピュータから待機系状態へ遷移する旨の通知を受けたとき、自身の動作状態を現用系に遷移させること
を特徴とする2重化コンピュータネットワークシステム。
【請求項2】
前記監視用パケットには、その監視用パケットを送信した前記第1のコンピュータまたは前記第2のコンピュータが現用系コンピュータまたは待機系コンピュータであることを示す状態情報が含まれており、
前記第1のネットワークスイッチおよび前記第2のネットワークスイッチのそれぞれは、
前記受信した監視用パケットに含まれる前記状態情報基づき、前記第1のコンピュータおよび前記第2のコンピュータのそれぞれについて、いずれが前記現用系コンピュータであるかまたは前記待機系コンピュータであるかを判定し、
前記第1のネットワークまたは前記第2のネットワークと、前記待機系コンピュータと判定された前記第1のコンピュータまたは前記第2のコンピュータとをつなぐ伝送路を閉塞すること
を特徴とする請求項1に記載の2重化コンピュータネットワークシステム。
【請求項3】
前記待機系のコンピュータは、
前記第1のネットワークスイッチとの間の通信障害および前記第2のネットワークスイッチとの間の通信障害の少なくとも一方を検知した場合には、アラームを出力すること
を特徴とする請求項1に記載の2重化コンピュータネットワークシステム。
【請求項4】
それぞれが2つのコンピュータからなる複数の2重化コンピュータと、前記複数の2重化コンピュータのそれぞれを、互いに独立に動作する2つのネットワークからなる2重化ネットワークに接続するネットワーク接続装置と、を含んで構成された2重化コンピュータネットワークシステムにおけるネットワーク接続装置であって、
前記2重化ネットワークの第1のネットワークに接続された第1のネットワークスイッチと、
前記2重化ネットワークの第2のネットワークに接続された第2のネットワークスイッチと、
前記2重化コンピュータの第1のコンピュータに接続された伝送路を、前記第1のネットワークスイッチに接続する伝送路および前記第2のネットワークスイッチに接続する伝送路に分岐させる第1の2分岐接続装置と、
前記2重化コンピュータの第2のコンピュータに接続された伝送路を、前記第1のネットワークスイッチに接続する伝送路および前記第2のネットワークスイッチに接続する伝送路に分岐させる第2の2分岐接続装置と、
を含んで構成され、
前記第1のネットワークスイッチおよび前記第2のネットワークスイッチのそれぞれは、
前記第1のコンピュータまたは前記第2のコンピュータから送信された監視用パケットを受信したときには、自らが正常であることを示す応答パケットを、前記監視用パケット送信元の前記第1のコンピュータまたは前記第2のコンピュータへ送信すること
を特徴とするネットワーク接続装置。
【請求項5】
前記監視用パケットには、その監視用パケットを送信した前記第1のコンピュータまたは前記第2のコンピュータが、アプリケーションを実行中の現用系の状態にある現用系コンピュータであるか、または、前記アプリケーションの実行を待機している待機系の状態にある待機系コンピュータであるかを示す状態情報が含まれており、
前記第1のネットワークスイッチおよび前記第2のネットワークスイッチのそれぞれは、
前記受信した監視用パケットに含まれる前記状態情報基づき、前記第1のコンピュータおよび前記第2のコンピュータのそれぞれについて、いずれが前記現用系コンピュータであるかまたは前記待機系コンピュータであるかを判定し、
前記第1のネットワークまたは前記第2のネットワークと、前記待機系コンピュータと判定された前記第1のコンピュータまたは前記第2のコンピュータとをつなぐ伝送路を閉塞すること
を特徴とする請求項4に記載のネットワーク接続装置。
【請求項6】
それぞれが2つのコンピュータからなる複数の2重化コンピュータと、前記複数の2重化コンピュータのそれぞれを、互いに独立に動作する2つのネットワークからなる2重化ネットワークに接続するネットワーク接続装置と、を含んで構成された2重化コンピュータネットワークシステムにおける障害検知・対処方法であって、
前記ネットワーク接続装置は、
前記2重化ネットワークの第1のネットワークに接続された第1のネットワークスイッチと、
前記2重化ネットワークの第2のネットワークに接続された第2のネットワークスイッチと、
前記2重化コンピュータの第1のコンピュータに接続された伝送路を、前記第1のネットワークスイッチに接続する伝送路および前記第2のネットワークスイッチに接続する伝送路に分岐させる第1の2分岐接続装置と、
前記2重化コンピュータの第2のコンピュータに接続された伝送路を、前記第1のネットワークスイッチに接続する伝送路および前記第2のネットワークスイッチに接続する伝送路に分岐させる第2の2分岐接続装置と、
を含んで構成され、
前記第1のコンピュータおよび前記第2のコンピュータの一方は、アプリケーションを実行中の現用系の状態にある現用系コンピュータであり、他方は、前記アプリケーションの実行を待機している待機系の状態にある待機系コンピュータであり、
前記現用系コンピュータは、
前記第1のネットワークスイッチおよび前記第2のネットワークスイッチのそれぞれに対して所定の監視用パケットを送信し、その監視用パケットに対する前記第1のネットワークスイッチおよび前記第2のネットワークスイッチのそれぞれからの応答パケットの受信状況に基づき、前記第1のネットワークスイッチおよび前記第2のネットワークスイッチそれぞれとの間の通信障害の有無を検知する処理と、
前記第1のネットワークスイッチとの間および前記第2のネットワークスイッチとの間の両方に通信障害を検知した場合には、前記待機系コンピュータに対して、自身が待機系状態へ遷移する旨を通知し、自身の動作状態を待機系に遷移させる処理と、
を実行し、
前記待機系コンピュータは、
前記現用系コンピュータから待機系状態へ遷移する旨の通知を受けたとき、自身の動作状態を現用系に遷移させる処理
を実行すること
を特徴とする障害検知・対処方法。
【請求項7】
前記待機系のコンピュータは、さらに、
前記第1のネットワークスイッチとの間の通信障害および前記第2のネットワークスイッチとの間の通信障害の少なくとも一方を検知した場合には、アラームを出力する処理
を実行すること
を特徴とする請求項6に記載の障害検知・対処方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−104967(P2012−104967A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250248(P2010−250248)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】