説明

CPT阻害剤としての4−トリメチルアンモニウム−3−アミノブチレートおよび4−トリメチルフォスフォニウム−3−アミノブチレート誘導体

本発明は、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ (CPT) を阻害することができる、式(I)を有する新規なクラスの化合物を提供する。本発明はまた、本発明による少なくとも一つの新規化合物を含む医薬組成物、および糖尿病などの高血糖状態およびそれに関連する病態、例えばうっ血性心不全および肥満症の処置におけるその治療上の使用にも関する。


(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)を阻害することができる新規なクラスの化合物を記載する; 本発明はまた、本発明による少なくとも一つの新規化合物を含む医薬組成物、および糖尿病などの高血糖状態およびそれに関連する病態、例えばうっ血性心不全および肥満症の処置におけるその治療上の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
既知の血糖降下治療は、様々な作用機序の薬物の使用に基づいている (Arch. Intern. Med. 1997、157、1802-1817)。
【0003】
より一般的な治療はインスリンまたはその類縁体に基づいており、その治療はこのホルモンの直接的な血糖降下作用を利用している。
【0004】
他の化合物は、インスリンの放出を刺激することにより間接的に作用する (スルホニル尿素)。血糖降下薬の別の標的は、腸管内のグルコシダーゼの阻害またはインスリン抵抗性の減少を介した、グルコースの腸管吸収の減少である。高血糖症はまた、ビグアナイドなどの糖新生阻害剤で治療される。
【0005】
何人かの著者が、糖新生とカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼという酵素との関連性を明らかにしている。
【0006】
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼは、細胞質におけるカルニチンおよびパルミトイルコエンザイム A からのパルミトイルカルニチン(活性脂肪酸)の形成を触媒する。パルミトイルカルニチンは、ミトコンドリア膜を容易に通過するという点でパルミチン酸とは異なる。パルミトイルコエンザイム A はミトコンドリアのマトリックス内で自身を再構成し、カルニチンを放出する。パルミトイルコエンザイム A は酸化されてアセチルコエンザイム A となり、アセチルコエンザイム A が糖新生経路における鍵酵素であるピルビン酸カルボキシラーゼを活性化する。
【0007】
糖尿病患者は、肝臓において酸化されてアセチルコエンザイム A、 ATP および NADH を産生する脂肪酸の血中濃度が高い、ということを何人かの著者が報告している。これらの物質が豊富に存在することから、糖新生の過剰調節が引き起こされ、それに続いて血中グルコース濃度の上昇が起こる。このような状況において、CPT の阻害は脂肪酸の酸化を制限し、結果として糖新生および高血糖を制限する。CPT 阻害剤は、J.Med.Chem.、1995、38(18)、p.3448-50 に記載されており、関連する欧州特許出願 EP-A-574355 においては血糖降下作用のある可能性のある誘導体として記載されている。
【0008】
本出願人の名においてされた国際特許出願 WO99/59957 は、CPT に対する阻害作用を示す1クラスのブタン酸誘導体を記載し、特許請求の範囲として主張している。これらの化合物の一例は、R-4-トリメチルアンモニウム-3-(テトラデシル カルバモイル)- アミノブチレート (ST1326) である。
【0009】
最近、阻害剤を脳室内投与(icv)することによって実験的に作り出された視床下部での CPT-1 阻害は、食物摂取および糖新生を、効果の程度および持続時間の点から見て有意にかつ一貫して減少させ得ることが実証された (Nature Medicine、2003、9(6)、756-761)。また、この特性は化合物 ST1326 を用いた場合にも示された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特に経口投与された場合に高い有効性を示す化合物を見出すことは、常に研究者の目標である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の説明
本発明は、下記式(I)を有する新規なカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI 阻害剤に関する :
【化1】

(I)
[式中:
A は -N+ (R R1 R2)、-P+ (R R1 R2) から選択される、ここで R、R1、R2 は同一または異なり、(C1-C2)アルキル、フェニルおよびフェニル-(C1-C2)アルキルからなる基より選択される; A1 は O または NH または 非存在;
n は 0 から 20 までの範囲の整数;
p は 0 または 1; q は 0、1 ;
X1 は O または S;
X2 は O または S;
m は 1 から 20 までの範囲の整数;
Y は H、フェニルおよびフェノキシから選択される;
R3 は H、ハロゲン、直鎖状または分枝状の (C1-C4) アルキルおよび (C1-C4) アルコキシから選択される]。
【0012】
好ましくは R、R1 および R2 はすべてメチルである。好ましくは m は 1 から 10 までの範囲の整数、より好ましくは 4 から 8 までの範囲の整数である。
【0013】
本発明の目的のためには、式(I)の生成物の各々が、R/S のラセミ混合物として存在してもよいし、R および S の分離した異性体の形で存在してもよいことが明らかである。
【0014】
本発明はまた、式(I)の化合物の互変異性体、幾何異性体、鏡像異性体、ジアステレオマーおよびラセミ体のような光学活性体、および医薬上許容される塩を含む。本発明はこれら全ての式(I)の化合物についての様々な塩化(salification)の可能性を包含する。
【0015】
好ましい式(I)の医薬上許容される塩は、医薬上許容される酸により形成される酸付加塩であり、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩または重硫酸(硫酸水素)塩、リン酸塩またはリン酸水素塩、酢酸塩 、安息香酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、およびパラ-トルエンスルホン酸塩が挙げられる。
【0016】
本発明の範囲内において、直鎖状または分枝状の(C1-C4)アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピルおよびブチル、およびそれらの可能な異性体、例えば、イソプロピル、イソブチル、および三級-ブチルを含むと理解される。
【0017】
以下は、本発明による最も好ましい化合物のいくつかである:
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(3-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]ブチル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST2425);
(R)-4-トリメチルフォスフォニウム-3-[[4-[(3-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]ブチル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST2452);
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-(ヘプチルオキシ)-フェニル]-カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST2773);
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[2-(ベンジルオキシ)-ベンジル]カルバモイル]- アミノ-ブチレート (ST2790);
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[(4-ベンジルオキシ-3-メトキシ)-ベンジル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST2816);
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(2-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]ブチル] カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST4005);
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(3-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]プロピル] カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST4024); および
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[3-(ヘキシルオキシ)フェノキシ]アセチル]-アミノ-ブチレート (ST4004)。
【0018】
本明細書において記載する本発明のさらなる目的は、医薬分野における使用のための、一般式(I)を有する化合物である。
【0019】
本明細書において記載する本発明のさらなる目的は、有効成分として式(I)の化合物を含有し、かつ少なくとも医薬上許容される賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物である。
【0020】
式(I)の化合物は、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼに対する阻害活性を有する。この阻害活性は、肥満症、高血糖、糖尿病および関連する疾患、例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、および心血管障害の治療および/または予防における、それらの化合物の使用を可能にする。式(I)の化合物は、うっ血性心不全などの心障害の予防および治療においても使用される。
【0021】
式(I)の化合物の阻害作用は、主にカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼのアイソフォーム1 (CPT-1)に対して生じ、また、特に視床下部において生じる。
【0022】
本明細書において記載する本発明のさらなる目的は、肥満症、高血糖、糖尿病および関連する疾患、例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害および心血管障害の治療のためのおよび/または予防における、有効成分として式(I)の化合物を含有する医薬組成物である。式(I)の化合物は、うっ血性心不全などの心障害の予防および治療においても使用される。
【0023】
本発明の別の目的は、式(I)の化合物を適切な賦形剤および/または希釈剤と混合することを含む、上記のあらゆる医薬組成物を調製するための方法である。
【0024】
本明細書において記載する本発明のさらなる目的は、肥満症、高血糖、糖尿病および関連する疾患、例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害および心血管障害の治療のためのおよび/または予防における医薬の調製のための、式(I)の化合物の使用である。式(I)の化合物は、うっ血性心不全などの心障害の予防および治療においても使用される。
【0025】
本発明の別の目的は、治療上有効な量の式(I)の化合物を投与することを含む、肥満症、高血糖、糖尿病および関連する疾患に罹患している哺乳動物を治療する方法である。
【0026】
“治療上有効な量”とは、治療対象において医学的に望ましい結果を達成するために有効な量のことである。医薬組成物は、医薬上許容される適切な担体、動物への投与に適した生物学的適合性のある媒体(例えば、生理食塩水)を含有し得、所望により活性な化合物の医薬上使用できる調製物への加工を促進する補助剤(例えば賦形剤、安定剤または希釈剤)を含有していてもよい。
【0027】
あらゆる化合物について、治療上有効な用量を初めに細胞培養アッセイまたは通常はマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、またはブタの動物モデルにおいて推定し得る。
【0028】
動物モデルは、適切な濃度範囲および投与経路を決定するためにも使用できる。次いで、かかる情報はヒトにおける有用な用量および投与経路を決定するために使用できる。
【0029】
医薬組成物は、投与様式についての要求に応えるためのあらゆる許容される方法で処方できる。薬物送達のための生体材料および他のポリマーの使用、および特定の投与様式を確証するための様々な技術およびモデルの使用が文献に開示されている。
【0030】
血液脳関門の透過を改善するために本発明の化合物を改変することも有用である。
【0031】
許容されるあらゆる投与様式は当業者によって使用され得、決定され得る。例えば、 投与は様々な非経口経路、例えば皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経皮、経口、または頬側経路によってなされ得る。
【0032】
非経口投与は、ボーラス投与または時間をかけた緩やかな灌流投与によってなされ得る。非経口投与のための調製物は、当該技術分野において公知の補助剤または賦形剤を含み得る、無菌の水性または非水性の溶液、懸濁液、およびエマルジョンを含み、常套の方法によって調製し得る。加えて、活性な化合物の懸濁液を適切な注入用油状懸濁液として投与し得る。適切な親油性の溶媒または媒体は、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドを含む。
【0033】
懸濁液の粘性を増大させる物質を含み得る注入用水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、および/または デキストランを含む。所望により、懸濁液は安定剤も含有し得る。
【0034】
鼻腔内投与のための医薬組成物は、有利にはキトサンを含みうる。
【0035】
医薬組成物は、注入による投与のための適切な溶液を含み、約 0.01 から 99 パーセント、好ましくは約 20 から 75 パーセントの活性な化合物を賦形剤と共に含有する。直腸内に投与され得る組成物は坐薬を含む。投与される用量はレシピエントの年齢、性別、健康状態および体重、併用する治療の種類、もしあれば、治療の頻度、および所望の効果の性質に依存することが理解される。用量は、当業者によって理解および決定されるように個々の対象に合わせられる。各治療に必要な総用量は複数回投与または単回投与によって投与され得る。本発明の医薬組成物は、単独で、または症状またはその症状における他の症候に対して向けられた他の治療と併用して投与され得る。通常、有効成分の1日の用量は体重1キログラムあたり 0.01 から 100 ミリグラム、好ましくは 0.05 から 50 ミリグラムの間に含まれる。
【0036】
本発明の化合物は、患者に対し医薬上許容される担体、例えば生理食塩水中にて静脈内投与され得る。
【0037】
ペプチドの細胞内送達のための標準的な方法、例えばリポソームを介した送達を使用できる。そのような方法は当業者に周知である。本発明の処方は非経口投与、例えば静脈内、皮下、筋肉内および腹腔内投与に有用である。
【0038】
医薬分野において周知のように、あらゆる患者に対する用量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間および経路、全体的な健康状態、および同時に投与される他の薬剤を含む、多くの因子に依存する。
【0039】
本発明のさらなる態様は、一または複数の式(I)の化合物を適切な賦形剤、安定化剤および/または医薬上許容される希釈剤と混合することによって特徴づけられる、医薬組成物を調製するための方法である。
【0040】
式(I)の化合物は、容易に入手可能な出発物質から、以下の一般的な方法および手順を用いて調製することができる。典型的なまたは好ましい実験条件 (すなわち、反応温度、時間、試薬のモル数、溶媒、など) が与えられた場合にも、別に述べない限りは他の実験条件も用いることができると認められる。最適な反応条件は、用いられる特定の反応物または溶媒によって異なり得るが、そのような条件は当業者によって常套の最適化手順によって決定され得る。
【0041】
本発明の化合物を調製する方法は、双極性の非プロトン性またはプロトン性溶媒、好ましくは例えば THF または MeOH 中において、4℃と溶媒の還流温度の間、好ましくは 25から40℃の間に含まれる温度で、1から72 時間の間、好ましくは 24から48時間の間に含まれる時間、アミノカルニチンおよびフォスフォアミノカルニチンを対応するイソシアネートと好ましくは反応させることを含む。イソシアネートは適切なカルボン酸から出発し、アシルクロライドおよびその後のアシルアジドへの変換を介しまたは現位置でジフェニルフォスフォリルアジドを用いて生成し得る。
【0042】
これより本発明を非限定的な実施例によってより詳細に説明し、それは以下の図に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図面の説明
【図1】図 1 は、絶食ラットにおける、式(I)の新規な CPT I 阻害剤の経口投与のケトン体生成に対する効果を示す。化合物を、17 時間の絶食の後 9:00 に、参照化合物として用いられる10 mg/kg の ST1326 と等モル数の用量で経口投与した(n=5)。
【図2】図 2 は、絶食ラットにおけるケトン体レベルに対する化合物 ST2425 の用量関連効果を報告する。この化合物については、作用がより早く発現することも観察された。
【図3】図 3 は、2つの鼻孔に等しく細分された ST2425(320 μg/40 μl/ラット)で 3 日間鼻腔内処理されたスプラーグドーリーラットにおける食物摂取 (g/kg体重 として表される)を報告する(平均 ± 標準偏差(n=5)。一元配置分散分析 事後検定 SNK 対照に対し *p≦0.05 )。
【実施例】
【0044】
実施例1
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-(ヘプチルオキシ)フェニル]-カルバモイル] アミノ-ブチレート (ST2773)の調製
【化2】

【0045】
無水 MeOH (3.2 ml)中の(R)-アミノカルニチン溶液(149 mg、0.93 mmol)に対し、5℃で、4-(ヘプチルオキシ)フェニルイソシアネート(500 mg、2.14 mmol)を添加した。反応混合物を室温で48時間撹拌した後、固形物を濾過して除いた。溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣をジエチルエーテルで数回トリチュレートした後、減圧下で乾燥させて 200 mg の所望の生成物を得た(収率 55% )。TLC: シリカゲル、Rf = 0.49 (42:7:28:10.5:10.5 CHCl3/イソプロパノール/MeOH/CH3COOH/H2O); [α]20D = -21.5°(c = 0.5%、MeOH); 1H NMR (300 MHz、 MeOH-d4)δ7.32 (d、2H)、6.92 (d、2H)、4.68 (br s、1H)、4.01 (t、2H)、3.83-3.58 (m、2H)、3.31 (s、9H)、2.58 (t、2H)、1.86-1.79 (m、2H)、1.58-1.43 (m、8H)、1.03-0.98 (m、3H); HPLC: spherisorb SCX カラム(5μm-4.6 x 250 mm)、移動相 KH2PO4 50 mM/CH3CN 70/30 v/v、 pH そのまま、室温、流速 0.75 mL/分、検出器 UV 205 nm、保持時間 = 6.7 分; K.F. = 5.8% H2O; A.E. C21H35N3O4 と一致。
【0046】
実施例2
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[(4-ベンジルオキシ-3-メトキシ)-ベンジル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST2816)の調製
【化3】

【0047】
7 ml の無水THF中の 4-ベンジルオキシ-3-メトキシフェニル酢酸(700 mg、2.75 mmol)の溶液に対しトリエチルアミン (357.3 μL、2.57 mmol) を添加し、溶液を室温で30分間撹拌した。次いでジフェニルフォスフォリルアジド(554 μL、2.57 mmol)を添加し、溶液を6 時間還流させた。溶液を 5-10 ℃に冷却し、3.5 mL の無水メタノール中の(R)-アミノカルニチン(206 mg、1.28 mmol)の溶液を添加した。そうして得られた溶液を室温で48時間撹拌し、次いで溶媒を減圧下で蒸発させ、CH3OH/AcOEt 9/1 により溶出するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製し、白色固体として 390 mg の生成物を得た(収率 60.6%)。Mp 139-141℃; TLC: シリカゲル、Rf = 0.47 (42:7:28:10.5:10.5 CHCl3/イソプロパノール/MeOH/CH3COOH/H2O); [α]20D = -16°(c = 0.5%、MeOH); 1H NMR (300 MHz、MeOH-d4) δ 7.5 (d、1H)、7.42 (m、4H)、7.0 (m、2H)、6.85 (dd、1H)、5.15 (s、2H)、4.60 (m、1H)、4.30 (m、2H)、3.90 (s、3H)、3.70 (dd、1H)、3.55 (dd、1H)、3.25 (s、9H)、2.51 (m、2H); HPLC: spherisorb S5 SCX カラム(4.6 x 250 mm)、移動相 CH3CN/KH2PO4 50mM 30/70 v/v、 pH そのまま、 室温、流速 = 0.7 mL/分、検出器 UV 205 nm、保持時間 = 7.4 分; K.F. = 1.15 % H2O A.E. C23H31N3O5 と一致。
【0048】
実施例3
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[2-(ベンジルオキシ)-ベンジル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST2790)の調製
【化4】

【0049】
10 ml の無水THF中の 2-ベンジルオキシフェニル酢酸(900 mg、3.71 mmol)の溶液にトリエチルアミン(516 μL、3.71 mmol)を添加し、室温で30分間撹拌した。 次いでジフェニルフォスフォリルアジド(796 μL、3.71 mmol) を添加し、溶液を6 時間還流させた。溶液を 5-10 ℃に冷却し、5 mL の無水メタノール中の (R)-アミノカルニチン(297 mg、1.85 mmol)の溶液を添加した。そうして得られた溶液を室温で48時間撹拌し、次いで溶媒を減圧下で蒸発させ、CH3OH/AcOEt 9/1 により溶出するシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより残渣を精製し、白色固体として 420 mg の生成物を得た(収率 56.7% )。Mp 150-152℃; TLC: シリカゲル、Rf = 0.54 (42:7:28:10.5:10.5 CHCl3/イソプロパノール/MeOH/CH3COOH/H2O); [α]20D = -20.5°(c = 0.5%、MeOH); 1H NMR (300 MHz、MeOH-d4) δ 7.50-7.20 (m、7H)、7.10 (d、1H)、6.95 (t、1H)、5.16 (s、2H)、4.55 (m、1H)、4.40 (dd、2H)、3.65-3.45 (m、2H)、3.15 (s、9H)、2.45 (m、2H); HPLC: Spherisorb SCX カラム(5μm-4.6 x 250 mm)、移動相 CH3CN/KH2PO4 50mM 30/70 v/v、pH そのまま、室温、流速 = 0.7 mL/分、検出器 UV 205 nm、保持時間 = 8.3 分; K.F. = 1.81% H2O、A.E. C22H29N3O4 と一致。
【0050】
実施例4
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(3-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]ブチル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST2425)の調製
【化5】

【0051】
中間体 3-ヘキシルオキシフェノールの調製
表題の化合物を、230 mL の無水DMF中のレゾルシノール (4.00 g、36.3 mmol)および NaH (0.87 g、36.3 mmol) から出発して調製した。混合物を室温で20分間マグネティックスターラーで撹拌して放置し、次いで 1-ブロモヘキサン(5.99 g、36.3 mmol)を添加した。反応混合物を 80℃で 72時間放置した後、H2O(約 1 L)中に注ぎ、AcOEt(3 x 250 mL)で抽出した。有機層を Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させ、得られた残渣(6.50 g、収率 97 %)をさらなる精製をせずに用いた; 1H NMR (CDCl3、300 MHz)、δ 7.10 (brm、1H)、6.50 (m、3H)、3.98 (t、2H)、1.80 (m、2H)、1.40 (m、6H)、0.90 (m、3H)。
【0052】
中間体 メチル-5-[(3-ヘキシルオキシ)フェノキシ]ペンタノエートの調製
表題の化合物を、無水DMF(14.4.mL) 中の 3-ヘキシルオキシフェノール(上記の通りに調製された)(360 mg、1.85 mmol)および 80% NaH (61.5 mg、2.03 mmol)から出発して調製した。1時間後、メチル 5-ブロモバレレート (361 mg、1.85 mmol)を添加し、反応混合物を60℃で18時間マグネティックスターラーで撹拌して放置し、次いで H2O (100 mL)を添加し、混合物を AcOEt(3 x 30 mL)で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、Na2SO4 上で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。シリカゲル上で、最初はヘキサン/AcOEt 97/3、2回目は CH2Cl2/ヘキサン 80/20 および 85/15 を用いた、2回のクロマトグラフィーを行って残渣を精製し、408mgの油状生成物を得た(収率 70 %); 1H NMR (CDCl3、300 MHz)、δ 7.10 (t、1H)、6.50 (m、3H)、3.98 (m、4H)、3.70 (s、3H)、2.40 (brt、2H)、1.98 (m、6H)、1.40 (m、6H)、0.90 (m、3H)。
【0053】
中間体 5-[(3-ヘキシルオキシ)フェノキシ]ペンタン酸の調製
216 mLの CH3OH 中のメチル 5-[3-(ヘキシルオキシ)フェノキシ]ペンタノエート(3.4 g、11.02 mmol)の溶液に対し、2N NaOH (11.05 mL) および H2O (59 mL)を添加し、反応混合物を 3 時間、50 ℃に温めた後、18 時間 室温で放置した。次いで溶液を減圧下で蒸発させ、残渣を H2O で希釈して、AcOEtで抽出した。塩基性の水相を、2N HCl で pH 2 まで酸性化し、AcOEt(3 x 250 mL)で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、Na2SO4 上で乾燥させ、濾過した後、減圧下で蒸発させて 2.7 g の生成物を得た (収率 83%)。ここで、生成物はさらなる精製をせずに用いた; 1H NMR (CDCl3、300 MHz)、δ 7.20 (t、1H)、6.50 (m、3H)、3.98 (m、4H)、2.50 (m、2H)、1.85 (m、6H)、1.40 (m、6H)、0.95 (m、3H)。
【0054】
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(3-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]ブチル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST2425)の調製
CH2Cl2 (6.5 mL) 中の 5-[(3-ヘキシルオキシ)フェノキシ]ペンタン酸(1.3 g、4.41 mmol)の溶液に対し、CO2Cl2 (3.4 g、26.4 mmol) を 0 ℃で添加し、マグネティックスターラーで撹拌しながら 10 ℃で 2 時間、反応を放置した。次いで有機溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣を無水ジエチルエーテル(diethilic ether)で3回洗浄した。油状残渣をさらなる精製をせずに用いた。
【0055】
NaN3 (488 mg、7.50 mmol)を H2O (1.7 mL)に溶解し、得られた溶液を 8-15 ℃に冷却した: この溶液に対し、上記調製の 1.7 mL のアセトンに溶解されたアシルクロライドを添加した。反応をこの温度範囲で 10分間放置し、さらに室温で1時間放置した。その後、反応をトルエン(5.5 mL)と共にフラスコに注ぎ、溶液をマグネティックスターラーで撹拌しながら 70℃に温めた。有機層を減圧下で蒸発させ、得られた残渣をさらなる精製をせずに用いた。
【0056】
得られたイソシアネートを、5 ℃で、無水 CH3OH (53 mL)に溶解した(R)-アミノカルニチン(706 mg、4.41 mmol) に添加し、マグネティックスターラーで撹拌しながら反応を室温で18 時間放置した。次いで反応混合物を減圧下で蒸発させ、溶出液として CH3OH/CHCl3 7/3 から 8/2 を用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって残渣を精製し、370 mg の白色固体を得た (収率 18.6%)。TLC: シリカゲル Rf = 0.59、 溶出液 CHCl3:MeOH:イソプロパノール:CH3COOH:H2O 42:28:7:10.5:10.5、; 1H NMR (MeOHd4、300 MHz) δ 7.10 (t、1H)、6.45 (m、3H)、4.50 (brm、1H)、3.90 (q、4H)、3.50 (m、2H)、3.20 (s、9H)、2.40 (m、2H)、1.75 (m、6H)、1.45 (m、6H)、1.20 (m、2H)、0.90 (t、3H); HPLC: シンメトリー-C18 カラム(5μm) 150 x 4.6 mm、移動相 CH3CN/NH4H2PO4 50 mM (40/60 v/v)、 pH そのまま、室温、流速 = 1.0 mL/分、検出器 UV 205 nm、保持時間 = 5.8 分; [α]20D = -15°、(c = 0.2 % MeOH); KF = 3.2 % H2O; A.E. C24 H41 N3 O5と一致。
【0057】
実施例5
(R)-4-トリメチルフォスフォニウム-3-[[4-[(3-ヘキシルオキシ)フェノキシ]ブチル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST2452)の調製
【化6】

【0058】
実施例 4 (ST2425) において記載された通りに得られ、CH3OH (20 mL)に溶解され、5 ℃に冷却された 4-[(3-ヘキシルオキシ)フェノキシ]ブチル]イソシアネートに対し、CH3OH (38 mL)に溶解された (R)-フォスフォアミノカルニチンを添加した (781 mg、4.41 mmol)。反応混合物を、マグネティックスターラーで撹拌しながら 72 時間放置し、次いで溶媒を蒸発させ、CHCl3/CH3OH 7/3 から 8/2 を用いて溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで残渣を精製し、600 mg の生成物を得た(収率 23%); TLC: シリカゲル Rf = 0.55、CHCl3: iPrOH: MeOH: H2O: CH3COOH (42: 7: 28: 10.5: 10.5); [α]20D = -14.4°、c =0.5% MeOH; 1H NMR (MeOH d4、300 MHz): δ 7.15 (t、1H)、6.45 (m、3H)、4.40 (m、1H)、3.95 (q、4H)、3.20 (t、2H)、2.702.40 (m、4H)、1.90-1.30 (m、21H)、0.90 (t、3H); HPLC: シンメトリー C18 カラム (5 μm)、4.6 x 150 mm、 T = 30 ℃、移動相 CH3CN/NH4H2PO4 50 mM (35/65 v/v) pH = そのまま、流速 = 1 mL/分、検出器 = RI、UV 205 nm、保持時間 = 10.1 分; A.E. C24H41N2O5P と一致; KF = 2.2 % H2O。
【0059】
実施例6
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(2-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]ブチル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST4005)の調製
【化7】

【0060】
中間体 メチル-5-[(2-ヘキシルオキシ)フェノキシ]ブチレートの調製
表題の化合物を、無水 CH3CN (60 mL)中の 2-ヘキシルオキシフェノール(実施例 4 において 3-ヘキシルオキシフェノールについて記載されたのと同様にして調製された) (750 mg、3.82 mmol)および KOH (256 mg、4.58 mmol)から出発して調製した。1時間後、メチル 5-ブロモバレレート (0.745 mg、3.82 mmol)を添加し、反応混合物をマグネティックスターラーで撹拌しながら 60 ℃で 48 時間放置した。反応混合物を減圧下で蒸発させ、次いで H2O (100 mL)を添加し、混合物を AcOEt(3 x 30 mL)で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、Na2SO4 上で乾燥させ、減圧下で蒸発させて 705 mg の油状生成物を得た (収率 60%)。
【0061】
1H NMR (CDCl3、300 MHz)、δ 6.9 (m、4H)、4.00 (m、4H)、3.70 (s、3H)、3.40 (t、2H)、2.40 (m、4H)、1.90 (m、8H)、0.90 (m、3H)。
【0062】
中間体 5-[(2-ヘキシルオキシ)フェノキシ]ブタン酸の調製
100 mL の CH3OH 中のメチル 5-[2-(ヘキシルオキシ)フェノキシ]ブチレート(1.8 g、5.79 mmol)の溶液に対し 2N NaOH (22 mL) および H2O (29 mL)を添加し、反応混合物を3 時間、50℃に温めた。次いで溶液を減圧下で蒸発させ、残渣を H2O で希釈し、AcOEt で抽出した。塩基性の水相を 2N HCl で pH 2 まで酸性化し、AcOEt(3 x 250 mL)で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、Na2SO4 上で乾燥させ、濾過した後、減圧下で蒸発させて 940 mg の生成物を得た (収率 55%)。その生成物をさらなる精製をせずに用いた; 1H NMR (CDCl3、300 MHz)、δ 6.90 (m、4H)、4.00 (m、4H)、2.5 (t、2H)、1.90 (m、6H)、1.20 (m、6H) 0.95 (m、3H)。
【0063】
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(2-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]ブチル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST4005)の調製
無水 THF (8.7 mL) 中の 5-[(2-ヘキシルオキシ)フェノキシ]ブタン酸(500 mg、1.68 mmol)の溶液に対し、TEA (170 mg、1.68 mmol)、ジフェニルフォスフォリルアジド (463 mg、1.68 mmol) を 0℃で添加し、マグネティックスターラーで撹拌しながら反応を 80℃で 18 時間放置した。
【0064】
この後、無水 MeOH (12.4 mL)に溶解された R-アミノカルニチン(240 mg、1.5 mmol)を 5-10℃で添加し、次いで反応混合物をマグネティックスターラーで撹拌しながら室温で18 時間放置した。次いで反応混合物を減圧下で蒸発させ、溶出液として CH3OH/AcOEt 7/3 から 8/2 を用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって残渣を精製して 310 mg の白色固体を得た (収率 48%)。TLC: シリカゲル Rf = 0.56、溶出液 CHCl3:MeOH:イソプロパノール:CH3COOH:H2O 42:28:7:10.5:10.5; 1H NMR (MeOHd4、300 MHz) δ 6.90 (m、4H)、4.50 (brm、1H)、4.00 (q、4H)、3.50 (m、2H)、3.20 (m、11H)、2.40 (m、2H)、1.85 (m、6H)、1.45 (m、6H)、0.90 (t、3H); ESI-MS [M+H+] 452.2; [M+Na+] 474.2。
【0065】
実施例7
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(3-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]プロピル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST4024)の調製
【化8】

【0066】
中間体 メチル-5-[(3-ヘキシルオキシ)フェノキシ]ブチレートの調製
表題の化合物を、無水 CH3CN (80 mL) 中の 3-ヘキシルオキシフェノール(実施例 4 において記載した通りに調製された)、(1 g、5.47 mmol) および K2CO3 (856 mg、6.17 mmol) から出発して調製した。1時間後、メチル 4-ブロモブタノエート (1.8 g、10.3 mmol) を添加し、反応混合物をマグネティックスターラーで撹拌しながら 60℃ で 18 時間放置し、次いで H2O (100 mL)を添加し、混合物を AcOEt(3 x 30 mL)で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、Na2SO4 上で乾燥させ、減圧下で蒸発させた。シリカゲル上で、最初は ヘキサン/AcOEt 98/2 を用いる、2回のクロマトグラフィーを行って残渣を精製し、1.35 g の油状生成物を得た (収率 66%)。 1H NMR (CDCl3、300 MHz)、δ 7.20 (t、1H)、6.50 (m、3H)、3.98 (dt、4H)、3.65 (s、3H)、2.60 (t、2H)、2.1 (m、2H)、1.90 (m、2H)、1.4 (m、6H)、0.95 (t、3H)。
【0067】
中間体 5-[(3-ヘキシルオキシ)フェノキシ]ブタン酸の調製
80 mL の CH3OH 中のメチル 4-[3-(ヘキシルオキシ)フェノキシ]ブチレート(1.35 g、4.58 mmol)の溶液に対し、2N NaOH (17 mL) および H2O (23 mL)を添加し、反応混合物を 3 時間、50℃に温めた。次いで溶液を減圧下で蒸発させ、残渣を H2O で希釈し、AcOEt で抽出した。塩基性の水相を 2N HCl で pH 2 まで酸性化し、AcOEt(3 x 250 mL)で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、Na2SO4 上で乾燥させ、濾過した後、減圧下で蒸発させて、白色固体として 1.2 g の 生成物を得た (収率 92%)。ここで、生成物はさらなる精製をせずに用いた; 1H NMR (CDCl3、300 MHz)、δ 7.20 (t、1H)、6.50 (m、3H)、3.98 (dt、4H)、2.60 (t、2H)、2.1 (m、2H)、1.90 (m、2H)、1.4 (m、6H)、0.95 (t、3H)。
【0068】
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(3-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]プロピル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート (ST4024)の調製
無水 THF (18.3 mL)中の 5-[(3-ヘキシルオキシ)フェノキシ]ブタン酸(1 g、3.55 mmol)の溶液に対し、TEA (0.359 mg、3.55 mmol)、ジフェニルフォスフォリルアジド (976 mg、3.55 mmol)を 0℃で添加し、反応をマグネティックスターラーで撹拌しながら 80℃で 18 時間放置した。
【0069】
この後、無水 MeOH(12.4 mL)に溶解させた R-アミノカルニチン(506 mg、3.16 mmol)を 5-10℃ で添加し、次いで反応混合物をマグネティックスターラーで撹拌しながら室温で 18 時間放置した。反応混合物を次いで減圧下で蒸発させ、溶出液として CH3OH/AcOEt 7/3 から 8/2 を用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって残渣を精製し、635 mg の白色固体を得た (収率 46%)。 TLC: シリカゲル Rf = 0.57、溶出液 CHCl3:MeOH:
イソプロパノール:CH3COOH:H2O 42:28:7:10.5:10.5; 1H NMR (MeOHd4、300 MHz) δ 7.10 (t、1H)、6.45 (m、3H)、4.50 (brm、1H)、3.90 (m、4H)、3.50 (m、2H)、3.30 (m、2H)、3.20 (s、9H)、2.40 (m、2H)、1.90 (m、2H)、1.70 (m、2H)、1.45 (m、2H)、1.30 (m、4H)、0.90 (t、3H); ESI-MS [M+Na+] 460。
【0070】
実施例8
(R)-4-トリメチルアンモニオ-3-[[3-(ヘキシルオキシ)フェノキシ]アセチル]-アミノ-ブチレート (ST4004)の調製
【化9】

【0071】
中間体 エチル-2-[(3-ヘキシルオキシ)フェノキシ]アセテートの調製
表題の化合物を、無水 CH3CN (80 mL)中の 3-ヘキシルオキシフェノール(実施例 4 において記載した通りに調製された)(1 g、5.47 mmol) および K2CO3 (853 mg、6.1 mmol)から出発して調製した。1時間後、エチル-2-ブロモアセテート (1.14 mL、1.7 g、10.3 mmol)を添加し、反応混合物をマグネティックスターラーで撹拌しながら 60℃で 18 時間放置した。反応混合物を減圧下で蒸発させ、濾過した後、1.4 g の油状化合物を得、さらなる精製をせずに用いた。
【0072】
1H NMR (CDCl3、300 MHz)、δ 7.20 (t、1H)、6.50 (m、3H)、4.65 (s、2H)、4.25 (q、2H)、3.98 (t、2H)、1.80 (m、2H)、1.50 (m、2H)、1.3 (m、7H)、0.95 (m、3H)。
【0073】
中間体 2-[(3-ヘキシルオキシ)フェノキシ]酢酸の調製
78 mL のエタノール中のエチル 2-[3-(ヘキシルオキシ)フェノキシ]アセテート(1.25 g、4.46 mmol)の溶液に対し、2N NaOH (15 mL) および H2O (22 mL)を添加し、反応混合物を 3 時間、50℃に温めた。次いで溶液を減圧下で蒸発させ、残渣を H2O で希釈し、AcOEt で抽出した。塩基性の水相を 2N HCl で pH 2 まで酸性化し、AcOEt(3 x 250 mL)で抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、Na2SO4 上で乾燥させ、濾過した後、減圧下で蒸発させて 1 g の生成物を得た (収率 89%)。ここで、生成物はさらなる精製をせずに用いた。
【0074】
1H NMR (CDCl3、300 MHz)、δ 7.20 (t、1H)、6.50 (m、3H)、4.65 (s、2H)、3.98 (t、2H)、1.80 (m、2H)、1.50 (m、2H)、1.3 (m、4H)、0.95 (m、3H)。
【0075】
(R)-4-トリメチルアンモニオ-3-[[3-(ヘキシルオキシ)フェノキシ]アセチル]-アミノ-ブチレート (ST4004)の調製
無水 CH2Cl2 (6 mL)中の 2-[(3-ヘキシルオキシ)フェノキシ]酢酸(400 mg、1.58 mmol)の溶液に対し、1-クロロ-2-N,N-トリメチル-1-プロペニルアミン(255 mg、1.9 mmol)を 0℃で添加し、反応をマグネティックスターラーで撹拌しながら室温で 3 時間放置した。次いで有機溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣を無水ジエチルエーテルで3回洗浄した。化合物をさらなる精製をせずに用い、無水 CH2Cl2 (1 mL)中に溶解させ、無水 MeOH (8 mL)中の R-4-トリメチルアンモニオ-3-アミノ-ブチレート(203 mg、1.27 mmol)に対し、滴下により添加した。反応をマグネティックスターラーで撹拌しながら室温で 18 時間放置した。
【0076】
反応混合物を減圧下で蒸発させ、溶出液として CH3OH/AcOEt 7/3 から 9/1 を用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって残渣を精製して、106 mg の化合物を得た (収率 22%)。 TLC: シリカゲル Rf = 0.54、溶出液 CHCl3:MeOH:イソプロパノール:CH3COOH:H2O 42:28:7:10.5:10.5; 1H NMR (MeOHd4、300 MHz) δ 7.10 (t、1H)、6.60 (m、3H)、4.80 (brm、1H)、4.60 (s、2H)、4.00 (m、2H)、3.60 (m、2H)、3.20 (s、9H)、2.50 (dq、2H)、1.80 (m、2H)、1.50 (m、2H)、1.40 (m、4H)、0.90 (t、3H); ESI-MS [M + Na+] 417。
【0077】
生物学的研究
インビトロでの CPT I の阻害
通常通り給餌されたフィッシャーラットの肝臓または心臓から得られた新鮮なミトコンドリア調製物において、CPT の阻害を評価した; 肝臓または心臓から取り出したミトコンドリアを、75 mM スクロース緩衝液、EGTA 1 mM、pH 7.5 中に懸濁させた。50μM の[14C]パルミトイル-CoA (比放射能 10000 dpm/モル) および 10 mM の L-カルニチンを含有する 100μl のミトコンドリア懸濁液を、37℃にて、段階的濃度 (0-3 mM)の被験生成物の存在下でインキュベートした。
反応時間: 1 分間。
次いで、IC50 を決定した。結果を表1に報告する。
【0078】
表 1 : ラットミトコンドリアにおける CPT1 の阻害曲線の IC50
【表1】

【0079】
ST1326 と比較した、ST2425 および ST2452 によるインビボにおけるケトン体生成の阻害
ST2425 および ST2452 によってもたらされる、CPT の阻害およびその結果としてのβ-ヒドロキシブチレート生成の阻害を、参照化合物として用いた 10 mg/Kg の ST1326 と等モルの用量で、17 時間絶食させたラットにおいてインビボで評価した。β-ヒドロキシブチレートのレベルを、1回の経口処理から 3時間 および 6 時間の時点において測定した。図 1 において示す通り、ST2425 および ST2452 については、β-ヒドロキシブチレート レベルの減少が ST1326 に対してより高くかつ速く、3 時間後には最小値に到達し、その後の 3 時間も安定な状態を維持した。
【0080】
化合物 ST2425 については、16 時間絶食させたラットにおいて、0、1、3、7、10 mg/kg の用量で、1回の経口処理の後 9 時間の間、β-ヒドロキシブチレートの減少に続くケトン体生成の阻害も評価した。0 から 9 時間まで、AUC に基づいて算出された ED50 値は 3.7 mg/kg に等しく、ST1326 について見出された値(ED50 = 14.5 mg/kg)よりも低かった。図 2 に示す通り、作用のより速い発現も観察された。
【0081】
db/db マウスにおける ST2425 および ST2452 の抗高血糖活性
db/db マウスに対し ST2425 および ST2452 を 30 mg/kg/日で 12 日間投与し、参照化合物として ST1326 をより高用量(80 mg/kg/日)で用いた。処理の最後に、16 時間の絶食後かつ最後の投与から 2 時間後の時点で、血清グルコースレベルを評価した。結果を表 2 に報告し、ST2425 は 41%、ST2452 は 30% のグルコースレベルの減少を誘導した一方、ST1326 については ほぼ 3倍高い用量にもかかわらず 26% の減少しか観察されなかったことを示す。
【0082】
表 2 抗-高血糖活性
【表2】

平均 ± 標準偏差 (n=7); * = 対照に対し p<0.05、Student の t 検定。
【0083】
ST2425 の脳室内反復投与の食物摂取および体重への効果
8頭の C57BL/6J マウス 2群の各々 (ST2425 および 対照)に、4日間(0 日から開始)、RPMI 1640 (媒体)に溶解させた 250 pmoles (0.113 μg) の ST2425 (3 μL)を脳室内に注入した。動物はイソフルオラン麻酔によってわずかに錯乱した。皮膚を切開せずに “仮想十字縫合(virtual bregma)”を見せるために用いられる装置の中に頭部を置いた。十字縫合から以下の座標を用いて、シリンジで 3.5 mm の深さに注入を行った : 正中矢状縫合(midsagittal suture)の 1 mm 左方かつ 3 mm 後方 (側脳室)。午後 5:00 に動物を処理し、翌日の午前 8:00 に食物摂取をモニターした。最初の処理の翌日から開始し、午前 8:00 から午後 5:00 まで食物を取り除いた。
【0084】
2元配置反復測定分散分析と、それに続く事後検定としての Student、Newman、Keuls 検定を用いて統計解析を行った。
【0085】
結果を表3および4に報告し、実験期間中、対照群に対して ST2425 が食物消費 (-25%) およびマウス体重 (-7%) を減少させたことを示す。食物摂取については3日目および4日目において(約 30%)、マウス体重については2日目(-5%)、3日目および4日目(-10%)において統計学的に有意な減少が観察された。
【0086】
表 3: C57BL6/J マウスの食物摂取に対する ST2425 の脳室内反復投与の効果。
【表3】

各群につき動物8頭。
2元配置反復測定分散分析、群、F(1、14) =41.4、p<0.001; 時間、F(3、42) =14.9、p<0.001; 群 x 時間、F(3、63) =7.32、p<0.001。事後分析、処理要因についての比較: * = 対照に対し p<0.05。
【0087】
表 4 マウス体重に対する ST2425 の脳室内反復投与の効果。
【表4】

各群につき動物8頭。
2元配置反復測定分散分析、群、F(1、14) =22.1、p<0.001; 時間、F(3、42) =1.8、ns; 群x時間、F(3、63) =12.6、p<0.001。事後分析、処理要因についての比較: * = 対照に対し p<0.05。
【0088】
正常ラットにおける食物摂取に対する ST2425 の鼻腔内投与の効果
鼻腔内投与後の、本発明の化合物の食物消費に対する活性を試験するため、通常通り給餌されたスプラーグドーリーラットに対し、暗期の 2 時間前に ST2425 を与えた (320μg/40 μL/ラット、10 mmol/L クエン酸バッファー pH 5.0 中、2つの鼻孔に等しく細分された)。化合物を 3 日間投与し(0 日から開始)、その後 24 時間ごとに食物消費を測定した。各群につき5頭のラットを考慮した。
【0089】
図 3 に示す通り、ST2425 での2回目の処理の翌日から、対照に対する食物消費の有意な減少が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)を有する化合物:
【化1】

(I)
[式中:
A は -N+ (R R1 R2)、-P+ (R R1 R2) から選択される、ここで R、R1、R2 は同一または異なり、(C1-C2)アルキル、フェニルおよびフェニル-(C1-C2)アルキルからなる基より選択される; A1 は O または NH または 非存在;
n は 0 から 20 までの範囲の整数;
p は 0 または 1; q は 0 または 1;
X1 は O または S;
X2 は O または S;
m は 1 から 20 までの範囲の整数;
Y は H、フェニルおよびフェノキシから選択される;
R3 は H、ハロゲン、直鎖状または分枝状の (C1-C4) アルキルおよび (C1-C4) アルコキシから選択される] 、およびその医薬上許容される塩。
【請求項2】
R、R1 および R2 がすべてメチルである請求項 1 の化合物。
【請求項3】
以下からなる群から選択される、請求項 1 または 2 いずれかの化合物:
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(3-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]ブチル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート;
(R)-4-トリメチルフォスフォニウム-3-[[4-[(3-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]ブチル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート;
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-(ヘプチルオキシ)-フェニル]-カルバモイル]-アミノ-ブチレート;
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[2-(ベンジルオキシ)-ベンジル]カルバモイル]- アミノ-ブチレート;
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[(4-ベンジルオキシ-3-メトキシ)-ベンジル]カルバモイル]-アミノ-ブチレート;
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(2-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]ブチル] カルバモイル]-アミノ-ブチレート;
(R)-4-トリメチルアンモニウム-3-[[4-[(3-ヘキシルオキシ)-フェノキシ]プロピル] カルバモイル]-アミノ-ブチレート; および
(R)-4-トリメチルアンモニオ-3-[[3-(ヘキシルオキシ)フェノキシ]アセチル]-アミノ-ブチレート。
【請求項4】
薬剤としての、請求項 1 から 3 いずれかの化合物。
【請求項5】
双極性非プロトン性またはプロトン性溶媒中で、4℃から溶媒の還流温度の間に含まれる温度において 1 から 72 時間の間に含まれる時間、アミノカルニチンおよびフォスフォアミノカルニチンを対応するイソシアネートと反応させることを含む、請求項 1 から 3 いずれかの化合物を調製する方法。
【請求項6】
抗高血糖活性を有する医薬の調製のための、請求項 1 から 3 いずれかの化合物の使用。
【請求項7】
肥満症、高血糖、糖尿病および糖尿病に関連する疾患の治療および/または予防のための医薬を調製するための、請求項 1 から 3 いずれかの化合物の使用。
【請求項8】
糖尿病に関連する疾患が糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害および心血管障害である、請求項 7 に記載の使用。
【請求項9】
心障害の治療および/または予防のための医薬を調製するための、請求項 1 から 3 いずれかの化合物の使用。
【請求項10】
心障害がうっ血性心不全である、請求項 9 に記載の使用。
【請求項11】
有効成分として請求項 1 から 3 いずれかの化合物を含有し、および少なくとも一の医薬上許容される賦形剤および/または希釈剤を含有する医薬組成物。
【請求項12】
請求項 7 から 10 いずれかに記載のいずれかの疾患の治療および/または予防のための、請求項 11 記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項 1 から 3 いずれかの化合物を少なくとも一の医薬上許容される賦形剤および/または希釈剤と混合することを含む、請求項 12 または 13 の組成物の調製方法。
【請求項14】
治療上有効な量の請求項 1 から 3 いずれかの化合物を投与することを含む、請求項 7 から 10 いずれかの疾患に罹患している哺乳動物を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−545549(P2009−545549A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522200(P2009−522200)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057030
【国際公開番号】WO2008/015081
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】