説明

GPS信号による移動体位置決め方法および移動体位置決定装置ならびに移動体位置決定プログラム

【課題】正確な地図データがない場合であってもGPS信号による移動体の位置決めを正確に行うことができる新規なGPS信号による移動体位置決め方法および移動体位置決定装置ならびに移動体位置決定プログラムの提供。
【解決手段】人工衛星から発信されるGPS信号を連続的に受信し、受信したGPS信号に基づいて所定時間ごとに前記移動体の位置を算定し、算定された所定時間ごとの移動体の算定位置を記憶し、記憶された移動体の算定位置同士の広がり具合に基づいて前記移動体の停止または移動を判断し、移動体が移動したと判断したときに前記移動体の位置を決定する。これによって、正確な地図データや専用のセンサがなくともGPS信号による移動体の位置決めを正確に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS(全地球測位装置)衛星が発するGPS信号を移動体がこれを受信し、その受信信号によって移動体の現在位置を決定する位置決め方法およびその位置決め方法を用いた移動体位置決定装置ならびに移動体位置決定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
GPS信号を利用した移動体位置決定装置は、船舶や航空機用のナビゲーション装置の他に、カーナビゲーション装置や携帯型ナビゲーション装置などとして広く普及しており、現在の情報化社会にとって欠かせないものとなってきている。
【0003】
従来のナビゲーション装置による移動体の現在位置は、受信したGPS信号に基づいて所定の時間ごと、例えば1secごとに計算して液晶モニターなどに出力して表示している。しかし、このGPS信号は大気の状態や環境などによって刻々と変化するため、算出された現在位置は、移動体が停止している状態であっても数メートル〜数十メートル程度の誤差が生じることがある。
【0004】
このようなGPS信号による位置測定誤差を解消するために従来から様々な方法が用いられている。例えば、以下の特許文献1などでは、地図データ上に道路情報などのベクトルデータを重ね合わせ、このベクトルデータ上に現在位置を強制的に移動させるといった、いわゆるマップマッチングと称される方法を用いることで測定誤差を解消する方法が開示されている。
【0005】
また、以下の特許文献2などでは、自動車などの移動体に加速度センサやジャイロスコープなどのセンサを搭載してこれらのセンサからの出力を用いたり、タイヤの回転に伴う車速信号などを用いることでGPS信号による位置測定誤差を解消する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−50025号公報
【特許文献2】特開平11−94570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記のようなマップマッチングと称される方法を用いることによって測定誤差を解消する方法では、道路情報などのベクトルデータがない地域(例えば外国などにおいて未だ正確な地図情報が得られていない地域など)や新しくできた道路などでその道路情報が地図データにない場合には利用することができない。
【0008】
また、加速度センサやジャイロスコープなどのセンサ出力を用いることによって測定誤差を解消する方法では、これらのセンサが故障などによって機能しなくなると大きな誤差を生じてしまう。また、これらのセンサ(ハードウェア)は比較的高価であるため、製品コストが高くなってしまう。また、携帯型のナビゲーション装置では車速信号などを用いることができない。
【0009】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、正確な地図データがない場合であってもGPS信号による移動体の位置決めを正確に行うことができる新規なGPS信号による移動体位置決め方法および移動体位置決定装置ならびに移動体位置決定プログラムを提供するものである。
【0010】
また、本発明の目的は、加速度センサやジャイロスコープなどの特殊なセンサ(ハードウェア)などを用いることなくソフトウェア上でGPS信号による移動体の位置決めを正確に行うことができる新規なGPS信号による移動体位置決め方法および移動体位置決定装置ならびに移動体位置決定プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために第1の発明は、
人工衛星から発信されるGPS信号に基づいて移動体の現在位置を決定する移動体位置決定装置であって、前記GPS信号を連続的に受信するGPS信号受信手段と、当該GPS信号受信手段で受信したGPS信号に基づいて所定時間ごとに前記移動体の位置を算定する位置算定手段と、当該位置算定手段で算定された所定時間ごとの前記移動体の算定位置を記憶する算定位置記憶手段と、当該算定位置記憶手段で記憶された前記移動体の算定位置同士の広がり具合に基づいて前記移動体の停止または移動を判断する移動判断手段と、当該移動判断手段で前記移動体が移動したと判断したときに前記移動体の位置を決定する位置決定手段と、当該位置決定手段で決定された前記移動体の位置を表示する位置表示手段と、を備えたことを特徴とする移動体位置決定装置である。
【0012】
このような構成によれば、正確な地図データがない場合であってもGPS信号による移動体の位置決めを正確に行うことができる。また、加速度センサやジャイロスコープなどのセンサ(ハードウェア)などを用いることなくソフトウェア上でGPS信号による移動体の位置を正確に決定することができる。
【0013】
第2の発明は、
第1の発明において、前記移動判断手段は、前記算定位置記憶手段で記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径内であるときは前記移動体が停止していると判断し、前記算定位置記憶手段で記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径を外れたときに前記移動体が移動したと判断することを特徴とする移動体位置決定装置である。このような構成によれば、移動体の移動、停止を正確に判断することができる。
【0014】
第3の発明は、
第2の発明において、前記移動判断手段は、前記算定位置記憶手段で前記移動体が移動したと判断したときは、その判断の基準となった移動体の算定位置を前記基準算定位置として前記移動体の移動または停止を順に判断することを特徴とする移動体位置決定装置である。このような構成によれば、移動体の移動、停止を連続して判断できると共にその移動軌跡を記録することができる。
【0015】
第4の発明は、
第2または第3の発明において、前記移動判断手段における前記基準算定位置から所定半径は、前記GPS信号受信の際のHDOP(Horizontal Dilution of Precision:水平成分の位置精度劣化度)の値に基づいて決定することを特徴とする移動体位置決定装置である。このようにすれば、刻々と変化するHDOPの値に応じた適切な所定半径を算出できるため、より正確な移動判断を行うことができる。
【0016】
ここで、このHDOP(Horizontal Dilution of Precision:水平成分の位置精度劣化度)とは、周知の通り衛星の幾何学的配置を指数化した位置精度劣化度(PDOP:Position Dilution of Precision)のうち、水平成分の位置精度劣化度を示したものである。この値が小さければ算定位置の精度が高く、大きければ算定位置の精度が低いことを示している。
【0017】
つまり、上空に衛星が分散している状態のとき、PDOPの値は小さくなる。逆に、衛星が1ヶ所に固まっていたり直線上になっていたりすると、PDOPの値は大きくなることが知られている。そして、PDOPの水平成分、垂直成分だけを指数化したものが、それぞれHDOP(Horizontal Dilution of Precision)とVDOP(Vertical Dilution of Precision:垂直成分の位置精度劣化度)である。衛星配置とHDOP、VDOPとは相反する関係となっており、中低仰角方向の異なった方位に複数の衛星が配置されているときにVDOPの値が小さくなり、天頂方向に衛星が複数あるときにHDOPの値が小さくなる。
【0018】
これらPDOP、HDOP、VDOPの間には、PDOP=HDOP+VDOPの関係があるため、HDOP、VDOPの値が小さいときにPDOPの値も小さくなる。従って、天頂方向と中低仰角方向の異なった方位に複数の衛星が配置されているときにPDOPの値が小さくなると言える。一般的にはPDOPの値が3以下のときは位置の精度が良好であり、3〜7では許容範囲、7以上では精度が悪いと考えられる。
【0019】
本発明においては、前述したようにPDOPのうち、水平成分の位置精度劣化度であるHDOPを採用する。これは、位置決定のための計算に要する負荷を軽減するためであるが、このHDOPと共にVDOPを採用しても良い。但し、VDOPのみでは水平方向への正確な移動判断ができないため、HDOPは常に用いる必要がある。
【0020】
第5の発明は、
第2乃至4の発明において、前記移動判断手段における前記基準算定位置から所定半径は、最尤法(Maximum likelihood estimation)により決定することを特徴とする移動体位置決定装置である。このように前記移動判断手段における前記基準算定位置から所定半径を、最尤法(Maximum likelihood estimation)によって決定すれば、HDOPの値に応じた最適な所定半径を算出できるため、より正確な移動判断を行うことができる。ここで、この最尤法(Maximum likelihood estimation)とは、統計学において与えられたデータからそれが従う確率分布の母数について推測するためによく用いられる方法であり、尤度の概念を利用するものである。なお、この最尤法(Maximum likelihood estimation)を用いた具体例については後に詳述する。
【0021】
第6の発明は、
第1乃至5のいずれかの発明において、前記位置決定手段で決定された前記移動体の位置を記録し、記録された複数の位置に基づいて前記移動体が移動した軌跡を決定する移動軌跡決定手段をさらに備えたことを特徴とする移動体位置決定装置である。これによって移動体が移動してきた軌跡をわかりやすく把握できると共に、その移動体の移動方向や移動速度などを予測することができる。
【0022】
第7の発明は、
第6の発明において、前記移動軌跡決定手段は、最小二乗近似により前記移動体が移動した軌跡を決定することを特徴とする移動体位置決定装置である。このように前記移動軌跡決定手段における移動体の移動軌跡を最小二乗近似により決定することにより、より実際の移動軌跡に近い移動軌跡を算出することができる。
【0023】
第8の発明は、
第1乃至7のいずれかの発明において、進行方向を撮影する撮影手段を備え、前記移動判断手段は、前記撮影手段で撮影された画像情報に基づいて前記移動体の移動および方向を判断することを特徴とする移動体位置決定装置である。このように進行方向を撮影する撮影手段で撮影された画像情報を併用することにより、より正確な位置決定および移動判断を行うことができる。
【0024】
第9の発明は、
人工衛星から発信されるGPS信号に基づいて移動体の現在位置を決定する移動体位置決定プログラムであって、コンピュータを、前記GPS信号を連続的に受信するGPS信号受信手段と、当該GPS信号受信手段で受信したGPS信号に基づいて所定時間ごとに前記移動体の位置を算定する位置算定手段と、当該位置算定手段で算定された所定時間ごとの前記移動体の算定位置を記憶する算定位置記憶手段と、当該算定位置記憶手段で記憶された前記移動体の算定位置同士の広がり具合に基づいて前記移動体の停止または移動を判断する移動判断手段と、当該移動判断手段で前記移動体が移動したと判断したときに前記移動体の位置を決定する位置決定手段と、当該位置決定手段で決定された前記移動体の位置を表示する位置表示手段と、して機能させることを特徴とする移動体位置決定プログラムである。
【0025】
このようなプログラムを用いれば、第1の発明と同様に、正確な地図データがない場合であってもGPS信号による移動体の位置決めを正確に行うことができる。また、加速度センサやジャイロスコープなどのセンサ(ハードウェア)などを用いることなくソフトウェア上でGPS信号による移動体の位置を正確に決定することが可能となる。さらに、専用のセンサ(ハードウェア)を用いることなくソフトウェア上で前記各手段を実現することができる。
【0026】
第10の発明は、
第9の発明において、前記コンピュータによって機能される移動判断手段を、前記算定位置記憶手段で記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径内であるときは前記移動体が停止していると判断し、前記算定位置記憶手段で記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径を外れたときに前記移動体が移動したと判断するようにさらに機能させることを特徴とする移動体位置決定プログラムである。このようなプログラムによれば、第2の発明と同様に移動体の移動、停止を正確に判断することができる。
【0027】
第11の発明は、
第10の発明において、前記コンピュータによって機能される移動判断手段を、前記算定位置記憶手段で前記移動体が移動したと判断したときは、その判断の基準となった移動体の算定位置を前記基準算定位置として前記移動体の移動または停止を順に判断するように機能させることを特徴とする移動体位置決定プログラムである。このようなプログラムによれば、第3の発明と同様に移動体の移動、停止を連続して判断できると共にその移動軌跡を記録することができる。
【0028】
第12の発明は、
第9または10の発明において、前記コンピュータによって機能される移動判断手段における前記基準算定位置から所定半径は、前記GPS信号受信の際のHDOPの値に基づいて決定するように機能させることを特徴とする移動体位置決定プログラムである。このようなプログラムにすれば、第4の発明と同様に刻々と変化するHDOPの値に応じた適切な所定半径を算出できるため、より正確な移動判断を行うことができる。
【0029】
第13の発明は、
第9乃至12の発明において、前記コンピュータによって機能される移動判断手段における前記基準算定位置から所定半径は、最尤法(Maximum likelihood estimation)により決定することを特徴とする移動体位置決定プログラムである。このように前記移動判断手段における前記基準算定位置から所定半径を、最尤法(Maximum likelihood estimation)によって決定すれば、第5の発明と同様にHDOPの値に応じた最適な所定半径を算出できるため、より正確な移動判断を行うことができる。
【0030】
第14の発明は、
第9乃至13の発明において、前記コンピュータを、前記位置決定手段で決定された前記移動体の位置を記録し、記録された複数の位置に基づいて前記移動体が移動した軌跡を決定する移動軌跡決定手段としてさらに機能させることを特徴とする移動体位置決定プログラムである。このようなプログラムによれば、第6の発明と同様に移動体が移動してきた軌跡を把握できると共に、その移動体の移動方向や速度などを予測することができる。
【0031】
第15の発明は、
第14の発明において、前記コンピュータによって機能される移動軌跡決定手段は、最小二乗近似により前記移動体が移動した軌跡を決定することを特徴とする移動体位置決定プログラムである。このように前記移動軌跡決定手段における移動体の移動軌跡を最小二乗近似により決定すれば、第7の発明と同様により実際の移動軌跡に近い移動軌跡を算出することができる。
【0032】
第16の発明は、
第9乃至15の発明において、前記コンピュータを、さらに進行方向を撮影する撮影手段として機能させると共に、前記移動判断手段は、前記撮影手段で撮影された画像情報に基づいて前記移動体の移動をおよび方向を判断することを特徴とする移動体位置決定プログラムである。このように進行方向を撮影する撮影手段で撮影された画像情報を併用すれば、第8の発明と同様により正確な位置決定および移動判断を行うことができる。
【0033】
第17の発明は、
人工衛星から発信されるGPS信号に基づいて移動体の現在位置を決定する移動体位置決め方法であって、前記GPS信号を連続的に受信するGPS信号受信ステップと、当該GPS信号受信ステップで受信したGPS信号に基づいて所定時間ごとに前記移動体の位置を算定する位置算定ステップと、当該位置算定ステップで算定された所定時間ごとの前記移動体の算定位置を記憶する算定位置記憶ステップと、当該算定位置記憶ステップで記憶された前記移動体の算定位置同士の広がり具合に基づいて前記移動体の停止または移動を判断する移動判断ステップと、当該移動判断ステップで前記移動体が移動したと判断したときに前記移動体の位置を決定する位置決定ステップと、当該位置決定ステップで決定された前記移動体の位置を表示する位置表示ステップと、を含むことを特徴とする移動体位置決め方法である。
【0034】
このような方法を用いれば、第1の発明と同様に、正確な地図データがない場合であってもGPS信号による移動体の位置決めを正確に行うことができる。また、加速度センサやジャイロスコープなどのセンサ(ハードウェア)などを用いることなくソフトウェア上でGPS信号による移動体の位置を正確に決定することが可能となる。さらに、専用のセンサ(ハードウェア)を用いることなくソフトウェア上で前記各手段を実現することができる。
【0035】
第18の発明は、
第17の発明において、前記移動判断ステップは、前記算定位置記憶ステップで記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径内であるときは前記移動体が停止していると判断し、前記算定位置記憶ステップで記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径を外れたときに前記移動体が移動したと判断することを特徴とする移動体位置決め方法である。このような方法によれば、第2の発明と同様に移動体の移動、停止を正確に判断することができる。
【0036】
第19の発明は、
第18の発明において、前記移動判断ステップは、前記算定位置記憶ステップで前記移動体が移動したと判断したときは、その判断の基準となった移動体の算定位置を前記基準算定位置として前記移動体の移動または停止を順に判断することを特徴とする移動体位置決め方法である。このような方法によれば、第3の発明と同様に移動体の移動、停止を連続して判断できると共にその移動軌跡を記録することができる。
【0037】
第20の発明は、
第18または19の発明において、前記移動判断ステップにおける前記基準算定位置から所定半径は、前記GPS信号受信の際のHDOPの値に基づいて決定することを特徴とする移動体位置決め方法である。このような方法にすれば、第4の発明と同様に刻々と変化するHDOPの値に応じた適切な所定半径を算出できるため、より正確な移動判断を行うことができる。
【0038】
第21の発明は、
第18乃至20の発明において、前記移動判断ステップにおける前記基準算定位置から所定半径は、最尤法(Maximum likelihood estimation)により決定することを特徴とする移動体位置決め方法である。このように前記移動判断ステップにおける前記基準算定位置から所定半径を、最尤法(Maximum likelihood estimation)によって決定すれば、第5の発明と同様にHDOPの値に応じた最適な所定半径を算出できるため、より正確な移動判断を行うことができる。
【0039】
第22の発明は、
第17乃至21の発明において、前記位置決定ステップで決定された前記移動体の位置を記録し、記録された複数の位置に基づいて前記移動体が移動した軌跡を決定する移動軌跡決定ステップをさらに含むことを特徴とする移動体位置決め方法である。このような方法によれば、第6の発明と同様に移動体が移動してきた軌跡を把握できると共に、その移動体の移動方向や速度などを予測することができる。
【0040】
第23の発明は、
第22の発明において、前記移動軌跡決定ステップは、最小二乗近似により前記移動体が移動した軌跡を決定することを特徴とする移動体位置決め方法である。このように前記移動軌跡決定手段における移動体の移動軌跡を最小二乗近似により決定すれば、第7の発明と同様により実際の移動軌跡に近い移動軌跡を算出することができる。
【0041】
第24の発明は、
第17乃至23の発明において、進行方向を撮影する撮影ステップを備え、前記移動判断ステップは、前記撮影ステップで撮影された画像情報に基づいて前記移動体の移動をおよび方向を判断することを特徴とする移動体位置決め方法である。このように進行方向を撮影する撮影ステップで撮影された画像情報を併用すれば、第8の発明と同様により正確な位置決定および移動判断を行うことができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、以下に示すような種々の効果を発揮できる。
(1)正確な地図データがない場合であってもGPS信号による移動体の位置決めを正確に行うことができる。
(2)この結果、ベクトルデータなどの詳細な地図データを用いることなく航空写真などの安価な地図データでも信頼性の高いナビゲーションシステムを安価に構築できる。
(3)加速度センサやジャイロスコープなどのセンサ(ハードウェア)などを用いることなくソフトウェア上でGPS信号による移動体の位置を正確に決定することが可能となる。
(4)移動体の移動、停止を連続して判断できると共にその移動軌跡を記録することができる。
(5)移動体が移動してきた軌跡を把握できると共に、その移動体の移動方向や速度などを予測することができる。
(6)移動体から見た画像情報を移動判断に利用することにより、より正確な位置決定および移動判断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る移動体位置決定装置100の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る移動体位置決定装置100を構成するハードウェア構成図である。
【図3】本発明に係る移動体位置決定方法の流れを示すフローチャート図である。
【図4】図3のステップS400(移動体判断処理)の詳細な流れを示すフローチャート図である。
【図5】HDOPと算定された移動体の現在位置との関係を示す図である。
【図6】HDOPと停止半径との関係を示す図である。
【図7】HDOPと算定位置数および停止半径中心を示す正規分布図である。
【図8】最尤法によって決定された移動体の位置および当該決定位置に基づいて求められた移動体の移動軌跡を示す図である。
【図9】最尤法によって決定された移動体の位置の具体例を示す図である。
【図10】図9の具体的な決定位置の軌跡を3次曲線で示した図である。
【図11】図9の具体的な決定位置の軌跡を3次曲線で示した図である。
【図12】本発明に係る移動体位置決定装置100の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図13】第2の実施形態に係る移動体位置決定装置100を構成するハードウェア構成図である。
【図14】第2の実施形態に係る図3のステップS400(移動体判断処理)の詳細な流れを示すフローチャート図である。
【図15】最尤法によって決定された移動体の位置の具体例を示す図である。
【図16】図15の具体的な決定位置の軌跡を3次曲線で示した図である。
【図17】第3の実施形態に係る移動体位置決定装置100を構成するハードウェア構成図である。
【図18】大きな表示画面に表示された地図および案内経路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
次に、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0045】
(第1の実施形態)
図1乃至図11は、本発明に係る移動体位置決定装置100の第1の実施形態を示したものである。先ず図1に示すようにこの移動体位置決定装置100は、GPS受信部10と、位置算定部20と、位置記憶部30と、入力操作部40と、移動判断部50と、位置決定部60と、移動軌跡決定部70と、位置表示部80とから主に構成されており、自動車や船舶などの移動体に搭載、あるいは歩行者が直接携帯あるいは携帯電話などに内蔵されて用いられる。なお、本発明では、自動車や船舶などのように人間が搭乗して移動するものは勿論、人間が搭乗せず遠隔操作によって移動するリモコンカーや飛行機、さらには人間や動物などのように本発明装置100を直接携帯して移動可能なすべてのものを移動体と称する。
【0046】
本発明装置100を構成するGPS受信部10は、公知のGPSアンテナなどから構成されており、移動体の天空上に位置する複数のGPS(Global Positioning System)衛星からそれぞれ発信される、その位置情報と時刻情報とを含むGPS信号を受信してその受信したGPS信号を位置算定部20に入力する機能を有する。
【0047】
位置算定部20は、このGPS受信部10で受信したGPS信号に基づいて、一定時間間隔ごと(例えば、1秒ごと)に地表面上における、その移動体の現在位置(経度、緯度)を計算し、計算し終えると一定のフォーマット(例えば、NMEA0183仕様)で位置記憶部30に出力する機能を有する。なお、この位置算定部20による移動体の現在位置の算定方法は、従来公知の方法そのものを用いたものであり、また、この位置算定部20は、前記GPS受信部10と一体的になったものであっても良い。
【0048】
ここで、この位置算定部20で算定される一定時間間隔ごとの位置情報(移動体の現在位置)は、GPS衛星からの信号伝播経路と空間媒体の物理定数の変化などにより移動体が停止していても毎回異なる。また、この位置情報はGPS衛星の天空上での分散状態でも異なる。そのため、この位置算定部20は、受信したGPS信号の発信元であるGPS衛星の分散度から位置精度劣化度(PDOP:Position Dilution of Precision)のうち、主に水平成分の位置精度劣化度を示したHDOP(Horizontal Dilution of Precision)も同時に算定する機能を有する。
【0049】
位置記憶部30は、この位置算定部20によって所定時間ごとに算定される移動体の現在位置を所定数、所定時間記憶し、記憶した位置情報を移動判断部50に出力する機能を有する。
【0050】
入力操作部40は、利用者による各種操作、例えば電源入断や表示の切り替え、表示画面の拡縮、表示設定などの各種操作を行う操作手段(操作ボタンなど)から構成されている。そして、この入力操作部40は、例えばこの移動体位置決定装置100自体の筐体上やこの移動体位置決定装置100が搭載された携帯電話などの筐体(本体)上に一体的に設けられるか、あるいはケーブルや無線通信手段などを介して本体側に接続されている。
【0051】
移動判断部50は、前記位置記憶部30で記憶した移動体の算定位置情報を用い、後述する最尤法によりその移動体の移動および停止を判断する機能を有する。
【0052】
位置決定部60は、前記移動判断部50で移動体が移動したと判断したときに、同じく後述する最尤法により移動体の位置を決定する機能を有する。
【0053】
移動軌跡決定部70は、前記位置決定部60で決定された移動体の位置を順に記録し、記録された複数の位置に基づいて移動体が移動した軌跡を決定する機能を有する。
【0054】
位置表示部80は、液晶ディスプレイなどの視認可能な表示画面を備えており、主に前記位置決定部60で決定された移動体の位置、および前記移動軌跡決定部70で決定した移動体の移動軌跡などを利用者が視認可能な画像情報などとして表示画面上に表示する機能を有する。なお、この位置表示部80は、移動体の位置、移動軌跡などと同時に地表を撮影した航空写真なども表示可能となっている。また、この位置表示部80にはスピーカーなどの発音機能も備わっており、移動体の移動、停止や移動方向などを音声により報知可能となっている。
【0055】
そして、これらの機能を有する移動体位置決定装置100は、具体的には図2に示すように電子計算機(コンピュータ:情報処理システム)から構成されており、CPU(演算装置)101、CLC(クロック)102、ROM(読出専用メモリ)103、RAM(主記憶装置)105、バス107、I/F(入出力インタフェース)109、入力装置111、表示装置113、外部記憶装置115、GPS受信機117などからなるハードウェアと、ROM103に予め記録された専用の制御プログラム(ソフトウェア)とが協働することによって図1に示した各部10乃至80の機能を実現する。
【0056】
具体的には、GPS受信機117が図1に示すGPS受信部10に対応し、入力装置111が入力操作部40に対応し、表示装置113が位置表示部80に対応する。そして、CPU101、CLC102、ROM103、RAM105、バス107、I/F109、外部記憶装置115およびROM103に予め記録された専用の制御プログラム(ソフトウェア)によって図1に示す位置算定部20、位置記憶部30、移動判断部50、位置決定部60、移動軌跡決定部70が実現される。なお、前記各部10乃至80は1つの筐体に一体的に組み込まれたものであっても良いし、入力操作部40や位置表示部80などが本体と別体になったものであっても良い。
【0057】
次に、このような構成をした本発明の移動体位置決定装置100による移動体位置決定方法を、主に図3のフローチャートを参照しながら説明する。図示するように、先ずこの移動体位置決定装置100は、電源投入後の所定のシステムチェックが終了したならば、最初のステップS100に移行してGPS信号の受信処理を実行して次のステップS200に移行する。
【0058】
ステップS200では、最初のステップS100で受信したGPS信号に基づいて移動体の現在位置を一定時間間隔ごとに計算により求め、次のステップS300に移行する。ステップS300では、ステップS200で算定した移動体の現在位置情報を所定時間、所定数記憶して次のステップS400に移行する。ステップS400では、ステップS300で記憶した複数の現在位置情報に基づいて移動体の移動を判断する。
【0059】
図4は、このステップS400における判断処理の流れを示したフローである。図示するように、最初のステップ402では受信したGPS信号からその時間帯における水平成分の位置精度劣化度であるHDOPを算定する。所定時間間隔ごとに算定される移動体の現在位置に関する位置情報は、GPS衛星の天空上での分散状態でも異なることから、以下の数式1で示される分散をもっているからである。
【数1】

ここで、x(x=x、x、x…、x)はN(μ、σ)、μはサンプル値、σは標準偏差値である。
上式1の対数をとると、以下の数式2となる。
【数2】

この数式2から、μ(サンプル値)、σ(標準偏差値)は以下の数式3のようになる
【数3】

従って、GPS衛星の分散状態をHDOPで表すと、σがHDOPと比例関係にあるからσは、以下の数式4のようになる。
【数4】

【0060】
図5は、移動体が停止している状態で一定時間間隔ごとに算定された複数の現在位置(緯度、経度)の集合と、HDOPとの関係を示したものである。同図(A)に示すように、HDOPが小さい(「1.0」,「1.1」,「1.3」)ときは移動体の算定位置の集合の広がり具合(バラツキ)が小さいが、同図(2)から(4)に示すように、HDOPが大きくなるに従って徐々に移動体の現在算定位置の集合のバラツキが大きくなっていることを示している。
【0061】
図4のフローに戻り、ステップS402においてHDOPの算定処理が行われたならば、次のステップS404に移行して最尤法(Maximum likelihood estimation)による集合の停止半径の決定を行って次のステップS404に移行する。すなわち、前記のように移動体が停止している状態であってもHDOPの値によって算定位置の集合のバラツキが大きく異なることから、HDOPの値に基づいて算定位置の集合の中心とその中心からの標準偏差値から停止半径を決定する。この結果、図6(A)に示すようにHDOPが小さいときには停止半径は小さくなり、図6(B)に示すようにHDOPが大きいときには停止半径は大きくなる。なお、この算定位置の頻度は、一般にHDOPの値にかかわらず、中央部分が高く周辺部になるに従って減少するといったガウシャン分布(正規分布)となっている。
【0062】
移動体が停止している状態で一定時間間隔で算定された移動体の現在位置(緯度、経度)の集合の中心の値は、図7に示すようにΣλ・xであるから、数値計算するとHDOPの値の大小によって集合の中心からのずれが計算される。HDOPの値を考慮して集合の中心を求めると共にその中心からの標準偏差値から停止半径を決定する。図7は、所定時間内に算定された移動体の算定位置とその数との関係を示した正規分布図であり、標準偏差σ1よりも小さい標準偏差σ2のほうが停止半径を小さくできることがわかる。
【0063】
ステップS406では、停止半径が決定された後に記憶された新たな算定位置を取得して次のステップS410に移行する。
【0064】
ステップS410では、新たに取得した算定位置が停止半径を超えたか否かを判断し、越えていないと判断したとき(No)は、ステップS408に移行して移動体は移動していない、つまり停止した状態であると判断してステップS406に戻って次の新たな算定位置の取得を繰り返す。これに対し、取得した算定位置が停止半径を超えていると判断したとき(Yes)は、次のステップS412に移行して移動体は移動したと判断する。
【0065】
図3のフローに戻り、このようにステップS400において移動体の移動を判断したならば、次のステップS500に移行してその停止半径の中心(Σλ・x)を移動前の移動体の正式な位置として決定した後、次のステップS600に移行して決定したその位置を表示装置の画面上に表示する。なお、この移動体の位置表示方法としては画面上に表示された航空写真上に移動体の現在位置を示す点やマークなどを重ねて記すことで表示する方法の他、縦軸に経度または緯度、横軸に緯度または経度が記された画面上に同じく移動体の現在位置を示す点やマークなどを記す方法でも良い。
【0066】
このようにして順次決定される停止半径の中心を移動体の代表的な決定位置として順に表示した後、次のステップS700に移行し、これらの代表的な決定位置に近似となるように最小二乗近似した移動体の移動軌跡を求める。ここで、移動体の移動軌跡である地表面は回転随円体であるが、水平投影位置と考え、移動体の近傍においては2次平面と考える。この2次平面をx、yとしてxyの多項式で以下の式(1)、(2)の如く近似する。
x=f(y)=a+ay+a+a…(1)
y=g(y)=b+bx+b+b…(2)
そして、移動体の決定位置Pをxy平面で示すと例えば図8のようになる。
【0067】
これらの移動体の決定位置Pが任意のn個時間と共に変化すると、n+1の点はどこになるのか2つの3次多項式を用いてその方向を求めるべく、その座標をx、yとすると、方向θは、
θ=θx=π/2−θyとなる。
ここで、θx=Tan−1(x′)
θy=Tan−1(y′)
かつ、x´=f′(x)=a+2a+3a
x´=g′(y)=b+2b+3b
【数5】

そして、任意n個を7として計算すると以下のようになる。
【0068】
図9乃至図11は、n=7として7個の時間順に得られた位置情報からその軌跡はどのようなものとなるか、また次はどのように進むのかを予測(移動予測方向)した例である。x、yの7つの値(P0、P1、P2、P3、P4、P5、P6)をそれぞれ図9に示すような場合に3次曲線で軌跡を示すと、図10および図11に示すようにカーブを描く軌跡となる。なお、図10および図11は、経度Yおよび緯度Xに対応する横軸および縦軸を入れ替えて表示したものである。
【0069】
このように本発明の移動体位置決定装置100によれば、移動体の移動の判断および位置決めを適切に行うことができるため、正確な地図データがない場合であってもGPS信号による移動体の位置決めを正確に行うことができる。この結果、ベクトルデータなどの高価な地図データを用いることなく航空写真などの安価な地図データでも信頼性の高いナビゲーションシステムを容易に構築できる。
【0070】
また、加速度センサやジャイロスコープなどの専用のセンサ(ハードウェア)を用いることなくソフトウェア上でGPS信号による移動体の位置を正確に決定することが可能となるため、コストの大幅な削減や故障による信頼性の低下を防止できる。
【0071】
また、移動体の移動、停止を連続して判断できると共にその移動軌跡を記録することができるため、移動体が移動してきた軌跡を把握できると共に、その移動体の移動方向や速度などを予測することが可能となる。
【0072】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る移動体位置決定装置100の第2の実施の形態について説明する。本実施形態に係る移動体位置決定装置100は、図12に示すように前記第1の実施形態と同様、GPS受信部10と、位置算定部20と、位置記憶部30と、入力操作部40と、移動判断部50と、位置決定部60と、移動軌跡決定部70と、位置表示部80といった基本構成に、画像取得部90を加えた構成となっている。なお、本実施の形態でも、自動車や船舶などのように人間が搭乗して移動するものは勿論、人間が搭乗せず遠隔操作によって移動するリモコンカーや飛行機、さらには人間や動物などのように本発明装置100を直接携帯して移動可能なすべてのものを移動体と称する。
【0073】
ここで、GPS受信部10、位置算定部20、位置記憶部30、入力操作部40、移動判断部50、位置決定部60、移動軌跡決定部70、位置表示部80については前記実施の形態と同様の構成および機能を有するため、その説明は割愛する。そして、本実施形態で新たに備わった画像取得部90は、電源投入後は常時移動体の進行方向前方の画像を取得して所定時間記憶し、移動判断部50からの要求に応じて取得した移動体前方の画像を移動判断部50に出力する機能を提供する。
【0074】
そして、これらの機能を有する移動体位置決定装置100も、図13に示すような電子計算機(コンピュータ:情報処理システム)から構成されており、CPU(演算装置)101、CLC(クロック)102、ROM(読出専用メモリ)103、RAM(主記憶装置)105、バス107、I/F(入出力インタフェース)109、入力装置111、表示装置113、外部記憶装置115、GPS受信機117などにCCDカメラ119を加えたハードウェアと、ROM103に予め記録された専用の制御プログラム(画像処理プログラムを含むソフトウェア)とが協働することによって図12に示したような各部10乃至90の機能を実現する。具体的には、CCDカメラ119が図12に示す画像取得部90に対応する。
【0075】
そして、このような構成をした本実施の形態に係る移動体位置決定方法にあっては、その主な処理の流れは前記第1の実施形態で説明した図3のフローチャートと同様であるが、図3のフローチャートにおけるステップS400の移動体の移動判断処理ステップが前記第1の実施形態と異なる。
【0076】
すなわち、図14に示すように先ずこの移動体位置決定装置100は、最初のステップ402では受信したGPS信号からその時間帯における水平成分の位置精度劣化度であるHDOPを算定したならば、次のステップS404に移行してHDOPに基づく最尤法による停止半径を決定して次のステップS407に移行する。
【0077】
ステップS407では、新たな算定位置とその算定時の移動体進行方向前方の画像情報を同時に取得して次のステップS410に移行する。
【0078】
ステップS410では、新たに取得した算定位置が停止半径を超えたか否かを判断し、越えていないと判断したとき(No)は、ステップS408に移行して移動体は移動していない、つまり停止した状態であると判断してステップS406に戻って次の新たな算定位置の取得を繰り返す。これに対し、取得した算定位置が停止半径を超えていると判断したとき(Yes)は、次のステップS411に移行する。
【0079】
ステップS411では、その算定位置と共に取得した画像情報と、その直前に取得した算定位置と共に取得した画像情報との差分を検証して画像情報から移動体の移動方向を決定して次のステップS413に移行する。
【0080】
ステップS413では、ステップS410で停止半径を超えたと判断された算定位置の方向と、前ステップS411で画像情報から得られた移動体の移動方向とを比較し、両者の方向が一致するか否かを判断する。
【0081】
この結果、両者の方向が一致しないと判断したとき(No)は、ステップS408に戻ることになるが、両者の方向が一致すると判断したとき(Yes)は、ステップS415に移行して移動体が一致した方向へ移動したと判断して処理を終了する。なお、前記ステップ411においてその算定位置と共に取得した画像情報とその直前に取得した算定位置と共に取得した画像情報との差分がない場合は、両者の方向が一致しないと判断してステップS408に戻る。
【0082】
このように移動体の算定位置が停止半径を超えると共に、その移動方向が画像情報から得られる移動方向と一致した場合、算定位置の値をφ(t)として示せば、次式により表すことができる。ここで、tはt、t、t、t…と増加していくものとする。
φ(t)=xt+x
最小二乗法で3次関数に近似すると、
φ(t)=x+tx+t+t
で表されるから、min f(x)は、
【数6】

となる。ここでJは、以下の通りである。
【数7】

【0083】
そして、前記の式を図15に示す値で計算すると、図16に示すような軌跡が得られ、移動体はこの3次式に示す移動軌跡を示すことになる。従って、カメラ画像からスタート地点とする軌跡を示す3次近似関数で表すことができる。この曲線を表示装置113に表示して移動体の現在の軌跡とする。ここで、最小二乗法でn次多項式に近似すること、得られた多項式関数にはx、y平面において、x≦x≦x、y≦y≦yの変位領域に使うことができない。それはスタート時、停止時のx、yの値であるからである。
【0084】
このように本実施の形態では、移動体前方をカメラで撮影してその画像を取得し、その画像から得られる情報(右移動、左移動、前進移動、後退移動)も考慮して移動体の移動を判断するようにしたため、移動体の移動・停止をより正確に判断できると共に、その移動方向も正確に判断することができる。
【0085】
また、本実施の形態で用いる画像取得部90によって稼働中は移動体の前方(進行方向)を連続的に撮影し、撮影した画像をHDDなどからなる大記憶容量の記憶装置115に保存するようにすれば、この画像取得部90をそのまま運転記録装置(ドライブレコーダー)などとして利用することも可能となる。
【0086】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る移動体位置決定装置100の第3の実施の形態について説明する。
本実施形態は、前述した移動体位置決定装置100にさらに通信機能を備えてこれを移動局200とし、この移動局200を図示しない基地局から通信回線(ネットワーク)を介して地図データおよび経路案内データなどを配信するようにしたものである。
【0087】
図17は、この移動局200のハードウェア構成図であり、CPU(演算装置)101、CLC(クロック)102、ROM(読出専用メモリ)103、RAM(主記憶装置)105、バス107、I/F(入出力インタフェース)109、入力装置111、表示装置113、外部記憶装置115、GPS受信機117、CCDカメラ119などにさらに通信装置121および音声装置123を加えたハードウェアと、ROM103に予め記録された専用の制御プログラム(ソフトウェア)とが協働することによって経路案内機能(ナビゲーション機能)を備えた高精度な移動局としての機能を実現する。
【0088】
そして、このような構成をした本実施の形態に係る移動局200は、基地局と通信可能になった状態で利用者が入力装置111などから目的地を入力すると、現在地から目的地を含む地図データが基地局から配信されると共に、その地図画面上に現在位置から目的地までの経由地を含む経路が配信される。
【0089】
すると、この移動局200は、前記実施の形態で説明したように受信したGPS信号に基づき現在位置を決定すると共にその移動を判断する。移動していると判断したならば、表示装置113の表示画面上に現在位置と移動方向および最初の経由地の方向を表示する。そして、この移動局200は、常時次の経由地までの角度と距離を表示すると共に音声装置123による音声によっても案内する。これによって、例えば利用者は車の運転中に表示画面を見ることなく所定の経由地を経由しつつ目的地まで最短かつ安全に到達することができる。
【0090】
また、この移動局200の表示装置113が大きな表示画面と優れた表示能力を有している場合には、例えば図18に示すように現在地から目的地までを含む広範囲の地図(画面上方が北)を表示し、画面右上の小窓に現在位置の拡大図を表示し、画面左下の小窓に次の経由地の拡大図を表示するようにすれば、よりスムーズに目的地まで移動することが可能となる。なお、基地局から配信するデータには、地図データや経路案内データの他に道路情報や渋滞情報などを含んでいても良い。
【符号の説明】
【0091】
10…GPS受信部
20…位置算定部
30…位置記憶部
40…入力操作部
50…移動判断部
60…位置決定部
70…移動軌跡決定部
80…位置表示部
90…画像取得部
100…移動体位置決定装置
101…演算装置(CPU)
102…クロック(CLC)
103…読出専用メモリ(ROM)
105…主記憶装置(RAM)
107…バス
109…入出力インターフェース
111…入力装置
113…表示装置
115…外部記憶装置
117…GPS受信機
119…CCDカメラ
121…通信装置
123…音声装置
200…移動局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工衛星から発信されるGPS信号に基づいて移動体の現在位置を決定する移動体位置決定装置であって、
前記GPS信号を連続的に受信するGPS信号受信手段と、
当該GPS信号受信手段で受信したGPS信号に基づいて所定時間ごとに前記移動体の位置を算定する位置算定手段と、
当該位置算定手段で算定された所定時間ごとの前記移動体の算定位置を記憶する算定位置記憶手段と、
当該算定位置記憶手段で記憶された前記移動体の算定位置同士の広がり具合に基づいて前記移動体の停止または移動を判断する移動判断手段と、
当該移動判断手段で前記移動体が移動したと判断したときに前記移動体の位置を決定する位置決定手段と、
当該位置決定手段で決定された前記移動体の位置を表示する位置表示手段と、を備えたことを特徴とする移動体位置決定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体位置決定装置において、
前記移動判断手段は、
前記算定位置記憶手段で記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径内であるときは前記移動体が停止していると判断し、
前記算定位置記憶手段で記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径を外れたときに前記移動体が移動したと判断することを特徴とする移動体位置決定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の移動体位置決定装置において、
前記移動判断手段は、
前記算定位置記憶手段で前記移動体が移動したと判断したときは、その判断の基準となった移動体の算定位置を前記基準算定位置として前記移動体の移動または停止を順に判断することを特徴とする移動体位置決定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の移動体位置決定装置において、
前記移動判断手段における前記基準算定位置から所定半径は、前記GPS信号受信の際のHDOPの値に基づいて決定することを特徴とする移動体位置決定装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の移動体位置決定装置において、
前記移動判断手段における前記基準算定位置から所定半径は、最尤法(Maximum likelihood estimation)により決定することを特徴とする移動体位置決定装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の移動体位置決定装置において、
前記位置決定手段で決定された前記移動体の位置を記録し、記録された複数の位置に基づいて前記移動体が移動した軌跡を決定する移動軌跡決定手段をさらに備えたことを特徴とする移動体位置決定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の移動体位置決定装置において、
前記移動軌跡決定手段は、最小二乗近似により前記移動体が移動した移動軌跡を決定することを特徴とする移動体位置決定装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の移動体位置決定装置において、
進行方向を撮影する撮影手段を備え、
前記移動判断手段は、前記撮影手段で撮影された画像情報に基づいて前記移動体の移動をおよび方向を判断することを特徴とする移動体位置決定装置。
【請求項9】
人工衛星から発信されるGPS信号に基づいて移動体の現在位置を決定する移動体位置決定プログラムであって、
コンピュータを、
前記GPS信号を連続的に受信するGPS信号受信手段と、
当該GPS信号受信手段で受信したGPS信号に基づいて所定時間ごとに前記移動体の位置を算定する位置算定手段と、
当該位置算定手段で算定された所定時間ごとの前記移動体の算定位置を記憶する算定位置記憶手段と、
当該算定位置記憶手段で記憶された前記移動体の算定位置同士の広がり具合に基づいて前記移動体の停止または移動を判断する移動判断手段と、
当該移動判断手段で前記移動体が移動したと判断したときに前記移動体の位置を決定する位置決定手段と、
当該位置決定手段で決定された前記移動体の位置を表示する位置表示手段と、して機能させることを特徴とする移動体位置決定プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の移動体位置決定プログラムにおいて、
前記コンピュータによって機能される移動判断手段を、
前記算定位置記憶手段で記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径内であるときは前記移動体が停止していると判断し、
前記算定位置記憶手段で記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径を外れたときに前記移動体が移動したと判断するようにさらに機能させることを特徴とする移動体位置決定プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の移動体位置決定プログラムにおいて、
前記コンピュータによって機能される移動判断手段を、
前記算定位置記憶手段で前記移動体が移動したと判断したときは、その判断の基準となった移動体の算定位置を前記基準算定位置として前記移動体の移動または停止を順に判断するように機能させることを特徴とする移動体位置決定プログラム。
【請求項12】
請求項9または10に記載の移動体位置決定プログラムにおいて、
前記コンピュータによって機能される移動判断手段における前記基準算定位置から所定半径は、前記GPS信号受信の際のHDOPの値に基づいて決定するように機能させることを特徴とする移動体位置決定プログラム。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれかに記載の移動体位置決定プログラムにおいて、
前記コンピュータによって機能される移動判断手段における前記基準算定位置から所定半径は、最尤法(Maximum likelihood estimation)により決定することを特徴とする移動体位置決定プログラム。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれかに記載の移動体位置決定プログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記位置決定手段で決定された前記移動体の位置を記録し、記録された複数の位置に基づいて前記移動体が移動した軌跡を決定する移動軌跡決定手段としてさらに機能させることを特徴とする移動体位置決定プログラム。
【請求項15】
請求項14に記載の移動体位置決定プログラムにおいて、
前記コンピュータによって機能される移動軌跡決定手段は、最小二乗近似により前記移動体が移動した軌跡を決定することを特徴とする移動体位置決定プログラム。
【請求項16】
請求項9乃至15のいずれかに記載の移動体位置決定プログラムにおいて、
前記コンピュータを、
さらに進行方向を撮影する撮影手段として機能させると共に、
前記移動判断手段は、前記撮影手段で撮影された画像情報に基づいて前記移動体の移動をおよび方向を判断することを特徴とする移動体位置決定プログラム。
【請求項17】
人工衛星から発信されるGPS信号に基づいて移動体の現在位置を決定する移動体位置決め方法であって、
前記GPS信号を連続的に受信するGPS信号受信ステップと、
当該GPS信号受信ステップで受信したGPS信号に基づいて所定時間ごとに前記移動体の位置を算定する位置算定ステップと、
当該位置算定ステップで算定された所定時間ごとの前記移動体の算定位置を記憶する算定位置記憶ステップと、
当該算定位置記憶ステップで記憶された前記移動体の算定位置同士の広がり具合に基づいて前記移動体の停止または移動を判断する移動判断ステップと、
当該移動判断ステップで前記移動体が移動したと判断したときに前記移動体の位置を決定する位置決定ステップと、
当該位置決定ステップで決定された前記移動体の位置を表示する位置表示ステップと、を含むことを特徴とする移動体位置決め方法。
【請求項18】
請求項17に記載の移動体位置決め方法において、
前記移動判断ステップは、
前記算定位置記憶ステップで記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径内であるときは前記移動体が停止していると判断し、
前記算定位置記憶ステップで記憶された所定の算定位置を基準算定位置とし、当該基準算定位置を記憶した後に記憶される他の算定位置が前記基準算定位置から所定半径を外れたときに前記移動体が移動したと判断することを特徴とする移動体位置決め方法。
【請求項19】
請求項18に記載の移動体位置決め方法において、
前記移動判断ステップは、
前記算定位置記憶ステップで前記移動体が移動したと判断したときは、その判断の基準となった移動体の算定位置を前記基準算定位置として前記移動体の移動または停止を順に判断することを特徴とする移動体位置決め方法。
【請求項20】
請求項18または19に記載の移動体位置決め方法において、
前記移動判断ステップにおける前記基準算定位置から所定半径は、前記GPS信号受信の際のHDOPの値に基づいて決定することを特徴とする移動体位置決め方法。
【請求項21】
請求項18乃至20のいずれかに記載の移動体位置決め方法において、
前記移動判断ステップにおける前記基準算定位置から所定半径は、最尤法(Maximum likelihood estimation)により決定することを特徴とする移動体位置決め方法。
【請求項22】
請求項17乃至21のいずれかに記載の移動体位置決め方法において、
前記位置決定ステップで決定された前記移動体の位置を記録し、記録された複数の位置に基づいて前記移動体が移動した軌跡を決定する移動軌跡決定ステップをさらに含むことを特徴とする移動体位置決め方法。
【請求項23】
請求項22に記載の移動体位置決め方法において、
前記移動軌跡決定ステップは、最小二乗近似により前記移動体が移動した軌跡を決定することを特徴とする移動体位置決め方法。
【請求項24】
請求項17乃至23のいずれかに記載の移動体位置決め方法において、
進行方向を撮影する撮影ステップを備え、
前記移動判断ステップは、前記撮影ステップで撮影された画像情報に基づいて前記移動体の移動をおよび方向を判断することを特徴とする移動体位置決め方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−177681(P2012−177681A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15011(P2012−15011)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(595167292)株式会社デージーエス・コンピュータ (18)
【Fターム(参考)】