説明

ICタグ及びその製造方法

【課題】プラスチック成形品との接合性に優れ、特にインサート成形によりプラスチック成形品の表面部分に、デラミネーションを生じることなく強固に固定することが可能なICタグを提供する。
【解決手段】少なくとも一方の表面が熱接着性樹脂からなる熱接着性面9となっている樹脂基板1と、樹脂基板1の熱接着性面9に、ICチップ5と金属薄膜からなるアンテナ3とが接着固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品情報が記憶されたICタグ及びその製造方法に関するものであり、さらには、該ICタグを備えたプラスチック成形品にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の製品には、製造年月日、製造・販売者名、使用期限などの製品情報を表示したバーコードが広く利用されている。ところで、バーコードは、コード化された情報をリーダーで読取るため、バーコードの印刷面を平面とする必要があり、このため、ボトルやキャップなどの包装材料の分野では、バーコードの印刷面が制限され、また、コード化できる情報量も限られたものとなってしまうという問題がある。
【0003】
そこで、最近では、ICタグを用いた情報表示の技術が利用されるようになってきた。ICタグとは、RFID(Radio Frequency Identification)とも呼ばれるものであり、所定の情報が記憶されたICチップを無線アンテナとともに樹脂やガラス等の誘電体材料に埋め込んでタグ(荷札)状に形成した超小型の通信端末である。このようなICタグは、無線通信により、ICチップに記憶された製品情報を読取るものであり、例えばICチップのメモリには、数百バイトのデータを記録することができ、多くの製品情報を記録できるという利点がある。また、ICタグは、非接触で記録された情報を読取ることができ、接触による摩耗などの問題もなく、さらには、商品の形態に併せた形状に加工したり、小型化、薄型化なども可能であるという利点がある。
【0004】
例えば、特許文献1及び2には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂フィルムにICチップ及びアンテナを設けたICタグが開示されている。
また、特許文献3には、頂板部にICタグが埋め込まれたキャップが開示されている。
【特許文献1】特開2002−236896号公報
【特許文献2】特開2006−48016号公報
【特許文献3】特開2005−321935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されているような従来公知のICタグは、これをプラスチック成形品の所定の箇所に設けた場合、プラスチック表面から剥離し易いという欠点があった。また、特許文献3に開示されているキャップは、ICタグを所定の型内にインサート部材として配置し、この状態でインサート成形することにより作製されるが、特許文献1や2に記載されているようなICタグを用いた場合には、ICチップ等を保持している熱可塑性樹脂の面とキャップを形成する樹脂とのあいだでデラミネーションを生じやすいという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、プラスチック成形品との接合性に優れ、特にインサート成形によりプラスチック成形品の表面部分に、デラミネーションを生じることなく強固に固定することが可能なICタグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、少なくとも一方の表面が熱接着性樹脂からなる熱接着性面となっている樹脂基板と、該樹脂基板の熱接着性面に、ICチップと金属薄膜からなるアンテナとが接着固定されていることを特徴とするICタグが提供される。
【0008】
本発明のICタグにおいては、
(1)前記熱接着性樹脂が、ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性した酸変性オレフィン樹脂であること、
(2)前記樹脂基板が、熱接着性樹脂層とオレフィン系樹脂層とからなる積層構造を有していること、
が好ましい。
【0009】
本発明によれば、また、前記ICタグが、前記熱接着性面を介して表面に接着固定されていることを特徴とするプラスチック成形品が提供される。
かかるプラスチック成形品においては、
(3)前記ICタグをインサート部材としてのインサート成形により形成されたものであること、
(4)前記ICタグをヒートシール部材としてのヒートシール成形により形成されたものであること、
(5)前記プラスチック成形品が、オレフィン系樹脂からなるキャップであり、該キャップの頂板部の内面又は外面に前記ICタグが固定されていること、
(6)前記プラスチック成形品が、オレフィン系樹脂からなるキャップの中栓であり、該中栓の中央部分には凹部が形成されており、ICタグが該中栓の凹部に対面するように前記ICタグが固定されていること、
が好適である。
【0010】
本発明によれば、さらに、前記オレフィン系樹脂製キャップと、プラスチック容器と、該プラスチック容器の口部に嵌めこまれて固定されたプラスチック製中栓とからなり、該中栓の中央部分には凹部が形成されており、該キャップは、ICタグが該中栓の凹部に対面するようにプラスチック容器の口部に装着されている包装容器が提供される。
【0011】
本発明によれば、さらに、前記オレフィン系樹脂製キャップと、プラスチック容器と、該プラスチック容器の口部に嵌めこまれて固定されたプラスチック製中栓とからなり、該中栓の中央部分には凹部が形成されており、該キャップ中栓は、ICタグが該中栓の凹部に対面するようにプラスチック容器の口部に装着されている包装容器が提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、
少なくとも一方の表面が熱接着性樹脂からなる熱接着性面となっている樹脂基板を用意し、
前記樹脂基板の熱接着性面に金属層を形成し、
前記樹脂基板上に形成された前記金属層を、エッチングによりアンテナ形状に成形して金属薄膜からなるアンテナを形成し、
次いで、前記アンテナと導通するように、ICチップを、前記樹脂基板の露出した熱接着性面に熱接着して固定する、
ことを特徴とするICタグの製造方法が提供される。
かかる製造方法においては、
(7)前記金属層を、前記樹脂基板の熱接着性面に熱接着することにより形成すること、
が好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のICタグは、樹脂基板が熱接着性樹脂(即ち、熱接着性を有する接着材樹脂)からなる熱接着性面を有しており、ICチップ及びアンテナは、この熱接着性面に接着固定されている。従って、このICタグは、この熱接着性面を利用して、各種プラスチック成形品に強固に接着固定することができる。特に、このICタグをインサート部材としてのインサート成形により、キャップなどのプラスチック成形品を成形した場合においても、プラスチック成形品を構成する樹脂基材とICタグの樹脂基板との間にデラミネーションなどを生じることなく、ICタグを、プラスチック成形品にしっかりと固定することができる。例えば、ICタグを保持している樹脂基板として、単なるヒートシール性樹脂(例えばポリエチレンやポリエステルなど)を用いた場合には、樹脂基板とプラスチック成形品を構成する樹脂基材とがしっかりと熱溶着せず、この結果、両者の間でデラミネーションを生じてしまうという不都合を生じるが、本発明のICタグでは、このような不都合は全く生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<ICタグ>
本発明のICタグの概略断面図を示す図1において、全体として10で示すこのICタグは、樹脂基板1を備えており、この樹脂基板1の表面に金属製アンテナ3とICチップ5が固定されている。
【0015】
図1から理解されるように、樹脂基板1は、基材層1aと接着材樹脂層1bとからなっている。
【0016】
基材層1aは、一般に、このICタグ10が取り付けられるプラスチック成形品を構成する樹脂基材と同様の樹脂からなるものであり、例えばポリプロピレン製のキャップにICタグ10を設ける場合には、ポリプロピレンにより基材1aを形成するのがよい。
【0017】
接着材樹脂層1bを形成する接着材樹脂は、金属製アンテナ3及びICタグ10が取り付けられるプラスチック成形品に対して熱接着性を有するものであり、例えば、ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性した酸変性オレフィン樹脂が使用される。かかるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ(4−メチル−ペンテン)などのα−オレフィンの重合体、及びα−オレフィン同士のブロック共重合体(例えばエチレン−プロピレン共重合体)などを例示することができ、中でもポリエチレン、特に線状低密度ポリエチレンが好適である。また、これらオレフィン樹脂のグラフト変性に使用するカルボン酸またはその誘導体としては、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸、及びこれら不飽和カルボン酸の酸無水物、イミド、エステル、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイミド、マレイン酸モノメチル、グリシジルマレートなどを例示することができる。
【0018】
また、上記の接着材樹脂は、接着性の観点から、カルボニル基濃度が1乃至700meq/g程度となるようにグラフト変性されていることが好ましく、また、その分子量は、フィルムを形成するに足る程度の範囲にあればよい。
【0019】
アンテナ3は、通常、アルミニウム、銅、銀、金などの低抵抗金属の薄膜(厚みが5乃至50μm程度)からなるものであり、所定のパターン形状を有しており、信号の送受信に使用される。
【0020】
ICチップ5は、フリップチップ実装などにより、上記のアンテナ3に導通するように設けられるものであり、このICタグ10が取り付けられるプラスチック成形品に関する情報が記憶されるものであり、上記のアンテナ3を介しての信号の送信により、所定の情報が記憶され、またアンテナ3を介してICタグ10に記憶された情報が読み取られるものである。
【0021】
また、図1に示されているように、上記のICチップ5は、一般に、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂などの封止剤7により、封止されて保護されている。
【0022】
さらに、図1の例において、樹脂基板1は、基材樹脂層1aと接着材樹脂層1bとからなる積層構造を有しているが、アンテナ3及びICチップ5が接着材樹脂層1bの面に形成されている限り、樹脂基板1の構造は制限されるものではなく、例えば、基材樹脂層1aが基材樹脂の層とエチレンビニルアルコール共重合体などのガスバリア性樹脂層との積層構造を有するものであってもよいし、また、基材樹脂層1aが設けられておらず、接着材樹脂層1b単独で樹脂基板1が形成されていてもよい。
【0023】
また、樹脂基板1の厚みは、その表面にアンテナ3を形成し且つICチップを実装する作業を行い得る程度の強度を示すようなものであればよいが、必要以上に厚くすると、プラスチック成形品に設けたときに、その外観を損ねたり、該プラスチック成形品の特性低下を引き起こしたり、場合によっては、インサート成形などによるプラスチック成形品の成形が困難となってしまうおそれがある。従って、このICタグ10を装着するプラスチック成形品の種類や機能に応じて、適度な強度が保持される程度の厚みに樹脂基板1の厚みを設定するのがよい。例えば、プラスチック成形品がキャップである場合の樹脂基板1の厚みは、10乃至1000μm程度であるのがよい。また、接着材樹脂層1bの厚みは、アンテナ3やプラスチック成形品に対して優れた熱接着性を確保できる程度の厚みがあればよく、少なくとも5μm以上であればよい。
【0024】
さらに、図1から理解されるように、上記のようなICタグ10においては、アンテナ3やICタグ5で覆われておらず、接着材樹脂層1bが露出した表面(図1において9で示されている)を有している。即ち、この露出面9が熱接着表面となって、ICタグ10を各種プラスチック成形品に接着固定することができるのである。
【0025】
<ICタグの製造>
上記のようなICタグ10は、以下のようにして製造することができる。
先ず、上述した樹脂基板1のシートを用意する。この樹脂基板1のシートは、例えば、共押出成形(或いは押出成形)によって容易に得ることができる。
【0026】
このようにして得られる樹脂基板1のシートの接着材層1bの表面に、金属層を形成する。例えば図2に示すように、上記シート1及び金属箔20を、それぞれローラ21、23に巻き取り保持しておき、次いでこれらを引き出しながら一対の加熱ローラ25a,25b間に通して、金属箔20を、シート1の接着材樹脂層1bの表面に熱接着させることにより、連続的に金属層20aを形成することができる。
【0027】
上記のようにして金属箔20からなる金属層20aを形成した後は、エッチング加工により、所定のアンテナパターン形状に金属層20aを加工することにより、連続したシート1上に、多数のアンテナ3を形成する。
【0028】
このようなエッチング加工は、定法により行うことができる。例えば、金属層20aの全面にレジストを塗布し、次いで所定のパターンのマスクを介して光照射して露光を行い、光照射された部分のレジストを硬化させる。この後、酸等のエッチング液を流し、光が照射されていない部分の金属層20aを除去し、さらに、適当な洗浄液を用いて残存する硬化したレジストを除去し、これにより、シート1上に所定のパターン形状を有する多数のアンテナ3を形成することができる。
【0029】
このようにして形成されたアンテナ3の間に露出した熱接着性面9の所定位置に、アンテナ3と導通するように、それぞれ、ICチップ5をフリップチップ実装し且つICチップ5の底部を埋め込むようにして液状の硬化性樹脂を充填し、該硬化性樹脂を硬化させることにより、複数のICチップ5をシート1上にしっかりと固定することができる。
【0030】
さらに、ICチップ5の実装が行われた後は、所定の大きさにシート1を打ち抜くことにより、目的とする本発明のICタグ10を得ることができる。
【0031】
尚、上述した例では、アンテナの形成に用いられる金属層20aを金属箔20の貼り付けにより形成しているが、金属層20aの形成は、このような方法に限定されるものではなく、例えば蒸着により金属層20aを形成することができる。但し、蒸着による場合は、金属層20aの厚みが制限されたり、また連続生産性に乏しいという問題があり、一般的には、金属箔20を用いて金属層20aを形成することが好適である。
【0032】
<プラスチック成形品>
上記のようにして製造されるICタグ10は、各種プラスチック成形品に装着し、アンテナ3を介しての送信により、所定の製品情報をICチップ5に入力して使用に供される。即ち、ICチップ5に記憶された製品情報は、所定のリーダを用いて、アンテナ3を介しての信号を受信することにより読み取られる。
【0033】
このようなプラスチック成形品は、ICタグ10を固定することが可能である限り、特に限定されるものではないが、特に包装材料の分野において、包装された内容物の情報の記憶に好適に利用され、特にキャップに固定されて使用されるのが最も好適である。また、ICタグ10のプラスチック成形品への固定は、該ICタグ10の熱接着性面9をプラスチック成形品表面の所定位置に加熱圧着することにより行うこともできるが、特にインサート成形により、プラスチック成形品の成形と同時にICタグ10の固定を行うことが、生産性の点で最も好適である。
【0034】
図3は、ICタグ10をプラスチックキャップ(全体として30で示されている)に適用した例を示す概略断面図である。
【0035】
図3において、このプラスチックキャップ30は、天板31と、天板31の周縁部から垂下している筒状側壁(スカート部)33とを有しており、筒状側壁33の内面には、螺条35が形成されており、この螺条35を利用しての螺子係合により、プラスチックボトル等の容器の口部或いは容器口部に嵌合固定されたキャップ本体にキャップ30を着脱自在に装着することができる。
【0036】
また、図3の例では示されていないが、筒状側壁5の下端には、破断可能なブリッジを介して開封履歴明示バンド(TEバンド)を設けることも可能であり、このようなTEバンドを設けることにより、容器内の内容物に対する品質保証機能を持たせることができる。
【0037】
また、天板31の内面には、必要により、容器口部の上端に密着するライナー材を設けることもできるし、或いはさらに、このキャップ30を容器口部に螺子固定したときに、容器口部の内面に密着するようなシールリングを形成しておくことにより、キャップ30のシール性を高めることも可能である。
【0038】
かかるキャップ30においては、天板30の外面側に前述した本発明のICタグ10が固定されている。即ち、このICタグ10は、その熱接着性面9での熱溶着により、天板30にがっちりと固定されている。
【0039】
かかる天板30の固定は、キャップ成形用の型内にICタグ10をインサート部材として配置し、この状態でキャップ30を形成する熱可塑性樹脂を射出することにより、キャップ30の成形と同時に行うことができる。
【0040】
尚、キャップ30を形成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂や、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、ABS樹脂或いはポリカーボネート等が使用されるが、最も一般的には、ポリプロピレン或いはエチレン−プロピレン共重合体などのプロピレン系樹脂が使用される。
【0041】
本発明では、先にも述べたように、ICタグ10におけるアンテナ3やICチップ5が接着材樹脂層1b上に形成され、且つこのような接着材樹脂が露出した熱接着性面でプラスチックキャップ30とICタグ10とが熱溶着してしっかりと接合しているため、例えばプロピレン系樹脂を用いてキャップ30をインサート成形により成形した場合においても、ICタグ30(の熱接着性面9)とキャップ30との界面でデラミネーションを確実に防止することができる。例えば、後述する比較例からも明らかなように、ポリエチレンテレフタレートの如きヒートシール樹脂からなるシート上にアンテナ3やICチップ5が固定されている場合には、特にインサート成形によってポリプロピレン製キャップを成形した場合には、ICタグがデラミネーションによって容易にキャップから脱落してしまう。
【0042】
また、図3の例では、ICタグ10は、天板30の外面側に固定されているが、必要により、熱接着性面9で接合されている限り、このICタグ10を天板30の内面側に設けることも可能である。
【0043】
さらに、図3には、本発明のICタグ10をプラスチックキャップの容器口部或いは該容器の口部に嵌合固定されたキャップ本体に螺子締結により装着されるキャップ30に適用した構造が示されているが、このような構造のプラスチックに適用されるものではなく、例えば、プラスチックキャップの容器口部或いは該容器の口部に嵌合固定されたキャップ本体にヒンジ連結され、旋回により開封が行われるタイプのキャップに適用し得ることは当然である。勿論、この場合においても、上記と同様のインサート成形によって連続的にキャップを成形することが好適である。
【0044】
また、図3に示されているようなキャップ30が容器口部に螺子装着されるような場合においては、例えば、図4に示すような包装容器として使用することが好適である。
【0045】
即ち、図4において、ICタグ10が固定されたキャップ30は、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル容器に代表されるプラスチック容器(図4では、口部のみが50として示され、該容器の胴部及び底部は省略されている)に螺子装着される。即ち、容器口部50の外面には、螺条50aが形成されており、この螺条50aが、キャップ30の筒状側壁33の内面に形成されている螺条35と螺子係合することにより、キャップ30は、容器口部50に固定される。
【0046】
また、このようなプラスチック容器とICタグ10を備えたキャップ30とからなる包装体においては、図4に示されているように、容器口部50にプラスチック製中栓51が嵌めこまれていることが好適である。即ち、中栓51は、凹部53を形成している筒状胴部55を備えており(該胴部55の底部は閉じられている)、該胴部55の上端部には、外方に延びている水平フランジ57が形成されており、胴部55が容器口部50内にしっかりと嵌めこまれ、その外面が容器口部50の内面と密着し、且つ水平フランジ57が容器口部50の上端面とキャップ30との間に挟持され、これにより、良好なシールが確保されている。
【0047】
一般に、容器内に各種の飲料などの液体が充填され、包装されている場合において、このような内容液の液面60がキャップ30の天板31の近傍に位置すると、このような液は誘電損失やインピーダンスの不整合を引き起こし、そのためICタグ10への情報の送受信が困難となってしまうことがある。しかるに、上記のように、凹部53を有する中栓51が設けられている構造とすることにより、ICタグ10が設けられているキャップ30の天板31と内容液の液面60との間に適度な間隔を確保することができるため、誘電損失やインピーダンスの不整合が生じてICチップ5からの情報の読み取り或いは情報の入力が阻害されるという不都合を有効に回避することができるのである。
【0048】
上記のような包装体において、内容液の取り出しは、当然、中栓51を取り外し、次いでキャップ30を開栓した後に行われることとなる。
【0049】
尚、キャップ30が容器口部50に直接螺子締結されず、例えば容器口部50に嵌合固定されたキャップ本体に螺子締結或いはヒンジ連結によりキャップ30が設けられる場合には、キャップ本体によって、必然的に、天板31と内容液との液面との間に適度な間隔が形成されるため、内容液が誘電損失やインピーダンスの不整合が引き起こされることにより送受信を阻害するという不都合は生じない。
【実施例】
【0050】
以下、次の実施例によって、本発明の優れた効果を説明する。
【0051】
(実施例1)
押出成形により、厚さ100μmの金属との熱接着性を有する変性共重合ランダムポリプロピレンで作製した樹脂基板を用意し、厚さ15μmのAl箔と樹脂基板を加熱した一対の加熱ローラにより、加圧加熱することで樹脂基板表面に金属層を形成することができた。
その後、塩化第二鉄溶液によるエッチング加工により所定のアンテナパターン形状に金属層を加工することによりアンテナを成形した。このアンテナの所定位置にICチップをフリップチップ実装した後、エポキシ樹脂により固定し所定の形状に打ち抜くことで本発明のICタグを得た。
【0052】
(実施例2)
樹脂基板として、厚さ100μmの金属との熱接着性を有する変性共重合ランダムポリエチレンを用いた以外は、実施例1と同様の方法で本発明のICタグを得た。
【0053】
(実施例3)
金型内に実施例1で作製したICタグを挿入し、その後タグ上に押出機より押し出した溶融ポリプロピレン塊を落とし込み、上型をプレスすることで成形体を得た。
その結果、キャップの頂板部外面にICタグががっちりと固定されたプラスチックキャップを得ることができ、ICタグ付きプラスチックキャップに対して、所定のデータを記録させた後、ICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
【0054】
(比較例1)
樹脂基板として、厚さ100μmの金属との熱接着性がないポリエチレンテレフタレートシートを用いて、厚さ15μmのAl箔と樹脂基板とをポリウレタン系接着剤にてドライラミネートして樹脂基板表面に金属層を形成した後、実施例1と同様にしてICタグを作成した。
そのICタグを金型内に挿入し、その後タグ上に押出機より押し出した溶融ポリプロピレン塊を落とし込み、上型をプレスすることで成形体を得たが、ICタグの樹脂基板と成形体との界面でデラミが発生し、成形体からICタグが容易に脱落した。
【0055】
(実施例4)
図5に示す中栓151を高密度ポリエチレンにより成形し、その上端円周部に実施例2で作製したICタグ200を中栓の凹部にICチップが対面するようにヒートシールにより熱溶着させ一体化し、中空部152を持つ中栓を得た。
該中栓をキャップ153に組み込み、プラスチック容器に嵌め込みICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
また、プラスチック容器中に内溶液(水)を満注充填した状態でICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
【0056】
(実施例5)
実施例1で作製したICタグ200をポリプロピレン製樹脂キャップ162(図6)の天板内面にヒートシールにより一体化させた。
その後該キャップに凹部を形成する筒状胴部を備えた中栓161を組み込み、プラスチック容器に嵌め込みICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
また、プラスチック容器中に内溶液(水)を満注充填した状態でICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
【0057】
(実施例6)
実施例1で作製したICタグを金型内にあらかじめインサートしておき、その金型内に溶融ポリプロピレン樹脂を射出するインサート成形を行うことで、キャップ天板内面にICタグ200が一体化したキャップ(図6)を得た。
その後該キャップに凹部を形成する筒状胴部を備えた中栓161を組み込み、プラスチック容器に嵌め込みICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
また、プラスチック容器中に内溶液(水)を満注充填した状態でICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
【0058】
(実施例7)
図7に示す上部に凹部を形成する筒状胴部を備えているポリプロピレン製キャップ171を成形し、その天面に実施例1で作製したICタグ200をヒートシールにより溶着一体化させることにより、中空部分172を有するキャップを得た。
その後該キャップをプラスチック容器に嵌め込みICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
また、プラスチック容器中に内溶液(水)を満注充填した状態でICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
【0059】
(実施例8)
実施例1で作製したICタグをポリプロピレン製樹脂キャップ30(図4)の天板外面にヒートシールにより一体化させた。
その後該キャップに凹部を形成する筒状胴部を備えた中栓51を組み込み、プラスチック容器に嵌め込みICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
また、プラスチック容器中に内溶液(水)を満注充填した状態でICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
【0060】
(実施例9)
実施例1で作製したICタグ金型内にあらかじめインサートしておき、その金型内に溶融ポリプロピレン樹脂を射出するインサート成形を行うことで、キャップ天板外面にICタグが一体化したキャップ(図4)を得た。
その後該キャップに凹部を形成する筒状胴部を備えた中栓51を組み込み、プラスチック容器に嵌め込みICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
また、プラスチック容器中に内溶液(水)を満注充填した状態でICタグリーダを使用して情報の読みとり書き込み試験を行ったところ、いずれも支障なく読みとり書き込みできることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のICタグの概略断面を示す図。
【図2】図1のICタグの製造工程の一工程を示す図。
【図3】図1のICタグを固定したプラスチックキャップの概略断面を示す図。
【図4】図3のプラスチックキャップを備えた包装体の一例を示す概略図。
【図5】実施例4で作製された中栓付キャップの一部断面斜視図。
【図6】実施例5及び実施例6で作製された中栓付キャップの一部断面斜視図。
【図7】実施例7で作製されたキャップの一部断面斜視図。
【符号の説明】
【0062】
1:樹脂基板
1a:基材樹脂層
1b:接着材樹脂層
3:アンテナ
5:ICチップ
9:熱接着性面
10:ICタグ
30:プラスチックキャップ
31:天板
33:筒状側壁
50:プラスチック容器口部
51:中栓
60:内容液の液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面が熱接着性樹脂からなる熱接着性面となっている樹脂基板と、該樹脂基板の熱接着性面に、ICチップと金属薄膜からなるアンテナとが接着固定されていることを特徴とするICタグ。
【請求項2】
前記熱接着性樹脂が、ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性した酸変性オレフィン樹脂である請求項1に記載のICタグ。
【請求項3】
前記樹脂基板が、熱接着性樹脂層とオレフィン系樹脂層とからなる積層構造を有している請求項1に記載のICタグ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のICタグが、前記熱接着性面を介して表面に接着固定されていることを特徴とするプラスチック成形品。
【請求項5】
前記ICタグをインサート部材としてのインサート成形により形成されたものである請求項4に記載のプラスチック成形品。
【請求項6】
前記ICタグをヒートシール部材としてのヒートシール成形により形成されたものである請求項4に記載のプラスチック成形品。
【請求項7】
前記プラスチック成形品が、オレフィン系樹脂からなるキャップであり、該キャップの頂板部の内面又は外面に前記ICタグが固定されている請求項4乃至6の何れかに記載のプラスチック成形品。
【請求項8】
前記プラスチック成形品が、オレフィン系樹脂からなるキャップの中栓であり、該中栓の中央部分には凹部が形成されており、ICタグが該中栓の凹部に対面するように前記ICタグが固定されている請求項4乃至6の何れかに記載のプラスチック成形品。
【請求項9】
請求項7に記載のキャップと、プラスチック容器と、該プラスチック容器の口部に嵌めこまれて固定されたプラスチック製中栓とからなり、該中栓の中央部分には凹部が形成されており、該キャップは、ICタグが該中栓の凹部に対面するようにプラスチック容器の口部に装着されている包装容器。
【請求項10】
請求項8に記載のキャップ中栓と、該中栓が嵌めこまれたプラスチック製キャップと、プラスチック容器とからなる包装容器。
【請求項11】
少なくとも一方の表面が熱接着性樹脂からなる熱接着性面となっている樹脂基板を用意し、
前記樹脂基板の熱接着性面に金属層を形成し、
前記樹脂基板上に形成された前記金属層を、エッチングによりアンテナ形状に成形して金属薄膜からなるアンテナを形成し、
次いで、前記アンテナと導通するように、ICチップを、前記樹脂基板の露出した熱接着性面に熱接着して固定する、
ことを特徴とするICタグの製造方法。
【請求項12】
前記金属層を、前記樹脂基板の熱接着性面に熱接着することにより形成する請求項11に記載のICタグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−192041(P2008−192041A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27809(P2007−27809)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】