説明

ICパッケージ、配線基板にICパッケージが実装された回路基板、及び回路基板を備えた電子装置

【課題】放熱性を確保しつつ、ICチップにノイズが侵入することを抑制できるICパッケージ、ICパッケージが配線基板に実装された回路基板、及び回路基板を備えた電子装置を提供すること。
【解決手段】電子装置100は、ICパッケージ10と、配線基板30と、ICパッケージ10及び配線基板30が収納される金属製のケース40とを備える。配線基板30は、絶縁基材31に設けられたグランド層32に電気的に接続されたグランド用パターン33及び迂回用パターン35を備える。ICパッケージ10は、ICチップ11と、ICチップ11とケース40とに熱的に接続された金属製の放熱板17と、グランド用パターン33とICチップ11とに電気的に接続されたグランド端子15と、グランド用パターン33と放熱板17とに電気的に接続された迂回端子16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICパッケージ、ICパッケージが配線基板に実装された回路基板、及び回路基板を備えた電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ICパッケージの一例として、特許文献1に開示されたICパッケージがあった。
【0003】
このICパッケージは、ICチップ、放熱板、複数個の信号端子、信号用ボンディングワイヤー及びグランド用ボンディングワイヤーを備え、モールド樹脂で一体的に封止されている。また、信号用ボンディングワイヤーは、一端がICチップのパッドに接続され、他端が信号端子に接続されている。一方、グランド用ボンディングワイヤーは、一端がICチップのパッドに接続され、他端が放熱板に接続されている。また、ICチップは、放熱板の上面に、熱伝導性接着剤などを介して固定されている。そして、放熱板は、ハンダ及び接続部(ビア)を介して配線基板に配置されたグランド層(又は電源層)に電気的に接続されている。
【0004】
これによって、ICチップで発生した熱は、放熱板に伝わって放熱される。また、放熱板は、ハンダ及び接続部を介してグランド層(又は電源層)に接続されているので、放熱効果を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−71670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のICパッケージにおいては、信号端子にノイズが侵入した場合、又は、電源端子、グランド端子どちらかに侵入した場合、グランド層、電源層に抜けるノイズ経路が考えられる。ノイズがICチップを通って低インピーダンスな層であるグランド層(又は電源層)に抜けるノイズ経路が考えられる。ICチップは、ノイズが通ることによって誤動作する可能性がある。
【0007】
また、他の放熱構造としては、ICパッケージにおける一面を放熱部材や金属筐体に接続(直接、又は放熱性を有する弾性部材を介して接続)する構造が考えられる。この場合、ICチップで発生した熱は、放熱部材や金属筐体に伝達されて外部に放熱される。よって、上述のように配線基板に放熱する場合と比べて放熱性を向上することができる。
【0008】
しかしながら、この構造においては、ICパッケージの信号端子、電源端子、グランド端子のいずれかにノイズが侵入した場合、ノイズがICチップを通って放熱部材や金属筐体に抜けるノイズ経路が考えられる。
【0009】
このように、放熱性を確保しつつ、ICチップにノイズが侵入することを抑制することは困難であった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、放熱性を確保しつつ、ICチップにノイズが侵入することを抑制できるICパッケージ、ICパッケージが配線基板に実装された回路基板、及び回路基板を備えた電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1に記載のICパッケージは、放熱部材とICチップとを熱的に接続することによって、ICチップで発生した熱を放熱部材に伝達して、放熱部材から放熱することができる。さらに、ICパッケージは、電源電位又はグランド電位に固定される端子とICチップとが電気的に接続されるとともに、この端子と同じ電位に固定された端子と放熱部材とがICチップを介することなく電気的に接続される。これによって、ICチップと電気的に接続された端子にノイズが侵入するような場合、このノイズは、この端子だけではなくICチップを介さずに放熱部材と接続された端子にも流れることになる。従って、ICパッケージは、ICチップを介さずに放熱部材と接続された端子が設けられてない場合よりも、ICチップにノイズが侵入することを抑制できる。
【0012】
また、請求項2に示すように、ICチップを介さずに放熱部材と接続された端子のインピーダンスを、ICチップと電気的に接続された端子のインピーダンスよりも小さくすることによってICチップと電気的に接続された端子が接続された電源層又はグランド層に侵入したノイズを、ICチップを介さずに放熱部材と接続された端子側に流れやすくすることができる。従って、ICチップにノイズが侵入することをより一層抑制できる。
【0013】
また、上記目的を達成するために請求項3に記載の回路基板においては、配線基板における電源層又はグランド層に接続された回路用配線部とICチップとが回路端子(ICチップと電気的に接続された端子)にて電気的に接続されるとともに、この回路用配線部が接続された電源層又はグランド層に接続された迂回用配線部と放熱部材とが迂回端子(ICチップを介さずに放熱部材と接続された端子)にて接続される。これによって、回路端子が接続された配線基板の電源層又はグランド層にノイズが侵入した場合、ノイズは、回路端子だけではなく迂回端子にも流れることになる。従って、請求項3に記載の回路基板は、ICパッケージに迂回端子が設けられてない場合よりも、ICチップにノイズが侵入することを抑制できる。
【0014】
また、請求項4に示すように、迂回用配線部のインピーダンスを、回路用配線部のインピーダンスよりも小さくすることによって、回路端子が接続された電源層又はグランド層に侵入したノイズを迂回端子側に流れやすくすることができる。従って、ICチップにノイズが侵入することをより一層抑制できる。
【0015】
また、上記目的を達成するために請求項5に記載の電子装置は、金属からなる筐体と配線基板に実装されたICパッケージにおける放熱部材とを熱的に接続することによって、ICチップで発生した熱を筐体に伝達し、この筐体から外部に放熱することができる。さらに、筐体に収納された配線基板とICパッケージとは、配線基板の電源層又はグランド層とICパッケージのICチップとがICパッケージの回路端子にて電気的に接続されるとともに、この回路端子が接続された電源層又はグランド層とICパッケージの放熱部材とがICパッケージの迂回端子にて接続される。これによって、回路端子が接続された配線基板の電源層又はグランド層にノイズが侵入した場合、ノイズは、回路端子だけではなく迂回端子にも流れることになる。従って、請求項5に記載の電子装置は、ICパッケージに迂回端子が設けられてない場合よりも、ICチップにノイズが侵入することを抑制できる。
【0016】
また、請求項6に示すように、放熱性を有する弾性部材を介して放熱部材と筐体とを接続することによって、放熱部材と筐体との密着性を向上させることができるとともに、筐体からの振動がICチップに伝達されることを抑制できる。従って、放熱性を向上させることができるとともに、筐体からICチップに加えられる応力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態における電子装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】本発明の実施形態における電子装置を電気的に回路化した回路図である。
【図4】ICチップに流れるシミュレーション時の電子装置を含む全体図である。
【図5】本発明の実施形態におけるシミュレーション時の電子装置の回路図である。
【図6】比較例におけるシミュレーション時の電子装置の回路図である。
【図7】ICチップに流れるノイズ電流のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図8】変形例1における電子装置の概略構成を示す断面図である。
【図9】図8のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】変形例2における電子装置の概略構成を示す断面図である。
【図11】(a)は図10のXIa−XIa線に沿う断面図であり、(b)は図10のXIb−XIb線に沿う断面図である。
【図12】変形例3における電子装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
【0019】
電子装置100は、図1に示すように、主な構成要素として、配線基板30と、この配線基板30に実装されたICパッケージ10と、この配線基板30とICパッケージ10とを内部に収納するケース(筐体)40、ケース40内に収納された配線基板30(ICパッケージ10)と電子装置100の外部に設けられた外部機器(バッテリー400、センサ500、電子装置100とは異なるECU600など)とを電気的に接続するためのコネクタ50などを備える。この電子装置100は、自動車に搭載される電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)に適用することができる。つまり、配線基板30と配線基板30に実装されたICパッケージ10とを含む回路基板は、自動車に搭載される電子制御ユニットに搭載することができる。同様に、ICパッケージ10は、自動車に搭載される電子制御ユニットに搭載することができる。
【0020】
なお、本実施形態においては、電子装置100を自動車に搭載される電子制御ユニットに適用した例を採用するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、自動車以外の移動体(例えば、船、飛行機、鉄道)、医療機器、ロボット、産業機器、家電製品、アミューズメント機器、エレベータ、複写機などに搭載される電子装置に適用することもできる。よって、回路基板やICパッケージ10に関しても、このような電子装置に搭載することができる。
【0021】
ケース40は、金属(例えば、アルミなど)からなるものであり、配線基板30と配線基板30に実装されたICパッケージ10を収納する内部空間を備える。このケース40としては、例えば、一部が開口した箱状のベース(すなわち、矩形状の底面と四つの側壁を有した凹状のベース)と、ベースの開口を塞ぐカバーとの二つの部材などからなるものを採用することができる。この場合、ベースをカバーで塞ぐことによって、配線基板30と配線基板30に実装されたICパッケージ10を収納するための内部空間が形成される。
【0022】
また、ケース40の一部(例えば、側壁)にはコネクタ50が固定されている。なお、コネクタ50は、周知のものであるため詳しい説明は省略するが、配線基板30(ICパッケージ10)と外部機器とを電気的に接続する金属製の端子が樹脂製のコネクタケースに固定されてなるものである。つまり、図示は省略するが、コネクタ50は、端子の一部がケース40内に配置されると共に、端子のその他の部分がケース40外に配置されるようにケース40に固定されている。そして、コネクタ50の端子と配線基板30の配線パターン(例えば、グランド層32)とは電気的に接続されている。
【0023】
配線基板30は、絶縁基材31と、絶縁基材31に設けられた配線部(配線パターンと、配線パターン間を電気的に接続するビア34,36)などを備えるものである。
【0024】
絶縁基材31は、ガラス繊維製の布(クロス)を重ねたものにエポキシ樹脂を含浸させたもの、アルミナ(酸化アルミニウム)を焼成したもの、熱可塑性樹脂などを採用することができる。ビア34,36は、配線パターン間を電気的に接続するものであり、絶縁基材31に設けられた貫通孔に導電性部材が埋設されてなるものである。
【0025】
配線パターンは、絶縁基材31に設けられた導体箔(例えば銅箔など)をパターニングして形成されるものである。この配線パターンとしては、べた状に設けられた(すなわち、べたパターンの)導体箔からなる電源層(図示省略)やグランド層32、グランド層32に電気的に接続されたグランド用パターン(配線部、回路用配線部)33及び迂回用パターン(配線部、迂回用配線部)35、信号用の配線(図示省略)を含むものである。
【0026】
また、べた状に設けられた電源層やグランド層32とは、絶縁基材31の厚み方向に直交する方向に沿う面積が比較的大面積(例えば、絶縁基材31と同等)に設けられた層である。よって、電源層やグランド層32は、信号用の配線などよりも低インピーダンスな配線パターンである。なお、電源層やグランド層32は、絶縁基材31に埋設(内蔵)されている。また、本実施形態においては、例えば図1などにおいて、グランド層32のみを図示している。
【0027】
グランド用パターン33及び迂回用パターン35は、絶縁基材31における平坦な表面(ICパッケージ10が実装される実装面)に設けられる。また、グランド用パターン33及び迂回用パターン35は、ICパッケージ10のグランド端子(電位固定部材、回路端子、ICチップと電気的に接続された端子)15、迂回端子(電位固定部材、ICチップを介さずに放熱部材と接続された端子)16がハンダなどを介して電気的に接続される。具体的には、グランド用パターン33には、ICパッケージ10のグランド端子15が電気的に接続され、迂回用パターン35には、ICパッケージ10の迂回端子16が電気的に接続される。よって、グランド用パターン33及び迂回用パターン35は、ICパッケージ10用(グランド端子15用及び迂回端子16用)のランドとして機能するものである。つまり、グランド用パターン33は、ICパッケージ10のグランド端子15用のランドと換言することができる。一方、迂回用パターン35は、ICパッケージ10の迂回端子16用のランドと換言することができる。
【0028】
また、グランド用パターン33及び迂回用パターン35は、同一のグランド層32に電気的に接続されている。つまり、グランド用パターン33及び迂回用パターン35は、同一の配線パターンに電気的に接続されている。具体的には、グランド用パターン33は、ビア34(配線部、迂回用配線部)を介してグランド層32に電気的に接続されている。一方、迂回用パターン35は、ビア36(配線部、迂回用配線部)を介してグランド層32に電気的に接続されている。このように、ICパッケージ10のグランド端子15と迂回端子16とは、同一のグランド層32に電気的に接続されている。
【0029】
また、迂回用パターン35は、グランド用パターン33よりもインピーダンス(インダクタンス)が小さくなるように設けられている。例えば、図2に示すように、迂回用パターン35の長さX2は、グランド用パターン33の長さX1よりも短くする(X2<X1)。なお、迂回用パターン35の長さとは、迂回端子16が接続された位置とビア36が接続された位置との間の長さである。また、グランド用パターン33の長さとは、グランド端子15が接続された位置とビア34が接続された位置との間の長さである。
【0030】
ここでは、グランド用パターン33及び迂回用パターン35は、同一の材料からなり、直線的に設けられるものであり(すなわち矩形形状をなすものであり)、幅は同一とする。すなわち、グランド用パターン33及び迂回用パターン35は、幅が同一であり、かつ、直線的に設けられているものとする。なお、グランド用パターン33の幅とは、絶縁基材31の表面に平行、且つ、グランド用パターン33におけるグランド端子15が接続された位置とビア34が接続された位置とを結びグランド用パターン33の中心を通る仮想線に垂直な方向の長さである。一方、迂回用パターン35の幅とは、絶縁基材31の表面に平行、且つ、迂回用パターン35における迂回端子16が接続された位置とビア36が接続された位置とを結び迂回用パターン35の中心を通る仮想線に垂直な方向の長さである。また、ここでは、ビア34とビア36とは、同一形状(直径、長さ(厚み)が同一)とする。
【0031】
なお、ここでは、迂回用パターン35とグランド用パターン33の長さによって、インピーダンスを調整しているが、迂回用パターン35とグランド用パターン33の幅、又は迂回用パターン35とグランド用パターン33の幅と長さによって、インピーダンスを調整してもよい。例えば、迂回用パターン35は、迂回端子16とビア36とが接続可能な範囲で、できるだけ長さを短く幅を広くし直線的に設ける。一方、グランド用パターン33は、迂回用パターン35よりも長さを長く幅を狭くする。また、グランド用パターン33は、長さを長くするために屈曲して設けるようにしてもよい。
【0032】
なお、本実施形態においては、本発明の配線部として、グランド層32に電気的に接続されたグランド用パターン(回路用配線部)33、迂回用パターン(迂回用配線部)35を採用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。配線部としては、電源層に電気的に接続された電源用パターン(回路用配線部)、迂回用パターン(迂回用配線部)を採用することもできる。
【0033】
ICパッケージ10は、ICチップ11と、ICチップ11などを封止するモールド樹脂12と、ICチップ11に熱的に接続された放熱板(放熱部材)17と、グランド電位に固定されるグランド端子15及び迂回端子16と、ICチップ11とグランド端子15とを電気的に接続するグランド用ワイヤー13と、放熱板17と迂回端子16とを電気的に接続する迂回用ワイヤー14とを備える。なお、本実施形態においては、電位固定部材として、グランド電位に固定される(すなわち、配線基板30のグランド層32に電気的に接続される)グランド端子15及び迂回端子16を採用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。電位固定部材として、電源電位に固定される(すなわち、配線基板30の電源層に電気的に接続される)電源端子及び迂回端子16を採用することもできる。また、電位固定部材として、グランド電位に固定されるグランド端子15及び迂回端子16と、電源電位に固定される電源端子及び迂回端子16(グランド電位に固定される迂回端子16とは別の端子)を採用することもできる。
【0034】
ICチップ11は、周知の集積回路が設けられた矩形形状を有する平板状のチップである。モールド樹脂12は、周知のものであるため詳しい説明は省略するが、ICチップ11と、グランド端子15及び迂回端子16の一部と、グランド用ワイヤー13と、迂回用ワイヤー14とを封止するとともに、これらの構成要素及び放熱板17を所定位置に固定する。
【0035】
放熱板17は、金属(例えば、アルミや銅など)からなり、例えば、矩形形状を有する平板部材を採用することができる。放熱板17は、平坦な一面(実装面)にICチップ11が実装される。また、放熱板17の実装面には、迂回用ワイヤー14が接続(ボンディング)される。よって、放熱板17における実装面は、ICチップ11における実装面に対する対向面よりも広い面積を有するように設けられる。なお、放熱板17としては、平板部材以外であっても採用することができる。
【0036】
なお、本実施形態においては、迂回端子16と放熱板17とを電気的に接続するために、放熱板17における実装面に迂回用ワイヤー14を接続する例を採用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、迂回端子16と放熱板17とがICチップ11を介することなく電気的に接続されていれば、目的を達成できるものである。よって、放熱板17における実装面に迂回用ワイヤー14を接続しない場合は、放熱板17における実装面は、ICチップ11における対向面と同等の面積であってもよいし、又は、対向面よりも狭い面積であってもよい。
【0037】
また、グランド端子15と迂回端子16は、同一の材料で、同一の形状を有するものである。グランド端子15は、上述のように配線基板30におけるグランド用パターン33やビア34を介してグランド層32に電気的に接続されるとともに、ICチップ11内のグランドにグランド用ワイヤー13を介して電気的に接続される。一方、迂回端子16は、上述のように配線基板30における迂回用パターン35やビア36を介してグランド層32に電気的に接続されるとともに、放熱板17に迂回用ワイヤー14を介して電気的に接続される。また、上述のように、迂回端子16は、ICチップ11を介することなく、放熱板17に電気的に接続される。
【0038】
そして、このICパッケージ10と配線基板30とは、ICパッケージ10のグランド端子15が配線基板30におけるグランド用パターン33にハンダを介して接続され、ICパッケージ10の迂回端子16が配線基板30における迂回用パターン35にハンダを介して接続された状態で、ICパッケージ10が配線基板30に実装されて回路基板を構成するものである。
【0039】
つまり、回路基板は、絶縁基材31と、電源層及びグランド層32と、電源層及びグランド層32(電源層及びグランド層32のうちの一方である同一層)に電気的に接続された二つの配線部(ここでは、グランド層32に接続されたグランド用パターン33及び迂回用パターン35)と、を含む配線基板30と、ICチップ11と、ICチップ11に接続された放熱板17と、電源電位又はグランド電位に固定されるものでありICチップ11と電気的に接続された回路端子及び放熱板17に電気的に接続された迂回端子16(ここでは、グランド層32に電気的に接続されたグランド端子15及び迂回端子16)と、を含むICパッケージ10とを備える。また、回路端子(ここではグランド端子15)は、ICチップ11と配線部の一方である回路用配線部(ここでは、グランド層32に接続されたグランド用パターン33)とに電気的に接続され、迂回端子16は、放熱板17と配線部の他方である迂回用配線部(ここでは、グランド層32に接続された迂回用パターン35)とに電気的に接続される。
【0040】
さらに、ICパッケージ10は、ケース40内に収納された状態で放熱板17とケース40とが放熱ゲル(放熱性を有する弾性部材)20を介して熱的に接続される。この放熱ゲル20は、例えば、酸化亜鉛とシリコーンとを混ぜた電気絶縁性を有するものを採用することができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、放熱板17とケース40とが放熱ゲル20を介して熱的に接続される例を採用するが、本発明はこれに限定されるものではない。放熱板17とケース40とが直接接続されるようにしてもよい。
【0042】
このように構成された電子装置100を電気的に回路化すると、図3のように示すことができる。この図3に示すように、配線基板30のグランド層32は、グランド用パターン33(インダクタンス)、内部抵抗R2、グランド端子15(インダクタンス)、ICチップ11の寄生容量11a、放熱ゲル20の寄生容量20aが直列に接続されてケース40に接続されると共に、迂回用パターン35(インダクタンス)、内部抵抗R1、迂回端子16(インダクタンス)、放熱ゲル20の寄生容量20aが直列に接続されてケース40に接続される。
【0043】
また、電子装置100は、図4に示すように、自動車のエンジンルームや車室内に搭載される場合、例えば、金属製のブラケット200を介して、自動車における金属製のボデー300に接続される。また、電子装置100は、ワイヤーハーネス800を介してコネクタ50の端子とバッテリー400とが電気的に接続されるとともに、ワイヤーハーネス800を介してコネクタ50の端子とセンサ500とが電気的に接続される。なお、ここでは、電子装置100は、バッテリー400及びセンサ500と電気的に接続される例を採用しているが、バッテリー400及びセンサ500に加えてアクチュエータと電気的に接続されるものであっても採用することができる。また、電子装置100は、バッテリー400、アクチュエータ(センサ500のかわり)、及びECU600と電気的に接続されるものであっても採用することができる。
【0044】
ここで、本実施形態に示す電子装置100の効果を説明する。
【0045】
上述のように、電子装置100がブラケット200を介してボデー300に取り付けられる場合、配線基板30のグランド層にノイズが侵入すると、配線基板30のグランド層32からグランド用パターン33、グランド端子15、ICチップ11、放熱板17、放熱ゲル20、ケース40、ブラケット200を通って、ボデー300に抜けるノイズ経路が形成される。また、このノイズ経路に電気絶縁性の放熱ゲル20が配置されているもの、この放熱ゲル20は、放熱板17とケース40との間に配置されているため、コンデンサとして機能してしまいノイズ経路をなくすことができない。さらに、電子装置100がブラケット200やボデー300に取り付けられてなくても、別の電子装置の金属製のケースの近傍に配置される場合は、同様なノイズ経路が形成されてしまう。
【0046】
しかしながら、本実施形態の電子装置100においては、ケース40に収納された配線基板30とICパッケージ10とは、配線基板30のグランド層32とICパッケージ10のICチップ11とがICパッケージ10のグランド端子15にて電気的に接続されるとともに、このグランド端子15が接続されたグランド層32とICパッケージ10の放熱板17とがICパッケージ10の迂回端子16にて接続される。これによって、グランド端子15が接続された配線基板30のグランド層32にノイズが侵入した場合、ノイズは、グランド端子15だけではなく迂回端子16にも流れることになる。従って、ICパッケージ10に迂回端子16が設けられてない場合よりも、ICチップ11にノイズが侵入することを抑制できる。さらに、電子装置100は、迂回用パターン35のインピーダンスを、グランド用パターン33のインピーダンスよりも小さくしているので、グランド層32に侵入したノイズを迂回端子16側に流れやすくすることができる。従って、ICチップ11にノイズが侵入することをより一層抑制できる。
【0047】
また、本実施形態における電子装置100及び比較例における電子装置に対して、部品イミュニティ試験国際規格(ISO11452-4)に準拠した試験であるBCI(バルクカレントインジェクション)試験(すなわち、ノイズ電流シミュレーション)を行った。具体的には、図4に示すようにブラケット200を介してボデー300に取り付けた状態の電子装置100及び比較例における電子装置に対して試験を行った。
【0048】
図5は、本実施形態における電子装置100を電気的に回路化した回路図である。一方、図6は、比較例における電子装置を電気的に回路化した回路図である。このように、比較例における電子装置は、本実施形態における電子装置100に設けられている迂回端子16が設けられていないものである。よって、比較例における電子装置は、グランド用パターン、グランド端子、ICチップ側の経路しか形成されてない。
【0049】
なお、取り扱い信号は、制御信号、電源、グランド信号、入力信号である。そして、ワイヤーハーネス800を介してグランド層32にノイズを注入する。また、ノイズ源は、規格値である1〜400MHzを使用した。
【0050】
このシミュレーションの結果を図6に示す。図6からあきらかなように、本実施形態における電子装置100は、規格値である1〜400MHz周波数帯において、ICチップ11へ流れる電流(ノイズ)を比較例の電子装置よりも小さくすることが確認できた。
【0051】
また、本実施形態における電子装置100は、ケース40と配線基板30に実装されたICパッケージ10における放熱板17とを熱的に接続することによって、ICチップ11で発生した熱をケース40に伝達し、このケース40から外部に放熱することができる。
【0052】
また、同様に、本実施の形態に採用したICパッケージ10は、放熱板17とICチップ11とを接続することによって、ICチップ11で発生した熱を放熱板17に伝達して、放熱板17から放熱することができる。さらに、ICパッケージ10は、グランド電位に固定されるグランド端子15とICチップ11とを電気的に接続するとともに、このグランド端子15と同じ電位に固定された迂回端子16と放熱板17とを電気的に接続する。これによって、グランド端子15にノイズが侵入するような場合、このノイズは、グランド端子15だけではなく迂回端子16にも流れることになる。従って、ICパッケージ10は、迂回端子16が設けられてない場合よりも、ICチップ11にノイズが侵入することを抑制できる。
【0053】
また、同様に、ICパッケージ10と配線基板30とを含む回路基板においては、配線基板30におけるグランド層32に接続されたグランド用パターン33及びビア34とICチップ11とがグランド端子15にて電気的に接続されるとともに、このグランド用パターン33が接続されたグランド層32に接続された迂回用パターン35及びビア36と放熱板17とが迂回端子16にて接続される。これによって、グランド端子15が接続された配線基板30のグランド層32にノイズが侵入した場合、ノイズは、グランド端子15だけではなく迂回端子16にも流れることになる。従って、ICパッケージ10に迂回端子16が設けられてない場合よりも、ICチップ11にノイズが侵入することを抑制できる。
【0054】
また、本実施形態における電子装置100は、放熱板17とケース40との間に電気絶縁性の放熱ゲル20を設けることによって、放熱板17とケース40との密着性を向上させることができるとともに、ケース40からの振動がICチップ11に伝達されることを抑制できる。従って、放熱性を向上させることができるとともに、ケース40からICチップ11に加えられる応力を低減できる。
【0055】
ただし、放熱板17とケース40との間に電気絶縁性の放熱ゲル20を設けなくても本発明の目的は達成できるものである。ところが、放熱ゲル30を介して放熱するのではなく、放熱板17とケース40とを直接(DC電気的に)接続して放熱する場合、配線基板30の動作が不安定になる可能性がある。つまり、この場合、バッテリー400、センサ500、及びECU600などが接続されているボデーグランド700(300とは離れた位置のボデーグランド)と、電子装置100の近くのボデー300(ボデーグランド)がDCで接続されてしまう。このことによって、ボデー300の違う位置に基準をとっているグランドが存在するので、グランド同士がDC電位差を持ち動作が安定しない可能性がある。しかしながら、本実施形態における電子装置100のように電気絶縁性の放熱ゲル20を設けることによって、配線基板30の動作が不安定になることを抑制できる。
【0056】
また、電位固定部材として、電源電位に固定される(すなわち、配線基板30の電源層に電気的に接続される)電源端子及び迂回端子を採用した場合でも同様の効果を奏することができる。ただし、この場合は、配線基板30の電源層に電気的に接続される迂回用パターンのインピーダンスを、電源用パターンのインピーダンスよりも小さくする。また、電位固定部材として、グランド電位に固定されるグランド端子15及び迂回端子16と、電源電位に固定される電源端子及び迂回端子(グランド電位に固定される迂回端子16とは別の端子)を採用した場合でも同様の効果を奏することができる。ただし、この場合、配線基板30のグランド層32に電気的に接続される迂回用パターン35のインピーダンスを、グランド用パターン33のインピーダンスよりも小さくするとともに、配線基板30の電源層に電気的に接続される迂回用パターンのインピーダンスを、電源用パターンのインピーダンスよりも小さくする。
【0057】
なお、本実施形態においては、グランド端子15と迂回端子16は、同一の材料で、同一の形状を有するもの、つまり、インピーダンス(インダクタンス)が同じものを採用したが本発明はこれに限定されるものではない。迂回端子16は、グランド端子15よりもインピーダンス(インダクタンス)が小さくなるようにしてもよい。このようにすることによって、グランド端子15が接続されたグランド層32に侵入したノイズを迂回端子16側に流れやすくすることができる。従って、迂回端子16とグランド端子15とが同等のインピーダンス(インダクタンス)である場合よりも、ICチップ11にノイズが侵入することを抑制できる。また、上述のように、迂回用パターン35をグランド用パターン33よりもインピーダンス(インダクタンス)が小さくなるようにするとともに、迂回端子16のインピーダンス(インダクタンス)をグランド端子15のインピーダンス(インダクタンス)よりも小さくすることによって、ICチップ11にノイズが侵入することをより一層抑制できる。
【0058】
なお、電位固定部材として、電源電位に固定される電源端子及び迂回端子を採用する場合は、この電源電位に固定される迂回端子は、電源端子よりもインピーダンス(インダクタンス)が小さくなるようにする。また、電位固定部材として、グランド電位に固定されるグランド端子15及び迂回端子16と、電源電位に固定される電源端子及び迂回端子(グランド電位に固定される迂回端子16とは別の端子)を採用した場合は、グランド電位に固定される迂回端子16は、グランド端子15よりもインピーダンス(インダクタンス)が小さくなるようにし、電源電位に固定される迂回端子は、電源端子よりもインピーダンス(インダクタンス)が小さくなるようにする。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【0060】
(変形例1)
上述の実施形態においては、迂回用パターン35とグランド用パターン33の長さによって、インピーダンスを調整している例を採用したが本発明はこれに限定されるものではない。なお、変形例1における電子装置100は、上述実施の形態の電子装置100と同様な箇所が多いため、同様な箇所に関しては図面において同じ符号を付与して説明を省略する。
【0061】
図8及び図9に示すように、変形例1における電子装置100(配線基板30)は、グランド用パターン33にチップインダクター37を実装することによってインピーダンスを調整している。つまり、変形例1における電子装置100は、少なくとも二つの導体パターンからなるグランド用パターン33がチップインダクター37で電気的に接続されている。
【0062】
配線基板30における絶縁基材31の大きさ、配線部の配線密度、電子部品の実装密度などによっては、グランド用パターン33を長く引き回すことができない場合もある。このような場合、グランド用パターン33にチップインダクター37を実装することによってインピーダンスを調整することができる。よって、このようにすることによっても、ICチップ11にノイズが侵入することを抑制できる。
【0063】
また、電位固定部材として、電源電位に固定される(すなわち、配線基板30の電源層に電気的に接続される)電源端子及び迂回端子を採用した場合は、配線基板30の電源層に電気的に接続される電源用パターンにチップインダクター37を実装する。また、電位固定部材として、グランド電位に固定されるグランド端子15及び迂回端子16と、電源電位に固定される電源端子及び迂回端子(グランド電位に固定される迂回端子16とは別の端子)を採用した場合は、配線基板30のグランド層32に電気的に接続されるグランド用パターン33にチップインダクター37を実装するとともに、配線基板30の電源層に電気的に接続される電源用パターンにチップインダクター37を実装する。
【0064】
なお、上述の実施形態に記載の技術と変形例1に記載の技術とを組み合わせて実施することも可能である。
【0065】
(変形例2)
上述の実施形態においては配線基板30の表面(ICパッケージ10が実装される実装面)における迂回用パターン35とグランド用パターン33の長さによって、変形例1においてはチップインダクター37によって、インピーダンスを調整している例を採用したが本発明はこれに限定されるものではない。なお、変形例2における電子装置100は、上述の実施形態の電子装置100と同様な箇所が多いため、同様な箇所に関しては図面において同じ符号を付与して説明を省略する。
【0066】
図10に示すように、変形例2における電子装置100(配線基板30)は、配線基板30の表面でのグランド用パターン33と迂回用パターン35の長さ、幅、厚さは同一である。しかしながら、図11(a),(b)に示すように、配線基板30の内部におけるグランド層32から配線基板30の表面のグランド用パターン33までの長さが、グランド層32から配線基板30の表面の迂回用パターン35までの長さよりも長い。つまり、変形例2における電子装置100(配線基板30)は、配線基板30の内部における配線部の引き回しによって、インピーダンスを調整するものである。なお、通常、グランド端子15のインピーダンスと迂回端子16のインピーダンスは同等である。
【0067】
この変形例2における電子装置100の配線基板30は、導体パターン(グランド層32、グランド用パターン33、迂回用パターン35)が設けられた樹脂フィルムが四層積層されてなるものである。この樹脂フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂フィルムが少なくとも一層毎に設けられるものである。つまり、この配線基板30の基本的な構成や製造方法は、特に断りのない限り、本出願人がこれまで出願してきたPALAPに関する構成を適宜採用することができる。なお、PALAPは株式会社デンソーの登録商標である。
【0068】
配線基板30における絶縁基材31の大きさ、配線部の配線密度、電子部品の実装密度などによっては、配線基板30の表面においてグランド用パターン33を長く引き回すことができない場合もある。このような場合、配線基板30の内部においてグランド用パターン33を長く引き回すことでインピーダンスを調整することができる。よって、このようにすることによっても、ICチップ11にノイズが侵入することを抑制できる。
【0069】
また、電位固定部材として、電源電位に固定される(すなわち、配線基板30の電源層に電気的に接続される)電源端子及び迂回端子を採用した場合は、配線基板30の内部における電源層から配線基板30の表面の電源用パターンまでの長さを、電源層から配線基板30の表面の迂回用パターンまでの長さよりも長くする。また、電位固定部材として、グランド電位に固定されるグランド端子15及び迂回端子16と、電源電位に固定される電源端子及び迂回端子(グランド電位に固定される迂回端子16とは別の端子)を採用した場合は、配線基板30の内部における電源層から配線基板30の表面の電源用パターンまでの長さを、電源層から配線基板30の表面の迂回用パターンまでの長さよりも長くするとともに、配線基板30の内部におけるグランド層32から配線基板30の表面のグランド用パターン33までの長さを、グランド層32から配線基板30の表面の迂回用パターン35までの長さよりも長くする。なお、通常、電源端子のインピーダンスと迂回端子(配線基板30の電源層に電気的に接続される端子)のインピーダンスは同等である。
【0070】
なお、上述の実施形態に記載の技術と変形例2に記載の技術とを組み合わせて実施することも可能である。また、上述の実施形態に記載の技術、変形例1に記載の技術、変形例2に記載の技術を組み合わせて実施することも可能である。
【0071】
(変形例3)
上述の実施形態、変形例1,2においては、インピーダンスを調整する例を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、変形例3における電子装置100は、上述の実施形態の電子装置100と同様な箇所が多いため、同様な箇所に関しては図面において同じ符号を付与して説明を省略する。
【0072】
図12に示すように、変形例3における電子装置100(配線基板30)は、配線基板30のグランド用パターン33と迂回用パターン35のインピーダンスは同一であり、かつ、ICパッケージ10のグランド端子15と迂回端子16のインピーダンスも同一である。つまり、本発明は、変形例3における電子装置100(配線基板30)のように、配線基板30のグランド層32とICパッケージ10のICチップ11とがICパッケージ10のグランド端子15にて電気的に接続されるとともに、このグランド端子15が接続されたグランド層32とICパッケージ10の放熱板17とがICパッケージ10の迂回端子16にて接続されるものであれば、ICチップ11にノイズが侵入することを抑制する
また、電位固定部材として、電源電位に固定される(すなわち、配線基板30の電源層に電気的に接続される)電源端子及び迂回端子を採用した場合は、配線基板30の電源層とICパッケージ10のICチップ11とがICパッケージ10の電源端子にて電気的に接続されるとともに、この電源端子が接続された電源層とICパッケージ10の放熱板17とがICパッケージ10の迂回端子にて接続されるものであれば、ICチップ11にノイズが侵入することを抑制することができる。また、電位固定部材として、グランド電位に固定されるグランド端子15及び迂回端子16と、電源電位に固定される電源端子及び迂回端子(グランド電位に固定される迂回端子16とは別の端子)を採用した場合は、配線基板30の電源層とICパッケージ10のICチップ11とがICパッケージ10の電源端子にて電気的に接続されるとともに、この電源端子が接続された電源層とICパッケージ10の放熱板17とがICパッケージ10の迂回端子にて接続され、配線基板30のグランド層32とICパッケージ10のICチップ11とがICパッケージ10のグランド端子15にて電気的に接続されるとともに、このグランド端子15が接続されたグランド層32とICパッケージ10の放熱板17とがICパッケージ10の迂回端子16にて接続されるものであれば、ICチップ11にノイズが侵入することを抑制することができる。
【0073】
なお、上述の実施形態、変形例1〜3では、ICパッケージ10にグランド端子又は電源端子がそれぞれ1端子だけ設けられている例を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、ICパッケージ10に2端子以上のグランド端子又は電源端子が設けられるものであっても採用することができる。この場合、例えばグランドに侵入してきたノイズを想定すると、特定のグランド端子だけに効果があるのではなく、全てのグランド端子に効果を発揮することが可能である。
【0074】
また、迂回端子16の手前(例えば、迂回用パターン35)にチップコンデンサを実装した場合であっても、電源層又はグランド層に侵入したノイズを迂回端子側に流れやすくすることができる。つまり、このようにすることによって、迂回端子16側のインピーダンスを、グランド端子15側のインピーダンスよりも小さくすることができる。例えば、グランド端子15側の配線インダクタンス10nHのとき、迂回端子16側に3.3μFのチップコンデンサを実装することで1〜400MHzで効果を発揮する。
【符号の説明】
【0075】
10 ICパッケージ、11 ICチップ、11a ICチップの寄生容量、12 モールド樹脂、13 グランド用ワイヤー、14 迂回用ワイヤー、15 グランド端子、16 迂回端子、17 放熱板、20 放熱ゲル、20a 放熱ゲルの寄生容量、30 配線基板、31 絶縁基材、32 グランド層、33 グランド用パターン、34 ビア、35 迂回用パターン、36 ビア、37 チップインダクター、40 ケース、50 コネクタ、100 電子装置、200 ブラケット、300 ボデー(電子装置100近くのボデーグランド)、400 バッテリー、500 センサ、600 ECU(電子装置100とは異なるECU)、700 ボデーグランド、800 ワイヤーハーネス、R1,R2 内部抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップと、
金属からなるものであり、前記ICチップに接続された放熱部材と、
電源電位又はグランド電位に固定される電位固定部材と、を備え
前記電位固定部材は、
前記ICチップと電気的に接続された端子と、前記ICチップを介さずに前記放熱部材と接続された端子とを含むことを特徴とするICパッケージ。
【請求項2】
前記ICチップを介さずに前記放熱部材と接続された端子は、前記ICチップと電気的に接続された端子よりもインピーダンスが小さいことを特徴とする請求項1に記載のICパッケージ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記ICパッケージと、当該ICパッケージが実装される配線基板とを有するものであって、
前記配線基板は、
絶縁基材と、
前記絶縁基材に設けられた電源層及びグランド層と、
少なくとも一部が前記絶縁基材における前記ICチップの実装面に設けられ、前記電源層及び前記グランド層の少なくとも一方の同一層に電気的に接続された二つの配線部と、を備え、
前記ICチップと電気的に接続された端子である回路端子は、前記ICチップと前記配線部の一方である回路用配線部とに電気的に接続され、
前記ICチップを介さずに前記放熱部材と接続された端子である迂回端子は、前記放熱部材と前記配線部の他方である迂回用配線部とに電気的に接続されることを特徴とする回路基板。
【請求項4】
前記迂回用配線部は、前記回路用配線部よりもインピーダンスが小さいことを特徴とする請求項3に記載の回路基板。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の回路基板と、当該回路基板が収納される筐体とを備えるものであって、
前記筐体は、金属からなるものであり、前記ICパッケージにおける前記放熱部材と熱的に接続されることを特徴とする電子装置。
【請求項6】
前記筐体と前記放熱部材とは、放熱性を有する弾性部材を介して熱的に接続されることを特徴とする請求項5に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−89758(P2012−89758A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236740(P2010−236740)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】