説明

LED素子用リードフレーム基板の製造方法

【課題】パッド部や電気的接合エリアの樹脂バリ等の悪影響を抑制してLED素子用リードフレーム基板を製造する。
【解決手段】LED素子が搭載されるパッド部11と、ワイヤーを介してパッド部に搭載されたLED素子と電気的に接続される接続エリア12とを有するフレーム部10と、平面視においてパッド部および接続エリアを囲むリフレクター部を有し、フレーム部に取り付けられた樹脂部とを備えたLED素子用リードフレーム基板1の製造方法は、
金属板30にパッド部および接続エリアを形成してフレーム部を形成するエッチング工程と、エッチング工程後に、パッド部および接続エリアにメッキ層を形成するメッキ処理工程と、メッキ処理工程後に、フレーム部に対して樹脂部を成形する樹脂部形成工程と、樹脂部形成工程後に、パッド部および接続エリア上に存在する樹脂を除去する樹脂除去工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)素子を担持、搭載するLED素子用リードフレーム基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製リードフレームと絶縁樹脂の複合体からなるLED素子用リードフレーム基板が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このようなLED素子用リードフレーム基板(以下、単に「リードフレーム基板」と称する。)は、LEDチップを搭載するための一つ乃至複数のパッド部と、LEDチップと電気的接続を行うための電気的接合エリアを同一平面に備え、パッド部と電気的接合エリア間、およびそれらとリードフレーム外周部の間に存在する空隙が絶縁性のモールド樹脂によって埋められて形成されている。モールド樹脂の成形にはトランスファーモールドが用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−172160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トランスファーモールドでは液状の樹脂が高圧で充填されるため、上述のパッド部や電気的接合エリアの表面には、樹脂バリや樹脂汚染(以下、「樹脂バリ等」と称する。)が生じることが多い。樹脂バリ等は、絶縁樹脂充填前にパッド部や電気的接合エリアに施されたメッキの光沢度にむらを生じさせ、LEDと電気的接合エリアとを電気的に接続するワイヤーボンディングの信頼性にも悪影響を及ぼすという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パッド部や電気的接合エリアに対する樹脂バリ等の悪影響を抑制してLED素子用リードフレーム基板を製造することができるLED素子用リードフレーム基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、LED素子が搭載されるパッド部と、ワイヤーを介して前記パッド部に搭載された前記LED素子と電気的に接続される接続エリアとを有するフレーム部と、平面視において前記パッド部および前記接続エリアを囲むリフレクター部を有し、前記フレーム部に取り付けられた樹脂部とを備えたLED素子用リードフレーム基板の製造方法であって、金属板に前記パッド部および前記接続エリアを形成して前記フレーム部を形成するエッチング工程と、前記エッチング工程後に、前記パッド部および前記接続エリアにメッキ層を形成するメッキ処理工程と、前記メッキ処理工程後に、前記フレーム部に対して前記樹脂部を成形する樹脂部形成工程と、前記樹脂部形成工程後に、前記パッド部および前記接続エリア上に存在する樹脂を除去する樹脂除去工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
前記樹脂除去工程では、前記フレーム部において前記パッド部および前記接続エリアが形成された面と反対側の面上においても樹脂が除去されてもよい。
また、前記樹脂除去工程は、電界研磨処理、プラズマ処理、およびアルゴンエッチング処理のいずれかを含んで行われてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のLED素子用リードフレーム基板の製造方法によれば、パッド部や電気的接合エリアの樹脂バリ等の悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態におけるLED素子用リードフレーム基板を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】図1のB―B線における断面図である。
【図4】(a)から(i)は、同LED素子用リードフレーム基板の製造手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について、図1から図4(i)を参照して説明する。
図1は、本実施形態のリードフレーム基板1にLEDチップ(LED発光素子)100が実装されたLEDパッケージ110を示す平面図であり、図2は、図1のA−A線における断面図である。リードフレーム基板1は、図1および図2に示すように、金属製のフレーム部10と、フレーム部10に取り付けられた樹脂部20とを備えている。
【0011】
フレーム部10は、金属合金製の板状の材料をエッチング加工することにより形成されており、LEDチップ100が搭載されるパッド部11と、平面視においてパッド部11を挟んで対向する接続エリア12とを備えている。
【0012】
図3は、図1のB−B線における断面図である。図2および図3に示すように、パッド部11および接続エリア12はフレーム部10の厚さ方向の一方の面(上面)に形成されており、反対側の下面には、パッド部11および接続エリア12と接続された放熱部13Aおよび13Bがそれぞれ形成されている。放熱部13Aおよび13Bの下面上における面積は、それぞれパッド部11および接続エリア12の上面における面積よりも大きく形成されており、LEDチップ100から発生する駆動熱やLEDチップ100の周辺環境条件による熱を外部に拡散させ、LEDチップ100に熱が蓄積されることを抑制している。
【0013】
樹脂部20は、エッチングにより形成されたフレーム部10の隙間を埋める充填部21と、フレーム部10の上面に形成されるリフレクター部22とを備えている。
充填部21は、パッド部11および接続エリア12と、放熱部13Aおよび13Bとを露出させるように形成されている。リフレクター部22は、図1に示すように、リードフレーム基板1の平面視においてパッド部11および接続エリア12を囲むように形成されており、図2に示すように、リフレクター部22に囲まれた領域が、LEDチップ100が実装されるキャビティCとなっている。リフレクター部22のうちキャビティCを規定する内面22Aは、上端から下端に向かうに従いキャビティCの面方向(フレーム部10の上面と平行な方向)における断面積が小さくなるようにテーパー状に形成されている。
【0014】
パッド部11および接続エリア12の上面を含むフレーム部10の外面全体には、メッキ層14が形成され、LEDチップ100実装時および外部基板接続時の電気的接続の信頼性が高められている。LEDチップ100は、パッド部11の上面に固着して搭載され、各接続エリア12の上面とLEDチップの図示しない端子とが金線等のワイヤー101を用いたワイヤーボンディングにより電気的に接続されてリードフレーム基板1に実装されている。
実装されたLEDチップ100および各ワイヤー101は、キャビティC内に充填された透明な封止樹脂102により封止されている。こうして、リードフレーム基板1を用いたLEDパッケージ110が形成されている。
【0015】
次に、本実施形態におけるリードフレーム基板1の製造方法について説明する。
まず、図4(a)に示すように、フレーム部となる金属板30の上面30Aおよび下面30Bにレジスト層31を積層する。レジスト層31の積層は、感光性レジストを塗布する、ドライフィルムレジストを貼付する等の方法により行うことができる。
【0016】
次に、所定のパターンを有するフォトマスク(不図示)を用いてレジスト層31に対して露光、現像処理等を行い、図4(b)に示すように、金属板30の上面30Aおよび下面30Bにレジストパターン32を形成する(レジストパターン形成工程)。フォトマスクのパターンは、上面側においては、パッド部11および接続エリア12の位置および形状に対応し、下面側においては、放熱部13Aおよび13Bの位置および形状に対応している。
【0017】
次に、図4(c)に示すように、金属板30の上面30Aおよび下面30B側から塩化第二鉄等のエッチャントを用いてエッチング加工する(エッチング工程)。これにより、レジストパターン32の存在しない部位が金属板30の厚さ方向にエッチングされる。図4(d)に示すように、レジストパターン32を除去すると、パッド部11および接続エリア12と、放熱部13Aおよび13Bとを有するフレーム部10のおおよその形状が完成する。
【0018】
次に、フレーム部10をメッキ浴につける等によりメッキ処理を行い、メッキ層14を形成する。(メッキ処理工程)。メッキの種類としては、銀メッキ、金メッキ、パラジウムメッキなどを用いることができる。また、これらのメッキ処理を施す前に、耐熱拡散性が優れたニッケルメッキなどの下地メッキを施してもよい。
本実施形態では、図4(e)に示すように、フレーム部10の外面全体にメッキ層14が形成されているが、メッキ処理工程は、例えばパッド部11および接続エリア12の上面のみに局所的に行われてもよい。
【0019】
続く樹脂部形成工程では、図示しない上型と下型とでフレーム部10を厚さ方向に挟み、公知のトランスファーモールドによって樹脂材料を充填し、充填部21およびリフレクター部22を有する樹脂部20を形成する。
【0020】
図4(f)は、樹脂部形成工程後のフレーム部10を示す図である。図4(f)に示すように、パッド部11、接続エリア12、および放熱部13A、13Bの面上には、上型または下型とフレーム部10との間の微小な隙間に樹脂材料が進入することにより形成された樹脂バリ23等の余分な樹脂が存在している。
【0021】
次に、図4(g)に示すように、パッド部11、接続エリア12、および放熱部13A、13Bに対してバリ取り処理を行い、上述の余分な樹脂を各部位の面上から除去する(樹脂除去工程)。バリ取り処理の具体的方法は、フレーム部10の材質や、樹脂部20を形成する樹脂材料の組成等により公知の方法を適宜選択できるが、中でも電界研磨処理、プラズマ処理、およびアルゴンエッチング処理等を1種類または2種類以上組み合わせて好適に用いることができる。バリ取り処理により、パッド部11、接続エリア12等を覆うメッキ層14も一定程度あらされる(粗化される)が、上述した処理は、当該メッキ層14の表面を過度にあらすことなく樹脂バリ23等を除去することができるため、好ましい。
なお、本実施形態における樹脂除去工程は、液組成;リン酸 700ml、水 350ml、電圧;1.5〜2V、電流;6〜8A/dm、温度;20℃、時間;15〜30分の条件で電界研磨を行い、その後、電界研磨で取りきれなかった樹脂を、イオン銃条件;4kV、スパッタレート;18.53nm/min、ターゲット電流;4.1μA、圧力;7.4mPaの条件でのアルゴンエッチングにより除去するというものである。
樹脂除去工程が終わると、リードフレーム基板1が完成する。
【0022】
その後、図4(h)に示すように、バッド部11上にLED素子100を搭載し、ワイヤー101を用いたワイヤーボンディングによりLED素子100と接続エリア12とを接続してLED素子100を実装する。さらに、図4(i)に示すように、キャビティCに封止樹脂102を充填してLED素子100を封止すると、LEDパッケージ110が完成する。
【0023】
本実施形態のリードフレーム基板1の製造方法によれば、樹脂形成工程終了後にパッド部11および接続エリア12上に残存する樹脂バリ等の余分な樹脂を樹脂除去工程により除去することができる。したがって、パッド部11および接続エリア12における樹脂の悪影響を抑制して、ワイヤーボンディングによる接続信頼性の高いリードフレーム基板を製造することができる。
【0024】
また、樹脂除去工程において、放熱部13A、13Bの面上に残存する樹脂も除去されるため、製造されるLEDパッケージ110の裏面が平坦となり、外部基板等との接続信頼性を高めることができる。
【0025】
さらに、樹脂除去工程がウェットブラスト処理、プラズマ処理、およびウォータージェット処理のいずれかを含んで行われるため、パッド部11および接続エリア12の表面に形成されたメッキ層14を過度にあれさせることなく樹脂バリ等を除去することができる。加えて、メッキ層14の表面にも反射特性を大きく変化させない程度の微小な凹凸が生じるため、封止樹脂102とリードフレーム基板1との密着性を高めることができる。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0027】
例えば、本発明のリードフレーム基板の製造方法においては、一枚の金属板にパッド部および接続エリアを複数組形成し、各組に対応するように複数のリフレクター部を有する樹脂部を形成して、その後、一つずつ切り離すことにより多数のリードフレーム基板が製造されてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 LED素子用リードフレーム基板
10 フレーム部
11 パッド部
12 接続エリア
14 メッキ層
20 樹脂部
22 リフレクター部
30 金属板
100 LED素子
101 ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子が搭載されるパッド部と、ワイヤーを介して前記パッド部に搭載された前記LED素子と電気的に接続される接続エリアとを有するフレーム部と、平面視において前記パッド部および前記接続エリアを囲むリフレクター部を有し、前記フレーム部に取り付けられた樹脂部とを備えたLED素子用リードフレーム基板の製造方法であって、
金属板に前記パッド部および前記接続エリアを形成して前記フレーム部を形成するエッチング工程と、
前記エッチング工程後に、前記パッド部および前記接続エリアにメッキ層を形成するメッキ処理工程と、
前記メッキ処理工程後に、前記フレーム部に対して前記樹脂部を成形する樹脂部形成工程と、
前記樹脂部形成工程後に、前記パッド部および前記接続エリア上に存在する樹脂を除去する樹脂除去工程と、
を備えることを特徴とするLED素子用リードフレーム基板の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂除去工程では、前記フレーム部において前記パッド部および前記接続エリアが形成された面と反対側の面上においても樹脂が除去されることを特徴とする請求項1に記載のLED素子用リードフレーム基板の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂除去工程は、電界研磨処理、プラズマ処理、およびアルゴンエッチング処理のいずれかを含んで行われることを特徴とする請求項1または2に記載のLED素子用リードフレーム基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−182210(P2012−182210A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42576(P2011−42576)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】