説明

MEMSセンサ

【課題】可動部の破損を防止し、耐久性に優れたMEMSセンサを得る。
【解決手段】機械的に動作可能な可動部とこの可動部の変位を電気的に検出するセンサ素子を形成したセンサチップ基板を、可動部との間に空隙を設けてベース基板に接合してなるMEMSセンサにおいて、基板接合面に、可動部の外周の一部に沿って凹部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSセンサに関し、特に衝撃破損の防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、加速度計、光通信、生物医学システムなど多くの技術分野で、微小電気機械システム(MEMS;Micro Electro Mechanical Systems)を利用したMEMSセンサが注目されている。MEMSセンサは、一般に、機械的に動作可能な可動部と該可動部の変位を電気的に検出するセンサ素子を半導体微細加工技術により形成したセンサチップ基板と、可動部との間に空隙を設けた状態で該センサチップ基板に接合したベース基板(支持基板)とを備えている。このようなMEMSセンサは、具体的には加速度センサ、角速度センサ、圧力センサに適用可能である。例えば特許文献1には、中央部と中央部の外周縁から四方に延在して成る梁部とからなる撓み部と、中央部にネック部を介して懸架支持される重り部と、内周側面に梁部が連結されて成る枠状のフレームと、フレームの下面を支持し、重り部の外周縁を切り込み部を介して包囲する支持部材とを有して構成された半導体加速度センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−311631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構造のMEMSセンサでは、センサチップ基板の可動部とベース基板の間に空隙を有する中空構造であるため、落下などによりベース基板側から衝撃が加えられると、その衝撃エネルギーを受けた可動部が共振し、可動部が破損してしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、以上の問題意識に基づき、可動部の破損を防止し、耐久性に優れたMEMSセンサを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、可動部の破損原因が、ベース基板側から受けた衝撃エネルギーが可動部周縁から可動部中心に向かって均一に伝わり、可動部が共振しやすいことにあるとの結論に達して、完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、機械的に動作可能な可動部とこの可動部の変位を電気的に検出するセンサ素子を形成したセンサチップ基板を、前記可動部との間に空隙を設けてベース基板に接合してなるMEMSセンサにおいて、前記センサチップ基板と前記ベース基板の接合面に、前記可動部の外周の一部に沿って、凹部を設けたことを特徴としている。
【0008】
凹部は、例えば可動部が平面視矩形状で形成されている場合、該平面視矩形の各角部の外周に沿う平面視L字形状でそれぞれ形成することができる。または、該平面視矩形の180°対向する一対の角部に、該角部の外周に沿う平面L字形状で形成してもよい。あるいは、該平面視矩形の180°対向する一対の辺の外周に、該各辺に沿う平面視直線状で形成することもできる。
【0009】
凹部は、可動部との空隙を真空状態で保持するMEMSセンサの場合、センサチップ基板とベース基板との接合により真空密閉されていることが実際的である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベース基板側から可動部に伝わる衝撃エネルギーは、凹部を介して可動部の周縁方向で位相が異なり、可動部中心で打ち消し合う作用をするので、この衝撃エネルギーによる可動部の共振を抑えられる。これにより、可動部の破損を防止でき、耐久性に優れたMEMSセンサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のMEMSセンサを半導体圧力センサに適用した第1実施形態を示す断面図(図3のI−I線に沿う断面図)である。
【図2】同半導体圧力センサを示す断面図(図3のII−II線に沿う断面図)である。
【図3】同半導体圧力センサを示す平面図であり、基板接合面に設けた凹部と、ダイヤフラム(及びキャビティ)との位置関係を模式的に示している。
【図4】基板接合面に設けた凹部で起きるエネルギーの干渉を説明する模式図である。
【図5】本発明のMEMSセンサを半導体圧力センサに適用した第2実施形態であって、基板接合面に設ける凹部の変形例を示す平面図である。
【図6】本発明のMEMSセンサを半導体圧力センサに適用した第3実施形態であって、基板接合面に設ける凹部の変形例を示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】本発明のMEMSセンサを半導体加速度センサに適用した第4実施形態を示す断面図である。
【図9】同半導体加速度センサを示す平面図である。
【図10】実施例1について、MEMSセンサの落下時に可動部エッジにかかる最大主応力を経過時間に沿って測定した結果を示すグラフである。
【図11】比較例1について、MEMSセンサの落下時に可動部エッジにかかる最大主応力を経過時間に沿って測定した結果を示すグラフである。
【図12】比較例2について、MEMSセンサの落下時に可動部エッジにかかる最大主応力を経過時間に沿って測定した結果を示すグラフである。
【図13】図10のグラフを周波数分解して表したグラフである。
【図14】図11のグラフを周波数分解して表したグラフである。
【図15】図12のグラフを周波数分解して表したグラフである。
【図16】図10の測定に用いた、基板接合面にダイヤフラムの外周一部に位置する凹部を設けた実施例1を説明する断面図及び平面図である。
【図17】図11の測定に用いた、基板接合面に凹部を具備しない比較例1を説明する断面図及び平面図である。
【図18】図12の測定に用いた、基板接合面にダイヤフラムの外周全体に位置する凹部を設けた比較例2を説明する断面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示している。図1、図2は、本発明のMEMSセンサを半導体圧力センサに適用した第1実施形態を示す断面図、図3は平面図である。
【0013】
MEMSセンサである半導体圧力センサ101は、絶対圧を検出するダイヤフラム型の半導体圧力センサであって、外圧を受けて変形する圧力検出用のダイヤフラム(可動部)21とキャビティ(空隙)20を表裏面に形成したセンサチップ基板10と、このセンサチップ基板10にキャビティ20が真空密閉されるようにして接合したベース基板30とを備えている。
【0014】
センサチップ基板10は、シリコン酸化膜(SiO2)13を介して第1シリコン基板11と第2シリコン基板12を貼り合わせてなるSOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板である。第1シリコン基板11は、半導体微細加工技術により、ダイヤフラム21の変位を電気的に検出するセンサ素子として複数の圧力感応抵抗素子22を埋設形成した回路形成面(図1、図2の上面)を有している。回路形成面は、複数の圧力感応抵抗素子22の上方位置を除いて、シリコン酸化膜で覆われている。シリコン酸化膜上には各圧力感応抵抗素子22に導通する配線23(図3)及びパッド24(図2、図3)が設けられ、さらに圧力感応抵抗素子22、配線23及びシリコン酸化膜は、図示されていないシリコンナイトライド(Si34)からなるパッシベーション膜で絶縁保護されている。パッド24は、パッシベーション膜から露出しており、外部の測定装置に接続可能となっている。本実施形態では圧力感応抵抗素子22としてピエゾ抵抗を用いるが、これに限定されない。
【0015】
センサチップ基板10には、第2シリコン基板12とシリコン酸化膜13の一部を第2シリコン基板12側からドライエッチングにより除去することによって上記キャビティ20が形成され、このキャビティ20の上面を構成するシリコン酸化膜13及び第1シリコン基板11によって上記ダイヤフラム21が形成されている。キャビティ20及びダイヤフラム21の中心軸Xは、センサチップ基板10及びベース基板30の平面中心Oと一致している。図3に示されるように、ダイヤフラム21は平面視矩形をなし、ダイヤフラム21の矩形輪郭の各辺にかかるようにして複数の圧力感応抵抗素子22が配置されている。ダイヤフラム21の平面形状は、圧力を受けて歪む形状であれば他の形状でもよく、圧力感応抵抗素子22の数、配置も任意に設定可能である。
【0016】
ベース基板30は、センサチップ基板10を支持するシリコン基板である。このベース基板30は、基板中央でキャビティ20に臨み、基板周縁部で第2シリコン基板12に接合する表面30aとは反対側の裏面30bで、外装パッケージ35に樹脂接着剤36により接合されている。
【0017】
上記センサチップ基板10とベース基板31の接合面には、図2、3に示されるように、平面視矩形をなすダイヤフラム21の外周に位置させて、該ダイヤフラム21の4つの角部に沿う平面視L字形状の凹部41がそれぞれ設けられている。凹部41は、センサチップ基板10を第2シリコン基板12側からドライエッチング加工または機械的な研磨加工を施して形成されていて、センサチップ基板10とベース基板30の接合により真空状態で密閉されている。
【0018】
半導体圧力センサ101は、ダイヤフラム21が外面に付加される圧力に応じて歪むと、その歪み度合いに応じて複数の圧力感応抵抗素子22の抵抗値が変化し、この複数の圧力感応抵抗素子22で構成されたブリッジ回路の中点電位がセンサ出力として測定装置に出力される。測定装置は、各パッド24を介して、外装パッケージ35に実装された半導体圧力センサ101に接続され、半導体圧力センサ101の出力(中点電位変化)に基づいて圧力を測定できるようになっている。
【0019】
落下などにより半導体圧力センサ101が外装パッケージ35側から衝撃を受けると、その衝撃エネルギーEは、ベース基板30からセンサチップ基板10に伝わり、ダイヤフラム21の周縁から中心へ向かう。このエネルギー伝播経路中、センサチップ基板10とベース基板30の接合面では、図4に示されるように、真空密閉された凹部40で衝撃エネルギーEが干渉を起こす。よって、凹部40が形成されている部分では干渉した衝撃エネルギーEがセンサチップ基板10へ伝わり、凹部40が形成されていない部分ではベース基板30からの衝撃エネルギーがそのままダイレクトにセンサチップ基板10へ伝わる。すなわち、ダイヤフラム21の周縁に伝わる衝撃エネルギーEは、センサチップ基板10とベース基板30の接合面での凹部40の有無により、周縁方向においてエネルギー量及び位相に差が生じる。位相の異なる衝撃エネルギーEは、ダイヤフラム21の周縁から中心に向かうとダイヤフラム21の中心で相殺されるので、ダイヤフラム21の中心で実際に受ける衝撃エネルギーEは小さくなり、衝撃によるダイヤフラム21の共振を抑えることができる。
【0020】
図5は、本発明のMEMSセンサを半導体圧力センサに適用した第2実施形態を示す平面図である。第2実施形態による半導体圧力センサ201には、センサチップ基板10とベース基板30の接合面に、平面視矩形状をなすダイヤフラム21の外周に位置させて、該ダイヤフラム21の対角線方向の(180°対向する)一対の角部にのみ、該角部を囲む平面視L字形状の凹部42を設けてある。このようにダイヤフラム21の一対の角部に対応させて基板接合面に凹部42を形成しても、該凹部42があることでベース基板30から受ける衝撃エネルギーEの伝播経路が変化するので、ダイヤフラム21の周縁に伝わる衝撃エネルギーは一様でなくなる。これにより、位相の異なる衝撃エネルギーがダイヤフラム21の中心で相殺されて、衝撃によるダイヤフラム21の共振を抑えることができる。凹部42以外の構成は、第1実施形態と同一であり、凹部42を通るように図5のII−II線で切断して示す半導体圧力センサ201の断面図は図2と同様になる。
【0021】
図6及び図7は、本発明のMEMSセンサを半導体圧力センサに適用した第3実施形態を示す平面図及び断面図である。第3実施形態に示す半導体圧力センサ301には、センサチップ基板10とベース基板30の接合面に、平面視矩形状をなすダイヤフラム21の外周に位置させて、該ダイヤフラム21の平行な一対の辺(180°対向する一対の辺)に沿って平面視直線状の凹部43をそれぞれ設けてある。このようにダイヤフラム21の一対の辺に対応させて基板接合面に凹部43を形成しても、該凹部43があることでベース基板30から受ける衝撃エネルギーEの伝播経路が変化するので、ダイヤフラム21の周縁に伝わる衝撃エネルギーは一様でなくなる。これにより、位相の異なる衝撃エネルギーがダイヤフラム21の中心で相殺されて、衝撃によるダイヤフラム21の共振を抑えることができる。凹部43以外の構成は、第1実施形態と同一である。
【0022】
第1実施形態の4つの凹部41、第2実施形態の一対の凹部42、及び第3実施形態の一対の凹部43はそれぞれダイヤフラム21の中心軸Xに対して回転対称となり、ダイヤフラム21の外周全部ではなく外周の一部に凹部41、42、43があることで、ダイヤフラム21に伝わる衝撃エネルギーの位相及びエネルギー量を周縁方向で異ならせることができる。
【0023】
第1〜第3実施形態において、凹部41、42、43は、ベース基板30側に形成されていても、センサチップ基板10とベース基板31の両方に形成されていてもよい。凹部41、42、43は、センサチップ基板10に形成すればキャビティ20と同時に形成できるので、製造容易となって好ましい。
【0024】
図8及び図9は、本発明のMEMSセンサを半導体加速度センサ401に適用した第4実施形態を示す断面図及び平面図である。半導体加速度センサ401は、ダイヤフラム型の半導体加速度センサであって、加速度が加えられたときに重り423の慣性力により撓む可動部421と、該可動部421の撓み量を電気的に検出するセンサ素子422とを形成したセンサチップ基板410を備えている。
【0025】
可動部421は、センサチップ基板410の外枠フレーム410Aで囲まれた全体として平面視矩形状をなしていて、その中央に位置する平面視矩形状の中央部421aと、この中央部421aの外周縁からセンサチップ基板410の外枠レーム部410Aに延出させた梁部421bとで構成され、中央部421aに重り423を懸架支持している。図9に示されるように、中央部421aの矩形の輪郭の各辺にかかるようにして、上記複数のセンサ素子422が配置されている。本実施形態ではセンサ素子422としてピエゾ抵抗を用いるが、これに限定されない。中央部421aの平面形状は、重り423の慣性力を受けて歪む形状であれば他の形状でもよく、センサ素子422の数、配置も任意に設定可能である。
【0026】
重り423の周囲には、センサチップ基板410をその裏面(センサ素子422が形成された面とは反対側の面)からドライエッチングにより除去することによって空隙425が形成されている。この空隙425を生じさせた状態で、センサチップ基板410とベース基板430は接合されている。ベース基板430は、センサチップ基板410の支持基板となるシリコン基板である。ベース基板430は、センサチップ基板410との接合面とは反対側の面が、樹脂接着剤436により外装パッケージ435に接着固定されている。可動部421(中央部421a)の中心軸Xとセンサチップ基板10及びベース基板30の平面中心Oは、一致している。
【0027】
上記センサチップ基板410とベース基板430の接合面には、図8、図9に示されるように、全体として平面視矩形をなす可動部421の外周、すなわち、外枠フレーム部410Aに位置させて、該可動部421の4つ角部をそれぞれ囲む平面視L字形状の凹部441が設けられている。凹部441は、センサチップ基板410をその裏面側からドライエッチング加工または機械的な研磨加工を施して形成されていて、センサチップ基板410とベース基板430の接合により閉じられている。
【0028】
半導体加速度センサ401は、重り423に加速度が加わると、重り423と連動する可動部421が撓み、この撓み量に応じて複数のセンサ素子422の出力(センサ素子422がピエゾ抵抗であれば抵抗値)が変化し、これら複数のセンサ素子422で構成されたブリッジ回路の中点電位がセンサ出力として測定装置に出力される。測定装置は、半導体加速度センサ401の出力(中点電位変化)に基づいて加速度を測定できるようになっている。
【0029】
落下などにより半導体加速度センサ401が外装パッケージ435側から衝撃を受けると、その衝撃エネルギーEは、ベース基板430からセンサチップ基板410に伝わり、梁部421bを介して中央部421aの周縁から中心へ向かう。このエネルギー伝播経路中、センサチップ基板410とベース基板430の接合面では、上述の第1実施形態と同様に、密閉された凹部441で衝撃エネルギーEが干渉を起こす。よって、凹部441が形成されている部分では干渉した衝撃エネルギーEがセンサチップ基板410へ伝わり、凹部441が形成されていない部分ではベース基板430からの衝撃エネルギーEがそのままダイレクトにセンサチップ基板410へ伝わる。すなわち、可動部421(中央部421a、梁部421b)の周縁に伝わる衝撃エネルギーEは、センサチップ基板410とベース基板430の接合面での凹部441の有無により、周縁方向においてエネルギー量及び位相に差が生じる。位相の異なる衝撃エネルギーEは、可動部421の周縁から中心に向かうと可動部421の中心で相殺されるので、可動部421の中央部421aが実際に受ける衝撃エネルギーEは小さくなり、衝撃による可動部421の共振を抑えることができる。
【0030】
図10〜図12は、MEMSセンサの落下時に、可動部のエッジにかかる最大主応力を経過時間に沿って測定した結果を示すグラフである。この測定は、図16に示される基板接合面にダイヤフラム21の一対の辺に沿う直線状の凹部43を設けた実施例1(第3実施形態)、図17に示される基板接合面に凹部を設けていない比較例1、図18に示される基板接合面にダイヤフラム21の外周全体に各辺に沿う凹部45を設けた比較例2についてそれぞれ実施した。図10〜12の縦軸はダイヤフラム21の輪郭各辺の中心位置にかかる最大主応力を示し、横軸は落下時からの経過時間を示している。
【0031】
図10〜図12から明らかなように、落下時にダイヤフラム21が受ける衝撃は、実施例1で比較例1、2よりも小さくなっている。
【0032】
図13〜図15は、図10〜図12のグラフをそれぞれ周波数分解して表したグラフである。図13〜図15の縦軸はダイヤフラム21にかかる最大主応力に対応する信号値を示し、横軸は周波数を示している。
【0033】
図13〜図15を見ると、実施例1及び比較例1、2のいずれにおいても、衝撃によるダイヤフラム21の共振周波数は300Hz、1400Hz付近にあることがわかる。凹部を具備しない比較例1では、共振周波数300Hzのとき信号値7000、共振周波数1400Hzのとき信号値4000となっている。これに対し、基板接合面にダイヤフラム21の外周一部に位置する凹部43を設けた実施例1では、共振周波数300Hzのとき信号値4000、共振周波数1400Hzのとき信号値3200程度と明らかに比較例1より小さくなっており、凹部43を設けたことでダイヤフラム21が受ける応力が低減していることが明らかである。基板接合面にダイヤフラム21の外周全体に位置する凹部45を設けた比較例2では、共振周波数300Hzのとき信号値6500、共振周波数1400Hzのとき信号値5200であり、凹部を具備しない比較例1とそれほど変わらない。
【0034】
以上から明らかなように、センサチップ基板10(410)とベース基板30(430)の接合面において、可動部(ダイヤフラム21、可動部421)の外周の一部に凹部(41、42、43、441)を設けることで、可動部に伝わる衝撃エネルギーを低減でき、衝撃による可動部の共振を抑えることができる。これによって、可動部の破損を防止し、耐久性に優れたMEMSセンサが得られる。
【0035】
以上では、半導体圧力センサまたは半導体加速度センサに本発明を適用した実施形態について説明したが、半導体型に限らず、静電容量型の圧力センサや加速度センサのほか、接合したセンサチップ基板とベース基板の間に空隙を生じるMEMSセンサ一般に本発明は適用可能である。また第1〜第3実施形態では、キャビティが真空状態で保持されて絶対圧力を検出する絶対圧センサに本発明を適用しているが、本発明は、キャビティが外方に通じていて所定の基準圧力との差分を検出する差圧センサにも適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
101 201 301 半導体圧力センサ(MEMSセンサ)
10 センサチップ基板
11 第1シリコン基板
12 第2シリコン基板
13 シリコン酸化膜
20 キャビティ(空隙)
21 ダイヤフラム(可動部)
22 圧力感応抵抗素子(センサ素子)
30 ベース基板
30a 表面(接合面)
30b 裏面(実装面)
35 外装パッケージ
36 樹脂接着剤
41、42、43 凹部
401 半導体加速度センサ(MEMSセンサ)
410 センサチップ基板
410A 外枠フレーム
421 可動部
421a 中央部
421b 梁部
422 センサ素子
423 重り
430 ベース基板
435 外装パッケージ
436 樹脂接着剤
441 凹部
E 衝撃エネルギー
O 平面中心(基板中心)
X 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的に動作可能な可動部とこの可動部の変位を電気的に検出するセンサ素子を形成したセンサチップ基板を、前記可動部との間に空隙を設けてベース基板に接合してなるMEMSセンサにおいて、
前記センサチップ基板と前記ベース基板の接合面に、前記可動部の外周の一部に沿って、凹部を設けたことを特徴とするMEMSセンサ。
【請求項2】
請求項1記載のMEMSセンサにおいて、前記可動部は平面視矩形状をなし、前記凹部は、この平面視矩形の各角部の外周に沿う平面視L字形状でそれぞれ形成されているMEMSセンサ。
【請求項3】
請求項1記載のMEMSセンサにおいて、前記可動部は平面視矩形状をなし、前記凹部は、この平面視矩形の180°対向する一対の角部に、該角部の外周に沿う平面L字形状で形成されているMEMSセンサ。
【請求項4】
請求項1記載のMEMSセンサにおいて、前記可動部は平面視矩形状をなし、前記凹部は、この平面視矩形の180°対向する一対の辺の外周に、該各辺に沿う平面視直線状で形成されているMEMSセンサ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のMEMSセンサにおいて、前記凹部は、真空密閉されているMEMSセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−210402(P2010−210402A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56658(P2009−56658)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】