MEMSデバイスの製造方法
【課題】歩留まりを向上させ、ウエハーを個片にした後、パーティクル等を可動機構部分へ付着させることなく、貫通孔を形成可能なMEMSデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】物理量検出装置は、ヒンジ部11aにより変位可能に支持された可動部12と、可動部12と対向する位置に配置された固定電極22、32とを有する。この物理量検出装置の製造工程において、まず、可動部12上に配置される第1の硝子基板2の所定箇所に肉薄部26aを形成する。続いて、肉薄部26aを長波長レーザ光Laにより溶解させ、第1の硝子基板2を貫通させる。その後、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止する。
【解決手段】物理量検出装置は、ヒンジ部11aにより変位可能に支持された可動部12と、可動部12と対向する位置に配置された固定電極22、32とを有する。この物理量検出装置の製造工程において、まず、可動部12上に配置される第1の硝子基板2の所定箇所に肉薄部26aを形成する。続いて、肉薄部26aを長波長レーザ光Laにより溶解させ、第1の硝子基板2を貫通させる。その後、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量の測定に用いられるMEMSデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、MEMSデバイスにおいては、静電容量型の物理量検出器、アクチュエータ等、様々なものが提供されている。このようなMEMSデバイスは、Siなどを用いた小さな可動機構部分から形成され、そのサイズはμmオーダにおよぶ。そのため、可動機構部分は、空気の粘性の影響を受け、その特性が低下するという問題が生じる。
【0003】
そこで、空気の影響を低減させ、特性を向上させるには、可動機構部分を減圧状態で封止する構成が有効である。減圧状態で封止する方法として以下に示す2つの方法が挙げられる。なお、一般的に、MEMSデバイスは、可動機構部分を有する複数枚ウエハーを重ねて接合し、それら接合されたウエハーを個片(チップ)にする製造工程を経る。
【0004】
第一の方法は、ウエハーを重ねて接合し、可動機構部分を密閉する時点において減圧状態とする方法である。
【0005】
第二の方法は、ウエハーを個片にした後、中空の封止材料を用いて、その封止材料内部と共に減圧する方法である。
【0006】
MEMSデバイスは、その多くが構造上、製造工程途中で可動機構部分を封止するような構造をとるため、製造工程的には第一の方法が単純である。しかしながら、第一の方法は、圧力の安定性に課題がある。つまり、第一の方法では、実際に、ウエハーを重ねて封止する時にガス放出・流入等が生じる。さらに、第一の方法では、封止後の温度変化により、側壁等に吸着していた物質からガスが生じた場合、そのガス量に対し、封止した空間の容積が小さい。また、第一の方法では、ウエハーを一括で封止するため、ウエハーの一部に不良が発生した場合には、ウエハー1枚を取り替える必要がある。
【0007】
一方、第二の方法では、ウエハーを更に、封止材料で封止する構成をとっているため、その封止後の容積は、第一の方法よりも大きい。つまり、第二の方法においては、その圧力の安定性が、第一の方法よりも高い。また、第二の方法では、ウエハーを個片にした後に封止材料と共に減圧状態にして封止するため、個片の不良品を取り除けば、その他の個片は利用可能である。
【0008】
しかしながら、第二の方法においては、もともと密封封止構造をとっているウエハーに対して減圧用の貫通孔を設ける必要があり、それに伴う工程数の増大や、貫通時のパーティクルなどによる歩留まりの低下、貫通孔からの薬液、或いはガス浸入による歩留まりの低下が生じる。
【0009】
例えば、減圧用の貫通孔を設ける製造方法の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1によれば、溝状の箇所をウエハー面内に一括して作り込んだ後、個片にする際に途中までダイサにより切り込みを入れ、最後にウエハーを割断する時点で溝状の箇所を貫通させる。
【特許文献1】特表2002−539460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に示す製造方法であれば、割断時に発生するパーティクルが可動機構部分へ付着し、不良の原因となる。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、歩留まりを向上させ、ウエハーを個片にした後、パーティクル等を可動機構部分へ付着させることなく、貫通孔を形成可能なMEMSデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るMEMSデバイスの製造方法は、変位可能に支持された可動部と、前記可動部が配置される基板とを有するMEMSデバイスの製造方法であって、前記基板の貫通孔を形成させる領域に溶解部を形成する第一の工程と、前記可動部を前記基板上に配置した状態で固定させ、MEMSデバイス本体を形成する第二の工程と、前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる第三の工程と、前記MEMデバイス本体を封止部材により封止して、減圧する第四の工程とを有することを特徴とする。
【0013】
上記のような製造工程を有することにより、本発明に係るMEMSデバイスの製造方法によれば、溶解部を溶解して、基板を貫通することができるので、パーティクルの発生を防ぐことができる。また、ウエハー加工工程中は貫通していないため、貫通孔からの薬液、ガス浸入による歩留まりの低下が生じない。
【0014】
また、前記第三の工程にて、長波長レーザ照射により前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる構成としてもよい。
【0015】
また、前記第三の工程にて、前記溶解部の表面に光吸収膜を配置し、当該光吸収膜を介して、長波長レーザ照射により前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる構成としてもよい。
【0016】
また、前記第三の工程にて、前記溶解部の表面に薄膜抵抗体を配置し、当該薄膜抵抗体を加熱することにより前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる構成としてもよい。
【0017】
また、前記薄膜抵抗体の発熱部位は、直線状、渦巻き状、つづら折れ状のいずれかが望ましい。
【0018】
また、前記第三の工程にて、前記溶解部を所定距離離間した位置から所定温度で加熱することにより前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる構成としてもよい。
【0019】
また、前記溶解部は、前記基板の当該溶解部以外の箇所よりも肉薄に形成されており、5〜200μmの厚さが望ましい。
【0020】
また、前記溶解部は、前記基板の当該溶解部以外の箇所よりも低融点の材料により構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、歩留まりを向上させ、ウエハーを個片にした後、パーティクル等を可動機構部分へ付着させることなく、貫通孔を形成可能なMEMSデバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態係るMEMSデバイスの製造方法について説明する。なお、本実施形態においては、MEMSデバイスの一例として、加速度などの物理量を測定する物理量測定器を例として説明する。
【0023】
[第1実施形態の構成]
本発明の第1実施形態に係る物理量測定器の構成を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る物理量測定器の概略図である。図1に示すように、第1実施形態に係る物理量測定器は、静電容量センサ100Aと、リードLを介して静電容量センサ100Aからの信号に基づき静電容量を演算する演算器200とから構成されている。
【0024】
静電容量センサ100Aは、主として、シリコン基板1と、シリコン基板1の上面に接続された第1の硝子基板2と、シリコン基板1の下面に接続された第2の硝子基板3とを有する。また、静電容量センサ100Aは、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3を封止する封止パッケージ5を有する。ここで、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第3の硝子基板3が、静電容量を検出する静電容量センサ本体(MEMSデバイス本体)4Aとなる。
【0025】
シリコン基板1は、その外周をシリコン製の枠部11により構成されており、枠部11にヒンジ部11aを介して、シリコン基板1の厚さ方向に変位自在に支持された可動部(可動電極)12が設けられている。なお、可動部12の厚みは、枠部11の厚みよりも薄く形成されている。これら枠部11、ヒンジ部11a、可動部12は、一体形成されている。また、シリコン基板1の枠部11より内側には、収容部13a、13b、13cが設けられている。
【0026】
収容部13a、13bには、電極取出用のシリコン製の島13aa,13baが設けられている。それら島13aa,13baは、互いに、そして枠部11に接触しないように隔離され配置されている。すなわち、他の島、及び枠部11とは電気的に絶縁されている。
【0027】
第1の硝子基板2は、主に第1の硝子基板本体21と、シリコン基板1の可動部12と対向する第1の固定電極22と、第1の固定電極22から第1の硝子基板2の長手方向に延びる第1検出用電極23とから構成されている。また、この第1の硝子基板2は、その厚み方向に形成された導電性を有する第1及び第2リード取付部24,25を有している。
【0028】
第1及び第2リード取付部24,25には、リードLを介して演算器200が接続されている。また、第1リード取付部24は、第1検出用電極23と接する位置に設けられており、第2リード取付部25は、島13aaと接する位置に設けられている。また、収容部13cの上方にあたる第1の硝子基板2には、窪み、他の部分よりも肉薄に形成された肉薄部26aが形成されており、さらに肉薄部26aには貫通孔26bが形成されている。換言すると、肉薄部26aは、第1の硝子基板2にメンブレン状構造を持つ袋穴として形成されている。なお、例えば、第1の硝子基板2の厚みは、1mmであり、肉薄部26aの上面の厚みは、5〜200μmである。
【0029】
第2の硝子基板3は、主に第2の硝子基板本体31と、シリコン基板1の可動部12と対向する第2の固定電極32と、第2の固定電極32から第1の硝子基板2の長手方向、島13aaの底面に至るまで延びて形成された第2検出用電極33とから構成されている。なお、図示を省略するが、リードL以外にもシリコン基板1にリードが接続されている。また、第2の硝子基板3の厚みは、例えば、1mmである。
【0030】
すなわち、第1リード取付部24のリードLと図示しないシリコン基板1に接続されたリードからは、第1の固定電極22の静電容量が検出され、第2リード取付部25のリードLからは、島13aaを介して第2の固定電極32とシリコン基板1に接続されたリードの間の静電容量が検出される。
【0031】
これら静電容量センサ100Aを構成するシリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3は、陽極接合されている。すなわち、可動部12、第1の固定電極22、及び第2の固定電極32により封止された封止部4が構成されている。
【0032】
封止パッケージ5は、CANパッケージと呼ばれる金属パッケージである。封止パッケージ5は、第2の硝子基板3を載置する載置台51と、載置台51にその縁を接合した蓋52と、蓋52内側から載置台51の下方に突出した2本の脚部53とを有する。載置台51の上方に突出した脚部53には、リードLを介して第1及び第2リード取付部24,25が接続されており、載置台53の下方に突出した脚部53には、リードLを介して演算器200が接続されている。なお、封止パッケージ5の封止方法は、はんだ、抵抗加熱圧着、及び圧入等である。
【0033】
封止パッケージ5内は、高真空に保持されており、可動部12は空気抵抗による影響を受けることなく可動することができる。
【0034】
[第1実施形態の製造方法]
次に、図2及び図3を参照して、第1実施形態の製造方法について説明する。
【0035】
先ず、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3を用意する。ここで、肉薄部26aには、貫通孔26bが形成されていない。また、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3は、各々ウエハー加工工程を経て製造されたものである。肉薄部26aは、ドリルやサンドブラスト等で母材となる第1の硝子基板2を加工することにより形成する。
【0036】
次に、図2に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3各々の間を固定して、静電容量センサ本体4Aを形成する。
【0037】
次に、図3に示すように、肉薄部26aに長波長レーザ光La(≧2μm)を照射し、肉薄部26aを溶解させ、貫通孔26bを形成する。
【0038】
この後、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止して、その封止パッケージ5内を図示しない真空ポンプ等により減圧して、図1に示す、静電容量センサ100Aが形成される。
【0039】
このような製造方法によれば、肉薄部26aを溶解させて貫通孔26bを形成させるので、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0040】
また、溶解させることで貫通孔26bにクラックや、クラックの原因となる微小な欠陥を生じさせることがなく、将来的にパーティクルの発生する恐れがない。
【0041】
また、ウエハー加工工程中は貫通しないため、貫通孔より薬液が侵入することなく、可動部12へのダメージがない。
【0042】
また、長波長レーザ光Laは真空中においても使用できるので、封止パッケージ5による真空封止工程と一括して加工ができる。
【0043】
[第2実施形態の構成]
本発明の第2実施形態に係る物理量測定器の構成を説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る物理量測定器の概略図である。なお、第2実施形態の物理量測定器において、第1実施形態と同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図4に示すように、第2実施形態に係る物理量測定器は、静電容量センサ100Bと、演算器200とから構成されている。
【0045】
静電容量センサ100Bは、第1の硝子基板2’の構成が、第1実施形態と異なる。換言すると、静電容量センサ本体4Bの構成が、第1実施形態と異なる。
【0046】
第1の硝子基板2’は、肉薄部26aの代わりに、低融点の材料(In、Sn、ハンダ、フリット硝子等)から構成された低融点部27を設けている。そして、低融点部27には、貫通孔27aが形成されている。
【0047】
[第2実施形態の製造方法]
次に、図5及び図6を参照して、第2実施形態の製造方法について説明する。
【0048】
先ず、図5に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2’、第2の硝子基板3を用意する。ここで、低融点部27には、貫通孔27aが形成されていない。また、シリコン基板1、第1の硝子基板2’、第2の硝子基板3は、各々ウエハー加工工程を経て製造されたものである。低融点部27は、一端、母材となる第1の硝子基板2’に貫通孔を形成し、低融点材料を浸漬や印刷等で穴埋めすることよって形成する。
【0049】
次に、図5に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2’、第2の硝子基板3各々の間を固定して、静電容量センサ本体4Bを形成する。
【0050】
次に、図6に示すように、低融点部27に長波長レーザ光La(≧2μm)を照射し、低融点部27を溶解させ、貫通孔27aを形成する。
【0051】
この後、シリコン基板1、第1の硝子基板2’、及び第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止して、その封止パッケージ5内を図示しない真空ポンプ等により減圧して、図4に示す静電容量センサ100Bが形成される。
【0052】
このような製造方法によれば、第1実施形態の製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0053】
[第3実施形態の構成]
本発明の第3実施形態に係る物理量測定器の構成を説明する。図7は、本発明の第3実施形態に係る物理量測定器の概略図である。なお、第3実施形態の物理量測定器において、第1実施形態と同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図7に示すように、第3実施形態に係る物理量測定器は、静電容量センサ100Cと、演算器200とから構成されている。
【0055】
静電容量センサ100Cは、第1の硝子基板2の肉薄部26aの表面に光吸収膜28を設けている。また、光吸収膜28には、肉薄部26aの貫通孔26bと同一形状の、貫通孔28aが形成されている。
【0056】
[第3実施形態の製造方法]
次に、図8及び図9を参照して、第3実施形態の製造方法について説明する。
【0057】
先ず、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3を用意する。ここで、肉薄部26aには、貫通孔26bが形成されていない。また、光吸収膜28には、貫通孔28aが形成されていない。また、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3は、各々ウエハー加工工程を経て製造されたものである。肉薄部26aは、ドリルやサンドブラスト等で母材となる第1の硝子基板2を加工することにより形成する。
【0058】
次に、図8に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3各々の間を固定して、静電容量センサ本体4Aを形成する。
【0059】
次に、図9に示すように、光吸収膜28に長波長レーザ光La(≧2μm)を照射し、光吸収膜28を溶解させ、貫通孔28aを形成する。また、光吸収膜28を介して、肉薄部26aを溶解させ、貫通孔26bを形成する。
【0060】
この後、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止して、その封止パッケージ5内を図示しない真空ポンプ等により減圧して、図7に示す、静電容量センサ100Cが形成される。なお、上述した光吸収膜28は、パタンニングによる形成、或いは第1の硝子基板2の全体に亘って正膜していてもよい。
【0061】
このような製造方法によれば、第1実施形態の製造方法と同様の効果を得ることができる。さらに、光吸収膜28により、長波長レーザ光Laによる加熱を効率的に行うことができる。また、光吸収膜28の特性を選択して、形成することにより、使用する長波長レーザ光Laの波長を任意に選択することが可能となる。
【0062】
[第4実施形態の構成]
本発明の第4実施形態に係る物理量測定器の構成を説明する。図10は、本発明の第4実施形態に係る物理量測定器の概略図である。なお、第4実施形態の物理量測定器において、第3実施形態と同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
図10に示すように、第4実施形態に係る物理量測定器は、静電容量センサ100Dと、演算器200とから構成されている。
【0064】
静電容量センサ100Dは、第1の硝子基板2の肉薄部26aの表面に薄膜抵抗体29を設けている。また、薄膜抵抗体29には、肉薄部26aの貫通孔26bと同一形状の、貫通孔29aが形成されている。なお、薄膜抵抗体29は、タングステンや、タンタルのような高融点材料である。
【0065】
[第4実施形態の製造方法]
次に、図11及び図12を参照して、第4実施形態の製造方法について説明する。
【0066】
先ず、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3を用意する。ここで、肉薄部26aには、貫通孔26bが形成されていない。また、薄膜抵抗体29には、貫通孔29aが形成されていない。また、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3は、各々ウエハー加工工程を経て製造されたものである。肉薄部26aは、ドリルやサンドブラスト等で母材となる第1の硝子基板2を加工することにより形成する。
【0067】
次に、図11に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3各々の間を固定して、静電容量センサ本体4Aを形成する。
【0068】
次に、図12に示すように、薄膜抵抗体29に所定電圧Vを印加し、薄膜抵抗体29を加熱させ、肉薄部26a、及び薄膜抵抗体29自体に、貫通孔26b、29aを形成する。
【0069】
この後、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止して、その封止パッケージ5内を図示しない真空ポンプ等により減圧して、図10に示す、静電容量センサ100Dが形成される。
【0070】
なお、上述した薄膜抵抗体29の発熱部位29bは、図13に示す直線形状、図14に示す渦巻き形状、図15に示すつづら折れ形状等に形成されている。発熱部位29bは、直線形状よりも、渦巻き形状、又はつづら折れ形状に形成した方が効率良く加熱することができる。
【0071】
このような製造方法によれば、第1実施形態の製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0072】
[第5実施形態の構成]
本発明の第5実施形態に係る物理量測定器の構成を説明する。図16は、本発明の第5実施形態に係る物理量測定器の概略図である。なお、第5実施形態の物理量測定器において、第2実施形態と同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
図16に示すように、第5実施形態に係る物理量測定器は、静電容量センサ100Eと、演算器200とから構成されている。
【0074】
静電容量センサ100Eは、第1の硝子基板2’’の構成が第2実施形態と異なる。換言すると、静電容量センサ本体4Cの構成が、第2実施形態と異なる。第1の硝子基板2’’は、第2実施形態よりも肉厚の薄い低融点部27’を設けている。また、低融点部27’には、貫通孔27’aが形成されている。なお、低融点部27’の厚みは、例えば5〜200μmである。
【0075】
[第5実施形態の製造方法]
次に、図17及び図18を参照して、第5実施形態の製造方法について説明する。
【0076】
先ず、シリコン基板1、第1の硝子基板2’’、第2の硝子基板3を用意する。ここで、低融点部27’には、貫通孔27’aが形成されていない。また、シリコン基板1、第1の硝子基板2’’、第2の硝子基板3は、各々ウエハー加工工程を経て製造されたものである。低融点部27’は、一端、母材となる第1の硝子基板2’’に貫通孔を形成し、低融点材料を浸漬や印刷等で薄く穴埋めすることよって形成する。
【0077】
次に、図17に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2’’、第2の硝子基板3各々の間を固定して、静電容量センサ本体4Cを形成する。
【0078】
次に、図18に示すように、低融点部27’から、所定距離離間した位置に発熱体H(ホットプレート、又はヒータ等)を配置し、加熱する。なお、例えば、所定距離は、10mmであり、発熱体Hの温度は、400℃〜500℃である。この発熱体Hの加熱により、低融点部27’は溶解し、貫通孔27’aを形成する。
【0079】
この後、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止して、その封止パッケージ5内を図示しない真空ポンプ等により減圧して、図16に示す、静電容量センサ100Eが形成される。
【0080】
このような製造方法によれば、第1実施形態の製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0081】
以上、第1実施形態〜第5実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、第2実施形態における第2の硝子基板2’の低融点部27に光吸収膜28を設け、長波長レーザ光Laにより貫通孔27a、28aを設ける製造方法であってもよい。また、第2実施形態における第2の硝子基板2’の低融点部27に薄膜抵抗体29を設け、薄膜抵抗体29の加熱により、貫通孔27a、29aを設ける製造方法であってもよい。また、第1実施形態における第2の硝子基板2の肉薄部26aを、ヒータHにより加熱し、貫通孔26bを設ける製造方法であってもよい。また、第2実施形態における第2の硝子基板2’の低融点部27を、ヒータHにより加熱し、貫通孔27aを設ける製造方法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態に係る物理量検出器の構成概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る物理量検出器の構成概略図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る物理量検出器の構成概略図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る物理量検出器の構成概略図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る薄膜抵抗体を示す図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係る薄膜抵抗体を示す図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係る薄膜抵抗体を示す図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係る物理量検出器の構成概略図である。
【図17】本発明の第5実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図18】本発明の第5実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【符号の説明】
【0083】
100A,100B,100C,100D,100E…静電容量センサ、200…演算器、1…シリコン基板、2,2’,2’’…第1の硝子基板、3…第2の硝子基板、4A,4B,4C…静電容量センサ本体、11…枠部、11a…ヒンジ部、12…可動部(可動電極)、13a、13b、13c…収容部、21…第1の硝子基板本体、22…第1の固定電極、23…第1検出用電極、24,25…第1及び第2リード取付部、26a…肉薄部、26b…貫通孔、27…低融点部、27a…貫通孔、28…光吸収膜、28a…貫通孔、29…薄膜抵抗体、29a…貫通孔、31…第2の硝子基板本体、32…第2の固定電極、33…第2検出用電極、5…封止パッケージ、51…載置台、52…蓋、53…脚部、L…リード。
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量の測定に用いられるMEMSデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、MEMSデバイスにおいては、静電容量型の物理量検出器、アクチュエータ等、様々なものが提供されている。このようなMEMSデバイスは、Siなどを用いた小さな可動機構部分から形成され、そのサイズはμmオーダにおよぶ。そのため、可動機構部分は、空気の粘性の影響を受け、その特性が低下するという問題が生じる。
【0003】
そこで、空気の影響を低減させ、特性を向上させるには、可動機構部分を減圧状態で封止する構成が有効である。減圧状態で封止する方法として以下に示す2つの方法が挙げられる。なお、一般的に、MEMSデバイスは、可動機構部分を有する複数枚ウエハーを重ねて接合し、それら接合されたウエハーを個片(チップ)にする製造工程を経る。
【0004】
第一の方法は、ウエハーを重ねて接合し、可動機構部分を密閉する時点において減圧状態とする方法である。
【0005】
第二の方法は、ウエハーを個片にした後、中空の封止材料を用いて、その封止材料内部と共に減圧する方法である。
【0006】
MEMSデバイスは、その多くが構造上、製造工程途中で可動機構部分を封止するような構造をとるため、製造工程的には第一の方法が単純である。しかしながら、第一の方法は、圧力の安定性に課題がある。つまり、第一の方法では、実際に、ウエハーを重ねて封止する時にガス放出・流入等が生じる。さらに、第一の方法では、封止後の温度変化により、側壁等に吸着していた物質からガスが生じた場合、そのガス量に対し、封止した空間の容積が小さい。また、第一の方法では、ウエハーを一括で封止するため、ウエハーの一部に不良が発生した場合には、ウエハー1枚を取り替える必要がある。
【0007】
一方、第二の方法では、ウエハーを更に、封止材料で封止する構成をとっているため、その封止後の容積は、第一の方法よりも大きい。つまり、第二の方法においては、その圧力の安定性が、第一の方法よりも高い。また、第二の方法では、ウエハーを個片にした後に封止材料と共に減圧状態にして封止するため、個片の不良品を取り除けば、その他の個片は利用可能である。
【0008】
しかしながら、第二の方法においては、もともと密封封止構造をとっているウエハーに対して減圧用の貫通孔を設ける必要があり、それに伴う工程数の増大や、貫通時のパーティクルなどによる歩留まりの低下、貫通孔からの薬液、或いはガス浸入による歩留まりの低下が生じる。
【0009】
例えば、減圧用の貫通孔を設ける製造方法の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1によれば、溝状の箇所をウエハー面内に一括して作り込んだ後、個片にする際に途中までダイサにより切り込みを入れ、最後にウエハーを割断する時点で溝状の箇所を貫通させる。
【特許文献1】特表2002−539460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に示す製造方法であれば、割断時に発生するパーティクルが可動機構部分へ付着し、不良の原因となる。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、歩留まりを向上させ、ウエハーを個片にした後、パーティクル等を可動機構部分へ付着させることなく、貫通孔を形成可能なMEMSデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るMEMSデバイスの製造方法は、変位可能に支持された可動部と、前記可動部が配置される基板とを有するMEMSデバイスの製造方法であって、前記基板の貫通孔を形成させる領域に溶解部を形成する第一の工程と、前記可動部を前記基板上に配置した状態で固定させ、MEMSデバイス本体を形成する第二の工程と、前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる第三の工程と、前記MEMデバイス本体を封止部材により封止して、減圧する第四の工程とを有することを特徴とする。
【0013】
上記のような製造工程を有することにより、本発明に係るMEMSデバイスの製造方法によれば、溶解部を溶解して、基板を貫通することができるので、パーティクルの発生を防ぐことができる。また、ウエハー加工工程中は貫通していないため、貫通孔からの薬液、ガス浸入による歩留まりの低下が生じない。
【0014】
また、前記第三の工程にて、長波長レーザ照射により前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる構成としてもよい。
【0015】
また、前記第三の工程にて、前記溶解部の表面に光吸収膜を配置し、当該光吸収膜を介して、長波長レーザ照射により前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる構成としてもよい。
【0016】
また、前記第三の工程にて、前記溶解部の表面に薄膜抵抗体を配置し、当該薄膜抵抗体を加熱することにより前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる構成としてもよい。
【0017】
また、前記薄膜抵抗体の発熱部位は、直線状、渦巻き状、つづら折れ状のいずれかが望ましい。
【0018】
また、前記第三の工程にて、前記溶解部を所定距離離間した位置から所定温度で加熱することにより前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる構成としてもよい。
【0019】
また、前記溶解部は、前記基板の当該溶解部以外の箇所よりも肉薄に形成されており、5〜200μmの厚さが望ましい。
【0020】
また、前記溶解部は、前記基板の当該溶解部以外の箇所よりも低融点の材料により構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、歩留まりを向上させ、ウエハーを個片にした後、パーティクル等を可動機構部分へ付着させることなく、貫通孔を形成可能なMEMSデバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態係るMEMSデバイスの製造方法について説明する。なお、本実施形態においては、MEMSデバイスの一例として、加速度などの物理量を測定する物理量測定器を例として説明する。
【0023】
[第1実施形態の構成]
本発明の第1実施形態に係る物理量測定器の構成を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る物理量測定器の概略図である。図1に示すように、第1実施形態に係る物理量測定器は、静電容量センサ100Aと、リードLを介して静電容量センサ100Aからの信号に基づき静電容量を演算する演算器200とから構成されている。
【0024】
静電容量センサ100Aは、主として、シリコン基板1と、シリコン基板1の上面に接続された第1の硝子基板2と、シリコン基板1の下面に接続された第2の硝子基板3とを有する。また、静電容量センサ100Aは、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3を封止する封止パッケージ5を有する。ここで、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第3の硝子基板3が、静電容量を検出する静電容量センサ本体(MEMSデバイス本体)4Aとなる。
【0025】
シリコン基板1は、その外周をシリコン製の枠部11により構成されており、枠部11にヒンジ部11aを介して、シリコン基板1の厚さ方向に変位自在に支持された可動部(可動電極)12が設けられている。なお、可動部12の厚みは、枠部11の厚みよりも薄く形成されている。これら枠部11、ヒンジ部11a、可動部12は、一体形成されている。また、シリコン基板1の枠部11より内側には、収容部13a、13b、13cが設けられている。
【0026】
収容部13a、13bには、電極取出用のシリコン製の島13aa,13baが設けられている。それら島13aa,13baは、互いに、そして枠部11に接触しないように隔離され配置されている。すなわち、他の島、及び枠部11とは電気的に絶縁されている。
【0027】
第1の硝子基板2は、主に第1の硝子基板本体21と、シリコン基板1の可動部12と対向する第1の固定電極22と、第1の固定電極22から第1の硝子基板2の長手方向に延びる第1検出用電極23とから構成されている。また、この第1の硝子基板2は、その厚み方向に形成された導電性を有する第1及び第2リード取付部24,25を有している。
【0028】
第1及び第2リード取付部24,25には、リードLを介して演算器200が接続されている。また、第1リード取付部24は、第1検出用電極23と接する位置に設けられており、第2リード取付部25は、島13aaと接する位置に設けられている。また、収容部13cの上方にあたる第1の硝子基板2には、窪み、他の部分よりも肉薄に形成された肉薄部26aが形成されており、さらに肉薄部26aには貫通孔26bが形成されている。換言すると、肉薄部26aは、第1の硝子基板2にメンブレン状構造を持つ袋穴として形成されている。なお、例えば、第1の硝子基板2の厚みは、1mmであり、肉薄部26aの上面の厚みは、5〜200μmである。
【0029】
第2の硝子基板3は、主に第2の硝子基板本体31と、シリコン基板1の可動部12と対向する第2の固定電極32と、第2の固定電極32から第1の硝子基板2の長手方向、島13aaの底面に至るまで延びて形成された第2検出用電極33とから構成されている。なお、図示を省略するが、リードL以外にもシリコン基板1にリードが接続されている。また、第2の硝子基板3の厚みは、例えば、1mmである。
【0030】
すなわち、第1リード取付部24のリードLと図示しないシリコン基板1に接続されたリードからは、第1の固定電極22の静電容量が検出され、第2リード取付部25のリードLからは、島13aaを介して第2の固定電極32とシリコン基板1に接続されたリードの間の静電容量が検出される。
【0031】
これら静電容量センサ100Aを構成するシリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3は、陽極接合されている。すなわち、可動部12、第1の固定電極22、及び第2の固定電極32により封止された封止部4が構成されている。
【0032】
封止パッケージ5は、CANパッケージと呼ばれる金属パッケージである。封止パッケージ5は、第2の硝子基板3を載置する載置台51と、載置台51にその縁を接合した蓋52と、蓋52内側から載置台51の下方に突出した2本の脚部53とを有する。載置台51の上方に突出した脚部53には、リードLを介して第1及び第2リード取付部24,25が接続されており、載置台53の下方に突出した脚部53には、リードLを介して演算器200が接続されている。なお、封止パッケージ5の封止方法は、はんだ、抵抗加熱圧着、及び圧入等である。
【0033】
封止パッケージ5内は、高真空に保持されており、可動部12は空気抵抗による影響を受けることなく可動することができる。
【0034】
[第1実施形態の製造方法]
次に、図2及び図3を参照して、第1実施形態の製造方法について説明する。
【0035】
先ず、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3を用意する。ここで、肉薄部26aには、貫通孔26bが形成されていない。また、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3は、各々ウエハー加工工程を経て製造されたものである。肉薄部26aは、ドリルやサンドブラスト等で母材となる第1の硝子基板2を加工することにより形成する。
【0036】
次に、図2に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3各々の間を固定して、静電容量センサ本体4Aを形成する。
【0037】
次に、図3に示すように、肉薄部26aに長波長レーザ光La(≧2μm)を照射し、肉薄部26aを溶解させ、貫通孔26bを形成する。
【0038】
この後、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止して、その封止パッケージ5内を図示しない真空ポンプ等により減圧して、図1に示す、静電容量センサ100Aが形成される。
【0039】
このような製造方法によれば、肉薄部26aを溶解させて貫通孔26bを形成させるので、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0040】
また、溶解させることで貫通孔26bにクラックや、クラックの原因となる微小な欠陥を生じさせることがなく、将来的にパーティクルの発生する恐れがない。
【0041】
また、ウエハー加工工程中は貫通しないため、貫通孔より薬液が侵入することなく、可動部12へのダメージがない。
【0042】
また、長波長レーザ光Laは真空中においても使用できるので、封止パッケージ5による真空封止工程と一括して加工ができる。
【0043】
[第2実施形態の構成]
本発明の第2実施形態に係る物理量測定器の構成を説明する。図4は、本発明の第2実施形態に係る物理量測定器の概略図である。なお、第2実施形態の物理量測定器において、第1実施形態と同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0044】
図4に示すように、第2実施形態に係る物理量測定器は、静電容量センサ100Bと、演算器200とから構成されている。
【0045】
静電容量センサ100Bは、第1の硝子基板2’の構成が、第1実施形態と異なる。換言すると、静電容量センサ本体4Bの構成が、第1実施形態と異なる。
【0046】
第1の硝子基板2’は、肉薄部26aの代わりに、低融点の材料(In、Sn、ハンダ、フリット硝子等)から構成された低融点部27を設けている。そして、低融点部27には、貫通孔27aが形成されている。
【0047】
[第2実施形態の製造方法]
次に、図5及び図6を参照して、第2実施形態の製造方法について説明する。
【0048】
先ず、図5に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2’、第2の硝子基板3を用意する。ここで、低融点部27には、貫通孔27aが形成されていない。また、シリコン基板1、第1の硝子基板2’、第2の硝子基板3は、各々ウエハー加工工程を経て製造されたものである。低融点部27は、一端、母材となる第1の硝子基板2’に貫通孔を形成し、低融点材料を浸漬や印刷等で穴埋めすることよって形成する。
【0049】
次に、図5に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2’、第2の硝子基板3各々の間を固定して、静電容量センサ本体4Bを形成する。
【0050】
次に、図6に示すように、低融点部27に長波長レーザ光La(≧2μm)を照射し、低融点部27を溶解させ、貫通孔27aを形成する。
【0051】
この後、シリコン基板1、第1の硝子基板2’、及び第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止して、その封止パッケージ5内を図示しない真空ポンプ等により減圧して、図4に示す静電容量センサ100Bが形成される。
【0052】
このような製造方法によれば、第1実施形態の製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0053】
[第3実施形態の構成]
本発明の第3実施形態に係る物理量測定器の構成を説明する。図7は、本発明の第3実施形態に係る物理量測定器の概略図である。なお、第3実施形態の物理量測定器において、第1実施形態と同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0054】
図7に示すように、第3実施形態に係る物理量測定器は、静電容量センサ100Cと、演算器200とから構成されている。
【0055】
静電容量センサ100Cは、第1の硝子基板2の肉薄部26aの表面に光吸収膜28を設けている。また、光吸収膜28には、肉薄部26aの貫通孔26bと同一形状の、貫通孔28aが形成されている。
【0056】
[第3実施形態の製造方法]
次に、図8及び図9を参照して、第3実施形態の製造方法について説明する。
【0057】
先ず、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3を用意する。ここで、肉薄部26aには、貫通孔26bが形成されていない。また、光吸収膜28には、貫通孔28aが形成されていない。また、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3は、各々ウエハー加工工程を経て製造されたものである。肉薄部26aは、ドリルやサンドブラスト等で母材となる第1の硝子基板2を加工することにより形成する。
【0058】
次に、図8に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3各々の間を固定して、静電容量センサ本体4Aを形成する。
【0059】
次に、図9に示すように、光吸収膜28に長波長レーザ光La(≧2μm)を照射し、光吸収膜28を溶解させ、貫通孔28aを形成する。また、光吸収膜28を介して、肉薄部26aを溶解させ、貫通孔26bを形成する。
【0060】
この後、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止して、その封止パッケージ5内を図示しない真空ポンプ等により減圧して、図7に示す、静電容量センサ100Cが形成される。なお、上述した光吸収膜28は、パタンニングによる形成、或いは第1の硝子基板2の全体に亘って正膜していてもよい。
【0061】
このような製造方法によれば、第1実施形態の製造方法と同様の効果を得ることができる。さらに、光吸収膜28により、長波長レーザ光Laによる加熱を効率的に行うことができる。また、光吸収膜28の特性を選択して、形成することにより、使用する長波長レーザ光Laの波長を任意に選択することが可能となる。
【0062】
[第4実施形態の構成]
本発明の第4実施形態に係る物理量測定器の構成を説明する。図10は、本発明の第4実施形態に係る物理量測定器の概略図である。なお、第4実施形態の物理量測定器において、第3実施形態と同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
図10に示すように、第4実施形態に係る物理量測定器は、静電容量センサ100Dと、演算器200とから構成されている。
【0064】
静電容量センサ100Dは、第1の硝子基板2の肉薄部26aの表面に薄膜抵抗体29を設けている。また、薄膜抵抗体29には、肉薄部26aの貫通孔26bと同一形状の、貫通孔29aが形成されている。なお、薄膜抵抗体29は、タングステンや、タンタルのような高融点材料である。
【0065】
[第4実施形態の製造方法]
次に、図11及び図12を参照して、第4実施形態の製造方法について説明する。
【0066】
先ず、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3を用意する。ここで、肉薄部26aには、貫通孔26bが形成されていない。また、薄膜抵抗体29には、貫通孔29aが形成されていない。また、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3は、各々ウエハー加工工程を経て製造されたものである。肉薄部26aは、ドリルやサンドブラスト等で母材となる第1の硝子基板2を加工することにより形成する。
【0067】
次に、図11に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2、第2の硝子基板3各々の間を固定して、静電容量センサ本体4Aを形成する。
【0068】
次に、図12に示すように、薄膜抵抗体29に所定電圧Vを印加し、薄膜抵抗体29を加熱させ、肉薄部26a、及び薄膜抵抗体29自体に、貫通孔26b、29aを形成する。
【0069】
この後、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止して、その封止パッケージ5内を図示しない真空ポンプ等により減圧して、図10に示す、静電容量センサ100Dが形成される。
【0070】
なお、上述した薄膜抵抗体29の発熱部位29bは、図13に示す直線形状、図14に示す渦巻き形状、図15に示すつづら折れ形状等に形成されている。発熱部位29bは、直線形状よりも、渦巻き形状、又はつづら折れ形状に形成した方が効率良く加熱することができる。
【0071】
このような製造方法によれば、第1実施形態の製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0072】
[第5実施形態の構成]
本発明の第5実施形態に係る物理量測定器の構成を説明する。図16は、本発明の第5実施形態に係る物理量測定器の概略図である。なお、第5実施形態の物理量測定器において、第2実施形態と同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
図16に示すように、第5実施形態に係る物理量測定器は、静電容量センサ100Eと、演算器200とから構成されている。
【0074】
静電容量センサ100Eは、第1の硝子基板2’’の構成が第2実施形態と異なる。換言すると、静電容量センサ本体4Cの構成が、第2実施形態と異なる。第1の硝子基板2’’は、第2実施形態よりも肉厚の薄い低融点部27’を設けている。また、低融点部27’には、貫通孔27’aが形成されている。なお、低融点部27’の厚みは、例えば5〜200μmである。
【0075】
[第5実施形態の製造方法]
次に、図17及び図18を参照して、第5実施形態の製造方法について説明する。
【0076】
先ず、シリコン基板1、第1の硝子基板2’’、第2の硝子基板3を用意する。ここで、低融点部27’には、貫通孔27’aが形成されていない。また、シリコン基板1、第1の硝子基板2’’、第2の硝子基板3は、各々ウエハー加工工程を経て製造されたものである。低融点部27’は、一端、母材となる第1の硝子基板2’’に貫通孔を形成し、低融点材料を浸漬や印刷等で薄く穴埋めすることよって形成する。
【0077】
次に、図17に示すように、シリコン基板1、第1の硝子基板2’’、第2の硝子基板3各々の間を固定して、静電容量センサ本体4Cを形成する。
【0078】
次に、図18に示すように、低融点部27’から、所定距離離間した位置に発熱体H(ホットプレート、又はヒータ等)を配置し、加熱する。なお、例えば、所定距離は、10mmであり、発熱体Hの温度は、400℃〜500℃である。この発熱体Hの加熱により、低融点部27’は溶解し、貫通孔27’aを形成する。
【0079】
この後、シリコン基板1、第1の硝子基板2、及び第2の硝子基板3を封止パッケージ5により封止して、その封止パッケージ5内を図示しない真空ポンプ等により減圧して、図16に示す、静電容量センサ100Eが形成される。
【0080】
このような製造方法によれば、第1実施形態の製造方法と同様の効果を得ることができる。
【0081】
以上、第1実施形態〜第5実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、第2実施形態における第2の硝子基板2’の低融点部27に光吸収膜28を設け、長波長レーザ光Laにより貫通孔27a、28aを設ける製造方法であってもよい。また、第2実施形態における第2の硝子基板2’の低融点部27に薄膜抵抗体29を設け、薄膜抵抗体29の加熱により、貫通孔27a、29aを設ける製造方法であってもよい。また、第1実施形態における第2の硝子基板2の肉薄部26aを、ヒータHにより加熱し、貫通孔26bを設ける製造方法であってもよい。また、第2実施形態における第2の硝子基板2’の低融点部27を、ヒータHにより加熱し、貫通孔27aを設ける製造方法であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態に係る物理量検出器の構成概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る物理量検出器の構成概略図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る物理量検出器の構成概略図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る物理量検出器の構成概略図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る薄膜抵抗体を示す図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係る薄膜抵抗体を示す図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係る薄膜抵抗体を示す図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係る物理量検出器の構成概略図である。
【図17】本発明の第5実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【図18】本発明の第5実施形態に係る物理量検出器の製造工程図である。
【符号の説明】
【0083】
100A,100B,100C,100D,100E…静電容量センサ、200…演算器、1…シリコン基板、2,2’,2’’…第1の硝子基板、3…第2の硝子基板、4A,4B,4C…静電容量センサ本体、11…枠部、11a…ヒンジ部、12…可動部(可動電極)、13a、13b、13c…収容部、21…第1の硝子基板本体、22…第1の固定電極、23…第1検出用電極、24,25…第1及び第2リード取付部、26a…肉薄部、26b…貫通孔、27…低融点部、27a…貫通孔、28…光吸収膜、28a…貫通孔、29…薄膜抵抗体、29a…貫通孔、31…第2の硝子基板本体、32…第2の固定電極、33…第2検出用電極、5…封止パッケージ、51…載置台、52…蓋、53…脚部、L…リード。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位可能に支持された可動部と、前記可動部が配置される基板とを有するMEMSデバイスの製造方法であって、
前記基板の貫通孔を形成させる領域に溶解部を形成する第一の工程と、
前記可動部を前記基板上に配置した状態で固定させ、MEMSデバイス本体を形成する第二の工程と、
前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる第三の工程と、
前記MEMデバイス本体を封止部材により封止して、減圧する第四の工程と
を有することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第三の工程にて、長波長レーザ照射により前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる
ことを特徴とする請求項1記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第三の工程にて、前記溶解部の表面に光吸収膜を配置し、当該光吸収膜を介して、長波長レーザ照射により前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる
ことを特徴とする請求項1記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第三の工程にて、前記溶解部の表面に薄膜抵抗体を配置し、当該薄膜抵抗体を加熱することにより前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる
ことを特徴とする請求項1記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項5】
前記薄膜抵抗体の発熱部位は、直線状、渦巻き状、つづら折れ状のいずれかである
ことを特徴とする請求項4記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項6】
前記第三の工程にて、前記溶解部を所定距離離間した位置から所定温度で加熱することにより前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる
ことを特徴とする請求項1記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項7】
前記溶解部は、前記基板の当該溶解部以外の箇所よりも肉薄に形成されており、5〜200μmの厚さであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項8】
前記溶解部は、前記基板の当該溶解部以外の箇所よりも低融点の材料により構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項1】
変位可能に支持された可動部と、前記可動部が配置される基板とを有するMEMSデバイスの製造方法であって、
前記基板の貫通孔を形成させる領域に溶解部を形成する第一の工程と、
前記可動部を前記基板上に配置した状態で固定させ、MEMSデバイス本体を形成する第二の工程と、
前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる第三の工程と、
前記MEMデバイス本体を封止部材により封止して、減圧する第四の工程と
を有することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第三の工程にて、長波長レーザ照射により前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる
ことを特徴とする請求項1記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第三の工程にて、前記溶解部の表面に光吸収膜を配置し、当該光吸収膜を介して、長波長レーザ照射により前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる
ことを特徴とする請求項1記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第三の工程にて、前記溶解部の表面に薄膜抵抗体を配置し、当該薄膜抵抗体を加熱することにより前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる
ことを特徴とする請求項1記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項5】
前記薄膜抵抗体の発熱部位は、直線状、渦巻き状、つづら折れ状のいずれかである
ことを特徴とする請求項4記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項6】
前記第三の工程にて、前記溶解部を所定距離離間した位置から所定温度で加熱することにより前記溶解部を溶解させ、前記基板を貫通させる
ことを特徴とする請求項1記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項7】
前記溶解部は、前記基板の当該溶解部以外の箇所よりも肉薄に形成されており、5〜200μmの厚さであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項8】
前記溶解部は、前記基板の当該溶解部以外の箇所よりも低融点の材料により構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のMEMSデバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−229823(P2008−229823A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76980(P2007−76980)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
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