説明

Ru/二座配位子の錯体を用いたエステルの水素化

本発明は、接触水素化の分野、およびより具体的には、エステルまたはラクトンを、それぞれ相応するアルコールまたはジオールへと還元するための水素化法における、1つのアミノ基またはイミノ基が配位しており、かつ1つのホスフィノ基が配位している二座配位子を有するRu錯体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触水素化の分野、およびより具体的には、エステルまたはラクトンをそれぞれ相応するアルコールまたはジオールへと還元するための水素化法における、二座配位子を有するRu錯体の使用に関する。
【0002】
背景技術
エステル官能基の、相応するアルコールへの還元は、有機化学における基本的な反応の一つであり、かつ多数の化学プロセスで使用されている。一般にこのような変換を達成するためには、2つの主要なタイプの方法が公知である。これらの方法のタイプは以下のものである:
a)水素化物法、この場合、シリルまたは金属水素化物の塩、たとえばLiAlH4を使用する、
b)水素化法、この場合、分子水素を使用する。
【0003】
実地の観点から、水素化法は、少量の触媒の使用(一般に基質に対して10〜1000ppm)で、および少量の溶剤の存在下で、もしくは溶剤の不存在下で実施することができるために、より魅力的である。さらに、水素化法は高度に反応性で、高価な水素化物を必要とせず、かつ大量の水性廃棄物を生じない。
【0004】
水素化法の強制的かつ特徴的な要素の一つは、還元の観点で分子水素を活性化するために使用される触媒または触媒系である。エステル官能基の水素化のための有用な触媒または触媒系の開発は、なお化学における重要な必要性を示している。
【0005】
このような還元を実施するために公知のいくつかの触媒または触媒系の中でも、酸化ルテニウムまたはカルボン酸の前駆体と、単座、二座または三座のホスフィン配位子との反応により得られるルテニウム/ホスフィン錯体を挙げることができる(その1例は、Elsevier等により、Chem.Commun.1998年、第1367頁に記載されている)。このタイプの錯体において、ルテニウム金属は、"acac"配位子およびホスフィン原子によって配位されているのみであり、このことによって配位子構造および金属中心の周囲の配位空間の多様性が制限される。このように多様性がほとんどない結果として、水素化法の活性およびパフォーマンスを調節することは容易でない。さらに、実験条件は、極めて高い圧力(少なくとも70〜130バール)および高い温度(120〜180℃)を必要とする。
【0006】
従って、有利に配位子構造および金属中心の周囲の配位空間においてより大きな多様性を有し、かつより緩和された実験条件を可能にする、代替的な触媒または触媒前駆体を使用する水素化法に対する要求が存在する。
【0007】
発明の開示
上記の問題を克服するために、本発明は、分子H2を使用する、1または2のエステル官能基またはラクトン官能基を有するC3〜C70の基質の、相応するアルコールまたはジオールへの水素化による還元のための方法に関し、この方法は、前記の方法を、塩基、および二座配位子のルテニウム錯体の形の少なくとも1の触媒または触媒前駆体の存在下で実施し、その際、配位している基は、1つのアミノ基またはイミノ基と、1つのホスフィノ基とからなることを特徴とする。
【0008】
本発明の実施態様によれば、前記のアミノ基は、第1級アミノ基(つまりNH2)であるか、または第2級アミノ基(つまりNH)である。
【0009】
本発明の特別な実施態様によれば、基質は、式(I)
【化1】

[式中、RaおよびRbは、同時に、または独立に、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C30の芳香族、アルキルまたはアルケニル基を表すか、または
aおよびRbは一緒に結合して、置換されていてもよいC4〜C20の飽和または不飽和の基を形成する]の化合物であってよい。
【0010】
前記の基質(I)の、相応するアルコール(つまり(II−a)および(II−b))または相応するジオール(II′)は、式
【化2】

[式中、RaおよびRbは、式(I)中で定義したとおりである]のアルコールまたはジオールである。
【0011】
式(II)の化合物(つまりII−aまたはII−b)は、式中でRaおよびRbが、一緒に結合していない場合に得られ、他方、式(II′)の化合物は、式中でRaおよびRbが一緒に結合している場合に得られる。
【0012】
「線状、分枝鎖状または環式の(中略)芳香族、アルキルまたはアルケニル基」とは、前記のRaおよびRbが、たとえば線状のアルキル基の形であってもよいし、または前記のタイプの基の混合物の形であってもよい、たとえば特に1つのタイプのみに限定する記載がない限り、特定のRaは、線状アルキル、分枝鎖状アルケニル、(多)環式アルキルおよびアリール成分を含んでいてよいことを意味すると理解すべきである。同様に、本発明の以下の全ての実施態様において、1つの基が、1つのタイプの配列より多くの形であると記載されている(たとえば線状、環式または分枝鎖状)か、かつ/または不飽和の形であると記載されている(たとえば、アルキル、芳香族またはアルケニル)場合には、これは上記で説明したように、1つの基が、前記の任意の配列または不飽和を有する成分を含むことを意味する。
【0013】
本発明の方法の特別な実施態様を図式1に示す:
【化3】

【0014】
本発明のもう1つの実施態様によれば、基質が、医薬、農薬または香料産業において最終生成物として、または中間体として有用なアルコールまたはジオールを生じるエステルまたはラクトンである。特に有利な基質は、香料産業において、最終生成物として、または中間体として有用なアルコールまたはジオールを生じるエステルまたはラクトンである。
【0015】
本発明のもう1つの実施態様によれば、基質は、式(I)のC5〜C30化合物であり、特に式中で、RaおよびRbが、同時に、または独立に、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C30芳香族またはアルキル基を表すか、または置換されていてもよい環式のC5〜C30アルケニル基を表すか、またはRaおよびRbは一緒に結合して、置換されていてもよいC4〜C20の飽和または不飽和の、線状、分枝鎖状の単環式、二環式または三環式の基を表す化合物を挙げることができる。
【0016】
本発明のもう1つの実施態様によれば、基質は、式中で、RaおよびRbが、同時に、または独立に、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC5〜C18芳香族基またはアルキル基を表すか、または置換されていてもよい環式のC5〜C18アルケニル基を表すか、またはRaおよびRbは一緒に結合して、置換されていてもよいC4〜C20の飽和または不飽和の、線状、分枝鎖状の単環式、二環式または三環式の基を形成する、式(I)のC5〜C20の化合物である。
【0017】
さらに、もう1つの実施態様によれば、Raおよび/またはRbが、アルケニル基を表す場合には、炭素−炭素の二重結合は、末端ではなく、かつ共役結合していない。
【0018】
aおよびRbの可能な置換基は、1、2または3のハロゲン、ORc、NRc2またはRc基であり、その際、Rcは、水素原子であるか、ハロゲン化されたC1〜C2基であるか、またはC1〜C10の環式、線状または分枝鎖状のアルキル基またはアルケニル基、有利にはC1〜C4の線状または分枝鎖状のアルキル基またはアルケニル基である。その他の可能な置換基として、当業者に周知のとおりに使用されるH2のモル量に応じて、本発明の方法で相応するアルコールへと還元することができる基COORcも挙げることができる。
【0019】
基質の非限定的な例は、ケイ皮酸、ソルビン酸またはサリチル酸のアルキルエステル、天然の(脂肪または非脂肪)酸のアルキルエステル、スカレオリド(Sclareolide)、スピロラクトン、アリルエステル、ジアルキルジエステル、(非)置換の安息香酸エステル、およびβ〜γ不飽和エステルである。特に基質は、スカレオリド、C9〜C15スピロラクトンおよび4−メチル−6−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−3−ヘキセン酸のC1〜C4アルキルエステルからなる群から選択することができる。1,4−ジカルボキシレート−シクロヘキサンのジアルキルエステル、C2〜C10アルカンジイル−ジカルボキシレートのC1〜C5アルキルエステル、C1〜C5アルキルシクロプロパンカルボキシレート、モノ−、ジ−またはトリ−メトキシ安息香酸エステルを挙げることができる。
【0020】
本発明の方法は、触媒または触媒前駆体(以下では特にその他の記載がない限り、錯体とよぶ)としての、上記のルテニウム錯体を使用することによって特徴付けられる。該錯体は、イオン種の形であっても、中性種の形であってもよい。
【0021】
本発明の実施態様によれば、ルテニウム錯体は、一般式
[Ru(L2)b(L′)a2] (1)
[式中、L2は、二座配位子を表し、その際、配位している基は、1つのアミノ基またはイミノ基と、1つのホスフィノ基とからなり、
L′は、C3〜C70のモノ−ホスフィン(L1−P)または溶剤の分子(L1−S)を表し、
bは1であり、かつaは1または2であるか、またはbは2であり、かつaは0であり、かつ
それぞれのYは、同時に、または独立に、CO、水素原子またはハロゲン原子、ヒドロキシル基を表すか、またはC1〜C6アルコキシ基またはカルボキシル基を表す]の錯体であってよい。あるいは、Yは、BH4またはAlH4基を表してもよい。
【0022】
本発明の特別な実施態様では、前記のL2はC4〜C40の化合物であってよい。
【0023】
本発明の特別な実施態様では、式(1)中で、それぞれのYが、同時に、または独立に、水素原子または塩素原子、ヒドロキシ基、C1〜C6アルコキシ基、たとえばメトキシ基、エトキシ基またはイソプロポキシ基、またはC1〜C6アシルオキシ基、たとえばCH3COO基またはCH3CH2COO基を表す。さらに有利には、それぞれのYが、同時に、または独立に、水素原子または塩素原子、メトキシ基、エトキシ基またはイソプロポキシ基、またはCH3COO基またはCH3CH2COO基を表す。
【0024】
Yは、溶剤であってもよく、「溶剤」という用語は、当該分野における通常の意味によって理解すべきであり、かつ錯体の製造において、または本発明の方法で希釈剤として使用される化合物を含み、非限定的な例は、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アルコール(たとえばC1〜C4アルコール)またはTHF、アセトン、ピリジンまたはC3〜C8エステルまたは本発明の方法の基質である。
【0025】
本発明の特別な実施態様によれば、錯体として、式
[Ru(L2)22] (2)
[Ru(L2)(L1−P)c(L1−S)s-c′Y2] (2′)
[式中、L2およびYは、上記の意味を有し、cは1または2であり、かつc′は0、1または2である]の1つの化合物を使用することができる。
【0026】
式(2)の錯体は、本発明の有利な実施態様である。
【0027】
上記の実施態様のいずれかによれば、二座配位子L2は、式
【化4】

[式中、点線は、単結合または二重結合を表し、
zは、点線により表される炭素−窒素の結合がそれぞれ単結合または二重結合である場合には0または1であり、
1は、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C10アルキル基またはアルケニル基を表し、
1′およびR1″は、別々の場合には、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C9アルキル基またはアルケニル基を表すか、または置換されていてもよいC6〜C10芳香族基を表し、前記のR1′またはR1″は一緒になって、置換されていてもよく、5〜12個の原子を有し、かつ前記のR1′およびR1″基が結合している炭素原子を含む、飽和または不飽和の環を形成し、
2およびR3は、別々の場合には、同時に、または独立に、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C8アルキル基またはアルケニル基を表すか、置換されていてもよいC6〜C10芳香族基を表すか、またはOR2′またはNR2′3′基を表し、R2′およびR3′は、C1〜C8アルキル基またはアルケニル基であり、前記の基R2およびR3は一緒になって、置換されていてもよく、5〜10個の原子を有し、かつ前記のR2およびR3基が結合しているリン原子を含む、飽和または不飽和の環を形成してもよく、
6およびR7は、同時に、または独立に、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C10アルキル基またはアルケニル基を表すか、置換されていてもよいC6〜C10芳香族基を表すか、またはOR4′またはNR4′5′基を表し、R4′およびR5′は、線状、分枝鎖状または環式のC1〜C10アルキル基またはアルケニル基であり、R6およびR1またはR6およびR1″は一緒になって、置換されていてもよく、かつ1もしくは2個の付加的な窒素原子または酸素原子を有していてもよく、5〜10個の原子を含み、かつ前記のR6またはR1、またはR1″基がそれぞれ結合している炭素原子およびN原子を含む飽和または不飽和の複素環を形成してもよく、かつ
Qは、式
【化5】

(上記式中、nは、1〜4の整数であり、かつ
4およびR5は、同時に、または独立に、水素原子、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C10のアルキル基またはアルケニル基を表すか、置換されていてもよいC6〜C10の芳香族基を表すか、またはOR4′またはNR4′5′基を表し、R4′およびR5′は、線状、分枝鎖状または環式のC1〜C10のアルキル基またはアルケニル基であり、2つの別個のR4および/またはR5基は一緒になって、置換されていてもよく、前記R4またはR5基のそれぞれが結合している炭素原子を含むC5〜C8、またはC10までの飽和環を形成してもよい)の基を表すか、または式
【化6】

(上記式中、nは2〜4の整数であり、かつ2つの別個の隣接するR4基は一緒になって、置換されていてもよいC5〜C8、またはC10までの芳香族環を形成するか、または置換されていてもよく、前記R4基のそれぞれが結合している炭素原子を含むC5〜C12のメタロセンジイルを形成するか、または
3つの別個の隣接するR4基は一緒になって、置換されていてもよく、前記のR4基のそれぞれが結合している炭素原子を含むナフタレン環を形成する)の基を表す]の化合物であってよい。
【0028】
1つの実施態様によれば、「芳香族基または環」とは、フェニルまたはナフチルの誘導体を意味する。
【0029】
本発明のもう1つの実施態様によれば、Qは、置換されていてもよい線状のC2〜C5アルキレン基を表すか、置換されていてもよいフェロセンジイルを表すか、置換されていてもよいビフェニルジイル基またはビナフチルジイル基を表す。
【0030】
1′、R1″およびR1〜R7およびQの可能な置換基は、1または2のハロゲン、C1〜C10アルコキシまたはポリアルキレングリコール基、ハロゲン化炭化水素または過ハロゲン化炭化水素、COOR、NR2、第4級アミンまたはR基であり、その際、Rは、C1〜C6アルキルであるか、C5〜C12シクロアルキルであるか、アラルキル(たとえばベンジル、フェネチル等)または芳香族基であり、後者は、1、2または3のハロゲン、スルホネート基またはC1〜C8のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホネート基、ハロゲン化炭化水素基または過ハロゲン化炭化水素基またはエステル基により置換されていてもよい。「ハロゲン化炭化水素または過ハロゲン化炭化水素」とは、たとえばCF3またはCClH2のような基を意味する。
【0031】
驚いたことに、式(2−A′)の配位子は、点線が二重結合を表し、かつzが0である場合には、2−(ジフェニルホスフィノ)−N−(フェニルメチレン)−シクロヘキサンアミンを除いて新規であり、従って、これらも本発明の対象である。
【0032】
配位子として、式(2−A′)の化合物を有する本発明による錯体は、点線が二重結合を表し、かつzが0である場合にも、ジクロロ[[N(Z),1R,2R]−2−(ジフェニルホスフィノ−κP)−N−(フェニルメチレン)シクロヘキサンアミン−κN](トリフェニルホスフィン)−ルテニウムを除いて新規であり、従って本発明のもう1つの対象である。
【0033】
式(2−A)の特別な実施態様では、L2は、一般式
【化7】

[式中、R1は、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C6アルキル基またはアルケニル基を表し、
2およびR3は、同時に、または独立に、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C6アルキル基を表すか、置換されていてもよいフェニル基またはナフチル基を表すか、または前記のR2およびR3は一緒になって、置換されていてもよく、5、6または7個の原子を有し、かつ前記のR2およびR3基が結合しているリン原子を含む飽和または不飽和の環を形成し、
6およびR7は、同時に、または無関係に、置換されていてもよい水素原子、線状または分枝鎖状のC1〜C4アルキル基を表すか、置換されていてもよいフェニル環を表し、
6およびR1は一緒になって、置換されていてもよく、かつ1個の付加的な窒素原子または酸素原子を有し、5または6個の原子を有し、かつ前記のR6またはR1基がそれぞれ結合している炭素原子およびN原子を含む飽和または不飽和のヘテロ環を形成してもよく、かつ
Qは、式
【化8】

(上記式中、nは、2または3の整数であり、かつ
4およびR5は、同時に、または独立に、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状または分枝鎖状のC1〜C4アルキル基を表すか、置換されていてもよいフェニル環を表すか、または2つの別個のR4および/またはR5基は一緒になって、置換されていてもよく、前記のR4またはR5基のそれぞれが結合している炭素原子を含むC5〜C10飽和環を形成する)の基を表すか、または式
【化9】

(上記式中、nは、1〜3の整数であり、かつ
2つの別個の隣接するR4基は一緒になって、置換されていてもよいC5〜C10芳香族環を形成するか、または置換されていてもよく、前記R4基のそれぞれが結合している炭素原子を含むC5〜C12フェロセンジイルを形成するか、または3つの別個の隣接するR4基は一緒になって、置換されていてもよく、前記のR4基のそれぞれが結合している炭素原子を含むナフタレン環を形成する)の基を表す]の二座のN−P配位子である。
【0034】
1〜R7の可能な置換基は、特に前記の基がフェニル基もしくはフェニル成分であるか、またはフェニル基もしくはフェニル成分を含む場合には、1または2のハロゲン、CF3基またはC1〜C5アルコキシ木またはポリアルキレングリコール基、COOR、NR2またはR基であり、その際、Rは、C1〜C4アルキル基であるか、C5〜C6シクロアルキル基であるか、アラルキル基であるか、または芳香族基であり、後者は上記のとおりに置換されていてもよい。
【0035】
式(2−B)の特別な実施態様は、式(2−C)または(2−D)
【化10】

[式中、式(2−D)中の点線は、フェニル基またはナフチル基の存在を示し、
dは、1または2を表し、
1は、水素原子を表すか、または置換されていてもよいC1〜C4の線状または分枝鎖状のアルキル基を表し、
2およびR3は、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C6アルキル基を表すか、または置換されていてもよいフェニル基を表し、かつ
6およびR7は、同時に、または独立に、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状または分枝鎖状のC1〜C4アルキル基を表すか、または置換されていてもよいフェニル基を表し、またはR6およびR1は一緒になって、置換されていてもよく、かつ1個の付加的な窒素原子または酸素原子を有していてよい飽和のヘテロ環、たとえば2−ピロリジン、2−ピペリジンまたは2−モルホリンを表す]により表される。
【0036】
1〜R3、R6およびR7の可能な置換基は、特に前記の基がフェニル基またはフェニル成分であるか、またはフェニル基またはフェニル成分を含んでいる場合には、1または2のハロゲン、C1〜C5アルコキシ基または、ポリアルキレングリコール基、COOR、NR2またはR基であり、その際、Rは、C1〜C4アルキル基またはC5〜C6シクロアルキル基、アラルキル基または芳香族基であり、後者は上記のとおり置換されていてもよい。
【0037】
別の実施態様では、式(2−A)の配位子は、一般式
【化11】

[式中、Q、R1、R2、R3は式(2−B)または(2−D)に関して定義したとおりであり、
6は、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状または分枝鎖状のC1〜C4アルキル基またはフェニル基を表し、またはR6は、R1と一緒に、置換されていてもよく、かつ1個の付加的な窒素原子または酸素原子を含んでいてよいC=N官能基含有のC3〜C9ヘテロ環を形成する]の二座のN−P配位子である。
【0038】
QおよびR1〜R6の可能な置換基は、特に前記の基が、フェニル基またはフェニル成分であるか、またはフェニル基またはフェニル成分を含んでいる場合には、1または2のハロゲン、CF3基またはC1〜C5アルコキシ基またはポリアルキレングリコール基、C1〜C4アルキル基、またはC5〜C10シクロアルキル基、アラルキル基またはフェニル基であり、後者は上記で定義したとおりに置換されていてもよい。
【0039】
あるいは、式(2−A′)の配位子が、一般式
【化12】

[式中、R2、R3、R6およびR7は、(2−B)または(2−D)に関して定義したとおりであり、Qは、式(2−B)で定義したとおりであり、かつ
1′およびR1″は、別々の場合には、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C6アルキル基を表すか、または置換されていてもよいフェニル基を表し、または前記のR1′またはR1″は、一緒になって、置換されていてもよく、5〜7個の原子を有し、かつ前記のR1′およびR1″基が結合している炭素原子を含む飽和の環を形成し、R6およびR1″は一緒になって、置換されていてもよく、かつ1または2個の付加的な窒素原子または酸素原子を有していてよく、5または6個の原子を有し、かつ前記のR6またはR1″基がそれぞれ結合している炭素原子およびN原子を含む飽和または不飽和のヘテロ環を形成してもよい]の二座のN−P配位子である錯体を使用することもできる。
【0040】
あるいは、前記の実施態様では、R1′およびR1″は、別々の場合には、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状または分枝鎖状のC1〜C4アルキル基を表すか、または置換されていてもよいフェニル基を表すか、または前記のR1′またはR1″は一緒になって、置換されていてもよく、5〜7個の原子を有し、かつ前記のR1′およびR1″基が結合している炭素原子を含む飽和の環を形成する。
【0041】
1′、R1″、R2、R3、Q、R6およびR7の可能な置換基は、特に前記の基がフェニル基またはフェニル成分であるか、またはフェニル基またはフェニル成分を含む場合には、1または2のハロゲン、CF3基またはC1〜C5アルコキシ基またはポリアルキレングリコール基、C1〜C4アルキル基、またはC5〜C10のシクロアルキル基、アラルキル基またはフェニル基であり、後者は上記で定義したとおりに置換されていてもよい。
【0042】
上記の実施態様のいずれにおいても、前記のフェロセンジイルならびに上記のメタロセンジイルは、フェロセン−1,1′−ジイルまたはフェロセン−1,2−ジイルの形であってよい。
【0043】
式(2−E)の特別な実施態様は、式(2−F)、(2−F′)、(2−G)または(2−G′)
【化13】

[式中、式(2−G)または(2−G′)中の点線は、フェニル基またはナフチル基の存在を示し、eは、1または2、および特に1を表し、
1、R2、R3は、式(2−E)中で定義したとおりであり、R1′は、式(2−E)中のR1として定義したものであり、かつ
6は、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状または分枝鎖状のC1〜C4アルキル基を表すか、または置換されていてもよいフェニル基を表し、またはR6は、R1と一緒になって、置換されていてもよく、かつ1個の付加的な窒素原子または酸素原子を含むC=N官能基含有のC3〜C9ヘテロ環、たとえば2−ピリジル、1−オキサゾリニル、2−イミダゾリルまたは2−イソキノリニル基を形成する]の配位子である。
【0044】
1〜R3およびR6の可能な置換基は、特に前記の基がフェニル基またはフェニル成分であるか、またはフェニル基またはフェニル成分を含む場合には、1または2のハロゲン、C1〜C5アルコキシまたはポリアルキレングリコール基、C1〜C4アルキル基、またはC5〜C10シクロアルキル基、アラルキル基またはフェニル基であり、後者は上記で定義したとおりに置換されていてもよい。
【0045】
上記の全ての実施態様において、「R2およびR3は一緒になって、(中略)飽和または不飽和の環を形成してもよい」という場合、このようにR2およびR3が一緒になっている自明な例として以下のものが挙げられる:ジフェニル基またはジナフチル基(これらは不飽和の5員環を形成する)または−(CH25基(これは飽和の6員環を形成する)。
【0046】
さらに、上記の全ての実施態様において、特に有利な実施態様は、前記のR2およびR3基が、置換されていてもよい芳香族基である場合である。
【0047】
本発明の特別な実施態様では、前記のL′配位子が、有利にはC3〜C30のモノ−ホスフィン、および特に式PRd3の配位子であってよく、この場合、Rdは、C1〜C12の基、たとえば置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のアルキル基、アルコキシ基またはアリールオキシ基、飽和または不飽和のフェニル、ジフェニルまたはナフチルまたはジナフチル基、または溶剤、たとえばTHF、アセトン、ピリジン、C3〜C8エステルまたはC1〜C4アルコールである。可能な置換基は、上記でL2に関して記載したものである。
【0048】
本発明の方法は特に、(2)の錯体[Ru(L2)22](式中、Yは、HまたはClを表し、かつL2は、式(2−H):
【化14】

の配位子を表し、上記式中で、R1は、水素原子またはメチル基を表し、Phはフェニル基である)を使用する場合に有利である。
【0049】
上記の配位子は、標準的な、従来技術において、当業者に周知の一般的な方法を適用することによって得られる。従って、その製造は、詳細な記載を必要としない。たとえばWO02/22526を参照することができる。
【0050】
一般的な方法では、式(1)の錯体は、文献に記載されている一般的な方法により製造し、かつプロセス中でのその使用前に単離することができる。1つの方法が実施例に記載されている。
【0051】
さらに、該錯体はインサイチューで、複数の方法によって、水素化媒体中で、単離または精製することなく、その使用の直前に製造することもできる。
【0052】
式(1)の錯体をインサイチューで有利に製造するための可能な手順の一つは、式[Ru("ジエン")("アリル")2](式中、"ジエン"は、2つの炭素−炭素二重結合を有し、共役結合しているか、またはしていない、環式または線状の炭化水素、たとえば1,5−シクロオクタジエン(COD)またはノルボルナジエンを表し、かつ"アリル"は、炭素−炭素の二重結合を1つ有する線状または分枝鎖状のC3〜C8炭化水素基、たとえばメチルアリルまたはアリルを表す]の適切なRu錯体を、配位していない酸、たとえばHBF4Et2Oと反応させ、かつ次いで得られる溶液を、所望の量の配位子L2、および必要に応じてたとえば上記で定義した配位子L′の溶液により処理し、式(1)により記載される触媒の溶液を得ることからなる。さらに、こうして得られた混合物は、第1級または第2級アルコールの存在下に塩基で処理することもできる。さらに、式(I)の錯体は、適切なRu錯体、たとえば[RuCl2(PPh33]、[RuCl2(cod)]または[RuCl2(アレン)]2を、所望の量の配位子L2、および必要に応じてたとえば上記で定義した配位子L′と反応させることによって製造することができる(codは、シクロオクタジエンを表し、かつアレンはたとえばベンゼンまたはナフタレンである)。
【0053】
式(I)の錯体は、たとえばアルコールおよび塩基の存在下で、式(I)の化合物へと変換される、同様の式を有する錯体からインサイチューで得ることができるか、またはカチオン性もしくはアニオン性の、たとえば式中でYが別の意味を有する錯体(I)、または式[Ru(L2)2(溶剤)2](アニオン)2の錯体(式中、アニオンは配位していないアニオンである)である。
【0054】
本発明の方法を実施するために、塩基を使用することも必要とされる。前記の塩基は、基質自体であってもよく、基質が塩基である場合には、相応するアルコラートまたは有利に11より高いpKaを有する任意の塩基である。本発明の特別な実施態様によれば、前記の塩基は、14より高いpHaを有していてもよい。有利には前記の塩基は、それ自体、式(I)の基質を還元しないと理解すべきである。非限定的な例として、以下のタイプの塩基を挙げることができる:アルコラート、水酸化物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、ホスファゼン、アミド、塩基性アロックス、シリコネート(つまりSiO-またはSiRO-基を有するケイ素誘導体)、水素化物、たとえばNaBH4、NaHまたはKH。
【0055】
非限定的な例として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、たとえば炭酸セシウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、C1〜C10アミジュール、C10〜C26ホスファゼンまたは式(R13O)2MまたはR13OM′のアルコラート(式中で、Mは、アルカリ土類金属であり、M′はアルカリ金属またはアンモニウムNR144+であり、R13は、水素を表すか、C1〜C6の線状または分枝鎖状のアルキル基を表し、かつR14は、C1〜C10の線状または分枝鎖状のアルキル基、たとえばナトリウムまたはカリウムのアルコラートを表す)を挙げることができる。当然のことながら、その他の適切な塩基を使用することもできる。
【0056】
本発明の実施態様によれば、前記の塩基は、式R13OM′のアルカリ金属のアルコラートである。
【0057】
前記のとおり、本発明の方法は、ルテニウム錯体および塩基を使用して基質を水素化することからなる。一般的な方法は、基質とルテニウム錯体、塩基および場合により溶剤とを混合し、かつ次いで該混合物を選択された圧力および温度で分子水素により処理することからなる。
【0058】
本発明の錯体は、方法の実質的なパラメータであり、広い範囲の濃度で反応媒体に添加することができる。非限定的な例として、基質の量に対して、50ppm〜50000ppmの範囲の錯体の濃度の値をあげることができる。有利には錯体の濃度は、100〜20000ppmである。錯体の最適な濃度は、当業者に周知のとおり、錯体の性質、基質の性質およびプロセスにおいて使用されるH2の圧力に、ならびに所望の反応時間に依存することは言うまでもない。
【0059】
反応混合物に添加される塩基の有効量は、比較的広い範囲であってよい。非限定的な例として、錯体に対して5〜50000当量の範囲(たとえば塩基/錯体=5〜50000)、有利には20〜2000およびさらに有利には50〜1000当量を挙げることができる。
【0060】
水素化反応は、溶剤の存在下でも、不存在下でも実施することができる。溶剤が必要であるか、または実地上の理由から使用される場合には、目下、水素化反応において使用されている任意の溶剤を本発明の目的のために使用することができる。非限定的な例は、芳香族溶剤、たとえばトルエンまたはキシレン、炭化水素溶剤、たとえばヘキサンまたはシクロヘキサン、エーテル、たとえばテトラヒドロフランまたはMTBE、極性溶剤、たとえば第1級または第2級アルコール、たとえばイソプロパノールまたはエタノール、またはこれらの混合物を含む。溶剤の選択は、錯体の性質の関数であり、かつ当業者は、水素化反応を最適化するためにそれぞれの場合において、最も適切な溶剤を選択することができる。
【0061】
本発明の水素化法において、反応は105Pa〜80×105Pa(1〜80バール)または所望の場合にはこれより高いH2圧力で実施することができる。ここでもまた、当業者は圧力を触媒負荷および溶剤中の基質の希釈の関数として調節することができる。例として、1〜50×105Pa(1〜50バール)の一般的な圧力を挙げることができる。
【0062】
水素化を実施することができる温度は、0℃〜120℃であり、さらに有利には50℃〜100℃の範囲である。当然のことながら、当業者は、有利な温度を、原料および最終生成物の融点および沸点ならびに反応または変換の所望の時間の関数として選択することができる。
【0063】
実施例
以下では本発明を、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、ここで温度は、摂氏であり、略号は当該分野で通常の意味を有する。
【0064】
以下に記載する全ての手順は、その他の記載がない限り、不活性雰囲気下に実施した。水素化は、ステンレス鋼製オートクレーブ内に設置された、開放されたガラス管中で実施した。H2ガス(99.99990%)を入手したままで使用した。全ての基質および溶剤を、適切な乾燥剤からAr下に蒸留した。NMRスペクトルは、Bruker AM−400(400.1MHzで1H、100.6MHzで13C、および161.9MHzで31P)スペクトロメーターで記録し、かつその他の記載がない限り、通常はCDCl3中300Kで測定した。化学シフトはppmで記載されている。
【0065】
例1
A)錯体[RuCl2(L−1)n]、[RuCl2(L−2)2]、[RuCl2(L−4)2]の製造
a)錯体のジクロロビス[2−(ジフェニルホスフィノ)エチルアミン]ルテニウム([RuCl2(L−1)2])の製造:
アルゴン下で、電磁攪拌棒を備えた丸底のシュレンクフラスコに、RuCl2(PPh33(418.6mg、0.436ミリモル)およびトルエン(6mL)を装入した。次いで、撹拌下に、トルエン(3mL)中の2−(ジフェニルホスフィノ)エチルアミン(201.6mg、0.879ミリモル)の溶液を添加し、さらにトルエン(3mL)を添加して洗浄した。次いで、暗褐色の溶液を、油浴中100℃で6時間加熱した。得られる黄色の懸濁液を室温に冷却し、かつアルゴン下に濾過した。黄色の固体を、濾液が無色になるまでトルエンで洗浄し、次いで真空乾燥させた。次いで所望の錯体(258.4mg、0.41ミリモル、94%)が淡黄色の固体として回収された。31P{1H}−NMR分析は、2種類の存在を示し、主要な種類は、トランス−クロリド−シス−リン錯体(75%)であり、かつ少ない種類はシス−クロリド−シス−リン錯体(25%)である。
【0066】

【0067】
b)錯体のジクロロ[2−(ジフェニルホスフィノ)エチルアミン][トリフェニルホスフィン]ルテニウム([RuCl2(L−1)(PPh3)])の製造:
アルゴン下で、電磁攪拌棒を備えた丸底のシュレンクフラスコに、RuCl2(PPh33(20.0g、20.9ミリモル)およびTHF(160mL)を装入した。次いで撹拌下に、ニートな2−(ジフェニルホスフィノ)エチルアミン(4.83g、21.1ミリモル)を5分間添加した。次いで、反応混合物を室温で3時間攪拌した。この時間の間、暗色のルテニウム溶液は、ピンク色の固体として再沈殿する前に直ちに溶解した。次いで反応混合物を、窒素下に濾過した(暗色の濾液)。得られた固体をTHF(3×40ml)、および次いでMTBEで洗浄した。次いでピンク色の固体を一夜真空乾燥させて、ルテニウム錯体が、ピンク色の固体として得られた(14.0g、21ミリモル)。
【0068】
31P{1H}−NMR分析は、複数のルテニウム種の存在を示し、かつ遊離のトリフェニルホスフィンの存在を示したが、これはおそらく、固体をTHFで数回洗浄したので、溶液中での生成物の発生により生じたものである。
【0069】

【0070】
c)錯体のジクロロビス[3−(ジフェニルホスフィノ)−1−プロピルアミン]ルテニウム([RuCl2(L−2)2])の製造:
アルゴン下で、電磁攪拌棒を備えた丸底のシュレンクフラスコに、RuCl2(PPh33(1.028g、1.07ミリモル)およびトルエン(5mL)中の3−(ジフェニルホスフィノ)−1−プロピルアミンの溶液を装入した。さらにトルエン(5mL)を添加して洗浄した。次いで、暗褐色の溶液を油浴中100℃で16時間加熱した。得られるレンガ色がかったオレンジ色の懸濁液を室温に冷却し、かつペンタン(50mL)を攪拌しながら添加した。黄色の固体が濾過により回収され、これをペンタン(2×3mL)で洗浄し、かつ真空下で乾燥させて、所望の錯体が黄色のマスタード色の固体として得られた(672.6mg、1.02ミリモル、95%)。31P{1H}−NMR分析は、2種類の存在を示した。
【0071】

【0072】
d)錯体のジクロロビス−2−[2−(ジイソブチルホスフィノ)エチル]ピリジンルテニウム([RuCl2(L−4)2])の製造:
アルゴン下で、電磁攪拌棒を備えた丸底のシュレンクフラスコに、RuCl2(PPh33(535.2mg、0.56ミリモル)およびトルエン(3mL)中の2−[2−(ジイソブチルホスフィノ)エチル]ピリジン(306.5mg、1.22ミリモル)を装入した。さらにトルエン(2×1mL)を添加して洗浄した。次いで、暗褐色の溶液を、油浴中100℃で6時間加熱した。得られる赤色の溶液を室温に冷却し、かつ溶剤を真空下で除去してオレンジ色の固体が得られた。該固体を、CH2Cl2(3mL)中に溶解し、MeOH(15mL)を添加し、かつ該溶液を真空下で、黄色の沈殿物が形成されるまで濃縮した。固体を濾液から回収し、MeOH(1mL)で洗浄し、かつ真空乾燥させて、所望の錯体が得られた(458.9mg)。31P{1H}−NMR分析は、遊離のPPh3の存在を示した(44質量%)。固体(425.8mg)を、CH2Cl2(10mL)中に溶解し、かつ該溶液を、CH2Cl2(10mL)中のCuCl(86.1mg、0.87ミリモル)の懸濁液に添加した。さらにCH2Cl2(5mL)を添加して洗浄した。該溶液を5分間攪拌し、かつ次いで溶剤を真空下で除去した。得られる固体を、ヘキサン(25mL)/CH2Cl2(5mL)の混合物を用いて粉砕し、かつ次いでセライトのパッドで濾過した。該パッドをさらに、ヘキサン/CH2Cl2(5/1.3×5mL)で洗浄した。合した濾液を、黄色の固体の沈殿物が生じるまで真空下で濃縮した。該固体を濾過により回収し、かつ真空下で乾燥させて、所望の錯体がトリフェニルホスフィンを含有しない、黄色の固体として得られた(152.1mg、0.22ミリモル、40%)。
【0073】

【0074】
B)イミノ−ホスフィン配位子(L−6〜L−10)の製造
a)N−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]−N−[フェニルメチレン]アミン(L−6)の製造
アルゴン下で、エタノール(15mL)中の2−ジフェニルホスフィノ−エチルアミン(590.3mg、2.57ミリモル)およびベンズアルデヒド(275.0mg、2.59ミリモル)を65℃(油浴)で4時間加熱した。次いで溶剤を真空下で除去して所望の生成物(1H−NMRにより>98%)が、無色の油状物として得られ、これは静置して固化した(733.9mg、2.31ミリモル、90%)。
【0075】

【0076】
b)N−[(3,5−ジメチルフェニル)メチレン]−N−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン(L−7)の製造
アルゴン下で、エタノール(15mL)中の2−ジフェニルホスフィノ−エチルアミン(652.2mg、2.84ミリモル)および3,5−ジメチル−ベンズアルデヒド(387.4mg、2.89ミリモル)を65℃(油浴)で4時間加熱した。次いで、溶剤を真空下で除去して所望の生成物(1H−NMRにより>98%)が無色の油状物として得られた(993.2mg、2.8ミリモル、定量)。
【0077】

【0078】
c)N−[シクロヘキシルメチレン]−N−[2−(ジフェニルホスフィノ)エチル]アミン(L−8)の製造
アルゴン下で、エタノール(15mL)中の2−ジフェニルホスフィノ−エチルアミン(619.0mg、2.7ミリモル)およびシクロヘキサンカルボアルデヒド(306.2mg、2.73ミリモル)を65℃(油浴)で4時間加熱した。次いで溶剤を真空下で除去して、所望の生成物(1H−NMRにより>98%)が無色の液体として得られた(880.5mg、2.7ミリモル、定量)。
【0079】

【0080】
d)N−ベンジリデン−N−[3−(ジフェニルホスフィノ)プロピル]アミン(L−9)の製造
アルゴン下で、エタノール(15mL)中の3−ジフェニルホスフィノ−プロピルアミン(631.2mg、2.6ミリモル)およびベンズアルデヒド(278.1mg、2.6ミリモル)の溶液を65℃(油浴)で4時間加熱した。次いで、溶剤を真空下で除去して、所望の生成物(1H−NMRにより>98%)が白色の固体として得られた(822.3mg、2.5ミリモル、96%)。
【0081】

【0082】
e)N−ベンジリデン−N−[3−(ジイソブチルホスフィノ)プロピル]アミン(L−10)の製造
アルゴン下で、エタノール(15mL)中の3−ジイソブチルホスフィノ−プロピルアミン(428.5mg、2.11ミリモル)およびベンズアルデヒド(226.9mg、2.14ミリモル)の溶液を65℃(油浴)で4時間加熱した。次いで、溶剤を真空下で除去して、所望の生成物(1H−NMRにより>98%)が無色の液体として得られた(614.1mg、2.1ミリモル、定量)。
【0083】

【0084】
配位子の構造は、第1表に記載されている:
【表1】

【0085】
配位子L−1およびL−2は市販されている(Fluka)。配位子L−3およびL−4は、Rautenstrauch、V.等により、WO02/22526A2の記載に従って製造した。
【0086】
C)錯体[RuCl2(L−6〜L−10)2]の製造
これらの錯体のインサイチューの製造については以下の例2b)を参照のこと。
【0087】
例2
式(1)の錯体を使用した種々のエステルの接触水素化
a)前形成された錯体を使用
触媒前駆体としてRuCl2(L−1)2を使用し、基質として安息香酸メチルを用いた一般的な接触水素化を以下に記載する:
アルゴン下で、THF(2mL)中の安息香酸メチル(3.249g、24ミリモル)の溶液を、ガラスのライニングを備え、[RuCl2(L−1)2](7.5mg、0.012ミリモル、0.05モル%)、固体のNaOMe(128.2mg、2.4ミリモル、10モル%)およびTHF(12.5mL)を含有するKeimオートクレーブに、シリンジで添加し、次いでさらにTHF(2×1mL)を添加した。オートクレーブを水素ガスで50バールで加圧し、かつ100℃にサーモスタット制御されている油浴中に設置した。2時間30分後に、オートクレーブを油浴から除去し、かつ冷水浴中で冷却した。次いで、反応混合物をクエン酸10%w/w(25mL)で希釈し、かつMTBE(100mL)で抽出した。有機相を飽和NaCl水溶液(3×50mL)で洗浄した。シリル化後のガスクロマトグラフィーは、以下の生成物を示した:ベンジルアルコール(97.5%)、安息香酸(2.5%)。次いで有機相をKOH 1Mの水溶液(50mL)および飽和NaCl水溶液(3×50mL)で連続的に洗浄し、かつ無水のMgSO4により乾燥させた。濾過および真空下での溶剤の除去により、黄色の液体(3.486g)が得られた。クーゲルローア蒸留による精製(130〜140℃/8.5ミリバール)により、純粋なベンジルアルコールが無色の液体として得られた(2.081g、19ミリモル、80%)。
1H NMR(CDCl3、400MHz):δ7.38〜7.25(m、5H)、4.65(s、2H)、2.02(s、1H)。
13C NMR(CDCL3、100MHz):δ140.9(s)、128.6(d)、127.6(d)、126.9(d)、62.3(t)。
【0088】
b)インサイチューで形成された錯体を使用
触媒前駆体としてインサイチューで形成されたRuCl2(L−6)2を使用し、基質として安息香酸メチルを用いた一般的な接触水素化を以下に記載する:
アルゴン下で、THF(2mL)中の安息香酸メチル(2.729g、20ミリモル)の溶液を、ガラスのライニングを備え、[RuCl2(パラ−シメン)2](6.9mg、0.01ミリモル、0.05モル%)、配位子L−6(15.4mg、0.05ミリモル、0.24モル%)、固体のNaOMe(106.2mg、2ミリモル、10モル%)およびTHF(6mL)を含有するKeimオートクレーブに、シリンジで添加し、次いでさらにTHF(2×1mL)を添加した。次いで、内部標準液として、THF(2mL)中のトリデカン(338.1mg、1.83ミリモル)の溶液を添加し、次いでさらにTHF(2×1mL)を添加した。次いでオートクレーブを水素ガスで50バールに加圧し、かつ100℃にサーモスタット制御された油浴中に設置した。1時間後に、オートクレーブを油浴から除去し、かつ冷水浴中で冷却した。アリコート(0.3mL)を取り出し、かつMTBE(5mL)で希釈した。有機相を飽和NaCl水溶液(5mL)で洗浄し、セライトで濾過し、かつ分析した。内部標準液に対するGC収率は、ベンジルアルコール中で81%の収率を生じた。
【0089】
試験基質として安息香酸メチルを使用して、第1表に記載されているいくつかの配位子、塩基および溶剤をこれらの条件下で試験した。結果は第2表にまとめられている。
【0090】
【表2−1】

【0091】
【表2−2】

錯体/塩基:基質に対するモル比(ppm)。
変換率=1時間後の安息香酸メチルからベンジルアルコールへの変換率(%、GCにより分析)。反応条件:H2ガス(50バール)、100℃、溶剤(1.4M)。
1)試験は、アルゴン雰囲気下に実施した。
2)触媒は、L(0.22モル%)および[(RuCl2(Cym))2](0.05モル%)を使用してインサイチューで製造した。内部標準に対するGC収率が記載されている。
3)試験は、2時間30分実施した。a)単離された収率は括弧で記載されている。b)内部標準に対するGC収率が記載されている。
4)試験は、50℃で実施した。
5)試験は、20バールのH2ガス下に実施した。
6)試験は、10バールのH2ガス下に実施した。内部標準に対するGC収率は括弧で記載されている。
7)単離された収率は括弧で記載されている。
8)NaHMDS:ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド。
9)試験は2時間実施した。
【0092】
いくつかのその他のエステル(第3表を参照のこと)を、第4表に記載されている条件と同一の条件下に、RuCl2(L−1)2を用いて水素化した。反応条件は、安息香酸メチルに関して上記に記載した条件と同一である。
【0093】
【表3−1】

【0094】
【表3−2】

【0095】
【表4】

変換率:2時間30分後のエステルのアルコールへの変換率(%、シリル化後にGCにより分析)。
反応条件:基質(20ミリモル)、H2ガス(50バール)、RuCl2(L−1)2 0.05モル%、NaOMe 10モル%、THF(14mL)、100℃で2時間30分。
1)反応は、4時間実施した。
2)反応は、KOMe(10モル%)を用いて、THF中100℃で5時間、H2ガス(30バール)で実施した。
3)反応は、6時間実施した。
4)反応は、S/C=1000およびS/B=1で100℃で1時間、H2ガス(50バール)で実施した。
5)反応は、KOMe(10モル%)を用いて、トルエン中100℃で6時間、H2ガス(30バール)で実施した。
6)反応は、KOMe(10モル%)を用いて、トルエン中100℃で4時間、H2ガス(50バール)で実施した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または2のエステル官能基またはラクトン官能基を有するC3〜C70の基質を、分子H2を使用して相応するアルコールまたはジオールへと水素化することによって還元する方法において、該方法を、塩基と、二座配位子のルテニウム錯体の形の少なくとも1の錯体の存在下に実施し、その際、配位している基は、1つのアミノ基またはイミノ基と、1つのホスフィノ基とを有することを特徴とする、1または2のエステル官能基またはラクトン官能基を有するC3〜C70の基質を、分子H2を使用して相応するアルコールまたはジオールへと水素化することによって還元する方法。
【請求項2】
前記アミノ基が、NH2基またはNH基であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ルテニウム錯体が、式
[Ru(L2)b(L′)a2] (1)
[式中、
L2は、C4〜C40の二座配位子を表し、その際、配位している基は、1つのアミノ基またはイミノ基と、1つのホスフィノ基とからなり、
L′は、C3〜C70のモノ−ホスフィンまたは溶剤の分子を表し、
bは1、およびaは1または2であるか、またはbは2、およびaは0であり、かつ
それぞれのYは、同時に、または独立に、CO、水素原子またはハロゲン原子、ヒドロキシル基、BH4基またはALH4基またはC1〜C6のアルコキシ基またはカルボキシ基を表す]の錯体であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ルテニウム錯体が、式
[Ru(L2)22] (2)
[式中、L2およびYは、請求項3に記載した意味を有する]の錯体であることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
L2が、式
【化1】

[式中、点線は、単結合または二重結合を表し、
zは、点線で示される炭素−窒素結合が単結合または二重結合である場合にはそれぞれ0または1であり、
1は、水素原子、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C10のアルキル基またはアルケニル基を表し、
1′およびR1″は、別々の場合には、水素原子、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C9のアルキル基またはアルケニル基を表すか、または置換されていてもよいC6〜C10の芳香族基を表すか、前記R1′およびR1″は一緒になって、置換されていてもよく、5〜12個の炭素原子を有し、かつ前記のR1′およびR1″基が結合している炭素原子を含む飽和または不飽和の環を形成し、
2およびR3は、別々の場合には、同時に、または独立に、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C8のアルキル基またはアルケニル基を表すか、置換されていてもよいC6〜C10の芳香族基を表すか、またはOR2′またはNR2′3′基を表し、R2′およびR3′は、C1〜C8のアルキル基またはアルケニル基であり、または前記の基R2およびR3は一緒になって、置換されていてもよく、5〜10個の原子を有し、かつ前記のR2およびR3基が結合しているリン原子を含む飽和または不飽和の環を形成し、
6およびR7は、同時に、または独立に、水素原子、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C10のアルキル基またはアルケニル基を表すか、置換されていてもよいC6〜C10の芳香族基を表すか、またはOR4′またはNR4′5′基を表し、その際、R4′およびR5′は、線状、分枝鎖状または環式のC1〜C10のアルキル基またはアルケニル基を表し、R6およびR1またはR6およびR1″は一緒になって、置換されていてもよく、1または2個の付加的な窒素原子または酸素原子を有していてもよく、5〜10個の原子を有し、かつ前記のR6およびR1、またはR1″基がそれぞれ結合している炭素原子およびN原子を含む飽和または不飽和のヘテロ環を形成してもよく、かつ
Qは、式
【化2】

(上記式中、nは、1〜4の整数であり、かつ
4およびR5は、同時に、または独立に、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C10のアルキル基またはアルケニル基を表すか、置換されていてもよいC6〜C10の芳香族基を表すか、またはOR4′またはNR4′5′基を表し、R4′およびR5′は、線状、分枝鎖状または環式のC1〜C10のアルキル基またはアルケニル基であり、2つの別個のR4基および/またはR5基は一緒になって、置換されていてもよく、前記のR4またはR5基のそれぞれが結合している炭素原子を含むC5〜C10の飽和環を形成してもよい)の基を表すか、または

【化3】

(上記式中、nは2〜4の整数であり、かつ2つの別個の隣接するR4基は一緒になって、置換されていてもよいC5〜C10の芳香族環を形成するか、または置換されていてもよく、前記のR4基のそれぞれが結合している炭素原子を含むC5〜C12のメタロセンジイルを形成するか、または
3つの別個の隣接するR4基は一緒になって、置換されていてもよく、前記のR4基のそれぞれが結合している炭素原子を含むナフタレン環を形成する)の基を表し、かつその際、
1′、R1″およびR1〜R7およびQの置換基は、1もしくは2のハロゲン、C1〜C10アルコキシ基またはポリアルキレングリコール基、ハロゲン化炭化水素または過ハロゲン化炭化水素、COOR、NR2、第4級アミンまたはR基であり、その際、Rは、C1〜C6アルキルであるか、またはC5〜C12のシクロアルキル基、アラルキル基または芳香族基であり、後者は、1、2または3のハロゲン、スルホネート基またはC1〜C8のアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、スルホネート基、ハロゲン化炭化水素基または過ハロゲン化炭化水素基またはエステル基により置換されていてもよい]の化合物であることを特徴とする、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
L2が、式
【化4】

[式中、R1は、水素原子、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C6アルキル基またはアルケニル基を表し、
2およびR3は、同時に、または独立に、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C6アルキル基を表すか、置換されていてもよいフェニル基またはナフチル基を表すか、または前記のR2およびR3は一緒になって、置換されていてもよく、5、6または7個の原子を有し、かつ前記のR2およびR3基が結合しているリン原子を含む飽和または不飽和の環を形成し、
6およびR7は、同時に、または独立に、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状または分枝鎖状のC1〜C4アルキル基を表すか、置換されていてもよいフェニル環を表し、
6およびR1は一緒になって、置換されていてもよく、かつ1個の付加的な窒素原子または酸素原子を有していてもよく、5または6個の原子を有し、かつ前記のR6またはR1基がそれぞれ結合している炭素原子およびN原子を含む飽和または不飽和のヘテロ環を形成してもよく、かつ
Qは、式
【化5】

(上記式中、nは、2または3の整数であり、かつ
4およびR5は、同時に、または独立に、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状または分枝鎖状のC1〜C4アルキル基を表すか、置換されていてもよいフェニル環を表すか、または2つの別個のR4および/またはR5基は一緒になって、置換されていてもよく、前記のR4またはR5基のそれぞれが結合している炭素原子を含むC5〜C10の飽和の環を形成する)の基または式
【化6】

(上記式中、nは、1〜3の整数であり、かつ
2つの別個の隣接するR4基は一緒になって、置換されていてもよいC5〜C10の芳香族環を形成するか、または置換されていてもよく、前記のR4基のそれぞれが結合している炭素原子を含むC5〜C12のフェロセンジイルを形成するか、または3つの別個の隣接するR4基は一緒になって、置換されていてもよく、前記のR4基のそれぞれが結合している炭素原子を含むナフタレン環を形成する)の基を表す]の配位子であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
L2が、式(2−C)または(2−D)
【化7】

[式中、式(2−D)中の点線は、フェニル基またはナフチル基の存在を示し、
dは、1または2を表し、
1は、水素原子を表すか、または置換されていてもよいC1〜C4の線状または分枝鎖状アルキル基を表し、
2およびR3は、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C6アルキル基を表すか、または置換されていてもよいフェニル基を表し、かつ
6およびR7は、同時に、または独立に、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状または分枝鎖状のC1〜C4アルキル基を表すか、または置換されていてもよいフェニル基を表すか、またはR6およびR1は一緒になって、置換されていてもよく、かつ1個の付加的な窒素原子または酸素原子を有していてよい飽和のヘテロ環を形成する]の配位子であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項8】
L2が、式
【化8】

[式中、Q、R1、R2、R3は請求項6において定義したとおりであり、
6は、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状または分枝鎖状のC1〜C4アルキル基またはフェニル基を表すか、またはR6はR1と一緒になって、置換されていてもよく、かつ1個の付加的な窒素原子または酸素原子を有していてもよい、C=N官能基を有するC3〜C9のヘテロ環を形成する]の配位子であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項9】
L2が、式
【化9】

[式中、Q、R2、R3、R6およびR7は、請求項6において定義したとおりであり、
1′およびR1″は、別々の場合には、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C6アルキル基を表すか、置換されていてもよいフェニル基を表すか、または前記のR1′またはR1″は一緒になって、置換されていてもよく、5〜7個の原子を有し、かつ前記のR1′およびR1″基が結合している炭素原子を含む飽和の環を形成し、R6およびR1″は一緒になって、置換されていてもよく、かつ1または2個の付加的な窒素原子または酸素原子を有していてもよく、5または6個の原子を含有し、かつ前記のR6またはR1″基がそれぞれ結合している炭素原子またはN原子を含む飽和または不飽和のヘテロ環を形成してもよい]の配位子であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項10】
L2が、式(2−F)、(2−F′)、(2−G)または(2−G′)
【化10】

[式中、式(2−G)または(2−G′)の点線は、フェニル基またはナフチル基の存在を示し、eは、1または2を表し、
1、R2、R3は、請求項8において定義したとおりであり、R1′は、請求項8においてR1として定義したものであり、かつ
6は、水素原子を表すか、置換されていてもよい線状または分枝鎖状のC1〜C4アルキル基を表すか、または置換されていてもよいフェニル基を表すか、またはR6はR1と一緒になって、置換されていてもよく、かつ1個の付加的な窒素原子または酸素原子を有していてもよい、C=N官能基を有するC3〜C9のヘテロ環を形成する]の配位子であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項11】
塩基は、14より高いpKaを有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
塩基が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、C1〜C10アミジュール、C10〜C26ホスファゼンまたは式(R13O)2MまたはR13OM′のアルコラート(式中で、Mは、アルカリ土類金属であり、M′はアルカリ金属またはアンモニウムNR144+であり、R13は、水素を表すか、またはC1〜C6の線状または分枝鎖状のアルキル基を表し、かつR14は、C1〜C10の線状または分枝鎖状のアルキル基を表す)であることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
基質が、式(I)
【化11】

[式中、RaおよびRbは、同時に、または独立に、置換されていてもよい飽和、分枝鎖状または環式のC1〜C30芳香族基、アルキル基またはアルケニル基を表すか、または
aおよびRbは一緒に結合して、置換されていてもよいC4〜C20の飽和または不飽和の基を形成し、かつその際、RaおよびRbの置換基は、COORc基、1、2または3のハロゲン、ORc、NRc2またはRc基であり、その際、Rcは、水素原子であるか、ハロゲン化されたC1〜C2基であるか、またはC1〜C10の環式、線状または分枝鎖状のアルキル基またはアルケニル基である]の化合物であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
基質が、式中で、RaおよびRbが、同時に、または独立に、置換されていてもよい線状、分枝鎖状または環式のC1〜C30芳香族基またはアルキル基を表すか、または置換されていてもよい環式のC5〜C30アルケニル基を表すか、またはRaおよびRbは一緒に結合して、置換されていてもよいC4〜C20の飽和または不飽和の線状、分枝鎖状の単環式、二環式または三環式の基を形成する、式(I)のC5〜C30化合物であることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項5において定義したとおりの式中で点線が二重結合を表し、かつzが0である式(2−A′)の配位子、請求項9において定義したとおりの式(2−E′)の配位子、または請求項10において定義したとおりの式(2−F′)または(2−G′)の配位子、ただし、2−(ジフェニルホスフィノ)−N−(フェニルメチレン)−シクロヘキサンアミンを除く。
【請求項16】
請求項3において定義したとおりの式(1)の錯体、または請求項4において定義したとおりの式(2)の錯体において、L2が、式中で請求項5において定義したとおり、点線が二重結合を表し、かつzが0である、式(2−A′)の配位子であるか、または請求項9において定義したとおり、式(2−E′)の配位子であるか、または請求項10において定義したとおりの式(2−F′)または(2−G′)の配位子であることを特徴とする、式(1)または式(2)の錯体、ただし、ジクロロ[[N(Z),1R,2R]−2−(ジフェニルホスフィノ−κP)−N−(フェニルメチレン)シクロヘキサンアミン−κN](トリフェニルホスフィン)−ルテニウムを除く。

【公表番号】特表2008−538352(P2008−538352A)
【公表日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504896(P2008−504896)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051027
【国際公開番号】WO2006/106483
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】