説明

X線ビーム源、X線ビーム照射装置、X線ビーム透過撮影装置、X線ビームCT装置、X線元素マッピング検査装置及びX線ビーム形成方法

【課題】X線ビームを形成する小型かつ軽量のX線ビーム源を得る。
【解決手段】X線ビーム源13は、絶縁材1に挿入され電圧を印加する導入線2と、導入線2の一端に設けられた陰極と、陰極と対面して設けられ発生した電子ビームを衝突させてX線を発生させる陽極であるターゲット6と、導入線2、陰極及びターゲット6を収納しX線が通過するX線透過窓5を有する真空容器7と、X線透過窓5の外側に設けられX線から特性X線を選択的に取り出すフィルタ8と、真空容器7及びフィルタ8を収納するハウジング10と、ハウジング10に設けられ特性X線を収束するX線集光素子であるフレネルゾーンプレート(FZP)9と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線ビームを形成し利用するX線ビーム源、X線ビーム照射装置、X線ビーム透過撮影装置、X線ビームCT装置、X線元素マッピング検査装置及びX線ビーム形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子ビームが金属ターゲットに入射して放出するX線は、電子ビームの加速電圧を上限エネルギーとして、低エネルギー領域まで広い分布を持つ制動X線成分と金属ターゲット特有のエネルギースペクトルの特性X線が含まれる。この制動X線は連続(白色)成分からなり、金属ターゲット特有のエネルギースペクトルの特性X線は単色成分からなる。
【0003】
近年、上記のX線を収束するX線光学素子として、回折を利用したフレネルゾーンプレート(Fresnel Zone Plate:以下、FZPという。)が適用されるようになってきた。このX線を一点に収束するためには、単色成分を利用する必要がある。このため、FZPを利用するための光源としては、単色X線を取り出し易い電子蓄積リング加速器を利用した放射光施設が利用されている。
【0004】
図10は、従来の電子蓄積リング加速器を用いたX線収束ビームの形成方法を示す説明図である。
【0005】
本図に示すように、放射光施設である電子蓄積リング加速器51内の偏向電磁石52で偏向された電子ビームは、ビームライン53となる。このビームライン53は、モノクロメータ54及びX線集光素子55を介してX線収束ビームとなる。このX線収束ビームが被検物56に照射され、透過した金属ターゲット特有のエネルギースペクトルの特性X線が各種分析器57に集められ分析される。
【0006】
上述のように、放射光を収束するためにX線光学素子として回折を利用したFZPが適用されるようになってきた。このような放射光とFZPを組み合わせた装置の代表的なものとして、X線顕微鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。このX線顕微鏡は、光源の規模により光源本体を走査することは難しく、試料の方を走査するものであった。
【特許文献1】特開平06−281800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した一般的なX線管にFZPを適用する場合、X線管から放射されるX線成分のうち、単色成分である特性X線を効果的に分離し取り出す構成を採ることが必要である。この放射光とFZPを組み合わせた装置の代表的なものとして、X線顕微鏡が知られている。
【0008】
しかし、このX線顕微鏡のような構成を採用した場合に、光源の規模により光源本体を走査することは難しく、またX線ビームも容易に走査することは困難であった。このため、試料の方を走査するような使用方法に限定したものとなっている、という課題があった。
【0009】
また、FZPで収束・平行ビームとしたX線を任意に走査する機能を持たせた装置を構成しようとする場合は、FZPを含めたX線ビーム源を極力、小型かつ軽量なものとして位置制御のし易いものにすることが必要である、という課題があった。
【0010】
また、X線管のような小型のX線発生装置にFZPを適用して収束または平行ビームとして効果的に取り出すことができれば、このX線ビームを任意に走査できる、という課題があった。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、X線ビームを形成するX線ビーム源の小型化かつ軽量化を図り、さらに、これを利用したX線ビーム走査機能を有するX線ビーム照射装置、X線ビーム透過撮影装置、X線ビームCT装置、X線元素マッピング検査装置及びX線ビーム形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のX線ビーム装置においては、絶縁材に挿入され電圧が印加される導入線と、この導入線の一端に設けられた陰極と、この陰極と対面して設けられ発生した電子ビームを衝突させてX線を発生させる陽極であるターゲットと、前記導入線、陰極及びターゲットを収納し前記X線が通過するX線透過窓を含む真空容器と、このX線透過窓の外側に設けられ前記X線から特性X線を選択的に取り出すフィルタと、前記真空容器及びフィルタを収納するハウジングと、このハウジングを貫通して設けられ前記特性X線を収束するX線集光素子と、を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明のX線ビームの形成方法においては、真空容器内において絶縁材に挿入され導入線の一端に設けられた陰極と、この陰極と対面して設けられた陽極であるターゲットとの間に電圧を印加して発生した電子ビームを衝突させてX線を発生させるX線発生ステップと、この真空容器内の外側に設けられフィルタを介して前記X線から特性X線を選択的に取り出す特性X線取出ステップと、前記真空容器及びフィルタを収容するハウジングに設けられたX線集光素子で前記特性X線を収束するX線収束ステップと、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のX線ビーム源、X線ビーム照射装置、X線ビーム透過撮影装置、X線ビームCT装置、X線元素マッピング検査装置及びX線ビーム形成方法によれば、真空容器内において絶縁体を貫通する導入線を配置することにより、X線ビーム源の小型化かつ軽量化を図ることができる。かくして、X線ビームを走査することができ、移動の困難な大型の被照射体の任意の位置にX線を照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るX線ビーム源、X線ビーム照射装置、X線ビーム透過撮影装置、X線ビームCT装置、X線元素マッピング検査装置及びX線ビーム形成方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の第1の実施の形態の透過型のX線ビーム装置の構成を示す縦断面図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態の反射型のX線ビーム装置の構成を示す縦断面図である。
【0017】
本図に示すように、X線ビーム照射装置は、真空容器7から構成されている。この真空容器7の下部より、高電圧33が印加される導入線2が挿入されている。真空容器7内で、上記の導入線2は絶縁材1を貫通している。この絶縁材1は、凹凸形状から形成されているので、上記の高電圧33に対する沿面絶縁距離が十分に確保される。
【0018】
この導入線2の上端には、ウエネルト(Wehnet Electrode)3が設けられている。ウエネルト3は、電子線収束用の円筒状の電極で、陰極を囲むように装着されている。このウエネルト3の上面には、エミッタ(Emitter)4が設けられている。このエミッタ4は、キャリア(担体)を放出するものである。
【0019】
また、上記の真空容器7の上部には、X線透過窓5が設けられている。このX線透過窓5の内側に、ターゲット(陽極)6が配置されている。
【0020】
また、上記の真空容器7は、ハウジング10内に収納されている。このハウジング10の上部には、X線を収束するX線光学素子として、回折を利用したフレネルゾーンプレート(Fresnel Zone Plate:FZP)9が設けられている。このFZP9と上記のX線透過窓5との間には、フィルタ8が設けられている。上述のコンポーネントにより、X線ビーム源13が構成される。
【0021】
また、上記の真空容器7は、走査機構11の台11aに載置される。この台11aを動作することにより、X線ビーム源13を上下方向及び左右方向に移動できるようになっている。
【0022】
このように構成された本実施の形態において、導入線2を介してエミッタ4に負の高電圧33が印加される。この負の高電圧33を印加することにより、エミッタ4から電界放出により電子ビーム31が発生する。この発生した電子ビーム31はウエネルト3により軌道成形され、エミッタ4とターゲット6との間の電界により加速されてターゲット6に衝突する。このターゲット6に衝突した電子ビーム31は、ターゲット金属による制動を受け、この衝突の点から4π(sr)方向へとX線32が放射される。このX線32の一部は、X線透過窓5を通過することにより真空容器7の外部へ取り出される。この真空容器7の外部へと取り出されたX線32は広がりながらフィルタ8を通過する。このフィルタ8を介して、X線32は単色のエネルギースペクトルを持つ特性X線となる。この特性X線はFZP9に入射される。このFZP9を介して、X線ビーム32が一点である焦点35に収束されることになる。
【0023】
上記のコンポーネントはハウジング10内に収納され、X線ビーム源13を構成する。また、このハウジング10を載置したX線ビーム走査機構11の台11aを上下方向および左右方向に移動することにより、例えば、X線ビーム源13を三次元的に走査する機構を備えることができる。
【0024】
本実施の形態により、真空容器7内で凹凸形状の絶縁体を貫通する導入線を配置することにより、高電圧に対する沿面絶縁距離を確保することができる。そして、真空容器7の長さを短小化し、小型かつ計量のX線ビーム源13を得ることができる。さらに、X線ビーム源13の小型化かつ計量化を図ることにより、X線ビーム源13は三次元的に走査する機構を備えることができ、X線収束点を三次元上の任意の点に走査することが可能となる。かくして、小型のX線ビーム源を用いることにより被照射体である試料を動かすことなく、移動の困難な大型の被照射体の任意の位置にX線を照射することが可能となる。
【0025】
図2は、本発明の第1の実施の形態の反射型のX線ビーム装置の要部の構成を示す縦断面図である。図2の実施の形態は、図1の透過型のターゲット6の代わり反射型のターゲット6aを示すものであり、図1の実施の形態と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0026】
本図に示すように、反射型のX線ビーム装置は、反射型のターゲット6aから構成されている。
【0027】
本実施の形態において、発生した電子ビーム31はウエネルト3により軌道成形され、エミッタ4と反射型のターゲット6aとの間の電界により加速されてターゲット6に衝突する。この反射型のターゲット6aに衝突し反射した電子ビーム31は、ターゲット金属による制動を受け、X線32が放射される。このX線32の一部は、X線透過窓5を通過することにより真空容器7の外部へ取り出される。この真空容器7の外部へと取り出されたX線32は広がりながらフィルタ8を通過する。このフィルタ8を介して、X線32は単色のエネルギースペクトルを持つ特性X線となる。この特性X線はFZP9に入射される。このFZP9を介して、X線ビーム32が一点である焦点35に収束されることになる。
【0028】
本実施の形態により、反射型のX線源を用いてもX線ビーム源13を三次元的に走査する機構を備えることができ、X線収束点を三次元上の任意の点に走査することが可能となる。かくして、小型のX線ビーム源を用いることにより被照射体である試料を動かすことなく、移動の困難な大型の被照射体の任意の位置にX線を照射することが可能となる。
【0029】
図3は、本発明の第2の実施の形態のX線ビーム装置の要部の構成を示す縦断面図である。本実施の形態は、第1の実施の形態に第2のFZP12を追加して設けたものであり、第1の実施の形態と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0030】
本図に示すように、X線ビーム照射装置は、第1のFZP9の他に、第2のFZP12を追加した構成となっている。
【0031】
本実施の形態において、第1のFZP9により、フィルタ8にて単色化された特性X線ビーム32は平行ビーム化される。さらに、平行ビーム化したX線32は、この第2のFZP12により、焦点35に収束することが可能となる。
【0032】
また、図1に示す走査機構11を用いることによりX線ビームを任意に制御することも可能である。
【0033】
本実施の形態によれば、平行ビーム化したX線32を第2のFZP12を設けて一点に収束することにより、X線量の低下を抑制し、X線ビームを長距離伝送することが可能となる。このようなX線照射装置は、設置スペースの問題により、X線ビーム源13と被照射体の間の距離を縮小できない場合等に有効である。
【0034】
図4は、本発明の第3の実施の形態のX線ビーム装置の要部の構成を示す縦断面図である。本実施の形態は、第1の実施の形態のX線ビーム源13を被照射体14の周辺に複数個設けたものであり、第1の実施の形態と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0035】
本図に示すように、図1に示すX線ビーム源13を試料である被照射体14の周辺に三次元的に複数個配置して構成されている。
【0036】
本実施の形態において、各X線ビーム源13からのX線ビーム32の収束点が焦点35に重複するように調整することが可能となる。かくして、被照射体14の任意の一点に高強度のX線を照射することが可能となる。
【0037】
本実施の形態によれば、被照射体14の任意のX線照射ポイント以外の箇所への余分なX線照射を低減することができる。また、図1に示す走査機構11の台11aを移動することにより、複数のX線収束点位置の制御および各X線照射装置のビーム強度を変化させることにより、被照射体14へのX線強度変調照射も可能となる。
【0038】
図5は、本発明の第4の実施の形態のX線ビーム装置の構成を示す正面図である。本実施の形態は、第1の実施の形態のX線ビーム源13をレンズホルダ24に組み込んだものであり、第1の実施の形態と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0039】
本図に示すように、図1に示すX線ビーム源13を、非常に小サイズのもの、例えば、顕微鏡26の対物レンズ程度のサイズとして、顕微鏡26の回転式レンズホルダ24に組込んだものである。
【0040】
本実施の形態において、観察およびX線ビーム照射が切り替えられるように構成されている。また、X線ビーム源13は、レンズホルダ24上で任意に位置を微調整する機構を持つ微調ステージ25の上に設置する構成を採ることも可能である。
【0041】
本実施の形態によれば、X線以外の可視光、紫外光を利用する光学式の顕微鏡26を用いて、試料14を観察しながら、X線照射位置を制御できる。かくして、試料14の観察およびX線ビーム照射を切り替えながら一連の測定作業を行うことができる。
【0042】
図6は、本発明の第5の実施の形態のX線ビーム装置の構成を示す説明図である。本実施の形態は、第1の実施の形態のX線ビーム源13を用いたX線透過撮影装置に係わるものであり、第1の実施の形態と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0043】
本図に示すように、図1に示すX線ビーム源13を用いたX線透過撮影装置に係わるものである。X線ビーム源13から放出されるX線ビームを収束ビーム32とし、その焦点35を被検体である被照射体14の直前又は場合によっては被照射体14の内部の測定部位の近傍に位置するように調整する。被照射体14を通過したX線ビームは発散ビーム34となって対向するX線カメラ15に入射される構成となっている。
【0044】
本実施の形態によれば、X線ビーム源13から放出されるX線ビームを収束ビーム32として照射することにより、等方的に放射する一般のX線管からのX線に比較して、撮影対象部位に集中してX線を照射することができる。かくして、被照射体14の撮影対象部位のサイズが小さいほど、目的部位に集中してX線を照射し、さらに、X線カメラ15で効率良くX線(光)量をとらえることができ、高効率的にX線透過撮影による撮像を得ることができる。
【0045】
図7は、本発明の第6の実施の形態のX線CT装置の構成を示す説明図である。本実施の形態は、第1の実施の形態のX線ビーム源13を用いたX線CT(Computered Tomography:計算断層像法)装置に係わるものであり、第1の実施の形態と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0046】
本図に示すように、X線ビーム源13を用いた図6に示すX線透過撮影装置に関する体系を改良することによって構成したX線CT装置に係わるものである。
【0047】
本実施の形態において、この被照射体14をターンテーブル17上に載置する。上記のX線ビーム源13から放出される収束性X線ビーム32を旋回している被検体である被照射体14に入射する。一方、透過したX線ビーム34の信号はX線検出器16を用いて計測される構成となっている。ターンテーブル17を回転させて、多数方向からの照射信号データ、透過信号データ等を収集する。この収集したデータを画像再構成装置18により処理することによって被照射体14のCT画像を得ることができる。また、CRT(Cathod Ray Tube:ブラウン管)19に表示させることが可能となる。
【0048】
また、被照射体14の微小領域を撮影するときは、第5の実施の形態と同様に、目的部位に集中してX線を照射することができ、またX線検出器で効率良くX線(光)量をとらえる点で有効である。
【0049】
本実施の形態によれば、上記のX線CT装置により、微小領域の精密検査を高効率で行うことができる。
【0050】
図8は、本発明の第7の実施の形態のX線ビーム元素マッピング検査装置の構成を示す説明図である。本実施の形態は、第1の実施の形態のX線ビーム源13を用いたX線ビーム元素マッピング装置に係わるものであり、第1の実施の形態と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0051】
本図に示すように、図1に示すX線ビーム源13を用いたX線ビーム元素マッピング検査装置に係わるものである。X線ビーム源13から放出されるX線ビームが収束ビーム32とし被照射体14に入射される。このとき、図1に示すFZP9により収束ビーム32は試料である被照射体14の表面の微小領域に焦点35を合致するように配置されている。この透過したX線ビーム34の信号はX線検出器16を用いて計測される。
【0052】
一方、被照射体14に対してX線照射側に、被照射体14から放出される蛍光X線を捕らえるためのFZP9a及びコリメータ(Collimator)20を備えたX線スペクトル検出器21が配置されている。このコリメータ20は、レンズ等を用いて平行光線束を得るものである。
【0053】
上記のFZP9、コリメータ20及びX線スペクトル検出器21は、ホルダ22内に収容されている。また、このホルダ22とX線ビーム源13とは一体化した構造となっている。このホルダ22全体は駆動ステージ23上に設置されている。
【0054】
本実施の形態において、上記のX線ビーム元素マッピング検査装置の透過画像により、被照射体14の微小領域にX線を収束させてその部分の元素分析を行うことができ、また被照射体14の微小領域の組成、構造を高い分解能で検査することができる。
【0055】
また、X線ビーム源13とX線スペクトル検出器21を搭載したホルダ22を駆動することにより、被照射体14を固定したまま透過画像と元素のマッピング検査が可能になる。さらに、溶液中に沈殿した試料等駆動によって位置が変化しやすい試料14においても、試料のブレが無く、精度の高い検査ができる。
【0056】
本実施の形態によれば、上記のX線ビーム元素マッピング検査装置を用いることにより、高分解能かつステージ駆動による試料の位置ずれがないX線ビームによる元素マッピング検査をすることができる。
【0057】
図9は、本発明の第8の実施の形態のX線ビーム元素マッピング検査装置の変形例の構成を示す説明図である。本実施の形態は、第1の実施の形態のX線ビーム源13を使用し偏向器27を付加したX線ビーム元素マッピング装置に係わるものであり、第1の実施の形態と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0058】
本図に示すように、このX線ビーム元素マッピング装置は、図1のX線ビーム源を用いて構成されている。また、X線ビーム源13を構成するX線源として、電子ビーム31を偏向する偏向器27が付加されている。
【0059】
本実施の形態において、静電偏向器又は偏向電磁石等の偏向器27を用いることにより、X線ビーム源13内の電子ビーム31のターゲット6の入射点を変化させることができる。このため、上記X線ビーム32がFZP9に入射する角度を変えることができる。また、被照射体14上でのX線照射位置を任意に変化させることが可能となる。かくして、X線ビーム源13、X線スペクトル検出器21および試料14等の検出ブレに関わる要素を固定した状態の下で、微小領域の元素マッピング検査を行うことができる。
【0060】
本実施の形態によれば、偏向器27を用いたX線ビーム元素マッピング検査装置を使用することにより、さらに位置ずれの影響が少ないX線ビーム元素マッピング検査を行うことができる。
【0061】
さらに、本発明は、上述したような各実施の形態に何ら限定されるものではなく、走査機構の台を旋回してもよく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態の透過型のX線ビーム照射装置の構成を示す縦断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の反射型のX線ビーム照射装置の要部の構成を示す縦断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態のX線ビーム照射装置の要部の構成を示す縦断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態のX線ビーム照射装置の要部の構成を示す縦断面図。
【図5】本発明の第4の実施の形態のX線ビーム照射装置の構成を示す正面図。
【図6】本発明の第5の実施の形態のX線透過撮影装置の構成を示す説明図。
【図7】本発明の第6の実施の形態のX線CT装置の構成を示す説明図。
【図8】本発明の第7の実施の形態のX線ビーム元素マッピング検査装置の構成を示す説明図。
【図9】本発明の第7の実施の形態のX線ビーム元素マッピング検査装置の変形例の構成を示す説明図。
【図10】従来の電子蓄積リング加速器を用いたX線収束ビームの形成方法を示す説明図。
【符号の説明】
【0063】
1…絶縁材、2…導入線、3…ウエネルト、4…エミッタ、5…X線透過窓、6…ターゲット、7…真空容器、8…フィルタ、9…フレネルゾーンプレート(FZP)、10…ハウジング、11…走査機構、12…第2のFZP、13…X線ビーム源、14…被照射体(試料)、15…X線カメラ、16…X線検出器、17…ターンテーブル、18…画像再構成装置、19…CRT、20…コリメータ、21…X線スペクトル検出器、22…ホルダ、23…駆動ステージ、24…レンズホルダ、25…微調ステージ、26…顕微鏡、27…偏向器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材に挿入され電圧が印加される導入線と、
この導入線の一端に設けられた陰極と、
この陰極と対面して設けられ発生した電子ビームを衝突させてX線を発生させる陽極であるターゲットと、
前記導入線、陰極及びターゲットを収納し前記X線が通過するX線透過窓を含む真空容器と、
このX線透過窓の外側に設けられ前記X線から特性X線を選択的に取り出すフィルタと、
前記真空容器及びフィルタを収納するハウジングと、
このハウジングを貫通して設けられ前記特性X線を収束するX線集光素子と、
を有することを特徴とするX線ビーム源。
【請求項2】
前記ターゲットは、前記X線が透過するように形成されていることを特徴とする請求項1記載のX線ビーム源。
【請求項3】
前記ターゲットは、前記X線が反射するように形成されていることを特徴とする請求項1記載のX線ビーム源。
【請求項4】
前記X線集光素子は、前記X線を平行ビームに成形する第1のX線集光素子と、この平行X線ビームを一点に収束する第2のX線集光素子と、を具備することを特徴とする請求項1記載のX線ビーム源。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のX線ビーム源は、前記X線を任意に走査できる走査機構を具備することを特徴とするX線ビーム照射装置。
【請求項6】
前記X線ビーム源は、被照射体の周辺に三次元的に複数個配置して構成されていることを特徴とする請求項5記載のX線ビーム照射装置。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載のX線ビーム源は、対物レンズホルダに収納され微調機構を備えて構成されていることを特徴とするX線ビーム照射装置。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれかに記載のX線ビーム源と、このX線ビーム源からのX線が照射される試料が載置される試料設置台と、前記試料からの透過X線を検出するX線検出器と、を具備することを特徴とするX線透過撮影装置。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれかに記載のX線ビーム源と、このX線ビーム源からのX線が照射される試料が載置される試料設置台と、この試料設置台を旋回するターンテーブルと、前記試料からの透過X線を検出するX線検出器と、このX線検出器からの信号が入力されて画像を構成する画像再構成装置と、を具備することを特徴とするX線CT装置。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれかに記載のX線ビーム源と、このX線ビーム源からのX線が照射される試料と、この試料からの透過X線を検出するX線検出器と、前記試料に照射されたX線のスペクトルを検出するX線スペクトル検出器と、前記X線ビーム源及びX線スペクトル検出器を駆動する駆動ステージと、を具備することを特徴とするX線元素マッピング検査装置。
【請求項11】
前記X線ビーム源は、前記電子ビームを偏向させる電子ビーム偏向器を具備することを特徴とする請求項10記載のX線元素マッピング検査装置。
【請求項12】
真空容器内において絶縁材に挿入され導入線の一端に設けられた陰極と、この陰極と対面して設けられた陽極であるターゲットとの間に電圧を印加して発生した電子ビームを衝突させてX線を発生させるX線発生ステップと、
この真空容器内の外側に設けられフィルタを介して前記X線から特性X線を選択的に取り出す特性X線取出ステップと、
前記真空容器及びフィルタを収容するハウジングに設けられたX線集光素子で前記特性X線を収束するX線収束ステップと、
を有することを特徴とするX線ビーム形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−268105(P2008−268105A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113950(P2007−113950)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】