X線撮像装置およびX線撮像方法
【課題】 屈折コントラスト法の問題点を解決することのできるX線撮像装置およびX線撮像方法を提供する。
【解決手段】 X線発生手段から発生したX線を空間的に分割する分割素子を有する。また、分割されたX線が入射する第1の蛍光体が複数配列された蛍光体アレイを有する。この第1の蛍光体は、X線の入射位置に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成されている。また、蛍光体アレイから発光した蛍光の強度を検出するための検出手段を有する。
【解決手段】 X線発生手段から発生したX線を空間的に分割する分割素子を有する。また、分割されたX線が入射する第1の蛍光体が複数配列された蛍光体アレイを有する。この第1の蛍光体は、X線の入射位置に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成されている。また、蛍光体アレイから発光した蛍光の強度を検出するための検出手段を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線を用いたX線撮像装置、およびX線撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を用いた非破壊検査法は工業利用から医療利用まで幅広い分野で用いられている。X線は波長が約1pm〜10nm(10−12〜10−8m)程度の電磁波であり、このうち波長の短いX線を硬X線、波長の長いX線を軟X線という。
【0003】
X線による吸収能の違いを用いた吸収コントラスト法ではX線の透過能の高さを利用し、鉄鋼材料などの内部亀裂検査や手荷物検査などのセキュリティ分野の用途として実用化されている。一方、X線の吸収によるコントラストが形成されにくい低密度の被検知物に対しては、被検知物によるX線の位相変化を検出するX線位相イメージングが有効である。
【0004】
各種X線位相イメージングにおいて、特許文献1に示された屈折コントラスト法は、X線の被検知物による位相変化による屈折効果を利用した方法である。この屈折コントラスト法は、微焦点のX線源を用い、被検知物と検出器の距離を離して撮像される。この屈折コントラスト法によれば、X線の被検知物による屈折効果から被検知物の輪郭が強調されて検出される。また、屈折コントラスト法は屈折効果を利用するため、多くのX線位相イメージング手法の場合と異なりシンクロトロン放射光のような干渉性の高いX線を必ずしも必要としないという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−102215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された屈折コントラスト法では、X線の被検知物による屈折効果における屈折角が非常に小さいため、輪郭強調した像を得るには検知物と検出器の距離を十分に離す必要性がある。そのため、特許文献1の方法では、装置の大型化を招くという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、特許文献1に記載された屈折コントラスト法とは異なる新規なX線撮像装置およびX線撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るX線撮像装置は、X線発生手段から発生したX線を空間的に分割する分割素子と、前記分割素子により分割されたX線が入射する第1の蛍光体が複数配列された蛍光体アレイと、前記蛍光体アレイから発光した蛍光の強度を検出するための検出手段と、を有し、前記第1の蛍光体は、前記X線の入射位置に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特許文献1に記載された屈折コントラスト法とは異なる新規なX線撮像装置およびX線撮像方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1におけるX線撮像装置の構成例を説明する図。
【図2】本発明の実施形態1における蛍光体アレイの一部分について説明する図。
【図3】本発明の実施形態2におけるX線撮像装置の構成例を説明する図。
【図4】本発明の実施形態2における蛍光体アレイの一部分について説明する図。
【図5】本発明の実施形態2における演算処理の方法について説明するフロー図。
【図6】本発明の実施形態3における蛍光体アレイの一部分について説明する図。
【図7】本発明の実施形態4におけるコンピューテッドトモグラフィ(CT)を説明する図。
【図8】本発明の実施形態4における演算処理の方法について説明するフロー図。
【図9】本発明の実施形態5における蛍光体アレイの一部分について説明する図。
【図10】本発明の実施形態5における被検知物の吸収による効果を補正するための概念図。
【図11】本発明の実施形態5における演算処理の方法を説明するフロー図。
【図12】本発明の実施形態6における蛍光体アレイの一部について説明する図。
【図13】本発明の実施形態6における演算処理の方法を説明するフロー図。
【図14】本発明の実施例1におけるX線撮像装置を説明する図。
【図15】本発明の実施例2におけるX線撮像装置を説明する図。
【図16】本発明の実施例3における蛍光体アレイの一部について説明する図。
【図17】物質によってX線が屈折される様子を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態では、発光量勾配を有する蛍光体を複数配列した蛍光体アレイ用いて屈折効果による強度分布変化または位置変化に関する情報を取得する。ここで、発光量勾配を有する蛍光体とは、X線の入射位置により蛍光の発光量が変化する蛍光体のことをいう(第1の蛍光体)。この蛍光体は、連続的または段階的に形状を変化させることにより構成することができる。また、単位体積当たりの発光量を連続的または段階的に変化させることにより構成することもできる。なお、本明細書では、「連続的」との用語は「段階的」の概念を含むものとして取り扱うこともある。
【0012】
また、被検知物の吸収を考慮し、より正確な位相変化情報を取得したい場合には、X線の入射位置の変化に対して蛍光の発光量が一定である蛍光体(第2の蛍光体)を用いても良い。具体的には実施形態5において説明を行う。
【0013】
さらに、被検知物の吸収を考慮し、より正確な位相変化情報を取得したい場合には、入射するX線の移動方向に対する発光量の増減量または増減傾向が異なる蛍光体(第3の蛍光体)を用いても良い。具体的には、実施形態6において説明を行う。
【0014】
以下、本発明に係るX線撮像装置およびX線撮像方法に関する具体的な実施形態について説明する。
【0015】
(実施形態1)
実施形態1では、X線の位相変化から像を得るX線撮像装置の構成例について説明する。
【0016】
図17はX線が物質を透過した際のX線の屈折について模式的に示したものである。物質に対するX線の屈折率は1より若干小さい値を有する。そのため、図17に示すような場合に物質1702に入射するX線において、例えば物質1702と何もない部分との境界に近い部分のX線1706は物質1702の外側に向けて屈折する。この際に、物質の境界部分で屈折されたX線1706は物質1702の外側を進行してきたX線1701と重なるため、強度が増す。一方、屈折したX線の物質に対する入射位置の延長線上の部分は、X線が弱くなる。この結果、得られる透過X線強度分布1703は、図17に示すように、物質1702の輪郭が強調された分布を持つ。
【0017】
ここで、X線の屈折角θは非常に小さい値であるため、検出器の画素サイズを考慮すると、物質と検出器の距離を離さなければ、輪郭強調を検出することが難しい。そのため、上記特許文献1に記載した屈折コントラスト法では、輪郭強調を検出するために被検知物と検出器を十分に離して配置し、像を拡大する必要があるため、装置の大型化を招く。
【0018】
つまり、被検知物から検出器までの距離が短いと、検出器1704の画素1705のサイズが透過X線強度分布1703の強弱パターンよりも大きくなり、1画素内で強弱の強度が打ち消し合うことになる。これにより、輪郭が強調された像を得ることができなくなる。
【0019】
そこで、本実施形態では、被検知物と検出器の距離を短くした場合であっても、X線の位相変化情報を十分に取得するために、発光量勾配を有する蛍光体を用いる。以下、具体的に説明する。
【0020】
図1に、本実施形態におけるX線撮像装置の構成例を説明する図を示す。
【0021】
X線源101から発生したX線は、被検知物104によって位相が変化し、その結果、屈折する。屈折したX線は蛍光体アレイ105に入射する。入射したX線により蛍光体アレイ105から生じた蛍光は、検出器106によりそれぞれの蛍光の発光強度が検出される。検出器106により得たX線に関する情報はモニタ等の表示手段108に出力される。
【0022】
被検知物104としては、人体、人体以外としては無機材料、無機有機複合材料等が挙げられる。なお、被検知物104を移動する移動手段(不図示)を別途設けてもよい。この移動手段により、被検知物104を適宜移動することができるため、被検知物104の特定個所についての像を得ることができる。
【0023】
検出器106としては、種々の光検出器を用いることができる。例えば、紫外光や可視光ではSiを用いたCCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子、赤外光ではInSbやCdHgTeなどの化合物半導体を用いた固体撮像素子を用いたカメラなどから選択される。検出器106は、蛍光体アレイ105と近接していても良いし、一定の間隔を隔てて配置しても良い。また、蛍光体アレイ105を検出器106の中に組み込んでも良い。
【0024】
なお、単色X線を用いる場合には、X線源101と被検知物104との間に単色化手段102を配置しても良い。単色化手段102としては、スリットと組み合わせたモノクロメータやX線多層膜ミラーなどを用いることができる。
【0025】
つぎに、蛍光体アレイ105について説明する。図2に、蛍光体アレイ105の一部分について説明する模式図を示す。この蛍光体アレイ105は複数の蛍光体204を配列することにより構成されており、蛍光体204は入射するX線に対して垂直方向に厚みが変化している三角柱形状を有している。このように構成することにより、蛍光体204はX線方向にX線の入射位置により蛍光の発光強度が変化する発光量勾配を備えている。なお、蛍光体アレイ105は、板状の蛍光体を加工することにより、蛍光体204を配列させることにより構成してもよい。
【0026】
符号201は被検知物104がない状態での蛍光体204に入射する基準X線強度分布を示し、符号202は被検知物104がある状態での屈折によって変化した蛍光体204へ入射するX線強度分布である。
【0027】
検出器1画素に入るX線の強度は、どのような強度分布を持っていても積分強度が同じであれば、検出する蛍光強度は同じとなる。しかし、X方向にX線による蛍光の発光強度が変化する蛍光体204を設置すれば、被検知物104によってX線が屈折することによるX線の強度分布変化を蛍光の強度分布変化に変換することができる。例えば、図2において、符号202の強め合っている箇所が図よりも上方向にシフトすれば、発生する蛍光の強度は減少する。一方、符号202の強め合っている箇所が図よりも下方向にシフトすれば、発生する蛍光の強度は増加する。このため、被検知物104がない状態で検出した光強度と、被検知物104がある状態で検出した光強度を比較することにより、微小な屈折の効果を検知することができる。
【0028】
このような構成により、検出器106の1画素内の微小な発光量分布変化も検出できることから被検知物104と検出器106の距離を長く取る必要性がなく、装置の小型化ができる。また、被検知物104と検出器106の距離を長くする構成を選択すれば、より微小な屈折による発光量分布変化を検出することも出来る。さらに、この手法によれば、位相変化の検出にX線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がない。
【0029】
なお、上記では、同一の実効的な蛍光発光量を有し、かつ連続的に形状が変化した蛍光体について説明したが、該蛍光体は、ある方向においてX線による蛍光の発光強度が変化するような発光量勾配を有していればよい。例えば、図4のように単位面積当たりの蛍光体の発光量分布(同一線量のX線を照射したときに生じる発光量)が変化している蛍光体も本実施形態のX線撮像装置に用いることが可能である。このような発光量分布は、発光材料の密度分布やドーパントの密度分布を変化させることにより構成することができる。なお、図2のようにX方向に関する発光量分布を、入射するX線に対して垂直方向に関する発光量分布と表現することもある。
【0030】
蛍光体の発光量勾配は必ずしも図2に示すように連続的である必要はなく、階段状(ステップ状)に発光量が変化している場合も含まれる。例えば、段階的に形状が変化していてもよいし、段階的に発光量分布が変化していてもよい。
【0031】
また、蛍光体の発光量勾配の方向は一方向以上であっても構わない。例えば、同一蛍光体内で、X方向とY方向に発光量勾配を有するように構成すれば、2次元方向の位相勾配を計測することができる。このような形状としては、例えばピラミッド型や円錐型などがある。
【0032】
また、同一蛍光体内だけでなく、X方向の勾配を有した蛍光体と、Y方向の勾配を有した蛍光体を交互に面内に有した蛍光体アレイを用いて2次元方向の位相勾配を計測できることも可能である。
【0033】
さらに、X方向の勾配を有した蛍光体とY方向の勾配を有した蛍光体を積層化した蛍光体アレイを用いても良い。すなわち、第1層目にはX方向に勾配を有する蛍光体アレイを設け、第2層目にはY方向に勾配を有する蛍光体を設けても良い。
また、被検知物104からの散乱X線による像の不明瞭化を軽減するために、蛍光体アレイ105と検出器106との間にレントゲン撮影に用いられるグリッドを配置しても良い。
【0034】
(実施形態2:分割素子を設ける構成例)
実施形態2では、X線の位相変化から位相像を得るX線撮像装置及び方法について説明する。本実施形態では、X線を分割する素子を設ける点において実施形態1とは異なる。
【0035】
図3は本発明のX線撮像装置を示した図である。
X線発生手段としてのX線源301から発生されたX線は、分割素子303により空間的に分割される。すなわち、分割素子303を透過したX線はX線の束となる。この分割素子303はラインアンドスペースを有したスリットアレイ形状であっても、2次元的に配列された穴を有しているものであっても良い。また、分割素子303に設けられたスリットはX線を透過する形態であれば、光学素子の基板を貫通しなくとも良い。分割素子303の材料としてはX線の吸収率が高いPt、Au、Pb、Ta、Wなどから選択される。あるいは、これらの材料の合金であってもよい。
【0036】
分割素子303により分割されたX線のラインアンドスペースの周期は検出器306位置での検出器306の画素サイズ以上である。すなわち、X線により発光した蛍光の強度検出手段305を構成する画素の大きさは、分割素子303により分割されたX線の空間的な周期以下である。
【0037】
分割素子303により空間的に分割されたX線は、被検知物304によって屈折される。屈折したそれぞれのX線は蛍光体アレイ305に入射する。蛍光体アレイ305によりX線は光に変換され、検出器306によりそれぞれの光強度が検出される。検出器306により得た光強度に関する情報は演算手段307により数的処理がなされ、モニタ等の表示手段308に出力される。
【0038】
また、検出器306と蛍光体アレイ305は、その間をレンズや反射ミラーなどの光学素子で接続されていることが望ましい。これらの光学素子と組み合わせることで、蛍光体アレイ305から透過及び散乱してきたX線を検出器に入らないようにし、検出データのS/Nを向上することができる。なお、被検知物304によるX線の位置変化量を精度良く測定するために、蛍光体と検出素子とをファイバープレートで一体化してもよい。
【0039】
また、分割素子303と、被検知物304と、蛍光体アレイ305を移動させる移動手段309、310、311はステッピングモータなどから選択される。これにより被検知物304は適宜移動することができるため、被検知物304の特定個所についての像を得ることができる。
なお、単色化手段302、被検知物304、蛍光体アレイ305、検出器306、グリッド等に関しては、実施形態1と同様のものを用いることができる。
【0040】
つぎに、蛍光体アレイ305について更に説明する。
【0041】
図4は本発明の蛍光体アレイを説明するための図である。401は基準X線(被検知物304が無い場合)の光路、402は被検知物304により屈折したX線の光路である。403は蛍光体アレイ、404は蛍光体、405はX線により発光した蛍光体404からの蛍光である。
【0042】
蛍光体404は、X線照射によって蛍光405を発する材料で構成され、且つ素子内で図4に示したX方向に連続的に蛍光205の発光量分布を付与したものである。X方向に連続的な発光量分布を有することを図4の右側に図示している。
【0043】
例えば、上記発光材料としてはNaI(Tlドープ)、CsI(Tl或いはNaドープ)、LSO(Ceドープ)、YAP(Ceドープ)、GSO(Ceドープ)などから選択することが出来る。蛍光体404内での発光材料の濃度を変化させることにより勾配を有する発光量分布を付与することができる。また、発光量勾配を付与するためには、発光に寄与するドーパントの量を変化させることによっても実現できる。これにより、図4に示すように、X線の入射位置に応じた蛍光405の発光強度(J(X))を生じさせることができる。
【0044】
蛍光体404の発光量の勾配が既知であれば、基準X線401とX線402に起因する光強度の関係から、屈折によるX線の位置変化量(ΔX)を求めることができる。
【0045】
また、位置変化量(ΔX)を求めるためには、蛍光体404におけるX線の入射位置(X)と発光強度(J(X))との対応関係をデータテーブルとして演算手段307や他の記憶手段などに格納しておき、測定した光強度から位置変化量(ΔX)を求めても良い。このデータテーブルは、被検知物304がない状態で分割素子303あるいは蛍光体アレイ305を走査し、蛍光体404に入射するX線の位置を変化させることにより得られたデータを用いて作成できる。また、データテーブルの作成にあたっては、分割素子303を移動させる代わりに分割素子303のスリット幅と同等の幅を有する単スリットを用いて蛍光体404の各位置における発光強度を検出しても構わない。
【0046】
つぎに、本実施形態における演算手段307により行う演算処理の方法について説明する。図5に演算処理のフロー図を示す。
【0047】
まず第1のステップであるS100において、蛍光体アレイ305から発生した蛍光の強度情報を取得する。
【0048】
次に、第2のステップであるS101において、各X線による蛍光の強度情報から基準X線401に対する位置変化量(ΔX)を算出する。例えば、予め作成しておいた蛍光体404の各位置における発光強度(J(X))のデータベースを参照して、実際に測定における強度情報から位置変化量(ΔX)を求める。
【0049】
次に、第3のステップであるS102において、各X線の屈折角(Δθ)を算出する。位置変化量(ΔX)と、被検知物304と蛍光体アレイ305との距離(Z)を用いて各X線の屈折角(Δθ)は式(1)で表される。
【0050】
【数1】
【0051】
また、屈折角度(Δθ)と微分位相(dφ/dx)とは式(2)の関係がある。
【0052】
【数2】
【0053】
ここで、λはX線の波長であり連続X線を用いる場合は実効波長を意味する。
【0054】
次に、第4のステップであるS103において、上記式(2)を用いて各X線の微分位相(dφ/dx)を演算して微分位相情報を取得する。
【0055】
次に、第5のステップであるS104において、上記演算結果から得られた各微分位相(dφ/dx)をX方向に積分することによって位相情報(φ)を取得する。
なお、S105のステップにおいては、この様に算出された微分位相像および位相像は表示手段308によって表示することができる。
【0056】
上記の構成によれば、微小なX線の位置変化を検出できるため、被検知物304と検出器306の距離を短くすることができる。すなわち、特許文献1に記載の屈折コントラスト法に比べて装置の小型化が出来る。
【0057】
また、分割素子303を用いることにより、微分位相量、位相量を定量化することができる。なお、被検知物304と検出器306の距離を長くする構成を選択すれば、より微小な屈折によるX線位置変化を測定することができる。
また、位相変化の検出にX線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がない。
【0058】
(実施形態3)
実施形態3では、実施形態2の蛍光体アレイとは異なる蛍光体アレイを用いたX線撮像装置について説明する。本実施形態のX線撮像装置において、装置の基本構成は実施形態2で説明した図1と同じである。
【0059】
図6は、図3に示した蛍光体アレイ305の一部分を示した図であり、図4の蛍光体アレイ403とは異なる蛍光体アレイ305を用いた形態である。
【0060】
601は基準X線(被検知物304がない場合)の光路、602は被検知物304により屈折したX線の光路を示している。蛍光体アレイ603は三角柱状の蛍光体604が並べられて構成されている。蛍光体604は、X線照射によって蛍光605を発光する材料である。
【0061】
ここで蛍光体604の最大の厚みは使用するX線が十分透過する厚さであることが望ましい。なぜなら、X線が蛍光体の途中までしか透過しないとすると、入射されるX線の強度と蛍光の強度との相関が確保できず、誤差が生じる可能性があるからである。そのため、検出器306にX線を直接入射することを防止するために、蛍光体604と検出器306(図3)との間には蛍光を通すX線遮蔽材を挿入することが好ましい。このようなX線遮蔽材としては、例えばオプティカルファイバープレート等がある。
【0062】
この蛍光体604は三角柱形状で構成されているため、蛍光体604へのX線の入射位置によって発光量が変化する。基準X線601が蛍光体604に入射した際、蛍光605の強度Jは式(3)によって表される。
J=k・I0(1−exp(−μenl0)) 式(3)
I0は分割素子203によって空間的に分割されたX線の強度、μenは蛍光体604の材料の実効的な線エネルギー吸収係数、l0は基準X線601の蛍光体4604内の光路長、kは係数である。すなわち、上記式(3)は、蛍光体604に入射したX線のうち、蛍光体604自体に透過されたX線以外のX線が蛍光に変換されることを示している。
【0063】
一方、被検知物304によって屈折したX線602の蛍光体604透過後の光強度J´は式(4)で表される。
J´=k・I0(1−exp(−μenl)) 式(4)
lはX線602の蛍光体604内の光路長を示している。式(3)、式(4)と蛍光体604の頂角(α)から蛍光体アレイ305上での位置変化量(ΔX)は式(5)で表すことができる。
【0064】
【数3】
【0065】
なお、吸収の効果が無視できない場合は、X線の位置変化により蛍光の光強度が変化しない形態の蛍光体を用いて被検知物304のX線の透過率を求めることもできる。例えば、蛍光体604を三角柱から四角柱形状に変えて撮像することにより透過率を求めることができる。また、kI0は、X線−蛍光変換素子の線エネルギー吸収係数μenが既知であるから、基準X線における蛍光発光強度Jを測定することで、式(3)から求めることが出来る。あるいは蛍光体アレイ603をX方向に走査し、X線の位置変化量に応じた蛍光発光強度を求め、式(3)でフィッティングすることで、実効的なkI0及びμenを求めることができる。
【0066】
つまり、基準X線601と屈折したX線602による蛍光強度の関係から、被検知物304での屈折による微量の位置変化量を得ることができる。また、本実施形態においては、上記実施形態2と同様に、予め蛍光605の発光強度(J(X))を測定して作成したデータテーブルを用いることにより、蛍光605の発光強度からX線の位置変化量(ΔX)を得ることも可能である。
【0067】
上記のように得られたデータについて図5に示したフローにしたがって演算処理を行うことで、微分位相(dφ/dx)および位相(φ)を算出し、微分位相像や位相像を表示手段308に表示することができる。
【0068】
このような構成により、微小なX線の位置変化を検出できるため、被検知物304と検出器306の距離を長く取る必要性がなく装置の小型化ができる。また、分割素子303を用いることにより、微分位相量、位相量を定量化することができる。なお、被検知物304と検出器306の距離を長くする構成を選択すれば、より微小な屈折によるX線の位置変化を検出することが出来る。更に位相変化の検出にX線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がない。
【0069】
(実施形態4:コンピューテッドトモグラフィ)
実施形態4では、コンピューテッドトモグラフィ(CT)の原理を用いて、3次元的な位相分布を得る装置の構成例について説明する。
【0070】
図7に、本実施形態におけるCT装置の構成例を説明する概略図を示す。
【0071】
図7において、701はX線源、703は分割素子、704は被検知物、705は蛍光体アレイ、706は検出器、707は演算手段、708は表示手段である。
【0072】
本実施形態におけるCT装置は、X線源701、分割素子703、蛍光体アレイ705と検出器706は、被検知物704のまわりを同期させて移動させる可動手段により、移動可能に構成されている。
【0073】
分割素子703により空間的に分割されたX線は被検知物704に照射され、透過X線は蛍光体アレイ705に入射する。蛍光体アレイ705により、分割されたX線の被検知物704での屈折による微量の位置変化量を得ることができる。蛍光体アレイ705を透過した蛍光は検出器706により検出される。この撮像を分割素子703、蛍光体アレイ705と検出器706は、被検知物704のまわりを同期させて移動させて行うことにより被検知物704の投影データを得る。分割素子703、蛍光体アレイ705とX線検出器706を固定し、被検知物704を回転させて投影データを得ても構わない。
【0074】
つぎに、本実施形態における演算処理の方法について説明する。図8は、その演算処理のフロー図である。先ず、第1のステップであるS200において、蛍光体アレイ705から発生した蛍光の発光強度情報を取得する。次に、第2のステップであるS201において、各X線の基準X線に対する位置変化量(ΔX)を算出する。次に、第3のステップであるS202において、位置変化量(ΔX)と被検知物704から蛍光体アレイ705間の距離(Z)を用いて、各X線の屈折角(Δθ)を求める。次に、第4のステップであるS203において、屈折角(Δθ)から各X線の微分位相(dφ/dx)を算出する。そして、第5のステップであるS204において、得られた各微分位相(dφ/dx)をX方向に積分することによって位相(φ)を算出する。これらの一連のS201からS204の作業を、全投影データについて繰り返し処理する。最後に、第6のステップであるS205において、全投影データにおける位相像からコンピューテッドトモグラフィにおける画像再構成法(たとえばフィルタ逆投影法など)により、位相(φ)の断層像を得る。なお、S206のステップにおいては、位相像の断層画像を表示手段708によって表示することができる。
【0075】
このような構成により、装置の小型化ができ、かつ、X線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がなく、このCT装置を利用することにより、非破壊的に被検知物の3次元位相像を得ることができる。
【0076】
(実施形態5:吸収情報を取得するための蛍光体アレイA)
実施形態5では、X線の吸収が大きい被検知物に対しても、より正確な微分位相像及び位相像を得ることのできる装置及び方法について説明する。本実施形態のX線撮像装置において、装置の基本構成は実施形態2で説明した図3と同じである。
【0077】
本実施形態の蛍光体アレイは、屈折効果によるX線の位置変化量を検出するための蛍光体(第1の蛍光体)と、被検知物の吸収効果による透過X線強度を検出するための蛍光体(第2の蛍光体)とを有することを特徴とする。
ここで、第2の蛍光体は、Xの入射位置により蛍光の発光量が一定である蛍光体である。ここで、蛍光の発光量が一定であるとは、入射位置により発光量が実質的に変化せず、被検知物の吸収情報を取得できることをいい、厳密に一定である必要はない。
蛍光体アレイから発光した蛍光の強度を検出することにより吸収像、微分位相像、位相像を得ることができる。以下、具体的に説明する。
【0078】
図9は本実施形態の蛍光体アレイを説明するための図である。901は基準X線(被検知物304が無い場合)の光路、902は被検知物304により屈折したX線の光路である。903はX線の位置変化量を蛍光の強度情報に変換するための蛍光体904と蛍光体905が同一面内方向に周期的に並べられた蛍光体アレイである。蛍光体904はX方向に連続的に変化した発光量分布を有し、蛍光体905はX方向で変化しない発光量分布を有する。符号906はX線により発光した蛍光体904からの蛍光を示したものである。図9の右側に示すように、蛍光体904は、X方向に発光量分布があり、被検知物304で屈折したX線の位置変化と吸収されたX線強度に対応した蛍光が得られる。なお、図中の右側の蛍光体904には一例としてX方向に直線的な発光量分布を示した。更に、実施形態2と同様、予め蛍光体904のX線照射位置変化量(X)に対する発光量分布(J(X))を測定しておいてもよい。
【0079】
また、図9の右側に示すように、蛍光体905は発光量分布が一定であり、被検知物304で吸収されたX線強度に対応した蛍光が得られる。蛍光の発光量分布は素子内で一様であればよい。しかし、この発光量分布は蛍光体904の基準X線位置と同じ発光強度となるように調整されることが望ましい。例えば、同一線量のX線を照射したときに生じる蛍光体904の中央の発光量と、蛍光体905の発光量をほぼ等しくするように構成することができる。また、検出器306にX線を直接入射させないために、蛍光体904および905と検出器306との間には蛍光を通すX線遮蔽材を挿入することが好ましい。
【0080】
X線の基準X線からの位置変化量と被検知物のX線の吸収量は、蛍光体904及び905の蛍光発光強度を測定し比較することで求めることができる。以下、図10に示した蛍光体のX方向と蛍光発光強度の概念図、及び図11に示した演算処理のフロー図を用いて説明する。
【0081】
まず、被検知物304によるX線の吸収がない場合、被検知物304を透過したX線の強度Iは透過前のI0とほぼ等しく(I≒I0)、被検知物304による位置変化(ΔX)は図10のA点の蛍光発光強度JAが得られる。しかしながら、被検知物304によるX線の吸収がある場合、被検知物304を透過後のIはI0より少なく(I<I0)なり、蛍光発光強度は図10のC点での値JCとなる。この場合、予め得た蛍光発光量分布J(X)を用いると位置変化はΔX‘となり誤った情報となってしまう。そこで、蛍光発光量分布が一様な別の蛍光体(J1=J(0))を用いて同様の測定を行う。被検知物が無い場合における図10のB点の蛍光発光強度JBを予め測定していれば、吸収がある場合における図10のD点の蛍光発光量差ΔJ(=JB−JD)を求めることが出来る。蛍光発光強度JA=JC+ΔJであるから、J(X)を用いて正しいΔXを求めることができる。なお、蛍光発光量差ΔJは、被検知物304の吸収量に対応する。
【0082】
次に、演算処理方法を図11のフロー図で説明する。先ず、第1のステップであるS300において、予め被検知物が無い状態で、発光量分布のある蛍光体の発光量分布J(X)と、発光量分布のない蛍光体の発光量JBを取得する。次に第2のステップであるS301において、被検知物の測定し、発光量分布のある蛍光体の発光量JCと、発光量分布のない蛍光体の発光量JDを取得する。次に第3のステップであるS302において、被検知物の吸収量に対応する発光量差ΔJ(=JB−JC)を求める。次に第4のステップであるS303において、被検知物の吸収を補正した発光量JA(=JC+ΔJ)を求める。最後に第5のステップであるS304において、発光量分布のある蛍光体の発光量分布J(X)と前ステップで求めたJAから、ΔXを求める。
【0083】
そのため、蛍光体904及び905の発光強度からX線902の照射位置変化(ΔX)と吸収量(発光量差ΔJ)を求め、被検知物304での微量の屈折変化量を求めることができる。
【0084】
なお、上記の算出手法によらず、蛍光体905を利用して得た光強度から吸収情報を取得し、この吸収情報を利用して位置変化量を算出する他の手法を用いてもよい。
【0085】
ところで、上記蛍光体904と蛍光体905の2つの領域での蛍光強度の情報を得る場合、X方向の空間分解能が1/2となる。そこで、上記測定に加えて蛍光体アレイ305をX方向に移動手段311で移動させることにより空間分解能を改善することができる。あるいは、被検知物304をX方向に移動手段310で移動させることにより、空間分解能を改善することもできる。
上記の構成によれば、この蛍光体904及び905を用いることにより、X線の吸収の効果及び屈折の効果を独立した情報として得ることができる。
【0086】
上記のように得られたデータは、図5に示したフローにしたがって演算処理を行うことで、微分位相(dφ/dx)および位相(φ)を算出し、吸収像、微分位相像、位相像を表示手段308に表示することができる。なお、吸収像、微分位相像、位相像は同時に画面上に表示しても良いし、また個々に表示しても良い。
【0087】
なお、本実施形態では、発光材料の濃度分布またはドーパント量の分布を調整した例を説明した。しかし、以下の実施例3で説明するように、位置変化量を測定するための蛍光体の形状を例えば三角形状とし、吸収率(透過率)を測定するための蛍光体の形状を四角形状としても良い。すなわち、入射するX線に対して垂直方向に厚さが一定の蛍光体を設けてもよい。
【0088】
(実施形態6:吸収情報を取得するための蛍光体アレイB)
実施形態6では、実施形態5と同様にX線の吸収が大きい被検知物であっても、より正確な微分位相像および位相像を得ることのできる装置および方法について説明する。本実施形態のX線撮像装置において、装置の基本構成は実施形態2で説明した図3と同じである。
【0089】
本実施形態の蛍光体アレイは、隣同士に設けられている蛍光体間で入射するX線の移動方向に対する発光量の増減量または増減傾向が異なることを特徴とする。例えば、被検知物が存在しない状態と被検知物が存在する状態とでX線の入射位置が変化した場合、第1の蛍光体では発光量が多くなるのに対して、第2の蛍光体では発光量が少なくなるように構成されている。このような蛍光体を用いることにより、吸収情報と位相情報を独立に得ることができる。そしてこの吸収情報を利用することにより、より高精度な微分位相像や位相像を得ることができる。以下、詳細に説明する。
【0090】
図12は本実施形態の蛍光体アレイを説明するための図である。1201及び1205は基準X線(被検知物304が無い場合)の光路、1202及び1206は被検知物304により屈折したX線の光路、1203は蛍光体アレイ、1204及び1207は蛍光体アレイ1203に周期的に配列された三角柱形状の蛍光体である。符号1208はX線により発光した蛍光体1204及び1207からの蛍光を示すものである。
【0091】
図12の右側に模式的に示すように蛍光体1204及び1207はX線の入射方向に対して垂直方向であるX方向に発光量の勾配がある。
【0092】
そして、蛍光体1204及び1207においては、X線の光路が長いほうがより蛍光を発光する。そして、この発光量分布変化の傾向は蛍光体1204と蛍光体1207とでは逆向きになっている。なお、蛍光体1204、1207と検出器306の間には可視光を通すX線遮蔽材を挿入しても良い。
【0093】
蛍光体1204における屈折したX線の位置変化量をΔX1、蛍光強度をJ’1、蛍光体1207における屈折したX線の位置変化量をΔX2、蛍光強度をJ’2とする。この場合、隣接する各蛍光体の発光量分布(J(X))は対称であるため、蛍光発光強度に対するX線の位置変化量は、式(6)の関係が成り立つ。
△X1=−△X2 式(6)
また、J’1及びJ’2は、式(4)に被検知物304による透過率Aを加味した式(7)で記述することが出来る。
J’=k・I0A(1−exp(−μenl)) 式(7)更に、位置変化量△Xは、式(7)を用いて式(8)で表すことが出来る。
【0094】
【数4】
【0095】
式(8)のΔX1及びΔX2にJ’1及びJ’2を代入し、式(6)からAについて解くと、Aは式(9)のように表すことが出来る。なお、nはkI0である。
【0096】
【数5】
【0097】
ここで、n、すなわちkI0は、蛍光体の線エネルギー吸収係数μenが既知であるから、基準X線における蛍光発光強度Jを測定することで、式(3)から求めることが出来る。あるいは、蛍光体アレイ1203をX方向に走査し、X線の位置変化量に応じた蛍光発光強度を求め、式(3)でフィッティングすることで、実効的なkI0及びμenを求めることが出来る。
【0098】
したがって、基準X線1201が蛍光体に入射した場合の蛍光強度J、蛍光体1204により生じた蛍光強度J’1、蛍光体1207により生じた蛍光強度J’2、kI0から、透過率Aを求めることができる。
【0099】
また、予め分かっているα、μenと測定によって得られたkI0、A、J‘、Jを式(8)に代入すれば、位置変化量(ΔX)を得ることができる。
【0100】
なお、ここでは、蛍光体1204と1207は発光量分布が対称である例を示しているが、必ずしも対称である必要はない。式(6)で示したように、2つの蛍光体の発光量勾配に関する関係が既知であれば、X線透過率および位置変化量を得ることができる。すなわち、X線の移動方向に対する発光量の増減量が隣接する蛍光体同士で異なっていればよい。
このような手法によれば、2つの蛍光体から透過率を算出した後に、位置変化量を得るため、被検知物がX線に対して十分吸収するような被検知物に対しても高精度の微分位相像または位相像を得ることができる。
【0101】
次に、演算処理を図13に示したフロー図を用いて説明する。先ず、第1のステップであるS400において、蛍光体アレイからの発光量のデータをJ’を取得する。次に、第2のステップであるS401において、第1のステップで得られた隣り合う素子の発光量J’1とJ‘2と、予め被検知物が無い状態の測定で得られたkI0から、透過率Aを求める。次に、第3のステップであるS402において、第1のステップで得られたJ’と、第2のステップで得られたAと、予め被検知物が無い状態の測定で得られたμen、kI0、Jとαを式(8)に代入し、位置変化量(ΔX)を求める。次に、第4のステップであるS403において、位置変化量(ΔX)と、蛍光体アレイとの距離(X)を式(1)に代入し、各X線の屈折角(Δθ)を求める。次に、第5のステップであるS404において、第4のステップで得られたΔθを式(2)に代入し、各X線の微分位相(dφ/dx)求める。次に、第6のステップであるS405において、第5のステップで得られた各微分位相(dφ/dx)をX方向に積分することによって位相情報(φ)を取得する。なお、S406のステップにおいては、この様に算出された吸収像、微分位相像、位相像を表示手段308によって適宜表示することができる。
【0102】
ところで、上記蛍光体1204及び1207を用いて蛍光強度の情報を得る場合、X方向の空間分解能が1/2となる。そこで、上記測定に加えて蛍光体アレイ1203を図1に示した移動手段111で移動させることにより空間分解能を改善することができる。あるいは、被検知物304をX方向に移動手段310で移動させることにより、空間分解能を改善することもできる。
【0103】
以上のように、この蛍光体1204及び1207を用いることにより、X線の吸収の効果及び屈折の効果を独立した情報として得ることができる。また、検出手段306の画素サイズ以下のX線位置変化量を検出できるため、被検知物−検出器間距離を短くすることができ、装置の小型化が達成できる。
【0104】
以下、更に実施例を用いて本発明をより具体的説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、屈折したX線の位置変化をエネルギーの低い蛍光の強度に変換出来ることが出来れば、蛍光体アレイや蛍光体の形状や発光量などを自由に変えることが可能である。
【実施例】
【0105】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0106】
[実施例1]
実施例1においては、本発明を適用したX線撮像装置の構成例について説明する。本実施例は上記実施形態2に対応するものである。
【0107】
図14に、本実施例の構成例について説明する図を示す。図14において、1401はX線源、1402はモノクロメータ、1403は分割素子、1404は被検知物、1405は蛍光体アレイ、1406は検出器、1407は演算手段、1408は表示手段である。なお、分割素子1403、被検知物1404、蛍光体アレイ1405にはそれぞれステッピングモータを用いた移動手段1409、1410、1411が設けられている。
【0108】
X線発生手段としては、X線源1401に示すMoターゲットの回転対陰極型のX線発生装置を用いる。X線の単色化手段としては高配向性熱分解黒鉛(HOPG:Highly oriented Pyrolytic Graphite)のモノクロメータ1402を用いMoの特性X線部分を抽出する。モノクロメータ1402により単色化されたX線はX線源から約100cm離れた位置に配置した分割素子1403により空間的に分割される。
【0109】
分割素子1403は、厚さ100μmのWにスリット幅40μmのスリットを並べたものを用いる。スリット周期は蛍光体アレイ1405上で150μmである。なお、W以外にも、Au、Pb、Ta、Ptなどの材料を使用することも可能である。
【0110】
分割素子1403により分割されたX線を被検知物1404に照射し、被検知物1404を透過したX線は被検知物1404から50cm離れた位置にある、蛍光体アレイ1405に入射する。
【0111】
蛍光体アレイ1405は、頂角約80°の三角柱形状に整形したCsI(Tlドープ)の蛍光体を並べた構造を有する。X方向の周期は150μmである。この蛍光体アレイ1405は、オプティカルファイバープレートを用い、画素サイズ25μmのCCD素子を用いた検出器1406と接合した。この蛍光体アレイ1405と検出器1406を一体化したデバイスにより蛍光の強度を検出する。
【0112】
分割素子1403によって分割されたX線は三角柱の周期方向の中心に入射するように配置されている。なお、ここでは分割素子1403で分割されたX線一本に対して、三角柱の周期方向6画素の蛍光強度値を足し合わせて1つの蛍光体に対する蛍光発光強度とした。
【0113】
演算手段1407を用いて、検出強度と位置変化量(Xd)の関係をまとめたデータテーブルから位置変化量(Xd)を算出し、式(2)を用いて屈折角(Δθ)を算出する。屈折角(Δθ)から式(3)を用いて微分位相量を算出し、得られた微分位相量を空間的に積分することにより位相分布像を求める。演算手段1407によって得られた微分位相像または位相像は表示手段1408としてのPCモニタに表示される。
【0114】
[実施例2]
以下に、本発明の実施例2におけるX線撮像装置の構成例について説明する。本実施例は上記実施形態1に対応するものである。
【0115】
図15に、本実施例の構成例について説明する図を示す。図15において、1501はX線源、1504は被検知物、1505は蛍光体アレイ、1506はX線検出器、1008は表示手段である。
【0116】
本実施例において、X線発生手段としては、X線源1501に示すMoターゲットの回転対陰極型のX線発生装置を用いる。X線源1501から発生したX線はX線源1501から100cm離れた位置に配置した被検知物1504に照射する。被検知物1504を透過したX線は被検知物1504から65cm離れた位置にある、蛍光体アレイ1505に入射する。
【0117】
蛍光体アレイ1505は、頂角約80°の三角柱形状に整形したCsI(Tlドープ)の蛍光体を並べた構造を有し、X方向の周期は150μmである。この蛍光体アレイ1505は、オプティカルファイバープレートを用い、画素サイズ25μmのCCD素子を用いた検出器1506と接合する。この蛍光体アレイ1505と検出器1506を一体化したデバイスにより蛍光の強度を検出する。被検知物1504の存在しない状態での同様の撮影を行ったときの像からの数的処理によって求めた像を表示手段1508としてのPCモニタに表示する。
【0118】
[実施例3]
実施例3においては、本発明を適用したX線撮像装置の構成例について説明する。本実施例は上記実施形態5に対応するものである。
【0119】
本実施例の基本的な構成は、実施例1の説明で使用した図14と同じであるが、蛍光体アレイ1405および演算手段1407の具体的な形態が異なる。
【0120】
すなわち、実施例3における蛍光体アレイ1405は、オプティカルファイバープレート上に形成したCsI(Tlドープ)を加工し、図16に示すように三角柱と四角柱のロッドを交互に並べた構造に成形する。三角柱の蛍光体1604と四角柱の蛍光体1605の周期は150μmで、三角柱の蛍光体1604の頂角は約80°、厚みは約13μmである。この蛍光体1604及び1605を形成したオプティカルファイバープレートは、画素サイズ25μmのCCD素子を用いた検出器1406と接合する。この蛍光体アレイ1405と検出器1406を一体化したデバイスにより蛍光の強度を検出する。
【0121】
ここで、分割素子1403によって分割されたX線は各蛍光体の周期方向の中心に入射するように配置されている。
【0122】
蛍光体アレイ1405の直後に配置した検出手段としての検出器1406により、X線により発光した蛍光の強度を検出する。ここでは、分割素子1403で分割されたX線一本に対して、各蛍光体の周期方向6画素の蛍光強度値を足し合わせて1つの蛍光体に対する蛍光発光強度とする。その後、蛍光体アレイ1405を三角柱及び四角柱の周期方向に移動手段1411を用いて一周期150μm動かした後に同様の測定を行う。この2回の測定により被検知物704を透過した各X線から三角柱及び四角柱の蛍光体による蛍光発光強度が得られる。
【0123】
演算手段1407を用い、三角柱及び四角柱の蛍光体からの蛍光発光強度と、予め測定した三角柱による蛍光発光強度(J(X))と位置変化量(ΔX)のデータベースとを用いて、吸収量(ΔJ)と位置変化量(ΔX)を算出する。この位置変化量(ΔX)から、式(2)を用いて屈折角(Δθ)を算出する。そして屈折角(Δθ)から、式(3)を用いて微分位相量を算出し、得られた微分位相量を空間的に積分することにより位相分布像を求める。
【0124】
演算手段1407によって得られた、X線吸収像、X線微分位相像、X線位相像は表示手段1408としてのPCモニタに適宜表示される。
【0125】
[実施例4]
実施例4においては、本発明を適用したX線撮像装置の構成例について説明する。本実施例は、実施形態6に対応するものである。
【0126】
本実施例の基本的な構成は、実施例1および実施例3の説明で使用した図14と同じであるが、蛍光体アレイ1405および演算手段1407の具体的形態が異なる。
【0127】
図12に示すように、本実施例に係る蛍光体アレイ1405は、オプティカルファイバープレート上に形成したCsI(Tlドープ)を加工し、三角柱のロッドが交互に逆の勾配で並べた構造に成形する。三角柱の蛍光体1204及び1207の周期は150μmで、三角柱の頂角は約80°である。この蛍光体1204及び1207を形成したオプティカルファイバープレートは、画素サイズ25μmのCCD素子を用いた検出器1406と接合させた。この蛍光体アレイ1405と検出器1406を一体化したデバイスにより蛍光の強度を検出する。分割素子1403によって分割されたX線は各蛍光体の周期方向の中心に入射するように配置されている。蛍光体アレイ1405の直後に配置した検出手段としての検出器1406により、X線により発光した蛍光の強度を検出する。分割素子1403で分割されたX線一本に対して、各蛍光体の周期方向6画素の蛍光強度値を足し合わせて1つの蛍光体に対する蛍光発光強度とする。
【0128】
その後、蛍光体アレイ1405を三角柱の周期方向に移動手段1411を用いて一周期150μm動かした後に同様の測定を行う。この2回の測定により被検知物1404を透過した各X線から蛍光体による蛍光発光強度が得られる。
【0129】
演算手段1407を用い、三角柱の蛍光体からの蛍光発光強度と、被検知物1404のない状態での測定データ(J(X))から、位置変化量(ΔX)と透過率Aを算出し、式(2)を用いて屈折角(Δθ)を算出する。そして屈折角(Δθ)から式(3)を用いて微分位相量を算出し、得られた微分位相量を空間的に積分することにより位相分布像を求める。
【0130】
演算手段1407によって得られた、X線吸収像、X線微分位相像、X線位相像は表示手段1408としてのPCモニタに適宜表示される。
【符号の説明】
【0131】
301 X線源
302 単色化手段
303 分割素子
304 被検知物
305 蛍光体アレイ
306 検出器
307 演算手段
308 表示手段
309 移動手段
310 移動手段
311 移動手段
【技術分野】
【0001】
本発明はX線を用いたX線撮像装置、およびX線撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線を用いた非破壊検査法は工業利用から医療利用まで幅広い分野で用いられている。X線は波長が約1pm〜10nm(10−12〜10−8m)程度の電磁波であり、このうち波長の短いX線を硬X線、波長の長いX線を軟X線という。
【0003】
X線による吸収能の違いを用いた吸収コントラスト法ではX線の透過能の高さを利用し、鉄鋼材料などの内部亀裂検査や手荷物検査などのセキュリティ分野の用途として実用化されている。一方、X線の吸収によるコントラストが形成されにくい低密度の被検知物に対しては、被検知物によるX線の位相変化を検出するX線位相イメージングが有効である。
【0004】
各種X線位相イメージングにおいて、特許文献1に示された屈折コントラスト法は、X線の被検知物による位相変化による屈折効果を利用した方法である。この屈折コントラスト法は、微焦点のX線源を用い、被検知物と検出器の距離を離して撮像される。この屈折コントラスト法によれば、X線の被検知物による屈折効果から被検知物の輪郭が強調されて検出される。また、屈折コントラスト法は屈折効果を利用するため、多くのX線位相イメージング手法の場合と異なりシンクロトロン放射光のような干渉性の高いX線を必ずしも必要としないという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−102215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された屈折コントラスト法では、X線の被検知物による屈折効果における屈折角が非常に小さいため、輪郭強調した像を得るには検知物と検出器の距離を十分に離す必要性がある。そのため、特許文献1の方法では、装置の大型化を招くという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、特許文献1に記載された屈折コントラスト法とは異なる新規なX線撮像装置およびX線撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るX線撮像装置は、X線発生手段から発生したX線を空間的に分割する分割素子と、前記分割素子により分割されたX線が入射する第1の蛍光体が複数配列された蛍光体アレイと、前記蛍光体アレイから発光した蛍光の強度を検出するための検出手段と、を有し、前記第1の蛍光体は、前記X線の入射位置に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特許文献1に記載された屈折コントラスト法とは異なる新規なX線撮像装置およびX線撮像方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1におけるX線撮像装置の構成例を説明する図。
【図2】本発明の実施形態1における蛍光体アレイの一部分について説明する図。
【図3】本発明の実施形態2におけるX線撮像装置の構成例を説明する図。
【図4】本発明の実施形態2における蛍光体アレイの一部分について説明する図。
【図5】本発明の実施形態2における演算処理の方法について説明するフロー図。
【図6】本発明の実施形態3における蛍光体アレイの一部分について説明する図。
【図7】本発明の実施形態4におけるコンピューテッドトモグラフィ(CT)を説明する図。
【図8】本発明の実施形態4における演算処理の方法について説明するフロー図。
【図9】本発明の実施形態5における蛍光体アレイの一部分について説明する図。
【図10】本発明の実施形態5における被検知物の吸収による効果を補正するための概念図。
【図11】本発明の実施形態5における演算処理の方法を説明するフロー図。
【図12】本発明の実施形態6における蛍光体アレイの一部について説明する図。
【図13】本発明の実施形態6における演算処理の方法を説明するフロー図。
【図14】本発明の実施例1におけるX線撮像装置を説明する図。
【図15】本発明の実施例2におけるX線撮像装置を説明する図。
【図16】本発明の実施例3における蛍光体アレイの一部について説明する図。
【図17】物質によってX線が屈折される様子を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態では、発光量勾配を有する蛍光体を複数配列した蛍光体アレイ用いて屈折効果による強度分布変化または位置変化に関する情報を取得する。ここで、発光量勾配を有する蛍光体とは、X線の入射位置により蛍光の発光量が変化する蛍光体のことをいう(第1の蛍光体)。この蛍光体は、連続的または段階的に形状を変化させることにより構成することができる。また、単位体積当たりの発光量を連続的または段階的に変化させることにより構成することもできる。なお、本明細書では、「連続的」との用語は「段階的」の概念を含むものとして取り扱うこともある。
【0012】
また、被検知物の吸収を考慮し、より正確な位相変化情報を取得したい場合には、X線の入射位置の変化に対して蛍光の発光量が一定である蛍光体(第2の蛍光体)を用いても良い。具体的には実施形態5において説明を行う。
【0013】
さらに、被検知物の吸収を考慮し、より正確な位相変化情報を取得したい場合には、入射するX線の移動方向に対する発光量の増減量または増減傾向が異なる蛍光体(第3の蛍光体)を用いても良い。具体的には、実施形態6において説明を行う。
【0014】
以下、本発明に係るX線撮像装置およびX線撮像方法に関する具体的な実施形態について説明する。
【0015】
(実施形態1)
実施形態1では、X線の位相変化から像を得るX線撮像装置の構成例について説明する。
【0016】
図17はX線が物質を透過した際のX線の屈折について模式的に示したものである。物質に対するX線の屈折率は1より若干小さい値を有する。そのため、図17に示すような場合に物質1702に入射するX線において、例えば物質1702と何もない部分との境界に近い部分のX線1706は物質1702の外側に向けて屈折する。この際に、物質の境界部分で屈折されたX線1706は物質1702の外側を進行してきたX線1701と重なるため、強度が増す。一方、屈折したX線の物質に対する入射位置の延長線上の部分は、X線が弱くなる。この結果、得られる透過X線強度分布1703は、図17に示すように、物質1702の輪郭が強調された分布を持つ。
【0017】
ここで、X線の屈折角θは非常に小さい値であるため、検出器の画素サイズを考慮すると、物質と検出器の距離を離さなければ、輪郭強調を検出することが難しい。そのため、上記特許文献1に記載した屈折コントラスト法では、輪郭強調を検出するために被検知物と検出器を十分に離して配置し、像を拡大する必要があるため、装置の大型化を招く。
【0018】
つまり、被検知物から検出器までの距離が短いと、検出器1704の画素1705のサイズが透過X線強度分布1703の強弱パターンよりも大きくなり、1画素内で強弱の強度が打ち消し合うことになる。これにより、輪郭が強調された像を得ることができなくなる。
【0019】
そこで、本実施形態では、被検知物と検出器の距離を短くした場合であっても、X線の位相変化情報を十分に取得するために、発光量勾配を有する蛍光体を用いる。以下、具体的に説明する。
【0020】
図1に、本実施形態におけるX線撮像装置の構成例を説明する図を示す。
【0021】
X線源101から発生したX線は、被検知物104によって位相が変化し、その結果、屈折する。屈折したX線は蛍光体アレイ105に入射する。入射したX線により蛍光体アレイ105から生じた蛍光は、検出器106によりそれぞれの蛍光の発光強度が検出される。検出器106により得たX線に関する情報はモニタ等の表示手段108に出力される。
【0022】
被検知物104としては、人体、人体以外としては無機材料、無機有機複合材料等が挙げられる。なお、被検知物104を移動する移動手段(不図示)を別途設けてもよい。この移動手段により、被検知物104を適宜移動することができるため、被検知物104の特定個所についての像を得ることができる。
【0023】
検出器106としては、種々の光検出器を用いることができる。例えば、紫外光や可視光ではSiを用いたCCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子、赤外光ではInSbやCdHgTeなどの化合物半導体を用いた固体撮像素子を用いたカメラなどから選択される。検出器106は、蛍光体アレイ105と近接していても良いし、一定の間隔を隔てて配置しても良い。また、蛍光体アレイ105を検出器106の中に組み込んでも良い。
【0024】
なお、単色X線を用いる場合には、X線源101と被検知物104との間に単色化手段102を配置しても良い。単色化手段102としては、スリットと組み合わせたモノクロメータやX線多層膜ミラーなどを用いることができる。
【0025】
つぎに、蛍光体アレイ105について説明する。図2に、蛍光体アレイ105の一部分について説明する模式図を示す。この蛍光体アレイ105は複数の蛍光体204を配列することにより構成されており、蛍光体204は入射するX線に対して垂直方向に厚みが変化している三角柱形状を有している。このように構成することにより、蛍光体204はX線方向にX線の入射位置により蛍光の発光強度が変化する発光量勾配を備えている。なお、蛍光体アレイ105は、板状の蛍光体を加工することにより、蛍光体204を配列させることにより構成してもよい。
【0026】
符号201は被検知物104がない状態での蛍光体204に入射する基準X線強度分布を示し、符号202は被検知物104がある状態での屈折によって変化した蛍光体204へ入射するX線強度分布である。
【0027】
検出器1画素に入るX線の強度は、どのような強度分布を持っていても積分強度が同じであれば、検出する蛍光強度は同じとなる。しかし、X方向にX線による蛍光の発光強度が変化する蛍光体204を設置すれば、被検知物104によってX線が屈折することによるX線の強度分布変化を蛍光の強度分布変化に変換することができる。例えば、図2において、符号202の強め合っている箇所が図よりも上方向にシフトすれば、発生する蛍光の強度は減少する。一方、符号202の強め合っている箇所が図よりも下方向にシフトすれば、発生する蛍光の強度は増加する。このため、被検知物104がない状態で検出した光強度と、被検知物104がある状態で検出した光強度を比較することにより、微小な屈折の効果を検知することができる。
【0028】
このような構成により、検出器106の1画素内の微小な発光量分布変化も検出できることから被検知物104と検出器106の距離を長く取る必要性がなく、装置の小型化ができる。また、被検知物104と検出器106の距離を長くする構成を選択すれば、より微小な屈折による発光量分布変化を検出することも出来る。さらに、この手法によれば、位相変化の検出にX線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がない。
【0029】
なお、上記では、同一の実効的な蛍光発光量を有し、かつ連続的に形状が変化した蛍光体について説明したが、該蛍光体は、ある方向においてX線による蛍光の発光強度が変化するような発光量勾配を有していればよい。例えば、図4のように単位面積当たりの蛍光体の発光量分布(同一線量のX線を照射したときに生じる発光量)が変化している蛍光体も本実施形態のX線撮像装置に用いることが可能である。このような発光量分布は、発光材料の密度分布やドーパントの密度分布を変化させることにより構成することができる。なお、図2のようにX方向に関する発光量分布を、入射するX線に対して垂直方向に関する発光量分布と表現することもある。
【0030】
蛍光体の発光量勾配は必ずしも図2に示すように連続的である必要はなく、階段状(ステップ状)に発光量が変化している場合も含まれる。例えば、段階的に形状が変化していてもよいし、段階的に発光量分布が変化していてもよい。
【0031】
また、蛍光体の発光量勾配の方向は一方向以上であっても構わない。例えば、同一蛍光体内で、X方向とY方向に発光量勾配を有するように構成すれば、2次元方向の位相勾配を計測することができる。このような形状としては、例えばピラミッド型や円錐型などがある。
【0032】
また、同一蛍光体内だけでなく、X方向の勾配を有した蛍光体と、Y方向の勾配を有した蛍光体を交互に面内に有した蛍光体アレイを用いて2次元方向の位相勾配を計測できることも可能である。
【0033】
さらに、X方向の勾配を有した蛍光体とY方向の勾配を有した蛍光体を積層化した蛍光体アレイを用いても良い。すなわち、第1層目にはX方向に勾配を有する蛍光体アレイを設け、第2層目にはY方向に勾配を有する蛍光体を設けても良い。
また、被検知物104からの散乱X線による像の不明瞭化を軽減するために、蛍光体アレイ105と検出器106との間にレントゲン撮影に用いられるグリッドを配置しても良い。
【0034】
(実施形態2:分割素子を設ける構成例)
実施形態2では、X線の位相変化から位相像を得るX線撮像装置及び方法について説明する。本実施形態では、X線を分割する素子を設ける点において実施形態1とは異なる。
【0035】
図3は本発明のX線撮像装置を示した図である。
X線発生手段としてのX線源301から発生されたX線は、分割素子303により空間的に分割される。すなわち、分割素子303を透過したX線はX線の束となる。この分割素子303はラインアンドスペースを有したスリットアレイ形状であっても、2次元的に配列された穴を有しているものであっても良い。また、分割素子303に設けられたスリットはX線を透過する形態であれば、光学素子の基板を貫通しなくとも良い。分割素子303の材料としてはX線の吸収率が高いPt、Au、Pb、Ta、Wなどから選択される。あるいは、これらの材料の合金であってもよい。
【0036】
分割素子303により分割されたX線のラインアンドスペースの周期は検出器306位置での検出器306の画素サイズ以上である。すなわち、X線により発光した蛍光の強度検出手段305を構成する画素の大きさは、分割素子303により分割されたX線の空間的な周期以下である。
【0037】
分割素子303により空間的に分割されたX線は、被検知物304によって屈折される。屈折したそれぞれのX線は蛍光体アレイ305に入射する。蛍光体アレイ305によりX線は光に変換され、検出器306によりそれぞれの光強度が検出される。検出器306により得た光強度に関する情報は演算手段307により数的処理がなされ、モニタ等の表示手段308に出力される。
【0038】
また、検出器306と蛍光体アレイ305は、その間をレンズや反射ミラーなどの光学素子で接続されていることが望ましい。これらの光学素子と組み合わせることで、蛍光体アレイ305から透過及び散乱してきたX線を検出器に入らないようにし、検出データのS/Nを向上することができる。なお、被検知物304によるX線の位置変化量を精度良く測定するために、蛍光体と検出素子とをファイバープレートで一体化してもよい。
【0039】
また、分割素子303と、被検知物304と、蛍光体アレイ305を移動させる移動手段309、310、311はステッピングモータなどから選択される。これにより被検知物304は適宜移動することができるため、被検知物304の特定個所についての像を得ることができる。
なお、単色化手段302、被検知物304、蛍光体アレイ305、検出器306、グリッド等に関しては、実施形態1と同様のものを用いることができる。
【0040】
つぎに、蛍光体アレイ305について更に説明する。
【0041】
図4は本発明の蛍光体アレイを説明するための図である。401は基準X線(被検知物304が無い場合)の光路、402は被検知物304により屈折したX線の光路である。403は蛍光体アレイ、404は蛍光体、405はX線により発光した蛍光体404からの蛍光である。
【0042】
蛍光体404は、X線照射によって蛍光405を発する材料で構成され、且つ素子内で図4に示したX方向に連続的に蛍光205の発光量分布を付与したものである。X方向に連続的な発光量分布を有することを図4の右側に図示している。
【0043】
例えば、上記発光材料としてはNaI(Tlドープ)、CsI(Tl或いはNaドープ)、LSO(Ceドープ)、YAP(Ceドープ)、GSO(Ceドープ)などから選択することが出来る。蛍光体404内での発光材料の濃度を変化させることにより勾配を有する発光量分布を付与することができる。また、発光量勾配を付与するためには、発光に寄与するドーパントの量を変化させることによっても実現できる。これにより、図4に示すように、X線の入射位置に応じた蛍光405の発光強度(J(X))を生じさせることができる。
【0044】
蛍光体404の発光量の勾配が既知であれば、基準X線401とX線402に起因する光強度の関係から、屈折によるX線の位置変化量(ΔX)を求めることができる。
【0045】
また、位置変化量(ΔX)を求めるためには、蛍光体404におけるX線の入射位置(X)と発光強度(J(X))との対応関係をデータテーブルとして演算手段307や他の記憶手段などに格納しておき、測定した光強度から位置変化量(ΔX)を求めても良い。このデータテーブルは、被検知物304がない状態で分割素子303あるいは蛍光体アレイ305を走査し、蛍光体404に入射するX線の位置を変化させることにより得られたデータを用いて作成できる。また、データテーブルの作成にあたっては、分割素子303を移動させる代わりに分割素子303のスリット幅と同等の幅を有する単スリットを用いて蛍光体404の各位置における発光強度を検出しても構わない。
【0046】
つぎに、本実施形態における演算手段307により行う演算処理の方法について説明する。図5に演算処理のフロー図を示す。
【0047】
まず第1のステップであるS100において、蛍光体アレイ305から発生した蛍光の強度情報を取得する。
【0048】
次に、第2のステップであるS101において、各X線による蛍光の強度情報から基準X線401に対する位置変化量(ΔX)を算出する。例えば、予め作成しておいた蛍光体404の各位置における発光強度(J(X))のデータベースを参照して、実際に測定における強度情報から位置変化量(ΔX)を求める。
【0049】
次に、第3のステップであるS102において、各X線の屈折角(Δθ)を算出する。位置変化量(ΔX)と、被検知物304と蛍光体アレイ305との距離(Z)を用いて各X線の屈折角(Δθ)は式(1)で表される。
【0050】
【数1】
【0051】
また、屈折角度(Δθ)と微分位相(dφ/dx)とは式(2)の関係がある。
【0052】
【数2】
【0053】
ここで、λはX線の波長であり連続X線を用いる場合は実効波長を意味する。
【0054】
次に、第4のステップであるS103において、上記式(2)を用いて各X線の微分位相(dφ/dx)を演算して微分位相情報を取得する。
【0055】
次に、第5のステップであるS104において、上記演算結果から得られた各微分位相(dφ/dx)をX方向に積分することによって位相情報(φ)を取得する。
なお、S105のステップにおいては、この様に算出された微分位相像および位相像は表示手段308によって表示することができる。
【0056】
上記の構成によれば、微小なX線の位置変化を検出できるため、被検知物304と検出器306の距離を短くすることができる。すなわち、特許文献1に記載の屈折コントラスト法に比べて装置の小型化が出来る。
【0057】
また、分割素子303を用いることにより、微分位相量、位相量を定量化することができる。なお、被検知物304と検出器306の距離を長くする構成を選択すれば、より微小な屈折によるX線位置変化を測定することができる。
また、位相変化の検出にX線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がない。
【0058】
(実施形態3)
実施形態3では、実施形態2の蛍光体アレイとは異なる蛍光体アレイを用いたX線撮像装置について説明する。本実施形態のX線撮像装置において、装置の基本構成は実施形態2で説明した図1と同じである。
【0059】
図6は、図3に示した蛍光体アレイ305の一部分を示した図であり、図4の蛍光体アレイ403とは異なる蛍光体アレイ305を用いた形態である。
【0060】
601は基準X線(被検知物304がない場合)の光路、602は被検知物304により屈折したX線の光路を示している。蛍光体アレイ603は三角柱状の蛍光体604が並べられて構成されている。蛍光体604は、X線照射によって蛍光605を発光する材料である。
【0061】
ここで蛍光体604の最大の厚みは使用するX線が十分透過する厚さであることが望ましい。なぜなら、X線が蛍光体の途中までしか透過しないとすると、入射されるX線の強度と蛍光の強度との相関が確保できず、誤差が生じる可能性があるからである。そのため、検出器306にX線を直接入射することを防止するために、蛍光体604と検出器306(図3)との間には蛍光を通すX線遮蔽材を挿入することが好ましい。このようなX線遮蔽材としては、例えばオプティカルファイバープレート等がある。
【0062】
この蛍光体604は三角柱形状で構成されているため、蛍光体604へのX線の入射位置によって発光量が変化する。基準X線601が蛍光体604に入射した際、蛍光605の強度Jは式(3)によって表される。
J=k・I0(1−exp(−μenl0)) 式(3)
I0は分割素子203によって空間的に分割されたX線の強度、μenは蛍光体604の材料の実効的な線エネルギー吸収係数、l0は基準X線601の蛍光体4604内の光路長、kは係数である。すなわち、上記式(3)は、蛍光体604に入射したX線のうち、蛍光体604自体に透過されたX線以外のX線が蛍光に変換されることを示している。
【0063】
一方、被検知物304によって屈折したX線602の蛍光体604透過後の光強度J´は式(4)で表される。
J´=k・I0(1−exp(−μenl)) 式(4)
lはX線602の蛍光体604内の光路長を示している。式(3)、式(4)と蛍光体604の頂角(α)から蛍光体アレイ305上での位置変化量(ΔX)は式(5)で表すことができる。
【0064】
【数3】
【0065】
なお、吸収の効果が無視できない場合は、X線の位置変化により蛍光の光強度が変化しない形態の蛍光体を用いて被検知物304のX線の透過率を求めることもできる。例えば、蛍光体604を三角柱から四角柱形状に変えて撮像することにより透過率を求めることができる。また、kI0は、X線−蛍光変換素子の線エネルギー吸収係数μenが既知であるから、基準X線における蛍光発光強度Jを測定することで、式(3)から求めることが出来る。あるいは蛍光体アレイ603をX方向に走査し、X線の位置変化量に応じた蛍光発光強度を求め、式(3)でフィッティングすることで、実効的なkI0及びμenを求めることができる。
【0066】
つまり、基準X線601と屈折したX線602による蛍光強度の関係から、被検知物304での屈折による微量の位置変化量を得ることができる。また、本実施形態においては、上記実施形態2と同様に、予め蛍光605の発光強度(J(X))を測定して作成したデータテーブルを用いることにより、蛍光605の発光強度からX線の位置変化量(ΔX)を得ることも可能である。
【0067】
上記のように得られたデータについて図5に示したフローにしたがって演算処理を行うことで、微分位相(dφ/dx)および位相(φ)を算出し、微分位相像や位相像を表示手段308に表示することができる。
【0068】
このような構成により、微小なX線の位置変化を検出できるため、被検知物304と検出器306の距離を長く取る必要性がなく装置の小型化ができる。また、分割素子303を用いることにより、微分位相量、位相量を定量化することができる。なお、被検知物304と検出器306の距離を長くする構成を選択すれば、より微小な屈折によるX線の位置変化を検出することが出来る。更に位相変化の検出にX線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がない。
【0069】
(実施形態4:コンピューテッドトモグラフィ)
実施形態4では、コンピューテッドトモグラフィ(CT)の原理を用いて、3次元的な位相分布を得る装置の構成例について説明する。
【0070】
図7に、本実施形態におけるCT装置の構成例を説明する概略図を示す。
【0071】
図7において、701はX線源、703は分割素子、704は被検知物、705は蛍光体アレイ、706は検出器、707は演算手段、708は表示手段である。
【0072】
本実施形態におけるCT装置は、X線源701、分割素子703、蛍光体アレイ705と検出器706は、被検知物704のまわりを同期させて移動させる可動手段により、移動可能に構成されている。
【0073】
分割素子703により空間的に分割されたX線は被検知物704に照射され、透過X線は蛍光体アレイ705に入射する。蛍光体アレイ705により、分割されたX線の被検知物704での屈折による微量の位置変化量を得ることができる。蛍光体アレイ705を透過した蛍光は検出器706により検出される。この撮像を分割素子703、蛍光体アレイ705と検出器706は、被検知物704のまわりを同期させて移動させて行うことにより被検知物704の投影データを得る。分割素子703、蛍光体アレイ705とX線検出器706を固定し、被検知物704を回転させて投影データを得ても構わない。
【0074】
つぎに、本実施形態における演算処理の方法について説明する。図8は、その演算処理のフロー図である。先ず、第1のステップであるS200において、蛍光体アレイ705から発生した蛍光の発光強度情報を取得する。次に、第2のステップであるS201において、各X線の基準X線に対する位置変化量(ΔX)を算出する。次に、第3のステップであるS202において、位置変化量(ΔX)と被検知物704から蛍光体アレイ705間の距離(Z)を用いて、各X線の屈折角(Δθ)を求める。次に、第4のステップであるS203において、屈折角(Δθ)から各X線の微分位相(dφ/dx)を算出する。そして、第5のステップであるS204において、得られた各微分位相(dφ/dx)をX方向に積分することによって位相(φ)を算出する。これらの一連のS201からS204の作業を、全投影データについて繰り返し処理する。最後に、第6のステップであるS205において、全投影データにおける位相像からコンピューテッドトモグラフィにおける画像再構成法(たとえばフィルタ逆投影法など)により、位相(φ)の断層像を得る。なお、S206のステップにおいては、位相像の断層画像を表示手段708によって表示することができる。
【0075】
このような構成により、装置の小型化ができ、かつ、X線の屈折効果を利用するため干渉性の高いX線を必ずしも用いる必要がなく、このCT装置を利用することにより、非破壊的に被検知物の3次元位相像を得ることができる。
【0076】
(実施形態5:吸収情報を取得するための蛍光体アレイA)
実施形態5では、X線の吸収が大きい被検知物に対しても、より正確な微分位相像及び位相像を得ることのできる装置及び方法について説明する。本実施形態のX線撮像装置において、装置の基本構成は実施形態2で説明した図3と同じである。
【0077】
本実施形態の蛍光体アレイは、屈折効果によるX線の位置変化量を検出するための蛍光体(第1の蛍光体)と、被検知物の吸収効果による透過X線強度を検出するための蛍光体(第2の蛍光体)とを有することを特徴とする。
ここで、第2の蛍光体は、Xの入射位置により蛍光の発光量が一定である蛍光体である。ここで、蛍光の発光量が一定であるとは、入射位置により発光量が実質的に変化せず、被検知物の吸収情報を取得できることをいい、厳密に一定である必要はない。
蛍光体アレイから発光した蛍光の強度を検出することにより吸収像、微分位相像、位相像を得ることができる。以下、具体的に説明する。
【0078】
図9は本実施形態の蛍光体アレイを説明するための図である。901は基準X線(被検知物304が無い場合)の光路、902は被検知物304により屈折したX線の光路である。903はX線の位置変化量を蛍光の強度情報に変換するための蛍光体904と蛍光体905が同一面内方向に周期的に並べられた蛍光体アレイである。蛍光体904はX方向に連続的に変化した発光量分布を有し、蛍光体905はX方向で変化しない発光量分布を有する。符号906はX線により発光した蛍光体904からの蛍光を示したものである。図9の右側に示すように、蛍光体904は、X方向に発光量分布があり、被検知物304で屈折したX線の位置変化と吸収されたX線強度に対応した蛍光が得られる。なお、図中の右側の蛍光体904には一例としてX方向に直線的な発光量分布を示した。更に、実施形態2と同様、予め蛍光体904のX線照射位置変化量(X)に対する発光量分布(J(X))を測定しておいてもよい。
【0079】
また、図9の右側に示すように、蛍光体905は発光量分布が一定であり、被検知物304で吸収されたX線強度に対応した蛍光が得られる。蛍光の発光量分布は素子内で一様であればよい。しかし、この発光量分布は蛍光体904の基準X線位置と同じ発光強度となるように調整されることが望ましい。例えば、同一線量のX線を照射したときに生じる蛍光体904の中央の発光量と、蛍光体905の発光量をほぼ等しくするように構成することができる。また、検出器306にX線を直接入射させないために、蛍光体904および905と検出器306との間には蛍光を通すX線遮蔽材を挿入することが好ましい。
【0080】
X線の基準X線からの位置変化量と被検知物のX線の吸収量は、蛍光体904及び905の蛍光発光強度を測定し比較することで求めることができる。以下、図10に示した蛍光体のX方向と蛍光発光強度の概念図、及び図11に示した演算処理のフロー図を用いて説明する。
【0081】
まず、被検知物304によるX線の吸収がない場合、被検知物304を透過したX線の強度Iは透過前のI0とほぼ等しく(I≒I0)、被検知物304による位置変化(ΔX)は図10のA点の蛍光発光強度JAが得られる。しかしながら、被検知物304によるX線の吸収がある場合、被検知物304を透過後のIはI0より少なく(I<I0)なり、蛍光発光強度は図10のC点での値JCとなる。この場合、予め得た蛍光発光量分布J(X)を用いると位置変化はΔX‘となり誤った情報となってしまう。そこで、蛍光発光量分布が一様な別の蛍光体(J1=J(0))を用いて同様の測定を行う。被検知物が無い場合における図10のB点の蛍光発光強度JBを予め測定していれば、吸収がある場合における図10のD点の蛍光発光量差ΔJ(=JB−JD)を求めることが出来る。蛍光発光強度JA=JC+ΔJであるから、J(X)を用いて正しいΔXを求めることができる。なお、蛍光発光量差ΔJは、被検知物304の吸収量に対応する。
【0082】
次に、演算処理方法を図11のフロー図で説明する。先ず、第1のステップであるS300において、予め被検知物が無い状態で、発光量分布のある蛍光体の発光量分布J(X)と、発光量分布のない蛍光体の発光量JBを取得する。次に第2のステップであるS301において、被検知物の測定し、発光量分布のある蛍光体の発光量JCと、発光量分布のない蛍光体の発光量JDを取得する。次に第3のステップであるS302において、被検知物の吸収量に対応する発光量差ΔJ(=JB−JC)を求める。次に第4のステップであるS303において、被検知物の吸収を補正した発光量JA(=JC+ΔJ)を求める。最後に第5のステップであるS304において、発光量分布のある蛍光体の発光量分布J(X)と前ステップで求めたJAから、ΔXを求める。
【0083】
そのため、蛍光体904及び905の発光強度からX線902の照射位置変化(ΔX)と吸収量(発光量差ΔJ)を求め、被検知物304での微量の屈折変化量を求めることができる。
【0084】
なお、上記の算出手法によらず、蛍光体905を利用して得た光強度から吸収情報を取得し、この吸収情報を利用して位置変化量を算出する他の手法を用いてもよい。
【0085】
ところで、上記蛍光体904と蛍光体905の2つの領域での蛍光強度の情報を得る場合、X方向の空間分解能が1/2となる。そこで、上記測定に加えて蛍光体アレイ305をX方向に移動手段311で移動させることにより空間分解能を改善することができる。あるいは、被検知物304をX方向に移動手段310で移動させることにより、空間分解能を改善することもできる。
上記の構成によれば、この蛍光体904及び905を用いることにより、X線の吸収の効果及び屈折の効果を独立した情報として得ることができる。
【0086】
上記のように得られたデータは、図5に示したフローにしたがって演算処理を行うことで、微分位相(dφ/dx)および位相(φ)を算出し、吸収像、微分位相像、位相像を表示手段308に表示することができる。なお、吸収像、微分位相像、位相像は同時に画面上に表示しても良いし、また個々に表示しても良い。
【0087】
なお、本実施形態では、発光材料の濃度分布またはドーパント量の分布を調整した例を説明した。しかし、以下の実施例3で説明するように、位置変化量を測定するための蛍光体の形状を例えば三角形状とし、吸収率(透過率)を測定するための蛍光体の形状を四角形状としても良い。すなわち、入射するX線に対して垂直方向に厚さが一定の蛍光体を設けてもよい。
【0088】
(実施形態6:吸収情報を取得するための蛍光体アレイB)
実施形態6では、実施形態5と同様にX線の吸収が大きい被検知物であっても、より正確な微分位相像および位相像を得ることのできる装置および方法について説明する。本実施形態のX線撮像装置において、装置の基本構成は実施形態2で説明した図3と同じである。
【0089】
本実施形態の蛍光体アレイは、隣同士に設けられている蛍光体間で入射するX線の移動方向に対する発光量の増減量または増減傾向が異なることを特徴とする。例えば、被検知物が存在しない状態と被検知物が存在する状態とでX線の入射位置が変化した場合、第1の蛍光体では発光量が多くなるのに対して、第2の蛍光体では発光量が少なくなるように構成されている。このような蛍光体を用いることにより、吸収情報と位相情報を独立に得ることができる。そしてこの吸収情報を利用することにより、より高精度な微分位相像や位相像を得ることができる。以下、詳細に説明する。
【0090】
図12は本実施形態の蛍光体アレイを説明するための図である。1201及び1205は基準X線(被検知物304が無い場合)の光路、1202及び1206は被検知物304により屈折したX線の光路、1203は蛍光体アレイ、1204及び1207は蛍光体アレイ1203に周期的に配列された三角柱形状の蛍光体である。符号1208はX線により発光した蛍光体1204及び1207からの蛍光を示すものである。
【0091】
図12の右側に模式的に示すように蛍光体1204及び1207はX線の入射方向に対して垂直方向であるX方向に発光量の勾配がある。
【0092】
そして、蛍光体1204及び1207においては、X線の光路が長いほうがより蛍光を発光する。そして、この発光量分布変化の傾向は蛍光体1204と蛍光体1207とでは逆向きになっている。なお、蛍光体1204、1207と検出器306の間には可視光を通すX線遮蔽材を挿入しても良い。
【0093】
蛍光体1204における屈折したX線の位置変化量をΔX1、蛍光強度をJ’1、蛍光体1207における屈折したX線の位置変化量をΔX2、蛍光強度をJ’2とする。この場合、隣接する各蛍光体の発光量分布(J(X))は対称であるため、蛍光発光強度に対するX線の位置変化量は、式(6)の関係が成り立つ。
△X1=−△X2 式(6)
また、J’1及びJ’2は、式(4)に被検知物304による透過率Aを加味した式(7)で記述することが出来る。
J’=k・I0A(1−exp(−μenl)) 式(7)更に、位置変化量△Xは、式(7)を用いて式(8)で表すことが出来る。
【0094】
【数4】
【0095】
式(8)のΔX1及びΔX2にJ’1及びJ’2を代入し、式(6)からAについて解くと、Aは式(9)のように表すことが出来る。なお、nはkI0である。
【0096】
【数5】
【0097】
ここで、n、すなわちkI0は、蛍光体の線エネルギー吸収係数μenが既知であるから、基準X線における蛍光発光強度Jを測定することで、式(3)から求めることが出来る。あるいは、蛍光体アレイ1203をX方向に走査し、X線の位置変化量に応じた蛍光発光強度を求め、式(3)でフィッティングすることで、実効的なkI0及びμenを求めることが出来る。
【0098】
したがって、基準X線1201が蛍光体に入射した場合の蛍光強度J、蛍光体1204により生じた蛍光強度J’1、蛍光体1207により生じた蛍光強度J’2、kI0から、透過率Aを求めることができる。
【0099】
また、予め分かっているα、μenと測定によって得られたkI0、A、J‘、Jを式(8)に代入すれば、位置変化量(ΔX)を得ることができる。
【0100】
なお、ここでは、蛍光体1204と1207は発光量分布が対称である例を示しているが、必ずしも対称である必要はない。式(6)で示したように、2つの蛍光体の発光量勾配に関する関係が既知であれば、X線透過率および位置変化量を得ることができる。すなわち、X線の移動方向に対する発光量の増減量が隣接する蛍光体同士で異なっていればよい。
このような手法によれば、2つの蛍光体から透過率を算出した後に、位置変化量を得るため、被検知物がX線に対して十分吸収するような被検知物に対しても高精度の微分位相像または位相像を得ることができる。
【0101】
次に、演算処理を図13に示したフロー図を用いて説明する。先ず、第1のステップであるS400において、蛍光体アレイからの発光量のデータをJ’を取得する。次に、第2のステップであるS401において、第1のステップで得られた隣り合う素子の発光量J’1とJ‘2と、予め被検知物が無い状態の測定で得られたkI0から、透過率Aを求める。次に、第3のステップであるS402において、第1のステップで得られたJ’と、第2のステップで得られたAと、予め被検知物が無い状態の測定で得られたμen、kI0、Jとαを式(8)に代入し、位置変化量(ΔX)を求める。次に、第4のステップであるS403において、位置変化量(ΔX)と、蛍光体アレイとの距離(X)を式(1)に代入し、各X線の屈折角(Δθ)を求める。次に、第5のステップであるS404において、第4のステップで得られたΔθを式(2)に代入し、各X線の微分位相(dφ/dx)求める。次に、第6のステップであるS405において、第5のステップで得られた各微分位相(dφ/dx)をX方向に積分することによって位相情報(φ)を取得する。なお、S406のステップにおいては、この様に算出された吸収像、微分位相像、位相像を表示手段308によって適宜表示することができる。
【0102】
ところで、上記蛍光体1204及び1207を用いて蛍光強度の情報を得る場合、X方向の空間分解能が1/2となる。そこで、上記測定に加えて蛍光体アレイ1203を図1に示した移動手段111で移動させることにより空間分解能を改善することができる。あるいは、被検知物304をX方向に移動手段310で移動させることにより、空間分解能を改善することもできる。
【0103】
以上のように、この蛍光体1204及び1207を用いることにより、X線の吸収の効果及び屈折の効果を独立した情報として得ることができる。また、検出手段306の画素サイズ以下のX線位置変化量を検出できるため、被検知物−検出器間距離を短くすることができ、装置の小型化が達成できる。
【0104】
以下、更に実施例を用いて本発明をより具体的説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、屈折したX線の位置変化をエネルギーの低い蛍光の強度に変換出来ることが出来れば、蛍光体アレイや蛍光体の形状や発光量などを自由に変えることが可能である。
【実施例】
【0105】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0106】
[実施例1]
実施例1においては、本発明を適用したX線撮像装置の構成例について説明する。本実施例は上記実施形態2に対応するものである。
【0107】
図14に、本実施例の構成例について説明する図を示す。図14において、1401はX線源、1402はモノクロメータ、1403は分割素子、1404は被検知物、1405は蛍光体アレイ、1406は検出器、1407は演算手段、1408は表示手段である。なお、分割素子1403、被検知物1404、蛍光体アレイ1405にはそれぞれステッピングモータを用いた移動手段1409、1410、1411が設けられている。
【0108】
X線発生手段としては、X線源1401に示すMoターゲットの回転対陰極型のX線発生装置を用いる。X線の単色化手段としては高配向性熱分解黒鉛(HOPG:Highly oriented Pyrolytic Graphite)のモノクロメータ1402を用いMoの特性X線部分を抽出する。モノクロメータ1402により単色化されたX線はX線源から約100cm離れた位置に配置した分割素子1403により空間的に分割される。
【0109】
分割素子1403は、厚さ100μmのWにスリット幅40μmのスリットを並べたものを用いる。スリット周期は蛍光体アレイ1405上で150μmである。なお、W以外にも、Au、Pb、Ta、Ptなどの材料を使用することも可能である。
【0110】
分割素子1403により分割されたX線を被検知物1404に照射し、被検知物1404を透過したX線は被検知物1404から50cm離れた位置にある、蛍光体アレイ1405に入射する。
【0111】
蛍光体アレイ1405は、頂角約80°の三角柱形状に整形したCsI(Tlドープ)の蛍光体を並べた構造を有する。X方向の周期は150μmである。この蛍光体アレイ1405は、オプティカルファイバープレートを用い、画素サイズ25μmのCCD素子を用いた検出器1406と接合した。この蛍光体アレイ1405と検出器1406を一体化したデバイスにより蛍光の強度を検出する。
【0112】
分割素子1403によって分割されたX線は三角柱の周期方向の中心に入射するように配置されている。なお、ここでは分割素子1403で分割されたX線一本に対して、三角柱の周期方向6画素の蛍光強度値を足し合わせて1つの蛍光体に対する蛍光発光強度とした。
【0113】
演算手段1407を用いて、検出強度と位置変化量(Xd)の関係をまとめたデータテーブルから位置変化量(Xd)を算出し、式(2)を用いて屈折角(Δθ)を算出する。屈折角(Δθ)から式(3)を用いて微分位相量を算出し、得られた微分位相量を空間的に積分することにより位相分布像を求める。演算手段1407によって得られた微分位相像または位相像は表示手段1408としてのPCモニタに表示される。
【0114】
[実施例2]
以下に、本発明の実施例2におけるX線撮像装置の構成例について説明する。本実施例は上記実施形態1に対応するものである。
【0115】
図15に、本実施例の構成例について説明する図を示す。図15において、1501はX線源、1504は被検知物、1505は蛍光体アレイ、1506はX線検出器、1008は表示手段である。
【0116】
本実施例において、X線発生手段としては、X線源1501に示すMoターゲットの回転対陰極型のX線発生装置を用いる。X線源1501から発生したX線はX線源1501から100cm離れた位置に配置した被検知物1504に照射する。被検知物1504を透過したX線は被検知物1504から65cm離れた位置にある、蛍光体アレイ1505に入射する。
【0117】
蛍光体アレイ1505は、頂角約80°の三角柱形状に整形したCsI(Tlドープ)の蛍光体を並べた構造を有し、X方向の周期は150μmである。この蛍光体アレイ1505は、オプティカルファイバープレートを用い、画素サイズ25μmのCCD素子を用いた検出器1506と接合する。この蛍光体アレイ1505と検出器1506を一体化したデバイスにより蛍光の強度を検出する。被検知物1504の存在しない状態での同様の撮影を行ったときの像からの数的処理によって求めた像を表示手段1508としてのPCモニタに表示する。
【0118】
[実施例3]
実施例3においては、本発明を適用したX線撮像装置の構成例について説明する。本実施例は上記実施形態5に対応するものである。
【0119】
本実施例の基本的な構成は、実施例1の説明で使用した図14と同じであるが、蛍光体アレイ1405および演算手段1407の具体的な形態が異なる。
【0120】
すなわち、実施例3における蛍光体アレイ1405は、オプティカルファイバープレート上に形成したCsI(Tlドープ)を加工し、図16に示すように三角柱と四角柱のロッドを交互に並べた構造に成形する。三角柱の蛍光体1604と四角柱の蛍光体1605の周期は150μmで、三角柱の蛍光体1604の頂角は約80°、厚みは約13μmである。この蛍光体1604及び1605を形成したオプティカルファイバープレートは、画素サイズ25μmのCCD素子を用いた検出器1406と接合する。この蛍光体アレイ1405と検出器1406を一体化したデバイスにより蛍光の強度を検出する。
【0121】
ここで、分割素子1403によって分割されたX線は各蛍光体の周期方向の中心に入射するように配置されている。
【0122】
蛍光体アレイ1405の直後に配置した検出手段としての検出器1406により、X線により発光した蛍光の強度を検出する。ここでは、分割素子1403で分割されたX線一本に対して、各蛍光体の周期方向6画素の蛍光強度値を足し合わせて1つの蛍光体に対する蛍光発光強度とする。その後、蛍光体アレイ1405を三角柱及び四角柱の周期方向に移動手段1411を用いて一周期150μm動かした後に同様の測定を行う。この2回の測定により被検知物704を透過した各X線から三角柱及び四角柱の蛍光体による蛍光発光強度が得られる。
【0123】
演算手段1407を用い、三角柱及び四角柱の蛍光体からの蛍光発光強度と、予め測定した三角柱による蛍光発光強度(J(X))と位置変化量(ΔX)のデータベースとを用いて、吸収量(ΔJ)と位置変化量(ΔX)を算出する。この位置変化量(ΔX)から、式(2)を用いて屈折角(Δθ)を算出する。そして屈折角(Δθ)から、式(3)を用いて微分位相量を算出し、得られた微分位相量を空間的に積分することにより位相分布像を求める。
【0124】
演算手段1407によって得られた、X線吸収像、X線微分位相像、X線位相像は表示手段1408としてのPCモニタに適宜表示される。
【0125】
[実施例4]
実施例4においては、本発明を適用したX線撮像装置の構成例について説明する。本実施例は、実施形態6に対応するものである。
【0126】
本実施例の基本的な構成は、実施例1および実施例3の説明で使用した図14と同じであるが、蛍光体アレイ1405および演算手段1407の具体的形態が異なる。
【0127】
図12に示すように、本実施例に係る蛍光体アレイ1405は、オプティカルファイバープレート上に形成したCsI(Tlドープ)を加工し、三角柱のロッドが交互に逆の勾配で並べた構造に成形する。三角柱の蛍光体1204及び1207の周期は150μmで、三角柱の頂角は約80°である。この蛍光体1204及び1207を形成したオプティカルファイバープレートは、画素サイズ25μmのCCD素子を用いた検出器1406と接合させた。この蛍光体アレイ1405と検出器1406を一体化したデバイスにより蛍光の強度を検出する。分割素子1403によって分割されたX線は各蛍光体の周期方向の中心に入射するように配置されている。蛍光体アレイ1405の直後に配置した検出手段としての検出器1406により、X線により発光した蛍光の強度を検出する。分割素子1403で分割されたX線一本に対して、各蛍光体の周期方向6画素の蛍光強度値を足し合わせて1つの蛍光体に対する蛍光発光強度とする。
【0128】
その後、蛍光体アレイ1405を三角柱の周期方向に移動手段1411を用いて一周期150μm動かした後に同様の測定を行う。この2回の測定により被検知物1404を透過した各X線から蛍光体による蛍光発光強度が得られる。
【0129】
演算手段1407を用い、三角柱の蛍光体からの蛍光発光強度と、被検知物1404のない状態での測定データ(J(X))から、位置変化量(ΔX)と透過率Aを算出し、式(2)を用いて屈折角(Δθ)を算出する。そして屈折角(Δθ)から式(3)を用いて微分位相量を算出し、得られた微分位相量を空間的に積分することにより位相分布像を求める。
【0130】
演算手段1407によって得られた、X線吸収像、X線微分位相像、X線位相像は表示手段1408としてのPCモニタに適宜表示される。
【符号の説明】
【0131】
301 X線源
302 単色化手段
303 分割素子
304 被検知物
305 蛍光体アレイ
306 検出器
307 演算手段
308 表示手段
309 移動手段
310 移動手段
311 移動手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知物によるX線の位相変化情報を取得するX線撮像装置において、
X線発生手段から発生したX線を空間的に分割する分割素子と、
前記分割素子により分割されたX線が入射する第1の蛍光体が複数配列された蛍光体アレイと、
前記蛍光体アレイから発光した蛍光の強度を検出するための検出手段と、を有し、
前記第1の蛍光体は、前記X線の入射位置に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成されていることを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
前記検出手段により検出された蛍光の強度情報から、前記被検知物の微分位相像または位相像を演算する演算手段を有することを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記第1の蛍光体は、入射するX線に対して垂直方向に厚みが連続的に変化していることを特徴とする請求項1または2に記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記第1の蛍光体は、入射するX線に対して垂直方向に単位体積当りの発光量が連続的に変化していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線撮像装置。
【請求項5】
前記蛍光体アレイは、前記第1の蛍光体と、前記X線の入射位置に対して蛍光の発光量が一定である第2の蛍光体とが同一面内方向に配列されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のX線撮像装置。
【請求項6】
前記第2の蛍光体は、入射するX線に対して垂直方向に厚さが一定であることを特徴する請求項5に記載のX線撮像装置。
【請求項7】
前記第2の蛍光体は、入射するX線に対して垂直方向に単位体積当りの発光量が一定であることを特徴とする請求項5に記載のX線撮像装置。
【請求項8】
前記蛍光体アレイは、前記第1の蛍光体と、前記X線の入射位置に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成された第3の蛍光体を備え、
前記第1の蛍光体と前記第3の蛍光体は入射するX線の移動方向に対する発光量の増減量または増減傾向が異なることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のX線撮像装置。
【請求項9】
前記X線発生手段と、前記蛍光体アレイと、前記検出手段と、を同期させて移動させる移動手段を有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のX線撮像装置。
【請求項10】
X線撮像装置に用いるX線撮像方法において、
空間的にX線を分割する工程と、
前記空間的に分割されたX線の入射位置に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成された蛍光体が複数配列された蛍光体アレイを用いて、被検知物によるX線の位相変化情報を蛍光の強度分布から取得する工程を有することを特徴とするX線撮像方法。
【請求項11】
X線撮像装置において、
被検知物を透過した際に生じるX線の強度分布の変化に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成された蛍光体が複数配列された蛍光体アレイと、
前記蛍光体アレイにより発光した蛍光の強度を検出するための検出手段とを有することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項12】
X線撮像装置に用いるX線撮像方法において、
被検知物を透過した際に生じるX線の強度分布の変化に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成された蛍光体が複数配列された蛍光体アレイを用いて、前記発光した蛍光の強度を検出する工程を有することを特徴とするX線撮像方法。
【請求項1】
被検知物によるX線の位相変化情報を取得するX線撮像装置において、
X線発生手段から発生したX線を空間的に分割する分割素子と、
前記分割素子により分割されたX線が入射する第1の蛍光体が複数配列された蛍光体アレイと、
前記蛍光体アレイから発光した蛍光の強度を検出するための検出手段と、を有し、
前記第1の蛍光体は、前記X線の入射位置に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成されていることを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
前記検出手段により検出された蛍光の強度情報から、前記被検知物の微分位相像または位相像を演算する演算手段を有することを特徴とする請求項1に記載のX線撮像装置。
【請求項3】
前記第1の蛍光体は、入射するX線に対して垂直方向に厚みが連続的に変化していることを特徴とする請求項1または2に記載のX線撮像装置。
【請求項4】
前記第1の蛍光体は、入射するX線に対して垂直方向に単位体積当りの発光量が連続的に変化していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線撮像装置。
【請求項5】
前記蛍光体アレイは、前記第1の蛍光体と、前記X線の入射位置に対して蛍光の発光量が一定である第2の蛍光体とが同一面内方向に配列されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のX線撮像装置。
【請求項6】
前記第2の蛍光体は、入射するX線に対して垂直方向に厚さが一定であることを特徴する請求項5に記載のX線撮像装置。
【請求項7】
前記第2の蛍光体は、入射するX線に対して垂直方向に単位体積当りの発光量が一定であることを特徴とする請求項5に記載のX線撮像装置。
【請求項8】
前記蛍光体アレイは、前記第1の蛍光体と、前記X線の入射位置に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成された第3の蛍光体を備え、
前記第1の蛍光体と前記第3の蛍光体は入射するX線の移動方向に対する発光量の増減量または増減傾向が異なることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のX線撮像装置。
【請求項9】
前記X線発生手段と、前記蛍光体アレイと、前記検出手段と、を同期させて移動させる移動手段を有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のX線撮像装置。
【請求項10】
X線撮像装置に用いるX線撮像方法において、
空間的にX線を分割する工程と、
前記空間的に分割されたX線の入射位置に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成された蛍光体が複数配列された蛍光体アレイを用いて、被検知物によるX線の位相変化情報を蛍光の強度分布から取得する工程を有することを特徴とするX線撮像方法。
【請求項11】
X線撮像装置において、
被検知物を透過した際に生じるX線の強度分布の変化に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成された蛍光体が複数配列された蛍光体アレイと、
前記蛍光体アレイにより発光した蛍光の強度を検出するための検出手段とを有することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項12】
X線撮像装置に用いるX線撮像方法において、
被検知物を透過した際に生じるX線の強度分布の変化に応じてX線による蛍光の発光量が変化するように構成された蛍光体が複数配列された蛍光体アレイを用いて、前記発光した蛍光の強度を検出する工程を有することを特徴とするX線撮像方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−41795(P2011−41795A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153078(P2010−153078)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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