説明

XYステージ

【課題】長ストローク化、小型化及び振動を抑制することが可能な半導体製造装置用のXYステージを提供する。
【解決手段】X軸リニアモータとY軸リニアモータとを有し、X軸リニアモータ及びY軸リニアモータは、移動部としての3相のコイルからなるコイル部及び固定部としてのヨーク部を有し、ヨーク部は、長手方向の中心線に対してその上部及び下部に開口部が設けられており、上部の開口部の上面及び下部の開口部の下面には複数の永久磁石の表面がN極、S極となるように交互に配列され、ヨーク上部の開口部の永久磁石と垂直方向におけるヨーク部下部の開口部の永久磁石は、同じ極となるように配列され、中心付近のヨークに3相のコイルが挿入された構成を成し、ヨーク部をコイル部と同一軸方向に移動可能なヨーク部ガイドを介してベース上に固定し、コイル部の移動時の反力を吸収するように構成し、移動テーブルの下部にX軸リニアモータを配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動時の振動が低減され、また、小型化が可能なXYステージに関し、特に、半導体製造装置に好適なXYステージに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンダ等の半導体製造装置には、ボンディングツールを有するボンディングヘッドをXY軸方向に位置決めを行うXYステージが用いられている。特許文献1には、高速移動による振動を防止することが可能なXYステージが開示されている。特許文献1に開示されたXYステージは、可動テーブル及び作業部材からなる可動部の重心位置と同一の高さ位置にて可動テーブルに夫々X方向及びY方向の駆動力を与えるX軸及びY軸のリニアモータとを有している。X軸及びY軸のリニアモータは、可動テーブルに直接連結するようにして、可動部がリニアモータによって駆動される際にリニアモータからの力が可動部の重心に作用するようにする。このため、可動テーブルの位置がその駆動方向に直交する方向にずれても、常に重心を駆動することができる。これにより、可動テーブルを高速移動しても、モーメント力はほとんど発生せず、高速移動による振動を防止するものである。
【0003】
また、特許文献2には、リニアモータにより駆動体を駆動するリニアモータ駆動装置において、リニアモータのモータ本体及び駆動体を同一駆動軸方向に移動可能に架台上に設け、リニアモータの直線可動部と駆動体を連結し、該駆動体を駆動した時にモータ本体が駆動体と反対方向に動けるようにし、駆動体の駆動による反力を打ち消すように構成することにより、架台の振動を防止することが可能な半導体製造装置におけるモータ駆動装置及びXYテーブルが開示されている。
【0004】
また、特許文献3は、特許文献2におけるXYテーブルでの位置決め精度の向上を目的としたものである。図7は、特許文献3に開示されたXYテーブルを示す平面図である。図7に示すように、特許文献3に開示されたXYテーブル100では、平面リニアモータ101のコイルを有するY可動子103を上部テーブル104にガイドを介することなしに直接固定するようにして、上部テーブル104は、Y可動子103の駆動軸方向であるY軸方向に移動可能に、下部テーブル105に保持されている。また、コイル102のX軸方向の移動の全領域についてコイル102に対する磁気的作用が等しくなるようにする。下部テーブル105がX軸方向に移動することにより、上部テーブル104及びコイルを有するY可動子も矢印で示すようにX軸方向に移動する。Y可動子がY軸方向に移動する際には、Yモータ本体のY可動子103に対する磁気的作用が、Y可動子103のX軸方向における位置にかかわらず等しいので、上部テーブル104のヨー方向の推力が掛かることはなくなり、これによりガイドレール106の遊びや磨耗の増大が抑制され、位置ずれや回転振動が生じにくくなり、安定した位置決めを行うものである。尚、X軸用のモータは、ボイスコイルモータ107が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−148398号公報
【特許文献2】特許2981999号公報
【特許文献3】特開2002−329772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示されたXYステージは、X方向及びY方向に移動可能に配置された可動テーブルを駆動するためのX軸リニアモータがXYステージの側方に、また、Y軸リニアモータがXYステージの後方に配置されている。このため、XYステージが大型化してしまい、また、XYステージを設置するための大きなスペースが必要となる。これにより、XYステージを使用した装置自体も大型化を招いてしまう。例えば、ボンディング装置は、ボンディング部品の搬送を行う搬送装置をXYステージの前方及び両サイドに配置するため、従来のXYステージではX軸リニアモータがXYステージの側方に位置するため、搬送装置の配置に制限があった。このため、XYステージの小型化が望まれている。
【0007】
また、特許文献1及び特許文献3で開示されたXYステージは、可動テーブルにY方向の駆動力を与えるY軸リニアモータが、可動テーブルに直接連結されている。このため、可動テーブルがX方向に移動した場合には、可動テーブルに直接連結されているY軸のリニアモータのコイル及び可動子も同時にX方向に移動するため、可動テーブルを中心として、Y軸リニアモータのコイルにX方向の振動によるヨーイング振動が発生し、可動テーブルのX軸における位置制御が安定しないことがある。また、ヨーイング振動がXYステージを搭載した架台に伝わり、架台が振動する恐れもある。
【0008】
また、XYステージは、可動テーブルを駆動するX軸及びY軸のリニアモータには、一般にボイスコイルモータが用いられている。ボイスコイルモータは、大きな推力を得るために磁石を大型化する必要がある。また、ボイスコイルモータの可動範囲は、磁石の平面の長さに依存するため、可動範囲をカバーする磁石を用意する必要がある。しかしながら、製作可能な磁石の長さに限界があり、このため、可動テーブルの可動範囲が磁石の長さによって制限されてしまう。また、コイルに対して安定した磁界を形成することが難しく、特に、磁石の両端で推力が低下する問題がある。また、ボイスコイルモータのコイルは、ヨーク及び磁石に囲まれた空間に配置されており、コイルからの熱が発散しないため、放熱等の機構をボイスコイルモータに設ける必要がある。
【0009】
そこで本発明は、可動テーブルの下部に3相コイルからなるX軸リニアモータを配して、X軸リニアモータをX軸方向に移動可能なガイドを介して架台に固定するようにして、長ストローク化、小型化及び振動を抑制することが可能なXYステージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目標達成のため、本発明のXYステージは、二次元のXY平面を移動可能な移動テーブルと、当該移動テーブルをXY方向に案内するガイド手段と、前記移動テーブルを駆動する駆動手段とを備え、前記駆動手段は、X軸リニアモータとY軸リニアモータとを有し、前記駆動手段のX軸リニアモータ及びY軸リニアモータは、コイルからなる可動部及び磁気回路を形成するヨークからなる固定部を有し、前記固定部を前記可動部と同一軸方向に移動可能なガイドを介してベース上に固定して、可動部の移動時の反力を吸収するように構成し、前記移動テーブルの下部に前記X軸リニアモータを配するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のXYステージの前記X軸リニアモータ及びY軸リニアモータは、可動部が3相のコイルで構成され、前記固定部のヨークは、長手方向の中心線に対してその上部及び下部に開口部が設けられており、上部の開口部の上面及び下部の開口部の下面には複数の永久磁石の表面がN極、S極となるように交互に配列され、ヨーク上部の開口部の永久磁石と垂直方向におけるヨーク部下部の開口部との永久磁石は、同じ極となるように配列され、中心付近のヨークに3相のコイルが挿入された構成を成していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のXYステージの前記駆動手段のY軸リニアモータは、X軸方向に移動可能な連結手段を介して前記移動テーブルを駆動するようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のXYステージの前記X軸リニアモータの可動部は、移動テーブルの前後に設けた連結部によって両持ち支持されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のXYステージの前記X軸リニアモータ及び前記Y軸リニアモータは、前記可動部と前記固定部の相対位置を検出する位置検出センサを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のXYステージの前記X軸リニアモータ及び前記Y軸リニアモータは、前記位置検出センサのデータを基に、X軸リニアモータ及びY軸リニアモータの可動部の各相のコイルを制御するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、X軸リニアモータを移動テーブルの下部に配置することにより、従来のようにX軸リニアモータを移動テーブル外に設置する必要がないため、XYステージの小型化が可能となる。また、XYステージを用いたボンディング装置ではXYステージの側方に他の装置を配置することもできるため、ボンディング装置の小型化も可能となる。
【0017】
また、Y軸リニアモータの可動部が可動テーブルに直接連結している従来のXYステージは、移動テーブルがX軸方向に移動した場合、Y軸リニアモータの可動部も同時に移動するため、反力を受けるY軸リニアモータのヨーク部分のモーメント力により、ヨーイング振動が発生する恐れがある。しかしながら、本発明のXYステージは、可動テーブルとY軸リニアモータはX軸方向に移動可能なガイドによって連結しているため、移動テーブルがX軸方向に移動した場合、移動テーブルの重心だけが移動してY軸のリニアモータのコイル及び可動子はX方向に移動しないため、Y軸リニアモータのヨーイング振動を軽減することができる。
【0018】
また、従来のボイスコイルを用いたリニアモータでは、XYステージの可動範囲は磁石の長さにより制限されるが、本発明のXYステージは、3相コイルのリニアモータを使用している。3相コイルのリニアモータは、永久磁石をヨークの開口部の長手方向にS極、N極の各磁石を交互に配列した構造であるため、リニアモータの可動範囲を広げることが容易にできるため、XYステージの長ストローク化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるXYステージの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明によるXYステージの構成を示す正面図である。
【図3】本発明によるXYステージの構成を示す平面図である。
【図4】本発明によるXYステージの構成を示す側面図であり、図2のA−A線における断面図を含む図である。
【図5】XYステージのX軸リニアモータの構成を示す図であり、(a)はX軸リニアモータの斜視図、(b)はX軸リニアモータの正面図を示す。
【図6】X軸リニアモータの制御を行うブロック図である。
【図7】特許文献3に開示されたXYテーブルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照して、本発明によるXYステージを実施するための形態について説明する。尚、本発明によるXYステージは、可動テーブルの下部に3相コイルからなるX軸リニアモータを配して、X軸リニアモータをX軸方向に移動可能なガイドを介して架台に固定するようにして、XYステージの長ストローク化及び小型化を図り、また、振動の抑制を行うようにしたものである。
【0021】
[XYステージの構成]
以下、本発明によるXYステージの構成について図1乃至図4を用いて説明する。図1は、本発明によるXYステージの構成を示す斜視図、図2は、本発明によるXYステージの構成を示す正面図、図3は、本発明によるXYステージの構成を示す平面図、図4は、本発明によるXYステージの構成を示す側面図であり、図2のA−A線における断面図を含む図である。
【0022】
図1に示すように、XYステージ1は、X軸及びY軸の2次元方向に移動可能な移動テーブル2と、移動テーブル2の下部に位置し、移動テーブル2をX軸方向に移動させるX軸モータ部15と、移動テーブル2をY軸方向に移動させるY軸モータ部40とを有している。図1乃至図3に示すように、移動テーブル2は、ベース板3、下部移動板6及び上部移動体10を有している。ベース板3は、移動テーブル2の底板を成し、X軸方向の両辺に沿ってそれぞれに溝が形成されており、両溝にガイド手段としての一対のX軸ガイド4が取り付けられている。X軸ガイド4は、例えばクロスローラガイドからなり、クロスローラガイドの両サイドに位置する案内レールは、ベース板3に固定されており、案内レールをX軸方向にスライドするスライダが、両サイドの案内レール間に設けられている。また、ベース板3におけるX軸方向の両辺には、X軸ガイド4の位置決め用の側板5がそれぞれ取り付けられている。
【0023】
ベース板3上に位置するX軸ガイド4のスライダは、X軸方向に移動可能となっており、X軸ガイド4のスライダの上部には下部移動板6が取り付けられている。これにより、下部移動板6は、X軸ガイド4のスライダによりX軸方向に移動可能となっている。
【0024】
また、図4に示すように、ベース板3の中心位置付近には、X軸ステージセンサ7の検出ヘッドを収納するための凹部が設けられており、凹部には、X軸ステージセンサ7の検出ヘッド7a(図4に点線で示す)が取り付けられている。
【0025】
X軸ステージセンサ7は、検出ヘッド7a及びスケール7b(図4に示す)から構成されており、X軸ステージセンサ7の移動量から下部移動板6のX軸方向の位置を検出するためのものである。尚、X軸ステージセンサ7は、光学式又は磁気式の検出センサが用いられる。
【0026】
下部移動板6の上面には、Y軸方向の両辺付近に沿ってそれぞれに凸面が形成されており、凸面上には、ガイド手段としての一対のY軸ガイド12(図1及び図2に示す)が取り付けられている。Y軸ガイド12は、例えばクロスローラガイドからなり、クロスローラガイドの中心の案内レールは、下部移動板6の凸面に固定されており、両サイドに位置するスライダが、案内レールをスライドするようになっている。Y軸ガイド12のスライダは、Y軸方向に移動可能となっている。
【0027】
また、下部移動板6の裏面には、ベース板3上に設けられているX軸ステージセンサ7の検出ヘッド7aに対応したスケール7bが取り付けられており、スケール7bは、X軸方向と平行に延設されている。これにより、下部移動板6は、X軸ステージセンサ7により、X軸方向の移動量がカウントされる。また、下部移動板6の表面には、Y軸方向の中心線に沿ってY軸ステージセンサ11のスケール11b(図2及び図3に示す)が設けられている。
【0028】
下部移動板6の上部に配置された上部移動体10の底面には、下部移動板6に設けられているY軸ガイド12に取り付けるための溝が設けられており、上部移動体10は、溝を介してY軸ガイド12のスライダに固定されている。上部移動体10は、例えば、ボンディング装置のボンディングヘッド等である。上部移動体10は、Y軸ガイド12のスライダによりY軸方向に移動可能となっている。尚、上部移動体10にY軸ガイド12を直接取り付けているが、上部移動体10に代えて板状の上部移動板を使用して、板状の上部移動板をY軸ガイド12のスライダに取り付けるようにして、上部移動板上に上部移動体10を取り付ける構造であってもよい。
【0029】
また、図3に示すように、上部移動体10の底面の中心付近には開口部が設けられており、開口部には、Y軸ステージセンサ11の検出ヘッド11aが設けられている。Y軸ステージセンサ11は、検出ヘッド11a及びスケール11bから構成されており、Y軸ステージセンサ11の移動量から上部移動体10のY軸方向の位置を検出するためのものである。下部移動板6の表面には、上部移動体10の底面に設けられているY軸ステージセンサ11の検出ヘッド11aに対応したスケール11b(図2に示す)が、Y軸方向と平行に延設されている。これにより、上部移動体10は、Y軸ステージセンサ11により、Y軸方向の移動量がカウントされる。尚、Y軸ステージセンサ11は、光学式又は磁気式の検出センサが用いられる。
【0030】
XYステージ1は、X軸ガイド4のスライダがX軸方向に移動することにより、下部移動板6上に配置された上部移動体10も同時にX軸方向に移動する。また、Y軸ガイド12のスライダがY軸方向に移動することにより、上部移動体10のみがY軸方向に移動するようになっている。
【0031】
また、X軸ステージセンサ7及びY軸ステージセンサ11は、互いに直交するように配置されており、X軸ステージセンサ7及びY軸ステージセンサ11の移動量から、上部移動体10のX軸及びY軸の位置を検出するようになっている。
【0032】
このように、XYステージ1は、X軸及びY軸の2次元方向に移動可能な移動テーブル2で構成されており、移動テーブル2の下部に位置するX軸モータ部15によりX軸連結部33を介してと下部移動板6及び部移動体10がX軸方向に移動し、Y軸モータ部40により連結ガイド60を介して上部移動体10がY軸方向に移動するようになっている。
【0033】
以下に、XYステージの移動テーブルを駆動するX軸モータ部およびY軸モータ部について詳述する。
【0034】
[X軸モータ部の構成]
図1に示すように、移動テーブル2の下部には、移動テーブル2をX軸方向に移動させるX軸モータ部15が配置されており、移動テーブル2をX軸方向に移動させるX軸モータ部15の構成について図2及び図5を用いて説明する。図5は、XYステージのX軸リニアモータの構成を示す図であり、(a)はX軸リニアモータの斜視図、(b)はX軸リニアモータの正面図である。図2に示すように、X軸モータ部15は、移動テーブル2を搭載支持する筐体16と、筐体16の内部に設けられたX軸リニアモータ17と、X軸リニアモータ17の磁気回路を形成するヨーク部20を保持するモータ保持台30と、モータ保持台30と筐体16の間に設けられたX軸ヨーク部ガイド31と、X軸連結部33とを備えている。
【0035】
図5(a)に示すように、X軸リニアモータ17は、固定部としてのヨーク部20と可動部としてのX軸コイル部25とからなる。図5(b)に示すように、ヨーク部20は、長手方向の中心線に対してその上部及び下部に開口部21、22が設けられており、上部の開口部21の上面には複数の永久磁石23の表面がN極、S極となるように交互に配列されている。また、ヨーク部20の下部の開口部22の下面には複数の永久磁石23の表面がS極、N極となるように交互に配列されている。図5(b)に示すように、ヨーク部20上部の開口部21の永久磁石23と垂直方向におけるヨーク部20下部の開口部22との永久磁石23は、同じ極となるように配列されている。
【0036】
X軸コイル部25は、中空の角柱形状のコイル26が巻かれたものである。X軸コイル部25は、X軸コイル部25の上辺がヨーク部20の上部の開口部内21に、また、X軸コイル部25の下辺が下部の開口部22内に位置するように設けられている。このようにX軸リニアモータ17は、ヨーク部20の中心付近のヨークにX軸コイル部25の中空の開口部が挿入された構成となっている。
【0037】
また、図5(b)に示すように、X軸コイル部25は、X軸方向の長さを3分割した各領域に点線で示すコイル26が巻かれており、X軸コイル部25のコイル26は、U、V、Wの3相から構成されている。U、V、Wの各相のコイル26には、個別に給電することが可能となっている。また、X軸リニアモータ17の開口部21、22に位置する永久磁石23の取付ピッチPとX軸コイル部25の長さLとは、P=Lとなるようにしている。
【0038】
図4に示すように、ヨーク部20外に位置するX軸コイル部25の両端面と下部移動板6のX軸方向の両辺とは、一対のX軸連結部33により結合されている。X軸連結部33は、X軸モータ部15の筐体16の前後上部の空間に設けられており、略L字形のブロックからなる。X軸連結部33の長手方向の面は、X軸と平行となるように設けられており、X軸連結部33の上部に位置する端面は、下部移動板6のX軸方向の両辺に固定されており、X軸連結部33の下部に位置する端面は、X軸コイル部25の端面に固定されている。これにより、X軸リニアモータ17のX軸コイル部25がX軸方向に移動すると、下部移動板6を介してX軸ガイド4のスライダが案内レールに沿って移動し、下部移動板6がX軸方向に移動する。
【0039】
また、X軸コイル部25は、X軸連結部33によって支持されており、X軸コイル部25は、ヨーク部20の上部及び下部の開口部21、22内の永久磁石23との垂直方向(Z軸方向)のギャップ長を一定に保つようにしている。
【0040】
尚、X軸リニアモータ17のX軸コイル部25は、X軸連結部33によって支持されているが、筐体16の底部の表面とX軸コイル部25の両端面の底面とをリニアガイドウェイ等を設けて結合して、リニアガイドウェイを介してX軸コイル部25支持し、リニアガイドウェイのレール上をスライドする構成にしてもよい。
【0041】
このように、本発明のXYステージは、3相コイルからなるリニアモータを使用しており、3相コイルのリニアモータは、永久磁石をヨーク部の開口部の長手方向にS極、N極の永久磁石を交互に配列した構造であるため、ヨーク部の長さを延長して、永久磁石を増設することによりリニアモータの可動範囲を広げることができるため、XYステージの長ストローク化を容易に実現することができる。
【0042】
[X軸モータ部の無反動化]
図4に示すように、ヨーク部20の底面にはモータ保持台30が設けられており、ヨーク部20は、モータ保持台30の上面に固定されている。モータ保持台30は、X軸方向と平行に設けた2本のX軸ヨーク部ガイド31を介して筐体16に取り付けられている。X軸ヨーク部ガイド31は、例えば、リニアガイドウェイのレール上に2コのキャリッジを設けたものを使用する。2本のリニアガイドウェイのレールを平行に筐体16の表面に固定して設けて、モータ保持台30の四隅をリニアガイドウェイのキャリッジに固定するようにする。
【0043】
これによりヨーク部20は、X軸コイル部25が起動時等の加速度により発生する反力を打ち消すように、X軸コイル部25の移動方向と反対方向に移動する。このため、X軸モータ部15で発生する反力をX軸ヨーク部ガイド31で打ち消されるため、架台への振動伝達を減らすことができる。尚、X軸リニアモータ17の駆動時のヨーク部20の移動を元の位置に戻すためのダンパー(図示せず)が、モータ保持台30と筐体16間に設けられている。
【0044】
また、図4に示すように、X軸リニアモータ17は、ヨーク部20とX軸コイル部25との相対位置を検出するためのX軸モータセンサ35が設けられている。X軸モータセンサ35の検出ヘッドは、X軸コイル部25に設けられており、X軸モータセンサ35のスケールは、ヨーク部20に設けられている。X軸リニアモータ17は、X軸コイル部25のコイル26の位置と、ヨーク部20に配置されている永久磁石23の各極との相対位置を検出して、検出した位置に基づいてX軸コイル部25の3相の各コイル26に電流を供給して、推力を発生させるようにする。
【0045】
X軸リニアモータ17は、X軸コイル部25が移動することにより、その反力を打ち消すためにヨーク部20も移動するが、X軸モータセンサ35によって常にヨーク部20とX軸コイル部25との相対位置が検出されているため、X軸モータセンサ35の位置信号によりヨーク部20の移動によるX軸コイル部25の位置を補償することが可能となる。
【0046】
[Y軸モータ部の構成]
次に、移動テーブル2をY軸方向に移動させるY軸モータ部40の構成について述べる。図1に示すように、移動テーブル2の後方には、移動テーブル2をY軸方向に移動させるY軸モータ部40が配置されており、Y軸モータ部40は、Y軸リニアモータ42と、Y軸連結部55と、Y軸リニアモータ42を搭載したY軸モータベース41と、Y軸リニアモータ42の磁気回路を形成するヨーク部43とY軸モータベース41の間に設けられたY軸ヨーク部ガイド49(図3に点線で示す)と、Y軸連結部55とY軸モータベース41の間に設けられたY軸コイル部ガイド50と、Y軸連結部55に設けられた連結ガイド60とを備えている。
【0047】
Y軸リニアモータ42は、固定部としてのヨーク部43と可動部としてのY軸コイル部47とからなる。尚、Y軸リニアモータ42は、図5に示すX軸リニアモータ17と同一の構成となっている。
【0048】
ヨーク部43は、長手方向の中心線に対してその上部及び下部に開口部が設けられており、上部の開口部の上面には複数の永久磁石の表面がN極、S極となるように交互に配列されている。また、ヨーク部43の下部の開口部の下面には複数の永久磁石23の表面がS極、N極となるように交互に配列されている。ヨーク部43上部の開口部の永久磁石23と垂直方向におけるヨーク部43下部の開口部との永久磁石は、同じ極となるように配列されている。
【0049】
Y軸コイル部47は、中空の角柱形状のコイル26が巻かれたものである。Y軸コイル部47は、Y軸コイル部47の上辺がヨーク部43の上部の開口部内に、また、Y軸コイル部47の下辺が下部の開口部内に位置するように設けられている。このようにY軸リニアモータ42は、ヨーク部43の中心付近のヨークにY軸コイル部47の中空の開口部が挿入された構成となっている。Y軸コイル部47は、X軸方向の長さを3分割した各領域にコイル26が巻かれており、Y軸コイル部47のコイルは、U、V、Wの3相から構成されている。U、V、Wの各相のコイル26には、個別に給電することが可能となっている。尚、Y軸リニアモータ42の開口部に位置する永久磁石の取付ピッチPとY軸コイル部47の長さLとは、P=Lとなるように設けられている。
【0050】
図1及び図3に示すように、Y軸連結部55は、略コの字型の形状を有し、Y軸連結部55の両辺は、Y軸モータ部40のY軸コイル部47の両端面を挟むようにY軸コイル部47に固定されている。移動テーブル2側に位置するY軸連結部55の辺には、連結ガイド60が取り付けられている。
【0051】
連結手段としての連結ガイド60の案内レールは、Y軸モータ部40のY軸連結部55に固定されており、連結ガイド60のスライダは、移動テーブル2の上部移動体10に固定されている。移動テーブル2がX軸方向に移動したときには、連結ガイド60のスライダが案内レール上をX軸方向に移動して、上部移動体10のみが移動するようになり、Y軸モータ部40のY軸連結部55は停止した状態を維持する。
【0052】
このように、XYステージは、可動テーブルとY軸リニアモータはX軸方向に移動可能な連結ガイドによって連結しているため、移動テーブルがX軸方向に移動した場合、移動テーブルの重心だけが移動してY軸リニアモータのコイル部はX方向に移動しないため、Y軸リニアモータのヨーイング振動を軽減することができる。
【0053】
Y軸コイル部47の端面を固定しているY軸連結部55の両辺は、2本のY軸コイル部ガイド50を介してY軸モータベース41に取り付けられている。Y軸コイル部ガイド50は、例えば、リニアガイドウェイのレール上に2コのキャリッジを設けたものを使用する。2本のリニアガイドウェイのレールをY軸方向にY軸モータベース41の表面に互いに平行するように固定して設けて、Y軸連結部55の一辺をリニアガイドウェイの2コのキャリッジに固定し、Y軸連結部55の他の辺をリニアガイドウェイの2コのキャリッジに固定するようにする。
【0054】
これによりY軸連結部55は、Y軸コイル部47がY軸方向に移動する際に、Y軸コイル部ガイド50のレールに沿って移動する。Y軸連結部55がY軸方向に移動することにより、連結ガイド60を介して上部移動体がY軸方向に移動する。
【0055】
[Y軸モータ部の無反動化]
図4に示すように、Y軸リニアモータ42のヨーク部43は、Y軸モータベース41上に配置されており、ヨーク部43は、Y軸方向と平行に設けた2本のY軸ヨーク部ガイド49(図3に点線で示す)を介してY軸モータベース41に取り付けられている。Y軸ヨーク部ガイド49は、例えば、リニアガイドウェイのレール上に2コのキャリッジを設けたものを使用する。2本のリニアガイドウェイのレールを平行にY軸モータベース41の表面に固定して設けて、ヨーク部43の底面の四隅をリニアガイドウェイのキャリッジに固定するようにする。
【0056】
これによりヨーク部43は、Y軸コイル部47が起動時等の加速度により発生する反力を打ち消すように、Y軸コイル部47の移動方向と反対方向に移動する。このため、Y軸モータ部40で発生する反力をY軸ヨーク部ガイド49で打ち消されるため、架台への振動伝達を減らすことができる。尚、Y軸リニアモータ42の駆動時のヨーク部43の移動を元の位置に戻すためのダンパー(図示せず)が、Y軸モータベース41上に設けられている。
【0057】
また、Y軸リニアモータ42は、ヨーク部43とY軸コイル部47との相対位置を検出するためのY軸モータセンサ56(図1及び図3に示す)が設けられている。Y軸モータセンサ56の検出ヘッドは、Y軸コイル部47に設けられており、Y軸モータセンサ56のスケールは、ヨーク部43に設けられている。Y軸リニアモータ42は、Y軸コイル部47の3相の各コイル26の位置と、ヨーク部43に配置されている永久磁石の各極との相対位置を検出して、検出した位置に基づいてY軸コイル部47の各コイルに電流を供給して、推力を発生させるようにする。
【0058】
Y軸リニアモータ42は、Y軸コイル部47が移動することにより、その反力を打ち消すためにヨーク部43も移動するが、Y軸モータセンサ56によって常にヨーク部43とY軸コイル部47との相対位置が検出されているため、Y軸モータセンサ56の位置信号によりヨーク部43の移動によるY軸コイル部47の位置を補償することが可能となる。
【0059】
[リニアモータの駆動]
次に、図6を用いてX軸リニアモータ及びY軸リニアモータによるXYステージの制御について述べる。図6は、X軸リニアモータの制御を行うブロック図である。尚、Y軸リニアモータ42の制御についても図6と同様の構成をなす。図6に示すように、X軸リニアモータの制御は、制御回路70、アンプ部71により行われる。XYステージ1のX軸ステージセンサ7からの信号が制御回路70に入力され、制御回路70は、移動テーブル2の現在値を保持している。また、制御回路70には、移動テーブル2のX軸の移動すべき位置が位置指令として外部から入力される。制御回路70は、移動テーブル2のX軸の移動すべき位置データに基づいて、移動テーブル2の現在値から指定の位置までの移動量を算出して、X軸リニアモータの移動量から最適な駆動パターンを選択する。また、アンプ部71は、コイル部のU相、V相及びW相の各コイル26に電流を供給するために、各コイル26毎にアンプを有している。アンプ部71には、X軸リニアモータのX軸モータセンサ35からの信号が入力されており、アンプ部71は、X軸モータセンサ35のコイル部とヨーク部との相対位置のデータに基づいて駆動するコイル部のコイル26を選択する。
【0060】
アンプ部71は、制御回路70及びX軸モータセンサ35からの信号によりコイル26に電流を供給する。また、アンプ部71は、X軸リニアモータを駆動中は、X軸モータセンサ35の信号から駆動するコイル26を切り換えるように制御する。また、制御回路70は、XYステージの移動中のX軸ステージセンサ7の信号からX軸リニアモータの移動速度等を検知し、目標とする移動速度となるようにアンプ部71へ信号を出力する。
このように、X軸リニアモータの駆動は、X軸モータセンサ35からの信号により、電流を供給するコイル部のコイル26を切り換えながら、X軸リニアモータの推力を発生するようにして、XYステージを所定の位置に移動するようにする。
【0061】
以上述べたように、発明によれば、X軸リニアモータを移動テーブルに対して下部に配置することにより、従来のようにX軸リニアモータを移動テーブル外に設置する必要がないため、XYステージの小型化が可能となる。また、XYステージを用いたボンディング装置ではXYステージの側方に他の装置を配置することもできるため、ボンディング装置の小型化も可能となる。
【0062】
また、Y軸リニアモータの可動部が可動テーブルに直接連結している従来のXYステージは、移動テーブルがX軸方向に移動した場合、Y軸リニアモータの可動部も同時に移動するため、反力を受けるY軸リニアモータのヨーク部のモーメント力により、Y軸リニアモータにヨーイング振動が発生する恐れがある。しかしながら、本発明のXYステージは、可動テーブルとY軸リニアモータはX軸方向に移動可能なガイドによって連結しているため、移動テーブルがX軸方向に移動した場合、移動テーブルの重心だけが移動してY軸のリニアモータのコイル及び可動子はX方向に移動しないため、Y軸リニアモータのヨーイング振動を軽減することが可能である。
【0063】
また、従来のボイスコイルを用いたリニアモータでは、XYステージの可動範囲は磁石の長さにより制限されるが、本発明のXYステージは、3相コイルリニアモータを使用している。3相コイルリニアモータは、永久磁石をヨークの開口部の長手方向にS極、N極の各磁石を交互に配列した構造であるため、XYステージの可動範囲を広げることが容易に実現することができる。
【0064】
この発明は、その本質的構成から逸脱することなく多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 XYステージ
2 移動テーブル
3 ベース板
4 X軸ガイド
5 側板
6 下部移動板
7 X軸ステージセンサ
7a、11a 検出ヘッド
7b、11b スケール
10 上部移動体
11 Y軸ステージセンサ
12 Y軸ガイド
15 X軸モータ部
16 筐体
17 X軸リニアモータ
20 ヨーク部
21、22 開口部
23 永久磁石
25 X軸コイル部
26 コイル
30 モータ保持台
31 X軸ヨーク部ガイド
33 X軸連結部
35 X軸モータセンサ
40 Y軸モータ部
41 Y軸モータベース
42 Y軸リニアモータ
43 ヨーク部
44 永久磁石
47 Y軸コイル部
49 Y軸ヨーク部ガイド
50 Y軸コイル部ガイド
55 Y軸連結部
56 Y軸モータセンサ
60 連結ガイド
70 制御回路
71 アンプ部
100 XYテーブル
101 平面リニアモータ
102 コイル
103 Y可動子
104 上部テーブル
105 下部テーブル
106 ガイドレール
107 ボイスコイルモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元のXY平面を移動可能な移動テーブルと、当該移動テーブルをXY方向に案内するガイド手段と、前記移動テーブルを駆動する駆動手段とを備え、
前記駆動手段は、X軸リニアモータとY軸リニアモータとを有し、前記駆動手段のX軸リニアモータ及びY軸リニアモータは、コイルからなる可動部及び磁気回路を形成するヨークからなる固定部を有し、前記固定部を前記可動部と同一軸方向に移動可能なガイドを介してベース上に固定して、可動部の移動時の反力を吸収するように構成し、
前記移動テーブルの下部に前記X軸リニアモータを配するようにしたことを特徴とするXYステージ。
【請求項2】
前記X軸リニアモータ及びY軸リニアモータは、可動部が3相のコイルで構成され、前記固定部のヨークは、長手方向の中心線に対してその上部及び下部に開口部が設けられており、上部の開口部の上面及び下部の開口部の下面には複数の永久磁石の表面がN極、S極となるように交互に配列され、ヨーク上部の開口部の永久磁石と垂直方向におけるヨーク部下部の開口部との永久磁石は、同じ極となるように配列され、中心付近のヨークに3相のコイルが挿入された構成を成していることを特徴とする請求項1に記載のXYステージ。
【請求項3】
前記駆動手段のY軸リニアモータは、X軸方向に移動可能な連結手段を介して前記移動テーブルを駆動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のXYステージ。
【請求項4】
前記X軸リニアモータの可動部は、移動テーブルの前後に設けた連結部によって両持ち支持されていることを特徴とする請求項1に記載のXYステージ。
【請求項5】
前記X軸リニアモータ及び前記Y軸リニアモータは、前記可動部と前記固定部の相対位置を検出する位置検出センサを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のXYステージ。
【請求項6】
前記X軸リニアモータ及び前記Y軸リニアモータは、前記位置検出センサのデータを基に、X軸リニアモータ及びY軸リニアモータの可動部の各相のコイルを制御するようにしたことを特徴とする請求項5に記載のXYステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−114359(P2012−114359A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263916(P2010−263916)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000124959)株式会社カイジョー (83)
【Fターム(参考)】