説明

セラミックス電子部品の製造方法

【課題】電気特性の低下を十分に抑制できるセラミックス電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】Zn、Fe、Co及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子の酸化物を含むセラミックス電子部品素体の表面に導電層を形成する工程、導電層上に、めっき液を用いて、ニッケルめっき層5を形成する工程を経てセラミック電子部品100を製造するセラミック電子部品の製造方法であって、めっき液が、ニッケル塩と、ニッケルイオンと錯体を形成するアミン化合物とを含み、pHが6〜12であるセラミックス電子部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスを用いた電子部品においては通常、はんだによる実装性を高めるために、電子部品素体の端部表面に、導電層、ニッケルめっき層、スズめっき層が順次形成される。ここで、ニッケル(Ni)めっき層は、一般の電気Niめっき浴であるワット浴やスルファミン酸浴、酢酸などのカルボン酸、クエン酸などのオキシカルボン酸やアンモニアを錯化剤とする電解/無電解めっき液を使用して形成される(下記特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】国際公開第2004/053901号パンフレット
【特許文献2】特開平6−224483号公報
【特許文献3】特許第3678195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のめっき液を用いて導電層の上にニッケルめっき層を形成すると、セラミックス電子部品素体がめっき液によって溶解する場合がある。その結果、セラミックス電子部品の電気特性が低下することがある。この電気特性の低下は、セラミックス電子部品のサイズが十分大きい場合には無視できる程度のものであるが、近年になって著しく小型化が進んだセラミックス電子部品においては、無視できない程度にまでなってきている。
【0004】
そこで、本発明は、電気特性の低下を十分に抑制できるセラミックス電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、素体中に、めっき液によって溶解しうる金属原子を突き止め、その金属原子の溶解が十分に抑制されるような条件について検討した。特に、本発明者らは、めっき液の成分及びpHに着目した。そして、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、めっき液が特定の成分及びpHを有している場合に、セラミックス電子部品素体がめっき液に極めて溶解しにくくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、亜鉛原子、鉄原子、コバルト原子及びマンガン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子の酸化物を含むセラミックス電子部品素体の表面に導電層を形成する工程、及び、前記導電層上に、めっき液を用いて、ニッケルめっき層を形成する工程を経てセラミックス電子部品を得るセラミック電子部品の製造方法であって、前記めっき液が、ニッケル塩と、ニッケルイオンと錯体を形成するアミン化合物とを含み、pHが6〜12であるセラミックス電子部品の製造方法である。
【0007】
このセラミックス電子部品の製造方法によれば、ニッケルめっき層を形成する工程において、セラミックス電子部品素体がめっき液と接触しても、素体の溶解が十分に抑制される。このため、得られるセラミックス電子部品について電気特性の劣化が十分に抑制される。
【0008】
前記アミン化合物が、前記ニッケルイオンとの錯体形成の際における第一段階反応の逐次生成定数K1が4.0〜15.0となるアミン化合物であることが好ましい。
【0009】
溶液中において、ニッケルイオンは、錯化作用を有するアミン化合物を配位子Lとして、単核錯体を形成する。この単核錯体では、配位子Lは金属イオンMと段階的に結合する。各段階での生成定数はKnで定義され、これを逐次生成定数と呼ぶ。下記式:
MLn-1+L=MLn・・・(1)
で示される第n段階反応に対して、逐次生成定数Knは、下記式:
Kn=[MLn]/[MLn-1][L] ・・・(2)
で定義される。従って、下記式:
M+L=ML・・・(3)
で示される第1段階反応に対して、第1段階反応の逐次生成定数K1は、下記式:
K1=[ML]/[M][L] ・・・(4)
で定義される。
【0010】
なお、上記式(2)、(4)において、[M]、[L]、[ML]、[MLn]等は、金属イオンM、配位子L、単核錯体ML、MLnの濃度を意味する。
【0011】
第1段階反応の逐次生成定数K1が4.0〜15.0であると、K1がこの範囲を外れる場合に比べて、セラミックス電子部品素体の溶解がより十分に抑制される。
【0012】
前記めっき液が還元剤を更に含むことが好ましい。めっき液が還元剤を含むと、無電解めっきを有効に行うことができる。
【0013】
本発明は、前記セラミックス電子部品が、チップコンデンサ、チップインダクタ、チップバリスタ、チップレゾネータ、チップサーミスタ又はそれらの複合部品である場合に特に有効である。これらは一般的に小型の電子部品であり、めっき液による溶解によって電気特性が著しく低下する可能性があるためである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電気特性の低下を十分に抑制できるセラミックス電子部品の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
セラミックス電子部品が積層チップコンデンサである場合を例にしてその製造方法について説明する。
【0017】
まず図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造される積層チップコンデンサ100は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素体10を有する。このコンデンサ素体10の両端部には、素体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)程度である。
【0018】
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0019】
外部電極4の表面には、ニッケルめっき層5及びスズめっき層6が順次積層されている。
【0020】
誘電体層2は、例えばBaTiOを主成分とし、この主成分に対しZnOなどの添加物を含有している。
【0021】
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、例えばNiまたはNi合金が用いられる。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、0.5〜5μm程度である。
【0022】
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、例えば安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定されればよいが、通常、10〜50μm程度である。
【0023】
次に、上記積層チップセラミックスコンデンサ100の製造方法について説明する。
【0024】
まずコンデンサ素体10を準備する。次に、このコンデンサ素体10に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストは、各種金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、有機ビヒクルとを混練して調製すればよい。有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、例えばテルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、加湿したNとHとの混合ガス中で600〜800℃にて10分間〜1時間程度とすればよい。
【0025】
次に、外部電極4表面に、めっき液を用いてニッケルめっき層5を形成し、続いてニッケルめっき層5の上に、スズめっき層6を形成する。こうして積層チップセラミックスコンデンサ100が完成する。
【0026】
ここで、ニッケルめっき層5の形成に用いるめっき液について詳細に説明する。
【0027】
めっき液は、ニッケル塩と、ニッケルイオンと錯体を形成するアミン化合物とを含み、pHが6〜12となっている。
【0028】
ニッケル塩は、めっき液として完成したときに、めっき液中に溶解し、ニッケルイオンを生成するものであれば特に限定されない。このようなニッケル塩としては、例えば硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、ピロリン酸ニッケル又はこれらの2種以上の組み合せが挙げられる。
【0029】
めっき液中におけるニッケル塩の含有率は、ニッケルイオン換算で、好ましくは0.1〜2.0mol/L、より好ましくは0.3〜1.0mol/Lである。ニッケル塩の含有率が小さすぎると、ニッケルめっき層5の形成が困難となる傾向にある。一方、ニッケル塩の含有率が大きすぎると、アミン塩化合物等の他の成分が飽和して、沈殿してしまうことがある。
【0030】
アミン化合物は、ニッケルイオンと錯体を形成できるものであれば特に限定されないが、ニッケルイオンと錯体形成する際における第一段階反応の逐次生成定数K1が4.0〜15.0の範囲にあるものが、コンデンサ素体10の溶解をより十分に抑制する観点から好ましい。K1は、好ましくは4.0〜12.0であり、より好ましくは4.0〜9.0である。この場合、特に、材料の溶解性が少ないという利点がある。
【0031】
第一段階反応の逐次生成定数K1が4.0〜15.0の範囲にあるアミン化合物としては、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、リシン酸、リシン−グルタミン酸、リシン−アスパラギン酸、アルギニン−グルタミン酸、ピコリン酸、ジアミノプロピオン酸、ジアミノ酪酸、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、メチオニン、アルギニン、バリン、テアニン、グリシルグリシン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1,10フェナントロリン、フェナントロリンアンモニア、フタロシアニン又はこれらの混合物が挙げられる。なお、アンモニア、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などは、アミン化合物に分類されるが、逐次生成定数K1が4.0〜15.0の範囲外となる化合物である。また、クエン酸は、逐次生成定数K1が5.35となり、上記範囲内ではあるが、アミン化合物ではないため、不適である。
【0032】
アミン化合物の含有率は、ニッケルイオンの含有量との関係で次のようになっていることが好ましい。
【0033】
即ち、ニッケルイオンとアミン化合物とのモル比が、アミン化合物のニッケルイオンへの配位数の0.5〜3.0倍であることが好ましく、より好ましくは1.2〜3.0倍、さらに好ましくは1.3〜2.0倍である。この場合、コンデンサ素体10に含まれるZnOの溶解がより効果的に抑制され、また、水への溶解性が向上し、無めっきとなりにくくなる。
【0034】
めっき液のpHは6〜12である。pHが上記範囲を外れると、コンデンサ素体10中の添加剤であるZnOが溶解してZnイオンが溶出されてしまい、誘電損失の低下につながる。
【0035】
pHは好ましくは7〜11、更に好ましくは8〜10である。この場合、Znイオンの溶出がより抑制される。
【0036】
めっき液のpHは、例えば水酸化物塩などを用いて調整することができる。水酸化物塩は、特に限定されないが、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。また、めっき液は、水酸化物塩に加え、pH緩衝剤としてホウ酸を含有してもよい。
【0037】
上記めっき液を使用してニッケルめっき層5を外部電極4の表面上に形成する場合、例えば電解めっき法が用いられる。この場合、上記めっき液と、ニッケルを含む陽極とが使用される。具体的には、外部電極4が形成されたコンデンサ素体10が上記めっき液中に浸漬される。そして、陽極と外部電極4との間に電圧を印加すると、外部電極4の表面にニッケルめっき層5が形成される。ここで、ニッケルを含む陽極としては、電解めっきで通常使用されるニッケル陽極を使用すればよい。具体的なめっき条件は、めっき液の温度を、30〜90℃とし、めっき時の電流密度を、0.01〜5A/dmとすればよい。
【0038】
なお、上記めっき液が還元剤を更に含むと好ましい。この場合、めっき液に酸化還元力が付与され、無電解めっきを有効に行うことが可能となる。ここで、還元剤は、めっき液中に含有されるニッケルイオンを化学的に還元できるものであれば良く、特に限定されるものではない。このような還元剤としては、例えば次亜リン酸、次亜リン酸塩化合物、テトラヒドロホウ酸、テトラヒドロホウ酸塩化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、ヒドラジンなどが挙げられる。還元剤の含有率は、好ましくは0.05〜0.5mol/L、より好ましくは0.1〜0.3mol/Lである。この場合、ニッケルめっき層5をより効率よく形成でき、めっき液の自己分解を起こりにくくすることができる。めっき液が還元剤を含む場合、めっき液は安定剤を、0.01〜10mg/L程度の範囲で更に含有しても良い。このような安定剤としては、チオ尿素などの有機硫黄化合物、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)などが挙げられる。
【0039】
また無電解めっきを行うことによって外部電極4の表面上にニッケルめっき層5を形成する場合には、めっき条件は、めっき液の温度を例えば30〜80℃とすればよい。
【0040】
〔第2実施形態〕
次に、本発明に係るセラミックス電子部品の製造方法の第2実施形態について説明する。本実施形態では、セラミックス電子部品が積層チップバリスタである場合を例にしてその製造方法について説明する。
【0041】
図2に示すように、積層チップバリスタ200は、内部電極層3と層間電圧非直線性抵抗体層8とが積層された構成のバリスタ素体210を有する。このバリスタ素体210の両端部には、バリスタ素体210の内部に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。バリスタ素体210の形状は、特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよいが、通常、縦(0.6〜5.6mm)×横(0.3〜5.0mm)×厚み(0.3〜1.9mm)程度である。
【0042】
内部電極層3は、各端面が素体210の対向する2端部の表面に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、素体210の両端部に形成され、内部電極層3の露出端面にそれぞれ接続されて、回路を構成する。
【0043】
バリスタ素体210において、内部電極層3および層間電圧非直線性抵抗体層8の積層方向の両外側端部には、外側保護層8aが配置してあり、素体210の内部を保護している。外側保護層8aの材質は、層間電圧非直線性抵抗体層8の材質と同じであっても異なっていても良い。
【0044】
内部電極層3に含有される導電材は、特に限定されないが、PdまたはAg−Pd合金で構成してあることが好ましい。合金中のPd含有量は95重量%以上であることが好ましい。内部電極層3の厚さは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常0.5〜5μm程度である。
【0045】
外部電極4に含有される導電材は、特に限定されないが、通常、AgやAg−Pd合金などを用いる。外部電極4の厚さは、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常10〜50μm程度である。
【0046】
層間電圧非直線性抵抗体層8は、酸化亜鉛を含む主成分を有する。この酸化亜鉛を含む主成分は、電圧−電流特性における優れた電圧非直線性と、大きなサージ耐量とを発現する物質として作用する。
【0047】
層間電圧非直線性抵抗体層8は、Prなどの希土類元素の酸化物、Siの酸化物、Coの酸化物、B、Al、GaおよびInから選ばれる少なくとも1種の酸化物をさらに含有していてもよい。
【0048】
次に、上記積層チップバリスタ200の製造方法について説明する。
【0049】
まずバリスタ素体210を準備する。次に、このバリスタ素体210に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極4を形成する。外部電極用ペーストは、各種金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、第1実施形態と同様の有機ビヒクルとを混練して調製すればよい。外部電極用ペーストの焼成条件は、例えば、空気雰囲気中で600〜900℃にて10分〜1時間程度とすればよい。
【0050】
次に、外部電極4表面に、第1実施形態と同様のめっき液を用いてニッケルめっき層5を形成し、続いてニッケルめっき層5の上にスズめっき層6を形成する。こうして積層チップバリスタが完成する。
【0051】
この製造方法では、上記めっき液を用いることにより、バリスタ素体210の溶解を十分に抑制できる。特に、本実施形態の積層チップバリスタ200では、層間電圧非直線性抵抗体層8が酸化亜鉛を主成分の一つとしているが、酸化亜鉛は、従来のめっき液では特に溶出が懸念される材料であったため、本実施形態の製造方法は、積層チップバリスタの製造方法に特に有効である。こうして、本実施形態の製造方法によれば、積層チップバリスタ200のバリスタ電圧の低下を十分に抑制でき、電気特性の低下を十分に抑制できる。
【0052】
本発明は、上記第1〜第2実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、セラミックス電子部品が、積層チップコンデンサ、積層チップバリスタである場合について説明したが、本発明に係るセラミックス電子部品の製造方法は、積層チップインダクタ、積層チップサーミスタ、積層チップレゾネータ、又はそれらの複合部品である電子部品についても適用可能である。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
〔バリスタ〕
(実施例1〜4及び比較例1〜3)
まず、ZnO粉末に、Pr11、Co、CaCO、SiOおよびその他の添加物を、Zr、Pr、Co、Al、K、Cr、Ca、Siの含有率がそれぞれ96.945、0.5、1.5、0.005,0.05、0.1、0.1、0.8原子%(金属元素の百分率換算)に相当する量となるように添加し、混合した。そして、得られた粉体に、有機バインダ、有機溶剤、有機可塑剤を加え、ボールミルで20時間混合し粉砕を行って、スラリーを作製した。
【0055】
このスラリーをドクターブレード法により、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のベースフィルム上に30μmの厚さのグリーンシートを作製し、塗布したグリーンシート上に、パラジウムペーストを用い、スクリーン印刷にて、所望の形状になるように印刷し、乾燥して、内部電極を形成した。次に、グリーンシートの反対側の表面にも、上記と同様にして内部電極を形成した。
【0056】
さらに、最外層となる保護層は、同じ組成のグリーンシートを複数枚重ねて形成した。
【0057】
その後、これらを加熱、圧着した後、所定のチップ形状となるように切断してグリーンチップとした。
【0058】
このグリーンチップを350℃で2時間脱バインダを行った後、1250℃で2時間空気中において焼成し、積層チップバリスタ素体となる焼結体を得た。
【0059】
次いでこのバリスタ素体をバレル研磨した後、その両端にAgを主体とした電極ペーストを塗布し、800℃で焼き付けして外部電極を形成し、0.10mm×0.05mm×厚さ0.8mmの外部電極付きチップバリスタ素体を準備した。
【0060】
次に、外部電極付きチップバリスタ素体の外部電極の表面に、厚さ2μmのニッケルめっき層を形成した。このとき、ニッケルめっき層の形成は、小型回転バレルめっき装置(コンドウ社製BH型)を用いて行い、めっき液及びめっき条件は、表1に示す通りとした。続いて、めっき装置により、ニッケルめっき層上に電解めっき法により厚さ4μmのスズめっき層を形成した。このとき、めっき装置として、小型回転バレル(コンドウ社製BH型)を用いた。このようにして、積層チップバリスタを得た。
【0061】
上記のようにして積層チップバリスタを100個作成し、100個の積層チップバリスタについて、バリスタ電圧を測定した。バリスタ電圧(V1mA)は、積層チップバリスタを直流定電圧電源に接続し、積層チップバリスタの両電極間に作用する電圧を電圧計で測定すると共に、積層チップバリスタに流れる電流を電流計にて読みとることにより求めた。具体的には、積層チップバリスタに流れる電流が1mAの時に、積層チップバリスタの電極間に作用する電圧を電圧計により読みとり、その値をバリスタ電圧とした。単位はVとした。結果を表1に示す。なお、表1には、100個の積層チップバリスタについて測定したバリスタ電圧の平均値をバリスタ電圧として示してある。ここで、バリスタ電圧の規格値は6.4〜9.6Vである。
【表1】

【0062】
表1に示すように、実施例1〜4の積層チップバリスタは、比較例1〜3の積層チップバリスタよりも、バリスタ電圧が高くなっており、電気特性の低下を十分に抑制できることが分かった。
【0063】
(実施例5〜8)
めっき液の組成及びめっき条件を表2に示すようにし、外部電極付きバリスタ素体の外部電極表面を無電解めっきしたこと以外は、実施例1と同様にして100個の積層チップバリスタを作成した。そして、得られた100個の積層チップバリスタについて、実施例1と同様にしてバリスタ電圧を測定した。結果を表2に示す。なお、表2には、100個の積層チップバリスタについて測定したバリスタ電圧の平均値をバリスタ電圧として示してある。ここで、バリスタ電圧の規格値は6.4〜9.6Vである。
【表2】

【0064】
表2に示すように、実施例5〜8の積層チップバリスタは、比較例4〜6の積層チップバリスタよりも、バリスタ電圧が高くなっており、電気特性の低下を十分に抑制できることが分かった。
【0065】
〔コンデンサ〕
(実施例9〜11及び比較例7〜9)
まず、BaTiO:85モル%、Bi:1モル%、TaO:4.5モル%、MgO:0.5モル%、CuO:1モル%、ZnO:1.5モル%、TiO:2モル%、SnO:1.5モル%、Dy:3モル%の組成を有する誘電体材料100重量部と、アクリル樹脂4.8重量部と、塩化メチレン40重量部と、酢酸エチル20重量部と、ミネラルスピリット6重量部と、アセトン4重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
次いで、平均粒径0.2〜0.8μmのNi粒子100重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したもの)40重量部と、ブチルカルビトール10重量部とを3本ロールにより混練してペースト化し、内部電極層用ペーストを得た。
【0066】
次いで、平均粒径0.5μmのCu粒子100重量部と、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂8重量部をブチルカルビトール92重量部に溶解したもの)35重量部およびブチルカルビトール7重量部とを混練してペースト化し、外部電極用ペーストを得た。
【0067】
次いで、上記誘電体層用ペーストを用いてPETフィルム上に、厚さ15μmのグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷したのち、PETフィルムからグリーンシートを剥離した。次いで、これらのグリーンシートと保護用グリーンシート(内部電極層用ペーストを印刷しないもの)とを積層、圧着して、グリーンチップを得た。内部電極を有するシートの積層数は4層とした。
【0068】
次いで、グリーンチップを所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニールを行って、積層セラミック焼成体を得た。脱バインダ処理は、昇温時間15℃/時間、保持温度280℃、保持時間8時間、空気雰囲気の条件で行った。また、焼成は、昇温速度200℃/時間、保持温度1280〜1320℃、保持時間2時間、冷却速度300℃/時間、加湿したN+H混合ガス雰囲気(酸素分圧は10−9気圧)の条件で行った。アニールは、保持温度900℃、温度保持時間9時間、冷却速度300℃/時間、加湿したN ガス雰囲気(酸素分圧は10−5気圧)の条件で行った。なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、水温を35℃としたウェッターを用いた。
【0069】
次いで、積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨したのち、外部電極用ペーストを端面に転写し、加湿したN +H 雰囲気中において、800℃にて10分間焼成して外部電極を形成した。こうして、0.10mm×0.05mm×0.8mmのサイズの外部電極付きコンデンサ素体を得た。
【0070】
こうして得られた外部電極付きコンデンサ素体の外部電極表面上に、めっき液の組成及びめっき条件を表3に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、ニッケルめっき層及びスズめっき層を順次形成した。こうして積層チップコンデンサを得た。
【0071】
このようにして得られた積層チップコンデンサにおいて、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は4、その厚さは0.8mmであり、内部電極層の厚さは5μmであった。
【0072】
上記のようにして100個の積層チップコンデンサを作成し、これらに対し、LCRメータにより、周波数1kHz,入力信号レベル1Vrmsの条件下で、誘電損失(単位は%)を測定した。結果を表3に示す。なお、表3においても、100個の積層チップコンデンサについて測定した誘電損失の平均値で誘電損失を示してある。
【表3】

【0073】
表3に示すように、実施例9〜11の積層チップコンデンサは、比較例7〜9の積層チップコンデンサよりも、誘電損失が小さくなり、電気特性の低下を十分に抑制できることが分かった。
【0074】
(実施例12〜14及び比較例10〜12)
めっき液の組成及びめっき条件を表4に示すようにし、外部電極付きコンデンサ素体の外部電極表面を無電解めっきしたこと以外は、実施例9と同様にして100個の積層チップコンデンサを作成した。そして、得られた100個の積層チップコンデンサについて、実施例9と同様にして誘電損失を測定した。結果を表4に示す。なお、表4においても、100個の積層チップコンデンサについて測定した誘電損失の平均値で誘電損失を示してある。
【表4】

【0075】
表4に示すように、実施例12〜14の積層チップコンデンサは、比較例10〜12の積層チップコンデンサよりも、誘電損失が小さくなり、電気特性の低下を十分に抑制できることが分かった。
【0076】
〔インダクタ〕
(実施例15〜17及び比較例13〜15)
粒径0.1〜10μm程度のNiO,CuO,ZnOおよびFe の粉体を用い、これらをボールミルを用いて湿式混合し、ついで、この湿式混合物をスプレードライヤーにより乾燥し700℃にて仮焼し、これをボールミルにて粉砕した後、スプレードライヤーで乾燥し、比表面積8m /gのNi−Cu−Znフェライト原料粉末とした。このとき、Ni−Cu−Znフェライト原料粉末の組成は、フェライト原料粉末中のmol%で、Fe :45mol%、NiO:25mol%、CuO:10mol%、およびZnO:20mol%となるようにした。
ついでこの原料粉末100重量部に対して、エチルセルロース2.5重量部、テルピネオール40重量部を加え、3本ロールにて混練して磁性フェライトペーストを調製した。
【0077】
一方、平均粒径0.8μmのAg100重量部に対して、エチルセルロース2.5重量部、テルピネオール40重量部を加え、3本ロールにて混練して、導体用ペーストを調製した。
【0078】
このような磁性フェライト用ペーストと導体用ペーストとを、交互に印刷積層した後、積層体の対向する2側面を切断し、導体用ペーストにより印刷された導体パターンの縁部を積層体側面から露出させた。その後、この積層体について、900℃で2時間の焼成を行って、積層型チップインダクタを得た。得られた積層型チップインダクタのタイプは、1005タイプであり、その外形寸法は0.10mm×0.05mm×0.8mmであった。
【0079】
焼成後、内部導体保護のため露出した内部導体の部分をガラスから成る非磁性体層で被覆した。次に、積層チップインダクタの内部導体の引き出し部に外部導体ペーストを塗布し、外部導体およびガラスを大気中において600℃で30分間焼き付け、コイル状内部導体の両端部に外部電極が形成された状態の外部電極付きチップインダクタ素体を形成した。
【0080】
このチップインダクタ素体の外部電極表面上に、めっき液の組成及びめっき条件を表5に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、ニッケルめっき層及びスズめっき層を順次形成した。こうして積層チップインダクタを得た。
【0081】
上記のようにして積層チップインダクタを100個作成し、これらに対し、測定周波数100kHz、測定電流0.1mAの条件で、LCRメーター(ヒューレットパッカード(株)製)を用いてインダクタンスLを測定した。結果を表5に示す。なお、表5においては、100個の積層チップインダクタについて測定したインダクタンス値の平均値でインダクタンス値を示してある。
【表5】

【0082】
表5に示すように、実施例15〜17の積層チップインダクタは、比較例13〜15の積層チップインダクタよりも、インダクタンスが大きく、電気特性の低下を十分に抑制できることが分かった。
【0083】
(実施例18〜20及び比較例16〜18)
めっき液の組成及びめっき条件を表6に示すようにし、外部電極付きインダクタ素体の外部電極表面を無電解めっきしたこと以外は、実施例15と同様にして100個の積層チップインダクタを作成した。そして、得られた100個の積層チップインダクタについて、実施例15と同様にしてインダクタンスを測定した。結果を表6に示す。なお、表6においても、100個の積層チップインダクタについて測定したインダクタンス値の平均値でインダクタンス値を示してある。
【表6】

【0084】
表6に示すように、実施例18〜20の積層チップインダクタは、比較例16〜18の積層チップインダクタよりも、インダクタンスが大きく、電気特性の低下を十分に抑制できることが分かった。
【0085】
〔圧電レゾネータ〕
(実施例21〜23及び比較例19〜22)
まず主成分の原料として、PbO粉末、TiO2粉末、ZrO2粉末、MnCO3粉末、Nb25粉末を用意し、最終的に、Pb[(Mn1/3Nb2/30.1Ti0.5Zr0.35]Oの組成となるように秤量した。
【0086】
次に、秤量された各粉末の総重量に対して、副成分としてのAl、SiO、MnCO、Cr3をそれぞれ0.1wt%添加した。各原料粉末の平均粒径は0.1〜3.0μmの範囲で適宜選択した。
【0087】
上記原料粉末を湿式混合した後、800℃で3時間保持する仮焼を行った。このときの雰囲気はN2とした。
【0088】
仮焼き後、原料粉末の粉砕を行い、粉砕粉末を顆粒に造粒した。この際、粉砕粉末にポリビニルアルコール(PVA)を少量添加し、かつこれらを十分に混合し、その後にメッシュを通過させて整粒することにより造粒粉末を得た。次いで、造粒粉末を300MPaの圧力で加圧成形し、成形体を得た。
【0089】
成形時に添加したバインダを除去した後、1200℃で3時間成形体を加熱保持し焼結体を得た。このときの雰囲気はN2とした。
【0090】
得られた焼結体に分極処理用の電極を形成した後、分極処理を行った。分極処理は、100℃の温度で、1.5Ec(Ecは抗電界)の電界を焼結体に対して20分間印加した。
【0091】
分極処理は、上述した温度に加熱されたシリコンオイル浴中で行った。なお、分極方向は、主面に平行方向に分極を行った。
【0092】
そして、分極処理後の焼結体を、厚さが0.5mmとなるまで研磨した後、振動電極を形成した。次いで、ダイシングソーで所望の形状に切断した。そして、切断面上に、実施例1と同様にしてAgを主体とする電極ペーストを塗布し、大気中において600℃で30分間焼き付け、両端部に外部電極が形成された状態の外部電極付きチップレゾネータ素体を形成した。
【0093】
そして、このチップレゾネータ素体の外部電極表面上に、めっき液の組成及びめっき条件を表7に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、ニッケルめっき層及びスズめっき層を順次形成した。こうして積層チップレゾネータを得た。
【0094】
上記のようにして100個の積層チップレゾネータを作製し、これらについて、インピーダンスアナライザーを用いて共振インピーダンスを測定した。結果を表7に示す。なお、表7においても、100個の積層チップレゾネータについて測定した共振インピーダンス値の平均値で共振インピーダンス値を示してある。
【表7】

【0095】
表7に示すように、実施例21〜23の積層チップレゾネータは、比較例19〜22の積層チップレゾネータよりも、規格値により近い値を示していた。
【0096】
(実施例24〜26及び比較例23〜26)
めっき液の組成及びめっき条件を表8に示すようにし、外部電極付きレゾネータ素体の外部電極表面を無電解めっきしたこと以外は、実施例21と同様にして100個の積層チップレゾネータを作成した。そして、得られた100個の積層チップレゾネータについて、実施例21と同様にして共振インピーダンスを測定した。結果を表8に示す。なお、表8においても、100個の積層チップレゾネータについて測定した共振インピーダンス値の平均値で共振インピーダンス値を示してある。
【表8】

【0097】
表8に示すように、実施例24〜26の積層チップレゾネータは、比較例23〜26の積層チップレゾネータよりも、理論値により近い値を示していた。
【0098】
〔NTCサーミスタ〕
(実施例27〜29及び比較例27〜29)
まず、出発材料として、市販の四三酸化マンガン(Mn)、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化銅及び酸化ジルコニウムを、焼成後の組成が下記組成比(但し、主成分を構成するMn酸化物及びNi酸化物のモル%は、それぞれMn換算及びNi換算でのモル%を示している。添加物としての酸化鉄、酸化銅及び酸化ジルコニウムは、前記主成分を100重量%としたときの、Fe 換算、CuO換算、ZrO 換算での添加量(重量%)を示している。)
主成分であるMn酸化物:45モル%、Ni酸化物:55モル%、添加物であるFe:50.00wt%、CuO:40.00wt%、ZrO:10.00wt%
となるように秤量配合し、ボールミルで16時間湿式混合した。なお、これらの出発原料中には、不可避的不純物が0.1重量%程度含まれている。
【0099】
次に、湿式混合後の出発原料を、脱水乾燥し、乳鉢、乳棒を用いて粉体にした。
【0100】
次に、得られた粉体をアルミナこう鉢に入れ、1000℃で2時間仮焼成した。
【0101】
次に、得られた仮焼き済み粉体を、ボールミルにより微粉砕した後、脱水乾燥して、サーミスタ用組成物原料とした。
【0102】
次に、得られたサーミスタ用組成物原料100重量部に対して、ポリビニルアルコール1.5重量部(固形分)を加え、乳鉢、乳棒で顆粒に造粒したのち、1mm×0.5mm×0.5mmの直方体状に加圧成形して成形体を得た。
【0103】
次に、この成形体を、大気中で600℃で2時間加熱して、脱バインダ処理した後、大気中で1000℃で2時間本焼成して焼結体であるサーミスタ素体を得た。
【0104】
次に、得られた焼結体の両端に、銀ペーストをスクリーン印刷し、800℃で焼き付けて、外部電極を形成した。そして、このサーミスタ素体の外部電極表面上に、めっき液の組成及びめっき条件を表9に示すようにしたこと以外は実施例1と同様にして、ニッケルめっき層及びスズめっき層を順次形成した。こうして積層チップサーミスタを得た。
【0105】
上記のようにして積層チップサーミスタを100個作成し、得られた100個のサーミスタについて、直流4端子法を用いて、25℃の抵抗値(R25)、−40℃の抵抗値(R−40 )および85℃の抵抗値(R85)を測定し、それぞれ次式のT、To、R、Roに代入してB定数を算出した。
【数1】

【0106】
これらの最大値と最小値の規格値からのずれの大きな方を百分率で表し、B定数許容差とした。結果を表9に示す。なお、表9においても、100個の積層チップサーミスタについて測定したB定数許容差の平均値でB定数許容差を示してある。
【表9】

【0107】
表9に示す結果より、実施例27〜29に係る積層チップサーミスタでは、B定数許容差の絶対値がB定数許容差規格の絶対値より小さいのに対して、比較例27〜29に係る積層チップサーミスタでは、B定数許容差の絶対値がB定数許容差規格の絶対値より大きくなっていた。このことから、実施例27〜29は、電気特性の劣化を十分に抑制できることが分かった。
【0108】
(実施例30〜32及び比較例30〜32)
めっき液の組成及びめっき条件を表10に示すようにし、外部電極付きサーミスタ素体の外部電極表面を無電解めっきしたこと以外は、実施例27と同様にして100個の積層チップサーミスタを作成した。そして、得られた100個の積層チップサーミスタについて、実施例27と同様にしてB定数許容差を測定した。結果を表10に示す。なお、表10においても、100個の積層チップサーミスタについて測定したB定数許容差の平均値でB定数許容差を示してある。
【表10】

【0109】
表10に示す結果より、実施例30〜32に係る積層チップサーミスタでは、B定数許容差の絶対値がB定数許容差規格の絶対値より小さいのに対して、比較例30〜32に係る積層チップサーミスタでは、B定数許容差の絶対値がB定数許容差規格の絶対値より大きくなっていた。このことから、実施例30〜32は、電気特性の劣化を十分に抑制できることが分かった。
【0110】
以上より、本発明に係るセラミックス電子部品の製造方法によれば、電気特性の低下を十分に抑制できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明に係るセラミックス電子部品の製造方法によって得られるセラミックス電子部品の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るセラミックス電子部品の製造方法によって得られるセラミックス電子部品の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0112】
4…外部電極(導電層)、5…ニッケルめっき層、6…スズめっき層、10…コンデンサ素体(セラミックス電子部品素体)、100…積層チップコンデンサ(セラミックス電子部品)、200…積層チップバリスタ(セラミックス電子部品)、210…バリスタ素体(セラミックス電子部品素体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛原子、鉄原子、コバルト原子及びマンガン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属原子の酸化物を含むセラミックス電子部品素体の表面に導電層を形成する工程、及び、前記導電層上に、めっき液を用いて、ニッケルめっき層を形成する工程を経てセラミックス電子部品を得るセラミック電子部品の製造方法であって、
前記めっき液が、
ニッケル塩と、
ニッケルイオンと錯体を形成するアミン化合物とを含み、
pHが6〜12である、
セラミックス電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記アミン化合物が、前記ニッケルイオンとの錯体形成の際における第一段階反応の逐次生成定数K1が4.0〜15.0となるアミン化合物である、請求項1に記載のセラミックス電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記めっき液が還元剤を更に含む請求項1又は2に記載のセラミックス電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記セラミックス電子部品が、チップコンデンサ、チップインダクタ、チップバリスタ、チップレゾネータ、チップサーミスタ又はそれらの複合部品である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミックス電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−248335(P2008−248335A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92468(P2007−92468)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】