説明

アイドルストップ車両

【課題】アイドルストップ車両において、吸入空気量の急変を効率よく検知する。
【解決手段】燃焼を停止する直前の機関回転数の低下度合が小さい場合には、吸入空気量の急変している可能性が高いと判定する。例えば、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1が経過した後の停止直前機関回転数が吸入空気量過多判定回転数よりも大きいことが3回連続した場合に、吸入空気量が急変している可能性が高いと判定する。これによって、アイドルストップの実行機会をなるべく確保すること(アイドル運転で実施される吸入空気量急変判定を最小限とすること)と、アイドル空気量学習値で追従できない吸入空気量の急激な増加(吸入空気量の過多)を確実に検知することとの両立を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイドルストップ車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アイドル回転数が目標回転数にフィードバック制御されるアイドル回転数フィードバック制御時に、フィードバック補正量が所定時間継続して一定値に維持された場合に、アイドル回転数制御系に異常があると判定する技術が開示されている。
【0003】
このようなアイドル回転数制御系の異常は、例えば内燃機関の吸気系に付着したデポジットの剥がれにより、吸入空気量が急変した場合に発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−171639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1のような方法で吸入空気量の急変を判定する場合、つまりフィードバック補正量が所定時間継続して一定値に維持された場合に吸気系に付着したデポジットの剥がれに起因する吸入空気量が急変したと判定する場合には、アイドル運転を所定時間継続させる必要がある。
【0006】
そのため、いわゆるアイドルストップを実施する車両に特許文献1のような吸入空気量の急変判定方法を適用すれば、本来ならばアイドルストップをするタイミングであっても強制的にアイドル運転が継続することになり、アイドルストップを実行する機会が減少して燃費が悪化してしまう虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明のアイドルストップ車両は、燃焼を停止する直前の機関回転数の低下度合を判定する吸入空気量急変予備判定手段により機関回転数の低下度合が小さいと判定された場合には、内燃機関の運転を継続して吸入空気量急変判定手段により吸入空気量の急変の有無を判定し、前記吸入空気量急変予備判定手段により機関回転数の低下度合が小さいと判定されなかった場合には、前記吸入空気量急変判定手段により吸入空気量の急変の有無を判定することなくアイドルストップを実施することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸入空気量の急変の有無を判定するか否かを、回転数の低下度合が小さいかどうかに基づいて決めることにしたので、アイドルストップの実行機会を極力確保しつつアイドル運転時に行う吸入空気量の急変の有無の判定を効率良く行なうことができると共に、吸入空気量制御で用いる学習補正値の精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用されたハイブリッド車両のシステム構成を模式的に示した説明図。
【図2】吸入空気量急変予備判定の概略を示すタイミングチャート。
【図3】吸入空気量急変予備判定による吸入空気量過多仮判定カウンタのカウントアップの一例を示したタイミングチャート。
【図4】吸入空気量急変予備判定による吸入空気量過多仮判定カウンタのカウントアップの一例を示したタイミングチャート。
【図5】吸入空気量急変予備判定の制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明が適用されたハイブリッド車両のシステム構成を模式的に示した説明図である。このハイブリッド車両は、駆動源として例えば直列4気筒のエンジン(内燃機関)1と、発電機としても機能するモータジェネレータ2(以下、モータ2と記す)と、エンジン1とモータ2の動力をディファレンシャルギヤ4を介して駆動輪5に伝達する自動変速機3と、エンジン1とモータ2との間に介装された第1クラッチ6(CL1)と、モータ2と駆動輪5との間に介装された第2クラッチ7(CL2)と、を備えている。
【0012】
エンジン1は、吸気弁(図示せず)のリフト・作動角を連続的に拡大・縮小させることが可能な図示せぬ第1可変動弁機構(VEL)及びそのリフトの中心角の位相を連続的に遅進させることが可能な図示せぬ第2可変動弁機構(VTC)を備えている。
【0013】
自動変速機3は、例えば、前進5速後退1速や前進6速後退1速等の有段階の変速比を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り換える(変速制御を行う)ものである。そして、本実施形態における第2クラッチ7は、自動変速機3の変速要素として設けられている複数の摩擦締結要素のうち、各変速段の動力伝達経路に存在する摩擦締結要素を流用したものであって、実質的に自動変速機3の内部に構成されたものである。
【0014】
このハイブリッド車両は、車両を統合制御するHCM(ハイブリッドコントローラモジュール)10と、ECM(エンジンコントロールモジュール)11、MC(モータコントローラ)12及びATCU(オートマチックトランスミッションコントロールユニット)13を有している。
【0015】
HCM10は、互いに情報交換が可能な通信線14を介して、ECM11、MC12及びATCU13と接続されている。
【0016】
ECM11は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成され、エンジン1の回転数を検知する回転数センサ16、クランク角を検知するクランク角センサ17、排気空燃比を検知するA/Fセンサ18、アクセルペダルの踏み込み量からアクセル開度を検知するアクセル開度センサ19、スロットル開度を検知するスロットルセンサ20、車速を検知する車速センサ21、エンジン1の冷却水温を検知する水温センサ22、大気圧を検知をする大気圧センサ23、吸気温を検知する吸気温センサ24等からの出力信号が入力されている。
【0017】
ECM11は、HCM10からの指令に応じて、エンジン1を制御している。尚、上述した各センサからの情報は、通信線14を介してHCM10に出力されている。
【0018】
MC12は、HCM10からの指令に応じて、モータ2を制御している。また、モータ2は、バッテリ(図示せず)から供給された電力が印加された力行運転と、発電機として機能して前記バッテリを充電する回生運転と、起動及び停止の切り換えと、がMC12によって制御されている。尚、モータ2の出力(電流値)は、MC12で監視されている。つまり、MC12によりモータ出力が検知されている。
【0019】
ATCU13には、前述のアクセル開度センサ19、車速センサ21等からの信号が入力されている。そして、ATCU13は、HCM10からの第2クラッチ制御指令に応じ、変速制御における第2クラッチ制御に優先し、第2クラッチ7の締結・開放を制御する。換言すれば、ATCU13は、HCM10からの変速制御指令に応じて、自動変速機3の変速制御を実施する。
【0020】
尚、第1クラッチ8は、HCM10からの第1クラッチ制御指令に基づいて、締結及び開放が制御されている。
【0021】
HCM10からECM11、MC12、ATCU13等に出力される各種指令信号は、運転状態に応じて算出されるものである。また、HCM10には、前記バッテリの充放電状態に関する情報、すなわち前記バッテリの充電量(SOC)に関する情報や、自動変速機3の入力回転数(図1におけるモータ2と自動変速機3との間の位置における回転数)も入力されている。
【0022】
このようなハイブリッド車両において、車両運転状態に応じてエンジンの自動停止及び自動再始動を行なう、アイドルストップが実施される。ECM11は、所定のアイドルストップ条件が成立すると、燃料噴射を停止することによりエンジン1を停止するアイドルストップを実施する。例えば、冷却水温が所定値以上、車速およびアクセル開度が所定値以下、並びにエンジン回転数がアイドル回転数と等しいなどの条件が成立したときにアイドルストップ条件が成立したものとしてして、アイドルストップが実施される。
【0023】
また、エンジン1の吸気系に設けられたスロットル弁(図示せず)には、EGRによる吹き返し等に伴うデポジットが付着し、同じだけスロットルを開いても、経時的にスロットル開口面積が減少してゆくことがあり得るから、この経時的に付着したデポジットに相当するアイドル空気量学習値を導入し、このアイドル空気量学習値をスロットル開度基本値に加算した値をスロットル開度指令値としている。スロットル開度基本値は、アクセル開度とエンジン回転数に応じて決定される。アイドル空気量の学習は従来から知られた一般的な方法に依ることができる。例えば、ECM11は、アイドル運転時に、エンジン回転数が目標アイドル回転数(例えば800rpm)に近づくようにエンジン1の吸入空気量(吸気量)をフィードバック制御し、所定のインターバルに応じて所定の学習許可条件が成立したときに、アイドル時の吸入空気量のフィードバック補正量(例えば、フィードバック補正量の所定期間の平均値)に基づいてECM11内に記憶させているアイドル空気量学習値(学習補正値)を更新している。このように、条件が成立しさえすればアイドル空気量学習値は定期的に更新されることになる。
【0024】
ところが、車両走行中に前述のデポジットが何らかの理由で剥がれると、定期的に更新される筈のアイドル空気量学習値で追従できない吸入空気量の急激な増加(吸入空気量の過多)によりエンジン1の回転数が吹け上がってしまう虞がある。特にアイドルストップを実施する車両では燃費を向上させるためなるべくアイドルストップを実施しようとするため、アイドル運転時を前提にした学習の機会が得られ難く、アイドル空気量学習値で追従できない可能性が高まる。そこで、このような吸入空気量の急変の有無を判定して、現在のアイドル空気量学習値が十分追従できていないと判断される場合には、アイドル空気量学習値を更新させる必要がある。本実施形態における吸入空気量急変判定は、アイドル運転時のフィードバック補正量が所定時間継続して一定値に維持されること(例えば、アイドル運転時のフィードバック補正量が所定時間継続して下限値に張り付くこと)をもって吸入空気量が急変したと判定している。
【0025】
ここで、吸入空気量急変判定を行なうためには判定完了までアイドル運転を継続していなければならないが、一方で、燃費改善のためには、アイドルストップの実行機会をなるべく確保したいという要求があり、アイドル運転状態で行う吸入空気量急変判定の機会を最小限に留めたい。
【0026】
そこで、本実施形態のハイブリッド車両においては、アイドル運転で実施する吸入空気量急変判定を行うか否かを判定する予備判定(吸入空気量急変予備判定)を実施することで、アイドルストップの実行機会をなるべく確保すること(アイドル運転で実施される吸入空気量急変判定を最小限とすること)と、アイドル空気量学習値で追従できない吸入空気量の急激な増加(吸入空気量の過多)を確実に検知することとの両立を図っている。
【0027】
すなわち、エンジン1の燃焼を停止する際には、予備判定である吸入空気量急変予備判定を実施し、この吸入空気量急変予備判定によりエンジン1の燃焼を停止する際のエンジン回転数の低下度合が小さいと判定された場合に、吸入空気量の急変している可能性が高いと判定し、エンジン1の燃焼停止を中止して吸入空気量急変判定を実施する。そして、この吸入空気量急変判定により、吸入空気量が急変したと判定されると、第1クラッチ11を開放した無負荷状態でのアイドル運転を所定期間行い、この期間中にアイドル空気量学習値を更新する。そして、アイドル空気量学習値を更新した後に、エンジン1の燃焼を停止する。吸入空気量急変判定により、吸入空気量が急変したと判定されなかった場合には、アイドル空気量学習値を更新することなくエンジン1の燃焼を停止する。
【0028】
吸入空気量急変予備判定は、具体的には、エンジン1の燃焼停止直前の回転数の落ち方の遅れから、吸入空気量の過多(アイドル空気量学習値で追従できない吸入空気量の急変)の疑いがあるか否かを判定している。
【0029】
図2は、走行中にエンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1が成立した状況におけるエンジン回転数の挙動を示すタイミングチャートである。走行中にエンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1が成立した場合には、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1となった後に、第1クラッチ6が開放されるため、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1となった後に、エンジン回転数が一旦上昇している。尚、車両停車中のアイドル運転中にエンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1が成立した場合には、第2クラッチ7が開放されていることを前提に、過多判定終了後に第1クラッチ6が開放されることでもよい。
【0030】
図2に示すように、HCM10からECM11にエンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1(例えば1.5秒)の間に、エンジン回転数が機関回転数閾値としての吸入空気量過多判定回転数よりも低い回転数とならない場合(デポジット剥がれ時)には、吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cを一つカウントアップすると共に、エンジン停止可能フラグ(♯STPENA)を「1」とし、エンジン1のアイドルストップを実施する(図2の実線で示される場合)。
【0031】
換言すれば、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1が経過した後の停止直前機関回転数を常に検知し、この停止直前機関回転数が吸入空気量過多判定回転数よりも大きい場合には、吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cを一つカウントアップすると共に、エンジン停止可能フラグ(♯STPENA)を「1」とし、強制的にエンジン1の燃焼を停止、すなわち自動停止する。自動停止したエンジン1は、所定の車両運転条件になると自動的に始動され、自動再始動が行われる。
【0032】
吸入空気量過多判定回転数は、予め実験適合等により設定された値であり、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1となってから所定時間T1経過後のエンジン回転数として、吸入空気量の過多を起こしていないエンジンが取り得るエンジン回転数を除外するように設定されている。例えば、所定時間T1が1.5秒の場合には、吸入空気量過多判定回転数は1800rpmに設定される。
【0033】
尚、アイドル運転状態のときに何らかの要因でエンジン回転数が上昇し予め設定された所定の燃料カット回転数以上となって、燃料カットが行われた場合にも吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cを一つカウントアップしても良い。
【0034】
エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1の間に、エンジン回転数が予め設定されたアイドルストップ(I/S)移行可能回転数(エンジン停止可能回転数)以下になった場合(通常時)には、吸入空気量過多仮判定カウンタがカウントアップを行わず、エンジン停止可能フラグ(♯STPENA)=1となった時点でエンジン1の燃焼を停止する。(図2の破線で示される場合)。I/S移行可能回転数(エンジン停止可能回転数)は、例えば1200rpmに設定される。
【0035】
エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1の間に、エンジン回転数が、I/S移行可能回転数(エンジン停止可能回転数)以下にはならずとも、吸入空気量過多判定回転数以下になれば、この場合にも、吸入空気量過多仮判定カウンタがカウントアップを行わず、
エンジン回転数がI/S移行可能回転数(エンジン停止可能回転数)まで低下したところでエンジン停止可能フラグ(♯STPENA)=1として、エンジン1の燃焼を停止する。
【0036】
エンジン停止可能フラグ(♯STPENA)は、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の状態で、排気性能や第2可変動弁機構(VTC)制御要件等がエンジン1の停止可能な状態であることなどを考慮しつつ、エンジン回転数がI/S移行可能回転数(エンジン停止可能回転数)以下になった場合に、エンジン停止可能フラグ(♯STPENA)=1とECM11内で判定され、HCM10へ送信される。
【0037】
そして、例えば3回連続して吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cがカウントアップされた際に(カウント値C=3となった際に)、吸入空気量の過多の疑いがある(吸入空気量の急変が予備的に判定された)ものとして、次回のエンジン停止時に、吸入空気量過多仮判定フラグ=1(吸入空気量過多判定フラグについては後述の図4を参照)とする。そして、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから強制的にエンジン停止可能フラグ(♯STPENA)=1となるまでの期間を所定時間T1から所定時間T2(例えば5秒)に延長する。この所定時間T2の間は、アイドルストップ条件が成立していてもアイドルストップを行なうことなく(アイドルストップを禁止して)エンジン1の運転(アイドル)を継続し、上述した吸入空気量急変判定を実施する。一方、吸入空気量過多仮判定カウンタが連続してカウントアップされなかった場合には、その時点で吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cをクリアする(ゼロにする)。
【0038】
このように、エンジン回転数の低下度合に基づいて、吸入空気量過多の仮判定をアイドルストップの機会毎に実行することができれば、吸入空気量急変判定のようにアイドル運転を継続する必要がないのに加えて、元々行なわれているアイドルストップの実施機会を捉えることで、車両としては診断以外に追加の制御を必要とすることなく、頻繁に行なわれるアイドルストップにあわせて仮判定ができて極めて効率的である。
【0039】
図3及び図4は、吸入空気量急変予備判定による吸入空気量過多仮判定カウンタのカウントアップの一例を示したタイミングチャートであって、図3は吸入空気量過多仮判定カウンタがカウントアップされカウント値C=3となる過程を示し、図4は、吸入空気量急変予備判定から吸入空気量急変判定に至る過程を示している。
【0040】
図3におけるt1のタイミングでは、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1の間に、エンジン回転数が吸入空気量過多判定回転数よりも低い回転数とならなかったため、吸入空気量過多仮判定カウンタがカウントアップされ、カウント値C=1となっている。
【0041】
t2のタイミングでは、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1の間に、エンジン停止可能フラグ(♯STPENA)=1となったため、吸入空気量過多仮判定カウンタがカウントアップを行わず、その時点で吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cをクリア(カウント値C=0)としている。尚、t2のタイミングは、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1よりも短い時間T3が経過したタイミングである。
【0042】
t3のタイミングでは、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1の間に、エンジン回転数が吸入空気量過多判定回転数よりも低い回転数とならなかったため、吸入空気量過多仮判定カウンタがカウントアップされ、カウント値C=1となっている。
【0043】
t4のタイミングでは、アイドル運転時にエンジン回転数が何らかの要因で吹け上がり、所定の燃料カット回転数以上となって燃料カットが行われたため、吸入空気量過多仮判定カウンタがカウントアップされ、カウント値C=2となっている。このように回転数上昇に伴う燃料カットに基づいても吸入空気量過多仮判定カウンタをカウントアップすることで、吸入空気量過多の仮判定の精度を向上させることができる。
【0044】
t5のタイミングでは、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1の間に、エンジン回転数が吸入空気量過多判定回転数よりも低い回転数とならなかったため、吸入空気量過多仮判定カウンタがカウントアップされ、カウント値C=3となっている。つまり、t5のタイミングでカウント値C=3となり、3回連続して吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cがカウントアップされたことになるので、吸入空気量の過多の疑いがあるものとして、次回エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入った際に、強制的にエンジン停止可能フラグ(♯STPENA)=1となるまでの時間をT1からT2(例えば5秒)に延長する。
【0045】
図4におけるt6、t7、t8のタイミングでは、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1の間に、エンジン回転数が吸入空気量過多判定回転数よりも低い回転数とならなかったため、吸入空気量過多仮判定カウンタがカウントアップされている。
【0046】
そして、吸入空気量過多仮判定カウンタがカウント値C=3の状態で、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ったt9のタイミングでは、吸入空気量過多仮判定フラグ=1となり、強制的にエンジン停止可能フラグ(♯STPENA)=1となるまでの時間がT1からT2に延長され、この所定時間T2の間に上述した吸入空気量急変判定を実施する。
【0047】
図5は、ECM11内で実施される吸入空気量急変予備判定の制御の流れを示すフローチャートである。
【0048】
S1では、エンジン1がアイドル運転状態であるか否かを判定し、アイドル運転状態であればS2へ進み、アイドル運転状態でなければS3へ進む。
【0049】
S2では、アイドル運転状態において何らかの要因でエンジン回転数が上昇し予め設定された所定の燃料カット回転数以上となって燃料カットが行われたか否かを判定し、燃料カットが行われていない場合にはS3へ進み、燃料カットが行われた場合にはS6へ進む。
【0050】
S3では、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1となっているか否かを判定し、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1であればS4ヘ進み、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1でなければ今回のルーチンを終了する。
【0051】
S4では、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから所定時間T1(例えば1.5秒)経過したか否かを判定し、経過している場合にはS5へ進み、経過していない場合にはS9へ進む。
【0052】
S5では、エンジン回転数が吸入空気量過多判定回転数以上であるか否かを判定し、エンジン回転数が吸入空気量過多判定回転数以上であればS6へ進んで吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cを一つカウントアップし、エンジン回転数が吸入空気量過多判定回転数以上でなければS10へ進んで吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cをクリアする(ゼロにする)。S2で回転数上昇による燃料カットが行なわれたと判断されて、S6へ進んできた場合にも、吸入空気量過多仮判定カウンタをカウントアップすることで、吸入空気量過多の仮判定の精度を向上させることができる。
【0053】
S6から進むS7では、吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cが所定値以上、すなわちカウント値C=3となっているか否かを判定し、S6でカウント値Cを一つカウントアップしたことでカウント値C=3となっている場合にはS8ヘ進み、そうでない場合には今回のルーチンを終了する。
【0054】
そして、S8では、次回のエンジン停止時に、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから強制的にエンジン停止可能フラグ(♯STPENA)=1となるまでの時間をT1からT2(例えば5秒)に延長し、この所定時間T2の間に、上述した吸入空気量急変判定を実施する。
【0055】
S9では、エンジン回転数がI/S移行可能回転数(エンジン停止可能回転数)以下であるか否を判定し、エンジン回転数がI/S移行可能回転数(エンジン停止可能回転数)以下であればS10へ進んで吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cをクリアし、エンジン回転数がI/S移行可能回転数(エンジン停止可能回転数)以下でなければ今回のルーチンを終了する。
【0056】
以上説明してきたように、本発明が適用されたハイブリッド車両、すなわち本発明のアイドルストップ車両は、吸入空気量の急変の有無の判定を行なうか否かを、回転数の低下度合が小さいかどうかに基づいて決めることにしたので、アイドルストップの実行機会を極力確保しつつアイドル運転時に行う吸入空気量の急変の有無の判定を効率良く行なうことができると共に、吸入空気量制御で用いる学習補正値の精度を確保することができる。特に、エンジン回転数の低下度合に基づいて、吸入空気量過多の仮判定をアイドルストップの機会毎に実行することができれば、吸入空気量急変判定のようにアイドル運転を継続する必要がないのに加えて、元々行なわれているアイドルストップの実施機会を捉えることで、車両としては診断以外に追加の制御を必要とすることなく、頻繁に行なわれるアイドルストップにあわせて仮判定ができて極めて効率的である。
【0057】
また、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから強制的にエンジン停止可能フラグ(♯STPENA)=1となるまでの所定時間T1、空気量過多判定回転数、吸入空気量急変予備判定により吸入空気量の過多の疑いがあると判定する際の吸入空気量過多仮判定カウンタのカウント値Cの値を、適用する車両に応じて適宜設定することで、どんな条件下においても、吸入空気量の急変の有無の判定を行なうか否かを効率良く決めることができる。
【0058】
尚、吸入空気量急変予備判定の結果、吸入空気量の過多の疑いがあると判定され、エンジン停止予告フラグ(♯PRESTP)=1の信号が入ってから強制的にエンジン停止可能フラグ(♯STPENA)=1となるまでの時間をT1からT2(例えば5秒)に延長し、この所定時間T2の間に、上述した吸入空気量急変判定を実施しようとする際に、所定時間T2の間にエンジン停止可能フラグ(♯STPENA)=1となった場合には、吸入空気量の過多の疑いがないものとして、吸入空気量急変判定を実施しないようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…エンジン
2…モータジェネレータ
3…自動変速機
4…ディファレンシャルギヤ
5…駆動輪
6…第1クラッチ
7…第2クラッチ
10…HCM
11…ECM
12…MC
13…ATCU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイドル運転時の内燃機関の回転数が目標アイドル回転数となるようにフィードバック制御するアイドル回転数フィードバック制御手段と、アイドル回転数フィードバック制御時に用いられるフィードバック補正量に基づき、前記内燃機関の吸入空気量制御で用いる学習補正値を算出する学習補正値算出手段と、アイドル運転時に前記学習補正値による補正で追従できない吸入空気量の急変の有無を判定する吸入空気量急変判定手段と、を備え、車両運転状態に応じてアイドルストップを実施すると共に、吸入空気量急変判定手段により吸入空気量が急変していると判定された際にはアイドルストップ条件が成立していても内燃機関の運転を継続して、前記学習補正値を更新してからアイドルストップを実施するアイドルストップ車両において、
燃焼を停止する直前の機関回転数の低下度合を判定する吸入空気量急変予備判定手段を有し、
前記吸入空気量急変予備判定手段により機関回転数の低下度合が小さいと判定された場合には、前記内燃機関の運転を継続して前記吸入空気量急変判定手段により吸入空気量の急変の有無を判定し、
前記吸入空気量急変予備判定手段により機関回転数の低下度合が小さいと判定されなかった場合には、前記吸入空気量急変判定手段により吸入空気量の急変の有無を判定することなくアイドルストップを実施することを特徴とするアイドルストップ車両。
【請求項2】
前記吸入空気量急変予備判定手段は、燃焼を停止させることが決まってから予め設定された所定時間が経過した後の停止直前機関回転数を検知し、これを予め設定された所定の機関回転数閾値と比較することにより機関回転数の低下度合いが小さいか否かを判定していることを特徴とする請求項1に記載のアイドルストップ車両。
【請求項3】
前記吸入空気量急変予備判定手段は、前記停止直前機関回転数が、前記機関回転数閾値よりも大きいことが所定回数連続した場合に、機関回転数の低下度合いが小さいと判定することを特徴とする請求項2に記載のアイドルストップ車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−190695(P2011−190695A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55217(P2010−55217)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】