説明

アダマンチルアルカンポリオール、アダマンチルアルカン(メタ)アクリレート、それらの製造方法及び同ジ(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物ならびに光学電子部品材料

【課題】新規なアダマンチルアルカンポリオール、アダマンチルアルカン(メタ)アクリレート、およびそれらの製造方法、並びにジ(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物の提供。
【解決手段】一般式(I)で示されるアダマンチルポリオール例えば(Y)qがHでかつアダマンタン骨格の1位で(X)pが、1.3−ジヒドロキシ−2−プロピル基が結合したものを、対応するアダマンチルアルカンジカルボン酸類を還元することにより製造し、さらに該ポリオールをメタアクリル酸と縮合してビスアダマンチルアルカンメタアクリレートを製造する。この化合物は半導体用フォトレジスト、光半導体用封止剤、光学電子部品材料として好適な、光学特性、長期耐熱性、誘電率など電気特性に優れた硬化物を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なアダマンチルアルカンポリオール、多官能アダマンチルアルカン(メタ)アクリレート(以下、「多官能」という文言は省略する)、それらの製造方法及び同ジ(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物ならびに光学電子部品材料等に関する。より詳しくは、本発明は半導体用フォトレジスト、光半導体用封止剤、光学電子部品材料(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルムなど)及びこれらの接着剤等として好適な、透明性、耐光性などの光学特性、長期耐熱性、誘電率など電気特性に優れた硬化物を与えるアダマンチルアルカンジ(メタ)アクリレート、その原料であるアダマンチルアルカンポリオール、それら製造方法ならびにアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンは、シクロヘキサン環が4個、カゴ形に縮合した構造を有し、対称性が高く、安定な化合物であり、その誘導体は、特異な機能を示すことから、医薬品原料や高機能性工業材料の原料などとして有用であることが知られている。
アダマンタン骨格を有するモノ(メタ)アクリル酸エステル類を、その酸感応性、ドライエッチング耐性、紫外線透過性などを利用して、フォトレジスト用樹脂原料として、使用することが試みられている(例えば、特許文献1参照)。
また、アダマンタンは、それを含む樹脂組成物の硬化物が、例えば、光学特性や耐熱性などを有することから、光ディスク基板、光ファイバーあるいはレンズなどに用いることが試みられている(例えば、特許文献2及び3参照)。
従来、光学部材用の樹脂には透明性や耐光性に優れるアクリル系樹脂が一般に多用されてきた。一方、光・電子機器分野に利用される光学部材用の樹脂には、電子基板等への実装プロセスや高温動作下での耐熱性や機械特性が求められ、エポキシ系樹脂がよく用いられていた。一般にエポキシ系樹脂は可視域の透明性は高いが、紫外から近紫外域では十分な透明性が得られない。中でも脂環式ビスフェノールA ジグリシジルエーテル等(例えば、特許文献4及び5参照)は比較的透明性が高いが、熱や紫外線により着色し易い等の問題があり、さらなる耐熱、耐紫外線着色性の向上が求められている。
前記のように、透明性や耐光性のような光学特性に優れるアクリル系樹脂の欠点である耐熱性の向上も検討され、多官アクリレートモノマーを用いた架橋アクリル樹脂が検討されている。特に脂環式アクリレートの硬化物は、ガラス転移温度が高い、硬化収縮率が小さい、吸湿率が小さいことから、脂環式アクリレートを含むアクリレート共重合体に関する技術は多数開示されている。
例えば、光学接着剤に使用されるエステル部に炭素数5〜22の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンオキサイドを有する多官能(メタ)アクリレートによる組成物が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
しかし、特許文献6にて開示された技術は、その実施例に示されているように、接着剤としての実装時の耐熱性を満足させるものではあるが、構造体としての耐熱性や機械特性については不十分である。
したがって、アクリル系樹脂組成物において、その硬化物の光学的透明性が高く、耐光性、耐熱性、機械特性に優れ、硬化収縮の小さい、光学部材に好適な樹脂組成物が望まれている。
【0003】
【特許文献1】特開平4−39665号公報
【特許文献2】特開平6−305044号公報
【特許文献3】特開平9−302077号公報
【特許文献4】特開2003−171439号公報
【特許文献5】特開2004−75894号公報
【特許文献6】特開平11−61081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、半導体用フォトレジスト材料、カラーレジスト材料及び光半導体用封止剤、光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルムなど)及びこれらの接着剤として好適な、透明性、耐光性などの光学特性、長期耐熱性、誘電率など電気特性に優れた硬化物を与えるアダマンタン誘導体およびそれを含む樹脂組成物、その樹脂組成物を用いた半導体用封止剤、光学電子部材を提供することを目的とするものである。
また、硬化時の収縮の小さい樹脂組成物を提供するものであり、この樹脂組成物を用いて光学的透明性が高く、耐光性、耐熱性、機械特性に優れ、硬化収縮の小さい硬化物からなる光学部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造を有するアダマンタン誘導体を用いることにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)一般式(I)
【0006】
【化1】

【0007】
〔式中、Yはフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる基を表し、qは0〜15の整数である。qが2以上の場合、2つのYが一緒になって形成された=Oであってもよく、複数のYは同一であっても異なっていても良い。Xは
下記一般式(II)
【0008】
【化2】

【0009】
で表わされる一価の基を表わし、pは1〜4の整数である。pが2以上の場合、複数のXは同一であっても異なっていても良い。p+qは1〜16の整数である。R1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる基又はトリフルオロメチル基を表わす。n、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わす。ただし、nおよびmがともに0になることはない〕
で表されるアダマンチルアルカンポリオール、
(2)アダマンチルヒドロキシアルカンモノもしくはジカルボン酸類またはアダマンチルアルカンジカルボン酸類を還元することを特徴とする前記一般式(I)で表されるアダマンチルアルカンポリオールの製造方法、
(3)下記一般式(III)
【0010】
【化3】

【0011】
〔式中、Yはフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる基を表し、qは0〜15の整数である。qが2以上の場合、2つのYが一緒になって形成された=Oであってもよく、複数のYは同一であっても異なっていても良い。X´は下記一般式(IV)
【0012】
【化4】

【0013】
で表わされる一価の基を表わし、pは1〜4の整数である。pが2以上の場合、複数のX´は同一であっても異なっていても良い。p+qは1〜16の整数である。R1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる基又はトリフルオロメチル基を表わす。R2は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表わす。n、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わす。ただし、nおよびmがともに0になることはない〕
で表されるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレート、
(4)qが0、R1およびR2が水素原子、nおよびmが1である上記(3)に記載のアダマンチルアルカン(メタ)アクリレート、
(5)上記(1)に記載のアダマンチルアルカンポリオールと(メタ)アクリル酸類とを反応させることを特徴とする前記一般式(III)で表されるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートの製造方法、
(6)前記一般式(III)で表されるアダマンチルアルカンアダマンチルアルカン(メタ)アクリレート、そのマイケル付加物および重合開始剤を含む樹脂組成物、
(7)上記(6)に記載の樹脂組成物を加熱又は光照射により硬化させてなる硬化物、
(8)上記(3)または(4)に記載のアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを用いた光学電子部品材料、カラーレジスト材料、光記録材料、または保護膜、
(9)上記(6)に記載の樹脂組成物を用いた光学電子部品材料、カラーレジスト材料、光記録材料、または保護膜を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアダマンチルアルカンポリオールはアダマンタン骨格を有するポリオール化合物であり、このアルカンポリオールと(メタ)アクリル酸類とをエステル化して得られたアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを含む硬化物は耐熱性、接着性に優れており且つエッチング耐性も備えていることから半導体用フォトレジスト、半導体用反射防止膜など、半導体形成材料としても有用である。
また、本発明のアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを主成分として含有する樹脂組成物は透明性、耐光性など光学特性、耐熱性及び誘電率など電気特性に優れる硬化物を与え、カラーレジスト、光半導体用封止剤、光学電子部材(例えば光導波路、光通信用レンズ、および光学フィルムなど)およびこれらの接着剤等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
一般式(I)および(III)において、Yはフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる基を表す。Yが複数ある場合、2つのYが一緒になって形成された=Oであってもよく、複数のYは同一であっても異なっていても良い。好ましくはYは水素原子である。
1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる基又はトリフルオロメチル基を表わす。好ましくはR1は水素原子である。R2は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表わす。
XおよびX´の個数pはそれぞれ1〜4の整数、好ましくはpは1〜2である。Yの個数qは0〜15の整数、好ましくはqは0〜5である。p+qは1〜16である。n、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わす。ただし、nおよびmがともに0になることはない。nおよびmは、好ましくはいずれも1である。
YおよびR1における炭素数1〜10の炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基、ビニル基およびアセチル基等およびシクロペンチル基、シクロヘキシル基のような環状の炭化水素基が挙げられる。
炭素数1〜10のアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基のような各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基などが挙げられる。
また、これらのアルキル基等には、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0016】
本発明において、(メタ)アクリル酸類とはアクリル酸、メタクリル酸またはα-トリフルオロメチルアクリル酸、及びそれらの誘導体を指す。また、(メタ)アクリレートはアクリレート、メタクリレートまたはα-トリフルオロメチルアクリレートを指す。
本発明のアダマンチルアルカンポリオールはアダマンチルアルカンモノまたはジカルボン酸類を還元する一般的な方法により製造することができる。
すなわち、アダマンチルヒドロキシアルカンモノもしくはジカルボン酸、アダマンチルアルカンジカルボン酸、またはそれらの低級アルキルエステル(以下、被還元処理化合物と称することがある)を還元剤で還元処理する方法や金属触媒を用いた水素添加法などにより、目的のアダマンチルアルカンポリオールを製造することができる。
還元剤としては、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウソ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、LiAlH(O-R)3〔Rは炭素数2〜4のアルキル基〕、ジボラン、ボラン/THF錯体、ボラン/1,2-ビス(t-ブチルチオ)エタン錯体、ボラン/t-ブチルアミン錯体、ボラン/N,N-ジエチルアニリン錯体、ボラン/ジメチルアミン錯体、ボラン/ジメチルスルフィド錯体、ボラン/モルフォリン錯体、ボラン/ピリジン錯体、ボラン/トリエチルアミン錯体、ボラン/トリメチルアミン錯体、ボラン/トリフェニルホスフィン錯体などを用いることができる。
還元剤を用いて被還元処理化合物を還元処理してアダマンチルアルカンポリオールを製造する場合、還元剤の使用量は被還元処理化合物のカルボキシル基1モルに対して、通常、2〜10倍モル、好ましくは2〜5倍モルである。
また、金属触媒を用いる水素添加法の場合、金属触媒の使用量は被還元処理化合物に対して、通常、0.01〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
ちなみに、アダマンチルアルカンモノまたはジカルボン酸エステル類は1,3-ジデヒドロアダマンタンとジカルボン酸エステルとの反応、もしくは、酸触媒下で、ヒドロキシアダマンタン類とジカルボン酸エステルとの反応により合成することができる。
一般式(I)で表されるアダマンチルアルカンポリオールの具体例としては、1-(1-アダマンチル)ジエタノール、2-(1-アダマンチル)ジプロパノール、1-(1-アダマンチル)ジブタノール、2-(1-アダマンチル)ジブタノール、1-(1-アダマンチル)ジペンタノール、2-(1-アダマンチル)ジペンタノール、3-(1-アダマンチル)ジペンタノールなどが挙げられる。これらの場合、一般式(I)におけるR1は水素原子である。
【0017】
<有機溶媒>
還元または水素化反応においては、一般的な有機溶媒を使用することが可能であり、この有機溶媒としては、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、THF、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、DMSO、HMPA、DMF、スルホラン等が挙げられる。
有機溶媒の使用量は被還元処理化合物に対して、通常7〜40倍量(質量比)程度、好ましくは10〜25倍量である。
有機溶媒の使用量を7倍量以上とすることにより、反応で発生する発熱量を制御しやくすることができ、40倍量以下とすることにより、溶媒量が適量となり、除熱、反応効率、ハンドリング性が向上する。
【0018】
<反応温度>
還元剤を用いる方法では、反応温度は通常−100〜200℃程度、好ましくは−50〜100℃である。−100℃以上にすることにより工業化が容易になり、200℃以下とすることにより、安定した反応を進行させることができる。
水素添加法では、反応温度は、通常0〜300℃程度、好ましくは常温〜200℃である。0℃以上とすることにより、容易に反応が進行させることができ、300℃以下とすることにより、特別な装置を必要とすることなしに産業上利用可能となる。
【0019】
<圧力>
いずれの反応においても、圧力は特に限定されるものではない。還元剤を用いる方法では、装置の簡便さから常圧で行うことが望ましい。また、水素添加法では、水素添加効率の観点から常圧〜20MPa、望ましくは常圧〜10MPaである。
【0020】
<精製>
得られた前記一般式(I)で表されるアダマンチルアルカンポリオールは、必要に応じて、精製を行うことができる。精製方法としては、蒸留、晶析、カラムクロマトグラフィーなど一般的なの精製方法の中から、製造スケール、必要な純度を考慮して、選択することができる。
【0021】
次に、本発明の一般式(III)で表されるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレート〔アダマンタン硬化性誘導体〕の製造方法について述べる。
目的とするアダマンタン硬化性誘導体を得る方法としては通常知られている共沸脱水法、酸無水物法、酸クロリド法、縮合法を用いて、上記アダマンチルアルカンポリオールと(メタ)アクリル酸類をエステル化反応させればよい。
使用される(メタ)アクリル酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-トリフルオロメチルアクリル酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水α-トリフルオロメチルアクリル酸、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、α-トリフルオロメチルアクリル酸クロリドなどが挙げられる。
エステル化反応におけるアダマンチルアルカンポリオールと(メタ)アクリル酸類のモル比は理論的には前者/後者=1/2であるが、樹脂組成物の硬化性の観点から後者を前者より5〜20モル%程度多く使用するのが好ましい。5モル%以上とすることにより、硬化性を有さない前者が残らないようにし、20モル%以下とすることにより、樹脂組成物中の(メタ)アクリル酸類が過剰になって硬化性が低下するのを防止することができる。
【0022】
以下、各方法における反応条件を記載する。
<共沸脱水法の場合>
共沸脱水剤の存在下、一般式(I)で表わされるアダマンチルアルカンポリオールと(メタ)アクリル酸類とのエステル化反応により一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを製造することができる。
反応温度は50〜200℃程度、望ましくは100〜180℃である。50℃以上とすることにより、反応速度が低下して反応時間が長くなるのを防止し、200℃以下とすることにより、温度が高すぎて副反応が生じたり着色が激しくなるのを防止する。
圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaである。10MPa以下とすることにより、安全上の問題を緩和するための特別な装置を必要とせず、産業上有用である。
用いられる触媒としては、硫酸、p−トルエンスルホン酸等をアダマンチルアルカンポリオールに対して通常0.01モル%〜20モル%程度、好ましくは0.05〜10モル%である。
用いられる共沸脱水剤(溶媒)としては、アダマンチルアルカンポリオールの溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。この時、アダマンチルアルカンポリオールは懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。
具体的には、ヘプタン、ノナン、デカン、ウンデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、DMF、NMP、DMAc、DMSO及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。
必要に応じて用いられる重合禁止剤としては、ヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジンなどが挙げられる。重合禁止剤の使用量はアダマンチルアルカンポリオールに対して、通常10〜10000質量ppm程度、好ましくは50〜5000質量ppmである。
反応時間は、通常1分〜24時間、望ましくは1時間〜10時間である。
【0023】
<酸クロリド法の場合>
酸クロリド存在下、アダマンチルアルカンポリオールと前記(メタ)アクリル酸類の中のアクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、α-トリフルオロメチルアクリル酸クロリド等から一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを製造することができる。
反応温度は、通常−50〜100℃程度、望ましくは0〜50℃である。−50℃以上とすることにより、特別な装置を必要とせず、産業上有用である。100℃以下とすることにより、副反応が生じたり着色が激しくなるのを防止する。
圧力は、絶対圧力で通常0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaである。10MPa以下とすることにより、安全上の問題を緩和するための特別な装置を必要とせず、産業上有用である。
酸クロリドの使用量は一般式(I)で表されるアダマンチルアルカンポリオール1モルに対して、理論的には2モルであるが、通常、2〜10モル程度、好ましくは2〜4モルである。
酸クロリドの使用量を2モル以上とすることにより、反応の進行が早くなり、4モル以下とすることにより、後処理の中和工程が容易となるので好ましい。
酸クロリド法の場合、反応により発生する酸の捕捉剤として、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどの有機アミンや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウムなどの無機塩基を使用することが好ましい。一般式(I)で表されるアダマンチルアルカンポリオールに対する塩基の使用割合は、塩基/アダマンチルアルカンポリオール(モル比)が0.5〜5程度となる量であり、好ましくは1〜3となる量である。
溶媒、重合禁止剤および反応時間については、上記共沸脱水法の場合と同じである。
【0024】
<酸無水物法の場合>
アダマンチルアルカンポリオールと前記(メタ)アクリル酸類の中の無水アクリル酸、無水メタクリル酸または無水α−トリフルオロメチルアクリル酸とを反応させて、一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを製造することができる。
酸無水物の使用量は一般式(I)で表わされるアダマンチルアルカンポリオール1モルに対して理論的には1モルであるが、通常、1〜10モル程度、好ましくは1〜5モルである。
反応温度は50〜100℃、望ましくは0〜50℃である。50℃以上とすることにより、特別な装置を必要とせず、産業上有用である。100℃以下とすることにより、温度が高すぎて副反応が生じたり着色が激しくなるのを防止する。
圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPa、望ましくは常圧〜1MPaである。10MPa以下とすることにより、安全上の問題を緩和するための特別な装置を必要とせず、産業上有用である。
触媒として塩基を用いることができ、同塩基としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどの有機アミンや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウムなどの無機塩基を使用することができる。
塩基の使用割合は、塩基/アダマンチルアルカンポリオール(モル比)が0.5〜5程度となる量であり、好ましくは1〜3となる量である。
溶媒、重合禁止剤および反応時間については、上記共沸脱水法の場合と同じである。
精製方法としては、蒸留、晶析、カラム分離などが可能であり、生成物の性状と不純物の種類により精製方法を選択することができる。
【0025】
<縮合法の場合>
縮合剤の存在下、アダマンチルアルカンポリオールと前記(メタ)アクリル酸類との反応により一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを製造することができる。
反応温度は、通常−20〜200℃程度、望ましくは0〜100℃である。−20℃以上とすることにより、反応速度が低下して反応時間が長くなるのを防止する。200℃以下とすることにより、温度が高すぎて副反応が生じたり着色が激しくなるのを防止する。
圧力は絶対圧力で通常、0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaである。10MPa以下とすることにより、安全上の問題を緩和するための特別な装置を必要とせず、産業上有用である。
縮合法の場合、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドのような縮合剤が用いられる。使用量は、アダマンチルアルカンポリオール1モルに対して、縮合剤が1〜5モル程度となる量であり、好ましくは1〜3モルとなる量である。
反応が遅い場合には、塩基を加えてもよい。塩基としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどの有機アミンや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウムなどの無機塩基を使用することができる。アダマンチルアルカンポリオールに対する塩基の使用割合は、塩基/アダマンチルアルカンポリオール(モル比)が0.5〜5程度となる量であり、好ましくは1〜3となる量である。
溶媒としては、アダマンチルアルカンポリオールの溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いる。この時、アダマンチルアルカンポリオールは懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。具体的には、ノナン、デカン、ウンデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、DMF、NMP、DMAc、DMSO及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。
必要により、ヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等の重合禁止剤をアダマンチルアルカンポリオールに対して、10〜10000質量ppm、好ましくは50〜5000質量ppm添加しても良い。
反応時間は、通常1分〜24時間程度、望ましくは1時間〜10時間である。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、上記各製造方法で得られた一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートに熱重合開始剤または光重合開始剤を混合し、成型するための金型への注入、あるいはコーティングにより所望の形状にした後に、加熱硬化あるいは紫外線等の活性エネルギー線照射等で光硬化する。この時、一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを単独で用いてもよく、あるいは耐熱性や機械物性等に悪影響を与えない限りにおいて他の重合性モノマーを含んでもよい。そのような重合性不飽和基を有する化合物として例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタン1,3−ジオールジ(メタ)アクリレート、アダマンタン1,3−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタン1,3−ジエタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0027】
上記、一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを主成分とする樹脂組成物には、重合開始剤を添加することが好ましい。熱により硬化させる場合には熱重合開始剤、活性エネルギー線によって硬化させる場合には光重合開始剤が添加される。
熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等などの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジケタール類、チオキサントン類、アシルフォスフィンオキサイド類、アシルフォスフィン酸エステル類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ヨードシル塩、芳香族スルホキソニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。
重合開始剤の添加量は樹脂組成物全量に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、熱重合開始剤も光重合開始剤とも単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、本発明の樹脂組成物は一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを主成分とし、そのマイケル付加物も含有する。マイケル付加物は、共沸脱水法で合成する際、(メタ)アクリル酸等が一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートのアクリロイル基等に付加した化合物である。したがって、樹脂組成物中の含有量は50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。50質量%以下にすることで、耐熱性、曲げ強度などの物性値が低下することがない。
共沸脱水法にて、酸強度、酸の量、(メタ)アクリル酸量を増やすような条件で反応させるとマイケル付加物の含有量が多くなる。
上記のようにして得られた一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを主成分とする樹脂組成物から得られる硬化物は、通常、硬化収縮率が10%以下であり、硬化物の耐熱性すなわちガラス転移温度が100℃以上であり、硬化物の機械強度、すなわち、250℃での曲げ強度が2.0MPa以上、同曲げ弾性率が2500MPa以上、かつ、温度85℃/相対湿度85%での飽和吸湿率が1.5質量%以下である。
【0029】
本発明の硬化物は上記樹脂組成物を加熱または光硬化することにより得ることができる。熱硬化温度は、通常、30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である
光硬化においては、例えば紫外線のような活性エネルギー線照射により硬化物を得ることができる。照射強度はモノマーや重合開始剤の種類、硬化物の膜厚などから決められるので任意であるが、通常、100〜5000mJ/cm2程度、好ましくは500〜4000mJ/cm2である。なお、活性エネルギー線として、電子線を用いる場合は光重合開始剤は使用しなくてもよいか、少量の使用でよい。
本発明で得られた樹脂組成物の硬化物は透明性、(長期)耐光性などの光学特性、耐熱性に優れており、良好な機械物性を与え、線膨張係数や硬化収縮率が低い。そのため、各種コーティング剤、レンズ、マイクロレンズ、フィルムコンデンサー、ナノインプリント法で形成されるパターン形成体などとして好適に用いることができる。
【0030】
このように本発明の一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを主成分とする樹脂組成物の硬化物は、優れた特性を有するので、光半導体(LEDなど)、フラットパネルディスプレイ(有機EL素子など)、電子回路、光回路(光導波路)用の樹脂(封止剤、接着剤)、光通信用レンズ及び光学用フィルムなどの光学電子部材に好適に用いることができる。
このため、本発明の一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを主成分とする樹脂組成物は、半導体素子/集積回路(IC他),個別半導体(ダイオード、トランジスタ、サーミスタなど)として、LED(LEDランプ、チップLED、受光素子、光半導体用レンズ),センサー(温度センサー、光センサー、磁気センサー)、受動部品(高周波デバイス、抵抗器、コンデンサなど)、機構部品(コネクター、スイッチ、リレーなど)、自動車部品(回路系、制御系、センサー類、ランプシールなど)、接着剤(光学部品、光学ディスク、ピックアップレンズ)などに用いられ、表面コーティング用として光学用フィルムなどにも用いられる。また、本発明の樹脂組成物に用いる一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートはアダマンタン骨格を有する(メタ)アクリレートであり、その硬化物は耐熱性、接着性に優れており、且つ、エッチング耐性も備えていることから、半導体用封止剤、半導体用反射防止膜など半導体形成材料としても有用である。
したがって、本発明は、前述の本発明の樹脂組成物を用いてなる光半導体用封止剤、電子回路用封止剤、光導波路、光通信用レンズ、有機EL素子用封止剤及び光学フィルムにも提供する。
【0031】
光半導体(LEDなど)用封止剤としての構成は、砲弾型あるいはサーフェスマウント(SMT)型などに素子に適用でき、金属やポリアミド上に形成されたGaNなどの半導体と良好に密着し、さらにYAGなどの蛍光色素を分散しても使用できる。さらに、砲弾型LEDの表面コート剤、SMT型LEDのレンズなどにも使用可能である。
有機エレクトロルミネッセンス(EL)用に適用する際の構成は、一般的なガラスや透明樹脂などの透光性基板上に、陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子に適用可能である。有機EL素子の封止材として、金属缶や金属シートあるいはSiNなどのコーティングされた樹脂フィルムをEL素子にカバーする際の接着剤、あるいは本発明の樹脂組成物の硬化物にガスバリアー性を付与するために無機フィラーなどを分散することで、直接、EL素子を封止することも可能である。表示方式として、現在、主流のボトムエミッション型にも適用可能であるが、今後、光の取出し効率などの点で期待されるトップエミッション型に適用することで、本発明の樹脂組成物の透明性や耐熱性の効果を活かせる。
【0032】
光回路に使用する際の構成は、シングルモードやマルチモード用の熱光学スイッチやアレイ導波路型格子、合分波器、波長可変フィルター、あるいは光ファイバーのコア材料やクラッド材料にも適用できる。また、導波路に光を集光するマイクロレンズアレイやMEMS型光スイッチのミラーにも適用できる。また、光電変換素子の色素バインダーなどにも適用可能である。
光学用フィルムとして用いる際の構成は、液晶用のフィルム基板、有機EL用フィルム基板などのディスプレイ用として、あるいは光拡散フィルム、反射防止フィルム、蛍光色素などを分散することによる色変換フィルムなどに適用可能である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
〔実施例1〕
<2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3−ジオールの合成>
1000ミリリットルの4つ口フラスコに温度計、撹拌棒、3方コック、滴下ロートを取り付けて内部を窒素置換したのち、乾燥エーテル200ミリリットルを仕込み、0℃に冷却した。この容器にゆっくりとLiAH4[12.66g(0.334モル)]を供給した。その後、アダマンチルマロン酸メチルエステル[44.4g(0.17モル)]を乾燥エーテル200ミリリットル中に溶解した溶液を滴下ロートから滴下した。この時、内温が5℃以上にならない程度の速度で滴下した。滴下終了1時間後、室温に戻し、40℃で4時間加熱をおこない、ガスクロマトグラフィー分析により、アダマンチルマロン酸メチルエステルの消失を確認した。反応液を氷と2NのHClの入ったビーカーに少しづつ移し、過剰のLiAH4を失活させた。反応液を分液ロートに移し、酢酸エチル500ミリリットルで2回抽出した。有機相を集め、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を濃縮したところ、一般式(I)で表わされるアダマンチルアルカンポリオールの具体例のひとつである2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3−ジオール〔一般式(I)におけるqが0、pが1、R1が水素原子、nおよびmがいずれも1である化合物〕27gを得た(アダマンチルマロン酸メチルエステル基準の収率77モル%)。
【0034】
スペクトルデータ
<核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl3)>
日本電子株式会社製 JNM−ECA500
1H−NMR(500MHz):3.8/4.0(d、4H)、1.9(h、3H)、1.64-1.68(i、6H)、1.58(g、6H)
13C-NMR(125MHz):63.8(d)、51.8(e)、40.3(g)、37.1(i)、33.9(f)、28.6(h)
【0035】
〔実施例2〕
<共沸脱水法による2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3-ジイルビスアクリレートの合成>
ディーンスターク付き還流冷却管、攪拌機、温度計、エアー導入管を備え付けた2リットルの4口フラスコに、実施例1で合成した2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3−ジオール8g(0.038モル)、アクリル酸6.03g(0.084モル)、共沸脱水剤であるヘプタン80ミリリットル、p-トルエンスルホン酸一水和物41.45g、メトキノン10ミリグラムを仕込み、120℃のオイルバスに浸漬して加熱還流させた。
反応の進行により生成してくる水を反応系外に抜きながら2時間反応させた。その後、反応液を室温にまで放冷し、分液ロートに移した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100ミリリットルで1回、イオン交換水100ミリリットルで1回、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液100ミリリットルで1回洗浄した。有機層を分液して無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を留去し液状の粗生成物を得た。
これにシリカゲル10gを加え30分攪拌した後、シリカゲルをろ過、ヘプタンを留去し、下記式〔前記一般式(III)の具体例のひとつ〕で表わされる2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3-ジイルビスアクリレート(無色透明液状)9.7gを得た〔2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3−ジオール基準の収率:79モル%〕。GPC分析により、マイケル付加物の含有量は20質量%であることを確認した。
【0036】
【化5】

【0037】
<スペクトルデータ>
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl3)の測定は日本電子株式会社製のJNM−ECA500を用いて行った。
1H−NMR(500MHz):6.4(a1、2H)、6.1(b、2H)、5.8(a2、2H)、4.2/4.4(d、4H)、2.0(h、3H)、1.7-1.72(i、6H)、1.64-1.66(g、6H)
13C-NMR(125MHz):166.2(c)、130.7(a)、128.5(b)、61.8(d)、47.2(e)、40.3(g)、36.9(i)、34.2(f)、28.5(h)
GC-MS(株式会社島津製作所製、GC-MS-QP2010):318(2%)、135(100%)、93(13.0%)、79(12.4%)、55(31.6%)
【0038】
〔実施例3〕
<2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3-ジイルビスメタクリレートの合成>
ディーンスターク付き還流冷却管、攪拌機、温度計、エアー導入管を備え付けた2リットルの4口フラスコに、2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3−ジオール8g(0.038モル)、メタクリル酸9.8g(0.114モル)、ヘプタン80ミリリットル、p-トルエンスルホン酸一水和物41.45g、メトキノン10ミリグラムを仕込み、120℃のオイルバスに浸漬して加熱還流させた。
反応の進行により生成してくる水を反応系外に除去しながら3時間反応させた。その後、反応液を室温にまで放冷し、分液ロートに移した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100ミリリットルで1回、イオン交換水100ミリリットルで1回、さらに飽和塩化ナトリウム水溶液100ミリリットルで1回洗浄した。分液して有機層を取り出し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を留去し液状の粗生成物を得た。
これにシリカゲル10gを加え30分攪拌した後、シリカゲルをろ過、ヘプタンを留去し、下記式〔前記一般式(III)の具体例のひとつ〕で表わされる2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3-ジイルビスメタクリレート(無色透明液状)11gを得た〔2-(1-アダマンチル)プロパンジオール基準の収率:73%〕。GPC分析により、マイケル付加物の含有量は5質量%であった。
【0039】
【化6】

【0040】
<スペクトルデータ>
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl3)の測定は日本電子株式会社製のJNM−ECA500を用いて行った。
1H−NMR(500MHz):6.4(a1、2H)、5.8(a2、2H)、4.2および4.4(d、4H)、2.0(h、3H)、1.92(j、6H)、1.7-1.72(i、6H)、1.64-1.66(g、6H)
13C−NMR(125MHz):167(c)、146(a)、125(b)、61.8(d)、47.2(e)、40.3(g)、36.9(i)、34.2(f)、28.5(h)、18(j)
GC-MS(株式会社島津製作所製、GC-MS-QP2010):346(3%)、135(100%)、93(13.0%)、79(12.4%)、65(34.1%)
【0041】
〔実施例4〕
<硬化物1の作製>
実施例2で得られた2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3-ジイルビスアクリレートと重合開始剤であるベンゾイソブチルエーテル1質量%を加え、UV照射により硬化させた。硬化させた硬化物の物性を表1に示した。
【0042】
〔実施例5〕
<硬化物2の作製>
実施例3で得られた2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3-ジイルビスメタクリレートに重合開始剤であるベンゾイソブチルエーテル1質量%を加え、UV照射により硬化させた。硬化させた硬化物の物性を測定した結果を表1に示した。
【0043】
〔比較例1〕
<比較用硬化物1の作製>
2-(1-アダマンチル)プロパン-1,3-ジイルビスアクリレートの替わりに下記式(V)で表わされるアダマンチルアクリレートを用いた以外は実施例4と同様に行い、比較用硬化物1を作製してその物性を測定した結果を表1に示した。
【0044】
【化7】

【0045】
上記実施例および比較例において得られた硬化物の物性測定は次のように行った。
(1)ガラス転移温度Tg(℃)
硬化物1、2および比較用の硬化物1をそれぞれ別個のアルミ容器に5mg入れ、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−7)を用い、0℃から10℃/分にて昇温して、得られた熱流束曲線に観測される不連続点より求め、これをTgとした。
(2)熱分解温度Td(℃)
硬化物1、2および比較用の硬化物1をそれぞれ別個のアルミ容器に5mg入れ、示差熱熱質量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TG/DAT6000)を用い、窒素雰囲気下、25℃から600℃まで、5℃/分で昇温させることにより得られた質量変化曲線にて質量が5%減少した時の温度を求めて熱分解温度とした。
ガラス転移温度及び熱分解温度が高いと耐熱性に優れたものとなる。
(3)全光線透過率(%)
硬化物1、2および比較用の硬化物1から作製された肉厚3mmの試験片を用いて、測定波長400nmにて測定した。測定装置として、株式会社島津製作所製分光光度計UV−3100Sを用いた。
(4)曲げ強度および曲げ弾性率
硬化物1、2および比較用の硬化物1を用いて曲げ強度および曲げ弾性率をJISK7017のA法に準拠して測定した。
(5)線膨張係数
硬化物1、2および比較用の硬化物1を用いてJISK7197に準拠して測定した。
【0046】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の一般式(III)で表わされるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを主成分として含有する樹脂組成物は透明性、耐光性など光学特性、耐熱性及び誘電率など電気特性に優れる硬化物を与えるので、カラーレジスト、光半導体用封止剤、光学電子部材(例えば光導波路、光通信用レンズ、および光学フィルムなど)およびこれらの接着剤等の分野において好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

〔式中、Yはフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる基を表し、qは0〜15の整数である。qが2以上の場合、2つのYが一緒になって形成された=Oであってもよく、複数のYは同一であっても異なっていても良い。Xは下記一般式(II)
【化2】

で表わされる一価の基を表わし、pは1〜4の整数である。pが2以上の場合、複数のXは同一であっても異なっていても良い。p+qは1〜16の整数である。R1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる基又はトリフルオロメチル基を表わす。n、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わす。ただし、nおよびmがともに0になることはない〕で表されるアダマンチルアルカンポリオール。
【請求項2】
アダマンチルヒドロキシアルカンモノもしくはジカルボン酸類またはアダマンチルアルカンジカルボン酸類を還元することを特徴とする前記一般式(I)で表されるアダマンチルアルカンポリオールの製造方法。
【請求項3】
下記一般式(III)
【化3】

〔式中、Yはフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる基を表し、qは0〜15の整数である。qが2以上の場合、2つのYが一緒になって形成された=Oであってもよく、複数のYは同一であっても異なっていても良い。X´は下記一般式(IV)
【化4】

で表わされる一価の基を表わし、pは1〜4の整数である。pが2以上の場合、複数のX´は同一であっても異なっていても良い。p+qは1〜16の整数である。R1は、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基から選ばれる基又はトリフルオロメチル基を表わす。R2は水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表わす。n、mはそれぞれ独立に0〜4の整数を表わす。ただし、nおよびmがともに0になることはない〕
で表されるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレート。
【請求項4】
qが0、R1およびR2が水素原子、nおよびmが1である請求項3に記載のアダマンチルアルカン(メタ)アクリレート。
【請求項5】
請求項1に記載のアダマンチルアルカンポリオールと(メタ)アクリル酸類とを反応させることを特徴とする前記一般式(III)で表されるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項6】
前記一般式(III)で表されるアダマンチルアルカン(メタ)アクリレート、そのマイケル付加物および重合開始剤を含む樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂組成物を加熱又は光照射により硬化させてなる硬化物。
【請求項8】
請求項3または4に記載のアダマンチルアルカン(メタ)アクリレートを用いた光学電子部品材料、カラーレジスト材料、光記録材料、または保護膜。
【請求項9】
請求項6に記載の樹脂組成物を用いた光学電子部品材料、カラーレジスト材料、光記録材料、または保護膜。

【公開番号】特開2009−292784(P2009−292784A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149698(P2008−149698)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】