説明

インクジェット用硬化性樹脂組成物

【課題】低粘度化が可能で、作業性、保存安定性に優れ、耐熱性、耐薬品性、マイグレーション耐性、可とう性に優れた硬化物を得ることが可能なインクジェット用硬化性樹脂組成物、及びその硬化物並びにそれを用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】インクジェット用硬化性樹脂組成物において、一般式(1)


(式中、Rは、炭素数2〜18のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す)で示されるビスアリルナジイミド化合物と、特定のビスマレイミド化合物と、前記ビスアリルナジイミド化合物100質量部に対して、300〜3000質量部である特定のヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と、光重合開始剤からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造等に用いられるインクジェット用硬化性樹脂組成物、及びその硬化物並びにそれを用いたプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、一部の民生用プリント配線板並びにほとんどの産業用プリント配線板用のレジストインキ組成物には、高精度、高密度の観点から、紫外線照射後、現像することにより画像形成し、熱及び光照射で仕上げ硬化(本硬化)する液状現像型硬化性樹脂が使用されている。また、環境問題への配慮から、現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプの液状硬化性樹脂が主流になっている。このような希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプのレジストインキ組成物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和基含有モノカルボン酸の反応生成物に酸無水物を付加したカルボキシル基含有感光性樹脂、光重合開始剤、希釈剤及びエポキシ樹脂からなるレジストインキ組成物が開示されている(例えば特許文献1など参照) 。
【0003】
しかしながら、これら硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基含有感光性樹脂とエポキシ樹脂の反応性が高いために二液型であり、使用前に混合し、数日以内に使用しなければならないという欠点がある。
【0004】
また、これら硬化性樹脂組成物は、塗布、乾燥、露光、現像、熱硬化など、多くの工程が必要である。そして、それらの工程には、塗布機、乾燥機、露光機、現像機、熱硬化炉などの設備が必要となるため、製造コストがかかるという欠点がある。
【0005】
このようなことから、インクジェットプリンターで描画し、乾燥して硬化性樹脂パターンを作成する手法が提案されている(例えば特許文献2など参照)。このようなインクジェットプリンターで描画した場合、アルカリ現像型硬化性樹脂のような複雑な工程を必要としないことから、低価格で、かつイオン性物質等の付着が無い、信頼性の高いプリント配線板を提供することが可能となる。しかしながら、スクリーン印刷法のインキの粘度が2,000 〜 15,000 mPa・s(25℃)であるのに対して、インクジェットのインキの粘度は1〜150mPa・s(25℃)と低い。従って、このような方法では、乾燥中の熱によりインキの粘度がさらに低下するため、ニジミが発生し、十分なパターン形成精度が得られず、実用化には至ってない。
【0006】
また、低粘度化するために、低分子量の化合物を混合することが考えられる。しかしながら、例えばトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルのようなエポキシ樹脂やトリアリルイソシアヌレート(TAIC)等を希釈剤として用いると、充分な耐熱性や硬化性を得ることができない。
【0007】
耐熱性を有する比較的低分子量の化合物として、ビスアリルナジイミド化合物が用いることができるが、通常250℃前後の高温で硬化する必要がある。そこで、過酸化物を用いて硬化する方法が提案されている(例えば特許文献3など参照)。しかしながら、過酸化物を用いた組成物をプリント配線板に用いた場合、銅箔等の金属表面の酸化が激しくなり、物性が低下するという問題が発生する。
【0008】
そこで、前記ビスアリルナジイミド化合物と低分子量の化合物であるビスマレイミド化合物の併用により、インクジェットに適用できる粘度を実現しつつ、硬化温度を低下させる組成物が提案されている(例えば特許文献4など参照)。
【0009】
このような組成物は、光硬化と熱硬化を併用することによって、にじみのないパターニングができるとともに、架橋密度が高くなることで、銀を電気配線材料とした配線板の絶縁体として高い信頼性を得ることができる。すなわち、銀は銅などの他の電気配線用金属に比較して、マイグレーションが発生しやすいため、一般的には、信頼性試験において、早期に銀からのマイグレーションが発生して、配線間の絶縁抵抗が低下してしまうが、早期のマイグレーションの発生が抑えられ、長寿命が得られる。
【0010】
しかしながら、このような組成物は、硬化収縮が大きく、硬化物は硬くて脆いため、非常に薄い材料や可とう性のある材料への塗布は困難であり、そりの発生や、取り扱い時に塗膜が割れてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平7−263845号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平7−18031号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】WO2006/075654(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、低粘度化が可能で、作業性、保存安定性に優れ、耐熱性、耐薬品性、マイグレーション耐性、可とう性に優れた硬化物を得ることが可能なインクジェット用硬化性樹脂組成物、及びその硬化物並びにそれを用いたプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の基本的な態様としては、下記一般式( 1 )
で示されるビスアリルナジイミド化合物と、
【化1】

(式中、Rは、炭素数2〜18のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す)
下記一般式(2)で示されるビスマレイミド化合物と、
【化2】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す)。
【0014】
下記一般式(3)で示され、前記ビスアリルナジイミド化合物100質量部に対して、300〜3000質量部であるヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と、
【化3】

(式中、Rは、水素原子及び/又はメチル基、Rは、炭素数2〜12のアルキル基とヘキシル基を示す)
光重合開始剤からなることを特徴とするインクジェット用硬化性樹脂組成物が提供される。
【0015】
このような構成により、低粘度化が可能で、作業性、保存安定性に優れ、耐熱性、耐薬品性、マイグレーション耐性、可とう性に優れた硬化物を得ることが可能となる。
【0016】
上記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物を含有することにより、組成物に可とう性を付与させることができ、かつ高耐熱性を維持することができる。また、ビスアリルナジイミドとビスマレイミドに対して相溶性が高いため、組成物が沈降することなく良好な保存安定性が得られる。
【0017】
このようなヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物としては、特に4-ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。さらに、光重合開始剤としては、アセトフェノン系、オキシム系、特にα―ヒドロキシアセトフェノン系を用いることが、硬化度の観点から好ましい。
【0018】
また、粘度が25℃で1〜150mPa・sの範囲であることが好ましい。粘度をこの範囲にすることにより、インクジェットによる塗布が可能となる。
【0019】
さらに本発明の他の側面によれば、上記インクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェットプリンターで所望のパターンに描画し、紫外線を照射して光硬化し、熱処理して得られる硬化物、並びにこのような硬化物からなる絶縁層を有するプリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、インクジェット用硬化性樹脂組成物において、保存安定性に優れ、低粘度化が可能であるため、インクジェットプリンターを用いて安定して塗布することができ、得られる硬化物において、十分な耐熱性、耐薬品性、マイグレーション耐性、可とう性を得ることが可能となる。また、インクジェット用硬化性樹脂組成物を用いて製造されるプリント配線板の生産性の向上、低コスト化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者等は、これらの課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で表されるビスアリルナジイミド化合物、一般式(2)で表されるビスマレイミド化合物、一般式(3)で表されるヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物、光重合開始剤を含有してなる組成物が、プリント配線板に用いる硬化性樹脂やマーキングインキ、またフレキシブル用途の絶縁材に必要な特性を維持した状態において、インクジェットで塗布可能な25℃で1〜150mPa・sの粘度にすることができることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0022】
すなわち、一般式(1)で表されるビスアリルナジイミド化合物は、耐熱性に優れ且つ比較的低分子量であることから、耐熱性に加え低粘度であることが求められるインクジェット用硬化性樹脂や、マーキングインキ、その他フレキシブル用途の絶縁体を構成する熱硬化性樹脂成分として好適である。
【0023】
さらに、一般式(2)で表されるビスマレイミド化合物と併用することにより、硬化温度を単独用いる場合の250℃前後からプリント配線板において一般的用いられている100〜200℃、好ましくは140〜180℃にすることが可能となる。また、ビスマレイミド化合物と併用することにより、ビスマレイミド化合物の結晶化が低下し、さらにヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物を加えることにより、低粘度で一液安定性に優れた液状の組成物を提供することが可能となる。
【0024】
さらに、ビスアリルナジイミド化合物100質量部に対して、300〜3000質量部のヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物を加えることで、プリント配線板用の絶縁材料に要求される耐熱性、耐薬品性、マイグレーション耐性をもつにもかかわらず、これらと両立が困難な柔軟性の付与を実現することができる。また、併せてビスアリルナジイミド化合物とビスマレイミド化合物の結晶性を低下させる効果も得られるために、室温はもとより冬季や冷蔵庫保存などでも結晶化せずに、優れた安定性の組成物が得られる。
【0025】
また、光重合開始剤を用いることで、塗布後にUV光などの活性エネルギー線を照射することで、瞬時に組成物を固体化または高粘度化することができ、塗布して描画した高精細なパターンを時間とともに流れてしまうことなく保持することができ、後工程で加熱した場合でも高精細なパターンを保持できる。
【0026】
以下、本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物の各構成成分について、詳しく説明する。先ず、本実施形態において用いられるビスアリルナジイミド化合物は、
【化4】

(式中Rは炭素数2〜18のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す)で示される化合物であり、特に好ましいものとしてRが下式(4)、(5)、(6)及び(7)
【化5】

で示される化合物のいずれかであり、具体的には、BANI−M、BANI−H、BANI−X、BANI−D(いずれも丸善石油化学社製)等が挙げられる。これらビスアリルナジイミド化合物は単独又は2種類以上を混合して用いても良い。
【0027】
本実施形態において用いられるビスマレイミド化合物は、下記一般式(2)
【化6】

(式中Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す)で示される化合物であり、特に好ましいものとしては、Rが下記式(8)、(9)、(10)、(11)
【化7】

で示される化合物のいずれかであり、具体的には、BMI、BMI−70、BMI−80(いずれもケイ・アイ化成製)、BMI−1000、BMI−3000、BMI−4000、BMI−5000、BMI−TYH(いずれも大和化成工業社製)等が挙げられる。
【0028】
これらビスマレイミド化合物は、単独又は2種類以上を混合しても良く、その配合量は前記ビスアリルナジイミド化合物100質量部に対して、10〜100質量部であるこが好ましい。ビスマレイミド化合物の配合量が、前記ビスアリルナジイミド化合物100質量部に対して10質量部未満の場合、硬化性が低下してしまう。100質量部をこえた場合、耐熱性や硬化性が低下したり、結晶性が強くなり、インクジェットノズルの口詰まりの原因となる。より好ましくは20〜70質量部である。
【0029】
なお、必要に応じて、硬化性向上効果のあるアニリン樹脂から誘導される多官能マレイミド化合物、例えばBMI−2000(大和化成工業社製)等を配合しても良い。
【0030】
本実施形態において用いられるヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物は、一般式(3)
【化8】

(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは2〜12のアルキル基又はシクロヘキシル基を示す)であり、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシへキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレートの如きヒドロキシル基含有モノマー等が挙げられる。特にRが水素原子で、Rが2〜6のアルキル基及び又はシクロヘキシル基であるものが好ましい。より好ましいものは、4-ヒドロキシブチルアクリレートである。
【0031】
上記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物の配合量は、前記ビスアリルナジイミド化合物100質量部に対して、300〜3000質量部である必要がある。300未満であると単なる希釈剤としての機能しか得られず、可とう性のある硬化物が得ることができない。一方、3000を超えると十分な耐熱性を得ることが困難となる。好ましくは800〜2000質量部である。
【0032】
これらの調製方法としては、ビスアリルナジイミド化合物とビスマレイミド化合物を溶解させる様に添加し、その後ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と光重合開始剤を加えることが好ましい。
【0033】
本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物には、硬化させるために、活性エネルギー線照射によりラジカルを発生する光重合開始剤を配合する。このような光重合開始剤としては、公知の重合開始剤が使用でき、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類; アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1 ,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−1−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−2−メチル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン類; 2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、2−(ジメチルアミノ)−2−{(4−メチルフェニル)メチル}−1−{4−(4-モルフォルニル)フェニル}−1−ブタノン等のアミノアセトフェノン類; 2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類; アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4,4 ’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドや、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール系化合物;2,4−ビス( トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ−フェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−s−トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物、1,2−オクタンジオン,1−[−4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)9H−カルバゾ−ル−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0034】
中でも、組成物を瞬時に固体化または高粘度化するためには、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンおよび、オキシム系の光重合開始剤が望ましい。
【0035】
このような光重合開始剤は、ビスアリルナジイミド化合物100質量部に対して、10〜500質量部であることが好ましい。10未満であると、活性エネルギー線を照射した後に固体化または高粘度化しにくくなる。500を超えると、光重合開始剤自身の活性エネルギー線の吸収が大きくなり、固体化または高粘度化しにくくなる。より好ましくは20〜400である。
【0036】
また、さらに、アクリレートモノマーを添加してもよい。アクリレートモノマーを添加することにより、活性エネルギー線を照射した際に、固体化または高粘度化させることを促進することができる。また、低粘度のアクリレートモノマーを選択することで、希釈剤としての機能も得ることができる。
【0037】
このような、アクリレートモノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メチルトリグリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、1 ,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1 ,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3− ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−イソブチル−2−エチル−1 ,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1 ,3−ジオキソラン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの等の1分子中にアクリロイル基及び/ 又はメタクリロイル基が1個以上有する化合物が挙げられ、単独もしくは2種類以上併用することができる。これらの中で、粘度が、25℃で300mPa・s以下となる化合物が好ましい。
【0038】
また、粘度調整の目的で有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤としてはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類; トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類; セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類; 酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類; オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類; 石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等、公知の有機溶剤が使用できる。これら有機溶剤は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
さらに、必要に応じて、ジシアンジアミド、o−トリルビグアニド、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類、メラミン等の酸化防止剤; アントラキノン系、ペリレン系、ジスアゾ系、イソインドリン系、フタロシアニン系等の有機顔料; 消泡剤; 密着性付与剤; レベリング剤; 顔料分散剤等の各種添加剤類を配合してもよい。
【0040】
これらの成分を配合して得られた実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、撹拌機、又は分散機、例えば、ディゾルバー、プラネタリミキサー、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー或いはアトライターを使用して均一になるまで、混合・分散される。
【0041】
このようにして得られた本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物は、さらに、その粘度が25℃で1〜150mPa・sとなるように調整される。1mPa・s未満に調整すると、組成物中の希釈剤の成分が多くなり、硬化物の厚みが目的とする厚みまで得られにくくなるとともに、硬化物の耐熱性が劣る場合がある。150mPa・sを超えると、インクジェットプリンターでの塗布が困難となる。より好ましくは5〜110mPa・sである。
【0042】
このようにして調製される本実施形態のインクジェット用硬化性樹脂組成物を用いて、例えば、回路形成されたプリント配線板表面に、インクジェットプリンターで所望のパターンに描画し、紫外線等の活性エネルギー線を照射し、光硬化させる。さらに、100〜200℃ 、好ましくは140〜180℃で、10〜60分、熱硬化することにより、硬化物を得ることができる。
【0043】
インクジェットプリンターとしては、ノズルを室温、又は約60℃以下に加温して塗布することができることから、オンデマンド・ピエゾ方式のインクジェットプリンターが好適に用いられる。このように、ノズルを加熱することにより、組成物の粘度が150mPa・s以下であれば、粘度を塗布可能な30mPa・s以下に調整することができる。
【0044】
また、活性エネルギー線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプ等が適当であり、レーザー光線等も活性エネルギー線として利用することができる。
【0045】
このようにして得られる硬化物は、耐熱性、Agマイグレーション耐性、フレキシブル性に優れるとともに、後から塗布されるレジストインキやマーキングインキ、フレキシブル用途の絶縁物との密着性にも優れている。そして、インクジェットにより塗布することにより、プリント配線板の製造工程の簡略化が可能となり、生産性が向上するとともに、設備の維持費等も低減できるため、得られるプリント配線板における低コスト化が可能となる。
【実施例1】
【0046】
以下、本発明の実施例等により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【0047】
次の表1に示す配合成分を、混合・撹拌して、1μmのフィルターで濾過し、インクジェット用硬化性樹脂組成物を得た。
【表1】

このようにして得られた組成物について、以下のようにして評価を行った。
【0048】
(1)粘度測定
上記のようにして得られた硬化性樹脂組成物各々について、CBCマテリアルズ製 ビスコメイトVM−100AプローブLを使用して、23℃で粘度を測定した。結果を表2に示す。なお、粘度は、
粘度(mPa・s)=動粘度(mm/s)×比重
として求めた。表2に示すように、実施例1〜8においては、良好な粘度を得ることができた。一方、ヒドロキシメタアクリレートを含まず、かつ低粘度のアクリレートモノマーを含まない比較例2においては、インクジェットで塗布可能な粘度が得られないことがわかる。
【0049】
(2)低温保存性
得られた組成物を5℃の冷蔵庫に30日間放置し、貯蔵ビンの底に沈殿物の有無を確認し、以下の基準で評価した。
○:沈殿物なし
△:若干の沈殿物が見られる
×:5℃保存不可能なもの
結果を表2に示す。表2に示すように、実施例1〜8においては、良好な低温保存性を得ることができた。一方、ヒドロキシメタアクリレートを含まない比較例1、2において、良好な低温保存性が得られていないことがわかる。
【0050】
さらに、各組成物について、回路形成された厚さ50μmのポリイミド製プリント配線板に、オンデマンド・ピエゾ方式のインクジェットプリンターで、全面に厚み20μmになるよう均一に塗布して、UVコンベア炉で積算光量2000mJ/cmで照射した後、熱風循環式乾燥炉で180℃、30分間熱硬化して試験片を作製した。作成された試験片について、以下のようにして評価を行った。なお、比較例2においては、試験片を作製することができなかった。
【0051】
(3)反り
試験片を5cm×5cmに切り出し、水平な台において反り返り量をノギスにて測定し、以下の基準で評価した。
○:5mm未満
△:5mm以上15mm未満
×:15mm以上
結果を表2に示す。表2に示すように、表2に示すように、実施例1〜8においては、反り返り量を抑えることができた。一方、ヒドロキシメタアクリレートを含まない比較例1においては、反り返り量が大きくなることがわかる。
【0052】
(4)耐屈曲性
試験片の耐屈曲性を、IPC−SM−849BTM2.4.29に従って直径1/8インチ、10サイクルの条件にて、以下の基準で評価した。
○ : 硬化塗膜にクラックのないもの
△ : 硬化塗膜に若干クラックがあるもの
× : 硬化塗膜にクラックがあるもの
結果を表2に示す。表2に示すように、いずれの試験片においても硬化塗膜にクラックは認められなかった。
【0053】
(5)鉛筆硬度
カプトン基材上の鉛筆硬度を、JISK5600−5−4の試験方法に従って評価した。結果を表2に示す。表2に示すように、実施例1〜8においては、良好な鉛筆硬度が得られた。
【0054】
(6)はんだ耐熱性
硬化塗膜を、260℃はんだ槽に5秒間浸漬後、セロハンテープによるピーリング試験を行った後の塗膜状態を、以下の基準で評価した。
〇:塗膜に変化がないもの
△:塗膜が変色等しているもの
×:塗膜が剥離したもの
結果を表2に示す。表2に示すように、実施例1〜8においては、良好なはんだ耐熱性を得ることができた。
【0055】
(7)ラビング試験
有機溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を含侵したウエスで50回ラビング試験を行い、以下の基準で評価した。
○:全く剥がれのないもの
△:薄く剥がれるもの
×:完全に剥がれたもの
結果を表2に示す。表2に示すように、実施例1〜8においては、良好な有機溶剤耐性を得ることができた。
【0056】
(8)電気特性
IPC B−25テストパターンのクシ型電極Bクーポンを形成した厚さ50μmのポリイミド製プリント配線板に、オンデマンド・ピエゾ方式のインクジェットプリンターで全面に厚み20μmになるよう均一に塗布して、UVコンベア炉で積算光量2000mJ/cmで照射した後、熱風循環式乾燥炉で180℃、30分間熱硬化して試験片を作製した。この試験片に、DC500Vのバイアスを印加し、絶縁抵抗値を測定した。結果を表2に示す。表2に示すように、実施例1〜8において、良好な絶縁抵抗が得られていることがわかる。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるビスアリルナジイミド化合物と、
【化9】

(式中、Rは、炭素数2〜18のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す)
下記一般式(2)で示されるビスマレイミド化合物と
【化10】

(式中、Rは、炭素数2〜32のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す)
下記一般式(3)で示され、前記ビスアリルナジイミド化合物100質量部に対して、300〜3000質量部であるヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物と、
【化11】

(式中、Rは、水素原子及び又はメチル基、Rは、炭素数2〜12のアルキル基とヘキシル基を示す)
光重合開始剤からなることを特徴とするインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
粘度が25℃で1〜150mPa・sの範囲であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物は、4-ヒドロキシブチルアクリレートである請求項1に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物を、インクジェットプリンターで塗布し、紫外線を照射して光硬化させたあと、さらに熱硬化して得られる硬化物。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット用硬化性樹脂組成物をインクジェットプリンターで塗布し、紫外線を照射して光硬化させたあと、さらに熱硬化して得られる絶縁層を有するプリント配線板。

【公開番号】特開2010−229220(P2010−229220A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76208(P2009−76208)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(591021305)太陽インキ製造株式会社 (327)
【Fターム(参考)】