説明

インタフェース装置

【課題】複数種類の物理量を測定するセンサに好適な計測装置のインタフェース装置を提供する。
【解決手段】複数の容量型センサの各出力が供給されるべき入力部(10)と、供給される切替指令信号に応じて上記入力部に供給される複数の容量型センサのいずれかの出力を選択するセンサ選択部(21)と、選択された容量型センサの出力をデジタル値に変換する信号変換部(22)と、デジタル値を含む伝送可能な電気信号を形成する出力部(23)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセンサの出力をコントローラなどの情報処理装置に伝送するインタフェース装置に関し、特に、検出対象が異なる複数のセンサの出力を伝送するインタフェース装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境計測では環境条件に関連するパラメータの計測が行われる。環境条件に関連する物理量は複数種類存在する。例えば、温度、湿度、気圧、光量、風速、風向、方位、加速度、音量、振動、酸素濃度、炭酸ガス濃度、オゾン量、環境ガス(VOC(揮発性有機化合物)、CO、CH4など)、粉塵量などの物理量である。これ等の物理量を環境パラメータとして計測し、ビル内や製造プロセスなどの環境制御などに利用する。
【0003】
環境パラメータは複数種類存在するので、パラメータ計測においても同時に複数測定できることが望ましい。例えば、特許文献1では、シリコン基板上に第1の金属層と、金属層上に設けられた水蒸気管理ポリマー層と、容量型「湿度センサ」を形成するために水蒸気感知ポリマー上に設けられた第2の金属層と、第2の金属層を覆う絶縁層と、「風量センサ」を形成するために絶縁層上に対称的に配置された複数の抵抗を含む環境センサを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−527356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方法によると、複数のセンサにより異なる物理量を計測する場合、検出信号を取り出す検出回路を各センサの形式に応じてそれぞれ用意する必要がある。このため、装置構成が大がかりとなり、装置全体の消費電力の把握や管理が難しくなる。
【0006】
よって、本発明は、同種あるいは異種の複数の物理量を測定する検出回路を簡易な回路構成で実現し得る複数センサのインタフェース装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明のインタフェース装置の一態様は、複数の容量型センサの各出力が供給されるべき入力部と、供給される切替指令信号に応じて上記入力部に供給される複数の容量型センサのいずれかの出力を選択するセンサ選択部と、選択された容量型センサの出力をデジタル値に変換する信号変換部と、上記デジタル値を含む伝送可能な電気信号を形成する出力部と、を備える。
【0008】
かかる構成とすることによって、複数の容量型センサの各出力を逐次選択して1つの検出回路(信号変換)で計測データを高速に出力することができるため、検出回路を簡素化できると共に消費電力を低減することが可能となる。
【0009】
好ましくは、上記複数の容量型センサが、第1の環境パラメータの値に対応した静電容量値を出力する第1の容量型センサと第2の環境パラメータの値に対応した静電容量値を出力する第2の容量型センサとを含む。ここで、環境パラメータは、例えば、温度、湿度、光量、風速、風向、方位、音量、振動、酸素濃度、炭酸ガス濃度、オゾン量、粉塵量、放射線量などの周囲環境中に存在する物理量である。複数のセンサ(検出素子)を全て容量型センサで構成することによって検出回路の形式を共通化することが可能となる。また、容量型センサは基本となる2つの電極間が絶縁された高インピーダンス構造であり、一般に流れる電流値が僅かであるので低消費電力である。
【0010】
好ましくは、インタフェース装置は、更に、上記容量型センサの選択に対応して上記容量型センサの出力を増減して上記信号変換部に供給する出力補正部を備える。それにより、例えば、第1の容量型センサと第2の容量型センサの出力範囲を同じ範囲にあるいは別々の範囲に設定することが可能となる。
また、例えば、容量型センサの初期出力値が異なる場合にオフセット量(増減量)を調整して容量型センサの出力を次段のA/D変換器の入力範囲に合わせてダイナミックレンジを広く確保することが可能となる。信号のSN比向上などの点でも好ましい。
【0011】
好ましくは、インタフェース装置は、更に、容量型センサの出力あるいは信号変換部の入力からノイズ成分を除去するノイズ除去フィルタ(ノイズ除去手段)を備える。ノイズ除去フィルタは上記出力補正部に設けても良い。また、センサ選択部21と信号変換部22との間に設てもよい。それにより、外乱などによる計測値のエラー防止や出力のSN向上を図る。
【0012】
好ましくは、インタフェース装置の、上記センサ選択部及び上記信号変換部は、供給される間欠動作指令信号に対応して活性化(アクティブ状体)と非活性化(スリープ状体)とを交互に繰り返す。それにより、インタフェース装置は間欠的に動作し、消費電力が減少する。電源が、電池、若しくは、移動電源から電力が供給される機器、太陽発電、温度差発電、振動発電、バイオ発電、気流または風力発電、水力発電、波力発電、回転発電などの微弱エネルギーを用いて自立発電するエネルギーハーベスト(環境発電)機器、もしくは、携帯型燃料電池を備える機器の場合は長寿命化を図ることができる。
【0013】
また、本発明の携帯型計測端末装置は、上述したインタフェース装置と、上記インタフェース装置の入力部に接続される複数の容量型センサと、上記インタフェース装置の出力部に接続される外部通信部と、上前記切替指令信号を上記インタフェース装置に供給し、上記間欠動指令信号を上記インタフェース装置及び上記外部通信部に供給する制御部と、を備える。
【0014】
かかる構成とすることによって、消費電力の少ない計測端末装置が得られ、特に、電池、携帯型燃料電池若しくは前述のエネルギーハーベストなどを電源とする電源容量の少ない携帯型の計測端末装置に好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各センサ(検出素子)を容量型センサで構成し、センサ信号の検出回路を共通化することにより、インタフェース装置や携帯型計測端末装置の消費電力を低減することができる。また、間欠的動作によってセンサの計測を行うときのみ、検出回路をアクティブ状態にすることにより、電源の消費電力を可及的に少なくすることができる。これにより、装置の電源が電池の場合は長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用される携帯型計測装置の例を説明する説明図である。
【図2】容量型センサの動作原理を説明する説明図である。
【図3】容量型センサの例(温度センサ)の例を説明する説明図である。
【図4】容量型センサの例(湿度センサ)の例を説明する説明図である。
【図5】インタフェース回路部の構成例を説明する説明図である。
【図6】他のインタフェース回路部の構成例(補正部あり)を説明する説明図である。
【図7】インタフェース回路部の構成例(補正部、ノイズフィルタあり)を説明する説明図である。
【図8】携帯型計測装置の間欠動作を説明するフローチャートである。
【図9】実施例の携帯型計測装置の動作モードと消費電力を説明図である。
【図10】実施例の容量型センサを使用する携帯型計測装置の利点を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例について説明する。各図において対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
本実施例のインタフェース装置の概略を説明すると、複数の環境センサの信号を検出するためのインタフェース装置において、所定の周期で接続されている環境計測センサを切替えて出力を選択する対象センサ選択手段と、選択手段で選択されたセンサから得られる静電容量値をデジタル信号に変換する信号変換手段と、信号変換手段にて変換されたセンサ信号を情報交換可能な信号形式で出力する出力手段と、を備えている。
【0018】
環境センサとしては、既述環境パラメータを検出する静電容量型センサが使用されている。静電容量型センサは計測対象の物理量から得られるエネルギなどによってセンサ構造や検出機構の物質を変化し、静電容量を変化させる。これは電気信号として直ちに検出可能であり、装置動作が安定するまでの一定の待ち時間が不要となる。また、センサを駆動するための電力供給が不要である(あるいは少なくて済む)。また、各種のセンサを静電容量型センサで統一することによって各センサに接続するインタフェース回路を共用することも容易となる。
【0019】
また、本発明の実施例のインタフェース装置は、電源が供給されると各部を初期状態にする初期化手段と、タイマーを起動するタイマー手段とを含み、タイマー起動後対象センサ選択手段と信号変換手段をアクティブ状態とし、センサ信号出力が終了するとスリープ状態にする動作設定手段とを備えている。
【0020】
図1は、本発明のインタフェース装置を含む携帯型(あるいは移動型)の計測装置の例を示す説明図である。
同図において、携帯型計測装置は、概略、複数の容量型センサが接続される入力部10、接続された容量型センサの静電容量を検出する静電容量検出インタフェース回路部20、各部の動作制御や信号処理などを行う制御部30、環境の条件を制御する外部のコントローラやネットワークとの接続を無線LANなどを介して行う無線通信部40、有線LANなどを介して外部のコントローラやネットワークとの通信を行う有線通信部50などを備えている。
【0021】
無線通信部40は、無線送受信回路部41、アンテナ整合回路部42、アンテナ部43などによって構成される。無線送受信回路部41は、制御部30からの計測値の信号を高周波信号に重畳してアンテナ43から外部に送信し、アンテナ43で受信した高周波信号から信号を復調して制御部30に送る。アンテナ整合回路部42はアンテナと無線送受信回路部41とのインピーダンス整合を図る。また、アンテナ整合回路部42は送受信共用のアンテナ43における送信信号と受信信号の信号分離を図る。
なお、無線通信部40及び有線通信部50の両方を備える必要はない。携帯型計測装置の場合には無線通信部40を備えるのが望ましい。
【0022】
制御部30は、公知構成のマイクロコンピュータシステム(MPU)31、複数のスイッチやタッチパネルなどによって指令が入力される入力部、入力操作や計測した環境パラメータなどの情報を表示するLCD(液晶表示器)や電気泳動表示器(electrophoretic display)などの(低消費電力の)表示部32などによって構成される。なお、入力部若しくは表示部は必須のものではなく、必要に応じて設けられる。後述するように、制御部30は間欠動作に対応して各部の活性化/非活性化を行う機能を備えている。
インタフェース装置は、入力部10及びインタフェース回路部20よって構成されるが、制御部30をインタフェース装置に含めてもよい。インタフェース装置の入力部10には複数の容量型センサが接続される。
【0023】
図2乃至図5は容量型センサを説明する説明図である。
図2は容量型センサの検出原理を説明する図である。同図に示すように、上下2枚の並行平板電極型のセンサにおける静電容量値Csは、式(1)のように示すことができる。
s=ε0εr(S/d) …式(1)
ここで、ε0は真空中の誘電率、εrは真空中の誘電率比誘電率、Sは電極の面積、dは電極間の距離である。
【0024】
また、上記容量型センサのインピーダンスZsは、式(2)のように示すことができる。
s=(1/2πfCs) …式(2)
ここで、πは円周率、fは励起駆動周波数である。
【0025】
ex(t)=Zs・iex(t) …式(3)
容量型センサは環境パラメータの値に対応した容量値(Cs)あるいはインピーダンス値(Zs)となり、容量値(あるいはインピーダンス値)はセンサに励起電圧を印加したときの電圧信号(あるいは電流信号)レベル(式(3))により読み出される。
【0026】
容量型センサの消費電力は式(4)のように表される。
ex(t)=eex(t)・iex(t)=Zs・iex(t)2
=eex(t)2/Zs=eex(t)2/2πfCs …式(4)
ここで、eex(t)は容量型センサの励起電圧、iex(t)は容量型センサに流れる励起電流である。
【0027】
式(2)に示されるように、励起周波数fを低くし、静電容量値Csを小さくすることにより、高インピーダンスZsとなる。また、式(4)に示されるように、高インピーダンスZsのセンサ(小型のセンサ)とすることによって消費電力Pexを減らすことができる。
【0028】
図3は、温度を計測する容量型センサの例を示す断面図であり、出願人による特開2011-85505号公報により詳細に説明されている。
同図に示すように、容量型センサは、2つのガラス基板G1及びG2間にダイヤフラムで上下に仕切られた2つの部屋A1,A2を備えており、上部の部屋A1の上壁面とダイヤフラムにそれぞれ検出用薄膜電極2c及び1bが形成されている。上側の部屋A1は真空状態に、下側の部屋A2は不活性気体又は乾燥空気が充填されている。
【0029】
かかる構成において、センサ周辺の温度が変化すると、下側の部屋A2の不活性気体又は乾燥空気の熱膨張によりダイヤフラム(の電極1b)が変形する。予め環境の温度とセンサの静電容量値との対応関係が判っているので、センサの静電容量(上面電極2c及びダイヤフラムの電極1b相互間の静電容量)を読み取ることで、周辺温度変化をセンサの静電容量値で表すことができる。周辺のエネルギー、すなわち環境の温度変化だけでセンサが構造変化を起こすので、センサを駆動させるための電力消費がなく、出力安定待ち時間も不要である。センサの出力を読み取る時だけ励起信号を入力し、静電容量値を読み出すことができる。
【0030】
図4は、湿度を計測する容量型センサを表している。このセンサも同様に上下2枚の上部電極3及び下部電極4と、両電極間に設けられた周辺の湿度変化を計測するための感湿膜5で構成されている。環境の湿度変化が感湿膜5の物質変化(誘電率変化)を起こし、湿度と静電容量値とが対応する。容量型センサの出力を読み取るときだけ励起信号を入力し、静電容量値を読み出すことができる。予め湿度と容量型センサの静電容量値との対応関係が判っているので、静電容量値から湿度を検出することができる。
このセンサにおいても、環境の湿度変化でセンサが特性変化を起こすので、センサを駆動させるための電力消費がない。出力安定待ち時間も不要であり、センサの静電容量変化の出力を読み取る時だけに励起信号を入力し、静電容量値を読み出すことができる。
【0031】
図5は、図1に示されるインタフェース回路部20の構成例を示している。インタフェース回路部20は、制御部30から供給される切替指令信号に応じて入力部10に供給される複数の容量型センサのいずれかの出力を選択するセンサ選択部21と、選択された容量型センサの出力をデジタル値に変換する信号変換部22と、デジタル値を含む伝送可能な電気信号を形成する出力部23、動作の同期を制御する励起信号を発生する励起信号発生器24を含んでいる。
【0032】
入力部10は、容量型センサが接続される複数の入力端子(あるいは入力チャネル)CH01〜CHnを備えている。入力部10は、コネクタ、パッド、ハンダ付け、プリント配線などの電気接続可能な部材であればよい。センサ選択部21はマルチプレクサや複数のマイクロスイッチなどによって構成され、切替信号に対応して複数の入力端子の中から1つを選択する。これにより、入力部10に接続された1つの容量型センサが選択される。
【0033】
この容量型センサの容量値は信号変換部22に供給される。信号変換部22は、例えば、逐次A/D変換方式、ΔΣA/D変換方式、静電容量−周波得変換方式などによって構成され、容量型センサの(静電容量値に対応した)アナログ値出力をデジタルデータ化する。このデジタルデータは出力部23に供給される。出力部23は、例えば、ゲートアレイ回路やマイクロコンピュータ若しくは、高速デジタルシリアル通信回路などによって構成され、後段のマイクロコンピュータや信号回路によって信号処理や伝送可能な信号形式に形成される。
【0034】
励起信号発生器24は、入力部10及び信号変換部22に励起信号(同期信号)を与えて選択された容量型センサの静電容量値の読み出しとアナログ−デジタル変換とを同期させる。励起信号発生器24は必須の構成ではなく、例えば、マイクロコンピュータによって励起信号を形成しても良い。
なお、特に図示しないが.各部の動作は制御部30によって適宜に調整される。
【0035】
図6は、インタフェース回路部20の他の構成例を示している。同図において、図6と対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
この実施例では、センサ選択部21と信号変換部22との間に必要により入力容量の範囲を補正する補正部25を備えている。入力部10には既述環境パラメータを計測するために、各種の容量型センサが接続される。この場合、容量型センサ相互間で静電容量値の変化範囲(ダイナミックレンジ)が異なったり、初期静電容量値が異なる場合が生じ得る。このような場合、容量型センサの静電容量値の変化範囲の中心とA/D変換部22の変換入力範囲の中心とが合わなくなって使用可能範囲が狭くなったり(ダイナミックレンジの低下)、1つの検出回路で対応できなくなる。
【0036】
そこで、この実施例では容量型センサ出力の静電容量値を増減(オフセット)する補正部25を備えている。補正部25のオフセット量(補正容量値)は容量型センサを個別に選択可能な切替制御信号によって制御される。制御部30は予め入力部10に接続される容量型センサの容量データを図示しないデータベースに保持し、これを利用して各容量型センサのオフセット量を設定することができる。また、テストモードで容量型センサの出力範囲(変化範囲)を計測し、計測結果に基づいてオフセット量を決定しても良い。
【0037】
補正部25は、例えば、センサ選択部21の出力端と信号変換部22の入力端との間に接続されたキャパシタCoff1と、キャパシタCoff1のバイパススイッチSWoff1によって静電容量減少回路が構成される。また、信号変換部22の入力端と所定電位の間に接続されたキャパシタCoff2と、キャパシタCoff2のバイパススイッチSWoff2によって静電容量増加回路が構成される。所定電位は回路の電源、回路バイアス電位、励起信号の信号線電位などを適宜使用することが可能である。
【0038】
例えば、選択された容量型センサの初期容量値が信号変換部22の入力範囲に対応した所定範囲にあるとき(正常)は、制御部30は切替制御信号でスイッチSWoff1をオン(導通)にし、スイッチSWoff2をオフ(非導通)にする。それにより、キャパシタCoff1とキャパシタCoff2はバイパスされて補正部25は機能しない。容量型センサの静電容量値は信号変換部22に直接入力される。
【0039】
また、容量型センサの初期容量値が信号変換部22の入力範囲より大きい場合は、制御部30が切替制御信号でSWoff1をオフにし、スイッチSWoff2をオフにする。それにより、容量型センサとキャパシタCoff1とが直列に接続され、信号変換部22に入力される静電容量値が減少する。すなわち、信号変換部22に入力される静電容量値が減少するように補正される(オフセット値が下がる。)。
【0040】
逆に、入力センサの初期容量値が信号変換部22の入力範囲より小さい場合は、制御部30が切替制御信号でスイッチSWoff2をオンにし、スイッチSWoff1をオンにする。容量型センサとキャパシタCoff2が並列に接続され、信号変換部22に入力される静電容量値が増加する。すなわち、信号変換部22に入力される静電容量値が増加するように補正される(オフセット値が上がる。)。
【0041】
このようにして、信号変換部22に入力される初期容量値を一定に調整することが可能である。検出される静電容量値の変化範囲を信号変換部22のA/D変換の入力レンジに合わせることによって信号伝送(インターフェース部)におけるダイナミックレンジの低下を防止することが可能となる。
【0042】
なお、上記説明では検出された静電容量値を増減するものとして補正部25の機能を説明したが、静電容量値は、例えば、電圧レベル信号として信号変換部22の入力端に伝送されるので、信号変換部22の入力端におけるバイアス電圧の調整として説明することもでき、補正部25を抵抗やトランジスタなどの電子回路(入力レベル調整回路)として構成することができる。実施例のように、キャパシタとスイッチで構成した場合には、当該素子における電力消費がない利点がある。
【0043】
上記実施例(図6)では、補正部25は2つのキャパシタで構成されているが、複数のキャパシタを選択可能にアレイ化した構成としても良い。それにより、補正量を細かく設定することができる。また、可変容量素子を使用しても良い。可変容量素子には、電極の対抗面積を機械的に変えるものやバイアス電圧で容量値を変えるもの(可変容量ダイオード)がある。
【0044】
図7は、インタフェース回路部20の他の実施例を示している。同図において図6と対応する部分には同一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
この例においては、補正部25の後段(あるいは信号変換部22の前段)に高周波ノイズを除去するノイズ除去手段としてのノイズ除去部(ノイズ除去フィルタ、あるいはローパスフィルタ)26を設けている。それにより、センサ選択部21における容量型センサの接続の切替、補正部のスイッチ切替、雑音電磁波による誘導などに起因するノイズを除去する。なお、ノイズ除去部26は補正部25内に設けても良い。また、センサ選択部21と信号変換部22との間に設けても良い。
【0045】
図8は、携帯型計測装置における省電力動作の概略を説明するフローチャートである。実施例の携帯型計測装置では装置全体の全システムの消費電力を削減するため間欠的な動作を行うモードを備えている。このモードでは、制御部(MPU)30は、環境パラメータの計測を行うとき該当部分をアクティブ状態にし、計測を行わないとき非アクティブ状態として、装置の消費電力を減少する。
【0046】
まず、操作者によって計測装置の図示しない電源スイッチがオンにされる(ステップS10)。電池から制御部30(LSIチップ)に電源が供給されると、組み込み初期化プログラム若しくはチップのリセット回路がリセットパルスを出力する。このリセットパルスはMPUシステムの基本動作設定などを含む初期化と、各容量型センサの初期容量値の調節を含む初期動作確認を自動で行なう(ステップS12)。MPUは制御プログラムを実行して制御部30が活性化する。また、容量型センサのインタフェース回路部20に電源を供給してセンサ選択部21、信号変換部22などを活性化させる(ステップS14)。
【0047】
MPUは、センサ選択部21に切替制御信号を供給して入力部10に接続されている複数の容量型センサのうちの1つを選択させる。また、信号変換部22に選択されたセンサの静電容量値をデジタル値に変換させ、当該センサの静電容量値を読み取る(ステップS16)。MPUは検出した容量値に基づいて当該容量型センサの値に補正が必要かどうかを判断し、当該センサについて補正値を選定する。全ての容量型センサについて必要により補正値が選定される(ステップS18;NO)。全ての容量型センサについて補正値が選定されると、入力容量範囲の調整が完了する(ステップS18)。
【0048】
次に、MPUは内部タイマ設定と起動を行う(ステップS20)。その後、全システムをスリープさせて消費電力を最低限にする(ステップS22)。タイマで設定された時間までスリープ状態を継続する(ステップS24;NO)。タイマ設定時間を経過すると(ステップS24;YES)、制御部30やセンサインタフェース回路部20だけを正常に動作させるアクティブ状態にさせる(ステップS26)。
【0049】
その後、MPUは、センサ選択部21に切替制御信号を与えて計測する容量型センサの選定をし、選択された容量型センサから静電容量値を信号変換部22に読み込み、容量型センサのアナログ信号をデジタル化する(ステップS28)。MPUはデジタル化された静電容量値を出力部23から得る。MPUはこの静電容量値を内部に環境パラメータとして記憶する(ステップS30)。
なお、入力部10に接続されている容量型センサの数だけ、あるいは容量型センサのうち所要数のものについてステップS28及びS30を繰り返して所要の環境パラメータとして記憶を記憶することができる。
【0050】
その後、MPUは、インタフェース回路部20をスリープ状態とする(ステップS32)。インタフェイス回路は最低限の消費電力モードになる。次に、MPUは、無線通信部40(または有線通信部50)をアクティブ動作モードにさせて(ステップS34)、計測したセンサのデジタルデータの転送を行う(ステップS36)。データ転送終了後は、データ通信インタフェイス回路部40とMPUは消費電力が最低限になるようにスリープモードに入り(ステップS22)、次のタイマ設定値まで動作を待つ(ステップS24)。
以下、ステップS22〜S36を繰り返す。なお、図示しないが、特定のイベント発生によってスリープは解除され、MPUが活性化されて状態に対応した制御が行われる。
【0051】
携帯型計測装置は、このようなアクティブ動作とスリープ動作を繰り返して環境パラメータの計測を繰り返すことができるので低電力で動作する。
【0052】
図9は、携帯型計測装置の動作モードと消費電力を説明する説明図である。縦軸は消費電力、横軸は動作の時間軸を示している。
携帯型計測装置がスリープ状態からアクティブ状態に切り替わると容量型センサは立ち上がりが早いので短時間で信号取得が可能となり、従来の検出装置よりも動作時間が短縮される。
【0053】
また、インタフェース回路部20が動作してセンサ信号を取得してデジタル化する。実施例では、容量型センサと単一検出回路のインタフェース部を使用しているので従来法(多種センサ+MPU)よりも消費電力が減少している。そして、インタフェース回路部20をスリープ状態とした後に無線通信部40を活性化して取得したデジタルデータを送信する。装置の各部を信号処理の進展に対応して個別的に活性化して電力消費を抑制する。
本実施例においては、図9に示すように、信号取得までの時間が短く、信号取得処理時における消費電力が少ない利点があることが判る。
【0054】
本発明は上述した実施例に限られるものではなく、本発明思想の内容で適宜に変形して実施することができる。また、各実施例を組み合わせても良いものである。
【0055】
(実施例の効果)
本発明の実施例は、図10に示すように、以下のような利点がある。
まず、従来は複数種類の環境パラメータを計測する場合には、複数の異なる検出方式が採用される。このため、センサ毎に検出回路が必要であり、複雑な構成となる。また、各センサや検出回路の安定時間(立ち上がり時間)が異なり、使用可能となるまで時間が掛かりやすい。また、消費電力量が多い。
【0056】
これに対して、本発明の実施例では、複数種類の環境パラメータを計測する場合、全て容量型センサで計測するので1つの検出方式に統一されている。これにより、1つの検出回路を共用することが可能である。例えば、複数の容量型センサの出力を順次スキャンすることにより1つの検出回路で構成することができ、計測装置の検出回路の構成が簡素化される。
【0057】
また、容量型センサは(予熱などの)計測の事前準備が特に必要ないため立ち上がり時間(安定時間)が短い。複数の容量型センサは1つの検出方式であって同種の特性であり、全体の立ち上がり時間(安定時間)を短くし易い。
また、従来構成に比して相対的に検出回路の数が減少するので消費電力量が少ない。容量型センサは高インピーダンスなので消費電力が少ない。また、容量型センサの立ち上がり時間が短いので、計測装置を間欠動作させて更に計測装置の電力消費を減少することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のインタフェース装置を使用することによって低消費電力の携帯型計測装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
10 入力部、20 インタフェース回路部、21 センサ選択部、22 信号変換部、23 出力部、24 励起信号発生部、25 補正部、26 ノイズ除去部、30 制御部、40 無線通信部、50 有線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の容量型センサの各出力が供給されるべき入力部と、
供給される切替指令信号に応じて前記入力部に供給される複数の容量型センサのいずれかの出力を選択するセンサ選択部と、
選択された容量型センサの出力をデジタル値に変換する信号変換部と、
前記デジタル値を含む伝送可能な電気信号を形成する出力部と、
を備えるインタフェース装置。
【請求項2】
前記複数の容量型センサが、第1の環境パラメータの値に対応した静電容量値を出力する第1の容量型センサと、第2の環境パラメータの値に対応した静電容量値を出力する第2の容量型センサとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載のインタフェース装置。
【請求項3】
更に、前記容量型センサの選択に対応して前記容量型センサの出力を増減して前記信号変換部に供給する出力補正部を備える、請求項1又は2に記載のインタフェース装置。
【請求項4】
更に、前記センサ選択部と信号変換部との間にノイズ除去手段を備える、請求項1乃至3のいずれかに記載のインタフェース装置。
【請求項5】
前記センサ選択部及び前記信号変換部は、供給される間欠動作指令信号に対応して活性化と非活性化とを交互に繰り返す、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のインタフェース装置。
【請求項6】
請求項5に記載のインタフェース装置と、
前記インタフェース装置の入力部に接続される複数の容量型センサと、
前記インタフェース装置の出力部に接続される外部通信部と、
前記切替指令信号を前記インタフェース装置に供給し、前記間欠動指令信号を前記インタフェース装置及び前記外部通信部に供給する制御部と、を備える携帯型計測端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−84103(P2013−84103A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223221(P2011−223221)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】