説明

インピーダンスコントロール配線板、インピーダンスコントロール配線板の製造方法

【課題】インピーダンスがコントロールされた配線を有するインピーダンスコントロール配線板およびその製造方法において、インピーダンスコントロールを精度よく行うこと。
【解決手段】絶縁層と、絶縁層の厚み方向に陥没せずに絶縁層の両面に設けられた、インピーダンスコントロール配線を含む第1および第2の配線パターンと、絶縁層を貫通し、第1および第2の配線パターンの面間に挟設された層間接続体と、絶縁層の少なくとも第1の配線パターン側または第2の配線パターン側に積層された第2の絶縁層とを具備する。第1の金属箔上に導体バンプを形成し、形成された導体バンプを貫通させるように第1の金属箔上に絶縁層を積層し、貫通させた導体バンプの頭部と電気的接続を確立するように積層された絶縁層上に第2の金属箔を積層し一体化し、絶縁層上の第1の金属箔および第2の金属箔をパターニングしインピーダンスコントロール配線を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンスがコントロールされた配線を有するインピーダンスコントロール配線板およびその製造方法に係り、特に、インピーダンスコントロールを精度よく行うのに好適なインピーダンスコントロール配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インピーダンスコントロール配線を含む多層配線板は、概略的に例えば次のような工程を経て製造される。まずコア板を用意し、その片面にインピーダンスコントロールを要する配線の一方(例えばグラウンド配線)を形成する。次に、その形成された配線を挟むようにコア板上に絶縁層を積層する。続いて、絶縁層上にさらに金属箔を積層し、この積層された金属箔を所定にパターングすることによりインピーダンスコントロールを要する配線のもう一方(例えば信号配線)を形成する。さらに同様の工程を繰り返してインピーダンスコントロール配線が3層以上のものを得ることもできる。このようなインピーダンスコントロール配線板の製造は、例えば下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2001−119111号公報(図1、図2、0013段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなビルドアップによるインピーダンスコントロール配線および絶縁層の形成によると、インピーダンスコントロール精度を確保できない場合がある。インピーダンスコントロール配線のインピーダンスは、配線間を対向させる絶縁層の厚さに大きく依存する。絶縁層を積層する工程では、その被積層物であるコア板の面上凹凸の態様は一定していない。個別の製品ごとにも異なりかつ同一の製品でも場所により異なる。凹部は主にコア板に形成されたスルーホールであり、凸部は主にコア板上の配線パターンである。
【0004】
このような凹凸のあるコア板上に絶縁層が積層されるとき、その加熱・加圧過程で、絶縁層の前駆体であるプリプレグが流動化し最終的にコア板上の凹凸に倣う形状になる。したがって、凹凸のパターンにより、流動化で流れる量が場所により異なり絶縁層の形成厚みは一定しなくなる。
【0005】
また、コア板に設けられたスルーホールは、その内壁面に通常めっき工程により導電層が形成されている。このめっき工程によりインピーダンスコントロール配線となる金属箔面上にもめっきが形成される。金属箔面上のめっきは、必ずしもその面上で均一の厚さには形成されない。したがって、これをパターニングすることによって得られるインピーダンスコントロール配線は、サイドエッチングの程度の差からパターン幅ばらつきを有したものになることがある。このようなパターン幅ばらつきもインピーダンスコントロール精度を劣化させる。
【0006】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、インピーダンスがコントロールされた配線を有するインピーダンスコントロール配線板およびその製造方法において、インピーダンスコントロールを精度よく行うことが可能なインピーダンスコントロール配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係るインピーダンスコントロール配線板は、絶縁層と、前記絶縁層の厚み方向に陥没せずに前記絶縁層の両面に設けられた、インピーダンスコントロール配線を含む第1および第2の配線パターンと、前記絶縁層を貫通し、前記第1および第2の配線パターンの面間に挟設された層間接続体と、前記絶縁層の少なくとも前記第1の配線パターン側または前記第2の配線パターン側に積層された第2の絶縁層とを具備することを特徴とする。
【0008】
このインピーダンスコントロール配線板は、第1および第2の配線パターン間を対向させる絶縁層に、第1、第2の配線パターンが陥没していない。すなわち、絶縁層の厚みを一定として形成し、その両面に第1および第2の配線パターンを設けた構造になっている。したがって、第1および第2の配線パターンを含むインピーダンスコントロール配線板のインピーダンスコントロール精度は顕著に改善されたものになる。また、このような構造に適合して、第1および第2の配線パターンの面間に挟設された層間接続体を有し、さらに第2の配線層を有することで多層配線層化も可能な構造である。
【0009】
また、本発明に係るインピーダンスコントロール配線板の製造方法は、第1の金属箔上に導体バンプを形成する工程と、前記形成された導体バンプを貫通させるように前記第1の金属箔上に絶縁層を積層する工程と、前記貫通させた導体バンプの頭部と電気的接続を確立するように前記積層された絶縁層上に第2の金属箔を積層し一体化する工程と、前記絶縁層上の前記第1の金属箔および前記第2の金属箔をパターニングしインピーダンスコントロール配線を形成する工程と、前記絶縁層の少なくとも片面の側に前記パターニングされた第1または第2の金属箔を介して第2の絶縁層を積層し一体化する工程とを具備することを特徴とする。
【0010】
この製造方法は、上記のインピーダンスコントロール配線板を製造するひとつの方法である。製造途上で、絶縁層は、その両面が第1および第2の金属箔により挟まれる形態となる。したがって、積層後の絶縁層の形成厚みは精度よく一定にコントロールできる。よって、第1および第2の金属箔をパターニングすることによって得られるインピーダンスコントロール配線はインピーダンスコントロールの精度が向上したものになる。
【0011】
また、本発明に係る別のインピーダンスコントロール配線板の製造方法は、絶縁層の所定位置に貫通孔を穿設する工程と、前記穿設された貫通孔の内部に導電性組成物を充填する工程と、前記充填された導電性組成物と電気的接続を確立するように前記絶縁層の両面それぞれに金属箔を積層し一体化する工程と、前記積層・一体化された金属箔それぞれをパターニングしインピーダンスコントロール配線を形成する工程と、前記絶縁層の少なくとも片面の側に前記パターニングされた金属箔を介して第2の絶縁層を積層し一体化する工程とを具備することを特徴とする。
【0012】
この製造方法は、上記のインピーダンスコントロール配線板を製造する別の方法である。この方法も、製造途上で、絶縁層はその両面が金属箔により挟まれる形態となる。したがって、積層後の絶縁層の形成厚みは精度よく一定にコントロールできる。よって、両面の金属箔をパターニングすることにより得られるインピーダンスコントロール配線はインピーダンスコントロールの精度が向上したものになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インピーダンスがコントロールされた配線を有するインピーダンスコントロール配線板およびその製造方法において、インピーダンスコントロールを精度よく行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施態様として、前記層間接続体は、導電性組成物からなり、かつ、積層方向に一致する軸を有し前記軸の方向に径が変化している形状である、とすることができる。層間接続体となる導体バンプを、例えば導電性組成物の金属箔上へのスクリーン印刷により形成した場合である。すなわち、製造方法の実施態様として、第1の金属箔上に導体バンプを形成する前記工程は、前記第1の金属箔上にスクリーン印刷を用いて導電性組成物を印刷することによりなされる、とすることができる。
【0015】
また、実施態様として、前記層間接続体は、導電性組成物からなり、かつ、積層方向に一致する軸を有し前記軸の方向に径が変化していない形状である、とすることもできる。層間接続体を例えば絶縁層に穿設された貫通孔への導電性組成物の充填により形成した場合である。
【0016】
また、実施態様として、前記層間接続体は、金属からなり、かつ、積層方向に一致する軸を有し前記軸の方向に径が変化している形状である、とすることができる。層間接続体となる導体バンプを、例えば金属箔上に積層された金属板をエッチングすることにより形成した場合である。すなわち、製造方法の実施態様として、第1の金属箔上に導体バンプを形成する前記工程は、前記第1の金属箔に積層された金属薄板を領域選択的にエッチングすることによりなされる、とすることができる。
【0017】
また、実施態様として、前記層間接続体は、金属からなり、かつ、積層方向に一致する軸を有し前記軸の方向に径が変化していない形状である、とすることもできる。層間接続体となる導体バンプを、例えば金属箔上へのめっき形成により得た場合である。すなわち、製造方法の実施態様として、第1の金属箔上に導体バンプを形成する前記工程は、前記第1の金属箔上の所定位置に電解めっきプロセスを用いて金属柱を形成することによりなされる、とすることができる。
【0018】
また、実施態様として、前記絶縁層は、前記第2の絶縁層の材料と誘電率の異なる材料からなる、とすることができる。絶縁板の特性はインピーダンスコントロールに対して重要な要素となるので、インピーダンスコントロールに関連しない絶縁層(この場合第2の絶縁層)には廉価な材料を使用可能とするものである。
【0019】
また、実施態様として、前記絶縁層は、前記第2の絶縁層の材料より誘電正接値の小さい材料からなる、とすることができる。上記と同旨である。
【0020】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインピーダンスコントロール配線板の模式的構造を示す断面図である。図1に示すように、このインピーダンスコントロール配線板は、4つの配線層(配線パターン14a、11a、31a、34a)を有する多層板であり、図示最上の配線層とその下側の配線層とがインピーダンスコントロール配線(マイクロストリップライン)14b、11bを含んでいる。
【0021】
他の構成を含めて列挙すると、このインピーダンスコントロール配線板は、配線パターン14a、11a、31a、34a、インピーダンスコントロール配線14b(信号側)、同11b(グラウンド側)、絶縁層13a、22a、33a、層間接続体としての導体バンプ12、21、32、半田レジスト15、35を有する。
【0022】
絶縁層13aを挟んで設けられている配線層の配線パターン14a、11aおよびインピーダンスコントロール配線14a、11aは、絶縁層13aの厚み方向に陥没せずに位置している。これは、絶縁層33aを挟んで設けられている配線層の配線パターン31a、34aも絶縁層33aに対して同様である。導体バンプ12、21、32は、それぞれ、絶縁層13a、22a、33aを貫通し、配線パターン14aと同11aの面間、配線パターン11aと同31aの面間、配線パターン31aと同34aの面間に挟設されている。その形状は、積層方向に一致する軸を有しこの軸の方向に径が変化する形状(ここではほぼ円錐台)である。
【0023】
絶縁層13a、22a、33aはこの順に積層されており、内側の配線パターン11a、31aは、中間の絶縁層22aの厚み方向に陥没している。半田レジスト15、35は、この多層板の外側の配線パターン14a(またはインピーダンスコントロール配線板14b)、34aのうち半田接続が必要のない部分を覆うように設けられている。
【0024】
この多層板の特徴は、インピーダンスコントロール配線14b、11b間を対向させる絶縁層13aの厚み精度が極めて高く製造され得る点にある。通常、絶縁層13a、22a、33aなどは、積層工程において前駆体としてのプリプレグを加熱・加圧して流動化させかつ硬化させて得るものである。この多層板は、製造プロセス上、絶縁層13a(および絶縁層33a)を流動化させたときの流動量がきわめて小さい。また、インピーダンスコントロール配線14b、11bの厚みも均一化されており、このためパターン幅方向にも精度の高いパターンとなっている。したがって、インピーダンスコントロール配線14b、11bによるインピーダンスコントロールは精度が高い。以下で製造工程を説明する。
【0025】
図2は、図1に示したインピーダンスコントロール配線板の製造過程を模式的な断面で示す工程図である。図3は、図2の続図であって、図1に示したインピーダンスコントロール配線板製造過程を模式的な断面で示す工程図である。図2、図3において、図1に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付す。
【0026】
まず、図2(a)に示すように、厚さが均一の銅箔(金属箔)11(例えば電解銅箔)を用意し、その面上の所定位置にペースト状の導電性組成物を例えばスクリーン印刷で印刷しほぼ円錐形状の導体バンプ12を形成する。導体バンプ12のサイズは、例えば底面径200μm、高さ160μmである。ペースト状の導電性組成物は、周知の、例えばAg(銀)の微細粒を樹脂中に分散させたものを用い得る。導体バンプ12の形成後これを乾燥して硬化させる。
【0027】
次に、図2(b)に示すように、形成された導体バンプ14を貫通させるように銅箔11上に厚さ例えば公称60μmの例えばFR−4のプリプレグ13を、加熱・加圧して積層する。導体バンプ12の頭部は、この積層後の時点でつぶしておくようにしてもよい。続いて、図2(c)に示すように、貫通させた導体バンプ12の頭部と電気的接続を確立するようにプリプレグ13上に厚さが均一の銅箔(金属箔)14(例えば電解銅箔)を加圧・加熱して積層する。この積層により、プリプレグ13は完全に硬化して絶縁層13aになり、全体が一体化される。この積層工程でのプリプレグ13は、両面が完全に銅箔14、11に挟まれるので加熱で流動化してもその実際の流動量は非常に小さい。以上で、導体バンプ12の層間接続体を有する両面銅張り配線板素材が得られる。
【0028】
次に、図2(d)に示すように、内層となる金属箔11を例えば周知のフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし配線パターン11aおよびインピーダンスコントロール配線11bを形成する。このパターニングでは、金属箔11が均一厚さであり、サイドエッチングの影響も均一に生じるので、パターン幅方向の精度が高いパターニングが可能である。これは、層間接続体として導体バンプ12を用いたことによる効果と言える。例えば周知のスルーホールによる層間接続体を有する構造の場合では、その内壁面に導電層をめっき形成するときに銅箔11上にもめっき層が形成されるので場所によりその厚さが一定しなくなる。よって、そのあとのパターニングではパターン幅方向の精度に悪影響が生じる。
【0029】
次に、図3(a)に示すように、パターニングで得られた配線パターン21上の必要な位置に導体バンプ21を形成する。この導体バンプ21は、上記の導体バンプ12と同様にして形成することができる。続いて、図3(b)に示すように、形成された導体バンプ21を貫通させるようにかつ配線パターン11aおよびインピーダンスコントロール配線11bを挟むように、絶縁層13a上に例えばFR−4のプリプレグ22を、加熱・加圧して積層する。このときの積層では、プリプレグ22が塑性変形し配線パターン11aおよびインピーダンスコントロール配線11bの側端面をも覆うようになる。なお、導体バンプ21の頭部は、この積層後の時点でつぶしておくようにしてもよい。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、貫通させた導体バンプ21の頭部と電気的接続を確立するように、プリプレグ22上に図2(d)の段階と同じ構造を有する配線板素材を加圧・加熱して積層する。この積層により、プリプレグ22は完全に硬化して絶縁層22a(図1)になり、全体が一体化される。ここで積層する配線板素材は、図示するように、絶縁層33a、銅箔(金属箔)34、配線パターン31a、導体バンプ32を有する。このときの積層では、プリプレグ22が流動性を帯びて塑性変形し配線パターン31aの側端面をも覆うようになる。
【0031】
以下の工程は図示しないが、この積層後の最外の銅箔14、34を例えば周知のフォトリソグラフィ工程により所定にパターニングし、さらに必要な領域に半田レジスト15、35を形成することで図1に示したインピーダンスコントロール配線板を得ることができる。
【0032】
以上の製造方法では、図2(d)の工程で片面の銅箔11のみパターニングしているが、この時点で両面の銅箔11、14をパターニングするようにしてもよい。図3(c)中に示した絶縁層33aを有する配線板素材についても同様である。この方法によればパターニング工程を効率化して生産性を向上できる。ただし、図3(c)に示す積層工程において、加圧面に凹凸が生じることになるので加圧力の場所による均一性が保たれるように注意が必要である。
【0033】
また、この実施形態は4層板の場合を示したが、図3に示した要領により積層を重ねることで、8層、12層などさらに多層化された配線板とすることも可能である。その際に、絶縁層の厚み方向に陥没せずかつその絶縁層を介して互いに対向する配線層であれば、その配線層にインピーダンスコントロール配線を精度高く形成することができる。
【0034】
また、この実施形態では、絶縁層13a、33a、22aが同一のもの(FR−4に相当)としたが、インピーダンスコントロール配線を含む配線層に挟まれるもののみ物理的特性(誘電率や誘電正接)の良好またはばらつきの小さいものを用いるようにしてもよい。このような良質の物理的特性のものは一般に高価であり、インピーダンスコントロールを必要としないところの絶縁層にまで用いるとコストアップを招くからである。
【0035】
また、この実施形態ではインピーダンスコントロール配線14bを信号配線側、同11bをグラウンド配線側としたが、逆に、インピーダンスコントロール配線14bの側をグラウンド配線、同11bの側を信号配線とする構成も可能である。
【0036】
次に、図1に示したインピーダンスコントロール配線板を試作し実際に絶縁層13aの厚さを評価した結果について図4を参照して述べる。図4は、図1に示したインピーダンスコントロール配線板において、インピーダンスコントロール配線11b、14b間の絶縁層13aの厚さを実測した例(図4(a))を従来工法によるもの(図4(b))と比較して示す図である。
【0037】
サンプル1、サンプル2は、パターン設計を異ならせた配線板サンプルであり、基板番号は、各製造ロットにおいて各配線板に与えられた番号である。従来工法とは、両面に配線パターンを有するコア板(絶縁層22aに相当)にビルドアップで絶縁層(絶縁層13aに相当)および配線パターン(インピーダンスコントロール配線14bに相当)を設けた構造のものである。コア板の層間接続はコア板に設けたスルーホールによっており、ビルドアップ層の層間接続は、ビルドアップ後の穴あけおよび電解めっきによっている。
【0038】
図4(a)と図4(b)とを比較してわかるように、インピーダンスコントロール配線11b、14b間の絶縁層13aの厚さは、そのばらつき(3sで評価)がこの実施形態によるものの方が格段に小さい(1/2から1/3程度)。また、サンプル1とサンプル2のようにパターン設計が異なるものであっても、絶縁層13aの厚さばらつきは小さな値で揃っている。さらに、パターン設計が異なったときの平均厚さの違いが、従来工法のものに比べて顕著に小さくなっていることもわかる。
【0039】
これは、すなわち、従来工法では、ビルドアップで設けられる絶縁層がコア板のスルーホールの穴埋めやコア板上の配線パターンによる凹凸により積層時に流動して変形するところ、本実施形態では、製造工程上、そのような流動による変形が生じる可能性が除去されているからである。なお、ここでは絶縁層13aについて評価したが、製造工程上、絶縁層33aについても同様な効果が得られるので、絶縁層33aを挟むようにインピーダンスコントロール配線を設けてもインピーダンスコントロール精度の高いものとなる。
【0040】
次に、本発明の別の実施形態に係るインピーダンスコントロール配線板について図5を参照して説明する。図5は、本発明の別の実施形態に係るインピーダンスコントロール配線板の模式的構造を示す断面図である。図5において、すでに説明した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0041】
この実施形態は、図1中の導体バンプ12、21、32がそれぞれ円柱状(より一般的には積層方向に一致する軸を有しこの軸の方向に径が変化していない形状)の導体バンプ42、51、62に置き換わったものになっている。そのほかの構成については図1に示した実施形態と同様である。この多層板においても、インピーダンスコントロール配線14b、11b間を対向させる絶縁層13aの厚み精度が極めて高く製造される。また、インピーダンスコントロール配線14b、11bの厚みも均一化されている。したがって、インピーダンスコントロール配線14b、11bによるインピーダンスコントロールは精度が高い。以下で製造工程を説明する。
【0042】
図6は、図5に示したインピーダンスコントロール配線板の製造過程要部を模式的断面で示す工程図である。図6において、図5に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0043】
まず、図6(a)に示すように、厚さ例えば公称60μmの例えばFR−4のプリプレグ13を用意し、層間接続体を設ける所定位置に貫通孔42aを周知のドリリングなどの方法により穿設する。次に、図6(b)に示すように、穿設された貫通孔42a内にペースト状の導電性組成物を充填して乾燥させこれを導体バンプ42とする。次に、図6(c)に示すように、充填された導体バンプ42と電気的接続を確立するようにプリプレグ13の両面それぞれに厚さが均一の銅箔(金属箔)11、14を加圧・加熱して積層する。この積層により、プリプレグ13は完全に硬化して絶縁層13aになり、全体が一体化される。この積層工程でのプリプレグ13は、両面が完全に銅箔14、11に挟まれるので加熱で流動化してもその実際の流動量は非常に小さい。
【0044】
次に、図6(d)に示すように、内層となる金属箔11を例えば周知のフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし配線パターン11aおよびインピーダンスコントロール配線11bを形成する。このパターニングでは、金属箔11が均一厚さであり、サイドエッチングの影響も均一に生じるので、パターン幅方向の精度が高いパターニングが可能である。
【0045】
以下の工程は図示しないが、図3(c)に示すような積層工程に相当して、図6(d)に示した配線板素材をふたつ用意し、その間に図6(b)に示す状態と同一の構造のものを配置して加熱・加圧して積層・一体化すれば、図5に示すような構造の一歩手前のものが得られる。そして、この積層後の最外の銅箔14等を例えば周知のフォトリソグラフィ工程により所定にパターニングし、さらに必要な領域に半田レジスト15、35を形成することで図5に示したインピーダンスコントロール配線板を得ることができる。
【0046】
次に、本発明のさらに別の実施形態に係るインピーダンスコントロール配線板について図7を参照して説明する。図7は、本発明のさらに別の実施形態に係るインピーダンスコントロール配線板の模式的構造を示す断面図である。図7において、すでに説明した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0047】
この実施形態は、図5中の導体バンプ42、62がそれぞれ円柱状(より一般的には積層方向に一致する軸を有しこの軸の方向に径が変化していない形状)で金属(めっき)からなる導体バンプ72、82に置き換わったものになっている。そのほかの構成については図5に示した実施形態と同様である。この多層板においても、インピーダンスコントロール配線14b、11b間を対向させる絶縁層13aの厚み精度が極めて高く製造される。また、インピーダンスコントロール配線14b、11bの厚みも均一化されている。したがって、インピーダンスコントロール配線14b、11bによるインピーダンスコントロールは精度が高い。以下で製造工程を説明する。
【0048】
図8は、図7に示したインピーダンスコントロール配線板の製造過程要部を模式的断面で示す工程図である。図8において、図7に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0049】
まず、図8(a)に示すように、厚さが均一の銅箔(金属箔)11を用意し、その面上に、導体バンプ72を形成するための除去部79aの穿設されたマスク79を設ける。そして、銅箔11を電気供給路して電解めっき工程を片面に施し、図8(b)に示すように、めっきによる導体バンプ72をマスク79の除去部79a内に成長させる。導体バンプ72の成長後、マスク79を除去する。これにより図8(c)に示すような金属(めっき)の導体バンプ72の形設された銅箔11を得ることができる。これを、図2(a)に示した導体バンプ12が形設された銅箔11の代わりに用いて以下の工程を行い、図2(d)に示す構造に類似のものを得る。
【0050】
次に、図3(c)に示すような積層工程に相当して、この類似構造のものをふたつ用意し、その間に図6(b)に示す状態と同一の構造のものを配置して加熱・加圧して積層・一体化すれば、図7に示すような構造の一歩手前のものが得られる。最後に、この積層後の最外の銅箔14等を例えば周知のフォトリソグラフィ工程により所定にパターニングし、さらに必要な領域に半田レジスト15、35を形成することで図7に示したインピーダンスコントロール配線板を得ることができる。
【0051】
この実施形態は、図2で説明した事項がほぼそのままであり、インピーダンスコントロール配線14b、11bによるインピーダンスコントロールは精度が高い。
【0052】
次に、本発明のさらに別の実施形態に係るインピーダンスコントロール配線板について図9を参照して説明する。図9は、本発明のさらに別の実施形態に係るインピーダンスコントロール配線板の模式的構造を示す断面図である。図9において、すでに説明した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0053】
この実施形態は、図1中の導体バンプ12、32がそれぞれで金属(金属板のエッチングによるもの)からなる導体バンプ92、102に置き換わったものになっている。そのほかの構成については図1に示した実施形態と同様である。この多層板においても、インピーダンスコントロール配線14b、11b間を対向させる絶縁層13aの厚み精度が極めて高く製造される。また、インピーダンスコントロール配線14b、11bの厚みも均一化されている。したがって、インピーダンスコントロール配線14b、11bによるインピーダンスコントロールは精度が高い。以下で製造工程を説明する。
【0054】
図10は、図5に示したインピーダンスコントロール配線板の製造過程要部を模式的断面で示す工程図である。図6において、図5に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0055】
まず、図10(a)に示すように、厚さが均一(例えば18μm)の銅箔11を用意し、その面上にエッチングバリア層92aaとして厚さ例えば2μmのニッケル合金を電解めっきで形成する。さらに、形成されたエッチングバリア層92aa上に厚さ例えば120μmの銅薄板92aを配置して積層し3層構造のクラッド材を得る。そして、このクラッド材の銅薄板92a上の必要な位置に、導体バンプ92を得るためのエッチングマスク99をエッチングレジストの露光現像により形設する。図示していないが、銅箔11側には全面のマスクを設ける。
【0056】
次に、銅のみを選択的にエッチング可能なアルカリ系のエッチング液を用いて銅薄板92aをエッチングし、図10(b)に示すように、導体バンプ92を残存・形成する。導体バンプ92の大きさは、例えば底面径150μm、上面径80μm、高さ120μmである。一般的には、積層方向に一致する軸を有しこの軸の方向に径が変化する形状(ここではほぼ円錐台)となる。この後、図10(c)に示すようにエッチングバリア層92aaをエッチング除去してもよい。そして、図10(b)または図10(c)に示す導体バンプ92が形設された銅箔11を、図2(a)に示した導体バンプ12が形設された銅箔11の代わりに用いて以下の工程を行い、図2(d)、および図3(b)に示す構造に類似のものをそれぞれ得る。
【0057】
次に、図3(c)に示すような積層工程に相当して、これらの類似構造のものを配置して加熱・加圧して積層・一体化すれば、図9に示すような構造の一歩手前のものが得られる。最後に、この積層後の最外の銅箔14等を例えば周知のフォトリソグラフィ工程により所定にパターニングし、さらに必要な領域に半田レジスト15、35を形成することで図9に示したインピーダンスコントロール配線板を得ることができる。
【0058】
この実施形態も、図2で説明した事項がほぼそのままなので、インピーダンスコントロール配線14b、11bによるインピーダンスコントロールは精度が高い。なお、図10(a)に示した3層のクラッド材は、銅薄板92a上にエッチングバリア層92aaを電解めっきで形成し、さらに銅箔11に相当する膜を金属めっきで形成して得るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係るインピーダンスコントロール配線板の模式的構造を示す断面図。
【図2】図1に示したインピーダンスコントロール配線板の製造過程を模式的な断面で示す工程図。
【図3】図2の続図であって、図1に示したインピーダンスコントロール配線板製造過程を模式的な断面で示す工程図。
【図4】図1に示したインピーダンスコントロール配線板において、インピーダンスコントロール配線間の絶縁層の厚さを実測した例(図4(a))を従来工法によるもの(図4(b))と比較して示す図。
【図5】本発明の別の実施形態に係るインピーダンスコントロール配線板の模式的構造を示す断面図。
【図6】図5に示したインピーダンスコントロール配線板の製造過程要部を模式的断面で示す工程図。
【図7】本発明のさらに別の実施形態に係るインピーダンスコントロール配線板の模式的構造を示す断面図。
【図8】図7に示したインピーダンスコントロール配線板の製造過程要部を模式的断面で示す工程図。
【図9】本発明のさらに別の実施形態に係るインピーダンスコントロール配線板の模式的構造を示す断面図。
【図10】図9に示したインピーダンスコントロール配線板の製造過程要部を模式的断面で示す工程図。
【符号の説明】
【0060】
11…銅箔、11a…配線パターン、11b…インピーダンスコントロール配線、12…導体バンプ(導電性組成物)、13…プリプレグ、13a…絶縁層、14…金属箔、14a…配線パターン、14b…インピーダンスコントロール配線、15…半田レジスト、21…導体バンプ(導電性組成物)、22…プリプレグ、22a…絶縁層、31a…配線パターン、32…導体バンプ(導電性組成物)、33a…絶縁層、34…銅箔、34a…配線パターン、35…半田レジスト、42…導体バンプ(導電性組成物)、42a…貫通孔、51…導体バンプ(導電性組成物)、62…導体バンプ(導電性組成物)、72…導体バンプ(めっき金属)、79…マスク、79a…マスク除去部、82…導体バンプ(めっき金属)、92…導体バンプ(金属エッチング)、92a…銅薄板、92aa…エッチングバリア層、99…エッチングマスク、102…導体バンプ(金属エッチング)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層の厚み方向に陥没せずに前記絶縁層の両面に設けられた、インピーダンスコントロール配線を含む第1および第2の配線パターンと、
前記絶縁層を貫通し、前記第1および第2の配線パターンの面間に挟設された層間接続体と、
前記絶縁層の少なくとも前記第1の配線パターン側または前記第2の配線パターン側に積層された第2の絶縁層と
を具備することを特徴とするインピーダンスコントロール配線板。
【請求項2】
前記層間接続体が、導電性組成物からなり、かつ、積層方向に一致する軸を有し前記軸の方向に径が変化している形状であることを特徴とする請求項1記載のインピーダンスコントロール配線板。
【請求項3】
前記層間接続体が、導電性組成物からなり、かつ、積層方向に一致する軸を有し前記軸の方向に径が変化していない形状であることを特徴とする請求項1記載のインピーダンスコントロール配線板。
【請求項4】
前記層間接続体が、金属からなり、かつ、積層方向に一致する軸を有し前記軸の方向に径が変化している形状であることを特徴とする請求項1記載のインピーダンスコントロール配線板。
【請求項5】
前記層間接続体が、金属からなり、かつ、積層方向に一致する軸を有し前記軸の方向に径が変化していない形状であることを特徴とする請求項1記載のインピーダンスコントロール配線板。
【請求項6】
前記絶縁層が、前記第2の絶縁層の材料と誘電率の異なる材料からなることを特徴とする請求項1記載のインピーダンスコントロール配線板。
【請求項7】
前記絶縁層が、前記第2の絶縁層の材料より誘電正接値の小さい材料からなることを特徴とする請求項1記載のインピーダンスコントロール配線板。
【請求項8】
前記第1の配線パターンの前記インピーダンスコントロール配線がグラウンド配線であり、
前記第2の配線パターンの前記インピーダンスコントロール配線が信号配線であること
を特徴とする請求項1記載のインピーダンスコントロール配線板。
【請求項9】
前記第1の配線パターンの前記インピーダンスコントロール配線が信号配線であり、
前記第2の配線パターンの前記インピーダンスコントロール配線がグラウンド配線であること
を特徴とする請求項1記載のインピーダンスコントロール配線板。
【請求項10】
第1の金属箔上に導体バンプを形成する工程と、
前記形成された導体バンプを貫通させるように前記第1の金属箔上に絶縁層を積層する工程と、
前記貫通させた導体バンプの頭部と電気的接続を確立するように前記積層された絶縁層上に第2の金属箔を積層し一体化する工程と、
前記絶縁層上の前記第1の金属箔および前記第2の金属箔をパターニングしインピーダンスコントロール配線を形成する工程と、
前記絶縁層の少なくとも片面の側に前記パターニングされた第1または第2の金属箔を介して第2の絶縁層を積層し一体化する工程と
を具備することを特徴とするインピーダンスコントロール配線板の製造方法。
【請求項11】
第1の金属箔上に導体バンプを形成する前記工程が、前記第1の金属箔上にスクリーン印刷を用いて導電性組成物を印刷することによりなされることを特徴とする請求項10記載のインピーダンスコントロール配線板の製造方法。
【請求項12】
第1の金属箔上に導体バンプを形成する前記工程が、前記第1の金属箔に積層された金属薄板を領域選択的にエッチングすることによりなされることを特徴とする請求項10記載のインピーダンスコントロール配線板の製造方法。
【請求項13】
第1の金属箔上に導体バンプを形成する前記工程が、前記第1の金属箔上の所定位置に電解めっきプロセスを用いて金属柱を形成することによりなされることを特徴とする請求項10記載のインピーダンスコントロール配線板の製造方法。
【請求項14】
絶縁層の所定位置に貫通孔を穿設する工程と、
前記穿設された貫通孔の内部に導電性組成物を充填する工程と、
前記充填された導電性組成物と電気的接続を確立するように前記絶縁層の両面それぞれに金属箔を積層し一体化する工程と、
前記積層・一体化された金属箔それぞれをパターニングしインピーダンスコントロール配線を形成する工程と、
前記絶縁層の少なくとも片面の側に前記パターニングされた金属箔を介して第2の絶縁層を積層し一体化する工程と
を具備することを特徴とするインピーダンスコントロール配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−120873(P2006−120873A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307369(P2004−307369)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(300091119)ディー・ティー・サーキットテクノロジー株式会社 (9)
【Fターム(参考)】