説明

ウェザーストリップ用材料

【課題】従来技術の問題点が解消された、滑性、耐磨耗性、耐熱性、耐候性および均一な艶消し効果に優れると共に、二酸化炭素を樹脂中に取り込んで固定した材料を利用してウェザーストリップ用材料を製造することで、地球温暖化ガスとして世界的に問題視されている二酸化炭素削減に寄与し、地球環境保全の観点からも優れた環境対応製品として有用なウェザーストリップ用材料の提供。
【解決手段】高分子弾性体材料に被覆および/または含浸させて、他部品と摺接する摺接部に表面処理層を形成するためのウェザーストリップ用材料であって、分子中にマスキングされたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂と、平均重合度5,000〜10,000のジオルガノポリシロキサンおよび/または粘度が100〜10,000CSのシリコーンオイルを含有してなる樹脂組成物であるウェザーストリップ用材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や建物などのドアや窓まわりなど、ボディと部品との隙間から風や雨などが侵入することを防ぐための高分子弾性体材料からなる帯状のシール部品の表面処理層の形成材料として有用な、樹脂組成物材料に関する。より詳しくは、高分子弾性体材料を基材とするウェザーストリップの他部品と摺接する摺接部に表面処理層を形成した場合に、該表面処理層が、特に滑性、耐摩耗性、耐熱性、耐候性に優れたものとなり、しかも環境保全性にも資する有用な材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や建築物の、グラスラン、ドアウェザーストリップ、ボディサイドウェザーストリップ、インサイドシール、アウトサイドシールなどのウェザーストリップの形成材料としては、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、EPDMゴムなどの高分子弾性体材料が用いられている。そして、これらの表面には、滑性、耐摩耗性、離型性、耐熱性、耐水性、耐候性などの性能を持たせるため、塗布または含浸などの方法によって表面処理層を形成することが行われている。
【0003】
このような処理層を形成する材料として、熱硬化性ポリウレタン樹脂にシリコーンオイルを添加したもの(特許文献1参照)や、熱硬化性ポリウレタン樹脂にオルガノポリシロキサンを含有したもの(特許文献2参照)や、ウレタンプレポリマーとシリコーンオイル、疎水性シリカ、ポリイソシアネートからなるもの(特許文献3参照)などの塗料が種々提案されている。
【0004】
一方、最近における環境問題の高まりから、環境対策に積極的に取り組むメーカーが多くなっており、環境保全性に優れた材料を用いて製品を構成する動きがある。このため、例えば、前記塗料に使用する有機溶剤から特定の溶剤(トルエンなど)を選択しないことの検討や、有機溶剤の代わりに水系樹脂を使用してVOC(揮発性有機化合物)排出量をできるだけ抑制する検討も盛んに行われている(特許文献4参照)。しかし、現在の地球規模での環境保全に対応するにはまだ不十分である。
【0005】
環境保全性に寄与し得る材料として、非特許文献1、2に見られるように、二酸化炭素を原料とするポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、以前から知られている。しかし、その応用展開は進んでいないのが実情である。応用展開が進まない理由は、この樹脂は、同種系の高分子化合物として対比されるポリウレタン系樹脂に比べて特性面で明らかに劣る点にある(特許文献5、6参照)。
【0006】
また、近年増加の一途をたどる二酸化炭素に起因すると考えられる地球の温暖化現象は、世界的な問題となっており、二酸化炭素の排出量低減は、全世界的に、重要で早急な対応が望まれる技術課題である。さらに枯渇性石化資源(石油)問題の観点からも、バイオマス、メタンなどの再生可能資源への転換が世界的潮流となっている。
【0007】
上記のような背景下、再び、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が見直されている。すなわち、この樹脂の原料である二酸化炭素は、容易に入手可能、かつ、持続可能な炭素資源であり、しかも二酸化炭素を原料とするプラスチックは、温暖化、資源枯渇などの問題を解決する有効な手段となり得るからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】N.Kihara,T.Endo,J.Org.Chem.,1993,58,6198
【非特許文献2】N.Kihara,T.Endo,J.Polymer Sci.,PartA Polmer Chem.,1993,31(12),2765
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭56−4408号公報
【特許文献2】特開平8−225670号公報
【特許文献3】特開平8−109349号公報
【特許文献4】特開2008−56772号公報
【特許文献5】米国特許第3,072,613号明細書
【特許文献6】特開2000−319504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況下、自動車や建築物のウェザーストリップに、塗布または含浸などの方法によって設けられる表面処理層を、特に、滑性、耐摩耗性、耐熱性、耐候性などの基本特性に優れると共に、地球規模での環境保全性を持った環境対応製品とできれば、非常に有用である。
【0011】
従って、本発明の目的は、ウェザーストリップを構成する高分子弾性体材料の、他部品と摺接する摺接部に表面処理層を形成するための材料が、環境保全性にも資する材料でありながら、形成した表面処理層が、滑性、耐摩耗性、耐熱性、耐候性に優れたものとなる有用なウェザーストリップ用材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、高分子弾性体材料に被覆および/または含浸させて、他部品と摺接する摺接部に表面処理層を形成するためのウェザーストリップ用材料であって、分子中にマスキングされたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂と、平均重合度5,000〜10,000のジオルガノポリシロキサンおよび/または粘度が100〜10,000CSのシリコーンオイルを含有してなる樹脂組成物であることを特徴とするウェザーストリップ用材料を提供する。
【0013】
本発明の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。上記マスキングされたイソシアネート基は、有機ポリイソシアネート基とマスキング剤との反応生成物であって、熱処理することによりマスキングされた部分が解離されてイソシアネート基を生成し、その構造中の水酸基と反応して自己架橋するものであること;上記自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導されたポリヒドロキシポリウレタン樹脂を変性剤によって変性してなるものであること;該5員環環状カーボネート化合物が、エポキシ化合物と二酸化炭素を反応させて得られたものであること;上記自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、原料に二酸化炭素を含み、樹脂中に二酸化炭素を1〜25質量%含有してなること;上記自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂100質量部に対して、平均重合度5,000〜10,000のジオルガノポリシロキサンおよび/または粘度が100〜10,000CSのシリコーンオイルを1〜100質量部の割合で配合してなる樹脂組成物であること;上記自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂100質量部に対して、有機系微粉末および無機系微粉末から選ばれる一種または二種以上の組み合わせからなる添加剤が、1〜150質量部の割合で配合されてなる樹脂組成物であること;さらに自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂以外のバインダー樹脂を含んでなる樹脂組成物であること。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自動車や建築物のウェザーストリップの基材である高分子弾性体材料の、他部品と摺接する摺接部に表面処理層を形成するための材料が、環境保全性にも資する材料でありながら、形成した表面処理層が、滑性、耐摩耗性、耐熱性、耐候性に優れたものとなる有用な材料の提供が達成される。より具体的には、本発明では、分子中にマスキングされたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂と、平均重合度5,000〜10,000のジオルガノポリシロキサンおよび/または粘度が100〜10,000CSのシリコーンオイルを含有した組成物を用いるため、形成した表面処理層が、基本特性に優れたものとなることは勿論、その原料に、地球温暖化ガスとされている二酸化炭素を利用できるため、地球環境保全の観点からも有用な材料、および該材料を用いてなる環境対応製品の提供が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明のウェザーストリップ用材料は、高分子弾性体材料に被覆および/または含浸させて、他部品と摺接する摺接部に表面処理層を形成するための材料であって、バインダー樹脂に、自己架橋型ポリヒドロキシウレタン樹脂を含有してなることを特徴とする。本発明を特徴づける自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、その構造中にマスキングされたイソシアネート基を有する。該自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、例えば、少なくとも1個の遊離のイソシアネート基と、マスキングされたイソシアネート基とを有する変性剤を用い、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂中の水酸基と反応させることで得ることができる。さらに、このポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導された樹脂であることが好ましい。該5員環環状カーボネート化合物は、エポキシ化合物と二酸化炭素を反応させて得られるため、環境保全性にも資する材料となる。以下に、各成分について説明する。
【0016】
[自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂]
(変性剤)
本発明で用いる自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の製造において使用する変性剤の構成成分について説明する。該変性剤としては、有機ポリイソシアネート化合物とマスキング剤との反応生成物が用いられる。この際に使用する有機ポリイソシアネート化合物は、脂肪族或いは芳香族化合物中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する有機化合物であり、従来からポリウレタン樹脂の合成原料として広く使用されている。これらの公知の有機ポリイソシアネート化合物はいずれも本発明において有用である。特に好ましい有機ポリイソシアネート化合物を挙げれば、以下の通りである。
【0017】
例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが挙げられる。さらに、これらの有機ポリイソシアネート化合物と他の化合物との付加体、例えば、下記構造式のものも好適に使用できるが、これらに限定されない。
【0018】

【0019】
本発明で使用する変性剤は、上記した有機ポリイソシアネート化合物とマスキング剤との反応生成物であるが、マスキング剤としては、下記のものが使用できる。アルコール系、フェノール系、活性メチレン系、酸アミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、ピリジン系化合物などがあり、これらを単独あるいは混合して使用してもよい。具体的なマスキング剤としては、下記に挙げる化合物がいずれも使用できる。
【0020】
アルコール系としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、メチルセロソルブ、シクロヘキサノールなどが挙げられる。フェノール系としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ノニルフェノールなどが挙げられる。活性メチレン系としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどが挙げられる。酸アミド系としては、アセトアニリド、酢酸アミド、カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどが挙げられる。イミダゾール系としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾールなどが挙げられる。尿素系としては、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などが挙げられる。オキシム系としては、ホルムアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどが挙げられる。ピリジン系としては、2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシキノリンなどが挙げられる。
【0021】
<変性剤の合成方法>
上記に列挙した有機ポリイソシアネート化合物と、上記に列挙したマスキング剤とを反応させて、本発明で用いる、少なくとも1個の遊離イソシアネート基を有し、かつ、他はマスキングされたイソシアネート基を有する変性剤を合成する。合成方法は特に限定されないが、上記の如きマスキング剤と上記有機ポリイソシアネート化合物とを、1分子中でイソシアネート基が1個以上過剰になる官能基比で、有機溶媒および触媒の存在下または不存在下で、0〜150℃、好ましくは20〜80℃の温度で、30分〜3時間反応させることによって容易に得ることができる。
【0022】
(ポリヒドロキシポリウレタン樹脂)
本発明で用いる上記したような特定の変性剤によって変性されてなる自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、例えば、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応によって得られるポリヒドロキシポリウレタン樹脂から誘導される。以下に、この際に用いる各成分について説明する。
【0023】
<5員環環状カーボネート化合物>
上記で用いる5員環環状カーボネート化合物は、下記[式−A]で示されるように、エポキシ化合物と二酸化炭素とを反応させて製造することができる。さらに詳しくは、エポキシ化合物を、有機溶媒の存在下または不存在下、および触媒の存在下、40℃〜150℃の温度で、常圧または僅かに高められた圧力下、10〜20時間二酸化炭素と反応させることによって得られる。
【0024】

【0025】
上記で使用し得る、エポキシ化合物としては、例えば、次の如き化合物が挙げられる。




【0026】
以上列記したエポキシ化合物は、本発明を構成するポリヒドロキシポリウレタン樹脂を得るために使用できる好ましい化合物であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他、現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
【0027】
<触媒及び反応>
上記したようなエポキシ化合物と、二酸化炭素の反応において使用される触媒としては、下記に挙げるような塩基触媒およびルイス酸触媒が使用できる。
塩基触媒として、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アミン類、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロオクタン、ピリジンなどの環状アミン類、リチウムクロライド、リチウムブロマイド、フッ化リチウム、塩化ナトリウムなどのアルカリ金属塩類、塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩類、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、などの四級アンモニウム塩類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩類、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸銅、酢酸鉄などの金属酢酸塩類、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、テトラブチルホスホニウムクロリドなどのホスホニウム塩類が挙げられる。
【0028】
ルイス酸触媒としては、テトラブチル錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オクトエートなどの錫化合物が挙げられる。
【0029】
上記触媒の量は、エポキシ化合物50質量部当たり、0.1〜100質量部程度、好ましくは0.3〜20質量部とすればよい。上記使用量が0.1質量部未満では、触媒としての効果が小さく、100質量部を超えると最終樹脂の諸性能を低下させる。しかし、残留触媒が重大な性能低下を引き起こすような場合は、純水で洗浄して除去してもよい。
【0030】
エポキシ化合物と二酸化炭素の反応において、使用できる有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。また、これら有機溶剤と他の貧溶剤、例えば、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノンなどの混合系で使用してもよい。
【0031】
本発明で用いるポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、下記[式−B]で示されるように、上記のようにして得られた5員環環状カーボネート化合物と、アミン化合物とを、有機溶媒の存在下、20℃〜150℃の温度下で反応させることで得ることができる。
【0032】

【0033】
<アミン化合物>
本発明で使用するアミン化合物としては、従来ポリウレタン樹脂の製造に使用されているものがいずれも使用でき特に限定されないが、下記に挙げるようなジアミンが好ましい。例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;フェニレンジアミン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(フェニルアミン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン;1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、1,4’−ジアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環族ジアミン;モノエタノールジアミン、エチルアミノエタノールアミン、ヒドロキシエチルアミノプロピルアミンなどのアルカノールジアミンが挙げられる。
【0034】
以上列記したアミン化合物は、本発明において使用する好ましい化合物であって、本発明はこれらの例示の化合物に限定されるものではない。従って、上述の例示の化合物のみならず、その他現在市販されており、市場から容易に入手し得る化合物は、いずれも本発明において使用することができる。
【0035】
<物性>
本発明を構成するポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、その数平均分子量(GPCで測定した標準ポリスチレン換算値)が、2,000〜100,000程度であることが好ましく、より好ましくは5,000〜70,000程度である。さらに、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の水酸基価が20〜300mgKOH/gであることが好ましい。水酸基含有量が上記範囲未満であると、二酸化炭素削減効果が不足であり、一方、上記範囲を超えると、高分子化合物としての諸物性不足となる。
【0036】
(自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂への変性)
本発明を構成する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、それぞれ上述のようにして得られるポリヒドロキシポリウレタン樹脂と変性剤とによって得られる。具体的には、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂中の水酸基と、変性剤中の少なくとも一個の遊離したイソシアネート基とが反応することによって、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が自己架橋型に変性されたものを用いる。
【0037】
本発明を構成する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の変性剤による変性率は、2〜60%であることが好ましく、さらには、5〜40%であることがより好ましい。この変性率の割合により熱処理後の耐磨耗性、耐薬品性、耐熱性などの性能をある程度制御できる。変性率が2%未満であると、十分な架橋によって得られる、ウェザーストリップとして必要な耐熱性、耐薬品性などの特性が十分に得られないおそれがあるので好ましくない。一方で、変性率が60%を超えると、過架橋によって、ウェザーストリップとして好適な折り曲げ白化性が損なわれるとともに、解離したイソシアネート基が樹脂中に反応せずに残存する可能性が増すので、好ましくない。尚、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の水酸基の変性剤による変性率は、下記のようにして算出する。
変性率(%)={1−(変性後の樹脂の水酸基÷変性前の樹脂の水酸基)}×100
【0038】
変性剤とポリヒドロキシポリウレタン樹脂との反応は、有機溶剤および触媒の存在下または不存在下で、0〜150℃、好ましくは20〜80℃の温度で30分〜3時間反応させることによって容易に得ることができる。但し、反応時には、マスキング剤の解離温度より低い温度で反応させる点に注意し、変性された自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の構造中に、マスキングされたイソシアネート基を有するものとなるようにする。
【0039】
[ジオルガノポリシロキサン]
本発明の材料を構成する、上記で説明した自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂に配合されるジオルガノポリシロキサンには、その平均重合度5,000〜10,000のものを用いる。このようなものとしては、直鎖状の流動性のないゴム状シリコーンがあり、容易に市場から入手可能である。平均重合度がこのような範囲であるオルガノポリシロキサン(シリコーン)は高粘度であるため、このようなものを含んでなる本発明のウェザーストリップ用材料によって形成した皮膜では、皮膜表面へのシリコーンの配向(ブリード)が緩やかに進むと考えられる。
【0040】
本発明者らは、そのため、基材である高分子弾性体材料の他部品と摺接する摺接部に、本発明のウェザーストリップ用材料を用いて表面処理層を形成することで、長期間に亘っての性能維持が可能になったものと推論している。市販されているものとしては、例えば、信越化学工業(株)製のシリコーンオイルの高粘度シリーズなどがあり、これらをいずれも使用できる。具体的には、KF96H−6,000cs、KF96H−1万cs、KF96H−12,500cs、KF96H−3万cs、KF96H−5万cs、KF96H−6万cs、KF96H−10万cs、KF96H−30万cs、KF96H−50万cs、KF96H−100万csが挙げられる(以上、商品名)。中でも、KF96H−6,000cs〜KF96H−5万cs、より好ましくはKF96H−1万cs〜KF96H−3万csを用いるとよい。
【0041】
[シリコーンオイル]
本発明では、上記ジオルガノポリシロキサン(シリコーン)に代えて、或いは加えて、動粘度が100〜10,000CSの範囲の粘度の低いシリコーンオイルを、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂に配合する。上記高粘度のシリコーンに加えて、このような粘度の低いシリコーンオイルを少量添加すると、皮膜表面へのシリコーンの配向(ブリード)を制御できるためシリコーン材料の選択の幅を広げることができる。高粘度のシリコーンに対する低粘度のシリコーンオイルの使用量としては、100:3〜20程度とすることが好ましい。該シリコーンオイルとしては、本発明で使用するポリウレタン樹脂の合成の際に用いられる架橋剤であるポリイソシアネートと反応する活性水素基を有しているものでも、有していないものでもよい。なお、本発明においてCSとは、ストークスの100分の1のセンチストークス[cSt]を意味する。
【0042】
本発明のウェザーストリップ用材料である樹脂組成物を構成する、上記したようなジオルガノポリシロキサンおよび/またはシリコーンオイルは、ポリヒドロキシポリウレタン樹脂100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは3〜70質量部、より好ましくは、10〜30質量部の範囲で配合する。該配合量が1質量部未満では添加した効果が小さ過ぎ、一方、配合量が100質量部を超えると塗膜が弱くなる傾向があるので好ましくない。
【0043】
[その他の成分]
また、本発明のウェザーストリップ用材料である樹脂組成物には、形成した処理層表面の艶消し、磨耗性・滑性の向上のため、有機系微粉末および/または無機系微粉末を一種または二種以上組み合わせて使用することが好ましい。有機系微粉末としては、特に制限されるものではなく、例えば、アクリル樹脂粒子、スチレン樹脂粒子、スチレン−アクリル樹脂粒子、フェノール樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、アクリル−ポリウレタン樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子などが使用できる。これら粉末は、その平均粒径が、1〜50μmの範囲のものが好ましい。また、形成した塗膜の表面性向上および艶消性が特に優れることから、粒子の形状は、球状または略球状が実用上好ましい。
【0044】
また、無機系微粉末としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレー、アルミナ、シリカ、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデン、水酸化マグネシウム、ベントナイト、黒鉛などが使用できる。これら粉末の平均粒径は10μm以下が本発明の目的に即するが、できるだけ小さい粒径の粉末であることがより好ましい。
【0045】
上記に挙げたような艶消剤の添加量は、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂100質量部に対し1〜150質量部、好ましくは3〜60質量部とするとよい。1質量部未満では添加効果が充分に得られず、一方、150質量部を越えると塗膜の機械物性が大きく低下する傾向があるため好ましくない。
【0046】
本発明を構成する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を主成分とする樹脂組成物は、基本的には、前記した自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を含んでなる有機溶剤溶液または水分散体(溶液)である。樹脂組成物が有機溶剤溶液である場合に使用する好ましい有機溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンなどが挙げられる。また、有機溶剤中における樹脂濃度は3〜60質量%であることが好ましい。樹脂濃度が3質量%未満では、成膜性に劣るとともに、皮膜の厚みが不足し、そのため強度不足が生じる。一方、樹脂濃度が60質量%を超えると、乾燥後の皮膜の形成が不完全であるとともに、皮膜中への有機溶剤の残留などの問題が生じる恐れがある。
【0047】
本発明を構成する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を主成分とする樹脂組成物を水分散体(溶液)とする場合には、以下のようにして調製することが好ましい。まず、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂中の水酸基またはNH基を酸無水物で半エステル化または半アミド化することによって、樹脂中にカルボキシル基を導入する。その後、該カルボキシル基を、アンモニア、有機アミン化合物、無機塩基などで中和し、カルボン酸塩を形成して自己乳化型の水分散体として使用することが好ましい。この際に使用する酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。また、有機アミン化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミンなどが使用できる。また、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、常法に従って界面活性剤により水中に乳化させた水分散体であってもよい。
【0048】
また、本発明を構成する、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂を主成分としてなる樹脂組成物には、ウェザーストリップの基材である高分子弾性体に付与して表面処理層を形成する場合における、接着性や、塗膜の成膜性の向上のために、さらに、従来公知の各種バインダー樹脂を混合して使用することができる。この際、使用するバインダー樹脂としては、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂中のマスキング剤が解離して生成するイソシアネート基と化学的に反応し得るものが好ましいが、反応性を有していないものでも使用することができる。
【0049】
これらのバインダー樹脂には、ウェザーストリップの表面処理に従来から用いられているバインダー樹脂が使用でき、特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、アルキッド樹脂、変性セルロース樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂などを使用することができる。これらのバインター樹脂を併用する場合、その使用量は、機能性との兼ね合いで決定すればよいが、5〜90質量%の範囲で使用することができる。自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂以外のバインダー樹脂を90質量%使用したとしても、十分に環境対応製品といえるものが得られる。しかし、製品をより環境保全性にも資する環境対応製品とするためには、前記した二酸化炭素を原料として用いた、その構造中に二酸化炭素を固定してなる自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂をより多く使用してなる製品とすることが好ましい。
【0050】
また、本発明を構成する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂と、ジオルガノポリシロキサンやシリコーンオイル等の添加剤からなる樹脂組成物には、必要に応じて、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、分散剤、沈降防止剤などの各種塗料用添加剤を、適宜添加してもよい。
【0051】
前記した自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂に、ジオルガノポリシロキサンやシリコーンオイル等を配合した樹脂組成物からなる本発明のウェザーストリップ用材料を用いることで、機能性に優れる表面処理層を有するウェザーストリップの形成を可能にする。具体的には、本発明の材料を高分子弾性体に被覆および/または含浸することで、基材における他部品と摺接する摺接部に、機能性に優れる表面処理層を容易に形成することができる。例えば、乾燥後の厚みが10〜100μm程度になるように、刷毛塗り、スプレー、ロールコート、グラビア、浸漬などの公知塗布方法で、本発明のウェザーストリップ用材料を高分子弾性体に塗布し、乾燥後、50〜170℃程度の温度で加熱処理することで、表面処理層を形成できる。すなわち、加熱処理すると、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の分子中にあるマスキングされたイソシアネート基のマスキング剤が解離してイソシアネート基が生成し、該イソシアネート基が、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂中の遊離水酸基と反応することによって、自己架橋皮膜が形成される。この結果、ウェザーストリップ用の高分子弾性体上に皮膜が形成され、機能性に優れる表面処理層を有するウェザーストリップ製品が得られる。
【0052】
上記したように、本発明のウェザーストリップ用材料は、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂と、特定のジオルガノポリシロキサンおよび/または特定のシリコーンオイルとを含有してなるが、該樹脂組組成物を用い、高分子弾性体の所望の位置に表面処理層を成形することで、滑性、耐磨耗性、耐熱性、耐候性および均一な艶消し効果にも優れたウェザーストリップが得られる。また、本発明で使用する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、その合成の際に、樹脂中に二酸化炭素を取り入れることができるので、温暖化ガス削減の観点からも有用であり、従来品では到達できなかった環境保全対応のウェザーストリップの提供が可能になる。
【実施例】
【0053】
次に、製造例、重合例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の各例における「部」および「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0054】
[製造例1(変性剤の製造)]
トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン社製、コロネートHL、NCO=12.9%、固形分75%)100部、酢酸エチル24.5部を100℃でよく攪拌しながら、ε−カプロラクタム25.5部を添加し、5時間反応させた。得られた変性剤の赤外吸収スペクトル(堀場製作所 FT−720)によれば、2270cm-1に遊離イソシアネート基による吸収は残っており、この遊離イソシアネート基を定量すると、固形分50%で理論値が2.1%であるのに対し、実測値は1.8%であった。
【0055】
上記の変性剤の主たる構造は下記式と推定される。

【0056】
[製造例2(変性剤の製造)]
ヘキサメチレンジイソシアネートと水の付加体(旭化成社製、ジュラネート24A−100、NCO=23.0%)100部、酢酸エチルを80℃でよく攪拌しながら、メチルエチルケトオキシム32部を添加し、5時間反応させた。得られた変性剤の赤外吸収スペクトルによれば、2270cm-1に遊離イソシアネート基による吸収は残っており、この遊離イソシアネート基を定量すると、固形分50%で理論値が2.9%であるのに対し、実測値は2.6%であった。
【0057】
上記の変性剤の主たる構造は下記式と推定される。

【0058】
[製造例3(変性剤の製造)]
トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン社製、コロネートL、NCO=12.5%、固形分75%)100部、酢酸エチル67.3部を80℃でよく攪拌しながら、メチルエチルケトオキシム17.3部を添加し、5時間反応させた。得られた変性剤の赤外吸収スペクトルによれば、2270cm-1に遊離イソシアネート基による吸収は残っており、この遊離イソシアネート基を定量すると、固形分50%で理論値が2.3%であるのに対し、実測値は2.0%であった。
【0059】
上記の変性剤の主たる構造は下記式と推定される。

【0060】
[製造例4(5員環環状カーボネート化合物の製造)]
攪拌機、温度計、ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器中に、下記式Aで表される2価エポキシ化合物(ジャパンエポキシレジン(株)製、エピコート828;エポキシ当量187g/mol)100部、N−メチルピロリドン100部、ヨウ化ナトリウム1.5部を加え、均一に溶解させた。その後、炭酸ガスを0.5リッター/分の速度でバブリングしながら、80℃で30時間加熱攪拌させた。反応終了後、得られた溶液を300部のn−ヘキサン中に、300rpmで高速攪拌しながら徐々に添加し、生成した粉末状生成物をフィルターでろ過、更にメタノールで洗浄し、N−メチルピロリドンおよびヨウ化ナトリウムを除去した。粉末を乾燥機中で乾燥し、白色粉末の5員環環状カーボネート化合物(1−A)118部(収率95%)を得た。
【0061】

【0062】
上記で得られた生成物の赤外吸収スペクトルは、910cm-1付近のエポキシ基由来のピークが生成物ではほぼ消滅し、1800cm-1付近に、原料には存在しない環状カーボネート基のカルボニル基の吸収が確認された。また、生成物の数平均分子量は414(ポリスチレン換算、東ソー;GPC−8220)であった。得られた5員環環状カーボネート化合物(1−A)中には、19%の二酸化炭素が固定化されている。
【0063】
[製造例5(5員環環状カーボネート化合物の製造)]
製造例4で用いた式Aで示される2価エポキシ化合物の代わりに、下記式Bで示される2価エポキシ化合物(東都化成(株)製、YDF−170;エポキシ当量172g/mol)を使い、製造例4と同様に反応させ、白色粉末の5員環環状カーボネート化合物(1−B)121部(収率96%)を得た。生成物は、赤外吸収スペクトル、GPC、NMRで確認した。得られた5員環環状カーボネート化合物(1−B)中には、20.3%の二酸化炭素が固定化されている。
【0064】

【0065】
[重合例1(自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の製造)]
攪拌機、温度計、ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器を窒素置換し、これに製造例4で得られた5員環環状カーボネート化合物(1−A)100部を、その固形分が35%になるようにN−メチルピロリドンを加えて均一に溶解した。次に、ヘキサメチレンジアミン27.1部を加え、90℃の温度で10時間攪拌し、ヘキサメチレンジアミンが確認できなくなるまで反応させた。次に、製造例1で得た変性剤20部(固形分50%)を添加し、90℃で3時間反応させた。赤外吸収スペクトルによるイソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂溶液を得た。
【0066】
[重合例2〜4(自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の製造)]
以下、重合例1と同様にして、5員環環状カーボネート化合物(1−A)又は(1−B)、ポリアミン化合物、製造例2又は製造例3で得た変性剤を表1に記載したように組み合わせて、重合例2〜4の自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂溶液をそれぞれ得た。
【0067】
[比較重合例1(ポリヒドロキシポリウレタン樹脂の製造)]
重合例1において、変性剤を用いない以外は、重合例1と同様にして、変性していないポリヒドロキシポリウレタン樹脂溶液を得た。
【0068】

【0069】
[比較重合例2(ポリエステルウレタン樹脂)]
攪拌機、温度計、ガス導入管および還流冷却器を備えた反応容器を窒素置換し、平均分子量約2,000のポリブチレンアジペートを150部と、1,4−ブタンジオール15部とを、200部のメチルエチルケトンと50部のジメチルホルムアミドとからなる混合有機溶剤中に溶解し、60℃でよく攪拌しながら、62部の水添加MDIを171部のジメチルホルムアミドに溶解したものを徐々に滴下し、滴下終了後、80℃で6時間反応させた。この溶液は、固形分35%で3.2MPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この溶液から得られたフィルムは、破断強度45MPaで破断伸度480%を有し、熱軟化温度は110℃であった。
【0070】
[比較重合例3(ポリカーボネートポリウレタン樹脂)]
比較重合例1と同様にして、平均分子量約2,000のポリカーボネートジオール(宇部興産(株)製)を150部と、1,4−ブタンジオール15部とを、200部のメチルエチルケトンと50部のジメチルホルムアミドからなる混合有機溶剤中に溶解し、60℃でよく攪拌しながら、62部の水添加MDIを171部のジメチルホルムアミドに溶解したものを徐々に滴下し、滴下終了後、80℃で6時間反応させた。この溶液は、固形分35%で1.6MPa・s(25℃)の粘度を有していた。また、この溶液から得られたフィルムは、破断強度21MPaで破断伸度250%を有し、熱軟化温度は135℃であった。
【0071】
[実施例1〜8、比較例1〜6]
重合例1〜4、比較重合例1〜3の各樹脂溶液(塗料)を使用して、表2、3に記載の配合塗料を作成した。そして、EPDMゴムシート上に、エアースプレーガンを用いて塗工し、140℃で10分間乾燥させ、シート上に20μmの皮膜を形成した。上記のようにして得られた塗膜面を有するEPDMゴムシートを、各ウェザーストリップ用材料によって形成した表面処理層(塗膜面)を評価するための測定用試料とした。
【0072】
[評価]
上記で得られたウェザーストリップ材料(塗料)および上記した各測定用試料について、静止摩擦係数、動摩擦係数、接触角、接着性、磨耗耐久性、耐候性などを以下方法でそれぞれ測定し、実施例および比較例の材料について評価した。評価結果を表2、3にまとめて示した。
【0073】
(静止摩擦係数、動摩擦係数)
各ウェザーストリップ用材料(塗料)の、ガラス部材との静止摩擦係数、動摩擦係数を、表面性試験機(新東科学製)で評価した。
【0074】
(接触角)
上記で得た測定用試料の皮膜部分における水の接触角を、接触角計(協和界面化学社製)で測定し、各ウェザーストリップ用材料を用いて形成した塗膜面の水の接触角とした。
【0075】
(接着性)
上記で得た測定用試料の皮膜部分に対して、碁盤目セロハンテープ剥離試験による剥離試験を行って、各ウェザーストリップ用材料からなる塗膜面の接着性を、下記の基準で評価した。
○;良好(塗布面に剥離部分がない)
×;不良(塗布面に剥離部位がある)
【0076】
(磨耗耐久性)
上記で得た測定用試料の皮膜部分に、9.8Nの荷重を加えたガラス板を当接し、該ガラス板を往復運動させることによる塗膜の裂傷などが生じるまでの往復運動回数を、表面性試験機(新東科学製)で測定した。そして、得られた往復運動回数で、各ウェザーストリップ用材料からなる塗膜面の磨耗耐久性を評価した。
【0077】
(耐候性試験)
サンシャインカーボンアーク耐候試験機(スガ試験機)を用い、上記で得た測定用試料の皮膜部分に、パネル温度83℃で200時間照射後、その塗膜面の状態を目視で観察し、各ウェザーストリップ用材料からなる塗膜面の耐候性を、下記の基準で評価した。
3:表面状態変化なし
2:表面状態少し変化あり
1:大きな変化および白化現象
【0078】
(環境対応性)
各ウェザーストリップ用材料(塗料)中における二酸化炭素の固定化の有無によって、○×で評価した。
【0079】

【0080】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、ウェザーストリップ用材料を、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂および添加物を含有してなる樹脂組成物を用いて成形することにより、その構造中にある熱によって解離するマスキングされたイソシアネート基と、当該樹脂中の水酸基とが反応し、架橋樹脂となるので、滑性、耐磨耗性、耐熱性、耐候性、さらには、均一な艶消し効果に優れたウェザーストリップ用材料を得ることができる。
【0082】
また、本発明で使用する樹脂組成物の主成分である自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂は、二酸化炭素を樹脂中に取り入れて固定した、地球温暖化、資源枯渇などの問題解決に資する有用な材料であるため、これを用いて得られるウェザーストリップ用材料も、従来品では到達できなかった環境保全対応の製品の提供を可能とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子弾性体材料に被覆および/または含浸させて、他部品と摺接する摺接部に表面処理層を形成するためのウェザーストリップ用材料であって、分子中にマスキングされたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂と、平均重合度5,000〜10,000のジオルガノポリシロキサンおよび/または粘度が100〜10,000CSのシリコーンオイルを含有してなる樹脂組成物であることを特徴とするウェザーストリップ用材料。
【請求項2】
前記マスキングされたイソシアネート基は、有機ポリイソシアネート基とマスキング剤との反応生成物であって、熱処理することによりマスキングされた部分が解離されてイソシアネート基を生成し、その構造中の水酸基と反応して自己架橋するものである請求項1に記載のウェザーストリップ用材料。
【請求項3】
前記自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、5員環環状カーボネート化合物とアミン化合物との反応から誘導されたポリヒドロキシポリウレタン樹脂を変性剤によって変性してなるものである請求項1または2に記載のウェザーストリップ用材料。
【請求項4】
前記5員環環状カーボネート化合物が、エポキシ化合物と二酸化炭素を反応させて得られる請求項3に記載のウェザーストリップ用材料。
【請求項5】
前記自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂が、原料に二酸化炭素を含み、樹脂中に二酸化炭素を1〜25質量%含有してなる請求項1に記載のウェザーストリップ用材料。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂100質量部に対して、平均重合度5,000〜10,000のジオルガノポリシロキサンおよび/または粘度が100〜10,000CSのシリコーンオイルを1〜100質量部の割合で配合してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のウェザーストリップ用材料。
【請求項7】
前記樹脂組成物が、自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂100質量部に対して、有機系微粉末および無機系微粉末から選ばれる一種または二種以上の組み合わせからなる添加剤が、1〜150質量部の割合で配合されてなる請求項1〜6のいずれか1項に記載のウェザーストリップ用材料。
【請求項8】
前記樹脂組成物が、さらに自己架橋型ポリヒドロキシポリウレタン樹脂以外のバインダー樹脂を含んでなる請求項1〜7のいずれか1項に記載のウェザーストリップ用材料。

【公開番号】特開2012−31263(P2012−31263A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170818(P2010−170818)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(000238256)浮間合成株式会社 (99)
【Fターム(参考)】