説明

ウェハのスタックから複数のウェハを個別に分離する方法

本発明は、ウェハのスタックをマイクロ波チャンバ中に載置し、ウェハをマイクロ波に曝してウェハ間の水分を蒸発させることによって、ウェハのスタックから複数のウェハを個別に分離する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタックされた状態のウェハの分離に関する。より具体的には、本発明は、ウェハを損傷するリスクを最小に抑えつつ、ウェハのスタックから単一のウェハを分離する方法に関する。この目的のためのマイクロ波を使用した方法が記載される。
【背景技術】
【0002】
ウェハは、半導体材料の薄いスライスであり、マイクロエレクトロニクス及び光電池装置を製造するための基板として使用される。半導体材料は、通常単結晶又は多結晶のシリコンであり、その上に微小配線及び光電池が、(例えば、拡散又はイオン埋め込みなどの)ドーピング、エッチング、及び様々な材料の堆積によって構成される。したがって、ウェハは半導体装置の製造において特に重要である。
【0003】
ウェハは、1インチ(25.4mm)〜11.8インチ(300mm)の様々な大きさ、及び0.1〜0.5mmの厚みで作られる。通常は、ウェハは半導体材料の円柱状の棒材などの加工物、又は多結晶の塊材から鋸を使用して切り出される。ウェハは、洗浄の後、互いの間に薄い水の層を有する状態で重ね合わされている。ウェハは、水の表面張力によって重ね合わされた状態で保持されている。このことは、さらなる処理のためにウェハを分離することを困難にしている。
【0004】
スタックからのウェハの取り出しは、ウェハ材料が壊れやすいために、通常は手動で行われている。荒い取り扱いは、容易に破壊を引き起こすか、又は端部の欠けを引き起こす場合があり、ウェハを更なる製造工程において使えないものとしてしまう。
【0005】
そのような損傷を防止するために、真空の“棒状の治具”がスタックから個々のウェハを手動で持ち上げるための手段として通常は採用される。棒状の治具は通常は真空用の内部経路を有する柄、幅広の先端部、及び柄を真空源に接続するための真空作動スイッチから構成されている。作業者は、ウェハの平坦な表面の中央に棒状治具の幅広の先端部を載置し、よって真空がウェハを棒状治具に吸い付くことを可能にすることによってウェハを持ち上げる。
【0006】
手動でウェハを分離することは多くの欠点を有している。スタックされた状態のウェハは、主に表面張力の効果によって互いにくっつきやすい。単に棒状治具だけではこの効果を克服ことができず、作業者がウェハの端部を押すことによってウェハを離れるように滑らせる必要がある。この取り扱いは、ウェハを損傷させる場合がある。さらに、必要とされる労働力は大きな処理コストを必要とするとともに、長い時間がかかる。分離処理を自動化する試みがなされてきたが、広く採用されることは無かった。
【0007】
特許文献1は、水又は油のような流体のダムと噴流との使用による、スタック状態のウェハの分離を開示している。噴流は最も外側のウェハを上方にダムを越えて押し上げ、下層のウェハはダムによってスタック状態に維持される。供給ユニットはウェハのスタックを徐々に持ち上げ、ウェハのそれぞれがいつかは流体の噴流によってダムの上に持ち上げられるようにする。この方法は手動によるウェハの分離に比べ迅速ではあるが、依然としてウェハを損傷の可能性に曝している。流体の噴流は最も外側のウェハを隣接するウェハに対して滑らせ、他のウェハの薄い端部をダムに対して動かすが、これらのいずれの動作もがウェハの破壊を引き起こす場合がある。
【0008】
特許文献2(米国特許出願公開第2001/0046435号明細書)は、上述の問題を取り上げている。特許文献2は、複数の流体の噴流をスタックの最も外側のウェハと隣接するウェハとの間に導入することによって、ウェハを個々に分離する解決法を記載している。噴流は十分な圧力を有しているとともに、ウェハのスタックの周囲から十分に離間されており、最も外側のウェハを隣接するウェハから、これらウェハの間の横方向の動きがない状態で縦方向に分離させる。この目的は、ウェハ間の滑り接触を生じさせることなく、スタック状態のウェハを分離することである。これとは別の目的は、ウェハの端部に損傷するのに十分な力で衝撃を与えることなく、ウェハを分離することである。
【0009】
この上述に提案された解決法は、分離工程においてウェハを損傷させるリスクを軽減した自動化方法を示しているものの、依然としてウェハを損傷の可能性に曝している。
【0010】
本発明は、ウェハを損傷させるリスクを最小化しつつ分離する新規な方法を記載している。このことは、分離の前にウェハを乾燥させるためにマイクロ波炉を使用することによってなされている。マイクロ波は電磁エネルギーの形態であり、この電磁波は300MHz〜300GHzの周波数帯にある。これに敏感な物質中の極性を有する分子及び自由イオンは、これら電磁場に分子摩擦を生じることによって反応し、材料の質量全体を通して熱を生じる。加熱、セラミック及び粉体金属の焼結、乾燥、結合材除去、ガラスの熔融、及びプラズマ生成のためのマイクロ波エネルギーの使用に対する関心は、業界において確実に増加している。
【0011】
マイクロ波を用いた乾燥は、短い工程時間を達成し、倉庫容量を削減するという試みにおいてますます重要な役割を果たすことができる。
【0012】
マイクロ波の使用は穏やかであるとともに省時間に貢献する。従来の乾燥においては、エネルギーは材料の表面に放射及び伝達によって適用され、材料の均一な加熱を達成するために内部に侵入しなければならない。材料の熱伝導率及び熱抵抗は、主に加熱工程を決定する。感受性の高い材料は高温を許容しない場合が多い。材料が低い熱伝導率しか有さない場合、工程の延長が不可避である。したがって、従来の加熱技術は、多くの製品の製造において厳密な制限を強いられている。
【0013】
マイクロ波による加熱は、非常に迅速で調整が容易である。マイクロ波源にスイッチが入れられるとすぐに、マイクロ波は直ちに加熱されるべき物体中に侵入し、エネルギーの変換が始まる。マイクロ波源のスイッチが切られると、加熱処理は直ちに停止する。長時間の加熱及び冷却工程は必要とされない。
【0014】
本発明によるウェハのスタックの乾燥に対するマイクロ波エネルギーの使用は、従来の加熱を上回る主な可能性及び現実の利点を有している。本発明の方法は、効率的に場所を省き、労働力を省く。本発明の方法は、既知の方法より少ないエネルギーしか要せず、例えば短い加熱時間/冷却時間によるエネルギー供給の瞬間的な制御のように、エネルギー供給を制御しやすい。
【特許文献1】米国特許第5213451号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2001/0046435号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、ウェハの破損のリスクを最小にしつつ、スタック状態のウェハを分離する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に至るために、出願人はウェハのスタックの乾燥を含む2つの異なる方法を調査した。
【0017】
第1の方法は、蒸発が内的加熱手段を有する加熱によって支援される真空チャンバの使用を調査したものである。真空チャンバ中の加熱の間に、濡れた状態のウェハの温度は、所定の圧力における沸点で安定するという結果が示された。ウェハのスタックの底部における加熱要素の使用は、スタック中に大きな勾配を与え、熱がスタック全体に伝達されるのに長い時間がかかる。第2の方法は、マイクロ波室におけるウェハの乾燥を調査したものであり、ウェハのスタックの加熱に対する可能な方法として、マイクロ波による加熱が検討された。
【0018】
2つの検討された方法の結果、及びシリコン(Si)と水の誘電率は、第2の方法が好ましい方法であることを示していた。第2の方法は穏やかであるとともに、スタック状態のウェハの分離に対して効率的である。
【0019】
したがって、特許請求の範囲に挙げる発明は、流体の表面張力によって重ね合わせられた状態に維持されているウェハのスタックから複数のウェハを個々に分離する方法であって、前記ウェハのスタックをマイクロ波室中に配置するステップと、前記ウェハを前記ウェハ間の水を蒸発させる強度及び時間でマイクロ波に暴露し、よって前記ウェハをともに保持している力を解放するステップと、を備える方法である。ウェハのスタックを所定のエネルギーで水が蒸発するのに十分長い時間暴露した後には、ウェハは手動であろうと、ロボットを使用するなど自動的にであろうと、互いに容易に分離することができる。
【0020】
本発明は、添付の特許請求の範囲に規定されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
流体の表面張力によってともに保持されているウェハのスタックから、複数のウェハを個々に分離する発明に係る方法が、以下にさらに詳細に記載される。
【0022】
ウェハは、マイクロ波を含む乾燥工程にかけられる。この工程は、ウェハのスタックをマイクロ波室中に配置するステップと、ウェハを所定の強度でウェハ間の流体、好ましくは水を蒸発させる時間、マイクロ波に暴露するステップとを備える。
【0023】
マイクロ波室は、放射に対する安全を保障するために室外への電磁波を遮蔽する、電子レンジに使用される標準的な箱とすることができる。箱は密閉されていても、部分的に密閉されていても良い。
【0024】
好ましい実施形態においては、箱は標準的な電子レンジ手段に加えて温度制御手段をさらに備える。
【0025】
箱が閉じられている場合、箱は真空を適用するための真空ポンプ手段を備えることができ、乾燥工程を迅速化することができる。例えば熱風などの別の技術もまた使用することができる。工程中で生産された湿気を除去するための手段が好ましく含まれる。これは、密閉された箱が使用される場合には特に重要である。
【0026】
箱の大きさは、一度に処理されるべきウェハの数など、バッチ工程の大きさに依存する。
【0027】
添付の図面はスタック状のウェハを乾燥するためのバッチプロセスを図示したものである。
【0028】
バッチプロセスでは、システムは搬送ベルトを備えている。搬送ベルトは、ウェハのスタックを、電子レンジを通じて所定の速度で移動させ、この所定の速度は処理されるウェハの大きさ及び数に対して、例えばウェハを所定のエネルギーで水を蒸発させるのに十分長い時間暴露するように、調整される。マイクロ波は、乾燥工程を迅速化するように熱風及び/又は別の技術と組み合わせることができる。
【0029】
以下に、ウェハのスタックから複数のウェハを分離する好ましい方法が記載される。1つ以上のウェハのスタックは、例えば電磁場に反応しない材料のような、マイクロ波に対して透過性を有するとともに、高温に対して耐性を有する材料で作られたバスケット中に配置される。
【0030】
バスケットは、ウェハをマイクロ波室へ装荷する搬送ベルトに載置される。搬送ベルトは、マイクロ波を通過してウェハのスタックを連続的に移動させても良いし、又は所定の時間停止し、次いで搬送を続けても良い。これは、マイクロ波に暴露されるウェハのスタックの重量に依存して自動化された工程とすることができる。
【0031】
ウェハのスタックは、ウェハを数枚だけ、又は数百枚含むことができる。スタックは、水平に配置されても、垂直に配置されても良く、マイクロ波室は一度に1つ又はいくつかのスタックを保持することができる。
【0032】
ウェハを乾燥させるために必要とされる熱は蒸発のエネルギー、すなわちウェハを、処理温度に周囲への熱損失分を加えた温度へ加熱するのに必要なエネルギーである。マイクロ波による乾燥に必要とされるエネルギーを決定するために、大雑把な定義は、1Kgの水を1時間で蒸発させるためには1kWのマイクロ波出力が必要とされる、ということである。この定義は、十分な湿気がある初期に限り適用される。
【0033】
合計63グラムの水を含む、300枚のシリコン薄片のアセンブリは、1kWの供給強度では蒸発に15分しか必要としないことが示された。これは、1kWの出力で作動するマイクロ波が、1時間内に20Kg以上、例えば連続操業においては約500kg/日の濡れたシリコンウェハを乾燥する容量を有していることを示している。
【0034】
ウェハの生産速度に保持できる効率的なバッチ工程を達成するためには、いくつかのパラメータを組み合わせる必要がある。出力、時間、水の容積は、穏やかで迅速な乾燥工程を達成するために組み込まれなければならない。時間は搬送ベルトの速度、及び箱によって形成された経路の長さによって決定される。出力は0.1kW〜100kWの範囲とすることができる。
【0035】
本発明は図面を参照しつつ、好ましい例によって記載されてきた。しかし、当業者はいくつかの変形及び代替案が特許請求の範囲に記載された本発明の技術的範囲内に存在することを理解するだろう。
【0036】
本発明の主目的は、ウェハのスタックを乾燥するためのマイクロ波の使用を含む方法の記述である。乾燥工程後に、ウェハのスタックは手動であっても、自動であっても分離することができる。自動工程の場合には、ロボットを、乾燥工程が行われる箱の内側、又は外側のいずれにおいても、分離の目的で使用することができる。
【0037】
ウェハの自動的な分離が乾燥箱の内部で行われる場合には、箱の大きさに依存して異なる好ましい方法が存在する。
【0038】
1つのスタックだけを処理する小さい箱の場合には、乾燥工程は、一旦停止した状態で行うことができ、続いて箱の内側でロボットが分離を行うことができる。1つの実施形態においては、マイクロ波を発生するための指向性制御されたアンテナを、ウェハのスタックの一方の端部が放射を受け、よって他方より前に乾燥するように使用することができる。この方法が使用される場合、ウェハはスタックの乾燥された部分から取り出すことができ、別の部分は指向性制御されたマイクロ波によって乾燥することができる。この技術は、乾燥及び分離工程を迅速化する。
【0039】
1つ以上のウェハのスタックを乾燥させるためのより大きな箱の場合には、箱に入るウェハにマイクロ波を照射しつつ、箱の他方の端部へ移動されるスタックを、ウェハのスタックから複数のウェハを分離するロボット手段によって処理することができる。一方、分離が箱の外で行われる場合には、ロボットは乾燥された後のウェハのスタックを取り上げ、分離が行われる場所へ運ぶことができる。
【0040】
本発明は、シリコンウェハに限定することはなく、全ての種類のウェハに使用することができる。本方法は、例えば流体による、表面張力によって共に保持されている全ての種類のディスクにさらに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】スタック状のウェハを乾燥するためのバッチプロセスの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の表面張力によってともに保持されているウェハのスタックから複数のウェハを個々に分離する方法であって、
前記ウェハのスタックをマイクロ波室に配置するステップと、
前記ウェハを所定の強度のマイクロ波に、前記ウェハ間の前記流体を蒸発させる時間、暴露するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記流体は、水であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウェハは、シリコンウェハであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロ波室は、大気圧を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロ波室は、真空チャンバであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロ波の強度及び暴露時間は、前記ウェハ間の水の総量が蒸発するように調整されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロ波は、スタックの一部分が別の部分より前に乾燥するように指向性制御され、よって乾燥部分からのウェハの分離を行いつつ、濡れた部分を乾燥することを可能とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
流体の表面張力によってともに保持されているウェハのスタックから複数のウェハを個々に分離する方法において使用される箱であって、
該箱は、
前記ウェハをマイクロ波に暴露するための指向性制御されたマイクロ波手段と、
前記ウェハのスタックが制御された乾燥工程を通過するように、出力及び前記マイクロ波への暴露時間を調整する、温度制御手段と、
を備えることを特徴とする箱。
【請求項9】
真空ポンプ手段をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の箱。
【請求項10】
乾燥したウェハを分離するためのロボット手段をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の箱。

【図1】
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【公表番号】特表2009−530810(P2009−530810A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500309(P2009−500309)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【国際出願番号】PCT/NO2007/000097
【国際公開番号】WO2007/105958
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(506385128)
【Fターム(参考)】