説明

ウェーハ搬送装置

【課題】ミニエンバイロメント装置のクリーンボックス内に、クリーンエアの好適なダウンフローを形成できる、ウェーハ搬送装置を提供することを課題とする。
【解決手段】半導体ウェーハ4bを加工するミニエンバイロメント装置1に備わるクリーンボックス2の背面の側の側壁部23bにロボット本体20の走行装置21を備え、ロボット本体20を走行させることで、クリーンボックス2の床部23aに、ロボット本体20が走行する軌道を設置することなく、ロボット本体20を走行できる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミニエンバイロメント装置のクリーンボックスに備わるウェーハ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハは、クリーンボックスなどを含んで構成されるミニエンバイロメント装置の中で加工される。このミニエンバイロメント装置の雰囲気を清浄に維持するため、ミニエンバイロメント装置のクリーンボックスの上部には、例えばファンフィルタユニットなどの吸気装置を備えるとともに下部には排気口を設け、上部からフィルタ等を介したクリーンエアをクリーンボックス内に吸気して下部の排気口から排気する、ダウンフローを形成している。
【0003】
さらに、クリーンボックス内には、ウェーハ搬送装置が備えられ、加工対象である半導体ウェーハをクリーンボックス内で搬送している。
このようなウェーハ搬送装置に関する技術として、例えば特許文献1には、クリーンボックスの床部に設置される軌道上を走行する無人走行車に、ロボット本体が備わって構成される基板の搬送装置(ウェーハ搬送装置)が開示されている。
【特許文献1】特開平10−270528号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に開示される基板の搬送装置(ウェーハ搬送装置)は、クリーンボックスの床部に、走行装置である無人走行車が走行する軌道を設置する必要があり、クリーンボックスの下部に設ける、ダウンフローの排気口の設計自由度(位置や形状)が制限されてしまう。
このように、ダウンフローの排気口の設計自由度が制限されると、好適なダウンフローの形成が制限され、クリーンボックス内におけるゴミの吹き溜まりや巻上げによる清浄度の低下が問題となる。
また、クリーンボックスの床部に設置される軌道によって、ダウンフローの滑らかな流れが阻害されてしまうという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、クリーンボックス内に好適なダウンフローを形成できる、ウェーハ搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、走行装置をクリーンボックスの側壁に備えることを特徴とするウェーハ搬送装置とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、クリーンボックス内に好適なダウンフローを形成できる、ウェーハ搬送装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る、ウェーハ搬送装置を備えるミニエンバイロメント装置を示す図である。
図1に示すように、ミニエンバイロメント装置1は、クリーンボックス2の背面に、上位装置3(半導体製造装置や半導体検査装置)が備わって構成される。
【0010】
クリーンボックス2は、側面視が略L字型のベース23の周囲を、カバー2aで覆って箱状に形成され、上部には、少なくとも1つのファン22aを有するファンフィルタユニット22が備わる。
なお、図1においては、クリーンボックス2の内部構造を説明するために、カバー2aは想像線(二点鎖線)で記載している。
【0011】
ベース23は、クリーンボックス2の床を形成する床部23aと、床部23aから略垂直に起立して、クリーンボックス2の背面の側(上位装置3の側)の側壁の一部を形成する側壁部23bを含んで形成される。
そして、少なくとも1つの排気口25が、ベース23の床部23aを貫通して、クリーンボックス2の内部と外部を連通するように開口している。
ファンフィルタユニット22のファン22aは、外気をクリーンボックス2の内部に取り込む機能を有する。
さらに、ファン22aとクリーンボックス2の間に、図示しないフィルタを介在させ、ファン22aが取り込む外気を図示しないフィルタでろ過することで、外気に含まれる、例えば埃などの異物を除去したクリーンエアを生成できる。
【0012】
そして、ファンフィルタユニット22がクリーンボックス2の上部から取り込んだクリーンエアは、カバー2a等で区切られたクリーンボックス2の内部に供給され、ベース23の床部23aに形成される排気口25から排気される。このことによって、クリーンボックス2の内部には、上部から下部にクリーンエアが流れるダウンフローが形成され、クリーンボックス2の内部を高い清浄度に維持することができる。
【0013】
さらに、クリーンボックス2の正面の側には、例えば円盤状に加工された、半導体ウェーハ4bを収納するストッカ4aを固定するとともに、半導体ウェーハ4bをクリーンボックス2の内部に取り入れる構造を有するロードポート4が備わる。
【0014】
また、クリーンボックス2の背面の側の側壁の一部を形成する、ベース23の側壁部23bには、正面視で左右方向に延びるように走行装置21が備わり、ロボット本体20を左右方向に走行させる。そして、ロボット本体20には、旋回自在に、かつ伸縮自在に多関節のアーム24が備わり、例えばアーム24の先端にはハンド(保持手段)26が取り付けられる。
ハンド26は、例えば公知の構造の機械式チャック又は静電チャックからなり、半導体ウェーハ4bを着脱可能に保持できる。
【0015】
ロボット本体20は、走行装置21によってロードポート4に対向する位置に移動した後、ロードポート4に向けてアーム24を伸長し、ハンド26で、ロードポート4に固定されるストッカ4aの半導体ウェーハ4bを保持して、ストッカ4aから半導体ウェーハ4bを取り出す。さらに、ロボット本体20は、例えばアーム24を旋回して、ストッカ4aから取り出した半導体ウェーハ4bを、クリーンボックス2の背面に備わる上位装置3に搬送する。クリーンボックス2と上位装置3との間には、半導体ウェーハ4bを受け渡すための図示しない開口部が形成され、ロボット本体20は半導体ウェーハ4bを、図示しない開口部を介して上位装置3に受け渡す。
このように、ロードポート4に固定されるストッカ4aに収納される半導体ウェーハ4bは、ロードポート4を介してロボット本体20によってストッカ4aから取り出され、上位装置3に搬送される。
なお、アーム24の機械的構造、及び電気的構造は、公知の技術を使用すればよい。
そして、本実施形態に係るウェーハ搬送装置は、ロボット本体20、走行装置21、アーム24、及びハンド26を含んで構成される。
さらに、ウェーハ搬送装置は、図示しない制御装置によって制御される構成とする。
【0016】
図2は、走行装置の構造の一例を示す図である。走行装置21の構造はとくに限定するものではないが、例えば図2に示すように、ボールねじを使用する構造が考えられる。
図2に示すように、ケース210の長手方向に沿ったねじ軸212が、一端をモータ211に支持され、他端を軸受部材214に支持されて、モータ211で軸中心の周りに回転可能にケース210の内部に備わる。
【0017】
ケース210の背面の側には、例えば2本のリニアガイド217、217が、ねじ軸212と平行に、かつ、ねじ軸212の側に凸になるように設けられる。そして、ねじ軸212は、正面視で2本のリニアガイド217、217の間に配置される。
さらに、それぞれのリニアガイド217、217を摺動する摺動部213a、213aを有する摺動板213が備わる。この構成によって、摺動板213は、リニアガイド217、217を摺動するように備わる。摺動板213に設けられる摺動部213aの数は限定されるものではないが、例えば、それぞれのリニアガイド217、217に2つずつ備わる構成が考えられる(図2には、3つの摺動部213aが示されている)。
【0018】
また、摺動板213は、ねじ軸212と螺合するねじ部216を有する。ねじ部216は、図示しないボールを介してねじ軸212と螺合してボールねじを形成し、摺動板213に対しては、回転不能に固定されて備わる。
このような構造により、ねじ部216は、ねじ軸212の軸中心の周りの回転によってねじ軸212の軸方向に送られ、ねじ軸212の回転方向によって、送る方向を設定できる。例えば、モータ211の側から見てねじ軸212を右回転したとき、ねじ部216が図中左側に送られる構成の場合、モータ211の側から見てねじ軸212を左回転すると、ねじ部216は図中右側に送られる。
【0019】
そして、ねじ部216がねじ軸212の軸方向に送られると、摺動板213は、摺動部213a、213aがリニアガイド217、217を摺動するように、ねじ軸212の軸方向に送られる。すなわち、摺動板213は、リニアガイド217、217に沿って走行する。
【0020】
このように、ウェーハ搬送装置を制御する図示しない制御装置は、モータ211を回転してねじ軸212を回転することで、摺動板213を走行できる。そして、例えば摺動板213の端部を、スライド溝215から突出させるとともに、ロボット本体20(図1参照)を摺動板213と一体に走行できるように構成することで、図示しない制御装置はロボット本体20の走行を制御できる。
さらに、走行装置21は、例えばリニアモータを使用する構造であってもよく、走行装置21の構造は限定されるものではない。
【0021】
図3は、ロボット本体と走行装置の固定部の構造を示す図であって、(a)は、斜視図、(b)は、図3の(a)のA方向からの矢視図である。
図3の(a)に示すように、ロボット本体20は、ロボット固定板(固定板)10に固定され、ロボット固定板10と一体に走行装置21によって走行される。すなわち、走行装置21とロボット本体20は、ロボット固定板10を介して連結される。
ロボット固定板10は、上面視が略コ字型の部材で、走行装置21の反対側が開口するように、走行装置21に備わる。そして、ロボット固定板10の開口の底面部10bが、クリーンボックス2(図1参照)の側壁の一部を形成する側壁部23bと略平行に備わり、スライド溝215に沿って走行する。
【0022】
図2に示すように、例えば、摺動板213を側面視で略コ字型に形成し、走行装置21のスライド溝215からは、ねじ軸212の回転でリニアガイド217、217に沿って走行する摺動板213のコ字型の端部が突出する構成とする。
そして、ロボット固定板10は、図3の(a)に示すように、スライド溝215から突出している摺動板213の端部に固定する。その固定方法は限定されるものではなく、ねじ止めや溶接などで固定すればよい。
【0023】
さらに、ロボット本体20は、ロボット固定板10のコ字型の開口にはまり込むように固定され、ロボット固定板10と一体に、走行装置21で走行される。
このように、ロボット本体20(図1参照)を、ロボット固定板10を介して走行装置21に備える構成によって、ウェーハ搬送装置を制御する図示しない制御装置は、モータ211(図2参照)の回転を制御して、ロボット本体20の走行を制御できる。
【0024】
なお、ロボット本体20は、走行装置21に形成されるリニアガイド217に沿って走行することから、リニアガイド217がロボット本体20の軌道となる。そして、リニアガイド217を有する走行装置21が、クリーンボックス2の側壁の一部を形成する側壁部23bに備わることから、本実施形態においては、ロボット本体20の軌道が、クリーンボックス2の側壁に設置されることになる。
【0025】
ロボット本体20の背面、すなわち、ロボット固定板10と対向する面には、突起部202(図3の(b)参照)が、ロボット固定板10の側に突出して形成される。さらに、ロボット固定板10には、自動調芯軸受101a(図3の(b)参照)に支持される調芯軸101(図3の(b)参照)が備わる。そして、本実施形態においては、突起部202を調芯軸101に載置して、ロボット本体20をロボット固定板10に備える。
【0026】
図4の(a)は、ロボット本体の突起部を示す図、(b)は、調芯軸を示す図、(c)は、自動調芯軸受に突起部を載置することを示す概略図である。
図4の(a)に示すように、ロボット本体20の突起部202は、ロボット本体20の背面の側に突出し、本実施形態において、その下方は逆V字型に形成される。
また、図4の(b)に示すように、調芯軸101は、ロボット固定板10の開口の底面部10bから、開口側に突出するように自動調芯軸受101aに支持される。このように、自動調芯軸受101aに支持されることで、調芯軸101は、軸中心Cを中心とした回転R、上下方向V、及び左右方向Hに回転自在に、ロボット固定板10に支持される。
【0027】
そして、図3の(b)に示すように、突起部202の逆V字型を調芯軸101に載置して、ロボット本体20をロボット固定板10に備える。このことによって、ロボット本体20は、調芯軸101と一体に回転可能に、ロボット固定板10に支持される。
【0028】
本実施形態においては、突起部202の下方を逆V字型に形成したことで、調芯軸101に突起部202を載置する場合に、調芯軸101の軸中心Cを、突起部202の逆V字型の中心に、容易に合わせることができる。
さらに、突起部202の逆V字型の中心がロボット本体20の背面の中心になるように突起部202を形成することで、調芯軸101の軸中心Cを、ロボット本体20の背面の中心に容易に合わせることができる。
【0029】
なお、ロボット本体20をロボット固定板10に備える構成は、限定されるものではない。図4の(c)に示すように、例えば、ロボット固定板10の底面部10bから突出する軸部10cで自動調芯軸受101aを支持し、突起部202を自動調芯軸受101aに載置する構成であってもよい。さらに、図示はしないが、例えば、調芯軸101を直接ロボット本体20にねじ止めなどで固定する構成であってもよいし、ロボット本体20の側にも自動調芯軸受101aを備えて調芯軸101を支持する構成であってもよい。
【0030】
ロボット本体20(図3の(b)参照)は、ロボット本体20の両サイドに形成されるフランジ部201(図3の(b)参照)に備わる固定ボルト204(図3の(b)参照)によって、ロボット固定板10(図3の(b)参照)に固定される。固定ボルト204の詳細は後記する。
フランジ部201は、ロボット本体20の外装と一体に形成されてもよいし、ロボット本体20の例えば背面の側(走行装置21の側)に、板状の部材を固定して形成してもよい。そして、図3の(a)に示すように、ロボット本体20をロボット固定板10に備えると、フランジ部201は、ロボット固定板10と対向する。
【0031】
また、本実施形態に係るウェーハ搬送装置には、ロボット本体20の固定角度を調節する角度調節手段が備わる。
図3の(b)に示すように、ロボット本体20は、自動調芯軸受101aを介してロボット固定板10に支持される調芯軸101に、突起部202を載置してロボット固定板10に支持されるため、調芯軸101と同じ回転の自由度を有する。
調芯軸101は図4の(b)に示すように、軸中心Cを中心とした回転R、及び上下方向Vと左右方向Hに回転(首振り)することから、ロボット本体20もロボット固定板10に対して、調芯軸101の軸中心Cを中心とした回転R、及び上下方向Vと左右方向Hに回転(首振り)する。
なお、自動調芯軸受101aの構造は限定するものではなく、公知の構造のものを使用できる。
【0032】
このように、ロボット本体20は、ロボット固定板10に回転可能に支持されることから、ロボット固定板10に対する、ロボット本体20の固定角度を自在に設定できる。すなわち、クリーンボックス2(図1参照)の背面の側に備わる走行装置21で走行されるロボット本体20の、クリーンボックス2に対する固定角度を自在に設定できる。
そのため、本実施形態に係るウェーハ搬送装置には、ロボット固定板10に対するロボット本体20の固定角度を調節する角度調節手段が備わる。
なお、ロボット本体20の固定角度は、調芯軸101の軸中心Cを中心とした回転角度と、ロボット固定板10の法線に対する傾斜角度とからなる。そして、角度調節手段は、調芯軸101の軸中心Cを中心とした回転角度を調節する回転調節手段と、ロボット固定板10の法線に対する傾斜角度を調節する傾斜調節手段とからなる。
【0033】
図5は、図3の(a)におけるB部拡大図である。
図5に示すように、ロボット本体20は、上面視で略コ字型のロボット固定板10の開口に入るように支持される。そして、ロボット固定板10の底面部10bからロボット本体20のフランジ部201の側に凸部10aが形成される。
さらに、ロボット固定板10の凸部10aには、回転調節ボルト102が備わる。回転調節ボルト102は、例えば無頭ねじからなるボルト部材で、ロボット固定板10の凸部10aに形成されるねじ孔に螺合するように備わる。
回転調節ボルト102の先端は、凸部10aからフランジ部201の端部側面201aに向かって突出し、回転調節用突起を形成する。
【0034】
回転調節ボルト102をフランジ部201の側に向けてねじ込むと、回転調節ボルト102のフランジ部201の側への突出長さが増えて、回転調節ボルト102の先端でフランジ部201の端部側面201aを押し、凸部10aと端部側面201aの距離を調節できる。すなわち、回転調節用突起の、凸部10aからフランジ部201の端部側面201aに向かう突出長さが変更可能である。
さらに、例えばナットNを、ロボット固定板10の外側から回転調節ボルト102に螺合して固定することにより、ダブルナットの効果で回転調節ボルト102を確実に固定できる。
【0035】
このような構成の回転調節ボルト102を、図3の(b)に示すように、例えば自動調芯軸受101aの回転中心に対して点対称の位置に配置し、2組の点対称の組をロボット固定板10に備えることで、ロボット固定板10の調芯軸101の軸中心Cを中心とした回転角度を調節することができる。
図6の(a)は、回転調節ボルトで、調芯軸の軸中心を中心とした回転角度を調節する状態を示す図である。
【0036】
図6の(a)に示すように、図中左上の回転調節ボルト102と、図中右下の回転調節ボルト102でロボット本体20のフランジ部201の端部側面201aを押し込むと、ロボット本体20は、調芯軸101の軸中心Cを中心として時計回りに回転する。
同様に、図示はしないが、図中右上の回転調節ボルト102と、図中左下の回転調節ボルト102でロボット本体20のフランジ部201の端部側面201aを押し込むと、ロボット本体20は、調芯軸101の軸中心Cを中心として反時計回りに回転する。
このように、自動調芯軸受101aに対して点対称に配置される回転調節ボルト102でフランジ部201の端部側面201aを押し込むことで、ロボット本体20の、調芯軸101の軸中心Cを中心とした回転角度を調節できる。すなわち、回転調節ボルト102は回転調節手段となる。
【0037】
図5に戻って、ロボット本体20のフランジ部201には、先端がロボット固定板10に当接するように、傾斜調節ボルト203が備わる。傾斜調節ボルト203は、例えば無頭ねじからなるボルト部材で、ロボット本体20のフランジ部201に形成されるねじ孔に螺合するように備わる。
傾斜調節ボルト203の先端は、ロボット本体20のフランジ部201からロボット固定板10に向かって突出し、傾斜調節用突起を形成する。
【0038】
傾斜調節ボルト203をロボット固定板10の側に向けてねじ込むと、傾斜調節ボルト203のロボット固定板10の側への突出長さが増えて、傾斜調節ボルト203の先端がロボット固定板10を押し、ロボット本体20のロボット固定板10に対する傾斜角度を調節できる。すなわち、傾斜調節用突起の、フランジ部201からロボット固定板10に向かう突出長さが変更可能である。
さらに、例えばナットNを、傾斜調節ボルト203に螺合して固定することにより、ダブルナットの効果で傾斜調節ボルト203を確実に固定できる。
【0039】
このような構成の傾斜調節ボルト203を、図3の(b)に示すように、例えば、調芯軸101の軸中心Cに対して点対称の位置に配置し、2組の点対称の組を備えることで、ロボット本体20の、ロボット固定板10の法線に対する傾斜角度を調節できる。
図6の(b)は、傾斜調節ボルトによる、ロボット固定板の法線に対する傾斜角度の調節を、ロボット本体の側面から見た図、(c)は、傾斜調節ボルトによる、ロボット固定板の法線に対する傾斜角度の調節を、ロボット本体の上面から見た図である。
【0040】
図6の(b)に示すように、図中上の傾斜調節ボルト203をロボット固定板10の側にねじ込むと、フランジ部201からの、傾斜調節ボルト203の突出長さが増え、傾斜調節ボルト203の先端がロボット固定板10を押して、ロボット本体20は、上側がロボット固定板10から離れる方向に傾斜する。
同様に、図示はしないが、図中下の傾斜調節ボルト203をロボット固定板10の側にねじ込むと、ロボット本体20は、下側がロボット固定板10から離れる方向に傾斜する。
【0041】
また、図6の(c)に示すように、図中左側の傾斜調節ボルト203をロボット固定板10の側にねじ込むと、ロボット本体20は、図中左側がロボット固定板10から離れる方向に傾斜する。
同様に、図示はしないが、図中右側の傾斜調節ボルト203をロボット固定板10の側にねじ込むと、ロボット本体20は、図中右側がロボット固定板10から離れる方向に傾斜する。
このように、傾斜調節ボルト203をロボット固定板10の側にねじ込むことで、ロボット本体20の、ロボット固定板10の法線に対する傾斜角度を調節できる。すなわち、傾斜調節ボルト203は傾斜調節手段となる。
【0042】
また、前記したように、ロボット本体20(図3の(b)参照)のフランジ部201(図3の(b)参照)には、ロボット固定板10(図3の(b)参照)にロボット本体20を固定する固定手段として、固定ボルト204(図3の(b)参照)が備わる。
図5に示すように、固定ボルト204は、例えばフランジ部201を貫通する本体固定孔(固定孔)205を挿通するように備わる有頭のボルト部材であって、ロボット固定板10に形成されるねじ孔に螺合する構成とする。
【0043】
固定ボルト204を、フランジ部201の本体固定孔205を介してロボット固定板10のねじ孔に締め込むと、固定ボルト204の頭部がフランジ部201をロボット固定板10の側に締め付ける。そして、フランジ部201に形成されるねじ孔に螺合する傾斜調節ボルト203の先端を、ロボット固定板10に強く押し付け、ロボット本体20をロボット固定板10に固定する。
このような固定ボルト204を、図3の(b)に示すように、例えば、ロボット本体20の4箇所に備えることで、ロボット本体20をロボット固定板10に確実に固定できる。
【0044】
また、フランジ部201に開口する本体固定孔205の形状を、例えば長孔としてもよい。
図7の(a)は、本体固定孔の形状を示す図、(b)は、ロボット本体が、ロボット固定板に、調芯軸の軸中心を中心に回転して固定されることを示す図である。
図6の(a)に示すように、本実施形態に係るウェーハ搬送装置のロボット本体20は、ロボット固定板10に支持される調芯軸101の軸中心Cを中心とした回転角度を調節できる。このことによって、ロボット本体20は、ロボット固定板10に対して、調芯軸101の軸中心Cを中心に回転して固定される場合がある。
【0045】
そこで、本実施形態においては、図7の(a)に示すように、ロボット本体20のフランジ部201に開口する本体固定孔205を、ロボット固定板10を支持する調芯軸101の軸中心Cを中心とする円周上に配置した。さらに、本体固定孔205の形状を、調芯軸101の軸中心Cを中心とする円周に沿って形成される円弧状の長孔とした。
【0046】
このように本体固定孔205を形成することで、例えば図7の(b)に示すように、ロボット本体20が、調芯軸101の軸中心Cを中心に回転してロボット固定板10に固定される場合であっても、固定ボルト204は本体固定孔205を貫通することができ、ロボット本体20をロボット固定板10に確実に固定できるという優れた効果を奏する。
【0047】
以上のような構成によって、図1に示すように、クリーンボックス2の背面の側の側壁部23bに備わる走行装置21がロボット本体20を走行させることができる。
そして、ロボット本体20の走行装置21をクリーンボックス2の背面の側の側壁部23bに備えることで、クリーンボックス2の床部23aには、好適なダウンフローを実現できるように、自在に排気口25を形成できるという優れた効果を奏する。
さらに、好適なダウンフローを阻害する、例えば走行装置21などの要素がクリーンボックス2の下部に存在しないことで、好適なダウンフローを維持できるという優れた効果を奏する。
【0048】
また、図1に示すロボット本体20には、例えば吸気ファンと排出口が備わり(図示せず)、吸気ファンが吸気するクリーンエアを排出口から排出することで、ロボット本体20内部のゴミを排出する構成とする場合がある。この場合においても、ロボット本体20の排出口と、ベース23の床部23aに開口する排気口25の間に、クリーンエアの流れを阻害する要素が存在しないことから、ロボット本体20の内部のゴミを効率よく、クリーンボックス2の外部に排出できるという優れた効果を奏する。
【0049】
以上、本発明に係る最良の実施形態について説明したが、本発明は、発明の趣旨を変更しない範囲において、設計変更が可能である。図8は、ロボット本体と走行装置の固定部の変形例を示す図、図9の(a)は、図8のD部拡大図、(b)は、傾斜調節ボルトによる傾斜角度の調節を示す図である。
図8に示すように、側面視が略L字型のロボット固定台11の垂直部11bに、走行装置21の摺動板213が固定され、ロボット固定台11と摺動板213は一体に走行する。摺動板213の走行を実現する構成は、例えば図2に示す構成とすればよい。
また、摺動板213とロボット固定台11の垂直部11bの固定方法は限定されるものではなく、ねじ止めや溶接などで固定すればよい。
【0050】
ロボット本体20の下方には、固定フランジ206が両サイドに広がるように形成される。固定フランジ206はロボット本体20の外装と一体に形成されてもよいし、ロボット本体20の外装の底部に、例えば板状の部材を固定して形成してもよい。
ロボット本体20は、ロボット固定台11の水平部11aに固定フランジ206を載置するように設置され、固定フランジ206の例えば角部近傍には、先端がロボット固定台11に当接するように、傾斜調節ボルト203が備わる。
【0051】
図9の(a)に示すように、傾斜調節ボルト203は、例えば無頭ねじからなるボルト部材で、ロボット本体20の固定フランジ206に形成されるねじ孔に螺合するように備わる。そして、図9の(b)に示すように、傾斜調節ボルト203をロボット固定台11の水平部11aの側に向けてねじ込むと、傾斜調節ボルト203の固定フランジ206からの突出長さが増えて、傾斜調節ボルト203の先端が水平部11aを押し、固定フランジ206の角部を略鉛直上方に持ち上げる。
【0052】
このような傾斜調節ボルト203を、例えば固定フランジ206の4箇所の角部近傍に備え(図8には、3箇所のみ記載)、固定フランジ206に4箇所ある角部の、ロボット固定台11の水平部11aに対する鉛直方向の高さを調節することで、ロボット本体20の、水平部11aの鉛直方向に対する傾斜角度を調節することができる。
さらに、図9の(a)に示すように、例えばナットNを、傾斜調節ボルト203に螺合して固定することにより、ダブルナットの効果で傾斜調節ボルト203を確実に固定できる。
【0053】
また、ロボット本体20の固定フランジ206には、ロボット固定台11にロボット本体20を固定する固定ボルト204が備わる。
図9の(b)に示すように、固定ボルト204は、例えば固定フランジ206を貫通して開口する、固定孔206aを挿通するように備わる有頭のボルト部材であって、ロボット固定台11の水平部11aに形成されるねじ孔に螺合する構成とする。
固定ボルト204を水平部11aのねじ孔に締め込むと、固定ボルト204の頭部が固定フランジ206を水平部11aの側に締め付ける。そして、固定フランジ206に螺合する傾斜調節ボルト203の先端を、水平部11aに強く押し付け、ロボット本体20をロボット固定台11の水平部11aに固定できる。
このような固定ボルト204を、例えば固定フランジ206の4箇所の角部近傍に備えることで(図8には、3箇所のみ記載)、ロボット本体20をロボット固定台11に確実に固定できる。
【0054】
変形例においては、4本の傾斜調節ボルト203でロボット本体20の、ロボット固定台11に対する傾斜角度を調節できることから、少ない工数で、ロボット本体20のロボット固定台11に対する傾斜角度を調節できるという優れた効果を奏する。
【0055】
以上のように本発明は、半導体ウェーハなどを加工するミニエンバイロメント装置のクリーンボックスに備わるウェーハ搬送装置において、走行装置をクリーンボックスの側壁に配置することで、クリーンボックスの床部に形成する排気口の設計自由度を大幅に高めることができる。そして、クリーンボックスの上部に備わるファンフィルタユニットからクリーンボックスに吸気されるクリーンエアによるダウンフローが好適に形成できるように、排気口を設計することができる。
さらに、クリーンボックスの床部に、例えば走行装置の軌道など、ダウンフローの滑らかな流れを阻害する部材を配置する必要がない。
【0056】
このことによって、クリーンボックス内部に好適なダウンフローを形成することができ、クリーンボックス内におけるゴミの吹き溜まりや巻上げによる清浄度の悪化を抑制できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態に係る、ウェーハ搬送装置を備えるミニエンバイロメント装置を示す図である。
【図2】走行装置の構造の一例を示す図である。
【図3】ロボット本体と走行装置との固定部の構造を示す図であって、(a)は、斜視図、(b)は、図3の(a)のA方向からの矢視図である。
【図4】(a)は、ロボット本体の突起部を示す図、(b)は、調芯軸を示す図、(c)は、自動調芯軸受に突起部を載置することを示す概略図である。
【図5】図3の(a)におけるB部拡大図である。
【図6】(a)は、回転調節ボルトで、調芯軸の軸中心を中心とした回転角度を調節する状態を示す図、(b)は、傾斜調節ボルトによる、ロボット固定板の法線に対する傾斜角度の調節を、ロボット本体の側面から見た図、(c)は、傾斜調節ボルトによる、ロボット固定板の法線に対する傾斜角度の調節を、ロボット本体の上面から見た図である。
【図7】(a)は、本体固定孔の形状を示す図、(b)は、ロボット本体が、ロボット固定板に、調芯軸の軸中心を中心に回転して固定されることを示す図である。
【図8】ロボット本体と走行装置の固定部の変形例を示す図である。
【図9】(a)は、図8のD部拡大図、(b)は、傾斜調節ボルトによる傾斜角度の調節を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ミニエンバイロメント装置
2 クリーンボックス
4b 半導体ウェーハ
10 ロボット固定板(固定板)
10a 凸部
20 ロボット本体(ウェーハ搬送装置)
21 走行装置(ウェーハ搬送装置)
23 ベース
23a 床部
23b 側壁部(側壁)
24 アーム(ウェーハ搬送装置)
26 ハンド(保持手段、ウェーハ搬送装置)
101 調芯軸
101a 自動調芯軸受
102 回転調節ボルト(回転調節用突起、回転調節手段)
201 フランジ部
201a 端部側面
203 傾斜調節ボルト(傾斜調節用突起、傾斜調節手段)
204 固定ボルト(固定手段)
205 本体固定孔(固定孔)
215 スライド溝
217 リニアガイド(軌道)
C 軸中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハを加工するミニエンバイロメント装置のクリーンボックスに備わる走行装置と、
前記半導体ウェーハを着脱可能に保持する保持手段を備えるロボット本体と、を含み、
前記走行装置が前記ロボット本体を走行させて、前記保持手段が保持する前記半導体ウェーハを搬送するウェーハ搬送装置であって、
前記走行装置は、前記ロボット本体が走行する軌道を、前記クリーンボックスの床部に設置することなく前記ロボット本体を走行させることを特徴とするウェーハ搬送装置。
【請求項2】
前記クリーンボックスの側壁に、前記ロボット本体が走行する軌道が設置され、
前記走行装置は、前記軌道に沿って前記ロボット本体を走行させることを特徴とする請求項1に記載のウェーハ搬送装置。
【請求項3】
前記走行装置と前記ロボット本体は、前記軌道が設置される前記クリーンボックスの側壁と略平行な固定板を介して連結され、
前記ロボット本体は、自動調芯軸受に支持されて前記軌道と反対側に突出するように前記固定板に備わる調芯軸と一体に回転可能に、前記固定板に支持されるとともに、
前記固定板の法線に対する当該ロボット本体の傾斜角度を調節する傾斜調節手段、及び前記固定板に当該ロボット本体を固定する固定手段、を具備し、
前記固定板は、前記調芯軸の軸中心を中心とした、前記ロボット本体の回転角度を調節する回転調節手段を具備することを特徴とする請求項2に記載のウェーハ搬送装置。
【請求項4】
前記ロボット本体には、前記固定板と対向するように広がるフランジ部が形成され、
前記固定板には、前記ロボット本体の前記フランジ部の側に凸部が形成され、
前記回転調節手段は、
前記凸部から前記フランジ部の端部側面に向かう突出長さを変更可能な回転調節用突起が、前記自動調芯軸受の回転中心に対して点対称に配置されて構成され、
前記傾斜調節手段は、前記フランジ部から前記固定板に向かう突出長さを変更可能な傾斜調節用突起が、前記調芯軸の軸中心に対して点対称に配置されて構成され、
前記固定手段は、
前記調芯軸の軸中心を中心とする円周に沿った円弧状の長孔が前記フランジ部を貫通してなる固定孔、及び、前記固定孔を挿通するとともに、前記固定板に形成されるねじ孔に螺合する固定ボルト、を含んで構成されることを特徴とする請求項3に記載のウェーハ搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−200160(P2009−200160A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38879(P2008−38879)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】