ウェーハ欠陥検査装置及びウェーハ欠陥検査方法
【課題】ウェーハの画像から適切に欠陥を検出することができるようにする。
【解決手段】画像中のウェーハWの検査対象の領域内の各画素について、所定の直線方向に並ぶ複数の画素中の当該画素を含む所定の範囲内の複数の画素の輝度を平均した移動平均輝度を算出し、各画素における移動平均輝度と、各画素の輝度との差分値を算出し、各画素についての差分値と、閾値とを比較することにより、各画素が欠陥候補画素であるか否かを判定し、欠陥候補画素に基づいて、ウェーハにおける欠陥を検査する画像処理部6bを有するように構成する。
【解決手段】画像中のウェーハWの検査対象の領域内の各画素について、所定の直線方向に並ぶ複数の画素中の当該画素を含む所定の範囲内の複数の画素の輝度を平均した移動平均輝度を算出し、各画素における移動平均輝度と、各画素の輝度との差分値を算出し、各画素についての差分値と、閾値とを比較することにより、各画素が欠陥候補画素であるか否かを判定し、欠陥候補画素に基づいて、ウェーハにおける欠陥を検査する画像処理部6bを有するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを撮像した画像に基づいて、ウェーハの欠陥を検査するウェーハ欠陥検査装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの表裏面や内部にある欠陥を検査するウェーハ欠陥検査装置が知られている。このようなウェーハ欠陥検査装置においては、例えば、ウェーハの主面の一方の面側から赤外光を照射し、他方の面側からウェーハの画像を撮像し、当該撮像した画像に対して、画像解析処理を行うことにより、ウェーハにおける欠陥を検査している。
【0003】
このようなウェーハの欠陥検査においては、例えば、複数のウェーハをまとめたロット毎に、一部のウェーハをサンプリングして、実際の撮像を行うことにより、ウェーハの画像の平均輝度を適切に欠陥を検出できる範囲(欠陥検出可能範囲)内に収めるための撮像条件(レシピ)を決定し、当該レシピを用いて、当該ロットのすべてのウェーハに対して欠陥検査を行っている。
【0004】
ウェーハの表裏面や内部にある欠陥を透過光照明により検出する際における画像の撮像に関する技術としては、ウェーハの比抵抗の値を予め取得し、比抵抗の値に応じて赤外光照明手段の照度を調節するとともに、撮像手段の赤外光に対する感度を調節する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4358889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、従来においては、同一のロットの各ウェーハに対して、同一のレシピに従ってウェーハの画像を撮像するようにしている。
【0007】
近年では、エピタキシャルシリコンウェーハの基板ウェーハとして、低抵抗率のシリコンウェーハ(例えば、P++ウェーハ(0.005〜0.01Ω・cm))が製造されるようになっており、同一のロットのウェーハに対して、同一のレシピを適用した場合に、一部のウェーハの画像においては、欠陥検出可能範囲の平均輝度が得られないという問題が生じている。
【0008】
図1は、測定対象のロット毎の各ウェーハの平均輝度と、欠陥検出可能範囲との関係を示す図である。
【0009】
図1に示すように、各ロットに対して適用するレシピを決定し、そのレシピをそのロット内の各ウェーハに対して適用してウェーハの画像を撮像した場合に、P++ウェーハのロット(図1中のP++ウェーハの1番のロット)において、ウェーハの画像の平均輝度が欠陥検出可能範囲を外れてしまうことがある。このため、撮像したウェーハの画像から適切に欠陥が検出できない虞がある。
【0010】
ところで、ウェーハの欠陥を適切に検出できるか否かは、撮像したウェーハの画像をどのように処理するかに大きく関わっている。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ウェーハの画像から適切に欠陥を検出することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点に係るウェーハ欠陥検査装置は、検査対象のウェーハを載置するウェーハ載置手段と、赤外光を前記ウェーハに対して照射する照射手段と、前記赤外光が照射された前記ウェーハを撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像されたウェーハの画像に基づいてウェーハの欠陥を検査するウェーハ欠陥検査装置であって、画像中のウェーハの検査対象の範囲内の各画素について、所定の直線方向に並ぶ複数の画素中の当該画素を含む所定の範囲内の複数の画素の輝度を平均した輝度を、各画素における基準平均輝度として算出する基準平均輝度算出手段と、各画素における基準平均輝度と、各画素の輝度との差分値を算出する差分値算出手段と、各画素についての差分値と、所定の閾値とを比較することにより、各画素が欠陥領域候補であるか否かを判定する判定手段と、欠陥領域候補の画素に基づいて、ウェーハにおける欠陥を検査する検査手段とを有する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、各画素における基準平均輝度と、各画素の輝度との差分値を、閾値と比較して欠陥候補画素であるか否かを判定するので、画像ムラや、ウェーハ毎の輝度のレベルの違いの影響等を低減することができ、より適切に欠陥候補画素を検出することができる。
【0013】
上記ウェーハ欠陥検査装置において、各画素に対する所定の閾値を、各画素における基準平均輝度に基づいて決定する閾値決定手段を更に有する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、基準平均輝度に基づいて閾値を決定するようにしているので、画像毎に適切な閾値を決定して、適切に欠陥を検出することができる。
【0014】
また、上記ウェーハ欠陥検査装置において、閾値決定手段は、基準平均輝度に所定の値を乗算した値を前記所定の閾値に決定する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、基準平均輝度から容易に且つ適切に閾値を決定することができる。
【0015】
また、上記ウェーハ欠陥検査装置において、基準平均輝度算出手段は、所定の直線方向における所定の範囲内の座標が、ウェーハの外周近傍の検査対象外領域の画素に該当する場合には、当該検査対象外領域の画素の輝度を、検査対象の領域との境界の画素の輝度であると仮定して、基準平均輝度を算出する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、検査対象外範囲の画素の輝度による、基準平均輝度への影響を低減することができ、より適切に欠陥候補画素を検出することができる。
【0016】
また、上記ウェーハ欠陥検査装置において、基準平均輝度算出手段は、所定の直線方向における所定の範囲内の座標が、ウェーハの外周近傍の検査対象外領域の画素に該当する場合には、当該検査対象外領域の画素の輝度を、所定の直線方向の直線上の検査対象外領域との境界に対して対称位置にある画素の輝度であると仮定して、基準平均輝度を算出する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、検査対象外範囲の画素の輝度による、基準平均輝度への影響を低減することができ、より適切に欠陥領域候補を検出することができる。
【0017】
また、上記ウェーハ欠陥検査装置において、検査手段は、欠陥候補画素に基づいて、欠陥候補領域を特定する欠陥領域特定手段と、欠陥候補領域における輝度プロファイルの凹凸、欠陥候補領域における輝度と基準平均輝度との最大値と基準平均輝度との比である輝度比、欠陥候補領域境界において指定した範囲での最大の輝度変化(輝度プロファイルの傾きの絶対値)である輝度の変化率、欠陥候補領域の面積、欠陥候補領域の円形度、又は、欠陥候補領域についての重心を基準としての長い幅と短い幅との比の少なくともいずれか1つに基づいて、所定の欠陥種類に該当するか否かを判定する欠陥種類判定手段とを有する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、所定の欠陥種類に該当する欠陥候補領域を適切に判定することができる。
【0018】
また、上記ウェーハ欠陥検査装置において、検査手段は、所定の欠陥種類に該当する欠陥領域の個数に基づいて、ウェーハが製品として合格か否かを判定する合否判定手段を更に有する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、ウェーハが製品として合格か否かを適切に判定することができる。
【0019】
また、本発明の第2の観点に係るウェーハ欠陥検査方法は、検査対象のウェーハの画像に基づいて、ウェーハの欠陥を検査するウェーハ欠陥検査方法であって、画像中のウェーハの検査対象の範囲内の各画素について、所定の直線方向に並ぶ複数の画素中の当該画素を含む所定の範囲内の複数の画素の輝度を平均した輝度を、各画素における基準平均輝度として算出するステップと、各画素における基準平均輝度と、各画素の輝度との差分値を算出するステップと、各画素についての差分値と、所定の閾値とを比較することにより、各画素が欠陥候補画素であるか否かを判定するステップと、欠陥候補画素に基づいて、ウェーハにおける欠陥を検査するステップとを有する。係るウェーハ欠陥検査方法によると、各画素における基準平均輝度と、各画素の輝度との差分値を、閾値と比較して欠陥候補画素であるか否かを判定するので、画像ムラや、ウェーハ毎の輝度の濃淡レベルの違いの影響等を低減することができ、より適切に欠陥候補画素を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】測定対象のロット毎の各ウェーハの平均輝度と、欠陥検出可能範囲との関係を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るウェーハ欠陥検査装置の構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る欠陥検査により検出される輝度プロファイル例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る欠陥判定テーブルを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る欠陥検査処理のフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る複数の画像取得条件に対する、ウェーハの抵抗率と、ウェーハの画像における平均輝度との関係を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る欠陥検出画像解析処理のフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る2値化処理を説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る2値化処理を説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る輝度閾値を変更した2値化処理を説明する図である。
【図11】本発明の変形例に係る移動平均輝度の算出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
本発明の一実施形態に係るウェーハ欠陥検査装置について説明する。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係るウェーハ欠陥検査装置の構成図である。図2Aは、ウェーハ欠陥検査装置を側面から観察した構成図であり、図2Bは、ウェーハ欠陥検査装置の検査ステージを上方から観察した構成図である。
【0024】
ウェーハ欠陥検査装置1は、検査対象のウェーハWを載置させる検査ステージ3と、赤外光を照射する1以上の照明部4と、照明部4から照射された赤外光をほぼ同一の光量を持つライン状の光に整形してウェーハWに投射するライトガイド5と、ウェーハWの画像を取り込む1以上の撮像手段の一例としての受光部2と、処理装置6とを有する。
【0025】
受光部2は、赤外光に感度を有するイメージラインセンサを有し、イメージラインセンサの受光面が検査ステージ3側、すなわち下方を向くように配置されている。本実施形態では、各受光部2は、それぞれウェーハWの半分の面(図2A左側の受光部2は、ウェーハWの左側の半分の面、図2A右側の受光部2は、ウェーハWの右側の半分の面)のウェーハの画像を取り込むために用いられる。
【0026】
ウェーハ欠陥検査装置1においては、ラインガイド5と、各受光部2のイメージラインセンサとが検査ステージ3を挟んで対向するように配置されている。すなわち、ラインガイド5により投射されるライン状の光が、受光部2のイメージラインセンサのラインに向かうようになっている。
【0027】
検査ステージ3は、Y方向(図2Aの紙面垂直方向、図2Bの上下方向)に直線移動できるようになっている。
【0028】
処理装置6は、制御処理部6aと、基準平均輝度算出手段、差分算出手段、判定手段、閾値決定手段、検査手段、欠陥候補領域特定手段、欠陥種類判定手段、及び合否判定手段の一例としての画像処理部6bと、欠陥判定テーブル6cとを有する。
【0029】
制御処理部6aは、受光部2のラインセンサによる光量に対する感度(ゲイン)を制御する。また、制御処理部6aは、受光部2のラインセンサによる画像取込速度を制御する。本実施形態では、制御処理部6aは、受光条件(感度)と、露光条件の一部(画像取込速度)を含む受光部設定情報を受光部2に送信することにより、受光部2を制御している。また、制御処理部6aは、受光部2により撮像されたウェーハWの撮像画像データ(各画素の輝度データ)を受信し、画像処理部6bに渡す。また、制御処理部6aは、照明部4により照射される赤外光の光量を制御する。本実施形態では、制御処理部6aは、照射条件(光量)を含む光源設定情報を照明部4に送信することにより、照明部4を制御している。また、制御処理部6aは、検査ステージ3の移動速度を制御する。本実施形態では、制御処理部6aは、露光条件の一部(移動速度の指定)を含む速度設定情報を検査ステージ3の図示しない駆動部に送信することにより、検査ステージ3の移動速度を制御している。
【0030】
画像処理部6bは、制御処理部6aから渡された画像データに基づいて、ウェーハWにおける欠陥を検査する欠陥検出画像解析処理を実行する。画像処理部6bは、欠陥検出画像解析処理においては、欠陥の種類を規定する条件(欠陥分類条件)と、ウェーハの合否(製品として合格か、又は不合格か)を決定する条件(合否判定条件)とを記憶する欠陥判定テーブル6c(図4参照)を用いて処理を行う。なお、画像処理部6bの詳細な処理は後述する。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態に係る欠陥検査により検出される輝度プロファイル例を示す図である。
【0032】
ウェーハWにおける欠陥の種類としては、ボイド(気泡)、膜ピンホール、汚れ・シミ、異物、キズ・クラック等、様々な発生形態の異なる欠陥がある。このため、例えば、図3で示すように、欠陥種によっては、欠陥領域の輝度が後述する移動平均輝度よりも下回り、輝度のプロファイルの形状が凹状(欠陥A〜E)として検出されたり、欠陥領域の輝度が移動平均輝度を上回り、輝度プロファイルの形状が凸状(欠陥F)として検出されたりして、欠陥種毎に検出される輝度プロファイルが異なることになる。なお、検出された輝度プロファイルの形状が同じような凹状(例えば、欠陥A〜E)である場合には、輝度プロファイルのみでは明確に欠陥種の判別できない場合もあるが、後述する円形度、あるいは欠陥領域の重心Gを通る最長の直線(最大幅)と最短の直線(最小幅)との比を以って、欠陥種の判別を行うことができる。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態に係る欠陥判定テーブルを示す図である。
【0034】
欠陥判定テーブル6cは、分類名フィールド60と、欠陥分類条件フィールド61と、合否判定条件フィールド62とを有するレコードを複数格納可能である。なお、欠陥判定テーブル6cにおける各設定については、固定的に決定しておいてもよく、また、ユーザーが図示しない入力装置を用いて適宜決定するようにしてもよい。
【0035】
分類名フィールド60には、欠陥の分類名が格納される。
【0036】
欠陥分類条件フィールド61には、後述する欠陥候補領域についての欠陥を分類する際の条件(欠陥分類条件)が格納される。本実施形態では、欠陥分類条件フィールド61は、凹凸フィールド61aと、輝度比フィールド61bと、輝度変化率フィールド61cと、面積フィールド61dと、円形度フィールド61eと、長短比フィールド61fとを有する。なお、本実施形態では、欠陥分類条件フィールド61においては、各フィールド61a〜61fが示す条件の内の少なくとも1以上の条件が設定されるようになっており、分類に使用する条件については、その条件についての値が設定され、分類に使用しない条件については、未設定を示す未設定記号(本実施形態では、”‐”)が設定される。
【0037】
凹凸フィールド61aには、欠陥候補領域について対応する分類の欠陥であると判定する条件である輝度プロファイルの凹凸、すなわち、その領域の輝度プロファイルが、その領域の移動平均輝度に対して、凹状(低い状態)であるか、凸状(高い状態)であるかの条件が設定される。輝度比フィールド61bには、欠陥候補領域内の輝度と移動平均輝度の差分の最大値と、移動平均輝度との比(輝度比)について対応する分類の欠陥であると判定する条件である輝度比の最小値(Min)及び/又は最大値(Max)が設定される。輝度変化率フィールド61cには、対応する分類の欠陥であると判定する条件である輝度変化率の最小値(Min)及び/又は最大値(Max)が設定される。ここで、輝度変化率は重心Gを通る欠陥候補領域境界において予め指定した範囲での輝度の変化の最大値(輝度プロファイルの傾きの絶対値)を示している。面積フィールド61dには、対応する分類の欠陥であると判定する条件である面積Sの最小値(Min)及び/又は最大値(Max)が設定される。円形度フィールド61eには、対応する分類の欠陥であると判定する条件である円形度の最小値(Min)及び/又は最大値(Max)が設定される。長短比フィールド61fには、対応する分類の欠陥であると判定する条件である長短比の最小値(Min)及び/又は最大値(Max)が設定される。ここで,長短比とは、対象領域についての、重心Gを通る短い直線(最小幅)と、長い直線(最大幅)との比率を示している。
【0038】
合否判定条件フィールド62は、長さフィールド62aと、個数フィールド62bとを有する。
【0039】
長さフィールド62aには、合否判定に使用する条件である対応する欠陥分類に分類される欠陥領域に対して、ウェーハの製品として許容される長さが格納される。すなわち、対応する欠陥分類であると判定された欠陥の長さが、許容される長さ以内であれば、ウェーハ製品として合格であり、許容される長さを超える場合には、ウェーハは製品として不合格であることを示している。個数フィールド62bには、合否判定に使用する条件である対応する欠陥分類に分類された欠陥領域として許容される個数(許容個数)が格納される。すなわち、対応する欠陥分類であると判定された欠陥が許容個数を超える場合には、ウェーハは製品として不合格であることを示している。なお、これらフィールド62a、62bには、合否判定に使用する条件については、数値が設定され、それ以外には未設定であることを示す未設定記号(本実施形態では、”‐”)が設定される。
【0040】
例えば、図4中、上から2番目のレコードである欠陥Bに分類される条件としては、輝度プロファイルが凹状であり、輝度比が0.70〜1.00であり、面積Sが30(画素)以上であり、円形度eが0.60〜0.90であり、長短比が1.50〜2.00であることが条件であり、この欠陥Bに分類される欠陥領域が3個以内であれば、このウェーハは製品として合格であることを示している。
【0041】
図5は、本発明の一実施形態に係る欠陥検査処理のフローチャートである。
【0042】
まず、制御処理部6aは、ウェーハWの画像取得時における設定条件(画像取得条件)に初期値を設定する(ステップS1)。すなわち、照明部4における照射条件Inに初期値I0を設定し、受光部2における受光条件Gnに初期値G0を設定し、露光時間(受光部2の画像取込速度及び検査ステージ3の移動速度)に対応する露光条件SSnに初期値SS0を設定する。本実施形態では、初期値I0は、画像取得時に使用する光量範囲の中で最も小さい光量値となっており、初期値G0は、画像取得時に使用するゲイン範囲の中で最も小さいゲイン値となっており、初期値SS0は、画像取得時に使用する露光条件で最も短い露光時間に対応する値(本実施形態では、画像取得時に使用する移動速度範囲で最も速い移動速度であり、且つ画像取得時に使用する画像取込速度範囲で最も速い画像取込速度)となっている。
【0043】
次いで、制御処理部6aは、ウェーハWの画像取得時における設定条件を、受光部2、検査ステージ3、及び照明部4に設定し(ステップS2)、動作させることにより、受光部2からウェーハWの全面の画像を取得する(ステップS3)。
【0044】
次いで、制御処理部6aは、取得した画像の平均輝度(例えば、ウェーハWにおける輝度の平均)が許容される輝度範囲(許容範囲:欠陥検出可能範囲)内にあるか否かを判定する(ステップS4)。例えば、制御処理部6aは、|An−At|≦δAtを満たすか否かにより判定する。ここで、Anは、ウェーハWの画像の平均輝度であり、Atは、許容範囲の中心輝度であり、δAtは、許容範囲の中心輝度からの許容されるずれ量である。なお、許容範囲は、At±δAtと表すことができる。この許容範囲としては、例えば、輝度を0〜255の値とした場合には、70〜170の範囲としてもよい。
【0045】
この結果、平均輝度が許容範囲内にあると判定した場合(ステップS4:YES)には、当該画像が欠陥検出に適切な輝度を有していることを示しているので、制御処理部6aは、画像データを画像処理部6bに渡して、欠陥検出画像解析処理(ステップS5)を実行させる。
【0046】
一方、平均輝度が許容範囲内にないと判定した場合(ステップS4:NO)には、この画像は、欠陥検出に適切な輝度を有していないことを示しているので、制御処理部6aは、より適切な輝度の画像を得るための照射条件候補Ixを決定する(ステップS6)。本実施形態では、制御処理部6aは、照射条件候補IxをIx=k*At/An*Inにより算出する。ここで、kは、所定の係数である。
【0047】
そして、制御処理部6aは、照射条件候補Ixが設定可能な範囲内であるか、すなわち、Imin≦Ix≦Imax(Imin:Iの設定可能な最小値、Imax:Iの設定可能な最大値)であるか否かを判定し(ステップS7)、設定可能な範囲内であると判定した場合(ステップS7:YES)には、照射条件候補Ixを照射条件Inと決定し(ステップS8)、ステップS2に進む。これにより、照射条件(照明部4の光量)をウェーハWの画像の平均輝度が許容範囲に近づくように変更することができる。
【0048】
一方、設定可能な範囲内でないと判定した場合(ステップS7:NO)には、制御処理部6aは、より適切な輝度の画像を得るための受光条件候補Gxを決定する(ステップS9)。本実施形態では、制御処理部6aは、受光条件候補GxをGx=l*At/An*Gnにより算出する。ここで、lは、所定の係数である。
【0049】
そして、制御処理部6aは、受光条件候補Gxが設定可能な範囲内であるか、すなわち、Gmin≦Gx≦Gmax(Gmin:Gの設定可能な最小値、Gmax:Gの設定可能な最大値)であるか否かを判定し(ステップS10)、設定可能な範囲内であると判定した場合(ステップS10:YES)には、受光条件候補Gxを受光条件Gnと決定し(ステップS11)、ステップS2に進む。これにより、受光条件(受光部2のゲイン)をウェーハWの画像の平均輝度が許容範囲に近づくように変更することができる。
【0050】
一方、設定可能な範囲内でないと判定した場合(ステップS10:NO)には、制御処理部6aは、より適切な輝度の画像を得るための露光条件候補SSxを決定する(ステップS12)。本実施形態では、制御処理部6aは、露光条件候補SSxとしてSSnよりも長い露光時間となる条件(検査ステージ3の移動速度を遅くし、受光部2の画像取込速度を遅くした条件)に決定する。
【0051】
そして、制御処理部6aは、露光条件候補SSxが設定可能な範囲内であるかを判定し(ステップS13)、設定可能な範囲内であると判定した場合(ステップS13:YES)には、露光条件候補SSxを露光条件SSnと決定し(ステップS14)、ステップS2に進む。これにより、露光条件(検査ステージ3の移動速度及び受光部2の画像取込速度)をウェーハWの画像の平均輝度が許容範囲に近づくように変更することができる。
【0052】
なお、設定可能な範囲内でないと判定した場合(ステップS13:NO)には、露光条件を変更できず、適切な輝度となる画像を得るための条件を設定することができないことを意味しているので、制御処理部6aは、図示しない表示装置にエラー表示を行う(ステップS15)。
【0053】
このような処理により、ウェーハWの画像取得時の画像取得条件を調整することができ、欠陥検出に適した輝度を有するウェーハWの画像を適切に取得することができる。
【0054】
図6は、本発明の一実施形態に係る複数の画像取得条件に対する、ウェーハの抵抗率と、ウェーハの画像における平均輝度との関係を説明する図である。図6Aは、複数の画像取得条件に対する、ウェーハWの抵抗率と、当該ウェーハWの平均輝度との関係を示す図であり、図6Bは、画像取得条件(1)〜(6)を説明する図である。
【0055】
例えば、条件(1)から条件(2)に変更する場合のように、受光部2のゲインのみを増加させると、図6Aの条件(1)及び条件(2)に対応するグラフに示すように、より低い抵抗率のウェーハWの画像における平均輝度を欠陥検出可能範囲に含めることができるようになる。すなわち、より低い抵抗率のウェーハWの画像を適切に取り込むことができるようになる。
【0056】
また、例えば、条件(2)から条件(3)に変更する場合のように、受光部2のゲインを増加させるとともに、照明部4の光量を増加させると、図6Aの条件(2)及び条件(3)に対応するグラフに示すように、より低い抵抗率のウェーハWの画像における平均輝度を欠陥検出可能範囲に含めることができるようになる。すなわち、より低い抵抗率のウェーハWの画像を適切に取り込むことができるようになる。
【0057】
また、例えば、条件(2)から条件(4)に変更する場合のように、検査ステージ3の移動速度を低速化するとともに、受光部2の画像取込速度も低速化すると、すなわち、露光時間を長くすると、図6Aの条件(2)及び条件(4)に対応するグラフに示すように、より低い抵抗率のウェーハWの画像における平均輝度を欠陥検出可能範囲に含めることができるようになる。すなわち、より低い抵抗率のウェーハWの画像を適切に取り込むことができるようになる。
【0058】
これにより、条件(6)に示すように、受光部2のゲインを最大とし、照明部4の光量を最大にし、検査ステージ3の移動速度を低速化すると、図6Aの条件(6)に示すように、より低い抵抗率のウェーハWの画像における平均輝度を欠陥検出可能範囲に含めることができるようになる。
【0059】
このように、受光部2のゲイン、照明部4の光量、検査ステージ3の移動速度(及び受
光部2の画像取込速度)の少なくとも1つを調整することにより、検査対象のウェーハWの画像における平均輝度を調整することができ、画像の平均輝度を欠陥検出可能範囲に適切に収めることができるようになる。
【0060】
図7は、本発明の一実施形態に係る欠陥検出画像解析処理のフローチャートである。
【0061】
欠陥検出画像解析処理のおいては、画像処理部6bが制御処理部6aから受け取ったウェーハWの画像データ(原画像データ)を用いて、各画素の平滑化処理を行う(ステップS21)。この平滑化処理では、対象とする画素の輝度を、当該画素を中心としたn×n(例えば、3×3)の画素の輝度の平均値とする。本実施形態においては、画像データのすべての画素について、平滑化処理を実行し、これを複数回実行している。これにより、画像データ中の誤差要因を低減することができる。
【0062】
次いで、画像処理部6bは、画像データに所定の微分フィルター処理を実行する(ステップS22)。ここで、微分フィルター処理としては、例えば、微分フィルターをX方向(検査ステージ3の移動方向に垂直な方向:図2参照)に適用してもよく、Y方向(検査ステージ3の移動方向)に適用してもよく、また、ラプラシアンを適用するようにしてもよい。
【0063】
画像処理部6bは、微分フィルター処理後の画像データを用いて、各画素における移動平均輝度(基準平均輝度)を算出する(ステップS23)。本実施形態では、各画素に対する移動平均輝度としては、当該画素に対してX方向の前後の所定数の画素(例えば、当該画素の前後100個の画素)の輝度を平均したものとしている。なお、各画素に対する移動平均輝度として、当該画素に対してY方向の前後の所定数の画素(例えば、前後100個の画素)の輝度を平均したものとしてもよい。
【0064】
次いで、画像処理部6bは、各画素の移動平均輝度に基づいて、欠陥候補画素であるか否かを判定するために使用する輝度閾値を算出する(ステップS24)。本実施形態では、例えば、各画素についての移動平均輝度に、所定の係数(例えば、0.3)を乗算することに得られた値を、各画素に対する輝度閾値としている。なお、輝度閾値として固定値を用いるようにしてもよい。
【0065】
次いで、画像処理部6bは、画像データの各画素の輝度と、各画素の移動平均輝度との差分値(差分の絶対値)を算出して、各画素に対する差分値と、各画素に対して算出された輝度閾値とを比較することにより、欠陥候補画素であるか否かを示す2値の画像データ(2値化画像データ)を生成する2値化処理を実行する(ステップS25)。この2値化処理においては、画素についての差分値が輝度閾値を超える場合に、欠陥候補画素であることを示すデータ(例えば、0:黒色)に変換され、それ以外の場合に、欠陥候補画素でないことを示すデータ(例えば、1:白色)に変換される。
【0066】
次いで、画像処理部6bは、ステップS25で得られた2値化画像データに対して、白色の膨張処理を行う(ステップS26)。この膨張処理においては、画像処理部6bは、各画素について、当該画素を含むn×n(nは所定の整数)範囲内で、例えば、白色の画素が多い場合には、当該画素を白色にする処理を行う。この膨張処理により、例えば、周囲が白い画素であるのに、1つだけ黒い画素があるといったような雑データであると考えられる画素を白い画素に変更することができる。なお、膨張処理を、複数回行うようにしてもよい。
【0067】
次いで、画像処理部6bは、膨張処理が行われた画像データに対して、白色の画素(値が”1”のデータ)の収縮処理を行う(ステップS26)。この収縮処理においては、画像処理部6bは、各画素について、当該画素を含むn×n(nは所定の整数)範囲内で、白色の画素が少ない場合には、当該画素を黒色にする処理を行う。この収縮処理により、先に行った膨張処理の影響により、領域が狭くなってしまった黒の領域を広くする、すなわち、元に近づけることができる。なお、収縮処理を、複数回行うようにしてもよい。
【0068】
次いで、画像処理部6bは、画像データ中における繋がっている欠陥候補画素(黒色の画素)を1つのまとまり(欠陥候補領域)と扱うために番号を対応付けるラベリング処理を行う(ステップS28)。
【0069】
次いで、画像処理部6bは、番号を対応付けられた各欠陥候補領域についての各種形状パラメータを抽出する形状特徴抽出処理を実行する(ステップS29)。本実施形態では、画像処理部6bは、欠陥候補領域の画素数の合計である面積Sと、欠陥候補領域の境界線の長さである周囲長lと、欠陥候補領域の円形度e(e=4πS/l2)と、欠陥候補領域の重心位置Gと、欠陥候補領域の重心位置Gを通る短い直線と、長い直線との長短比とを抽出する。
【0070】
次いで、画像処理部6bは、欠陥候補領域とその周囲(例えば、各画素の上下左右方向の所定数の画素を含む領域)とを含む部分画像データを原画像データから取得する(ステップS30)。
【0071】
次いで、各欠陥候補領域についての各種輝度パラメータを抽出する輝度特徴抽出処理を実行する(ステップS31)。本実施形態では、画像処理部6bは、部分画像データを用いて、輝度のプロファイルが移動平均輝度に対して、プラスであるかマイナスであるかにより、当該欠陥候補領域の輝度プロファイルの凹凸を判定し、当該欠陥候補領域の輝度と基準平均輝度との最大差と基準平均輝度の比を求める。また、重心位置Gを通過する輝度のプロファイルのX方向、Y方向の各境界領域の予め指定した範囲での最大輝度変化率(輝度プロファイルの傾きの絶対値)を求め、これら求めた4点での輝度変化率を平均することにより、平均輝度変化率|a|aveを算出する。なお、輝度プロファイルの凹凸、輝度比、平均輝度変化率も欠陥候補領域に関する特徴パラメータである。
【0072】
次いで、画像処理部6bは、各欠陥候補領域に対して算出した各種特徴パラメータ(形状パラメータ、輝度パラメータ)と、欠陥判定テーブル6cとを用いて、ウェーハWは製品として合格であるか否かを判定する(ステップS32)。具体的には、画像処理部6bは、欠陥判定テーブル6cから最初のレコードを取出し、各欠陥候補領域の特徴パラメータが、そのレコードに設定された欠陥分類条件を満たすか否かにより、欠陥の種類を特定し、更に、レコードの合否判定条件を満たすか否かにより、ウェーハWが製品として合格であるか、不合格であるかを判断する。そして、画像処理部6bは、欠陥判定テーブル6cのすべてのレコードを取出して、上記同様な処理を実行する。このような処理により、ウェーハWの欠陥の種類を特定し、当該ウェーハが製品として合格か、不合格かを適切に判定することができる。
【0073】
図8は、本発明の一実施形態に係る2値化処理を説明する図である。
【0074】
本実施形態では、ステップS25に示すように、各画素についての移動平均輝度と画像輝度との差分値を算出し、この差分値を輝度閾値と比較することにより2値化処理を行っている。このように移動平均輝度と画像輝度との差分値を用いることにより、画像ムラや、ウェーハ毎の輝度の違いの影響を低減することができ、欠陥部分をより適切に検出することができる。
【0075】
図9は、本発明の一実施形態に係る2値化処理を説明する図である。
【0076】
具体的には、図9Aは、画像ムラが発生している画像とその輝度プロファイルを示すものである。図9B及び図9Cは画像ムラが発生している状態で2値化処理を行ったときの結果を示すものである。図9Bに示すように画像ムラが発生している状態で画像輝度に対して閾値を適用した場合、欠陥部分以外の画像ムラ領域まで2値化の対象になってしまうが、図9Cに示すように、差分値に対して閾値を適用することで、画像ムラの影響を受けずに、欠陥部分を適切に検出することができる。
【0077】
図10は、本発明の一実施形態に係る輝度閾値を変更した2値化処理を説明する図である。
【0078】
具体的には、図10は、ウェーハWの面内に存在する100μmの欠陥について平均輝度の異なる画像を取得して、欠陥を検出した結果を示しており、図10Aは、低輝度の画像における欠陥の検出結果を示し、図10Bは、高輝度の画像における欠陥の検出結果を示している。
【0079】
図10A及び図10Bに示すように、画像の濃淡レベルによって輝度閾値を変えることで、ウェーハWに存在する欠陥を適切に検出することができる。本実施形態では、移動平均輝度に対して所定の係数をかけることにより輝度閾値を決定するようにして、移動平均輝度が高いほど輝度閾値が高くなるようにしているので、より適切にウェーハWの欠陥を検出することができる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【0081】
次に、本発明の変形例である第1及び第2変形例について説明する。
【0082】
図11は、本発明の変形例に係る移動平均輝度の算出方法を説明する図である。
【0083】
まず、上記実施形態のウェーハ欠陥検査装置1においては、ウェーハWの外周部は、照明ムラや、ウェーハ外周部のダレ等の影響により、透過光量が少ない。そこで、図11(1)に示すように、ウェーハWの外周部近傍の領域を検査対象外の領域(マスク領域)としている。
【0084】
例えば、上記実施形態では、図11(2)に示すように、各画素の移動平均輝度として、その画素の所定方向(例えば、X方向)の前後100個の画素の輝度を平均していたので、ウェーハWのマスク領域に近い検査領域の画素においては、マスク領域内の画素の輝度の影響により移動平均輝度が低くなって、欠陥候補画素として誤検出される可能性がある。例えば、図11(1)に示すようにマスク領域に近い検査領域内に画像ムラがあった場合には、図11(2)に示すように、画像ムラ部分における輝度と、当該部分の移動平均輝度との差分値が閾値を超えてしまい、当該画像ムラ部分の画素が、欠陥候補画素として誤検出されてしまうことがある。
【0085】
これに対して、第1変形例においては、マスク領域内の画素の輝度を、マスク領域と検査領域との境界部分の画素の輝度と同一であると仮定して、各画素の移動平均輝度を算出するようにしている。このようにすると、図11(1)に示すような画像ムラがあった場合であっても、図11(3)に示すように、画像ムラ部分における輝度と、当該部分の移動平均輝度との差分値が閾値を超えることがなく、当該画像ムラ部分が、欠陥候補画素として誤検出されない。
【0086】
また、第2変形例においては、マスク領域内の各画素の輝度を、マスク領域と検査領域との境界部分に対して対称位置にある各画素の輝度と同一であると仮定して、各画素の移動平均輝度を算出するようにしている。このようにすると、図11(1)に示すような画像ムラがあった場合であっても、図11(4)に示すように、画像ムラ部分における輝度と当該部分の移動平均輝度との差分値が、閾値を超えることがなく、当該画像ムラ部分が、欠陥候補画素として誤検出されない。したがって、欠陥の誤検出を低減することができる。
【0087】
また、本発明は次のようにすることもできる。例えば、上記実施形態では、検査ステージ3を移動させることにより、ウェーハWの全体画像を取得するようにしていたが、例えば、検査ステージ3を移動させずに、受光部2、照明部4、及びライトガイド5を移動させることにより、ウェーハWの全体画像を取得するようにしてもよく、要は、検査ステージ3と、受光部2、照明部4、及びライトガイド5とを相対的に移動させるようにしてウェーハWの全体画像を取得するようにすればよい。
【0088】
また、上記実施形態では、ウェーハの画像の基準となる輝度として、ウェーハWの画像の平均輝度を用いていたが、本発明はこれに限られず、例えば、ウェーハWの画像の最も暗い輝度を用いるようにしてもよく、また、ウェーハWの検査領域における平均の輝度を用いるようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、照射部4の照射条件を変更し、照射条件を変更できない場合に、受光部2の受光条件を変更し、受光条件を変更できない場合に、露光条件を変更するようにしていたが、本発明はこれに限られず、照射条件、受光条件、露光条件の変更する順番は、別の順番であってもよいし、照射条件、受光条件及び露光条件の複数の条件を一度に変更するようにしてもよく、また、例えば、照射条件、受光条件及び露光条件の組を複数用意しておき、それらの中から使用する変更対象を選択するようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、原画像データに対して平滑化処理、微分フィルター処理を行った画像データを用いて、移動平均輝度を算出するようにしていたが、平滑化処理、微分フィルター処理を行わずに、原画像データを用いて移動平均輝度を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 ウェーハ欠陥検査装置、2 受光部、3 検査ステージ、4 照明部、5 ライトガイド、6 処理装置、6a 制御処理部、6b 画像処理部、6c 欠陥判定テーブル、W ウェーハ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを撮像した画像に基づいて、ウェーハの欠陥を検査するウェーハ欠陥検査装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの表裏面や内部にある欠陥を検査するウェーハ欠陥検査装置が知られている。このようなウェーハ欠陥検査装置においては、例えば、ウェーハの主面の一方の面側から赤外光を照射し、他方の面側からウェーハの画像を撮像し、当該撮像した画像に対して、画像解析処理を行うことにより、ウェーハにおける欠陥を検査している。
【0003】
このようなウェーハの欠陥検査においては、例えば、複数のウェーハをまとめたロット毎に、一部のウェーハをサンプリングして、実際の撮像を行うことにより、ウェーハの画像の平均輝度を適切に欠陥を検出できる範囲(欠陥検出可能範囲)内に収めるための撮像条件(レシピ)を決定し、当該レシピを用いて、当該ロットのすべてのウェーハに対して欠陥検査を行っている。
【0004】
ウェーハの表裏面や内部にある欠陥を透過光照明により検出する際における画像の撮像に関する技術としては、ウェーハの比抵抗の値を予め取得し、比抵抗の値に応じて赤外光照明手段の照度を調節するとともに、撮像手段の赤外光に対する感度を調節する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4358889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、従来においては、同一のロットの各ウェーハに対して、同一のレシピに従ってウェーハの画像を撮像するようにしている。
【0007】
近年では、エピタキシャルシリコンウェーハの基板ウェーハとして、低抵抗率のシリコンウェーハ(例えば、P++ウェーハ(0.005〜0.01Ω・cm))が製造されるようになっており、同一のロットのウェーハに対して、同一のレシピを適用した場合に、一部のウェーハの画像においては、欠陥検出可能範囲の平均輝度が得られないという問題が生じている。
【0008】
図1は、測定対象のロット毎の各ウェーハの平均輝度と、欠陥検出可能範囲との関係を示す図である。
【0009】
図1に示すように、各ロットに対して適用するレシピを決定し、そのレシピをそのロット内の各ウェーハに対して適用してウェーハの画像を撮像した場合に、P++ウェーハのロット(図1中のP++ウェーハの1番のロット)において、ウェーハの画像の平均輝度が欠陥検出可能範囲を外れてしまうことがある。このため、撮像したウェーハの画像から適切に欠陥が検出できない虞がある。
【0010】
ところで、ウェーハの欠陥を適切に検出できるか否かは、撮像したウェーハの画像をどのように処理するかに大きく関わっている。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ウェーハの画像から適切に欠陥を検出することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点に係るウェーハ欠陥検査装置は、検査対象のウェーハを載置するウェーハ載置手段と、赤外光を前記ウェーハに対して照射する照射手段と、前記赤外光が照射された前記ウェーハを撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像されたウェーハの画像に基づいてウェーハの欠陥を検査するウェーハ欠陥検査装置であって、画像中のウェーハの検査対象の範囲内の各画素について、所定の直線方向に並ぶ複数の画素中の当該画素を含む所定の範囲内の複数の画素の輝度を平均した輝度を、各画素における基準平均輝度として算出する基準平均輝度算出手段と、各画素における基準平均輝度と、各画素の輝度との差分値を算出する差分値算出手段と、各画素についての差分値と、所定の閾値とを比較することにより、各画素が欠陥領域候補であるか否かを判定する判定手段と、欠陥領域候補の画素に基づいて、ウェーハにおける欠陥を検査する検査手段とを有する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、各画素における基準平均輝度と、各画素の輝度との差分値を、閾値と比較して欠陥候補画素であるか否かを判定するので、画像ムラや、ウェーハ毎の輝度のレベルの違いの影響等を低減することができ、より適切に欠陥候補画素を検出することができる。
【0013】
上記ウェーハ欠陥検査装置において、各画素に対する所定の閾値を、各画素における基準平均輝度に基づいて決定する閾値決定手段を更に有する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、基準平均輝度に基づいて閾値を決定するようにしているので、画像毎に適切な閾値を決定して、適切に欠陥を検出することができる。
【0014】
また、上記ウェーハ欠陥検査装置において、閾値決定手段は、基準平均輝度に所定の値を乗算した値を前記所定の閾値に決定する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、基準平均輝度から容易に且つ適切に閾値を決定することができる。
【0015】
また、上記ウェーハ欠陥検査装置において、基準平均輝度算出手段は、所定の直線方向における所定の範囲内の座標が、ウェーハの外周近傍の検査対象外領域の画素に該当する場合には、当該検査対象外領域の画素の輝度を、検査対象の領域との境界の画素の輝度であると仮定して、基準平均輝度を算出する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、検査対象外範囲の画素の輝度による、基準平均輝度への影響を低減することができ、より適切に欠陥候補画素を検出することができる。
【0016】
また、上記ウェーハ欠陥検査装置において、基準平均輝度算出手段は、所定の直線方向における所定の範囲内の座標が、ウェーハの外周近傍の検査対象外領域の画素に該当する場合には、当該検査対象外領域の画素の輝度を、所定の直線方向の直線上の検査対象外領域との境界に対して対称位置にある画素の輝度であると仮定して、基準平均輝度を算出する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、検査対象外範囲の画素の輝度による、基準平均輝度への影響を低減することができ、より適切に欠陥領域候補を検出することができる。
【0017】
また、上記ウェーハ欠陥検査装置において、検査手段は、欠陥候補画素に基づいて、欠陥候補領域を特定する欠陥領域特定手段と、欠陥候補領域における輝度プロファイルの凹凸、欠陥候補領域における輝度と基準平均輝度との最大値と基準平均輝度との比である輝度比、欠陥候補領域境界において指定した範囲での最大の輝度変化(輝度プロファイルの傾きの絶対値)である輝度の変化率、欠陥候補領域の面積、欠陥候補領域の円形度、又は、欠陥候補領域についての重心を基準としての長い幅と短い幅との比の少なくともいずれか1つに基づいて、所定の欠陥種類に該当するか否かを判定する欠陥種類判定手段とを有する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、所定の欠陥種類に該当する欠陥候補領域を適切に判定することができる。
【0018】
また、上記ウェーハ欠陥検査装置において、検査手段は、所定の欠陥種類に該当する欠陥領域の個数に基づいて、ウェーハが製品として合格か否かを判定する合否判定手段を更に有する。係るウェーハ欠陥検査装置によると、ウェーハが製品として合格か否かを適切に判定することができる。
【0019】
また、本発明の第2の観点に係るウェーハ欠陥検査方法は、検査対象のウェーハの画像に基づいて、ウェーハの欠陥を検査するウェーハ欠陥検査方法であって、画像中のウェーハの検査対象の範囲内の各画素について、所定の直線方向に並ぶ複数の画素中の当該画素を含む所定の範囲内の複数の画素の輝度を平均した輝度を、各画素における基準平均輝度として算出するステップと、各画素における基準平均輝度と、各画素の輝度との差分値を算出するステップと、各画素についての差分値と、所定の閾値とを比較することにより、各画素が欠陥候補画素であるか否かを判定するステップと、欠陥候補画素に基づいて、ウェーハにおける欠陥を検査するステップとを有する。係るウェーハ欠陥検査方法によると、各画素における基準平均輝度と、各画素の輝度との差分値を、閾値と比較して欠陥候補画素であるか否かを判定するので、画像ムラや、ウェーハ毎の輝度の濃淡レベルの違いの影響等を低減することができ、より適切に欠陥候補画素を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】測定対象のロット毎の各ウェーハの平均輝度と、欠陥検出可能範囲との関係を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るウェーハ欠陥検査装置の構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る欠陥検査により検出される輝度プロファイル例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る欠陥判定テーブルを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る欠陥検査処理のフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る複数の画像取得条件に対する、ウェーハの抵抗率と、ウェーハの画像における平均輝度との関係を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る欠陥検出画像解析処理のフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る2値化処理を説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る2値化処理を説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る輝度閾値を変更した2値化処理を説明する図である。
【図11】本発明の変形例に係る移動平均輝度の算出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
本発明の一実施形態に係るウェーハ欠陥検査装置について説明する。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係るウェーハ欠陥検査装置の構成図である。図2Aは、ウェーハ欠陥検査装置を側面から観察した構成図であり、図2Bは、ウェーハ欠陥検査装置の検査ステージを上方から観察した構成図である。
【0024】
ウェーハ欠陥検査装置1は、検査対象のウェーハWを載置させる検査ステージ3と、赤外光を照射する1以上の照明部4と、照明部4から照射された赤外光をほぼ同一の光量を持つライン状の光に整形してウェーハWに投射するライトガイド5と、ウェーハWの画像を取り込む1以上の撮像手段の一例としての受光部2と、処理装置6とを有する。
【0025】
受光部2は、赤外光に感度を有するイメージラインセンサを有し、イメージラインセンサの受光面が検査ステージ3側、すなわち下方を向くように配置されている。本実施形態では、各受光部2は、それぞれウェーハWの半分の面(図2A左側の受光部2は、ウェーハWの左側の半分の面、図2A右側の受光部2は、ウェーハWの右側の半分の面)のウェーハの画像を取り込むために用いられる。
【0026】
ウェーハ欠陥検査装置1においては、ラインガイド5と、各受光部2のイメージラインセンサとが検査ステージ3を挟んで対向するように配置されている。すなわち、ラインガイド5により投射されるライン状の光が、受光部2のイメージラインセンサのラインに向かうようになっている。
【0027】
検査ステージ3は、Y方向(図2Aの紙面垂直方向、図2Bの上下方向)に直線移動できるようになっている。
【0028】
処理装置6は、制御処理部6aと、基準平均輝度算出手段、差分算出手段、判定手段、閾値決定手段、検査手段、欠陥候補領域特定手段、欠陥種類判定手段、及び合否判定手段の一例としての画像処理部6bと、欠陥判定テーブル6cとを有する。
【0029】
制御処理部6aは、受光部2のラインセンサによる光量に対する感度(ゲイン)を制御する。また、制御処理部6aは、受光部2のラインセンサによる画像取込速度を制御する。本実施形態では、制御処理部6aは、受光条件(感度)と、露光条件の一部(画像取込速度)を含む受光部設定情報を受光部2に送信することにより、受光部2を制御している。また、制御処理部6aは、受光部2により撮像されたウェーハWの撮像画像データ(各画素の輝度データ)を受信し、画像処理部6bに渡す。また、制御処理部6aは、照明部4により照射される赤外光の光量を制御する。本実施形態では、制御処理部6aは、照射条件(光量)を含む光源設定情報を照明部4に送信することにより、照明部4を制御している。また、制御処理部6aは、検査ステージ3の移動速度を制御する。本実施形態では、制御処理部6aは、露光条件の一部(移動速度の指定)を含む速度設定情報を検査ステージ3の図示しない駆動部に送信することにより、検査ステージ3の移動速度を制御している。
【0030】
画像処理部6bは、制御処理部6aから渡された画像データに基づいて、ウェーハWにおける欠陥を検査する欠陥検出画像解析処理を実行する。画像処理部6bは、欠陥検出画像解析処理においては、欠陥の種類を規定する条件(欠陥分類条件)と、ウェーハの合否(製品として合格か、又は不合格か)を決定する条件(合否判定条件)とを記憶する欠陥判定テーブル6c(図4参照)を用いて処理を行う。なお、画像処理部6bの詳細な処理は後述する。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態に係る欠陥検査により検出される輝度プロファイル例を示す図である。
【0032】
ウェーハWにおける欠陥の種類としては、ボイド(気泡)、膜ピンホール、汚れ・シミ、異物、キズ・クラック等、様々な発生形態の異なる欠陥がある。このため、例えば、図3で示すように、欠陥種によっては、欠陥領域の輝度が後述する移動平均輝度よりも下回り、輝度のプロファイルの形状が凹状(欠陥A〜E)として検出されたり、欠陥領域の輝度が移動平均輝度を上回り、輝度プロファイルの形状が凸状(欠陥F)として検出されたりして、欠陥種毎に検出される輝度プロファイルが異なることになる。なお、検出された輝度プロファイルの形状が同じような凹状(例えば、欠陥A〜E)である場合には、輝度プロファイルのみでは明確に欠陥種の判別できない場合もあるが、後述する円形度、あるいは欠陥領域の重心Gを通る最長の直線(最大幅)と最短の直線(最小幅)との比を以って、欠陥種の判別を行うことができる。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態に係る欠陥判定テーブルを示す図である。
【0034】
欠陥判定テーブル6cは、分類名フィールド60と、欠陥分類条件フィールド61と、合否判定条件フィールド62とを有するレコードを複数格納可能である。なお、欠陥判定テーブル6cにおける各設定については、固定的に決定しておいてもよく、また、ユーザーが図示しない入力装置を用いて適宜決定するようにしてもよい。
【0035】
分類名フィールド60には、欠陥の分類名が格納される。
【0036】
欠陥分類条件フィールド61には、後述する欠陥候補領域についての欠陥を分類する際の条件(欠陥分類条件)が格納される。本実施形態では、欠陥分類条件フィールド61は、凹凸フィールド61aと、輝度比フィールド61bと、輝度変化率フィールド61cと、面積フィールド61dと、円形度フィールド61eと、長短比フィールド61fとを有する。なお、本実施形態では、欠陥分類条件フィールド61においては、各フィールド61a〜61fが示す条件の内の少なくとも1以上の条件が設定されるようになっており、分類に使用する条件については、その条件についての値が設定され、分類に使用しない条件については、未設定を示す未設定記号(本実施形態では、”‐”)が設定される。
【0037】
凹凸フィールド61aには、欠陥候補領域について対応する分類の欠陥であると判定する条件である輝度プロファイルの凹凸、すなわち、その領域の輝度プロファイルが、その領域の移動平均輝度に対して、凹状(低い状態)であるか、凸状(高い状態)であるかの条件が設定される。輝度比フィールド61bには、欠陥候補領域内の輝度と移動平均輝度の差分の最大値と、移動平均輝度との比(輝度比)について対応する分類の欠陥であると判定する条件である輝度比の最小値(Min)及び/又は最大値(Max)が設定される。輝度変化率フィールド61cには、対応する分類の欠陥であると判定する条件である輝度変化率の最小値(Min)及び/又は最大値(Max)が設定される。ここで、輝度変化率は重心Gを通る欠陥候補領域境界において予め指定した範囲での輝度の変化の最大値(輝度プロファイルの傾きの絶対値)を示している。面積フィールド61dには、対応する分類の欠陥であると判定する条件である面積Sの最小値(Min)及び/又は最大値(Max)が設定される。円形度フィールド61eには、対応する分類の欠陥であると判定する条件である円形度の最小値(Min)及び/又は最大値(Max)が設定される。長短比フィールド61fには、対応する分類の欠陥であると判定する条件である長短比の最小値(Min)及び/又は最大値(Max)が設定される。ここで,長短比とは、対象領域についての、重心Gを通る短い直線(最小幅)と、長い直線(最大幅)との比率を示している。
【0038】
合否判定条件フィールド62は、長さフィールド62aと、個数フィールド62bとを有する。
【0039】
長さフィールド62aには、合否判定に使用する条件である対応する欠陥分類に分類される欠陥領域に対して、ウェーハの製品として許容される長さが格納される。すなわち、対応する欠陥分類であると判定された欠陥の長さが、許容される長さ以内であれば、ウェーハ製品として合格であり、許容される長さを超える場合には、ウェーハは製品として不合格であることを示している。個数フィールド62bには、合否判定に使用する条件である対応する欠陥分類に分類された欠陥領域として許容される個数(許容個数)が格納される。すなわち、対応する欠陥分類であると判定された欠陥が許容個数を超える場合には、ウェーハは製品として不合格であることを示している。なお、これらフィールド62a、62bには、合否判定に使用する条件については、数値が設定され、それ以外には未設定であることを示す未設定記号(本実施形態では、”‐”)が設定される。
【0040】
例えば、図4中、上から2番目のレコードである欠陥Bに分類される条件としては、輝度プロファイルが凹状であり、輝度比が0.70〜1.00であり、面積Sが30(画素)以上であり、円形度eが0.60〜0.90であり、長短比が1.50〜2.00であることが条件であり、この欠陥Bに分類される欠陥領域が3個以内であれば、このウェーハは製品として合格であることを示している。
【0041】
図5は、本発明の一実施形態に係る欠陥検査処理のフローチャートである。
【0042】
まず、制御処理部6aは、ウェーハWの画像取得時における設定条件(画像取得条件)に初期値を設定する(ステップS1)。すなわち、照明部4における照射条件Inに初期値I0を設定し、受光部2における受光条件Gnに初期値G0を設定し、露光時間(受光部2の画像取込速度及び検査ステージ3の移動速度)に対応する露光条件SSnに初期値SS0を設定する。本実施形態では、初期値I0は、画像取得時に使用する光量範囲の中で最も小さい光量値となっており、初期値G0は、画像取得時に使用するゲイン範囲の中で最も小さいゲイン値となっており、初期値SS0は、画像取得時に使用する露光条件で最も短い露光時間に対応する値(本実施形態では、画像取得時に使用する移動速度範囲で最も速い移動速度であり、且つ画像取得時に使用する画像取込速度範囲で最も速い画像取込速度)となっている。
【0043】
次いで、制御処理部6aは、ウェーハWの画像取得時における設定条件を、受光部2、検査ステージ3、及び照明部4に設定し(ステップS2)、動作させることにより、受光部2からウェーハWの全面の画像を取得する(ステップS3)。
【0044】
次いで、制御処理部6aは、取得した画像の平均輝度(例えば、ウェーハWにおける輝度の平均)が許容される輝度範囲(許容範囲:欠陥検出可能範囲)内にあるか否かを判定する(ステップS4)。例えば、制御処理部6aは、|An−At|≦δAtを満たすか否かにより判定する。ここで、Anは、ウェーハWの画像の平均輝度であり、Atは、許容範囲の中心輝度であり、δAtは、許容範囲の中心輝度からの許容されるずれ量である。なお、許容範囲は、At±δAtと表すことができる。この許容範囲としては、例えば、輝度を0〜255の値とした場合には、70〜170の範囲としてもよい。
【0045】
この結果、平均輝度が許容範囲内にあると判定した場合(ステップS4:YES)には、当該画像が欠陥検出に適切な輝度を有していることを示しているので、制御処理部6aは、画像データを画像処理部6bに渡して、欠陥検出画像解析処理(ステップS5)を実行させる。
【0046】
一方、平均輝度が許容範囲内にないと判定した場合(ステップS4:NO)には、この画像は、欠陥検出に適切な輝度を有していないことを示しているので、制御処理部6aは、より適切な輝度の画像を得るための照射条件候補Ixを決定する(ステップS6)。本実施形態では、制御処理部6aは、照射条件候補IxをIx=k*At/An*Inにより算出する。ここで、kは、所定の係数である。
【0047】
そして、制御処理部6aは、照射条件候補Ixが設定可能な範囲内であるか、すなわち、Imin≦Ix≦Imax(Imin:Iの設定可能な最小値、Imax:Iの設定可能な最大値)であるか否かを判定し(ステップS7)、設定可能な範囲内であると判定した場合(ステップS7:YES)には、照射条件候補Ixを照射条件Inと決定し(ステップS8)、ステップS2に進む。これにより、照射条件(照明部4の光量)をウェーハWの画像の平均輝度が許容範囲に近づくように変更することができる。
【0048】
一方、設定可能な範囲内でないと判定した場合(ステップS7:NO)には、制御処理部6aは、より適切な輝度の画像を得るための受光条件候補Gxを決定する(ステップS9)。本実施形態では、制御処理部6aは、受光条件候補GxをGx=l*At/An*Gnにより算出する。ここで、lは、所定の係数である。
【0049】
そして、制御処理部6aは、受光条件候補Gxが設定可能な範囲内であるか、すなわち、Gmin≦Gx≦Gmax(Gmin:Gの設定可能な最小値、Gmax:Gの設定可能な最大値)であるか否かを判定し(ステップS10)、設定可能な範囲内であると判定した場合(ステップS10:YES)には、受光条件候補Gxを受光条件Gnと決定し(ステップS11)、ステップS2に進む。これにより、受光条件(受光部2のゲイン)をウェーハWの画像の平均輝度が許容範囲に近づくように変更することができる。
【0050】
一方、設定可能な範囲内でないと判定した場合(ステップS10:NO)には、制御処理部6aは、より適切な輝度の画像を得るための露光条件候補SSxを決定する(ステップS12)。本実施形態では、制御処理部6aは、露光条件候補SSxとしてSSnよりも長い露光時間となる条件(検査ステージ3の移動速度を遅くし、受光部2の画像取込速度を遅くした条件)に決定する。
【0051】
そして、制御処理部6aは、露光条件候補SSxが設定可能な範囲内であるかを判定し(ステップS13)、設定可能な範囲内であると判定した場合(ステップS13:YES)には、露光条件候補SSxを露光条件SSnと決定し(ステップS14)、ステップS2に進む。これにより、露光条件(検査ステージ3の移動速度及び受光部2の画像取込速度)をウェーハWの画像の平均輝度が許容範囲に近づくように変更することができる。
【0052】
なお、設定可能な範囲内でないと判定した場合(ステップS13:NO)には、露光条件を変更できず、適切な輝度となる画像を得るための条件を設定することができないことを意味しているので、制御処理部6aは、図示しない表示装置にエラー表示を行う(ステップS15)。
【0053】
このような処理により、ウェーハWの画像取得時の画像取得条件を調整することができ、欠陥検出に適した輝度を有するウェーハWの画像を適切に取得することができる。
【0054】
図6は、本発明の一実施形態に係る複数の画像取得条件に対する、ウェーハの抵抗率と、ウェーハの画像における平均輝度との関係を説明する図である。図6Aは、複数の画像取得条件に対する、ウェーハWの抵抗率と、当該ウェーハWの平均輝度との関係を示す図であり、図6Bは、画像取得条件(1)〜(6)を説明する図である。
【0055】
例えば、条件(1)から条件(2)に変更する場合のように、受光部2のゲインのみを増加させると、図6Aの条件(1)及び条件(2)に対応するグラフに示すように、より低い抵抗率のウェーハWの画像における平均輝度を欠陥検出可能範囲に含めることができるようになる。すなわち、より低い抵抗率のウェーハWの画像を適切に取り込むことができるようになる。
【0056】
また、例えば、条件(2)から条件(3)に変更する場合のように、受光部2のゲインを増加させるとともに、照明部4の光量を増加させると、図6Aの条件(2)及び条件(3)に対応するグラフに示すように、より低い抵抗率のウェーハWの画像における平均輝度を欠陥検出可能範囲に含めることができるようになる。すなわち、より低い抵抗率のウェーハWの画像を適切に取り込むことができるようになる。
【0057】
また、例えば、条件(2)から条件(4)に変更する場合のように、検査ステージ3の移動速度を低速化するとともに、受光部2の画像取込速度も低速化すると、すなわち、露光時間を長くすると、図6Aの条件(2)及び条件(4)に対応するグラフに示すように、より低い抵抗率のウェーハWの画像における平均輝度を欠陥検出可能範囲に含めることができるようになる。すなわち、より低い抵抗率のウェーハWの画像を適切に取り込むことができるようになる。
【0058】
これにより、条件(6)に示すように、受光部2のゲインを最大とし、照明部4の光量を最大にし、検査ステージ3の移動速度を低速化すると、図6Aの条件(6)に示すように、より低い抵抗率のウェーハWの画像における平均輝度を欠陥検出可能範囲に含めることができるようになる。
【0059】
このように、受光部2のゲイン、照明部4の光量、検査ステージ3の移動速度(及び受
光部2の画像取込速度)の少なくとも1つを調整することにより、検査対象のウェーハWの画像における平均輝度を調整することができ、画像の平均輝度を欠陥検出可能範囲に適切に収めることができるようになる。
【0060】
図7は、本発明の一実施形態に係る欠陥検出画像解析処理のフローチャートである。
【0061】
欠陥検出画像解析処理のおいては、画像処理部6bが制御処理部6aから受け取ったウェーハWの画像データ(原画像データ)を用いて、各画素の平滑化処理を行う(ステップS21)。この平滑化処理では、対象とする画素の輝度を、当該画素を中心としたn×n(例えば、3×3)の画素の輝度の平均値とする。本実施形態においては、画像データのすべての画素について、平滑化処理を実行し、これを複数回実行している。これにより、画像データ中の誤差要因を低減することができる。
【0062】
次いで、画像処理部6bは、画像データに所定の微分フィルター処理を実行する(ステップS22)。ここで、微分フィルター処理としては、例えば、微分フィルターをX方向(検査ステージ3の移動方向に垂直な方向:図2参照)に適用してもよく、Y方向(検査ステージ3の移動方向)に適用してもよく、また、ラプラシアンを適用するようにしてもよい。
【0063】
画像処理部6bは、微分フィルター処理後の画像データを用いて、各画素における移動平均輝度(基準平均輝度)を算出する(ステップS23)。本実施形態では、各画素に対する移動平均輝度としては、当該画素に対してX方向の前後の所定数の画素(例えば、当該画素の前後100個の画素)の輝度を平均したものとしている。なお、各画素に対する移動平均輝度として、当該画素に対してY方向の前後の所定数の画素(例えば、前後100個の画素)の輝度を平均したものとしてもよい。
【0064】
次いで、画像処理部6bは、各画素の移動平均輝度に基づいて、欠陥候補画素であるか否かを判定するために使用する輝度閾値を算出する(ステップS24)。本実施形態では、例えば、各画素についての移動平均輝度に、所定の係数(例えば、0.3)を乗算することに得られた値を、各画素に対する輝度閾値としている。なお、輝度閾値として固定値を用いるようにしてもよい。
【0065】
次いで、画像処理部6bは、画像データの各画素の輝度と、各画素の移動平均輝度との差分値(差分の絶対値)を算出して、各画素に対する差分値と、各画素に対して算出された輝度閾値とを比較することにより、欠陥候補画素であるか否かを示す2値の画像データ(2値化画像データ)を生成する2値化処理を実行する(ステップS25)。この2値化処理においては、画素についての差分値が輝度閾値を超える場合に、欠陥候補画素であることを示すデータ(例えば、0:黒色)に変換され、それ以外の場合に、欠陥候補画素でないことを示すデータ(例えば、1:白色)に変換される。
【0066】
次いで、画像処理部6bは、ステップS25で得られた2値化画像データに対して、白色の膨張処理を行う(ステップS26)。この膨張処理においては、画像処理部6bは、各画素について、当該画素を含むn×n(nは所定の整数)範囲内で、例えば、白色の画素が多い場合には、当該画素を白色にする処理を行う。この膨張処理により、例えば、周囲が白い画素であるのに、1つだけ黒い画素があるといったような雑データであると考えられる画素を白い画素に変更することができる。なお、膨張処理を、複数回行うようにしてもよい。
【0067】
次いで、画像処理部6bは、膨張処理が行われた画像データに対して、白色の画素(値が”1”のデータ)の収縮処理を行う(ステップS26)。この収縮処理においては、画像処理部6bは、各画素について、当該画素を含むn×n(nは所定の整数)範囲内で、白色の画素が少ない場合には、当該画素を黒色にする処理を行う。この収縮処理により、先に行った膨張処理の影響により、領域が狭くなってしまった黒の領域を広くする、すなわち、元に近づけることができる。なお、収縮処理を、複数回行うようにしてもよい。
【0068】
次いで、画像処理部6bは、画像データ中における繋がっている欠陥候補画素(黒色の画素)を1つのまとまり(欠陥候補領域)と扱うために番号を対応付けるラベリング処理を行う(ステップS28)。
【0069】
次いで、画像処理部6bは、番号を対応付けられた各欠陥候補領域についての各種形状パラメータを抽出する形状特徴抽出処理を実行する(ステップS29)。本実施形態では、画像処理部6bは、欠陥候補領域の画素数の合計である面積Sと、欠陥候補領域の境界線の長さである周囲長lと、欠陥候補領域の円形度e(e=4πS/l2)と、欠陥候補領域の重心位置Gと、欠陥候補領域の重心位置Gを通る短い直線と、長い直線との長短比とを抽出する。
【0070】
次いで、画像処理部6bは、欠陥候補領域とその周囲(例えば、各画素の上下左右方向の所定数の画素を含む領域)とを含む部分画像データを原画像データから取得する(ステップS30)。
【0071】
次いで、各欠陥候補領域についての各種輝度パラメータを抽出する輝度特徴抽出処理を実行する(ステップS31)。本実施形態では、画像処理部6bは、部分画像データを用いて、輝度のプロファイルが移動平均輝度に対して、プラスであるかマイナスであるかにより、当該欠陥候補領域の輝度プロファイルの凹凸を判定し、当該欠陥候補領域の輝度と基準平均輝度との最大差と基準平均輝度の比を求める。また、重心位置Gを通過する輝度のプロファイルのX方向、Y方向の各境界領域の予め指定した範囲での最大輝度変化率(輝度プロファイルの傾きの絶対値)を求め、これら求めた4点での輝度変化率を平均することにより、平均輝度変化率|a|aveを算出する。なお、輝度プロファイルの凹凸、輝度比、平均輝度変化率も欠陥候補領域に関する特徴パラメータである。
【0072】
次いで、画像処理部6bは、各欠陥候補領域に対して算出した各種特徴パラメータ(形状パラメータ、輝度パラメータ)と、欠陥判定テーブル6cとを用いて、ウェーハWは製品として合格であるか否かを判定する(ステップS32)。具体的には、画像処理部6bは、欠陥判定テーブル6cから最初のレコードを取出し、各欠陥候補領域の特徴パラメータが、そのレコードに設定された欠陥分類条件を満たすか否かにより、欠陥の種類を特定し、更に、レコードの合否判定条件を満たすか否かにより、ウェーハWが製品として合格であるか、不合格であるかを判断する。そして、画像処理部6bは、欠陥判定テーブル6cのすべてのレコードを取出して、上記同様な処理を実行する。このような処理により、ウェーハWの欠陥の種類を特定し、当該ウェーハが製品として合格か、不合格かを適切に判定することができる。
【0073】
図8は、本発明の一実施形態に係る2値化処理を説明する図である。
【0074】
本実施形態では、ステップS25に示すように、各画素についての移動平均輝度と画像輝度との差分値を算出し、この差分値を輝度閾値と比較することにより2値化処理を行っている。このように移動平均輝度と画像輝度との差分値を用いることにより、画像ムラや、ウェーハ毎の輝度の違いの影響を低減することができ、欠陥部分をより適切に検出することができる。
【0075】
図9は、本発明の一実施形態に係る2値化処理を説明する図である。
【0076】
具体的には、図9Aは、画像ムラが発生している画像とその輝度プロファイルを示すものである。図9B及び図9Cは画像ムラが発生している状態で2値化処理を行ったときの結果を示すものである。図9Bに示すように画像ムラが発生している状態で画像輝度に対して閾値を適用した場合、欠陥部分以外の画像ムラ領域まで2値化の対象になってしまうが、図9Cに示すように、差分値に対して閾値を適用することで、画像ムラの影響を受けずに、欠陥部分を適切に検出することができる。
【0077】
図10は、本発明の一実施形態に係る輝度閾値を変更した2値化処理を説明する図である。
【0078】
具体的には、図10は、ウェーハWの面内に存在する100μmの欠陥について平均輝度の異なる画像を取得して、欠陥を検出した結果を示しており、図10Aは、低輝度の画像における欠陥の検出結果を示し、図10Bは、高輝度の画像における欠陥の検出結果を示している。
【0079】
図10A及び図10Bに示すように、画像の濃淡レベルによって輝度閾値を変えることで、ウェーハWに存在する欠陥を適切に検出することができる。本実施形態では、移動平均輝度に対して所定の係数をかけることにより輝度閾値を決定するようにして、移動平均輝度が高いほど輝度閾値が高くなるようにしているので、より適切にウェーハWの欠陥を検出することができる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【0081】
次に、本発明の変形例である第1及び第2変形例について説明する。
【0082】
図11は、本発明の変形例に係る移動平均輝度の算出方法を説明する図である。
【0083】
まず、上記実施形態のウェーハ欠陥検査装置1においては、ウェーハWの外周部は、照明ムラや、ウェーハ外周部のダレ等の影響により、透過光量が少ない。そこで、図11(1)に示すように、ウェーハWの外周部近傍の領域を検査対象外の領域(マスク領域)としている。
【0084】
例えば、上記実施形態では、図11(2)に示すように、各画素の移動平均輝度として、その画素の所定方向(例えば、X方向)の前後100個の画素の輝度を平均していたので、ウェーハWのマスク領域に近い検査領域の画素においては、マスク領域内の画素の輝度の影響により移動平均輝度が低くなって、欠陥候補画素として誤検出される可能性がある。例えば、図11(1)に示すようにマスク領域に近い検査領域内に画像ムラがあった場合には、図11(2)に示すように、画像ムラ部分における輝度と、当該部分の移動平均輝度との差分値が閾値を超えてしまい、当該画像ムラ部分の画素が、欠陥候補画素として誤検出されてしまうことがある。
【0085】
これに対して、第1変形例においては、マスク領域内の画素の輝度を、マスク領域と検査領域との境界部分の画素の輝度と同一であると仮定して、各画素の移動平均輝度を算出するようにしている。このようにすると、図11(1)に示すような画像ムラがあった場合であっても、図11(3)に示すように、画像ムラ部分における輝度と、当該部分の移動平均輝度との差分値が閾値を超えることがなく、当該画像ムラ部分が、欠陥候補画素として誤検出されない。
【0086】
また、第2変形例においては、マスク領域内の各画素の輝度を、マスク領域と検査領域との境界部分に対して対称位置にある各画素の輝度と同一であると仮定して、各画素の移動平均輝度を算出するようにしている。このようにすると、図11(1)に示すような画像ムラがあった場合であっても、図11(4)に示すように、画像ムラ部分における輝度と当該部分の移動平均輝度との差分値が、閾値を超えることがなく、当該画像ムラ部分が、欠陥候補画素として誤検出されない。したがって、欠陥の誤検出を低減することができる。
【0087】
また、本発明は次のようにすることもできる。例えば、上記実施形態では、検査ステージ3を移動させることにより、ウェーハWの全体画像を取得するようにしていたが、例えば、検査ステージ3を移動させずに、受光部2、照明部4、及びライトガイド5を移動させることにより、ウェーハWの全体画像を取得するようにしてもよく、要は、検査ステージ3と、受光部2、照明部4、及びライトガイド5とを相対的に移動させるようにしてウェーハWの全体画像を取得するようにすればよい。
【0088】
また、上記実施形態では、ウェーハの画像の基準となる輝度として、ウェーハWの画像の平均輝度を用いていたが、本発明はこれに限られず、例えば、ウェーハWの画像の最も暗い輝度を用いるようにしてもよく、また、ウェーハWの検査領域における平均の輝度を用いるようにしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、照射部4の照射条件を変更し、照射条件を変更できない場合に、受光部2の受光条件を変更し、受光条件を変更できない場合に、露光条件を変更するようにしていたが、本発明はこれに限られず、照射条件、受光条件、露光条件の変更する順番は、別の順番であってもよいし、照射条件、受光条件及び露光条件の複数の条件を一度に変更するようにしてもよく、また、例えば、照射条件、受光条件及び露光条件の組を複数用意しておき、それらの中から使用する変更対象を選択するようにしてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、原画像データに対して平滑化処理、微分フィルター処理を行った画像データを用いて、移動平均輝度を算出するようにしていたが、平滑化処理、微分フィルター処理を行わずに、原画像データを用いて移動平均輝度を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 ウェーハ欠陥検査装置、2 受光部、3 検査ステージ、4 照明部、5 ライトガイド、6 処理装置、6a 制御処理部、6b 画像処理部、6c 欠陥判定テーブル、W ウェーハ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象のウェーハを載置するウェーハ載置手段と、赤外光を前記ウェーハに対して照射する照射手段と、前記赤外光が照射された前記ウェーハを撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像されたウェーハの画像に基づいて前記ウェーハの欠陥を検査するウェーハ欠陥検査装置であって、
前記画像中の前記ウェーハの検査対象の領域内の各画素について、所定の直線方向に並ぶ複数の画素中の当該画素を含む所定の範囲内の複数の画素の輝度を平均した輝度を、前記各画素における基準平均輝度として算出する基準平均輝度算出手段と、
前記各画素における前記基準平均輝度と、前記各画素の輝度との差分値を算出する差分値算出手段と、
前記各画素についての前記差分値と、所定の閾値とを比較することにより、前記各画素が欠陥候補画素であるか否かを判定する判定手段と、
前記欠陥候補画素に基づいて、前記ウェーハにおける欠陥を検査する検査手段と
を有するウェーハ欠陥検査装置。
【請求項2】
前記各画素に対する前記所定の閾値を、前記各画素における前記基準平均輝度に基づいて決定する閾値決定手段
を更に有する
請求項1に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項3】
前記閾値決定手段は、前記基準平均輝度に所定の値を乗算した値を前記所定の閾値に決定する
請求項2に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項4】
前記基準平均輝度算出手段は、前記所定の直線方向における前記所定の範囲内の画素が、前記ウェーハの外周近傍の検査対象外領域の画素に該当する場合には、当該検査対象外領域の画素の輝度を、前記検査対象の領域との境界の画素の輝度であると仮定して、前記基準平均輝度を算出する
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項5】
前記基準平均輝度算出手段は、前記所定の直線方向における前記所定の範囲内の座標が、前記ウェーハの外周近傍の検査対象外領域の画素に該当する場合には、当該検査対象外領域の画素の輝度を、前記所定の直線方向の直線上の前記検査対象の領域との境界に対して対称位置にある画素の輝度であると仮定して、前記基準平均輝度を算出する
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項6】
前記検査手段は、
前記欠陥候補画素に基づいて、欠陥候補領域を特定する欠陥候補領域特定手段と、
前記欠陥候補領域における輝度プロファイルの凹凸、前記欠陥候補領域における輝度と基準平均輝度との最大差と基準平均輝度との比である輝度比、前記欠陥候補領域における輝度の変化率、前記欠陥候補領域の面積、前記欠陥候補領域の円形度、又は、前記欠陥候補領域についての重心を基準としての長い幅と短い幅との比の少なくともいずれか1つに基づいて、所定の欠陥種類に該当するか否かを判定する欠陥種類判定手段とを有する
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項7】
前記検査手段は、
前記所定の欠陥種類に該当する欠陥候補領域の個数に基づいて、前記ウェーハが製品として合格か否かを判定する合否判定手段
を更に有する
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項8】
検査対象のウェーハの画像に基づいて、前記ウェーハの欠陥を検査するウェーハ欠陥検査方法であって、
前記画像中の前記ウェーハの検査対象の範囲内の各画素について、所定の直線方向に並ぶ複数の画素中の当該画素を含む所定の範囲内の複数の画素の輝度を平均した輝度を、前記各画素における基準平均輝度として算出するステップと、
前記各画素における前記基準平均輝度と、前記各画素の輝度との差分値を算出するステップと、
前記各画素についての前記差分値と、所定の閾値とを比較することにより、前記各画素が欠陥候補画素であるか否かを判定するステップと、
前記欠陥候補画素に基づいて、前記ウェーハにおける欠陥を検査するステップと
を有するウェーハ欠陥検査方法。
【請求項1】
検査対象のウェーハを載置するウェーハ載置手段と、赤外光を前記ウェーハに対して照射する照射手段と、前記赤外光が照射された前記ウェーハを撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像されたウェーハの画像に基づいて前記ウェーハの欠陥を検査するウェーハ欠陥検査装置であって、
前記画像中の前記ウェーハの検査対象の領域内の各画素について、所定の直線方向に並ぶ複数の画素中の当該画素を含む所定の範囲内の複数の画素の輝度を平均した輝度を、前記各画素における基準平均輝度として算出する基準平均輝度算出手段と、
前記各画素における前記基準平均輝度と、前記各画素の輝度との差分値を算出する差分値算出手段と、
前記各画素についての前記差分値と、所定の閾値とを比較することにより、前記各画素が欠陥候補画素であるか否かを判定する判定手段と、
前記欠陥候補画素に基づいて、前記ウェーハにおける欠陥を検査する検査手段と
を有するウェーハ欠陥検査装置。
【請求項2】
前記各画素に対する前記所定の閾値を、前記各画素における前記基準平均輝度に基づいて決定する閾値決定手段
を更に有する
請求項1に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項3】
前記閾値決定手段は、前記基準平均輝度に所定の値を乗算した値を前記所定の閾値に決定する
請求項2に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項4】
前記基準平均輝度算出手段は、前記所定の直線方向における前記所定の範囲内の画素が、前記ウェーハの外周近傍の検査対象外領域の画素に該当する場合には、当該検査対象外領域の画素の輝度を、前記検査対象の領域との境界の画素の輝度であると仮定して、前記基準平均輝度を算出する
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項5】
前記基準平均輝度算出手段は、前記所定の直線方向における前記所定の範囲内の座標が、前記ウェーハの外周近傍の検査対象外領域の画素に該当する場合には、当該検査対象外領域の画素の輝度を、前記所定の直線方向の直線上の前記検査対象の領域との境界に対して対称位置にある画素の輝度であると仮定して、前記基準平均輝度を算出する
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項6】
前記検査手段は、
前記欠陥候補画素に基づいて、欠陥候補領域を特定する欠陥候補領域特定手段と、
前記欠陥候補領域における輝度プロファイルの凹凸、前記欠陥候補領域における輝度と基準平均輝度との最大差と基準平均輝度との比である輝度比、前記欠陥候補領域における輝度の変化率、前記欠陥候補領域の面積、前記欠陥候補領域の円形度、又は、前記欠陥候補領域についての重心を基準としての長い幅と短い幅との比の少なくともいずれか1つに基づいて、所定の欠陥種類に該当するか否かを判定する欠陥種類判定手段とを有する
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項7】
前記検査手段は、
前記所定の欠陥種類に該当する欠陥候補領域の個数に基づいて、前記ウェーハが製品として合格か否かを判定する合否判定手段
を更に有する
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のウェーハ欠陥検査装置。
【請求項8】
検査対象のウェーハの画像に基づいて、前記ウェーハの欠陥を検査するウェーハ欠陥検査方法であって、
前記画像中の前記ウェーハの検査対象の範囲内の各画素について、所定の直線方向に並ぶ複数の画素中の当該画素を含む所定の範囲内の複数の画素の輝度を平均した輝度を、前記各画素における基準平均輝度として算出するステップと、
前記各画素における前記基準平均輝度と、前記各画素の輝度との差分値を算出するステップと、
前記各画素についての前記差分値と、所定の閾値とを比較することにより、前記各画素が欠陥候補画素であるか否かを判定するステップと、
前記欠陥候補画素に基づいて、前記ウェーハにおける欠陥を検査するステップと
を有するウェーハ欠陥検査方法。
【図4】
【図5】
【図7】
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図5】
【図7】
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−237303(P2011−237303A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109522(P2010−109522)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
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