説明

ウェーハ表面形状測定装置、及び、それを用いたウェーハの評価方法

【課題】ナノトポグラフィを正確に測定することができるウェーハ表面形状測定装置、及び、それを用いたウェーハの評価方法の提供。
【解決手段】直径300mmの片面が研磨されたウェーハを、外周部保持手段のみで、すなわち、120度の等間隔で円周上に配置された保持部で、ウェーハの外周部のベベル面を保持し表面形状を測定した。その後、中央部保持手段によりウェーハの中央部裏面を保持し表面形状を測定した。得られた画像信号を解析して、外周部保持手段により得られた画像のうち外周から20mm位置までのウェーハの外周部の画像を除外し、また、中央部保持手段により得られた画像のうち、中央保持部の領域の画像を除外して、それぞれの画像を合成して一つの画像とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ表面形状測定装置、及び、それを用いたウェーハの評価方法に関し、特に、ウェーハのナノトポグラフィを、正確に測定することができるウェーハ表面形状測定装置、及び、それを用いたウェーハの評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイス形成用基板として用いられるシリコンウェーハ(以下、単に、ウェーハという)は、加工工程での加工精度の評価として、平坦度、反り、粗さ、表面形状等の測定が行われている。
【0003】
近年の半導体デバイスの高集積化に伴い、その形成用基板となるウェーハの数mmの領域において存在するナノオーダーのうねり(以下、ナノトポグラフィという)の高平坦化が要求されており、それによって、ナノトポグラフィの測定精度の向上も求められている。
【0004】
ナノトポグラフィの測定は、ウェーハの裏面を保持して、表面にレーザー光等の光を照射してその反射光をCCDカメラ等で撮像して画像信号を得て解析する方法が一般的である。なお、ナノトポグラフィの測定では、照射する光の波長制御、CCDカメラの画像処理技術の高精度化等により測定精度の向上をはかることができるところ、実際には、ウェーハの保持部での振動、傾き、吸着手段、又は、保持部とウェーハとの間の異物の混入等により、大きく測定精度が低下してしまう問題が生じており、これらを改善するために様々な技術が開示されている。
【0005】
例えば、検査装置のわずかな振動による検査精度の低下を防止する方法として、シリコンウェーハの外周部を真空吸着し、仮止して形状検査を行い、その後、ウェーハ中央部を真空吸着して、ウェーハ片面基準で形状検査する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、ウェーハを矯正せず自由形状を保持することができ、かつ、ウェーハ裏面の接触する面積を小さくすることができるため、チャックテーブルとウェーハの間に含まれる異物の量を低減させることができるウェーハ保持機構として、略円板状のチャックベースの上面に設けられ、底部に吸気口が穿設した吸着溝を有する複数の吸着リングを有し、前記吸着溝内を所要の負圧とするピンチャックが開示されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−39745号公報
【特許文献2】特開2004−114184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2記載の技術では、ウェーハを保持する場合には、かならず、真空吸着による手段が用いられているとともに、さらに、真空吸着する場合には、すくなくともウェーハとウェーハ保持機構との接触部分は存在するため、真空吸着部、又は、その部分にパーティクル等の異物が介在した場合は、測定部であるウェーハ表面にその影響が転写され、その部位においてナノトポグラフィが悪化してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、これらのウェーハ保持部の問題点を改善し、真空吸着を用いても、ナノトポグラフィを正確に測定することができるウェーハ表面形状測定装置、及び、それを用いたウェーハの評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のウェーハ表面形状測定装置の一態様によれば、ウェーハの外周部のみを載置して保持する外周部保持手段と、前記ウェーハの中央部のみを真空吸着により保持する中央部保持手段と、前記保持手段毎に前記ウェーハの表面形状を撮像して各々の画像情報を得る画像情報取得手段と、得られた前記画像情報を解析し処理する画像解析手段とを備えたウェーハ表面形状測定装置が提供される。
【0010】
本発明のウェーハの評価方法の一態様によれば、ウェーハの外周部のみを載置して保持し、前記ウェーハの表面形状を撮像し画像情報を得る第1の画像情報取得工程と、前記ウェーハの中央部のみを真空吸着により保持して表面形状を撮像し画像情報を得る第2の画像情報取得工程と、前記第1の画像情報取得工程で得られた画像情報を解析して得られた画像マップのうち外周部の領域の画像を除外し、また、前記第2の画像情報取得工程で得られた画像情報を解析して得られた画像マップのうち中央部の領域の画像を除外し、前記除外後のそれぞれの画像マップ同士を合成して一つの画像を得る画像処理工程を含むことを特徴とするウェーハの評価方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウェーハ保持部の問題点を改善し、ナノトポグラフィを正確に測定することができるウェーハ表面形状測定装置、及び、それを用いたウェーハの評価方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るウェーハ表面形状測定装置の概念図である。
【0013】
本発明に関わるウェーハ表面形状測定装置は、画像情報取得手段、ウェーハ保持手段、画像解析手段で構成されている。
【0014】
図1に示すように、画像情報取得手段1の基本的な構成は、光源4からウェーハWの表面に光を照射する照射手段と、ウェーハWの表面から反射した反射光を、レンズ5により集光してCCDカメラ6に取り込み、ナノトポグラフィに相当するウェーハ表面の画像情報を得る撮像手段を備えている。これらの構成に、本発明の構成となる次に記載するそれぞれのウェーハ保持手段毎にウェーハの表面形状を撮像して各々の画像情報を得ることができる画像情報取得手段を備えている。
【0015】
ウェーハ保持手段2は、ウェーハWを外周部のみ載置して保持する外周部保持手段7と、ウェーハの中央部のみを真空吸着により保持する中央部保持手段8と、それぞれ2種類のウェーハ保持手段を備えている。これらの保持手段は、共に、図示しない駆動機構により、上下左右に適時移動可能に構成されている。
【0016】
外周部保持手段7は、ウェーハ全周をリング状に保持してもよく、例えば、図2に示すように、等間隔(図2では、120度間隔)に、載置して保持する保持片7’を備えてもよい。
【0017】
外周部保持手段7は、ウェーハのベベル部で載置して保持することが好ましい。ウェーハのベベル部以外の外周部、すなわち、ウェーハ裏面側の外周部付近で載置して保持すると、その部分にウェーハの荷重が集中してしまい、被測定部であるウェーハ表面にその影響が大きく転写されてしまい、ナノトポグラフィを正確に測定することができない。
【0018】
中央部保持手段8は、例えば、図3に示すように、ウェーハ中央部特定領域9をリング状に、又は、全面に、真空吸着で保持する。この中央部保持手段8は、表面形状撮像時に、ウェーハが傾く等の不安定な状態にならない程度に構成されていればよい。
【0019】
画像解析手段3は、画像情報取得手段で得られた画像情報を解析して処理する処理手段である。詳しくは、画像情報取得手段1で得られた画像情報を解析して得られた画像マップ(以下、単に、画像という)のうち、特定領域(中央部、外周部等を問わず)を指定して、その指定領域を、画像から除外する領域除外処理と、領域除外処理された画像同士を合成して一つの画像を得る画像合成処理の2種類の処理手段を備えている。
【0020】
次に、本発明に関わるウェーハ表面形状測定装置を用いた、ウェーハの評価方法について示す。
【0021】
最初に、ウェーハを外周部保持手段7のみで載置して保持して表面形状を撮像し、ウェーハ全面の画像情報を得る(以下、第1の画像情報取得工程という)。その後、ウェーハの中央部を中央部保持手段8のみで真空吸着により保持して表面形状を撮像し、ウェーハ全面の画像情報を得る(以下、第2の画像情報取得工程という)。
【0022】
外周部保持手段7から中央部保持手段8への切り替えについては、中央部保持手段8が上方に駆動しウェーハの中央部を吸着したのちに、外周部保持手段7が下方に、又は、左右に離間するように構成してもよく、外周部保持手段7がウェーハを保持しながら中央部保持手段8に向って下方に駆動し、吸着し保持してもよい。
【0023】
次に、第1の画像情報取得工程で得られた画像情報を解析して得られたウェーハ全面に関する画像のうち、外周部、好ましくは、外周部から20mmまでの範囲の領域の画像を除外する。これは、外周部保持手段7により保持されたウェーハの外周部は、ウェーハの自重が集中してその部位が変形してしまい、その影響がウェーハ表面に転写されてしまうため、ナノトポグラフィが正確に測定できない。さらに、第2の画像情報取得工程で得られた画像情報を解析して得られたウェーハ全面に関する画像のうち中央部、好ましくは、少なくとも、中央部保持手段8により保持された範囲の領域の画像を除外する。これは、中央部保持手段8により保持された部分は、ウェーハの自重が集中し、また、吸着等、又は、異物の介在等によりその部位が変形してしまい、その影響がウェーハ表面に転写されてしまうため、外周部と同様に、中央部のナノトポグラフィが正確に測定できない。最後に、除外したそれぞれの画像同士を合成し一つの画像を得る(画像処理工程)。
【0024】
これによって得られた画像は、ウェーハ保持部、すなわち、ウェーハ外周部、中央部それぞれの保持手段の影響が無いナノトポグラフィの測定結果を得ることができる。
【0025】
なお、上述した本発明の実施形態では、外周部保持手段7により外周部を保持して表面形状を測定し、その後、中央部保持手段8により中央部を保持して表面形状を測定する順番で記したが、これに限定されるものではない。例えば、図2に示す外周部保持手段6の保持片7’と相互にウェーハセンタリング手段を設置してそこにウェーハを載置した後に中央部保持手段8によりウェーハを保持して最初に表面形状を測定してから外周部保持手段7により外周部を保持して表面形状を測定してもよい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
【0027】
図1に示すウェーハ表面形状測定装置を用いて、直径300mmの片面が研磨されたウェーハを、外周部保持手段のみで、すなわち、図2に示すように、120度の等間隔で円周上に配置された保持片で、ウェーハの外周部のベベル面を保持し表面形状を撮像した。その後、図3に示す中央部保持手段によりウェーハの中央部裏面をリング状に保持し表面形状を撮像した。得られたそれぞれの画像情報を解析して、外周部保持手段により得られた画像のうち外周から20mm位置までのウェーハの外周部の画像を除外し、また、中央部保持手段により得られた画像のうち、リング状の中央保持部の領域の画像を除外して、それぞれの画像を合成し一つの画像とした。結果を図4に示す。
【0028】
(比較例1)
図1に示すウェーハ表面形状測定装置を用いて、実施例で測定したウェーハを、外周部保持手段のみで、すなわち、図2に示すように、120度の等間隔で円周上に配置された保持部で、ウェーハの外周部のベベル面を保持し表面形状を撮像し、中央部保持手段によるウェーハの測定を行わないで、外周部保持手段のみによる表面形状の画像を得た。結果を図5に示す。
【0029】
(比較例2)
図1に示すウェーハ表面形状測定装置を用いて、実施例で測定したウェーハを、ウェーハの裏面全面を吸着して保持して表面形状を撮像し、表面形状の画像を得た。結果を図6に示す。
【0030】
比較例1では、図5に示すように、ウェーハベベル面の保持位置に応力による変形(図5中、11参照)が現われるため、ウェーハ外周部の正確なナノトポグラフィを測定することができない。また、比較例2では、図6に示すように、ウェーハ保持部の一部に異物等が介在してしまい、その部分が変形してしまい(図6中、12参照)、内周部分の正確なナノトポグラフィを測定することができない。なお、実施例では、図4に示すように、ウェーハ保持部による不具合がなく正確にナノトポグラフィを測定することができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係るウェーハ表面形状測定装置を示す概念図。
【図2】外周部保持手段に関する一例を示した概念図。
【図3】中央部保持手段に関する一例を示した概念図。
【図4】本発明の実施例に関わる表面形状測定の結果図。
【図5】本発明の比較例1に関わる表面形状測定の結果図。
【図6】本発明の比較例2に関わる表面形状測定の結果図。
【符号の説明】
【0033】
1: 表面形状測定手段、 2: ウェーハ保持手段、 3: 画像解析手段、 4:光源、 5:レンズ、 6:CCDカメラ、 7:外周部保持手段、 8:中央部保持手段、 9:ウェーハ中央部特定領域、 11:ベベル面保持位置の応力による変形、 12:裏面保持による異物の影響。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの外周部のみを載置して保持する外周部保持手段と、前記ウェーハの中央部のみを真空吸着により保持する中央部保持手段と、前記保持手段毎に前記ウェーハの表面形状を撮像して各々の画像情報を得る画像情報取得手段と、得られた前記画像情報を解析し処理する画像解析手段とを備えたウェーハ表面形状測定装置。
【請求項2】
前記外周部は、前記ウェーハのベベル部であることを特徴とする請求項1に記載のウェーハ表面形状測定装置。
【請求項3】
前記画像情報取得手段は、前記ウェーハの表面に光を照射する照射手段と、前記ウェーハ面を撮像し、画像信号として取り込む撮像手段とを備えていることを特徴とする請求項1、又は、2に記載のウェーハ表面形状測定装置。
【請求項4】
前記画像解析手段は、得られた前記画像情報をマップ化して得られた画像マップのうち、特定領域を指定して、前記指定領域を、前記画像マップから除外する領域除外処理と、前記領域除外処理された画像同士を複数組み合わせて一つの画像を得る画像合成処理の2種類の処理手段を少なくとも備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のウェーハ表面形状測定装置。
【請求項5】
ウェーハの外周部のみを載置して保持し、前記ウェーハの表面形状を撮像し画像情報を得る第1の画像情報取得工程と、前記ウェーハの中央部のみを真空吸着により保持して表面形状を撮像し画像情報を得る第2の画像情報取得工程と、前記第1の画像情報取得工程で得られた画像情報を解析して得られた画像マップのうち外周部の領域の画像を除外し、また、前記第2の画像情報取得工程で得られた画像情報を解析して得られた画像マップのうち中央部の領域の画像を除外し、前記除外後のそれぞれの画像マップ同士を合成して一つの画像を得る画像処理工程を含むことを特徴とするウェーハの評価方法。
【請求項6】
前記外周部は、前記ウェーハのベベル部であることを特徴とする請求項5に記載のウェーハの評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−278510(P2006−278510A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92513(P2005−92513)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000221122)東芝セラミックス株式会社 (294)
【Fターム(参考)】