説明

ウエハマウント作製方法

【課題】安価な構成で精度よくウエハマウントを作製するウエハマン作製方法を提供する。
【解決手段】半導体ウエハの回路面に液状の接着剤を塗布し、塗布面に支持板を貼り合わせ、当該支持板を保持して半導体ウエハの裏面を研削し、支持用の前記粘着テープを介してリングフレームに半導体ウエハを支持し、半導体ウエハから支持板を分離し、さらに半導体ウエハ上でフィルム状になっている接着剤に半導体ウエハの直径以上の幅を有する剥離テープを貼り付けて当該剥離テープを剥離することにより、当該接着剤を一体にして半導体ウエハから剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤を介して支持板を貼り合わせて補強した半導体ウエハを支持用の粘着テープで支持した後、当該支持板および接着剤を半導体ウエハから除去してウエハマウントを作製するウエハマウント作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度実装の要求に伴って半導体ウエハ(以下、適宜「ウエハ」という)の厚みが、数十μmまでバックグラインド処理される傾向にある。薄型化されたウエハは、剛性が低下するので、バックグラインド前に加熱剥離性の接着層を有する両面粘着テープを介してウエハと同形状以上の支持板をウエハに貼り合わせている。
【0003】
バックグラインド処理された支持板付きのウエハは、支持用の粘着テープを介してリングフレームに接着支持される。その後、下部吸着台に裏面から吸着保持されたウエハをヒータ内蔵の上部吸着台で支持板側から吸着保持し、当該支持板を加熱しながら上部吸着台を上昇させる。このとき、両面粘着テープの加熱剥離性の接着層が発泡膨張して接着力を喪失し、支持板と両面粘着テープを一体にしてウエハ表面から分離したり、或いはウエハ側に両面粘着テープを残して分離したりしている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−116679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウエハの回路面には、バンプなどの段差が形成されている。基材の片面に粘着層を有する粘着テープに比べて両面に粘着層を有する両面粘着テープは厚くなっている。それ故にウエハ表面の段差によって形成される隙間に両面粘着テープの粘着剤を侵入させて密着させるために付与する押圧力は、片面のみに粘着層を有する粘着テープよりも大きくなる。したがって、従来の方法では、バンプを変形または破損させる恐れがある。
【0006】
また、両面粘着テープは特殊な特性を有するので、コストが高いといった不都合も生じている。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、安価な構成でウエハマウントを精度よく作製可能なウエハマウント作製方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、支持用の粘着テープを介してリングフレームに半導体ウエハを支持するウエハマウント作製方法であって、
前記半導体ウエハの回路面に液状の接着剤を塗布する塗布過程と、
前記半導体ウエハの接着剤の塗布面に半導体ウエハと同形状以上の支持板を貼り合せる貼合せ過程と、
前記支持板を保持して半導体ウエハの裏面を研削する研削過程と、
支持用の前記粘着テープを介してリングフレームに半導体ウエハを支持する支持過程と、
前記半導体ウエハから支持板を分離する分離過程と、
前記半導体ウエハ上でフィルム状になっている接着剤に半導体ウエハの直径以上の幅を有する剥離テープを貼り付けて当該剥離テープを剥離することにより、当該接着剤を一体にして半導体ウエハから剥離する剥離過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
(作用・効果) 上記方法によれば、回路面に塗布される液状の接着剤は、ウエハ表面の段差によって形成された隙間に速やかに侵入してゆくとともに、接着剤の表面は平坦になる。すなわち、ウエハ表面に押圧を付与することなく少量の接着剤でウエハ全面を密に被覆することができる。また、接着剤の表面に支持板を貼り合せるときも、過度の押圧力を付与せずとも接着させることができる。したがって、ウエハ表面のバンプを押圧によって変形または破損させるのを回避することができる。
【0010】
さらに、支持板分離後のウエハ表面に残っている接着剤は、粘着テープよりも薄いフィルム状に硬化している。ウエハの直径より幅広の剥離テープを当該接着剤に貼り付けるので、接着剤の全面が剥離テープにより被覆される。したがって、剥離過程で接着剤の剥離部位に略均等に引張力が作用するので、粘着剤が部分的に裂けてウエハ表面に残渣するのを回避することができる。
【0011】
なお、上記方法の剥離過程では、個別の吸着台で半導体ウエハとリングフレームをそれぞれ吸着保持し、
前記半導体ウエハの表面がリングフレームの表面より突き出た状態で半導体ウエハ上の接着剤に剥離テープを貼り付けることが好ましい。
【0012】
この方法によれば、フィルム状の接着剤は、粘着テープの厚みより極めて薄くなっている。それ故に、半導体ウエハ外周とリングフレームの間で露出している支持用の粘着テープの粘着面から接着剤の表面までのギャップ(高さ)も極めて小さくなる。そこで、半導体ウエハの表面をリングフレームの表面から突き出すことにより、当該キャップを大きくすることができる。その結果、接着剤の表面に剥離テープを貼り付けるとき、剥離テープが撓んで半導体ウエハ外周からはみ出ることがあっても、当該剥離テープと粘着テープの接着を回避することができる。換言すれば、テープ同士の接着による剥離エラーを回避することができる。
【0013】
また、上述の剥離過程において、さらに、半導体ウエハの外周に離型処理されたプレートを近接させた状態で半導体ウエハ上の接着剤に剥離テープを貼り付けることが好ましい。
【0014】
この方法によれば、撓んで半導体ウエハ外周からはみ出る剥離テープは、プレートによって受け止められる。したがって、テープ同士の接着を確実に回避することができる。
【0015】
なお、上記方法において、接着剤は、紫外線硬化型であり、
前記分離過程では、ガラス製の支持板側から紫外線を照射し、接着剤を硬化させてから支持板を接着剤から分離することが好ましい。
【0016】
この方法によれば、紫外線の照射によって半導体ウエハと支持板の間にある接着剤の重合反応を促進させ、接着剤を完全に硬化させられる。したがって、接着剤は接着力を喪失しているので、支持板を分離するときに半導体ウエハに不要な引張力が作用しない。
【0017】
また、この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
【0018】
支持用の粘着テープを介してリングフレームに半導体ウエハを支持するウエハマウント作製方法であって、
前記半導体ウエハの回路面に液状の接着剤を塗布する塗布過程と、
前記半導体ウエハの接着剤の塗布面に半導体ウエハと同形状以上の支持板を貼り合わせる貼合せ過程と、
前記支持板を保持して半導体ウエハの裏面を研削する研削過程と、
支持用の前記粘着テープを介してリングフレームに半導体ウエハを支持する支持過程と、
前記半導体ウエハから支持板を分離する分離過程と、
前記半導体ウエハ上でフィルム状になっている接着剤に半導体ウエハと同形状以上に予め切断された粘着テープを貼り付ける貼付過程と、
前記粘着テープに剥離テープを貼り付けて当該剥離テープを剥離することにより、当該粘着テープと接着剤を一体にして半導体ウエハから剥離する剥離過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0019】
(作用・効果) この方法によれば、半導体ウエハ上の接着剤に半導体ウエハと同形状以上の粘着テープが貼り付けられる。つまり、支持用の粘着テープの粘着面から剥離テープを貼り付ける面までのギャップ(高さ)が大きくなる。したがって、剥離テープを粘着テープに貼り付けるとき、撓んで半導体ウエハの外周から剥離テープがはみ出てもテープ同士が接着し難くなる。換言すれば、テープ同士の接着による剥離エラーを抑制することができる。
【0020】
なお、上記方法において、例えば、剥離過程では半導体ウエハの直径よりも幅の狭い剥離テープを接着剤に貼り付けてもよい。
【0021】
すなわち、フィルム状になっている接着剤にウエハ形状の粘着テープを貼り付けることにより、当該接着剤が補強されている。したがって、半導体ウエハよりも幅の狭い剥離テープを貼り付けても、部分的な引張力は、粘着テープを構成する基材で吸収されるので、フィルム状の接着剤が部分的に裂けて半導体ウエハ上に残渣するのを回避することができる。
【0022】
また、上記方法おいて、接着剤は、紫外線硬化型であり、
前記分離過程では、ガラス製の支持板側から紫外線を照射し、接着剤を硬化させてから支持板を接着剤から分離することが好ましい。
【0023】
この方法によれば、紫外線の照射によって半導体ウエハと支持板の間にある接着剤の重合反応を促進させて、接着剤を完全に硬化させられる。したがって、接着剤は接着力を喪失しているので、支持板を分離するときに、半導体ウエハに不要な引張力が作用しない。
【発明の効果】
【0024】
本発明のウエハマント作製方法によれば、液状の接着剤をウエハ表面に塗布して被覆することにより、半導体ウエハに不要の押圧力を付与するのを回避し、ひいてはウエハ回路面に形成されたバンプなどの段差の変形や破損を回避することができる。また、特殊な特性を有する両面粘着テープを利用する必要がないので、安価な構成でウエハマウントを精度よく作製することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1に示すウエハマウント作製のフローチャートである。
【図2】接着剤塗布工程での動作を示す正面図である。
【図3】支持板貼合せ工程での動作を示す正面図である。
【図4】支持板貼合せ工程での動作を示す正面図である。
【図5】バックグラインド工程での動作を示す正面図である。
【図6】バックグラインド工程での動作を示す正面図である。
【図7】支持工程での動作を示す正面図である。
【図8】支持工程の概略構成を示す正面図である。
【図9】支持工程での動作を示す正面図である。
【図10】テープ切断機構の平面図である。
【図11】支持工程での動作を示す正面図である。
【図12】支持工程での動作を示す正面図である。
【図13】分離工程での動作を示す正面図である。
【図14】分離工程での動作を示す正面図である。
【図15】剥離工程の概略構成を示す正面図である。
【図16】剥離工程での動作を示す正面図である。
【図17】剥離工程での動作を示す正面図である。
【図18】剥離工程での動作を示す正面図である。
【図19】剥離動作を示す斜視図である。
【図20】剥離工程での動作を示す正面図である。
【図21】ウエハマウントの斜視図である。
【図22】実施例2に示すウエハマウント作製のフローチャートである。
【図23】貼付工程の概略構成を示す正面図である。
【図24】貼付工程での動作を示す斜視図である。
【図25】貼付工程での動作を示す正面図である。
【図26】剥離工程の概略構成を示す正面図である。
【図27】剥離工程の動作を示す斜視図である。
【図28】変形例の剥離工程での剥離テープの貼付け動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明のウエハマウント作製方法の工程を説明する。
【0027】
<実施例1>
本実施例は、図1に示すように、接着剤塗布工程S1、支持板貼合せ工程S2、バックフラインド工程S3、支持工程S4、分離工程S5および剥離工程S6から構成されている。
【0028】
接着剤塗布工程S1では、表面に回路形成された半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という)に接着剤を塗布する。例えば、図2に示すように、スピンチャック1、回転軸2、電動モータ3、ノズル4および飛散防止カップ5などが接着剤塗布工程に配備されている。
【0029】
すなわち、電動モータ3の回転によって回路面を上向きにして保持されたスピンチャック1を回転させながら、ウエハWの中心に向けてノズル4から液体接着剤6を塗布する。塗布された接着剤6は、遠心力によりウエハWの外周に向けて放射状に広がってゆく。不要な接着剤6は、スピンチャック1で振り切られ、外周に配備された飛散防止カップ5によって回収される。このとき、接着剤6は、ウエハWの表面の回路やバンプなどの段差により形成される間隙に侵入していゆく。
【0030】
スピンチャック1の回転を停止したとき、液体だれしない程度の均一な厚さに接着剤がウエハWの全面を被覆している。なお、ウエハWを被覆する接着剤6の厚みは、例えば、数μm程度である。当該厚みは、接着剤6の特性によって適宜に変更可能である。つまり、接着剤6の塗布量は、使用するウエハWや粘着剤の種類に応じて、実験やシミュレーションを繰り返して予め決定される。
【0031】
本実施例で使用される接着剤6は、耐酸性、耐アルカリ性および耐薬液性を有する紫外線硬化型の接着剤である。
【0032】
接着剤6の塗布されたウエハWは、先端に馬蹄形のアームを備えた搬送ロボット7などによって裏面から吸着保持された状態で、支持板貼合せ工程S2に搬送される。
【0033】
支持板貼合せ工程S2には、例えば、図3に示すように、アライメント機能を備えた下部吸着台8と上部吸着台9からなる支持板貼合せ機構が備わっている。
【0034】
下部吸着台7の中央に昇降および回転可能な吸着バッド10が配備されている。先ず、ウエハWと同形状以上のガラス製の支持板11が、搬送ロボット7によって下部吸着台8に搬送され、上昇している吸着パッド10に支持板11が受け渡される。支持板11を吸着した吸着パッド10は回転し、その間に支持板11の外周の位置(座標)を検出し、当該検出結果に基づいて、支持板11の中心位置を求める。
【0035】
中心位置が求まると、図4に示すように、吸着パッド10が下降するとともに、上部吸着台9が下降して支持板11を吸着保持し、上方に退避する。
【0036】
次に、ウエハWが搬送ロボット7によって下部吸着台8に搬送され、上昇している吸着パッド10にウエハWが受け渡される。ウエハWを吸着した吸着パッド10は回転し、その間にウエハWの外周に形成されたオリエンテーションフラットやノッチが検出されるとともに、中心位置が求められる。これら取得した情報に基づいて、ウエハWのアライメントがされた後、吸着パッド10は下降する。
【0037】
ウエハWのアライメントが完了すると、図5に示すように、上部吸着台9が下降し支持板11の裏面を接着剤6に当接または僅かに押圧して支持板11を貼り合わせる。ウエハWと芯合わせされて支持板11の貼り合せが完了すると、支持板11の表面を搬送ロボットで吸着保持し、バックグラインド工程S3に搬送する。
【0038】
バックグラインド工程S3には、図6および図7に示すように、チャックテーブル12とグラインダ13が配備されている。
【0039】
支持板11の表面をチャックテーブル12で吸着保持した状態でウエハWの裏面をグラインダ13によって所定の厚さまで研削する。所定厚さに達したウエハWは、付着した塵埃などの除去処理が施される。その後、ウエハWは、搬送ロボットによって支持工程S4に搬送される。
【0040】
支持工程S4には、図8に示すように、例えば、テープ供給部、チャックテーブル14、フレーム保持部15、テープ貼付機構、テープ切断機構17およびテープ回収部などを備えている。
【0041】
先ず、昇降可能なチャックテーブル14をフレーム保持部15よりも僅かに高く上昇させた位置でウエハWを搬送ロボットから受け取る。このとき、ウエハWの裏面を上向きにしている。ウエハWを吸着保持したチャックテーブル14は、フレーム保持部15の段部18にリングフレームfを載置したときに、リングフレームfの表面とウエハWの裏面とが同じ高さになるよう下降する。
【0042】
次に、搬送ロボットによってリングフレームfをフレーム保持部15に載置する。
【0043】
ウエハWとリングフレームfのセットが完了すると、テープ供給部からウエハWとリングフレームfの上方を通過してテープ回収部に巻き掛けられている支持用の粘着テープ19をリングフレームfとウエハWとに貼り付ける。つまり、図9に示すように、下流側でニップローラ20によって把持されて所定のテンションが付与された粘着テープ19上に貼付ローラ21をテープ供給方向の下流側から上流側に向けて転動させてリングフレームfとウエハWとに粘着テープ19を貼り付ける。このとき、粘着テープ19に一定にテンションが付与されるように、貼付ローラ21の転動に同調してテープ供給部から所定量の粘着テープ19が繰り出される。
【0044】
貼付ローラ21が、リングフレームfを通過して終端位置に到達すると、テープ切断機構17を下降させ、図10に示すように、リングフレームfの中心周りに旋回させながら、粘着リングフレームfの形状に粘着テープ19を切断する。このとき、図11に示すように、カッタ刃22と同軸に配備された2本のアーム23の各ローラ24が、カッタ刃22によって切断された粘着テープ19の部位の浮き上がりを押圧してリングフレームfに貼り付ける。
【0045】
粘着テープ19の切断が完了すると、テープ切断機構17を上方の待機位置を戻すとともに、ニップローラ20の把持を解除して切り抜かれた粘着テープ19を巻き取り回収する。
【0046】
次に、チャックテーブル14を所定高さまで上昇させる。つまり、粘着テープ19にウエハWの裏面を近接対向させる。この状態で図12に示すように、別の貼付ローラ21aをテープ供給方向の上流側から下流側に転動させて、粘着テープ19を押圧しながらウエハWの裏面に貼り付ける。粘着テープ19の貼り付けられたリングフレームfに支持されたウエハWは、搬送ロボットによって分離工程S5に搬送される。
【0047】
分離工程S5には、図13に示すように、例えば、下部吸着台25、紫外線照射ユニットおよび上部吸着台26などを備えている。
【0048】
下部吸着台25によってウエハWとリングフレームfを裏面から吸着保持する。支持板11の上方の位置に出退移動可能に配備された紫外線照射ユニットは、支持板11側から紫外線を照射する。紫外線の照射時間は、支持板11を透過した紫外線によって接着剤6の重合反応が促進され、接着力を喪失するように予め設定されている。なお、紫外線照射ユニットは、紫外線ランプ、紫外線LEDまたは紫外線レーザ装置であってもよい。紫外線レーザ装置を利用する場合、焦点深度を支持板11との接着界面に設定する。
【0049】
紫外線処理が完了すると、紫外線照射ユニットが待機位置に戻り、上部吸着台26が下降して支持板11を吸着する。支持板11の吸着が確認されると、図14に示すように、上部吸着台26を上昇させて接着剤6から支持板11を分離する。支持板11の分離されたウエハWは、剥離工程S6に搬送される。
【0050】
剥離工程S6には、図15に示すように、例えば、剥離テープ供給部、チャックテーブル27、フレーム保持部28、貼付ユニット29、剥離ユニット30およびテープ回収部などを備えている。
【0051】
フレーム保持部28とチャックテーブル27によってリングフレームfとウエハWを吸着保持する。このとき、リングフレームfとウエハWの表面が面一になっている。次に、図16に示すように、昇降可能なチャックテーブル27を上昇させる。したがって、リングフレームfとウエハ外周Wとの間で露出している粘着テープ19の粘着面からフィルム状の接着剤6の表面までのギャップが、定常状態よりも大きくなる。
【0052】
ウエハWとリングフレームfのセットが完了すると、テープ供給部からウエハWとリングフレームfの上方を通過してテープ回収部に巻き掛けられているウエハWの直径よりも幅広の剥離テープ31をウエハW上の接着剤6に貼り付ける。つまり、図16に示すように、下流側で剥離ユニット30内のニップローラによって把持されて所定のテンションが付与された剥離テープ31上に貼付ユニット29に備わった貼付ローラ32をテープ供給方向の下流側から上流側に向けて転動させる。このとき、剥離テープ31に一定にテンションが付与されるように、貼付ローラ32の転動に同調してテープ供給部から所定量の剥離テープ31が繰り出される。
【0053】
貼付ローラ32が、リングフレームfを通過して終端位置に到達すると、図17および図18および図19に示すように、ニップローラによる剥離テープ31の把持を解除させて剥離ユニット30を上流側に移動させる。ことのき、図20に示すように、剥離ユニット30に備わったエッジ部材33の先端で剥離テープ31を折り返して剥離するとともに、当該剥離動作に同調してテープ回収部によって接着剤6と一体になって剥離された剥離テープ31を巻き取り回収する。
【0054】
剥離ユニット30が終端位置に到達すると、チャックテーブル27を下降させ、その後に剥離ユニット30と貼付ユニット29とを初期位置に復帰させる。以上でウエハマウント作製の一連の動作が完了し、図21に示す、ウエハマウントMFが作製される。
【0055】
上記ウエハマウント作製方法によれば、スピンチャック1によって保持されて回転してうるウエハWの回路面に所定量の液状の接着剤6を僅かに塗布するだけで、回路面に形成された間隙まで当該接着剤6を侵入させて密着させることできる。また、接着剤6の表面を平坦にできる。つまり、ウエハWの回路面を接着剤6で被覆するとき、および、当該接着剤6に支持板11を貼り合わせるとのいずれにおいても、過度の押圧によるストレスがかからない。したがって、ウエハWの回路やバンプなど破損させることがない。
【0056】
また、上記実施例では、次の問題を解決することができる。すなわち、従来方法では、ウエハWの直径よりも幅狭の剥離テープをウエハW上に残渣した両面粘着テープに貼り付けて剥離するのが一般的である。しかしながら、当該剥離テープを利用すると、フィルム状で強度の低下している接着剤6に局所的に引張力が作用する。したがって、剥離テープの剥離動作に伴って、剥離テープの剥離部位からテープ側縁に沿って接着剤6が裂けて残渣する問題がある。
【0057】
そこで、当該実施例では、片面に粘着層を有する粘着テープおよび両面粘着テープよりも厚みが薄くフィルム状になっている接着剤6であっても、当該接着剤6の全面を覆うように剥離テープ31を貼り付けて剥離するので、ウエハWの回路面に接着剤6が残渣するのを抑制することができる。
【0058】
さらに,剥離テープ31を接着剤6に貼り付けるとき、チャックテーブル27を上昇させるので、リングフレームfとウエハWを同一平面上に保持した場合に比べて、粘着テープ19の粘着面から接着剤6の表面までのギャップを大きくすることができる。つまり、剥離テープ31が撓んでウエハWの外周からはみ出ても、テープ同士の接着が回避される。したがって、テープ同士の接着を解除させるために強い引張力を作用させる必要がない。換言すれば、過度の引張力によるウエハWの破損および剥離エラーを回避することができる。
【0059】
<実施例2>
本実施例は、図22に示すように、接着剤塗布工程S10、支持板貼合せ工程S20、バックフラインド工程S30、支持工程S40、分離工程S50、貼付け工程S60および剥離工程S70から構成されている。なお、接着剤塗布工程S10から支持板分離工程40までは、上記実施例1と同じ処理を行うので、異なる処理の貼付け工程S60以降について説明する。
【0060】
支持板11が分離されたウエハWは、貼付け工程S60に搬送される。当該貼付け工程60は、図23および図26に示すように、例えば、テープ供給部、チャックテーブル40、フレーム保持部41、貼付ユニット42、剥離ユニット43およびテープ回収部などを備えている。
【0061】
ガイドレール44に沿って移動可能に構成された可動台45上に配備されたフレーム保持部41とチャックテーブル40によってリングフレームfとウエハWを吸着保持する。このとき、リングフレームfとウエハWの表面が面一になっている。
【0062】
ウエハWとリングフレームfのセットが完了すると、図24に示すように、テープ供給部から帯状のキャリアテープ47に所定ピッチで添設されたウエハWと同形状以上に予め切断された粘着テープ48(プリカットテープ)をウエハWに向けて供給する。
【0063】
キャリアテープ47は、貼付位置に配備されたエッジ部材49で折り返され、粘着テープ48がキャリアテープ47剥離されてゆく。貼付位置の上方に待機している貼付ユニット42の貼付ローラ50が、図25に示すように、下降してウエハW上の接着剤6の貼付端部と近接している粘着テープ48を押圧して貼り付ける。次に、キャリアテープ47の供給速度に同調させて可動台45を移動させることにより、貼付ローラ50が転動し、接着剤6に粘着テープ48を貼り付けてゆく。粘着テープ48の貼り付けが完了すると、ウエハWは、剥離工程70に搬送される。
【0064】
剥離工程S70には、図26に示すように、例えば、剥離テープ供給部、チャックテーブル51、貼付ユニット52、剥離ユニット53およびテープ回収部などを備えている。
【0065】
チャックテーブル51によってリングフレームfおよびウエハWが吸着保持される。このとき、リングフレームfとウエハWの表面が面一になっている。
【0066】
ウエハWとリングフレームfのセットが完了すると、図27に示すように、テープ供給部からウエハWとリングフレームfの上方を通過してテープ回収部に巻き掛けられているウエハWの直径よりも幅狭の剥離テープ54をウエハW上の粘着テープ48に貼り付ける。つまり、下流側で剥離ユニット53内のニップローラによって把持されて所定のテンションが付与された剥離テープ54上に貼付ユニット52に備わった貼付ローラ32aをテープ供給方向の下流側から上流側に向けて転動させる。このとき、剥離テープ54に一定にテンションが付与されるように、貼付ローラ32aの転動に同調してテープ供給部から所定量の剥離テープ54が繰り出される。
【0067】
貼付ローラ32aが、リングフレームfを通過して終端位置に到達すると、ニップローラによる剥離テープ54の把持を解除させて剥離ユニット53を上流側に移動させる。ことのき、剥離ユニット53に備わったエッジ部材33aの先端で剥離テープ54を折り返して剥離するとともに、当該剥離動作に同調してテープ回収部によって接着剤6および粘着テープ48と一体になって剥離された剥離テープ54を巻き取り回収する。
【0068】
剥離ユニット53が終端位置に到達すると、剥離ユニット53と貼付ユニット52とが初期位置に復帰する。以上でウエハマウント作製の一連の動作が完了し、図21に示す、ウエハマウントMFが作製される。
【0069】
上記ウエハマウント作製方法によれば、接着剤6にウエハWと同形状以上の粘着テープ48を貼り付けるので、リングフレームfとウエハWを同一平面上に保持した場合に比べて、粘着テープ19の粘着面から粘着テープ48の表面までのギャップを大きくすることができる。つまり、剥離テープ54が撓んでウエハWの外周からはみ出ても、テープ同士の接着が回避される。したがって、テープ同士の接着を解除させるために強い引張力を作用させる必要がない。換言すれば、過度の引張力によるウエハWの破損および剥離エラーを回避することができる。
【0070】
上記実施例装置によれば、することができる。
【0071】
なお、本発明は以下のような形態で実施することも可能である。
【0072】
(1)上記実施例2の剥離工程70において、実施例1と同様にウエハWを昇降可能なチャックテーブルに保持し、リングフレームfをフレーム保持部に保持し、剥離テープ54の貼付時に当該チャックテーブルを上昇させて剥離テープ54を粘着テープ48に貼り付けてもよい。
【0073】
(2)上記両実施例および変形例において、剥離テープ31、54の貼付時に、図28に示すように、テープ貼付の開始端および終了端側のウエハWの外周に離型処理されたプレート55を配備してもよい。この構成によれば、ウエハWの外周から撓んではみ出る剥離テープが受け止められる。したがって、粘着テープ19と剥離テープ31、54との接着が、確実に回避される。
【0074】
(3)上記実施例2の貼付け工程において、2枚以上の粘着テープ48を多重に貼り付けてもよい。
【0075】
(4)上記各実施例の支持板貼合せ工程において、上部吸着台26および下部吸着台25の少なくともいずれかにヒータを内蔵させ、接着剤6を加温しながら支持板11を貼り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 … スピンチャック
4 … ノズル
6 … 接着剤
11 … 支持板
19 … 粘着テープ(支持用)
27 … チャックテーブル
28 … フレーム保持部
29 … 貼付ユニット
30 … 剥離ユニット
31 … 剥離テープ
32 … 貼付ローラ
f … リングフレーム
W … 半導体ウエハ
MF … ウエハマント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持用の粘着テープを介してリングフレームに半導体ウエハを支持するウエハマウント作製方法であって、
前記半導体ウエハの回路面に液状の接着剤を塗布する塗布過程と、
前記半導体ウエハの接着剤の塗布面に半導体ウエハと同形状以上の支持板を貼り合せる貼合せ過程と、
前記支持板を保持して半導体ウエハの裏面を研削する研削過程と、
支持用の前記粘着テープを介してリングフレームに半導体ウエハを支持する支持過程と、
前記半導体ウエハから支持板を分離する分離過程と、
前記半導体ウエハ上でフィルム状になっている接着剤に半導体ウエハの直径以上の幅を有する剥離テープを貼り付けて当該剥離テープを剥離することにより、当該接着剤を一体にして半導体ウエハから剥離する剥離過程と、
を備えたことを特徴とするウエハマウント作製方法。
【請求項2】
請求項1に記載のウエハマウント作製方法において、
前記剥離過程では、個別の吸着台で半導体ウエハとリングフレームをそれぞれ吸着保持し、
前記半導体ウエハの表面がリングフレームの表面より突き出た状態で半導体ウエハ上の接着剤に剥離テープを貼り付ける
ことを特徴とするウエハマウント作製方法。
【請求項3】
請求項2に記載のウエハマウント作製方法において、
前記剥離過程では、さらに、半導体ウエハの外周に離型処理されたプレートを近接させた状態で半導体ウエハ上の接着剤に剥離テープを貼り付ける
ことを特徴とするウエハマウント作製方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のウエハマウント作製方法において、
前記接着剤は、紫外線硬化型であり、
前記分離過程では、ガラス製の支持板側から紫外線を照射し、接着剤を硬化させてから支持板を接着剤から分離する
ことを特徴とするウエハマウント作製方法。
【請求項5】
支持用の粘着テープを介してリングフレームに半導体ウエハを支持するウエハマウント作製方法であって、
前記半導体ウエハの回路面に液状の接着剤を塗布する塗布過程と、
前記半導体ウエハの接着剤の塗布面に半導体ウエハと同形状以上の支持板を貼り合わせる貼合せ過程と、
前記支持板を保持して半導体ウエハの裏面を研削する研削過程と、
支持用の前記粘着テープを介してリングフレームに半導体ウエハを支持する支持過程と、
前記半導体ウエハから支持板を分離する分離過程と、
前記半導体ウエハ上でフィルム状になっている接着剤に半導体ウエハと同形状以上に予め切断された粘着テープを貼り付ける貼付け過程と、
前記粘着テープに剥離テープを貼り付けて当該剥離テープを剥離することにより、当該粘着テープと接着剤を一体にして半導体ウエハから剥離する剥離過程と、
を備えたことを特徴とするウエハマウント作製方法。
【請求項6】
請求項5に記載のウエハマウント作製方法において、
前記剥離過程では、半導体ウエハの直径よりも幅の狭い剥離テープを貼り付ける
ことを特徴とするウエハマウント作製方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のウエハマウント作製方法において、
前記接着剤は、紫外線硬化型であり、
前記分離過程では、ガラス製の支持板に紫外線を照射し、接着剤を硬化させてから支持板を接着剤から分離する
ことを特徴とするウエハマウント作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−138402(P2012−138402A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288083(P2010−288083)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(394016601)日東精機株式会社 (79)
【Fターム(参考)】