説明

エチレンオキシドを製造するための反応器系及び方法

エチレンをエチレンオキシドに酸化するための反応器系。前記反応器系は触媒成分を含有し得る成形支持体材料の充填層を収容している反応管を含む。前記成形支持体材料は中空円筒形幾何学的構造を有する。前記反応器系は反応管と触媒系形状寸法の特定組合せを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応器系に関する。本発明の別の態様はエチレンオキシドの製造における反応器系の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンオキシドは、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、アルカノールアミンや洗剤のような化学物質を製造するための供給原料として使用される重要な工業化学薬品である。エチレンオキシドを製造するための1つの方法はエチレンの酸素を用いる接触部分酸化による。この方法では、エチレン及び酸素を含む供給原料を特定反応条件に保たれている反応ゾーン内に収容されている触媒の層上を通過させる。典型的には、エチレン酸化反応器は複数の細長い管を平行に設けた形態であり、前記管には反応管中に収容された充填層を形成すべく担持触媒粒子が充填されている。前記支持体は球、ペレット、リング及びタブレットのような任意の形状を有し得る。1つの特に望ましい支持体形状は中空円筒である。
【0003】
エチレン酸化反応ゾーンに中空円筒形担持触媒粒子の充填層を使用すると経験する1つの問題は、エチレンオキシドプロセスの操作中に起こる触媒層を横切る圧力低下と触媒層充填密度を適切なバランスに保つことが難しいことである。触媒性能は通常エチレン酸化反応管中の触媒充填密度を高めることにより改善されるが、触媒充填密度を高くすると反応器を横切る圧力低下が通常望ましくなく大きくなる。
【0004】
エチレンの部分酸化によるエチレンオキシドの製造において充填触媒層は高い充填密度を有するが充填触媒層を横切る圧力低下を最小限にした反応器系を用いることが望ましい。
【0005】
従って、本発明の目的は、充填触媒層は高い充填密度を有するがその操作中適当に低い圧力低下を与えるエチレンオキシドの接触部分酸化において使用するのに適した反応器系を提供することである。
【0006】
本発明の他の態様、目的及び幾つかの作用効果は以下の記載にてらしてより明らかとなるであろう。
【発明の開示】
【0007】
1つの態様で、本発明は、成形支持体材料の充填層を収容している反応ゾーンを規定する管長さ及び管直径を有する細長い管を含む反応器系を提供し、前記成形支持体材料は、公称長さ/公称外径の比は0.5〜2の範囲である;更に管直径が28mm未満のときには公称外径/公称内径の比は2.3を越え、管直径/外径の比は1.5〜7の範囲であり、管直径が少なくとも28mmのときには公称外径/公称内径の比は2.7を越え、管直径/外径の比は2〜10の範囲である;ような公称長さ、公称外径及び公称内径により規定される中空円筒形幾何学的構造を有する。
【0008】
別の態様で、本発明は、成形支持体材料の充填層を収容している反応ゾーンを規定する管長さ及び管直径を有する細長い管を含む反応器系を提供し、前記成形支持体材料は、公称長さ/公称外径の比は0.5〜2の範囲であり、公称外径/公称内径の比は後記する正の試験結果を与える;更に管直径/公称外径の比は管直径が28mm未満のときには1.5〜7の範囲であり、管直径が少なくとも28mmのときには2〜10の範囲である;ような公称長さ、公称外径及び公称内径により規定される中空円筒形幾何学的構造を有する。
【0009】
本明細書中、「正の試験結果」は、いずれの数値も充填層を1.136Mpa(150psig)の圧力で窒素ガスの乱流中で試験することにより得られる充填層の単位長さあたりの圧力低下の数値と充填密度の数値の商の、同一支持体材料の中空円筒形構成が管直径が28mm未満のときには公称外径6mm及び公称内径2.6mm、管直径が少なくとも28mmのときには公称外径8mm及び公称内径3.2mm、および公称長さ/公称外径の比1により規定されることを除いて同一の方法で得られる数値の商と比べた低下により規定される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、エチレンオキシドの製造方法は、本発明の反応器系にエチレン及び酸素を含む供給原料を導入し、エチレンオキシド及び場合により存在する未変換エチレンを含む反応生成物を前記反応器系から取り出すことを含む。ここで、反応ゾーン内には中空円筒形幾何学的構造を有する成形支持体材料上に担持した触媒成分を含む担持触媒系が存在する。
【0011】
更に、本発明は、本発明のエチレンオキシドの製造方法により得たエチレンオキシドをエチレングリコール、エチレングリコールエーテルまたは1,2−アルカノールアミンに変換することを含むエチレングリコール、エチレングリコールエーテルまたは1,2−アルカノールアミンを製造するためのエチレンエキシドの使用方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書中、中空円筒形幾何学的構造に関して、用語「内径」及び「口径」は同一の意味を有し、本明細書中互換可能に使用される。また、本明細書中、用語「担体」及び「支持体」は同一の意味を有し、本明細書中互換可能に使用される。
【0013】
エチレンオキシドを製造する1つの方法は酸素を用いたエチレンの接触部分酸化による。この方法は、Kirk−Othmer,「化学技術事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」,第9巻,p.432−471,ロンドン/ニューヨークに所在のJohn Wiley(1980年)発行に概説されている。一般的なエチレン酸化反応器系が本発明での使用に適しており、前記反応器系は内径が20〜60mm、長さが3〜15mである細長い管を平行して複数含む。エチレン酸化反応器系により大きな管を使用することも可能であり得る。前記管は通常多管式熱交換器中に使用するのに適しており、熱交換器の胴中に配置すべく束に形成されている。前記管には、エチレンをエチレンオキシドに酸素を用いて部分酸化する適当なエチレン酸化触媒が充填されている。熱交換器の胴側には、エチレンの酸化により生ずる反応熱を除去するため及びエチレン酸化触媒を収容している管内の反応温度をコントロールするために伝熱媒体の通路が設けられている。
【0014】
エチレン及び酸素を含む供給原料を反応器系の管に導入し、ここで前記供給原料をエチレン酸化触媒と通常50〜400℃、通常0.15〜3MPaの圧力下で接触させる。
【0015】
上記した典型的なエチレンオキシド製造方法において使用される触媒系は支持体または担体材料を含む担持触媒系であり、前記支持体または担体材料には触媒成分及び所望により1つ以上の助触媒成分が堆積されているか含浸されている。
【0016】
本発明の反応器系はエチレンのエチレンオキシドへの酸化において使用され得、反応管と成形支持体材料(好ましくは、触媒系)の組合せを含む。この組合せのユニークな形状寸法によりいろいろな予期せぬプロセス効果が得られる。
【0017】
本発明の反応器系の触媒系成分は触媒成分を担持する成形支持体材料を含み得る。場合により、前記成形支持体材料は1つ以上の助触媒成分あるいは共助触媒成分をも担持している。好ましい触媒成分は銀である。助触媒成分の例には希土類金属、マグネシウム、レニウム及びアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウム)が含まれ得る。これらの中で、レニウム及びアルカリ金属、特に高級アルカリ金属(例えば、リチウム、カリウム、ルビジウム及びセシウム)が好ましい。高級アルカリ金属の中でセシウムが最も好ましい。レニウム助触媒をアルカリ金属助触媒の不在下で使用しても、アルカリ金属助触媒をレニウム助触媒の不在下で使用しても、またはレニウム助触媒とアルカリ金属助触媒の両方を触媒系に存在させることもできる。上記した助触媒に加えて、レニウム共助触媒を触媒系に存在させることができる。前記共助触媒には硫黄、モリブデン、タングステン及びクロムが含まれる。助触媒及び共助触媒化合物は適当な方法(例えば、含浸)により適当な形態で支持体材料に適用され得る。
【0018】
成形支持体材料及び触媒系の支持体材料は、触媒系の銀触媒及び助触媒成分に対する支持体材料として使用するのに適した任意の市販されている耐熱性多孔性材料であり得る。前記支持体材料はエチレンの酸化において一般的な反応条件下及び使用した化合物の存在下で比較的不活性でなければならない。前記支持体材料には炭素、カーボランダム、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び酸化アルミニウムと二酸化ケイ素を主成分とする混合物が含まれ得る。α−アルミナは、かなり均一な孔径を有しているので好ましい。支持体材料は、通常0.1〜10m/g、好ましくは0.2〜5m/g、より好ましくは0.3〜3m/gの比表面積(公知のB.E.T.法により測定;援用により本明細書に含まれるとするBrunauer,Emmet及びTeller,J.Am.Chem.Soc.,60:309−316(1938)参照);通常0.1〜1.5cm/g、好ましくは0.2〜1.0cm/g、最も好ましくは0.3〜0.8cm/gの比気孔容積(ASTM C20である公知の吸水法により測定);通常20〜120容量%、好ましくは40〜80容量%の見かけ気孔率(吸水法により測定);通常0.3〜15μm、好ましくは1〜10μmの平均孔径;及び通常少なくとも50重量%の直径0.03〜10μmを有する孔の割合(Micromeretics Autopore 9200モデル(接触角130°,0.473N/mの表面張力を有する水銀,適用した水銀圧縮について補正)を用いて3.0×10Paの圧力まで水銀を貫入させて測定)を有する。
【0019】
触媒系の銀触媒成分及び助触媒成分は、当業界で公知の一般的方法により触媒系の支持体材料に堆積または含浸させる。触媒系は通常、支持体材料の重量、触媒成分(すなわち、銀金属)の重量及び1つ以上の助触媒成分の重量を含めた触媒系の全重量に基づいて2〜30重量%、更にはそれ以上(例えば、40重量%まで、または50重量%まで)の銀または銀金属濃度を有する。幾つかの実施態様では、触媒系の銀成分は好ましくは4〜22重量%、最も好ましくは6〜20重量%の濃度で存在する。他の実施態様では、触媒系の銀成分は好ましくは20重量%超〜30重量%未満、より好ましくは22〜28重量%の濃度で存在する。1つ以上の助触媒は0.003〜1.0重量%、好ましくは0.005〜0.5重量%、最も好ましくは0.01〜0.2重量%の濃度で存在し得る。
【0020】
本発明の反応器系により、従来の系と比較して、エチレオキシド製造方法において使用したときの充填層を横切る圧力低下に対する管充填密度(TPD)、層間隙率及び触媒滞留量のバランスが改善される。本発明の重要な態様は、前記改善が例えば中空円筒形幾何学的構造の公称外径/公称内径の比を変化させることにより得られ得るという認識である。中空円筒形支持体材料をベースとする触媒はエチレンオキシドの製造方法において既に長年使用されており、前記触媒の性能の改善のために多くの努力が払われてきたことから、このことは真に予期せぬことである。しかしながら、中空円筒形幾何学的構造の形状寸法を調節することにより触媒の性能を改善しようとする試みは注目されていないようである。
【0021】
本発明によれば、例えば中空円筒形幾何学的構造の公称外径/公称内径の比を従来の中空円筒形支持体材料の比と比べて変化させる(通常、高くする)ことにより改善されたバランスが得られる。改善されたバランスは、通常使用されているような寸法を有する一般的な中空円筒形支持体材料に対して中空円筒形支持体材料を用いる上記した比較試験により観察することができる。この比較試験では、材料は通常同一の材料密度を有する。さもなければ、材料密度の差を管充填密度の変化が真に触媒滞留量及び層間隙率の変化を反映するように補正する。上に定義する正の反応結果は改善されたバランスを表す。比較試験の例は以下の実施例I〜IVに挙げられている。
【0022】
充填層を横切る圧力低下に対する管充填密度(TPD)の改善されたバランスは、後記から明らかなように各種外観または品質に現れ得る。
【0023】
本発明の反応器系は、従来の反応器系で見られるよりも高い管充填密度を有する成形支持体材料または触媒系の充填層を含む。多くの場合、触媒性能が向上するので管充填密度を増加させることが望ましい。しかしながら、より高い管充填密度を得ようとすると使用時に充填層を横切る圧力低下が一般的な反応器系と比べて高まることが通常予想される。一方、本発明の反応器系は予期せぬことに、反応器系の反応管中に収容されている充填層を横切る圧力低下の増分が予想よりも少なく、多くの場合従来の系と比較したとき管充填密度を対応して低下させることなく、多くの場合管充填密度を増加させても充填層を横切る圧力低下が抑制される。
【0024】
本発明の反応器系が、少なくとも従来の反応器系で見られる程度に高く、好ましくは従来の系で見られる管充填密度を超える管充填密度を有し、使用時に管充填密度を増加させつつ圧力低下を抑制する充填層を含むことが好ましい。
【0025】
管直径と成形支持体及び/または触媒系の相対的形状寸法が、反応管と該反応器に充填される好ましくは触媒系を形成すべく触媒成分を含む成形支持体の層の組合せを含む本発明の反応器系の重要な要件である。又、予期せぬことに、反応管と比べて比較的大きな支持体が反応器系の使用時に充填層を横切るより大きな圧力低下を観察することなく、または特にある工学相関(例えば、Ergun相関;W.J.Beek及びK.M.K.Muttzall,「輸送現象(Transport Phenomena)」,J.Wiley and Sons Ltd.(1975年)発行,p.114参照)に基づく予想よりも少ない圧力低下の増加を観察して管充填密度を増加させるために反応管内の充填層として充填され得る。
【0026】
より大きな支持体及び触媒系を、特定サイズの支持体または触媒系について予想されるよりも高い管充填密度を有するが、使用時に圧力低下を増加させない、好ましくは同一の管充填密度を有する反応器系で予想されるよりも圧力低下を低下させる充填層を有する本発明の反応器系の充填層中に使用することが特に望ましい。更なる作用効果は管充填密度の増加であり得る。
【0027】
上記した作用効果を得るために、本発明の反応器系は特定の形状寸法を有していなければならない。これらの形状寸法は反応管の直径により影響され、よって反応管及び成形支持体の相対的形状寸法は通常管直径により異なる。内径が28mm未満の反応管の場合、反応管の内径/触媒支持体の外径の比は1.5〜7、好ましくは2〜6、最も好ましくは2.5〜5の範囲でなければならない。内径が28mmを越える反応管の場合、反応管の内径/触媒支持体の外径の比は2〜10、好ましくは2.5〜7.5、最も好ましくは3〜5の範囲でなければならない。
【0028】
触媒系の支持体の外径/口径(または内径)の比も本発明の反応器系の別の重要な要件である。内径が28mm未満の反応管の場合、触媒系の支持体の外径/口径(または内径)の比は2.3〜1000、好ましくは2.6〜500、最も好ましくは2.9〜200の範囲であり得る。内径が28mmを越える反応管の場合、触媒系の支持体の外径/口径(または内径)の比は2.7〜1000、好ましくは3〜500、最も好ましくは3.3〜250の範囲であり得る。
【0029】
成形支持体材料の口径が比較的小さいことが重要であるが、支持体の内側ボアが少なくともある寸法を有することも重要である。口径により規定されるボイドスペースにより触媒の製造及びその触媒特性において幾つかの効果が与えられる。特定の理論に束縛されるつもりはないが、中空円筒の口径により形成されるボイドスペースにより触媒成分の担体上への例えば含浸による堆積が改善され、更なる取り扱い(例えば、乾燥)も改善される。比較的小さな口径を用いる利点は、成形支持体材料がより大きな口径を有する支持体材料と比べて高い圧縮強度を有することである。ボアの少なくとも1端、好ましくは両端で少なくとも0.1mm、より好ましくは少なくとも0.2mmの口径を有することが好ましい。好ましくは、口径は少なくとも5mm、好ましくは最高2mm、例えば1mmまたは1.5mmである。
【0030】
本発明の反応器系の別の重要な要件は、本発明の反応器系の充填層の触媒系の支持体が0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.5、最も好ましくは0.9〜1.1の長さ/外径の比を有することである。
【0031】
本発明の反応器系の幾何学的寸法の望ましい範囲の要約を表1及び2に示す。表1は、28mm未満の直径を有する反応管についての成形支持体の相対的形状寸法を示す。表2は、少なくとも28mmの直径を有する反応管についての成形支持体の相対的形状寸法を示す。より小さい反応管は21mmまでまたはそれ以下、例えば20mmの管直径を有し得る。よって、本発明の反応器系のより小さい反応管の管直径は20mmまたは21mm〜28mm未満の範囲であり得る。より大きな反応管は60mmまたはそれ以上の管直径を有し得る。よって、本発明の反応器系のより大きな反応管の管直径は28〜60mmの範囲であり得る。
【0032】
管直径が28〜60mm、特に39mmの場合、支持体の公称外径/公称内径の比は、
外径が10.4〜11.6mmのときには少なくとも4.5であり、
外径が9.4〜10.6mmのときには3.4より大きく、特に少なくとも3.6であり、
外径が8.4〜9.6mmのときには少なくとも2.6、特に2.6〜7.3の範囲である。
【0033】
【表1】

【0034】
反応器の管長さは、所望の反応生成物を与えるべく反応ゾーン内における供給反応物質と触媒系の適切な接触時間を効果的に与える長さであり得る。通常、上記したように、反応器の管長さは3mを超え、好ましくは3〜15mである。反応管の全長に触媒系を充填しても、反応管の長さの一部に触媒系を充填して層深さを有する触媒系の充填層を形成してもよい。よって、層深さは3mを超えることができ、好ましくは3〜15mの範囲である。
【0035】
本発明を通常実施する際、本発明の反応器系の充填層の大部分は本明細書に記載の形状寸法を有する成形支持体材料からなる。通常、反応器系の充填層は主に(すなわち、少なくとも50%)特に規定した形状寸法を有する触媒系からなり、充填触媒層の少なくとも80%が特に規定した触媒系からなるが、好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%が特に規定した触媒系からなる。触媒系を含む充填層の%を指すとき、充填層中に収容されている触媒系粒子の総数に対する本明細書に記載した特定寸法を有する各触媒系粒子の総数の比に100を掛けた値を意味する。別の実施態様では、触媒系を含む充填層の%を指すとき、充填層中に収容されるすべての触媒系粒子の嵩容積に対する本明細書に記載されている特定寸法を有する触媒系粒子の嵩容積の比に100を掛けた値を意味する。別の実施態様では、触媒系を含む充填層の%を指すとき、充填層中に収容されているすべての触媒系粒子の重量に対する本明細書に記載されている特定寸法を有する触媒系粒子の重量の比に100を掛けた値を意味する。
【0036】
本発明の反応器系の触媒系層の管充填密度は本発明の重要な特徴である。なぜならば、本発明の反応器系の独自な形状寸法を用いることにより得られ得る管充填密度の増加により触媒性能が改善され得るからである。通常、充填触媒系の管充填密度は反応管の内径に依存し、成形支持体を形成するために使用される特定支持体材料の諸特性(例えば、密度)に依存する。
【0037】
反応管の内径が小さい場合、充填層の管充填密度は反応管の内径が大きい充填層の管充填密度よりも通常小さい。よって、例えば反応管の内径が21mmの本発明の反応器系の充填層の管充填密度は、支持体材料が主にα−アルミナからなるときには550kg/cmくらい低いが、これを越えることもできる。反応管の内径がより大きい及びより小さい反応管では、管充填密度が達成可能なくらい高いことが望ましく、なお本発明の作用効果が実現される。支持体材料が主にα−アルミナであるときの管充填密度は650kg/cm以上であり得、700kg/cmを超え、場合により850kg/cmを超えることがあり得る。管充填密度は好ましくは900kg/cmを超え、最も好ましくは管充填密度は920kg/cmを超える。管充填密度は通常1200kg/cm未満、特に1150kg/cm未満である。
【0038】
ここで、細長い管12及び該管12中に収容されている充填層14を含む本発明の反応器系10を示す図1を参照する。細長い管12は、充填層14を収容している反応ゾーンと反応ゾーン直径20を規定する管内表面18及び管内径20を有する管壁16を有する。細長い管12は管長さ22を有し、反応ゾーン内に収容されている充填層14は層深さ24を有する。細長い管12は、層深さ24の外側に、例えば供給原料と熱交換する目的で非触媒材料の粒子の別の層及び/または例えば反応生成物と熱交換する目的で別の層を有していてもよい。細長い管12は更に入口管端部26及び出口管端部28を有し、前記入口管端部26にはエチレン及び酸素を含む供給原料が導入され、前記出口管端部28からはエチレンオキシド及びエチレンを含む反応生成物が取り出される。反応生成物中に場合により存在するエチレンは反応器ゾーンを未変換で通過した供給原料のエチレンであることに注目されたい。エチレンの典型的な変換率は10モル%を越えるが、場合により変換率はより低くてもよい。
【0039】
反応ゾーン内に収容されている充填層14は、図2に示す担持触媒系30の層から構成されている。担持触媒系30は、本発明に従う公称長さ32、公称外径34及び公称内径(口径)36を有する一般的な中空円筒形幾何学的構造を有する。
【0040】
当業者は、語句「円筒」は必ずしも中空円筒形幾何学的構造が完全な円筒からなることを意味しないことを認識している。語句「円筒」は完全な円筒からのわずかな偏差を含むことを意味する。例えば、円筒軸に垂直な中空円筒形幾何学的構造の外周の断面は必ずしも図7に示す完全に(正確に)円71である必要はない。また、中空円筒形幾何学的構造の軸が大体直線であってもよく及び/または中空円筒形幾何学的構造の外径が軸に沿って大体一定であってもよい。わずかな偏差の例には、円筒の外周が実質的に同一の直径を有する2つの仮想の完全な同軸円筒により規定される仮想管形空間中に位置しており、仮想内側円筒の直径が仮想外側円筒の直径の少なくとも70%、より典型的には少なくとも80%、特に少なくとも90%であり、仮想円筒はその直径の比ができるだけ1に近いように選択される場合が含まれる。そのような場合、仮想外側円筒の直径は中空円筒形幾何学的構造の外径であると見なされる。図7は、仮想円筒73及び74の軸に対して垂直にとった断面で中空円筒形幾何学的構造の外周72、仮想外側円筒73及び仮想内側円筒74を示す。
【0041】
また、当業者は、中空円筒形幾何学的構造のボアは必ずしも完全に円筒形でなくてもよく、ボアの軸は大体直線であり得、口径は大体一定であり得及び/またはボアの軸は円筒の軸に対して変位していても曲がっていてもよいと認識している。口径がボアの長さにわたり変化しているならば、口径はボア端部で最大の直径であると見なされる。ボアの断面が完全に円でないならば、最大寸法が口径であると見なされる。ボアにより形成されるボイドスペースは2個以上のボア、例えば2個、3個または4個、または5個のボアに分けられ得、この場合複数のボアはそれらの断面積の合計が本明細書に規定する直径を有する単一のボアの断面積に等しいような直径を有する。
【0042】
好ましい実施態様において、中空円筒形幾何学的構造は円筒の軸に沿ってボアを有する円筒であると意図される。
【0043】
成形凝集物の製造方法は必ずしも正確でないので、中空円筒形幾何学的構造の寸法は公称、概算であると理解される。
【0044】
管内径または反応ゾーン直径20と担持触媒系30の幾何学的寸法のユニークな幾何学的組合せにより、使用時の従来の系と比べて管充填密度を大きく低下させることなく圧力低下が予期せぬことに抑制される。多くの場合使用時の圧力低下を抑えつつ本発明の反応器系の管充填密度は従来の系よりも大きく、こうしたことが好ましい。
【0045】
触媒系30の必須の幾何学的寸法は公称長さ32/公称外径34の比である。この寸法は上に詳記されている。
【0046】
触媒系30の別の必須の幾何学的寸法は公称外径34/公称内径36の比である。この寸法は上に詳記されている。
【0047】
触媒系30と細長い管12の相対寸法も本発明の重要な要件である。なぜならば、これらの寸法が反応器系10に関連する管充填密度及び圧力低下特性を決定するからである。この寸法は上に詳記されている。
【0048】
触媒系を規定する別の方法ではその公称寸法を参照する。中空円筒形幾何学的構造を有する標準8mm触媒の場合、円筒の外径は公称8mmであるが、7.4〜8.6mmの範囲であり得る。円筒の長さは公称8mmであるが、7.4〜8.6mmの範囲であり得る。本発明で使用する場合、口径は少なくとも0.1mmまたは0.2mmであり得、好ましくは0.5〜3.5mm、より好ましくは0.5mm〜3mm未満であり得る。
【0049】
中空円筒形幾何学的構造を有する標準9mm触媒の場合、円筒の外径は通常9mmであるが、8.4〜9.6mmの範囲であり得る。円筒の長さは公称9mmであるが、8.4〜9.6mmの範囲であり得る。本発明で使用する場合、標準9mm触媒の口径は少なくとも0.1mmまたは0.2mmであり得、好ましくは0.5〜3.5mm、より好ましくは1.25〜3.5mmであり得る。
【0050】
中空円筒形幾何学的構造を有する標準10mm触媒の場合、円筒の外径は通常10mmであるが、9.4〜10.6mmの範囲であり得る。円筒の長さは公称10mmであるが、9.4〜10.6mmの範囲であり得る。本発明で使用する場合、標準10mm触媒の口径は少なくとも0.1mmまたは0.2mmであり得、好ましくは0.5〜4.0mm、より好ましくは0.5〜3mm、更に好ましくは0.5〜2.8mmであり得る。
【0051】
中空円筒形幾何学的構造を有する標準11mm触媒の場合、円筒の外径は通常11mmであるが、10.4〜11.6mmの範囲であり得る。円筒の長さは公称11mmであるが、10.4〜11.6mmの範囲であり得る。本発明で使用する場合、標準11mm触媒の口径は少なくとも0.1mmまたは0.2mmであり得、好ましくは0.5〜3.5mm、より好ましくは0.5〜2.5mmであり得る。
【0052】
触媒系寸法の分散の多くは中空円筒形支持体材料の製造方法に起因する。前記製造方法は触媒支持体製造の業界で公知であり、押出し法及びピル製造方法のような一般的方法が含まれる。
【0053】
図3は、図1に示す反応器系を複数備えた多管式熱交換器42を用いるエチレンオキシドの製造方法40を包括的に示す概略図である。典型的には、図1の反応器系は複数の他の反応器系と一緒になって多管式熱交換器の胴に挿入するための管束に集められる。
【0054】
エチレン及び酸素を含む供給原料を導管44を介して多管式熱交換器42の管側に導入し、ここで熱交換器42中に収容されている触媒系と接触させる。反応熱は導管46を介して多管式熱交換器42の胴側に装入される伝熱流体(例えば、オイル、ケロシンまたは水)を用いて除去され、前記伝熱流体は導管48を介して多管式熱交換器42の胴から除去される。
【0055】
エチレンオキシド、未反応エチレン、未反応酸素及び場合により他の反応生成物(例えば、二酸化炭素及び水)を含む反応生成物は導管50を介して多管式熱交換器42の反応器系管から取り出され、分離システム52に送られる。分離システム52により、エチレンオキシドとエチレン、場合により存在する二酸化炭素及び水とが分離される。これらの成分を分離するために抽出流体(例えば、水)が使用され得、この流体は導管54を介して分離システム52に導入される。エチレンオキシドを含有する濃縮抽出流体は導管56を介して分離シテスム52から離れ、場合により存在する未反応のエチレン及び二酸化炭素は導管58を介して分離システム52を離れる。分離された二酸化炭素は導管61を介して分離システム52から離れる。導管58を介して流れるガス流の一部は導管60を介してパージ流として除去され得る。残りのガス流は導管62を介して再循環コンプレッサー64に流れる。エチレン及び酸素を含む供給原料は導管66を介して流れ、導管62を介して流れる再循環エチレンと合わされ、合わされた流れは再循環コンプレッサー64に送られる。再循環コンプレッサー64は導管44に排出され、排出流は多管式熱交換器42の管側の入口に送られる。有利には、導管44を通る供給原料中の二酸化炭素の量が低い、例えば2モル%以下、好ましくは1モル%以下、または0.5〜1モル%の範囲であるように分離システム52を操作する。
【0056】
エポキシ化方法で生じたエチレンオキシドはエチレングリコール、エチレングリコールエーテルまたはアルカノールアミンに変換され得る。
【0057】
エチレングリコールまたはエチレングリコールエーテルへの変換は、例えばエチレンオキシドを適当には酸性または塩基性触媒を用いて水と反応させることを含み得る。例えば、エチレングリコールを主体に及び少量のエチレングリコールエーテルを製造するためには、エチレンオキシドを、酸触媒(例えば、反応混合物の全量に基づいて0.5〜1.0重量%の硫酸)の存在下50〜70℃及び100kPa絶対での液相反応で、または好ましくは触媒の非存在下130〜240℃及び2000〜4000kPa絶対での気相反応で10倍モル過剰量の水と反応させ得る。水の割合を低くすると、反応混合物中のエチレングリコールエーテルの割合が多くなる。こうして生成したエチレングリコールエーテルはジ−エーテル、トリ−エーテル、テトラ−エーテルまたはそれ以上のエーテルであり得る。あるいは、エチレングリコールエーテルは、水の少なくとも一部をアルコール、特に第1級アルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)で置換することによりエチレングリコールを前記アルコールで変換することにより製造され得る。
【0058】
アルカノールアミンへの変換はエチレンオキシドをアミン(例えば、アンモニア、アルキルアミンまたはジアルキルアミン)と反応させることを含み得る。無水または水性アンモニアが使用され得る。モノアルカノールアミンの製造を促進するためには通常無水アンモニアを使用する。エチレンオキシドのアルカノールアミンへの変換に適用し得る方法に関しては、例えば援用により本明細書に含まれるとする米国特許第4,845,296号明細書を参照し得る。
【0059】
エチレングリコール及びエチレングリコールエーテルは多種多様な工業用途、例えば食品、飲料、タバコ、化粧品、熱可塑性ポリマー、硬化性樹脂系、洗剤、伝熱システム等の分野で使用され得る。アルカノールアミンは、例えば天然ガスの処理(スイートニング)に使用され得る。
【実施例】
【0060】
下記実施例は本発明の作用効果を説明するために例示するものと解され、これらの実施例は本発明の範囲を不当に限定するものではない。
【0061】
実施例I
本実施例Iは、標準反応器系と比べた本発明の反応器系の圧力低下及び管充填密度特性を評価するために使用される試験方法を示す。
【0062】
サイズ及び形状寸法の異なる各種中空円筒形担体を内径39mmまたは内径21mmを有する市販の長管反応器において試験した。担体層を横切る差圧低下を調べるために反応管を設置した。担体層の管充填密度を測定した。
【0063】
試験しようとする特定担体を一般的な漏斗充填方法を用いて反応管に充填した。反応管に充填する前に担体を秤量してその質量を測定した。反応管に担体を充填した後、0.79MPa(100psig)の空気源を用いて15秒間ダストブローダウンを実施した。担体層の高さを測定した。
【0064】
反応管に充填した担体の質量、測定した担体層の高さ及び反応管の内径を用いて管充填密度を測定した。管充填密度は容積あたりの質量単位であり、以下の式により規定する:
4m/πd
(式中、mは反応管に充填した担体の質量、dは反応管の直径、hは反応管内に収容した担体層の高さである)。
【0065】
反応管に担体を充填した後、密封し、1.342MPa(180psig)で圧力試験を行った。反応管は入口及び出口を備えていた。充填反応管の入口に約1.136MPa(150psig)の圧力で窒素ガスを導入した。乱流レジメ(700を越えるレイノルズ粒子数;W.J.Beek及びK.M.K.Muttzall,「輸送現象(Transport Phenomena)」,J.Wiley and Sons Ltd(1975年)発行,p.114)で約11の異なる窒素ガス流速の各々について、反応管の担体層を横切る差圧低下(圧力低下)を管入口圧及び管出口圧力を測定することにより調べた。窒素ガスの入口及び出口温度も調べた。充填層の単位長さあたりの圧力低下を評価した。担体形状寸法の違いに起因する触媒滞留量の差を反映するために、管充填密度は異なる担体の固有材料密度の小さな差について補正した。
【0066】
実施例II
本実施例IIは、39mmの反応管に充填した公称サイズ5mm、6mm、7mm、8mm及び9mm、公称長さ/直径(L/D)の比が0.5または1.0の中空円筒形担体について実施例Iに記載の試験方法を用いて得た結果の要約を示す。担体寸法の詳細は以下の通りである:
9mm:L/D=1.0,口径=3.85mm、
9mm:L/D=0.5,口径=3.90mm、
8mm:L/D=1.0,口径=3.20mm(“標準8mm”)、
8mm:L/D=0.5,口径=3.30mm、
7mm:L/D=1.0,口径=2.74mm、
7mm:L/D=0.5,口径=2.75mm、
6mm:L/D=1.0,口径=2.60mm(“標準6mm”)、
6mm:L/D=0.5,口径=2.60mm、
5mm:L/D=1.0,口径=2.40mm、
5mm:L/D=0.5,口径=2.70mm。
【0067】
標準8mm担体と比べた担体層を横切る圧力低下の変化率(%)及び管充填密度の変化率(%)の要約データを図4に示す。図に示すように、8mmよりも小さい担体サイズ及びL/D比が0.5のすべての担体サイズで、担体を横切る圧力低下が増加した。しかながら、図4に示すデータは、39mm反応管では1.0のL/D比を有するより大きい9mm担体が標準8mm担体と比べて改善された圧力低下を与えることを示している。
【0068】
実施例III
本実施例IIIは、39mmの反応管に充填した公称サイズ9mm、10mm及び11mm、公称L/D比が1.0の円筒形担体について実施例Iに記載の試験方法を用いて得た結果を示す。担体の一部は充実円筒形であり、他の担体は図5に特定する異なる口径を有する中空円筒形であった。標準8mm担体と比べた担体層を横切る圧力低下の変化率(%)及び管充填密度の変化率(%)の要約データを図5に示す。
【0069】
図5に示すデータは、反応管と支持体の形状寸法のユニークな組合せを用いると圧力低下が予想外に抑えられることを示している。口径/外径の比が0.138を越える(外径/口径の比が7.2未満)9mm担体では試験した標準8mm担体と比べて圧力低下が改善され、試験した10mm及び11mm担体形状寸法のすべてで標準8mm担体と比べて圧力低下が改善される。
【0070】
管充填密度に関して、9mm担体の場合口径/外径の比が約0.38以下(外径/口径の比が少なくとも2.6)の形状寸法で標準8mm担体と比べて管充填密度の改善が見られ、10mm担体の場合口径/外径の比が約0.28以下(外径/口径の比が3.4を超え、好ましくは少なくとも3.6)の形状寸法で改善が見られる。11mm担体の場合試験した外径/口径の比が4.5を越えるすべての形状寸法で圧力低下及び管充填密度の改善が見られる。
【0071】
実施例IV
本実施例IVは、21mmの反応管に充填した公称担体サイズ5mm、6mm、7mm、8mm及び9mm、公称L/Dの比が0.5または1.0の担体について実施例Iに記載の試験方法を用いて得た結果を示す。担体寸法の詳細は実施例IIに記載した。
【0072】
標準6mm担体と比べた担体層を横切る圧力低下の変化率(%)及び管充填密度の変化率(%)の要約データを図6に示す。図に示すように、8mm及び9mm担体サイズの場合圧力低下の改善が観察され、L/D比が1.0の7mm担体の場合圧力低下の改善が観察される。選択した担体で、特に外径/口径の比を大きくしたときに管充填密度を低下させることなく圧力低下の改善が達成され得る。
【0073】
実施例V(仮想)
実施例II〜IVに記載されている各担体に銀を含む溶液を含浸させて、担体を含む銀触媒を形成した。次いで、エチレン及び酸素を含む供給流を適当な条件下で触媒と接触させて、エチレンオキシドを形成した。
【0074】
実施例VI
本実施例VIは、実施例VIIに記載する触媒の作成において使用される2タイプの担体(すなわち、担体C及び担体D)の特性及び幾何学的構造に関する情報を与える(表3)。
【0075】
【表2】

【0076】
実施例VII
本実施例は、本発明で使用され得る触媒の作成について記載する。
【0077】
触媒C:
触媒Cは、担体Cに援用により本明細書に含まれるとする米国特許第4,766,105号明細書から公知の方法を用いて含浸させることにより作成。触媒Cの最終組成は17.8%のAg、触媒1gあたり460ppmのCs、触媒1gあたり1.5マイクロモルのRe、触媒1gあたり0.75マイクロモルのW及び触媒1gあたり15マイクロモルのLiであった。
【0078】
触媒D:
触媒Dは2含浸ステップで作成。第1含浸ステップでは、銀溶液にドーパントを添加しなかった以外は触媒Cに関する手順に従って担体に銀溶液を含浸させた。乾燥後、生じた乾燥触媒前駆体は約17重量%の銀を含んでいた。次いで、乾燥触媒前駆体に銀及びドーパントを含む溶液を含浸させた。触媒Dの最終組成は27.3%のAg、触媒1gあたり550ppmのCs、触媒1gあたり2.4マイクロモルのRe、触媒1gあたり0.60マイクロモルのW及び触媒1gあたり12マイクロモルのLiであった。
【0079】
触媒E:
触媒Eは、タングステン化合物を第2含浸溶液ではなく第1含浸溶液中に存在させた以外は触媒Dに関する手順に従って2含浸ステップで作成。触媒Eの最終組成は27.3%のAg、触媒1gあたり560ppmのCs、触媒1gあたり2.4マイクロモルのRe、触媒1gあたり0.60マイクロモルのW及び触媒1gあたり12マイクロモルのLiであった。
【0080】
本発明を現在好ましい実施態様について説明してきたが、当業者は理にかなった変更及び修飾をすることができる。前記変更及び修飾は本発明及び請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】触媒系の成形支持体材料を含む充填層を充填した長さを有する管を含む本発明の反応器系の特定態様を示す。
【図2】成形支持体材料を特徴づける中空円筒形幾何学的構造及び物理的寸法を有する本発明の触媒系の成形支持体材料を示す。
【図3】本発明の特定新規態様を含むエチレンオキシド製造方法の概略図である。
【図4】標準8mm中空円筒形支持体材料の使用と比べた、直径39mmの反応管中のサイズ(外径)及び長さ/直径比(“L/D”)の異なる中空円筒形支持体材料の使用により生ずる圧力低下(%DP)及び管充填密度(“%TPD”;“%TPD”は2回のデータを表す)の変化率(“C(%)”)に関するデータを表す。
【図5】標準8mm中空円筒形支持体の使用と比べた、直径39mmの反応管中の公称長さ/直径比が1であり、サイズ(外径)及び口径(mmで特定する“BORE”)の異なる中空円筒形支持体材料の使用により生ずる圧力低下(%DP)及び管充填密度(“%TPD”;“%TPD”は2回のデータを表す)の変化率(“C(%)”)に関するデータを表す。
【図6】標準6mm中空円筒形支持体材料の使用と比べた、直径21mmの反応管中のサイズ(外径)及び長さ/直径比(“L/D”)の異なる中空円筒形支持体材料の使用により生ずる圧力低下(%DP)及び管充填密度(“%TPD”)の変化率(“C(%)”)に関するデータを表す。
【図7a】理想的円筒である成形支持体材料の断面の外周の断面図を表す。
【図7b】理想的円筒から偏差した成形支持体材料の断面の外周の断面図を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
公称長さ/公称外径の比は0.5〜2の範囲である;更に管直径が28mm未満のときには公称外径/公称内径の比は2.3を越え、管直径/外径の比は1.5〜7の範囲であり、管直径が少なくとも28mmのときには公称外径/公称内径の比は2.7を越え、管直径/外径の比は2〜10の範囲である;ような公称長さ、公称外径及び公称内径により規定される中空円筒形幾何学的構造を有する成形支持体材料の充填層を収容している反応ゾーンを規定する管長さ及び管直径を有する細長い管を含む反応器系。
【請求項2】
公称長さ/公称外径の比は0.5〜2の範囲である;公称外径/公称内径の比は正の試験結果を与える;更に管直径/公称外径の比が管直径が28mm未満のときには1.5〜7の範囲であり、管直径が少なくとも28mmのときには2〜10の範囲である;ような公称長さ、公称外径及び公称内径により規定される中空円筒形幾何学的構造を有する成形支持体材料の充填層を収容している反応ゾーンを規定する管長さ及び管直径を有する細長い管を含む反応器系であって、前記「正の試験結果」は、いずれの数値も充填層を1.136Mpa(150psig)の圧力で窒素ガスの乱流中で試験することにより得られる充填層の単位長さあたりの圧力低下の数値と充填密度の数値の商の、同一支持体材料の中空円筒形幾何学的構造が管直径が28mm未満のときには公称外径6mm及び公称内径2.6mm、管直径が少なくとも28mmのときには公称外径8mm及び公称内径3.2mm、および公称長さ/公称外径の比1により規定されることを除いて同一の方法で得られる数値の商と比べた低下により規定される前記反応器系。
【請求項3】
中空同筒形幾何学的構造が、管直径が28mm未満のときには公称外径/公称内径の比は2.3を越え、管直径が少なくとも28mmのときには公称外径/公称内径の比は2.7を越えるように規定される請求項2に記載の反応器系。
【請求項4】
管直径は28〜60mmの範囲であり、公称外径/公称内径の比は、外径が10.4〜11.6mmのときには少なくとも4.5であり、外径が9.4〜10.6mmのときには3.4を超え、外径が8.4〜9.6mmのときには少なくとも2.6である請求項1〜3のいずれかに記載の反応器系。
【請求項5】
公称外径/公称内径の比は、外径が10.4〜11.6mmのときには少なくとも4.5であり、外径が9.4〜10.6mmのときには少なくとも3.6であり、外径が8.4〜9.6mmのときには2.6〜7.3である請求項4に記載の反応器系。
【請求項6】
管直径は約39mmである請求項1〜5のいずれかに記載の反応器系。
【請求項7】
中空円筒形幾何学的構造の内径は少なくとも0.5mmである請求項1〜6のいずれかに記載の反応器系。
【請求項8】
公称外径/公称内径の比は、管直径が28mm未満のときには2.6〜500の範囲であり、管直径が少なくとも28mmのときには3.0〜500の範囲である請求項1〜7のいずれかに記載の反応器系。
【請求項9】
公称外径/公称内径の比は、管直径が28mm未満のときには2.9〜200の範囲であり、管直径が少なくとも28mmのときには3.3〜250の範囲である請求項8に記載の反応器系。
【請求項10】
管長さは3〜15mの範囲である請求項1〜9のいずれかに記載の反応器系。
【請求項11】
充填層の50%が成形支持体材料からなる請求項1〜10のいずれかに記載の反応器系。
【請求項12】
管直径/公称外径の比は、管直径が28mm未満のときには2〜6の範囲であり、管直径が少なくとも28mmのときには2.5〜7.5の範囲である請求項1〜11のいずれかに記載の反応器系。
【請求項13】
管直径/公称外径の比は、管直径が28mm未満のときには2.5〜5の範囲であり、管直径が少なくとも28mmのときには3〜7の範囲である請求項12に記載の反応器系。
【請求項14】
成形支持体材料は主にα−アルミナからなり、充填層は550kg/mを超える管充填密度を有する請求項1〜13のいずれかに記載の反応器系。
【請求項15】
成形支持体材料は触媒成分を担持している請求項1〜14のいずれかに記載の反応器系。
【請求項16】
触媒成分は銀を含む請求項15に記載の反応器系。
【請求項17】
入口管端部及び出口管端部を有する細長い管を含む請求項15または16に記載の反応器系を用意し、前記入口管端部にエチレン及び酸素を含む供給原料を導入し、前記出口管端部からエチレンオキシド及び存在するならば未変換エチレンを含む反応生成物を取り出すことを含むエチレンオキシドの製造方法。
【請求項18】
反応ゾーンを150〜400℃の範囲の温度及び0.15〜3MPaの範囲の圧力を含めた適当なエチレン酸化反応条件下に維持する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項17または18に記載のエチレンオキシドの製造方法により得たエチレンオキシドをエチレングリコール、エチレングリコールエーテルまたは1,2−アルカノールアミンに変換することを含むエチレングリコール、エチレングリコールエーテルまたは1,2−アルカノールアミンを製造するためのエチレンエキシドの使用方法。
【請求項20】
公称長さ/公称外径の比は0.5〜2の範囲であり、公称外径/公称内径の比は2.7を越え、管直径/外径の比は2〜10であるような公称長さ、公称外径及び公称内径により規定される中空円筒形幾何学的構造を有する成形支持体材料により担持された銀を含む触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2007−531612(P2007−531612A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532809(P2006−532809)
【出願日】平成16年5月5日(2004.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/014087
【国際公開番号】WO2004/101141
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】