説明

エピタキシコーティングされたシリコンウェーハ及びエピタキシコーティングされたシリコンウェーハの製造法

【課題】従来技術と比較して改善された全体的平坦度を有するエピタキシコーティングされたシリコンウェーハの製造法を提供する。
【解決手段】エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの製造法において、少なくとも前面が研磨された複数のシリコンウェーハを用意し、かつ引き続き、用意したシリコンウェーハのそれぞれ1つをエピタキシリアクタ中のサセプタに載置し、第一の工程では水素雰囲気下でのみ前処理し、かつ第二の工程では水素雰囲気に1.5〜5slmの流量でエッチング剤を添加して前処理し、その際、水素流量は双方の工程において1〜100slmであり、引き続きその研磨された前面上でエピタキシコーティングし、かつエピタキシリアクタから取り出すという手法により個々にそれぞれエピタキシリアクタ中でコーティングすることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハ及びエピタキシコーティングされたシリコンウェーハの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
エピタキシコーティングされたシリコンウェーハは、半導体産業における使用、特に高度に集積されたエレクトロニクス部品、例えばマイクロプロセッサ又はメモリチップなどの製造に好適である。現在のマイクロエレクトロニクスでは、全体的平坦度及び局所的平坦度、厚さ分布、一方側の局所的平坦度(ナノトポロジ)及び欠陥フリー性からなる厳格な要求品質を有する出発材料(基板)が求められている。
【0003】
全体的平坦度とは、半導体ウェーハの表面全体から定義すべきエッジ除外領域を除したものに関する。これはGBIR("global backsurface-referenced ideal plane/range"=半導体ウェーハの前側の面全体について裏側の面を基準とする理想平面からの正負の偏差の大きさ)により表記され、これは以前に慣用的であったTTV("total thickness variation"=全厚さのばらつき)という表記に相応する。
【0004】
さらに、以前に慣用的であったLTV("local thickness variation")という表記は、現在はSEMI規格に準拠してSBIR("site backsurface-referenced ideal plane/range"=定義された寸法の個々の素子領域について裏側の面を基準とする理想平面からの正負の偏差の大きさ)と呼称されており、これは1つの素子領域("サイト")のGBIR又はTTVに相応する。従って、SBIRは全体的平坦度GBIRとは異なり、ウェーハ上の定義されたフィールド、即ち、サイズ26×8mm2の測定窓の領域格子のセグメントについての値である(サイトジオメトリ)。ここでサイトジオメトリの最大値SBiRmaxは、1つのシリコンウェーハ上で考慮される素子領域についての最大のSBIR値を規定するものである。
【0005】
サイトを基準とする平坦度又はジオメトリの最大値、例えばSBiRmaxは、通常、例えば3mmの所定のエッジ除外領域EE("edge exclusion")を考慮して求められる。シリコンウェーハ上の名目上のエッジ除外領域の面積は、通常、"Fixed Quality Area"、略してFQAと呼称される。面積の一部がFQA外に位置するもののその中心がFQA内に位置するサイトは、"パーシャルサイト"と呼称される。局所的平坦度の最大値を求める場合、"パーシャルサイト"が用いられることは少なく、むしろいわゆる"フルサイト"、即ち完全にFQA内に位置する素子領域のみが用いられることが多い。平坦度最大値を比較できるようにするためには、エッジ除外領域、ひいてはFQAサイズを規定し、さらに、"パーシャルサイト"が考慮されたか否かを規定することが不可欠である。
【0006】
更に、コスト最適化の観点から、現在では、素子領域が例えば素子メーカにより規定されたSBIRmax値を上回っているからといってただちにシリコンウェーハをはねのけるのではなく、むしろ素子領域に対して所定のパーセンテージ、例えば1%高い値を許容するのが通常である。通常、サイトのうちジオメトリパラメータの所定の限界値を下方超過するパーセンテージ又は当該の下方超過に対する許容パーセンテージはPUA("Percent Useable Area")値により表され、例えば、SBIRmaxが0.7μm以下であり、PUA値が99%である場合、サイトの99%が0.7μm以下のSBIRmaxを有し、サイトの1%についてはそれより高いSBIR値("チップ歩留り")も許容される。
【0007】
従来技術によれば、シリコンウェーハは、個々のウェーハへのシリコンの単結晶の分割、機械的感受性の高いエッジの面取り、及びグラインディング又はラッピング及びそれに続く研磨などの研磨ステップの実施のプロセスシーケンスにより製造可能である。EP547894A1にはラッピング法が記載されており;EP272531A1及びEP580162A1ではグラインディング法が特許請求されている。
【0008】
最終的な平坦度は一般に研磨ステップにより形成され、場合によってはこれに先行して障害となる結晶層及び汚染物を除去するためのエッチングステップが行われることもある。適切なエッチング法は、例えばDE19833257C1から公知である。古典的なシングルサイドポリッシング法は一般に比較的劣悪な面平行を招くのに対して、両面に作用する研磨法("ダブルサイドポリッシング")では、改善された平坦度を有するシリコンウェーハの製造が可能となる。
【0009】
従って、研磨されるシリコンウェーハでは、好適な処理ステップ、例えばグラインディング、ラッピング及びポリッシングにより必要な平坦度が達成されるよう試みられる。
【0010】
しかしながら、シリコンウェーハの研磨により、通常、平坦なシリコンウェーハの厚さは縁に向かって低減する("エッジロールオフ")。エッチング法も、処理すべきシリコンウェーハの縁を強く削り、このようなエッジロールオフ部を形成する傾向がある。
【0011】
これを抑制するために、シリコンウェーハを凹状に研磨することもよく行われている。凹状に研磨されたシリコンウェーハは、中央が薄く、縁に向かって厚さが増加するが、外縁領域では厚さが低減されている。
【0012】
DE19938340C1には、単結晶のシリコンウェーハ上に、同じ結晶方位を有するシリコンから成り、後で半導体素子が被着される単結晶層、いわゆるエピタキシャル層を堆積させることが記載されている。この種の系は、均一の材料から成るシリコンウェーハに比べて、例えばバイポーラCMOS回路のチャージ交番、ひいては素子の短絡、("ラッチアップ問題")の阻止、欠陥密度の低下(例えばCOP("crystal-originated particles")数の低下)、さらには認識可能な酸素含有量の不在など、或る程度の利点を有しており、これにより、素子に関連する領域における酸素析出物による短絡のおそれが排除され得る。
【0013】
従来技術によれば、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハは、剥離研磨、最終研磨、洗浄、エピタキシのプロセスシーケンスによる好適な中間体から製造される。
【0014】
例えばDE10025871A1には、前面にエピタキシャル層の堆積されたシリコンウェーハの製造方法が開示されており、前記方法は、(a)唯一の研磨ステップとしての剥離研磨ステップ、(b)シリコンウェーハの(水系)洗浄及び乾燥ステップ、(c)エピタキシリアクタ内で温度950℃〜1250℃でシリコンウェーハの前面を前処理するステップ、及び(d)前処理されたシリコンウェーハの前面へエピタキシャル層を堆積するステップを有する。
【0015】
シリコンウェーハを粒子負荷から保護するために、研磨後のシリコンウェーハに水系洗浄を施すことはよく行われている。こうした水系洗浄により、シリコンウェーハの前面及び裏面に、極めて薄い(洗浄及び測定のタイプに応じて約0.5〜2nmの)自然酸化物が生じる。
【0016】
この自然酸化物は、エピタキシリアクタ内での水素雰囲気下での前処理(H2ベークとも呼称される)の過程で除去される。
【0017】
第二のステップでは、シリコンウェーハの前面の表面粗さが低減され、かつ、通常は少量のエッチング剤、例えばガス状の塩化水素HClを水素雰囲気に添加することによって表面から研磨欠陥が除去される。
【0018】
しばしば、HClのようなエッチング剤の他に、シラン化合物、例えばシラン(SiH4)、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、トリクロロシラン(TCS、SiHCl3)又はテトラクロロシラン(SiCl4)も、シリコンの堆積分とシリコンのエッチング除去分とが釣合うような量で水素雰囲気に添加される。この2つの反応は充分に高い反応速度で進行し、表面のシリコンは移動性であり、表面が平滑化され、かつ表面上で欠陥が除去される。
【0019】
エピタキシリアクタ、特に半導体産業においてシリコンウェーハ上にエピタキシャル層を堆積させるために使用されるリアクタは、従来技術において記載されている。
【0020】
全コーティングステップ又は全堆積ステップにわたって、1つ又は複数のシリコンウェーハは、熱源によって、有利に上方及び下方の熱源、例えばランプ又はランプ列によって加熱され、続いて、ソースガス、キャリアガス及び場合によりドーパントガスを含有するガス混合物にさらされる。
【0021】
エピタキシリアクタのプロセスチャンバ内のシリコンウェーハの支持体として、例えばグラファイト、SiC又は石英を含有するサセプタが用いられる。堆積プロセスの間、シリコンウェーハは前記サセプタ上又はサセプタの切欠部内に載置され、これにより均一な加熱が保証され、かつ通常は堆積の行われないシリコンウェーハの裏面がソースガスから保護される。従来技術によれば、プロセスチャンバは1つ又は複数のシリコンウェーハに対して設計されている。
【0022】
比較的大きな直径(150mm以上)を有するシリコンウェーハの場合には、通常、シングルウェーハリアクタが使用され、シリコンウェーハは個々に処理される。なぜなら、これにより良好なエピタキシャル層の厚さ均等性が得られるからである。層の厚さ均等性は種々の手段により、例えばガス流(H2、SiHCl3)の変更により、ガス流入装置(インジェクタ)の組込み及び調整により、堆積温度の変更により、又はサセプタの改変により調整することができる。
【0023】
エピタキシでは、シリコンウェーハの1回又は複数回のエピタキシ堆積の後に、基板なしでサセプタのエッチング処理を行うのが通常であり、この過程で、サセプタ及びプロセスチャンバの他の部分からシリコン沈着物が除去される。例えば塩化水素(HCl)を用いる当該のエッチングは、シングルウェーハリアクタの場合には、しばしばすでに少数のシリコンウェーハの処理後に(1〜5枚のシリコンウェーハ後に)行われ、薄いエピタキシャル層を堆積させる場合には、より多くのシリコンウェーハの処理後に(10〜20枚のシリコンウェーハ後に)一部が行われる。通常、唯一のHClエッチング処理が行われるか、又は1回のHClエッチング処理及び短時間のサセプタコーティングが行われる。
【0024】
エピタキシコーティングされたシリコンウェーハを、良好な全体的平坦度で製造することは極めて困難であることが判明している。なぜなら、前述したように、通常、凹状に研磨されたシリコンウェーハが基板として存在するためである。従来技術において、エピタキシ後、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの全体的平坦度及び局所的平坦度は、凹状に研磨されたシリコンウェーハの全体的平坦度及び局所的平坦度に比べて、通常、劣化している。このことは、特に、堆積されたエピタキシャル層そのものが所定の非平坦性を有することに関連している。
【0025】
より厚いエピタキシャル層を凹状に研磨されたシリコンウェーハの中心に堆積させ、この層の厚さをシリコンウェーハの縁へ向かって低下させれば、シリコンウェーハの元の凹形状が補償され、このようにしてシリコンウェーハの全体的平坦度も改善されるものと考えられるが、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの重要な規格、即ち、エピタキシャル層の均等性の限界値が上方超過されることを回避できないので、この手段はシリコンウェーハのエピタキシプロセスでは考慮されない。
【0026】
DE102005045339A1には、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの製造法において、少なくとも前面が研磨された複数のシリコンウェーハを用意し、かつ引き続き、用意したシリコンウェーハのそれぞれ1つをエピタキシリアクタ中のサセプタに載置し、第一の工程では20〜100slmの第一の水素流量での水素雰囲気下で前処理し、かつ第二の工程では0.5〜10slmの第二の低下した水素流量での水素雰囲気にエッチング剤を添加して前処理し、引き続きその研磨された前面にエピタキシコーティングし、かつエピタキシリアクタから取り出すという手法により個々にそれぞれエピタキシリアクタ中でコーティングし、さらに、特定の数のエピタキシコーティングの後にそれぞれサセプタのエッチング処理を行うことを特徴とする方法が開示されている。
【0027】
DE102005045339A1には、同様に、前面及び裏面を有するシリコンウェーハにおいて、該シリコンウェーハの少なくとも前面が研磨されており、かつ該シリコンウェーハの少なくとも前面上にエピタキシャル層が施与されており、かつ、エッジ除外領域2mmに関して0.07〜0.3μmの全体的平坦度GBIRを有することを特徴とするシリコンウェーハが開示されている。
【0028】
前記のエピタキシコーティングされたシリコンウェーハの比較的良好なジオメトリは、エッチング剤を添加した前処理の第二の工程における水素流量の低減により、材料をシリコンウェーハの縁で意図的な様式でエッチングにより除去し、かつ実際にエピタキシコーティングステップの前にシリコンウェーハを全体的に平坦化することが可能となる、という事実から生じる。DE102005045339A1に開示された方法の欠点は、水素流量の低減によって研磨されたウェーハの縁でのエッチング効果が増強されるものの、半導体ウェーハ上のガス流が層流でないことである。まさにこれによって、全体的平坦度を、DE102005045339A1において特許請求されているGBIR値0.07μmを下回るようにさらに最適化することが困難であることが判明した。
【0029】
US2008/0182397A1には、いわゆる"内部領域"及びいわゆる"外部領域"において異なるガス流を供給するエピタキシリアクタが開示されている。直径300mmを有するウェーハに関して、"内部領域"は、直径75mmを有する300mmウェーハの中心領域として規定されている。リアクタ中での異なるガス流の設定は、ガス管の直径の設定により行われており、例えば、管直径を低減させることによって、2つの領域のうちの1つの方向でガス流が低減する。そのようなガス分配系は、Applied Materials Inc.社からEpi Centura AccusettTMの名称で市販されている(Epi CenturaはApplied Materials Inc.社製のエピタキシリアクタの名称である)。それとは異なり、ガス流を制御するために、いわゆる"マスフローコントローラ"又は流れを調節するための類似の装置を使用することも可能である。内部領域及び外部領域でのガス分配は、US2008/0182397A1においてI/Oにより設計されている。この表記は本願発明の文脈においても使用される。
US2008/0182397A1には、ガス分配I/Oのための2つの範囲が規定されている:第一に、エピタキシコーティングの間にはI/O=0.2〜1.0の範囲であり、かつ第二に、エッチングステップ(基板前処理)の間には1.0〜6.0のI/Oである。
【0030】
US2008/0245767A1には、基板の汚染又は損傷された層をエッチングガスを用いて除去し、基板表面の被覆を除去する方法が開示されている。この清浄化された基板を、引き続きエピタキシコーティングすることができる。エッチングガスの流量は0.01〜15slmである。不活性ガス(基板材料、例えばシリコンに対して不活性)、例えば特に水素又は窒素、アルゴン、ヘリウム等を施与する場合、その流量は1〜100slmである。基板の温度は600〜850℃である。水素流のI/O比は1.0〜7.0(5/5〜35/5)であると規定されている。
【0031】
US2007/0010033A1には、内部領域及び外部領域におけるガス分配の調節による、エピタキシ堆積された層の厚さの調節が開示されている。しかしながら前述したように、研磨されたウェーハの元の形状を補償するために、凹状に研磨されたシリコンウェーハの中心に比較的厚いエピタキシャル層を堆積させることによって、エピタキシャル層の層厚の均等性の規格を上方超過するものと考えられるため、不適当である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】EP547894A1
【特許文献2】EP272531A1
【特許文献3】EP580162A1
【特許文献4】DE19833257C1
【特許文献5】DE19938340C1
【特許文献6】DE10025871A1
【特許文献7】DE102005045339A1
【特許文献8】US2008/0182397A1
【特許文献9】US2008/0245767A1
【特許文献10】US2007/0010033A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明の課題は、従来技術と比較して改善された全体的平坦度を有するエピタキシコーティングされたシリコンウェーハの提供を可能にする、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの製造法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0034】
前記課題は、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの第一の製造法において、少なくとも前面が研磨された複数のシリコンウェーハを用意し、かつ引き続き、用意したシリコンウェーハのそれぞれ1つをエピタキシリアクタ中のサセプタに載置し、第一の工程では水素雰囲気下でのみ前処理し、かつ第二の工程では水素雰囲気に1.5〜5slmの流量でエッチング剤を添加して前処理し、その際、水素流量は双方の工程において1〜100slmであり、引き続きその研磨された前面上でエピタキシコーティングし、かつエピタキシリアクタから取り出すという手法により個々にそれぞれエピタキシリアクタ中でコーティングすることを特徴とする方法により達成される。
【0035】
上記課題は、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの第二の製造法において、少なくとも前面が研磨された複数のシリコンウェーハを用意し、かつ引き続き、用意したシリコンウェーハのそれぞれ1つをエピタキシリアクタのリアクタチャンバ中のサセプタに載置し、その際、インジェクタによりリアクタチャンバ中に導入されるガス流を、バルブを用いて、リアクタチャンバの外部領域及び内部領域へ、内部領域中のガス流がシリコンウェーハの中心の周囲の領域に作用しかつ外部領域中のガス流がシリコンウェーハの縁領域に作用するように分配することができ、その際、シリコンウェーハを、第一の工程では1〜100slmの水素流量での水素雰囲気下でのみ前処理し、かつ第二の工程では水素雰囲気に1.5〜5slmの流量でエッチング剤を添加して前処理し、その際、水素流量は第二の工程においても1〜100slmであり、かつ、内部領域及び外部領域へのエッチング剤の分配はI/O=0〜0.75であり、かつ引き続きその研磨された前面上でエピタキシコーティングし、かつエピタキシリアクタから取り出すという手法により個々にそれぞれエピタキシリアクタ中でコーティングすることを特徴とする方法によっても解決される。
【0036】
本発明の方法では、まず少なくとも前面の研磨された複数のシリコンウェーハが用意される。
【0037】
このために、従来技術により、有利にはチョクラルスキー法のるつぼ引き上げによって形成されたシリコン単結晶が、公知の分離プロセス、有利には自由粒(スラリー)又は結合粒(ダイヤモンドワイヤ)のワイヤソーにより複数のシリコンウェーハへスライシングされる。
【0038】
さらに機械的な処理ステップ、例えばシーケンシャルなシングルサイドグラインディング法(SSG)、同時のダブルサイドグラインディング法("double-disk grinding"、DDG)又はラッピングが行われる。シリコンウェーハのエッジ及び場合により存在する機械的マーク、例えば配向用のノッチ又はシリコンウェーハ縁のほぼ直線状のフラット部("flat")も、一般に処理される(エッジの面取り、"edge-notch grinding")。
【0039】
さらに、洗浄ステップ及びエッチングステップを含む化学的処理ステップも行われる。
グラインディング、洗浄及びエッチングステップの後、シリコンウェーハの表面の平滑化が剥離研磨により行われる。シングルサイドポリッシング(SSP)の場合、シリコンウェーハの裏面が処理中に、セメントにより、真空により、又は接着により支持プレート上に保持される。ダブルサイドポリッシング(DSP)の場合、シリコンウェーハは薄い歯付きディスクに緩く係合され、研磨布でカバーされた上方の研磨プレートと下方の研磨プレートとの間に自由浮遊して、前面及び裏面が同時に研磨される。
【0040】
続いてシリコンウェーハの前面が有利にはヘーズなしで、例えばアルカリ性研磨ゾルを用いたソフト研磨布により研磨され、このステップまでに達成されるシリコンウェーハの平坦度を得るために、この場合、材料剥離は比較的小さく、有利には0.05μm〜1.5μmである。技術文献では、このステップはしばしばCMP研磨(化学機械的研磨)と呼称される。
【0041】
有利には、用意されたシリコンウェーハは、研磨ステップ(及びエッチングステップ)により生じるエッジロールオフをシリコンウェーハの外縁領域まで制限するために、凹状に研磨される。
【0042】
用意された研磨シリコンウェーハの全体的平坦度値GBIRは、通常、エッジ除外領域2mmで0.2μm〜0.5μmである。
【0043】
研磨後、シリコンウェーハに対し、従来技術により水系洗浄及び乾燥が行われる。この洗浄は、槽内で複数のシリコンウェーハを同時に洗浄するバッチ法として行ってもよいし、噴霧法によって行ってもよいし、シングルウェーハプロセスとして行ってもよい。
【0044】
有利には、用意するシリコンウェーハは、単結晶シリコン材料からなるウェーハ、SOI(シリコン・オン・インシュレーター)ウェーハ、歪みシリコン層を有するシリコンウェーハ("ストレインド・シリコン")又はsSOI(ストレインド・シリコン・オン・インシュレーター)ウェーハである。SOIウェーハ又はsSOIウェーハの製造法、例えばスマートカット法、及び、歪みシリコン層を有するウェーハの製造法は、従来技術から公知である。
【0045】
用意された研磨シリコンウェーハは、続いてエピタキシリアクタ中で個々にそれぞれ前処理される。この前処理はそれぞれ、水素雰囲気中でのシリコンウェーハの処理(H2ベーク)及び水素雰囲気にエッチング剤を添加したシリコンウェーハの処理を含み、有利にはそれぞれ温度範囲950℃〜1200℃で行われる。
【0046】
エッチング剤は有利には塩化水素(HCl)である。
水素雰囲気中での前処理は、水素流量1〜100slm(標準リットル毎分、standard liter per minute)、特に有利には40〜60slmで行われる。
【0047】
水素雰囲気中での前処理の継続時間は、有利には10〜120sである。
エッチング剤を添加した前処理の間、エッチング剤の流量は1.5〜5slmである。
【0048】
エッチング剤を添加した前処理の間、水素流量は1〜100slm、特に有利に40〜60slmである。
【0049】
従来技術と比較して、エッチング剤の流量を増加させることにより、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの全体的平坦度を著しく改善できることが判明した。
【0050】
HCl流量を1.5〜5slmに増加させ、かつ水素流量が第一の前処理工程と同様に1〜100slmであることによって、シリコンウェーハの厚さはシリコンウェーハの中心の方向よりも縁でより多く低減される。これによって、シリコンウェーハの凹状の元のジオメトリが相殺される。
【0051】
2流量50slm(標準リットル毎分)及びHCl流量0.9slm、即ち従来技術における通常のHCl流量では、シリコンウェーハの縁では材料除去の増加が認められない(材料除去は全ウェーハにわたり均一である)のに対して、HCl流量を1.5〜5slmに増加させた場合、即ちHCl濃度を著しく増加させた場合には、HClでの処理の継続時間に応じてシリコンウェーハの縁で500〜700nmまでの材料除去が生じる。
【0052】
HClエッチング処理の間、エピタキシコーティングすべきシリコンウェーハの縁での所望の材料除去に応じて、10〜120sの処理継続時間が有利であり、20〜60sが特に極めて有利である。
【0053】
前記方法の特別な利点は、前処理工程後にシリコンウェーハが後続のエピタキシャルシリコン層の堆積に最適な前面の形状を得ることであり、なぜならば、シリコンウェーハの縁領域が前処理により平坦化され、かつ、シリコンウェーハの凹形状が補償されるためである。以下に実施例に基づき示されるように、ジオメトリを凸状に変換することも可能である。
【0054】
第二の前処理工程において、極めて類似した従来技術と比較してH2流量を増加させることによって、層流のガス流が生じることが特に有利である。
【0055】
これは、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの全体的平坦度に関して、(第二の前処理工程においてH2流量を低減させることによる)従来技術において認められた効果を超える、付加的な有利な効果を有することが判明した。
【0056】
本発明による第二の方法は、リアクタチャンバ中でのHCl流の分配の制御を含む。すでに従来技術において記載されているように、Applied Materials社製のEpi Centuraリアクタに関してAccusettTMと呼称される装置が入手可能であり、該装置はこれを可能にするバルブ("計量バルブ")を含む。エッチング剤流は、リアクタチャンバの内部領域及び外部領域へ分配される。この制御は有利には好適なソフトウェアを用いて行われる。
【0057】
内部領域へ分配されたエッチング剤は、サセプタ上に載置されたシリコンウェーハの中心の周囲の領域に作用する。チャンバの外部領域へ分配されたエッチング剤の部分は、シリコンウェーハの外部領域に、即ち特に縁領域に作用する。全体的に、内部領域及び外部領域は、概して、処理すべきシリコンウェーハのサイズにほぼ相当する。
【0058】
本発明による第二の方法によれば、エッチング剤の流量は1.5〜5slmである。内部領域及び外部領域間のエッチング剤の分配は、0〜最高で0.75である。この比は、外部領域中のエッチング剤の量に対する内部領域中のエッチング剤の量である。ここで、US2008/0182397A1に記載されているようにエッチング処理の間に1.0〜6.0の分配が規定されている従来技術との相違は明確である。
【0059】
シリコンウェーハに対する内部領域及び外部領域のサイズは、同様に、最も単純には、ガスをリアクタチャンバに導入するガス導入装置("インジェクタ")の相応する配置及び構成により制御することができる。例えば、内部領域は、すでにUS2008/0182397A1に記載されているように直径300mmのウェーハの場合には、シリコンウェーハの中心の直径75mmを有する円形領域であってよい。
【0060】
本発明による方法において、内部領域は有利にはシリコンウェーハの中心の直径100mmを有する円に相当し、一方で外部領域はシリコンウェーハの縁を包囲する幅100mmを有する環に相当する。前記値は、直径300mmを有するシリコンウェーハを想定したものである。基板直径450mmを有する現在開発中の次世代シリコンウェーハを使用する場合には、内部領域及び外部領域は、より小さい基板、例えば200mm又は150mmのウェーハの場合と同様に選択される。
【0061】
エッチング剤の量は、有利には内部領域及び外部領域のためのガス管路の直径の変更により実現される。エッチング剤の量は、管路直径の低減により低下される。
【0062】
原則的に、本発明による第二の方法において、以下の構成が有利である:ガス量は、Mass Flow Controller(MFC)を用いて設定され、これにより1〜5slmの流量の設定が可能である。従来技術において使用されるMFCは1slmに限定されていたため、このことは新規である。その後、このガス量は主要ガス管を通じて2つのニードルバルブに導かれ(内部領域及び外部領域)、かつそこで分配される。調節はバルブの調節(内部領域及び外部領域のそれぞれにおける管路直径の調節)により行われる。分配されたガス量は、その後インジェクタによりリアクタチャンバに導入される。この構成は、好適なソフトウェアを用いた自動制御が可能であるという利点を有する。
【0063】
処理継続時間及び処理温度に関して、本発明による第一の方法における有利な値範囲は、本発明による第二の方法においても同様に有利である。
【0064】
前処理工程の後に、シリコンウェーハの少なくとも研磨された前面に、エピタキシャル層が堆積される。このために、ソースガスとしてシラン源がキャリアガスとしての水素に添加される。エピタキシャル層は、使用するシラン源に応じて900〜1200℃の温度で堆積される。
【0065】
シラン源として、1050〜1150℃の堆積温度でトリクロロシラン(TCS)が有利に使用される。
堆積されたエピタキシャル層の厚さは有利には0.5〜5μmである。
【0066】
エピタキシャル層の堆積後、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハがエピタキシリアクタから取り出される。
【0067】
シリコンウェーハ上での特定の数のエピタキシ堆積の後に、サセプタが、エッチング剤、有利にはHClで処理され、例えばシリコンの沈着物が除去される。
【0068】
サセプタエッチングは、有利にはそれぞれシリコンウェーハの1〜5のエピタキシコーティング後に行われる。このために、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハが取り出され、かつ基板なしのサセプタがHClで処理される。
【0069】
有利には、サセプタ表面の他に全プロセスチャンバが塩化水素でフラッシュされ、シリコン沈着物が除去される。
【0070】
サセプタエッチングの後でかつ更なるエピタキシャルプロセスの前に、サセプタは有利にはシリコンでコーティングされる。その場合、エピタキシコーティングすべきシリコンウェーハがサセプタ上に直接載置されないために有利である。
【0071】
さらに、本発明による方法は、前面及び裏面を有するシリコンウェーハであって、該シリコンウェーハの少なくとも前面が研磨されており、かつ該シリコンウェーハの少なくとも前面上にエピタキシャル層が施与されており、かつ、エッジ除外領域2mmに関して0.02〜0.06μmの全体的平坦度GBIRを有するシリコンウェーハの製造に好適であることが判明した。
【0072】
エッジ除外領域1mm、即ちより厳格な基準の場合に、0.04〜0.08μmのGBIR値が得られる。
【0073】
少なくともその前面の研磨後に水系洗浄を行い、その結果シリコンウェーハ上に自然酸化物層が生じたシリコンウェーハを、引き続き、エピタキシリアクタ中で水素雰囲気中で前処理してシリコンウェーハから自然酸化物を除去し、かつ引き続き、第二の工程で水素雰囲気に塩化水素を添加して処理し、その際、HCl流量は第二の工程で1.5〜5slmであり、それにより、シリコン材料を意図的な様式でシリコンウェーハの縁領域で除去し、研磨されたシリコンウェーハの凹状の元のジオメトリを補償するか又はそれを過補償し(凸状ジオメトリ)、かつシリコンウェーハにエピタキシ堆積後により平坦な形状をもたらすことができる。
【0074】
エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの全体的平坦度のさらなる改善が、HCl流量を2slm以上(5slmまで)に増加させることにより達成されることが判明した。
【0075】
このことは、SBIRmaxによって表記される局所的平坦度についても当てはまり、本発明によるシリコンウェーハの場合、この局所的平坦度は、同様にエッジ除外領域2mmで、かつ、26×8mm2のサイズを有するセグメントの領域格子の部分範囲に関して、0.02μm以上でかつ0.05μm以下である。ここで、336個のセグメントのうち52個は"パーシャルサイト"である。これらの"パーシャルサイト"は有利にはSBIRmaxを求める際に考慮される。PUA値は有利には100%である。
【0076】
ウェーハのエッジ除外領域1mmに関して0.04〜0.07μmのSBIRmaxが得られる。
【0077】
シリコンウェーハは、有利には、エピタキシャル層を備えた、単結晶シリコン材料からなるウェーハ、SOI(シリコン・オン・インシュレーター)ウェーハ、歪みシリコン層を有するシリコンウェーハ("ストレインド・シリコン")又はsSOI(ストレインド・シリコン・オン・インシュレーター)ウェーハである。
【0078】
本発明によるエピタキシコーティングされたシリコンウェーハは、有利にはせいぜい2.0%のエピタキシャル層厚均等性を有する。エピタキシャル層厚均等性は、エピタキシャル層厚の平均値t及び範囲Δt=tmax−tminの測定により決定することができる。Δt/tは特に有利には0.5%〜2.0%、極めて特に有利には1.0%〜1.5%である。特許請求されたガス流及びガス流分配に関する本発明による方法によって、前記のエピタキシャル層厚均等性を有するエピタキシコーティングされたシリコンウェーハの製造が可能となる。
【0079】
従来技術において、エピタキシの間に比較的厚いエピタキシ層をシリコンウェーハの中心に堆積させるという手法、又は、初めに十分に均等なエピタキシャル層を堆積させるものの、引き続きエピタキシコーティングされたシリコンウェーハの凹状ジオメトリをエピタキシャル層でのエッチング除去により修正するという手法によって、研磨されたシリコンウェーハの凹状の元のジオメトリの修正が試みられたとしても、素子製造のために極めて重要でかつ決定的であるエピタキシャル層厚均等性のパラメータを2%以下の狭い範囲に保持することは不可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】凹状に研磨されたシリコンウェーハの直径に対する、該シリコンウェーハの厚さのプロフィールを示す図("ラインスキャン")。
【図2】エピタキシリアクタ中での研磨されたシリコンウェーハの直径に対する、該シリコンウェーハのエッチング前処理の間の材料除去を示す図。
【図3】本質的に、堆積されたエピタキシャル層の厚さをラインスキャンで示す図。
【図4】エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの厚さをラインスキャンで示す図。
【図5】特に縁領域における材料除去に関して、エッチング前処理の間の種々のプロセスパラメータがウェーハジオメトリに与える影響を示す図。
【図6】エピタキシリアクタ中でのエッチング前処理の間のシリコンウェーハの厚さの変化を示す図。
【図7】ガス分配を変化させてエピタキシリアクタ中でエッチング前処理する間のシリコンウェーハの厚さの変化を示す図。
【図8】各素子領域に関する本発明によりエピタキシコーティングされたシリコンウェーハのSBIR値を示す図。
【実施例】
【0081】
従来技術により製造し、かつ最終的にその前面をCMPにより研磨した直径300mmを有するシリコンウェーハ上に、エピタキシャル層を堆積させた。エピタキシコーティングすべきシリコンウェーハを凹状に研磨した。即ち、前記シリコンウェーハは凹状の元のジオメトリ及びエッジロールオフを有していた。
【0082】
エピタキシリアクタ中でのこのシリコンウェーハの前処理の間に、まず、水素雰囲気中での前処理を50slmのH2流量で行った。
【0083】
引き続く、水素雰囲気中に添加された塩化水素での前処理の間に、HCl流量は2.5slmであった。異なるガス分配を、本発明による第二の方法により試験した。塩化水素での前処理の継続時間はそれぞれ60sであった。
【0084】
引き続き、エピタキシャル層を、堆積温度1120℃及びトリクロロシラン流量17slmで堆積させた。
【0085】
結果を以下に図1〜図8と関連して説明する。
図1は、凹状に研磨されたシリコンウェーハの直径に対する、該シリコンウェーハの厚さのプロフィールを示す("ラインスキャン")。
【0086】
図2は、エピタキシリアクタ中での研磨されたシリコンウェーハの直径に対する、該シリコンウェーハのエッチング前処理の間の材料除去を示す。
【0087】
図3は、本質的に、堆積されたエピタキシャル層の厚さをラインスキャンで示す。
図4は、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの厚さをラインスキャンで示す。
【0088】
図5は、特に縁領域における材料除去に関して、エッチング前処理の間の種々のプロセスパラメータがウェーハジオメトリに与える影響を示す。
【0089】
図6は、エピタキシリアクタ中でのエッチング前処理の間のシリコンウェーハの厚さの変化を示す。
【0090】
図7は、ガス分配を変化させてエピタキシリアクタ中でエッチング前処理する間のシリコンウェーハの厚さの変化を示す。
【0091】
図8は、各素子領域に関する本発明によりエピタキシコーティングされたシリコンウェーハのSBIR値を示す。
【0092】
図1は、直径300mmを有する凹状に研磨されたシリコンウェーハの厚さ分布を、直径との関数で、ラインスキャンとして示したものである。ここではエッジ除外領域2mmがベースとされている。厚さは中心から縁の方向に増加し、縁で低減を示す。
エッジ除外領域2mmに関して0.3μmの全体的平坦度GBIRが得られる。
【0093】
図2は、エッチング前処理の間の材料除去を、シリコンウェーハの直径との関数として示したものである。シリコン約0.13μmをシリコンウェーハの中心で除去した場合、材料除去は縁に向かって増加し、かつ全体としては研磨されたシリコンウェーハのまさに元のジオメトリのような凹状のプロフィールを示し、その結果、シリコン材料のエッチング除去により凹状の元のジオメトリの補償が達成される。
【0094】
図3は、エピタキシコーティングされたシリコンウェーハと凹状に研磨されたシリコンウェーハとの厚さの差異を直径との関数でラインスキャンとして示したものである。厚さの差異は、局所的に縁領域で増加する。しかしながら、これは堆積されたエピタキシャル層の実際の厚さに相当するものではなく、むしろ前処理工程の結果としての厚さの変化も考慮したものである。材料はエッチング剤での前処理の間にシリコンウェーハの縁で除去されているため、図3に示されているよりも著しく多くのシリコンが縁に堆積されている。縁での材料除去は700nmまでであり、その後この上に2.6μm±1.5%の厚さを有する均一なエピタキシャル層を成長させた。これは、エピタキシャル層の層厚の均等性に関する規定に従う。
【0095】
図4は、CMP研磨し、エピタキシコーティングしたシリコンウェーハの厚さプロフィールを、その直径との関数でラインスキャンとして示したものである。エッジ除外領域2mmで、0.056μmの全体的平坦度GBIR、即ち、凹状に研磨されたシリコンウェーハの全体的平坦度と比較して著しい改善が得られる。極めて類似した従来技術に対する著しい改善も明らかである。
【0096】
図5は、研磨されたシリコンウェーハの元のジオメトリ51を示す。該図は、シリコンウェーハの厚さをその直径との関数で示す。凹状のプロフィール及び縁での厚さの低減が明らかである。52は、HCl流量0.9slmでの前処理後のシリコンウェーハの厚さを示す(従来技術)。これは、慣用の流量制御装置により制限されたHCl流量での標準的なエッチングに相当する。53は、HCl流量2.5slmでの本発明による処理後のウェーハのジオメトリを示す(本発明による第一の方法)。54は、HCl流量2.5slm及び本発明によるガス分配I/O=0/200=0での本発明による処理後のウェーハのジオメトリを示す(本発明による第二の方法)。53の場合及び特に54の場合、エッチング除去の増加は特に縁領域で明らかである。本発明による方法により、研磨されたウェーハの元のジオメトリの、凹状のジオメトリから凸状のジオメトリへの変換というより明確な変化も可能となり、かつ引き続くエピタキシャル堆積の前に、ウェーハに、それぞれの要求に合致しかつ元のジオメトリに応じて最適なジオメトリを付与することができる。
【0097】
図6は、本発明によるエッチング前処理の結果としての、研磨されたシリコンウェーハのジオメトリの変化を示す。ここで、HCl流量2.5slmを選択し、かつ流れ分配I/Oとして131/180=0.73を選択した。ここで、500nmまでの縁での材料除去が明らかとなる。図は、研磨されたウェーハと、エピタキシリアクタ中で前処理されたウェーハとの厚さの差異Δt(=材料除去)を、直径との関数で示したものである。
【0098】
図7は、図6の例と比較して、異なる流れ分配I/O=0/200=0を選択し、2.5slmの一定のHCl流量を用いた場合のウェーハのジオメトリの変化を示す。ここでも該図は、エッチング前処理の結果としての厚さの差異Δt又は材料除去をウェーハの直径との関数として示す。ガス分配の変化により、縁での材料除去は700nmまで増加している。
【0099】
従来技術において、既に前述したように他の欠点を伴ってエッチング前処理の間にH2流量を低減した場合であっても、縁での300nmまでの材料除去が可能であったに過ぎない(DE102005045339A1参照)。
【0100】
図8は、26×8mm2のサイズを有する336個の素子領域("サイト")に区画されたエピタキシコーティングされたシリコンウェーハに関するサイトジオメトリ値SBIRを示す。これら336個の素子領域のうち52個は"パーシャルサイト"である。エッジ除外領域2mm又は296mmのFQAを用い、かつ全ての"パーシャルサイト"を考慮した場合、0.044μmのサイトジオメトリの最大値SBIRmaxが得られる。この実施例では以下のプロセスパラメータを使用した。
【0101】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの製造法において、少なくとも前面が研磨された複数のシリコンウェーハを用意し、かつ引き続き、用意したシリコンウェーハのそれぞれ1つをエピタキシリアクタ中のサセプタに載置し、第一の工程では水素雰囲気下でのみ前処理し、かつ第二の工程では水素雰囲気に1.5〜5slmの流量でエッチング剤を添加して前処理し、その際、水素流量は双方の工程において1〜100slmであり、引き続きその研磨された前面上でエピタキシコーティングし、かつエピタキシリアクタから取り出すという手法により個々にそれぞれエピタキシリアクタ中でコーティングすることを特徴とする方法。
【請求項2】
2つの前処理工程をそれぞれ950〜1200℃の温度範囲内で行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
水素雰囲気に添加するエッチング剤が塩化水素である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
水素流量が、双方の前処理工程において40〜60slmである、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前処理の継続時間が、双方の前処理工程において10〜120sである、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前処理の継続時間が、双方の前処理工程において20〜60sである、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
用意されるシリコンウェーハが、単結晶シリコン材料からなるウェーハ、SOI(シリコン・オン・インシュレーター)ウェーハ、歪みシリコン層を有するシリコンウェーハ("ストレインド・シリコン")又はsSOI(ストレインド・シリコン・オン・インシュレーター)ウェーハである、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
エピタキシコーティングされたシリコンウェーハの製造法において、少なくとも前面が研磨された複数のシリコンウェーハを用意し、かつ引き続き、用意したシリコンウェーハのそれぞれ1つをエピタキシリアクタのリアクタチャンバ中のサセプタに載置し、その際、インジェクタによりリアクタチャンバ中に導入されるガス流を、バルブを用いて、リアクタチャンバの外部領域及び内部領域へ、内部領域中のガス流がシリコンウェーハの中心の周囲の範囲に作用しかつ外部領域中のガス流がシリコンウェーハの縁範囲に作用するように分配することができ、その際、シリコンウェーハを、第一の工程では1〜100slmの水素流量での水素雰囲気下でのみ前処理し、かつ第二の工程では水素雰囲気に1.5〜5slmの流量でエッチング剤を添加して前処理し、その際、水素流量は第二の工程においても1〜100slmであり、かつ、内部領域及び外部領域へのエッチング剤の分配はI/O=0〜0.75であり、かつ引き続きその研磨された前面上でエピタキシコーティングし、かつエピタキシリアクタから取り出すという手法により個々にそれぞれエピタキシリアクタ中でコーティングすることを特徴とする方法。
【請求項9】
2つの前処理工程をそれぞれ950〜1200℃の温度範囲内で行う、請求項8記載の方法。
【請求項10】
水素雰囲気に添加するエッチング剤が塩化水素である、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
水素流量が、双方の前処理工程において40〜60slmである、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前処理の継続時間が、双方の前処理工程において10〜120sである、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前処理の継続時間が、双方の前処理工程において20〜60sである、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前面及び裏面を有するシリコンウェーハにおいて、該シリコンウェーハの少なくとも前面が研磨されており、かつ該シリコンウェーハの少なくとも前面上にエピタキシャル層が施与されており、かつ、エッジ除外領域2mmに関して0.02〜0.06μmの全体的平坦度GBIRを有することを特徴とするシリコンウェーハ。
【請求項15】
前面及び裏面を有するシリコンウェーハにおいて、該シリコンウェーハの少なくとも前面が研磨されており、かつ該シリコンウェーハの少なくとも前面上にエピタキシャル層が施与されており、かつ、エッジ除外領域1mmに関して0.04〜0.08μmの全体的平坦度を有することを特徴とするシリコンウェーハ。
【請求項16】
エッジ除外領域2mmで、かつ、26×8mm2のサイズを有するセグメントの領域格子の部分範囲に関して、0.02μm以上でかつ0.05μm以下のSBIRmaxとして表される局所的平坦度を有する、請求項14記載のシリコンウェーハ。
【請求項17】
エッジ除外領域1mmで、かつ、26×8mm2のサイズを有するセグメントの領域格子の部分範囲に関して、0.04μm以上でかつ0.07μm以下のSBIRmaxとして表される局所的平坦度を有する、請求項15記載のシリコンウェーハ。
【請求項18】
シリコンウェーハが、単結晶シリコン材料からなるウェーハ、SOIウェーハ、歪みシリコン層を有するシリコンウェーハ又はエピタキシシャル層を備えたsSOIウェーハである、請求項14から17までのいずれか1項記載のシリコンウェーハ。
【請求項19】
さらに、0.5%〜2%のエピタキシャル層の層厚の均等性により特徴付けられる、請求項14から18までのいずれか1項記載のシリコンウェーハ。
【請求項20】
1.0%〜1.5%のエピタキシャル層の層厚の均等性により特徴付けられる、請求項19記載のシリコンウェーハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−16841(P2013−16841A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197176(P2012−197176)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2010−2455(P2010−2455)の分割
【原出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】