説明

エポキシ樹脂組成物および硬化物

【課題】無機フィラーを高配合とした場合のボイドの形成を防止して、高熱伝導性の硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)フェノキシ樹脂、(B)多官能エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを含み、(A)フェノキシ樹脂と(B)多官能エポキシ樹脂の重量比率が80:20〜20:80の範囲にあるエポキシ樹脂組成物。樹脂成分としてフェノキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂とを所定の配合比で併用することにより、塗膜性ないしは成膜性や接着性等を損なうことなく、ボイドを低減して高熱伝導性の硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子接合用の接着膜として好適な、高熱伝導性の硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物と、このエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体実装の高性能化のために、配線の微細化や駆動周波数の向上に加え、半導体チップの3次元(3D)積層化に向けた研究開発が進められている。
【0003】
具体的には、ウェハー上に塗布により接着用樹脂の薄膜を形成した後に、Bステージ化を行い、次いでダイシングによりチップを切り出し、このチップを用いて加圧加熱による仮接合を繰り返し、最終的に加圧加熱条件下で本接合(半田接合)を行うプロセスが提案されている(非特許文献1:堀部晃啓、山田文明、エレクトロニクス実装学会講演大会講演論文集、61,23,2009)。
【0004】
このような3D積層デバイスの実用化に向けて、種々の課題が指摘されているが、その内の一つにトランジスターが発する熱の放熱問題がある。即ち、半導体チップの積層の際に用いられる接着用樹脂の熱伝導率は、金属やセラミックなどに比べ一般的に非常に低い。このため、積層デバイス内での蓄熱によるパフォーマンスの低下が懸念されている。
【0005】
この課題を解決する一つの手法として、接着用樹脂の高熱伝導化が挙げられる。この場合、樹脂単体の高熱伝導化には限界があるため、樹脂の熱伝導率を向上させるために、高熱伝導性無機フィラーと樹脂を複合化させることで、樹脂材料を高熱伝導化することが行われている。熱伝導性接着用樹脂組成物には、これまでに検討されてきた無機フィラーと樹脂の複合化の技術に加え、3D積層プロセスへの適合性や薄膜化、高信頼性が求められるため、更なる新技術の開発が必要とされている。
【0006】
例えば、樹脂の改良、無機フィラーの改良、これらの複合化の技術の改良、更には熱伝導性の向上にむけた熱伝導パス形成のための添加物による改良や、塗布、乾燥、仮接着、本接合といったプロセスに適合するための改良が必要とされている。
【0007】
樹脂の改良としては、樹脂自体の熱伝導性向上に向けた樹脂の高配向化、ボイド低減のための樹脂組成改善(例えば低粘度点樹脂の添加など)、多官能な架橋樹脂の添加による軟化点低減や硬化速度改善、硬化剤、および、硬化促進剤の最適化による硬化速度の最適化、多種の樹脂の混合などが挙げられる。
【0008】
また、無機フィラーの改良としては、フィラー種の選択に始まり、フィラー自体の熱伝導性向上のための焼成温度、焼成圧力、焼成雰囲気などの焼成法等の改善や、焼成助剤の添加による結晶性向上が挙げられる。
【0009】
樹脂と無機フィラーの相互作用の改善(複合化の技術)としては、複合材料内での適度な凝集化やフィラー間の効果的な接合を実現するためのカップリング剤などを用いたフィラーの表面修飾、フィラー形状、フィラー粒径の選択、フィラーの高充填化を実現するための異種粒径の混合を含む粒度分布の最適化、などが挙げられる。
【0010】
また、添加剤の検討としては、無機フィラーではなく、樹脂製フィラーを導入して架橋時にマトリックス樹脂と反応させることにより強固に結合させたり、熱伝導フィラーの配向や凝集を促すといったことが挙げられる。また、配向性を示す低分子化合物を樹脂組成中に添加することも有効である。
【0011】
更に、樹脂とフィラーの混合方法の選択や、その混合時の温度条件なども重要な検討課題である。
【0012】
塗布・乾燥のプロセス関係の検討課題としては、塗布方法の選択、界面活性剤による濡れ広がり性や均一性のコントロール、バンプ間への樹脂の導入、溶媒種選定や混合による蒸発速度コントロールでの塗布膜の均一性の実現、Bステージでの溶媒除去のし易さ、溶媒留去時のボイドコントロールなどが挙げられる。
【0013】
また、接着性、接合性の改善に関しては、低軟化点・高流動性樹脂組成とすることによるはんだボールと下地基板間に存在する接着剤の接合時の挟み込み防止、シランカップリング剤の添加による接着樹脂層と下地基板との接着性向上や下地基板との相性の改善が挙げられる。
【0014】
また、はんだ接合に適合する硬化プロファイルとしては、接合温度では完全硬化せず短時間の流動を有した後に、ゲル化し、その後に完全硬化するといった点が重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】堀部晃啓、山田文明、エレクトロニクス実装学会講演大会講演論文集、61,23,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のように、半導体素子の積層接合用接着樹脂には、高熱伝導化のための無機フィラーを配合した上で、接着性や塗膜性、成膜性等の改善を図ることが望まれている。
【0017】
本発明者らは、高熱伝導化のために無機フィラーを配合したエポキシ樹脂組成物の無機フィラーの配合量と熱伝導性との関係について検討したところ、無機フィラーの配合量が少ないと十分な熱伝導性の向上効果が得られず、熱伝導性の向上を目的に、多量の無機フィラーを配合した場合には、樹脂組成物の粘度を低減するために溶媒を多量に配合する必要があり、この場合には、硬化物内にボイド(空隙)が生じ易くなり、このボイドの存在で無機フィラーを配合したことによる熱伝導パスが切断される結果、無機フィラーの配合量に見合う熱伝導性の向上効果が得られないことを知見した。
【0018】
本発明は、このようなボイドを低減して高熱伝導性の硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、樹脂成分としてフェノキシ樹脂と多官能エポキシ樹脂とを所定の配合比で併用することにより、塗膜性ないしは成膜性や接着性等を損なうことなく、上記のボイドを低減して高熱伝導性の硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を得ることができることを見出した。
【0020】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0021】
[1] (A)フェノキシ樹脂、(B)多官能エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを含み、(A)フェノキシ樹脂と(B)多官能エポキシ樹脂の重量比率が80:20〜20:80の範囲にあることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【0022】
[2] (A)フェノキシ樹脂のガラス転移温度が150℃以下であることを特徴とする[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0023】
[3] (B)多官能エポキシの軟化点が(A)フェノキシ樹脂のガラス転移温度より低く、かつ150℃における溶融粘度が0.3Pa・s以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0024】
[4] (C)無機フィラーが樹脂組成物中の固形分に対して5〜98重量%含有されていることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0025】
[5] (C)無機フィラーが、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素およびシリカからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0026】
[6] 更に(D)硬化剤および/または(E)硬化促進剤を含むことを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0027】
[7] 更に(F)溶媒を含むことを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【0028】
[8] [1]ないし[7]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【0029】
[9] [7]に記載のエポキシ樹脂組成物に含まれる(F)溶媒を当該樹脂組成物の硬化温度よりも低い温度で除去した後硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【0030】
[10] 熱伝導率が2W/m・K以上であることを特徴とする[8]または[9]に記載の硬化物。
【0031】
[11] 膜厚100μm以下の薄膜状であることを特徴とする[8]ないし[10]のいずれかに記載の硬化物。
【0032】
[12] 半導体素子接合用の接着膜であることを特徴とする[11]に記載の硬化物。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、(A)フェノキシ樹脂と(B)多官能エポキシ樹脂とを所定の配合比率で併用することにより、塗膜性ないしは成膜性や接着性を損なうことなく、無機フィラーの高充填を可能にし、また、高充填した際のボイドの発生を防止して、無機フィラー同士の熱伝導パスを形成し易くし、これにより高熱伝導性の硬化物を得ることができる。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物本来の塗膜性ないしは成膜性、接着性、耐温性、耐熱性を有し、かつ、無機フィラーを配合したことによる高熱伝導性と低熱膨張係数という優れた特性を有し、特に半導体素子接着用樹脂組成物として工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0036】
なお、本発明において、「重量平均分子量」とはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の値である。
また、無機フィラーの平均粒径は粒度分布測定装置で測定したD50の値である。
【0037】
〔エポキシ樹脂組成物〕
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)フェノキシ樹脂、(B)多官能エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを含み、必要に応じて更に(D)硬化剤および/または(E)硬化促進剤、(F)溶媒、(G)その他の各種添加剤を含むものである。
【0038】
[(A)フェノキシ樹脂]
(A)フェノキシ樹脂とは、具体的には、エピハロヒドリンと2価フェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、または2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂をさし、本発明においてはこれらのうち、特に重量平均分子量10000以上の高分子量エポキシ樹脂をフェノキシ樹脂と言う。
【0039】
(A)フェノキシ樹脂としては、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格およびジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。中でも、耐熱性がより一層高められるので、フルオレン骨格および/またはビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。
【0040】
また、(A)フェノキシ樹脂は本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導率を向上させるために、メソゲン部位を有することが好ましい。メソゲン部位とは、分子間の配向性を向上させうる部位のことである。メソゲン部位の例としては、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格などの芳香族縮合多環構造、ビフェニル骨格、ターフェニル骨格などの連結されたベンゼン環を有する構造、アダマンタン骨格およびジシクロペンタジエン骨格などの脂環式構造、ベンゾエステルなどの芳香環と共役したエステル構造などが挙げられる。コストと吸水率などの性能の観点から、メソゲン部位としては、ビフェニル骨格が好ましい。
【0041】
(A)フェノキシ樹脂は、主鎖中に多環式芳香族骨格を有することが好ましく、特に、下記一般式(I)で表されるものが好ましい。
【0042】
【化1】

【0043】
(式中、Aは下記式(1)または(2)で表される化学構造であり、Aが式(2)である割合が一般式(I)中の5モル%以上であり、Bは水素原子、または下記式(3)で表される基であり、nは平均値で25〜500の数である。)
【0044】
【化2】

【0045】
(式中、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基およびハロゲン原子から選ばれる基であり、Xは単結合、炭素数1〜7の2価の炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、およびCO−から選ばれる基である。)
【0046】
【化3】

【0047】
(式中、R1'は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基およびハロゲン原子から選ばれる基であり、R2は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基およびハロゲン原子から選ばれる基であり、R3は、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、mは0〜5の整数である。)
【0048】
【化4】

【0049】
一般式(I)で表されるフェノキシ樹脂の構成成分は、式(1)または式(2)で表される化学構造であり、Aが式(2)である割合が一般式(I)中の5モル%以上が好ましく、より好ましくは10モル%以上であり、更に好ましくは15モル%以上である。式(2)で表される化学構造の成分が上記下限より少ないと耐熱性および低吸水性が不十分となる。
【0050】
また、(A)フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10,000未満では耐熱性が不十分であり、200,000を超えると樹脂が極めて高粘度となり樹脂の取り扱いが困難になり、好ましくない。耐熱性、樹脂の取り扱いの両面からみて、好ましくは、(A)フェノキシ樹脂の重量平均分量は10,000〜90,000であり、より好ましくは12,000〜80,000であり、更に好ましくは15,000〜70,000である。
【0051】
本発明における(A)フェノキシ樹脂のエポキシ当量は5,000g/当量以上であればよい。尚、エポキシ基が含有されない場合はエポキシ当量は無限大の値になる。エポキシ当量が5,000g/当量未満では耐熱性が不十分となり、好ましくない。エポキシ当量が5,000g/当量以上であれば耐熱性がよくなり、好適である。
【0052】
本発明で用いる(A)フェノキシ樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が150℃以下であることが好ましい。(A)フェノキシ樹脂のTgが130℃を超えると、硬化物のTgが150℃を超えてしまい、半導体実装信頼性試験において問題が生ずる可能性がある。(A)フェノキシ樹脂のTgはより好ましくは140℃以下である。ただし、Tgが過度に低いフェノキシ樹脂は硬化物のTgが低くなりすぎるために半導体実装信頼性試験において問題が生ずる可能性があるため、(A)フェノキシ樹脂のTgは好ましくは50℃以上である。
【0053】
(A)フェノキシ樹脂の製造方法としては特に制限はないが、エピクロルヒドリンやエピブロムヒドリン等のエピハロヒドリンと式(1)または(2)の化学構造を含有する2価フェノール化合物をアルカリ存在下に反応させて製造する一段法と、式(1)または(2)の化学構造を含有する2官能エポキシ樹脂の少なくとも1種類と式(1)または(2)の化学構造を含有する2価フェノール化合物の少なくとも1種以上とを一般に触媒の存在下に反応させて製造する二段法がある。前述の重量平均分子量やエポキシ当量は、エピハロヒドリンと2価フェノール化合物の仕込みモル比、あるいは2官能エポキシと2価フェノール化合物の仕込みモル比を調整することで目的の値のものを製造することができる。
【0054】
(A)フェノキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で混合して用いてもよい。
【0055】
[(B)多官能エポキシ樹脂]
本発明で用いる(B)多官能エポキシ樹脂とは、一分子内に3つ以上のエポキシ基を有するものであり、この(B)多官能エポキシ樹脂についても、(A)フェノキシ樹脂と同様、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導率を向上させるために、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格などの芳香族縮合多環構造、ビフェニル骨格、ターフェニル骨格などの連結されたベンゼン環を有する構造、アダマンタン骨格およびジシクロペンタジエン骨格などの脂環式構造、ベンゾエステルなどの芳香環と共役したエステル構造などのメソゲン部位を有することが好ましく、コストと吸水率などの性能の観点から、メソゲン部位として、ビフェニル骨格やジシクロペンタジエン骨格を有することが好ましい。
【0056】
(B)多官能エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂、テルペンフェノール樹脂、重質油変性フェノール樹脂、などの種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂等の各種のフェノール系化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型多官能エポキシ樹脂が好ましい。
【0057】
本発明で用いる(B)多官能エポキシ樹脂は、軟化点が(A)フェノキシ樹脂のTgより低いものがタック性をより低温で発現出来る点で好ましく、具体的には軟化点が120℃以下、特に110℃以下であるものが好ましい。なお、(B)多官能エポキシ樹脂の軟化点は通常20℃以上である。
【0058】
また、(B)多官能エポキシ樹脂は、150℃における溶融粘度が0.3Pa・s以下であることが、フィラーの高充填化の点で好ましい。150℃における溶融粘度は特に0.3Pa・s以下であることが好ましい。ただし、150℃における溶融粘度は通常0.001Pa・s以上である。
【0059】
このような、軟化点および溶融粘度を満たす多官能エポキシ樹脂としては、日本化薬社のNC−3100,NC−3000−L、NC−3000、CER−3000−L、ジャパンエポキシレジン社の157S65、157S70、1032S50、1032H60、1031S、DIC社のHP7200、HP7200L等が挙げられる。
【0060】
これらの(B)多官能エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で混合して用いてもよい。
【0061】
[(C)無機フィラー]
本発明で用いる(C)無機フィラーは高い熱伝導性を有するものが好ましく、当該無機フィラーの熱伝導率として1W/m・K以上、好ましくは2W/m・K以上の高熱伝導性無機フィラーが好ましい。
【0062】
(C)無機フィラーとしては、アルミナ(Al:熱伝導率30W/m・K)、窒化アルミニウム(AlN:熱伝導率260W/m・K)、窒化ホウ素(BN:熱伝導率3W/m・K(厚み方向)、275W/m・K(面内方向))、窒化ケイ素(Si:熱伝導率23W/m・K)、シリカ(SiO:熱伝導率1.4W/m・K)などが挙げられるが、無機フィラーは更に酸素、水や高温暴露に対する安定性と低誘電性をも併せ持つことが接着したデバイスの信頼性の点で好ましく、このような無機フィラーとしては、Al、AlN、BN、SiOが好ましく、とりわけAl、BN、SiOが好ましい。
【0063】
(C)無機フィラーは、その粒径が大き過ぎると硬化物の表面形状が悪化し、小さ過ぎると凝集しやすくなり分散性が悪くなることから、粒状の無機フィラーであれば、平均粒径0.05〜10μm程度のものを 用いることが好ましい。
また、凝集状の無機フィラーであれば、平均結晶径が10〜5000nmで、平均凝集径が1〜1000μmのものを用いることが好ましい。
【0064】
これらの(C)無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で混合して用いてもよい。
【0065】
特に本発明では、平均粒径が比較的小さい、例えば0.1〜2μm程度、好ましくは0.2〜1.8μmの無機フィラーと、平均粒径が比較的大きい、例えば2〜10μm程度、好ましくは2.5〜9.5μmの無機フィラーとを併用することにより、平均粒径の大きい無機フィラー同士の熱伝導パスを平均粒径の小さい無機フィラーで繋ぐことにより、同一平均粒径のもののみを用いた場合に比べて高充填が可能となりより高い熱伝導性を得ることができる。
この場合、平均粒径の小さい無機フィラーと平均粒径の大きい無機フィラーとは重量比で1:0.1〜1.0の割合で用いることが、熱伝導パスの形成の上で好ましい。
【0066】
[(D)硬化剤・(E)硬化促進剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、必要に応じて、(D)硬化剤および/または(E)硬化促進剤を配合してもよい。
【0067】
(D)硬化剤としては通常、エポキシ樹脂組成物の硬化剤として用いられるものをいずれも用いることができるが、特に、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤が好ましく用いられる。
【0068】
アミン系硬化剤の具体例としては、脂肪族アミン類、ポリエーテルポリアミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類等が挙げられる。脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等が挙げられる。ポリエーテルポリアミン類としては、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジエチレングリコールビス(プロピルアミン)、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン類等が挙げられる。脂環式アミン類としては、イソホロンジアミン、メタセンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ノルボルネンジアミン等が挙げられる。芳香族アミン類としては、テトラクロロ−p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノアニソール、2,4−トルエンジアミン、2,4−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、2,4−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−アミノフェノール、m−アミノベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2−ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、メチルベンジルアミン、α−(m−アミノフェニル)エチルアミン、α−(p−アミノフェニル)エチルアミン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0069】
酸無水物系硬化剤の具体例としては、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、無水ヘット酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、1−メチル−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物等が挙げられる。
【0070】
これらの(D)硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で混合して用いてもよい。
【0071】
また、(E)硬化促進剤としては、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等があり、具体的には、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。
【0072】
これらの(E)硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で混合して用いてもよい。
【0073】
[(F)溶媒]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、塗膜形成時の取り扱い時に、エポキシ樹脂組成物の粘度を適度に調整するために(F)溶媒を配合してもよい。
【0074】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含み得る溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類、トルエン、キシレン等の芳香族類などが挙げられる。
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で混合して用いてもよい。
【0075】
[(G)その他の添加剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、各種の添加剤を含んでいてもよい。
【0076】
このような(G)その他の添加剤としては、熱伝導性を更に向上させるための添加成分として、前述のメソゲン部位を有する、上記(A)フェノキシ樹脂および(B)多官能エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂オリゴマー、エポキシ化合物;基材との接着性やマトリックス樹脂と無機フィラーとの接着性を向上させるための添加成分として、エポキシシラン等のシランカップリング剤等のカップリング剤;保存安定性向上のための紫外線防止剤、酸化防止剤、可塑剤;はんだの酸化皮膜除去のためのフラックス;その他、難燃剤、着色剤等が挙げられる。
これらは、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で混合して用いてもよい。
【0077】
[配合組成]
本発明のエポキシ樹脂組成物において、(A)フェノキシ樹脂と(B)多官能エポキシ樹脂との含有重量比は、(A)フェノキシ樹脂:(B)多官能エポキシ樹脂=80:20〜20:80の範囲、好ましくは60〜40:40〜60の範囲である。
(B)多官能エポキシ樹脂は無機フィラーとマトリックス樹脂との界面剥離を防止してボイドを低減するのに有効であるが、(B)多官能エポキシ樹脂の配合量が多過ぎると接着性や成膜性、塗膜性が低下する傾向がある。従って、接着性や成膜性、塗膜性を損なうことなく、ボイドを有効に防止するために、(A)フェノキシ樹脂と(B)多官能エポキシ樹脂との配合比率は上記範囲とすることが好ましい。
【0078】
本発明のエポキシ樹脂組成物において(C)無機フィラーの配合割合は、エポキシ樹脂組成物中の全固形分(通常、エポキシ樹脂組成物中の全固形分とは樹脂組成物中の溶媒を除く成分の合計をさす)に対して好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜95重量%であり、このエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物中の体積割合として好ましくは10〜90体積%、より好ましくは15〜85体積%である。
【0079】
(C)無機フィラーの配合量が上記下限よりも少ないと所望の高熱伝導性を得ることができず、上記上限よりも多いと、成膜性や接着性、硬化物の物性が損なわれるおそれがある。
【0080】
本発明のエポキシ樹脂組成物に(D)硬化剤および/または(E)硬化促進剤を用いる場合、(D)硬化剤の配合量は、樹脂組成物中のエポキシ基と硬化剤中の官能基との当量比で0.8〜1.5の範囲となるように用いることが好ましい。この範囲外であると未反応のエポキシ基や硬化剤の官能基が残留し、接着剤としての信頼性が低下する。
また、(E)硬化促進剤は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂100重量部に対して0.2〜10重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0081】
(F)溶媒は、エポキシ樹脂組成物の成形、硬化における取り扱い性、作業性を確保する程度の量で用いられ、無機フィラーの配合量によっても異なり一概に言うことはできないが、通常、本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度が0.01〜100Pa・s程度となるように、エポキシ樹脂組成物中の固形分を(F)溶媒で希釈して用いることが好ましい。
【0082】
(G)その他の添加剤の配合量には特に制限はなく、必要な機能性が得られる程度に、通常の樹脂組成物の配合量で用いられる。
【0083】
なお、その他の添加剤のうち、カップリング剤の添加量は、エポキシ樹脂組成物中の全固形分に対して0.1〜2.0重量%程度とするのが好ましい。カップリング剤の配合量が少ないと、カップリング剤を配合したことによるマトリックス樹脂と無機フィラーとの密着性の向上効果を十分に得ることができず、多過ぎると得られる硬化物からカップリング剤がブリードアウトする問題がある。
【0084】
[調製方法]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前述の(A)フェノキシ樹脂、(B)多官能エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーと、必要に応じて用いられる(D)硬化剤、(E)硬化促進剤、(F)溶媒、(G)その他の添加剤を所定の割合で混合することにより調製されるが、その際、組成物の均一性の向上、脱泡等を目的として、ペイントシェーカーやビーズミル、プラネタリミキサ、自公転攪拌混合機などを用いて混合することが好ましい。
【0085】
〔硬化物〕
本発明の硬化物は、上述のような本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなるものである。
【0086】
[硬化膜の形成]
本発明のエポキシ樹脂組成物から薄膜状の硬化物を得る場合、本発明のエポキシ樹脂組成物を基板上に塗布し、塗布膜から溶媒を除去してBステージ膜とした後、必要に応じて圧力をかけてこれを硬化させる。なお、Bステージ薄膜とは、塗布膜をその膜面が鉛直方向となるように傾けた場合にも塗布膜が流動しない状態の薄膜をさす。
【0087】
エポキシ樹脂組成物の塗布方法としては特に制限はないが、均一な薄膜を容易に形成することができることから、スピンコート、ディップコート、スプレーコート、フローコート、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、インクジェット法などを採用することが好ましい。
【0088】
形成された塗布膜から溶媒を除去してBステージ膜を得る際の溶媒の除去は、膜を常温あるいは加熱下において溶媒を蒸発させることにより行うことができる。この際必要に応じて減圧を行うことも出来る。この溶媒の除去は、エポキシ樹脂組成物の硬化温度未満の温度で行うことが接着性を得る上で重要である。
なお、ここで、エポキシ樹脂組成物の硬化温度とはゲル化点の温度である。溶媒除去時の処理温度は、エポキシ樹脂組成物の硬化温度に対して50〜200℃程度低い温度とすることが好ましい。
【0089】
このようにして得られたBステージ膜の硬化は、エポキシ樹脂組成物の硬化温度以上、例えばエポキシ樹脂組成物の硬化温度よりも5〜50℃高い温度に加熱することにより行われる。
【0090】
このようにして得られる本発明の硬化物は、熱伝導率が2W/m・K以上、特に2.5W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率が上記下限よりも低いと、本発明で目的とする高熱伝導性を満足し得ない。本発明の硬化物の熱伝導率は高い程好ましいが、通常エポキシ樹脂硬化物の熱伝導率の上限として40W/m・K程度である。
また、本発明の硬化物実装時の信頼性を得るために、線熱膨張係数が50ppm/K以下、特に40ppm/K以下であることが好ましい。硬化物の線熱膨張係数は小さい程好ましいが、通常、エポキシ樹脂硬化物の線熱膨張係数の下限として5ppm/K程度である。
【0091】
本発明の硬化物は、特に半導体素子の接着層として有効であり、その場合、本発明の薄膜状硬化物の膜厚は、100μm以下、例えば5〜95μm程度であることが好ましい。
即ち、この膜厚は、3D積層におけるチップの厚み、バンプの面密度などの設計により変わりうるが、チップの厚さが100μm程度から積層構造が適用されると想定されることから、このチップ厚み以下の膜厚であることが好ましい。
【実施例】
【0092】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0093】
以下において用いたエポキシ樹脂組成物の配合成分は次の通りである。
(A)フェノキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製フェノキシ樹脂 商品名「YX6954」(MEK/シクロヘキサノン溶液;重量平均分子量:39,000、エポキシ当量:13,000g/eq.、Tg:130℃)
(B)多官能エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製多官能エポキシ樹脂 商品名「157S65」(MEK溶液、軟化点:65℃、150℃における溶融粘度:0.2Pa・s)
(C)無機フィラー
無機フィラー1:昭和電工社製Al 商品名「AL−43−M」
(平均粒径1.5μm)
無機フィラー2:住友化学社製Al 商品名「AA−3」
(平均粒径3μm)
無機フィラー3:住友化学社製Al 商品名「AA−04」
(平均粒径0.4μm)
無機フィラー4:モメンティブ社製BN 商品名「PTX−25」
(凝集粒子の平均粒径:25μm,一次粒子の平均粒径:3μm)
(E)硬化促進剤:ジャパンエポキシレジン社製 商品名「EMI24」
2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール
(F)溶媒:メチルエチルケトンとシクロヘキサノンの1:1(重量比)の混合溶媒
【0094】
[実施例1〜4、比較例1,2]
(A)フェノキシ樹脂と(B)多官能エポキシ樹脂を表1に示す配合重量比とし、この(A)フェノキシ樹脂と(B)多官能エポキシ樹脂との合計100重量部に対して(E)硬化促進剤を0.5重量部と(C)無機フィラーとして無機フィラー1を硬化物中の含有量が50体積%(樹脂組成物中の全固形分に対して77重量%)となるように配合し、更に(F)溶媒を樹脂組成物中の固形分濃度が60重量%となるように添加して、超音波照射とスターラー攪拌で混練して、粘度が0.5Pa.sの原料ペーストを得た。
【0095】
この原料ペーストをドクターブレードにより離型材で処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布し、60℃で20分、その後150℃で20分、その後減圧下にて150℃で20分加熱して溶媒を除去してBステージ膜とした後、150℃15分、その後200℃で30分減圧下にプレス(圧力1MPa)することにより硬化させて、膜厚40μmの硬化膜を得た。
得られた硬化膜について、以下の評価を行って結果を表1に示した。
【0096】
<ボイドの有無>
得られた薄膜の断面についてSEM観察を行い、ボイドの有無を調べ、以下の基準で評価した。
○:ボイドなし
△:ボイド少ない
×:ボイド多い
【0097】
<塗膜性>
離型材で処理されたPETフィルム上に塗布した際の塗膜膜の経時安定性を目視により調べ、以下の基準で評価した。
○:塗膜性非常に良好
△:塗膜性良好
×:塗膜性不良
【0098】
<接着力>
同様の手順でシリコンウェハー上に硬化膜を作製後塗布碁盤目試験により調べ、以下の基準で評価した。
○:接着性非常に良好
△:接着性良好
×:接着性不十分
【0099】
【表1】

【0100】
表1より、(A)フェノキシ樹脂:(B)多官能エポキシ樹脂(重量比)=80:20〜20:80、好ましくは60:40〜40:60で用いることにより、塗膜性や接着力を損なうことなく、ボイドのない薄膜を得ることができることが分かる。
【0101】
[実施例5,6]
実施例1において、(A)フェノキシ樹脂:(B)多官能エポキシ樹脂=60:40(重量比)とし、(C)無機フィラーとして、無機フィラー2と無機フィラー3とを無機フィラー2:無機フィラー3=8:2(重量比)で用い、無機フィラーの合計の配合量を硬化物に対して60体積%または65体積%としたこと以外は同様にして硬化膜を得た。その熱拡散率をアイフェイズ社のアイフェイズ・モバイル1uを用いて評価し、比重をメトラートレド社の比重計を用いて測定し、比熱をセイコーインスツル社のDSCを用いて測定し、この3つを乗じて熱伝導率を求めて結果を表2に示した。
【0102】
【表2】

【0103】
表2より、本発明によれば、平均粒径の異なる2種の無機フィラーを用いて、無機フィラーの高配合で、高い熱伝導性を実現することができることが分かる。
【0104】
[実施例7〜9]
実施例5において、無機フィラーとして無機フィラー4を用い、その配合量を硬化物に対して20体積%、30体積%または40体積%としたこと以外は同様にして硬化膜を得、その熱伝導率を調べて結果を表3に示した。
【0105】
【表3】

【0106】
表3より、凝集体のBNを用いることによりAlよりも少量の配合で高い熱伝導性を実現することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フェノキシ樹脂、(B)多官能エポキシ樹脂、および(C)無機フィラーを含み、(A)フェノキシ樹脂と(B)多官能エポキシ樹脂の重量比率が80:20〜20:80の範囲にあることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(A)フェノキシ樹脂のガラス転移温度が150℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(B)多官能エポキシの軟化点が(A)フェノキシ樹脂のガラス転移温度より低く、かつ150℃における溶融粘度が0.3Pa・s以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
(C)無機フィラーが樹脂組成物中の固形分に対して5〜98重量%含有されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(C)無機フィラーが、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素およびシリカからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
更に(D)硬化剤および/または(E)硬化促進剤を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
更に(F)溶媒を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項9】
請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物に含まれる(F)溶媒を当該樹脂組成物の硬化温度よりも低い温度で除去した後硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項10】
熱伝導率が2W/m・K以上であることを特徴とする請求項8または9に記載の硬化物。
【請求項11】
膜厚100μm以下の薄膜状であることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項に記載の硬化物。
【請求項12】
半導体素子接合用の接着膜であることを特徴とする請求項11に記載の硬化物。

【公開番号】特開2011−241245(P2011−241245A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111886(P2010−111886)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】