説明

エレベータ制御装置

【課題】エレベータ制御装置のインバータ内のスイッチング素子の、経過時間に対する温度変化を少なくして空冷し、かつ回生抵抗器も空冷する。
【解決手段】実施形態によれば、スイッチング素子を介してインバータの直流側と接続され、電動機の回生電力を消費する回生抵抗器と、回生抵抗器およびインバータを空冷するためのファンと、乗りかごの荷重値を検出する荷重検出手段と、行先階を検出する行先階検出手段とをもつ。また、この実施形態によれば、検出した行先階と荷重値をもとに、運転開始前に、運転に伴うインバータ内のスイッチング素子と回生抵抗器の温度変化パターンを予測する温度変化予測手段と、予測した温度変化パターンをもとに、経過時間に対するインバータ内のスイッチング素子の温度変化の値が所定の基準値以下となり、かつ回生抵抗器が空冷されるように、ファンの駆動電圧および駆動時間を制御するファン制御手段とをもつ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発熱部品の冷却機能を有するエレベータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータでは、建屋側配電系統の商用三相交流電源にコンバータ装置が接続される。コンバータ装置はダイオードで構成され、商用三相交流電源から出力される三相交流電力を直流電力に変換する。コンバータ装置の直流出力ライン間には平滑コンデンサが設けられる。平滑コンデンサはコンバータ装置で変換された直流電力に含まれる脈動分(リプル)を平滑化する。
【0003】
また、コンバータ装置の直流出力ラインの低電位点には半導体スイッチング素子(Q7素子)のエミッタが接続される。半導体スイッチング素子のコレクタと直流出力ラインの高電位点の間には回生抵抗器が設けられる。
【0004】
コンバータ装置からみた半導体スイッチング素子の後段にはインバータ装置が設けられる。インバータ装置はダイオードおよびスイッチング素子、例えばトランジスタで構成され、平滑コンデンサで平滑化された直流電力をPWM(Pulse Width Modulation)制御により可変電圧可変周波数の交流電力に変換して電動機に供給する。
【0005】
回生抵抗器およびインバータ装置の近傍には当該回生抵抗器およびインバータ装置内のスイッチング素子を空冷するためのファン(FAN)が設けられる。
また、電動機の回転軸にはシーブが取り付けられており、そこに巻き掛けられたロープを介して乗りかごとカウンタウェイトが昇降路内をつるべ式に昇降動作する。電動機は、インバータ装置から出力された交流電力で駆動して乗りかごを昇降させる。
【0006】
乗りかごが昇降路の下方向に動く場合に、そのときの乗りかごの荷重がカウンタウェイトより重ければ、動力を必要としないため、電動機が発電機として機能して、回生電力が生じる。また、乗りかごが上方向に動く場合に、そのときの乗りかごの荷重がカウンタウェイトより軽ければ、動力を必要としないため、電動機が発電機として機能して回生電力が生じる。
【0007】
回生抵抗器は、回生電力を熱エネルギーに変換するための抵抗である。半導体スイッチング素子は、回生運転時に直流出力ラインの電圧が所定以上となった場合にON状態となり、インバータ装置から逆流してくる回生電力を回生抵抗器に流す構成となっている。
【0008】
インバータ装置より電動機へ電流を供給する際、インバータ装置に搭載しているスイッチング素子は通電される電流量に比例して発熱しており、ファンによって半導体スイッチング素子を空冷するとともに、ファンの排気で、回生抵抗器へも風を供給して空冷する構成となっている。
【0009】
インバータ装置内の半導体スイッチング素子を空冷することで当該半導体スイッチング素子に急峻な温度変化を生じさせる、つまり経過時間に対する温度変化の値が高い場合、このスイッチング素子に急峻な熱ストレスが生じて当該スイッチング素子の寿命が著しく減少するため、ファンを可変制御して、スイッチング素子に急峻な温度変化を与えないように、つまり、経過時間に対してスイッチング素子に大きな温度変化を与えないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−254909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような制御方式では、スイッチング素子に急峻な熱ストレスが生じない一方、回生運転が連続して行なわれた場合は、可変制御を行なわない場合と比較して回生抵抗器の温度上昇値が高くなってしまい、この回生抵抗器内部の素線に熱ストレスが加わり、破損に至る可能性がある。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、経過時間に対するインバータ装置内のスイッチング素子の温度変化を少なくして冷却し、かつ回生抵抗器も必要十分に冷却することが可能になるエレベータ制御装置することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態によれば、交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流回路と、前記整流回路で変換された直流電力の脈動を平滑化する平滑コンデンサと、前記平滑化された直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換して出力するインバータと、前記インバータから出力された交流電力で駆動して乗りかごを昇降させる電動機と、スイッチング素子を介して前記インバータの直流側と接続され、前記電動機の回生電力を消費する回生抵抗器と、前記回生抵抗器および前記インバータを空冷するためのファンと、前記乗りかごの荷重値を検出する荷重検出手段と、前記乗りかごの行先階を検出する行先階検出手段とをもつ。また、この実施形態によれば、前記検出した行先階と荷重値をもとに、運転開始前に、運転に伴う前記インバータ内のスイッチング素子と前記回生抵抗器の温度変化パターンを予測する温度変化予測手段と、前記予測した温度変化パターンをもとに、経過時間に対する前記インバータ内のスイッチング素子の温度変化の値が所定の基準値以下となり、かつ前記回生抵抗器が冷却されるように、前記ファンの駆動電圧および駆動時間を制御するファン制御手段とをもつ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態におけるエレベータの制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図。
【図2】第1の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子および回生抵抗器の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【図3】第2の実施形態におけるエレベータの制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図。
【図4】第2の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子および回生抵抗器の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【図5】第3の実施形態におけるエレベータの制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図。
【図6】第3の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子および回生抵抗器の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【図7】第4の実施形態におけるエレベータの制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図。
【図8】第4の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子および回生抵抗器の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【図9】第5の実施形態におけるエレベータの制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図。
【図10】第5の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子および回生抵抗器の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。本実施形態は、インバータ装置内のスイッチング素子や回生抵抗器の温度変化パターンをもとに、インバータ装置内のスイッチング素子に急峻な温度変化を生じさせずに、つまり経過時間に対する温度変化の値が所定の基準値以下となるように、ファンにより空冷し、かつ回生抵抗器を必要十分に空冷するためのファン電源制御パターンに従って、ファンの駆動電圧を可変制御することで、インバータ装置内の搭載しているスイッチング素子に急峻な温度変化を生じさせずに、このスイッチング素子および回生抵抗器を空冷する機能を有することを特徴としている。前述した、インバータ装置内のスイッチング素子についての、経過時間に対する温度変化の値の基準値は、インバータ装置内のスイッチング素子の熱ストレスへの耐性により定まるものであり、インバータ装置内のスイッチング素子についての、経過時間に対する温度変化の値がこの基準値以上となると、このスイッチング素子の寿命が著しく減少する。
【0016】
図1は、第1の実施形態におけるエレベータの制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図である。
まず、このエレベータでは、建屋側配電系統の商用三相交流電源1にコンバータ装置2が接続される。コンバータ装置2はダイオードで構成され、商用三相交流電源1から出力される三相交流電力を直流電力に変換する。コンバータ装置2の直流出力ライン間には平滑コンデンサ3が設けられる。平滑コンデンサ3はコンバータ装置2で変換された直流電力に含まれる脈動分(リプル)を平滑化する。
【0017】
また、コンバータ装置2の直流出力ラインの低電位点には半導体スイッチング素子(Q7素子)10のエミッタが接続される。半導体スイッチング素子10のコレクタと直流出力ラインの高電位点の間には回生抵抗器9が設けられる。
【0018】
コンバータ装置2からみた半導体スイッチング素子10の後段にはインバータ装置4が設けられる。インバータ装置4はダイオードおよびスイッチング素子、例えばトランジスタで構成され、平滑コンデンサ3で平滑化された直流電力をPWM(Pulse Width Modulation)制御により可変電圧可変周波数の交流電力に変換して電動機6に供給する。インバータ装置4の出力電流は電流検出器5で検出され、検出結果は速度制御に用いられる。
【0019】
回生抵抗器9およびインバータ装置4の近傍には当該回生抵抗器9およびインバータ装置4内のスイッチング素子を空冷するためのファン(FAN)11が設けられる。
また、電動機6の回転軸にはシーブが取り付けられており、そこに巻き掛けられたロープを介して乗りかご7とカウンタウェイト8が昇降路内をつるべ式に昇降動作する。電動機6は、インバータ装置4から出力された交流電力で駆動して乗りかご7を昇降させる。
【0020】
回生抵抗器9は、回生電力を熱エネルギーに変換するための抵抗である。半導体スイッチング素子10は、回生運転時に直流出力ラインの電圧が所定以上となった場合にON状態となり、インバータ装置4から逆流してくる回生電力を回生抵抗器9に流す。
すなわち、例えば乗りかご7が昇降路の下方向に動く場合に、そのときの乗りかご7の荷重がカウンタウェイト8より重ければ、動力を必要としないため、電動機6が発電機として機能することになり、回生電力が生じる。また、乗りかご7が上方向に動く場合に、そのときの乗りかご7の荷重がカウンタウェイト8より軽ければ、動力を必要としないため、回生電力が生じる。このように、動力を必要とせずに乗りかごを運転することを「回生運転」と呼び、その逆に、動力を必要とする運転を「力行運転」と呼んでいる。回生運転時に生じた電力は、半導体スイッチング素子10を介して回生抵抗器9で熱エネルギーに変換されて消費される。
【0021】
また、このエレベータ制御装置は、電流パターン予測回路14、発熱パターン予測回路15、温度変化予測回路16、ファン電源パターン算出回路17、ファン電源制御回路18、ファン電源19、制御用マイコン20、ファン電源パターン設定回路21を有する。制御用マイコン20や各種回路は、例えばCPU、ROM、RAMなどが搭載されたコンピュータによって構成される。
【0022】
本実施形態では、電流パターン予測回路14、発熱パターン予測回路15、温度変化予測回路16、ファン電源パターン算出回路17、ファン電源制御回路18、ファン電源パターン設定回路21を設けて、ファン11の可変制御を行なうことが従来技術に対する特徴の一つであり、この可変制御を行なうことで、経過時間に対するインバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化の値が所定の基準値以下となるように空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷することが出来るようになっている。
【0023】
また、本実施形態におけるエレベータは、乗りかご7の行先階を検出する行先階検出装置12、および乗りかご7の荷重値を検出する荷重検出装置13を有する。
電流パターン予測回路14は、図示しないかご位置検出装置により検出した乗りかご7の現在位置から行先階検出装置12により検出した最寄りの行先階までの速度パターンを求める。また、電流パターン予測回路14は、この速度パターンおよび荷重検出装置13により検出した荷重値をもとに、呼び登録による運転開始から最寄りの行先階への応答完了による運転終了までの間における、インバータ装置4内のスイッチング素子に通電される電流値の時間特性である電流パターン、およびQ7素子10に通電される電流値の時間特性である電流パターンをそれぞれ予測する。乗りかご7の現在位置から行先階までの平均速度が高いほど、電流パターンで示されるスイッチング素子に通電される電流の平均値は高く、また、荷重値が大きいほど電流パターンで示される当該スイッチング素子に通電される電流値は高い。
【0024】
発熱パターン予測回路15は、電流パターン予測回路14により予測した電流パターンをもとに、運転開始から運転終了までにおける、インバータ装置4内のスイッチング素子の発熱量の時間特性である発熱パターンおよび回生抵抗器9の発熱量の時間特性である発熱パターンをそれぞれ予測する。前述した電流パターンで示される、スイッチング素子に通電される電流値が高いほど、発熱パターンで示される当該スイッチング素子の発熱量は高い。
【0025】
温度変化予測回路16は、発熱パターン予測回路15により予測した発熱パターンをもとに、運転開始から運転終了までにおける、インバータ装置4に搭載されたスイッチング素子の温度変化の時間特性である温度変化パターンおよび回生抵抗器9の温度変化の時間特性である温度変化パターンをそれぞれ予測する。
【0026】
インバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化パターンや回生抵抗器9の温度変化パターンは、前述した現在のかご位置と行先階との関係や荷重値により変化する。よって、ファン電源パターン設定回路21は、例えば最下階から最上階までの各階、およびゼロから最大許容荷重値までの所定間隔ごとの荷重値の組み合わせで定まる、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化パターンおよび回生抵抗器9の温度変化パターンの組み合わせの条件における、スイッチング素子を経過時間に対する急峻な温度変化である温度上昇や温度下降を与えないように空冷してかつ回生抵抗器9を必要十分に空冷するための、ファン11の駆動電圧の時間特性を示すファン電源制御パターンを内部メモリに記憶する。
【0027】
ファン電源パターン算出回路17は、温度変化予測回路16により予測したインバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化パターンおよび回生抵抗器9の温度変化パターン、およびファン電源パターン設定回路21に記憶された各種のファン駆動電圧の時間特性であるファン電源制御パターンをもとに、インバータ装置4内のスイッチング素子に急峻な温度変化を与えずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷できるファン電源制御パターンを算出する。これにより、現在のかご位置、最寄りの行先階、および現在の荷重値をもとにした、インバータ装置4内のスイッチング素子に急峻な温度変化を与えずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷できるファン駆動電圧の時間特性であるファン電源制御パターンを算出することができる。
ファン電源制御回路18は、ファン電源パターン算出回路17より算出された電源制御パターンに基づいてファン11の駆動電圧および駆動時間を制御する。
【0028】
次に、図1に示した構成のエレベータの動作について説明する。
図2は、第1の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子および回生抵抗器の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャートである。以後説明する動作のうち、本実施形態において、従来技術と比較して特徴的である動作、つまりインバータ装置内のスイッチング素子や回生抵抗器の温度変化パターンを求めるための動作は、ステップS3からS5の動作である。
まず、ホール呼びまたはかご呼びが登録されている状態における走行開始前において、行先階検出装置12は、乗りかご7について登録済みの最寄りの行先階を検出する(ステップS1)。また、荷重検出装置13は、かご内の荷重値を検出する(ステップS2)。
【0029】
そして、電流パターン予測回路14は、乗りかご7の現在位置から行先階検出装置12により検出した最寄りの行先階までの速度パターンを求め、この速度パターンおよび荷重検出装置13により検出した荷重値をもとに、呼び登録による運転開始から最寄りの行先階への応答完了による運転終了までの間における、インバータ装置4内のスイッチング素子の電流パターン、およびQ7素子10の電流パターンをそれぞれ予測する(ステップS3)。
【0030】
発熱パターン予測回路15は、この予測した電流パターンを基に、インバータ装置4内のスイッチング素子の発熱パターンと回生抵抗器9の発熱パターンをそれぞれ予測する(ステップS4)。
【0031】
そして、温度変化予測回路16は、予測された発熱パターンをもとに、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化パターンと回生抵抗器9の温度変化パターンをそれぞれ予測する(ステップS5)。
【0032】
そして、ファン電源パターン算出回路17は、ファン電源パターン設定回路21の内部メモリに記憶されるファン電源制御パターンのうち、温度変化予測回路16により予測した、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化パターンおよび回生抵抗器9の温度変化パターンのそれぞれの組み合わせに対応する、ファン電源制御パターンを取得することで、インバータ装置4内のスイッチング素子に急峻な温度変化を与えず、つまり、経過時間に対するインバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化の値が所定の基準値以下となるように当該スイッチング素子を空冷でき、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷できるファン駆動電圧の時間特性であるファン電源制御パターンを算出する(ステップS6)。
【0033】
ファン電源制御回路18は、この読み出したファン電源制御パターンに従って、ファン電源19を制御してファン11の駆動電圧を可変制御することで、インバータ装置4に搭載しているスイッチング素子を急峻な温度変化を生じさせずに空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷する(ステップS7)。
【0034】
以上のように、第1の実施形態におけるエレベータ制御装置では、インバータ装置内のスイッチング素子の温度変化パターンおよび回生抵抗器の温度変化パターンをもとに、インバータ装置4に搭載しているスイッチング素子を急峻な温度変化を生じさせずに、つまり、経過時間に対するインバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化の値が所定の基準値以下となるように空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷するためのファン電源制御パターンに従って、ファン電源19を制御してファン11の駆動電圧を可変制御する。つまり、従来技術では考慮していなかった、回生抵抗器の温度変化をも考慮してファン電源制御パターンを定めるので、インバータ装置4に搭載しているスイッチング素子に急峻な温度変化を生じさせずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器を必要十分に空冷することができる。そのため、従来技術のように、インバータ装置に搭載しているスイッチング素子を急峻な温度変化を生じさせずに冷却する一方で、回生抵抗器を必要十分に冷却できないという不具合を生じさせることはない。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態におけるエレベータ制御装置の構成のうち図1に示したものと同一部分の説明は省略する。
本実施形態では、第1の実施形態で説明した電流パターン予測、発熱パターン予測および温度パターン予測を行なう代わりに、インバータ装置4や回生抵抗器9の温度を検出して、この検出結果をもとに、インバータ装置4に搭載しているスイッチング素子に急峻な温度変化を生じさせずに、このスイッチング素子および回生抵抗器を空冷するためのファン電源制御パターンを算出することを特徴とする。
【0036】
図3は、第2の実施形態におけるエレベータの制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図である。
本実施形態では、第1の実施形態で説明した電流パターン予測回路14、発熱パターン予測回路15、温度変化予測回路16を備えない。一方、本実施形態では、第1の実施形態と異なり、乗りかご7の中の状態における回生抵抗器9の温度上昇値やインバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値を検出するための、回生抵抗温度検出器22、スイッチング素子温度検出器23、周囲温度検出器24、温度検出回路25、温度上昇検出回路26を新たに備える。
【0037】
回生抵抗温度検出器22は、回生抵抗器9の温度を検出する。
スイッチング素子温度検出器23は、インバータ装置4に搭載しているスイッチング素子の温度を検出する。
周囲温度検出器24は、回生抵抗器9からの熱やインバータ装置4からの熱の影響を受けない箇所の温度である、エレベータ制御装置の周囲温度を検出する。
温度検出回路25は、回生抵抗温度検出器22より検出した回生抵抗器温度、スイッチング素子温度検出器23より検出したスイッチング素子温度、周囲温度検出器24より検出した周囲温度を読み取る。
温度上昇検出回路26は、温度検出回路25により読み取った回生抵抗器温度、スイッチング素子温度、周囲温度をもとに、回生抵抗器温度と周囲温度との差分である回生抵抗器9の温度上昇値を検出し、かつ、スイッチング素子温度と周囲温度の差分である、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値を検出する。
【0038】
また、本実施形態では、ファン電源パターン設定回路21は、第1の実施形態と異なり、例えば所定の温度範囲において所定間隔で区切ったそれぞれの温度上昇値で定まる、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値および回生抵抗器9の温度上昇値の組み合わせの条件における、スイッチング素子を急峻な温度変化である温度上昇や温度下降を与えないように空冷して、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷するための、ファン11の駆動電圧の時間特性を示すファン電源制御パターンを内部メモリに記憶する。
【0039】
また、ファン電源パターン算出回路17は、温度上昇検出回路26により検出したインバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値、温度上昇検出回路26により検出した回生抵抗器9の温度上昇値、およびファン電源パターン設定回路21に記憶されるファン電源制御パターンをもとに、現在のインバータ装置4内のスイッチング素子に急峻な温度変化を与えずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷できるファン電源制御パターンを算出する。
【0040】
図4は、第2の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子および回生抵抗器の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
以後説明する動作のうち第2の実施形態における特徴的な動作、つまり乗りかご7の中の状態における回生抵抗器9の温度上昇値やインバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値を検出するための動作はステップS21からS24の動作である。
ホール呼びまたはかご呼びが登録されている状態における走行開始後において、回生抵抗温度検出器22は、回生抵抗器9の温度を検出する(ステップS21)。
そして、スイッチング素子温度検出器23は、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度を検出する(ステップS22)。そして、周囲温度検出器24は、エレベータ制御装置の周囲温度を検出する(ステップS23)。
【0041】
温度検出回路25は、回生抵抗温度検出器22、スイッチング素子温度検出器23、周囲温度検出器24より検出した温度を読み取る。そして、温度上昇検出回路26は、温度検出回路25により読み取った回生抵抗器温度、スイッチング素子温度、周囲温度をもとに、周囲温度に対する回生抵抗器9の温度上昇値、および周囲温度に対するインバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値をそれぞれ検出する(ステップS24)。この値は、第1の実施形態で求めたような予測値ではなく、走行中の各素子の現在の温度値および周囲温度から求めた値である。
【0042】
そして、ファン電源パターン算出回路17は、ファン電源パターン設定回路21の内部メモリに記憶されるファン電源制御パターンのうち、温度上昇検出回路26により検出した、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値および回生抵抗器9の温度上昇値のそれぞれの組み合わせに対応する、ファン電源制御パターンを取得することで、インバータ装置4内のスイッチング素子に急峻な温度変化を与えずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷できるファン駆動電圧の時間特性であるファン電源制御パターンを算出する(ステップS6)。
【0043】
ファン電源制御回路18は、この読み出したファン電源制御パターンに従ってファン電源19を制御してファン11の駆動電圧を可変制御することで、インバータ装置4に搭載しているスイッチング素子に急峻な温度変化を生じさせずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷する(ステップS7)。
【0044】
以上のように、第2の実施形態におけるエレベータ制御装置では、乗りかごの走行中におけるインバータ装置内のスイッチング素子の温度上昇値および回生抵抗器の温度上昇値をもとに、インバータ装置に搭載しているスイッチング素子に急峻な温度変化を生じさせずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器を必要十分に空冷するためのファン電源制御パターンに従ってファンの駆動電圧を可変制御する。よって、第1の実施形態と同様に、インバータ装置内のスイッチング素子に急峻な温度変化を生じさせずに、このスイッチング素子および回生抵抗器を空冷することができ、第1の実施形態のように、行先階や荷重値にもとづいて各素子の温度変化の予測を行なわずとも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。この実施形態では、回生運転が連続して行なわれるなどして、インバータ装置4のスイッチング素子と回生抵抗器9の温度上昇値が、当該素子の急速冷却を要する値となった場合に、前述したような、インバータ装置4内のスイッチング素子に急峻な温度変化を与えずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷する事に優先して、ファン11の制御を一定風量による連続運転に切り替えて、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の急速冷却を行なうことを特徴としている。
【0046】
図5は、第3の実施形態におけるエレベータの制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図である。
本実施形態におけるエレベータの制御装置は、第2の実施形態で説明した構成に対して、温度判定基準設定回路27、温度判定回路28をさらに備え、かつ、第1の実施形態で説明した電流パターン予測回路14、発熱パターン予測回路15および温度変化予測回路16をさらに備える。これらは、ファン11の制御を一定風量による連続運転に切り替えて、インバータ装置4のスイッチング素子や回生抵抗器9の急速冷却の機能を実現するためのものである。
【0047】
温度判定基準設定回路27は、インバータ装置4に搭載しているスイッチング素子の温度上昇値の上限値と回生抵抗器9の温度上昇値の上限値とを、温度判定基準の設定値として内部メモリにそれぞれ記憶する。
【0048】
温度判定回路28は、インバータ装置4に搭載しているスイッチング素子の温度上昇値の予測値または検出値と、温度判定基準設定回路27に記憶される当該スイッチング素子の温度上昇値の上限値とを比較する。
また、温度判定回路28は、回生抵抗器9の温度上昇値と、温度判定基準設定回路27に記憶される回生抵抗器9の温度上昇値の上限値とを比較する。
【0049】
ここで述べた比較対象の温度上昇値は、温度変化予測回路16により予測した、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の温度変化パターンで示される、運転開始時からの温度上昇値、および、温度上昇検出回路26により検出した、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の温度上昇値である。
【0050】
図6は、第3の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子および回生抵抗器の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
本実施形態では、まず、第1の実施形態で説明した温度変化予測のためのステップS1からS5の動作を行なう。ただし、温度変化予測回路16は、予測結果を第1の実施形態のようにファン電源パターン算出回路17に出力するのではなく、温度判定回路28に出力する。
そして、第2の実施形態で説明した温度上昇検出のためのステップS21からS24の動作を行なう。ただし、温度上昇検出回路26は、検出結果を第2の実施形態のようにファン電源パターン算出回路17に出力するのではなく、温度判定回路28に出力する。
【0051】
次に、第3の実施形態における特徴的な動作、つまりインバータ装置4のスイッチング素子や回生抵抗器9の急速冷却のための動作であるステップS31からS34の動作について説明する。まず、温度判定回路28は、温度判定基準設定回路27に記憶された温度判定基準の設定値である、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値の上限値と回生抵抗器9の温度上昇値の上限値とをそれぞれ入力する(ステップS31)。
【0052】
次に、温度判定回路28は、第1の比較として、温度変化予測回路16から入力した、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化パターンで示される、運転開始時からの温度上昇値と、温度判定基準設定回路27に記憶された設定値であるインバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値の上限値とを比較する。
【0053】
また、温度判定回路28は、第2の比較として、温度変化予測回路16から入力した、回生抵抗器9の温度変化パターンで示される、運転開始時からの温度上昇値と、温度判定基準設定回路27に記憶された設定値である回生抵抗器9の温度上昇値の上限値とを比較する。
【0054】
また、温度判定回路28は、第3の比較として、温度上昇検出回路26から入力した、周囲温度に対するインバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値と、温度判定基準設定回路27に記憶された設定値であるインバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値の上限値とを比較する。
【0055】
また、温度判定回路28は、第4の比較として、温度上昇検出回路26から入力した、周囲温度に対する回生抵抗器9の温度上昇値と、温度判定基準設定回路27に記憶された設定値である回生抵抗器9の温度上昇値の上限値とを比較する。
【0056】
温度判定回路28は、これらの第1から第4の比較の結果の少なくとも1つにおいて、温度上昇値が比較対象の設定値以上であるか否かを判断する(ステップS32)。
そして、温度判定回路28は、第1から第4の比較の結果、いずれの比較によっても温度上昇値が比較対象の設定値未満である場合には(ステップS32のNO)、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の急速冷却が不要であるとの判定結果を、温度変化予測回路16による予測結果および温度上昇検出回路26による検出結果とともにファン電源パターン算出回路17に出力する。以後は、第1の実施形態で説明したファン電源制御パターンの算出および各素子の空冷の動作であるステップS6およびステップS7の動作がなされる。
【0057】
一方、温度判定回路28は、第1から第4の比較の結果、いずれかの比較による温度上昇値が比較対象の設定値以上である場合には(ステップS32のYES)、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の急速冷却が必要であると判定し、この判定結果を、温度変化予測回路16による予測結果および温度上昇検出回路26による検出結果ともにファン電源パターン算出回路17に出力する。
【0058】
この場合、ファン電源パターン算出回路17は、第1の実施形態で説明したインバータ装置4内のスイッチング素子に急峻な温度変化を与えずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷できるファン電源制御パターンの代わりに、一定風量によりインバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9を急速冷却できるファン電源制御パターン一定風量による連続運転の電源制御パターンを生成する(ステップS33)。
【0059】
ファン電源制御回路18は、この生成したファン電源制御パターンに従って、ファン電源19を制御してファン11の一定風量の連続運転によるインバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の急速冷却を開始する(ステップS34)。
【0060】
急速冷却を開始すると、温度変化予測のためのステップS1からS5、温度上昇検出のためのステップS21からS24、およびステップS31の動作を再度行なう。ただし、急速冷却開始後のステップS1からS5の動作では、温度変化予測回路16は、前述した急速冷却を行なっている事によるインバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の放熱効果を考慮した温度変化予測を行なう。
【0061】
そして、温度判定回路28は、第1から第4の比較の結果、いずれの比較によっても温度上昇値が比較対象の設定値未満となった場合には、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の急速冷却が不要であって、かつ、第1の実施形態で説明したインバータ装置4内のスイッチング素子に急峻な温度変化を与えずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷すべきとの判定結果を、温度変化予測回路16による予測結果とともにファン電源パターン算出回路17に出力する。
【0062】
以後は、第1の実施形態で説明したファン電源制御パターンの算出および各素子の空冷の動作であるステップS6およびステップS7の動作がなされ、インバータ装置4内のスイッチング素子に急峻な温度変化を与えずに当該スイッチング素子が空冷され、かつ回生抵抗器9が必要十分に空冷される。
【0063】
以上説明したように、第3の実施形態では、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の温度上昇値が、これらの素子の急速冷却を要する値以上となる場合に、第1の実施形態で説明したファン11の可変制御に優先して、ファン11の制御を一定風量による連続運転に切り替えて、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の温度上昇値が所定値未満となるように急速冷却を行なうので、回生運転が連続して行なわれなるなどしてインバータ装置4のスイッチング素子と回生抵抗器9の温度が大幅に上昇したとしても、これらの素子の寿命の著しい減少や破損を未然に防止することが可能となる。
【0064】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。この実施形態では、インバータ装置4内のスイッチング素子の複数箇所のそれぞれの温度の差分や回生抵抗器9の複数箇所のそれぞれの温度の差分が大きい場合にファン電源制御パターンを補正して、これらの素子の複数箇所のそれぞれの温度の差分が減少するようにファン11の可変制御を行なうことで、インバータ装置4内のスイッチング素子に急峻な温度変化を与えずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷することを特徴としている。
【0065】
図7は、第4の実施形態におけるエレベータの制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図である。
本実施形態におけるエレベータの制御装置は、ファンがファン11a,11bの2台であり、これらのそれぞれは、インバータ装置4内のスイッチング素子の複数箇所のそれぞれ、および回生抵抗器9の複数箇所のそれぞれを空冷できるようになっている。また、第2の実施形態でも説明した回生抵抗温度検出器は回生抵抗温度検出器22a,22bの2つであり、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度検出器は、スイッチング素子温度検出器23a,23bの2つであり、これらの設置箇所は、ファン11a,11bのそれぞれによる空冷範囲に対応する。
【0066】
具体的には、ファン11aは、インバータ装置4内のスイッチング素子の第1の範囲および回生抵抗器9の第1の範囲を空冷し、ファン11bは、インバータ装置4内のスイッチング素子の第1の範囲と異なる第2の範囲および回生抵抗器9の第1の範囲と異なる第2の範囲を空冷する。
回生抵抗温度検出器22aは、回生抵抗器9の第1の範囲中の所定の箇所の温度を検出し、回生抵抗温度検出器22bは、回生抵抗器9の第2の範囲中の所定の箇所の温度を検出する。本実施形態では、インバータ装置4内のスイッチング素子の第1の範囲と第2の範囲とでインバータ装置4の空冷を要する全範囲をカバーし、これらの範囲は重複部分のない別個の範囲としてもよいし、これらの範囲の一部分同士が重複していても差し支えない。回生抵抗器9の第1の範囲と第2の範囲との関係も同様である。
【0067】
また、本実施形態では、第3の実施形態で説明した構成に対して、インバータ装置4内のスイッチング素子の複数箇所のそれぞれの温度の差分や回生抵抗器9の複数箇所のそれぞれの温度の差分が大きい場合にファン電源制御パターンを補正する機能を実現するための、温度差基準設定回路29、温度差検出回路30、ファン電源補正回路31を備える。
【0068】
スイッチング素子温度検出器23aは、インバータ装置4内のスイッチング素子の第1の範囲中の所定の箇所の温度を検出し、スイッチング素子温度検出器23bは、インバータ装置4内のスイッチング素子の第2の範囲中の所定の箇所の温度を検出する。
【0069】
温度差基準設定回路29は、インバータ装置4内のスイッチング素子の前述した2箇所の温度の差分の上限値、および回生抵抗器9の前述した2箇所の温度の差分の上限値を温度差基準値として内部メモリに記憶する。
【0070】
温度差検出回路30は、温度差基準設定回路29に記憶される、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度差基準値とインバータ装置4内のスイッチング素子の前述した2箇所の温度の差分とを比較する。また、温度差検出回路30は、温度差基準設定回路29に記憶される、回生抵抗器9のスイッチング素子の温度差基準値と回生抵抗器9の前述した2箇所の温度の差分とを比較する。
【0071】
また、本実施形態では、第3の実施形態で説明した構成に対して、異常発報回路32をさらに備える。この異常発報回路32は、温度差検出回路30による比較の結果、インバータ装置4内のスイッチング素子の2箇所の温度の差分や回生抵抗器9の2箇所の温度の差分が比較対象の温度差が基準値以上である場合に、建物内の監視室や建物外の遠隔監視センタに対して、インバータ装置4内のスイッチング素子の2箇所の温度の差分が異常状態にあることや回生抵抗器9の2箇所の温度の差分が異常状態にあることの異常発報を行なう。
【0072】
ファン電源補正回路31は、温度差検出回路30による比較の結果、インバータ装置4内のスイッチング素子の2箇所の温度の差分や回生抵抗器9の2箇所の温度の差分が、比較対象の温度差基準値以上である場合に、この温度の差分が基準値未満となるようなファン11のファン電源制御パターンを補正する。
【0073】
図8は、第4の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子および回生抵抗器の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
まず、第1の実施形態で説明した温度変化予測のためのステップS1からS5の動作を行なう。ただし、温度変化予測回路16は、予測結果を第1の実施形態のようにファン電源パターン算出回路17に出力するのではなく、温度判定回路28に出力する。
【0074】
次に、前述した、インバータ装置4内のスイッチング素子の複数箇所のそれぞれの温度の差分や回生抵抗器9の複数箇所のそれぞれの温度の差分を求めるための動作であるステップS41からS44の動作について説明する。
まず、回生抵抗温度検出器22a,22bのそれぞれにより、回生抵抗器9の第1および第2の範囲中の箇所のそれぞれの温度を検出する(ステップS41)。
そして、スイッチング素子温度検出器23a,23bのそれぞれにより、インバータ装置4内のスイッチング素子の第1の範囲中の箇所および第2の範囲中の箇所のそれぞれの温度を検出する(ステップS42)。
そして、周囲温度検出器24は、エレベータ制御装置の周囲温度を検出する(ステップS43)。
【0075】
温度検出回路25は、回生抵抗温度検出器22a,22b、スイッチング素子温度検出器23a,23b、周囲温度検出器24より検出した温度をそれぞれ読み取る。そして、温度上昇検出回路26は、温度検出回路25により読み取った回生抵抗器9の複数箇所のそれぞれの温度、インバータ装置4内のスイッチング素子の複数箇所のそれぞれの温度、および周囲温度をもとに、周囲温度に対する回生抵抗器9の複数の箇所のそれぞれの温度上昇値、および周囲温度に対するインバータ装置4内のスイッチング素子の複数の箇所のそれぞれの温度上昇値を検出する(ステップS44)。ただし、温度上昇検出回路26は、検出結果を第2の実施形態のようにファン電源パターン算出回路17に出力するのではなく、温度判定回路28に出力する。
【0076】
次に、第3の実施形態で説明した、必要時にインバータ装置4のスイッチング素子や回生抵抗器9の急速冷却を行なう為のステップS31からS34までの動作がなされる。温度判定回路28がステップS32で「NO」と判定した場合、つまり、第3の実施形態で説明した急速冷却が不要である場合は、温度判定回路28は、この判定結果を、温度変化予測回路16による予測結果および温度上昇検出回路26による検出結果とともに温度差検出回路30に出力する。
【0077】
次に、前述した、インバータ装置4内のスイッチング素子の複数箇所のそれぞれの温度の差分や回生抵抗器9の複数箇所のそれぞれの温度の差分が大きい場合にファン電源制御パターンを補正するための動作であるステップS45からS48の動作について説明する。
温度差検出回路30は、温度差基準設定回路29に記憶された温度差基準の設定値である、インバータ装置4内のスイッチング素子の2箇所の温度差の上限値と回生抵抗器9の2箇所の温度差の上限値とをそれぞれ入力する(ステップS45)。
【0078】
温度差検出回路30は、温度上昇検出回路26から温度判定回路28を介して入力した検出結果をもとにインバータ装置4内のスイッチング素子の2箇所の温度の差分を計算し、第1の比較として、この計算した差分と温度差基準設定回路29に記憶された設定値である、インバータ装置4内のスイッチング素子の2箇所の温度の差分の上限値とを比較する。
【0079】
また、温度差検出回路30は、温度上昇検出回路26から温度判定回路28を介して入力した検出結果をもとに回生抵抗器9の2箇所の温度の差分を計算し、第2の比較として、この計算した差分と温度差基準設定回路29に記憶された設定値である、回生抵抗器9の2箇所の温度の差分の上限値とを比較する。
【0080】
温度差検出回路30は、これらの第1および第2の比較の結果の少なくとも一方において、2箇所の温度の差分値が比較対象の設定値以上であるか否かを判断する(ステップS46)。
【0081】
そして、温度差検出回路30は、第1および第2の比較の結果、いずれの比較によっても検出対象の2箇所の温度の差分が比較対象の設定値未満である場合には(ステップS46のNO)、インバータ装置4内のスイッチング素子の2箇所の温度の差分や回生抵抗器9の2箇所の温度の差分がいずれも許容範囲内であるとの判定結果を、温度判定回路28からの温度変化予測回路16による予測結果および温度上昇検出回路26による検出結果とともにファン電源パターン算出回路17に直接出力する。以後は、第1の実施形態で説明したファン電源制御パターンの算出および各素子の空冷の動作であるステップS6およびステップS7の動作がなされる。
【0082】
一方、温度差検出回路30は、第1および第2の比較の結果、いずれかの比較による2箇所の温度の差分が比較対象の設定値以上である場合には(ステップS46のYES)、この判定結果を、温度変化予測回路16による予測結果および温度上昇検出回路26による検出結果ともにファン電源補正回路31に出力し、当該判定結果を異常発報回路32にも出力する。
【0083】
異常発報回路32は、温度差検出回路30からの判定結果がインバータ装置4内のスイッチング素子の2箇所の温度の差分が異常状態にあることを示す場合は、インバータ装置4内のスイッチング素子の差分の異常発報を行ない、温度差検出回路30からの判定結果が回生抵抗器9の2箇所の温度の差分が異常状態にあることを示す場合は、回生抵抗器9の差分の異常発報を行なう(ステップS47)。
【0084】
そして、ファン電源補正回路31は、設定値以上である、インバータ装置4内のスイッチング素子の2箇所または回生抵抗器9の2箇所の温度の差分が比較対象の設定値未満となるような、ファン11のファン電源制御パターンの補正パターンをファン電源パターン算出回路17に出力する(ステップS48)。
【0085】
この補正パターンの具体例を説明する。この補正パターンは、温度差検出回路30からの判定結果で示される、インバータ装置4内のスイッチング素子の第1の範囲内の箇所の温度が第2の範囲内の箇所の温度より高い場合、もしくは回生抵抗器9の第1の範囲内の箇所の温度が第2の範囲内の箇所の温度より高い場合には、この第1の範囲を空冷するファン11aの駆動電圧や駆動時間を変化させて、第2の範囲と比較して第1の範囲の空冷を促進させるものである。
【0086】
また、この補正パターンは、温度差検出回路30からの判定結果で示される、インバータ装置4内のスイッチング素子の第2の範囲内の箇所の温度が第1の範囲内の箇所の温度より高い場合、もしくは回生抵抗器9の第2の範囲内の箇所の温度が第1の範囲内の箇所の温度より高い場合には、この第2の範囲を空冷するファン11bの駆動電圧や駆動時間を変化させて、第1の範囲と比較して、第2の範囲の空冷を促進させるものである。
【0087】
ファン電源パターン算出回路17は、ファン電源補正回路31からの補正パターンを考慮した上で、第1の実施形態で説明したインバータ装置4内のスイッチング素子に急峻な温度変化を与えずに当該スイッチング素子を空冷し、かつ回生抵抗器9を必要十分に空冷できるファン電源制御パターンを生成し(ステップS6)、ステップS7の動作がなされる。
【0088】
以上説明したように、第4の実施形態では、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の異なる複数箇所の温度の差分が設定値以上である場合に、この差分が設定値未満となるように、ファン電源制御パターンの補正を行なうので、ファンの性能劣化やファンの通風路における何らかの障害などに起因して、各種素子における温度の偏りが生じている場合でも、この偏りを低減させることができる。
【0089】
また、この実施形態では、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の異なる複数箇所の温度の差分が設定値以上である場合に、この差分が設定値未満となるように、ファン電源制御パターンの補正を行なうと説明したが、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の異なる複数箇所の温度が等しくない場合に、これらの温度が等しくなるようにファン電源制御パターンの補正を行なうことでインバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の異なる複数箇所の温度が均一になるような制御を行なってもよい。
【0090】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。この実施形態では、エレベータの設置時からの経年劣化などにより、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の温度変化予測値と温度上昇検出値との間に明らかな剥離が発生した場合に、この剥離を低減させるようにファン電源制御パターンを補正してファン11の可変制御を行なうことを特徴としている。
【0091】
図9は、第5の実施形態におけるエレベータの制御装置の電力変換部を特記した構成例を示す図である。
本実施形態では、第4の実施形態で説明した構成と比較して、ファン電源補正回路31の代わりにファン電源パターン補正回路35を備え、温度比較回路33、記憶回路34および遠隔点検回路36をさらに備えるものである。これらは、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の経年劣化のために、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の温度変化予測値と温度上昇検出値との間に明らかな剥離が発生した場合に、この剥離を低減させるようにファン電源制御パターンを補正するために設けられる。
【0092】
遠隔点検回路36は、昇降路外の建物内監視室や遠隔監視センタからの指示信号に従い、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の経年劣化の点検のための所定のタイミングで、所定の遠隔点検運転、例えば、通常運転より低い所定の速度および所定の荷重条件における最下階と最上階の間の運転を制御する。この実施形態では、遠隔点検運転を行なっていない場合には第4の実施形態と同じ動作を行ない、遠隔点検運転を行なう場合には、本実施形態における特徴的な動作を行なう。
【0093】
記憶回路34は、エレベータ設置時における、前述した所定の遠隔点検運転と同じ運転時における、温度変化予測回路16により予測した温度変化パターンで示される、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化予測値と、温度上昇検出回路26により検出した、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値との差分値を、温度予測値と温度検出値との差分の第1の初期値として記憶する。
【0094】
また、記憶回路34は、エレベータ設置時における前述した所定の遠隔点検運転と同じ運転時における、温度変化予測回路16により予測した温度変化パターンで示される、回生抵抗器9の温度変化予測値と温度上昇検出回路26により検出した、回生抵抗器9の温度上昇値との差分値を、温度予測値と温度検出値との差分の第2の初期値として記憶する。ただし、これらの初期値を求めるにあたり、温度上昇検出回路26は、回生抵抗温度検出器22aによる検出結果およびスイッチング素子温度検出器23aによる検出結果をもとに温度上昇値の検出を行なう。
【0095】
温度比較回路33は、初期値の記憶後の所定のタイミングにおける前述した遠隔点検運転時において、温度変化予測回路16により予測した温度変化パターンで示される、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化予測値および温度上昇検出回路26により検出したインバータ装置4内のスイッチング素子の温度上昇値との差分を計算し、この差分と前述した第1の初期値とを比較することで、エレベータの設置時からの経年劣化などにより、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化予測値と温度上昇検出値との間に明らかな剥離が発生しているか否かを判定する。
【0096】
また、温度比較回路33は、初期値の記憶後の所定のタイミングにおける前述した遠隔点検運転時において、温度変化予測回路16により予測した温度変化パターンで示される、回生抵抗器9の温度変化予測値および温度上昇検出回路26により検出した回生抵抗器9の温度上昇値との差分を計算し、この差分と前述した第2の初期値とを比較することで、エレベータの設置時からの経年劣化などにより、回生抵抗器9の温度変化予測値と温度上昇検出値との間に明らかな剥離が発生しているか否かを判定する。
【0097】
ファン電源パターン補正回路35は、第4の実施形態で説明したファン電源補正回路31と同じ機能を有するほか、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化予測値と温度上昇検出値との間に明らかな剥離が発生していると温度比較回路33により判定した場合に、この剥離が減少するようなファン電源制御パターンの補正パターンを生成する。
【0098】
図10は、第5の実施形態におけるエレベータ制御装置のインバータ装置のスイッチング素子および回生抵抗器の空冷のための処理動作の一例を示すフローチャートである。
この第5の実施形態における、他の実施形態と比較した特徴的な動作である、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の温度変化予測値と温度上昇検出値との間に明らかな剥離が発生した場合に、この剥離を低減させるようにファン電源制御パターンを補正するための動作は、ステップS51からS56の動作である。
【0099】
まず、遠隔点検回路36は、昇降路外の遠隔監視センタからの指示信号に従い、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の経年劣化の点検のための所定のタイミングで遠隔点検運転の開始制御信号を制御用マイコン20に出力する。制御用マイコン20は開始制御信号を入力すると、この信号を温度比較回路33に出力し、かつ、通常運転を中断して遠隔点検運転を開始する(ステップS51)。
行先階検出装置12は、この遠隔点検運転における行先階を検出する(ステップS52)。
【0100】
そして、この検出した行先階をもとにした、第1の実施形態で説明したステップS2からS5までの動作、および第2の実施形態で説明したステップS21からS24までの動作がなされる。ただし、ステップS21からS24までの動作では、回生抵抗温度検出器22aによる検出結果およびスイッチング素子温度検出器23aによる検出結果をもとに温度上昇値の検出を行なう。
【0101】
そして、温度比較回路33は、前述した開始制御信号を入力すると、記憶回路34に記憶される第1の初期値を読み出した上で、温度変化予測回路16からの温度変化パターンで示される、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化予測値および温度上昇検出回路26により検出した当該スイッチング素子の温度上昇検出値との差分を計算し、この差分と前述した第1の初期値とを比較することで、初期値との差分がエレベータの設置時からの経年劣化などにより、インバータ装置4内のスイッチング素子の温度変化予測値と温度上昇検出値との間の明らかな剥離である所定値以上の差分であるか否かを判定する。
【0102】
また、温度比較回路33は、記憶回路34に記憶される第2の初期値を読み出した上で、温度変化予測回路16からの温度変化パターンで示される、回生抵抗器9の温度変化予測値および温度上昇検出回路26により検出した当該回生抵抗器9の温度上昇検出値との差分を計算し、この差分と前述した第2の初期値とを比較することで、初期値との差分がエレベータの設置時からの経年劣化などにより、回生抵抗器9の温度変化予測値と温度上昇検出値との間の明らかな剥離である所定値以上の差分であるか否かを判定する(ステップS53,S54,S55)。
【0103】
そして、温度比較回路33は、前述したいずれかの比較による、温度変化予測値と温度上昇検出値との差分と比較対象の初期値との差分が所定値未満である場合には(ステップS55のNO)、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の温度変化予測値と温度上昇検出値との間に明らかな剥離がないとの判定結果を、温度変化予測回路16による予測結果および温度上昇検出回路26による検出結果とともにファン電源パターン算出回路17に出力する。以後は、第1の実施形態で説明したファン電源制御パターンの算出および各素子の空冷の動作であるステップS6およびステップS7の動作がなされる。
【0104】
一方、温度比較回路33は、温度変化予測値と温度上昇検出値との差分と比較対象の初期値との差分が所定値以上である場合には(ステップS55のYES)、この判定結果を、温度変化予測回路16による予測結果および温度上昇検出回路26による検出結果ともにファン電源パターン補正回路35に出力する。
【0105】
そして、ファン電源パターン補正回路35は、所定値以上である、温度変化予測値と温度上昇検出値との差分が、判定対象の所定値未満となるような、ファン11のファン電源制御パターンの補正パターンをファン電源パターン算出回路17に出力する(ステップS56)。
【0106】
以上説明したように、第5の実施形態では、遠隔点検運転時において、インバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器9の温度変化予測値と温度上昇検出値との間に明らかな剥離が発生した場合に、この剥離を低減させるようにファン電源制御パターンを補正してファン11の可変制御を行なうので、経年劣化によりインバータ装置4内のスイッチング素子や回生抵抗器の空冷の制御にずれが生じたとしても、このずれを補正したファン電源制御を行なうことが可能になる。
【0107】
これらの各実施形態によれば、経過時間に対するインバータ内のスイッチング素子の温度変化を少なくして空冷し、かつ回生抵抗器も必要十分に空冷することが可能になるエレベータ制御装置を提供することができる。
発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0108】
1…商用三相交流電源、2…コンバータ装置、3…平滑コンデンサ、4…インバータ装置、5…電流検出器、6…電動機、7…乗りかご、8…カウンタウェイト、9…回生抵抗器、10…スイッチング素子(Q7素子)、11,11a,11b…ファン、12…行先階検出装置、13…荷重検出装置、14…電流パターン予測回路、15…発熱パターン予測回路、16…温度変化予測回路、17…ファン電源パターン算出回路、18…ファン電源制御回路、19…ファン電源、20…制御用マイコン、21…ファン電源パターン設定回路、22,22a,22b…回生抵抗温度検出器、23,23a,23b…スイッチング素子温度検出器、24…周囲温度検出器、25…温度検出回路、26…温度上昇検出回路、27…温度判定基準設定回路、28…温度判定回路、29…温度差基準設定回路、30…温度差検出回路、31…ファン電源補正回路、32…異常発報回路、33…温度比較回路、34…記憶回路、35…ファン電源パターン補正回路、36…遠隔点検回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流回路と、
前記整流回路で変換された直流電力の脈動を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑化された直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換して出力するインバータと、
前記インバータから出力された交流電力で駆動して乗りかごを昇降させる電動機と、
スイッチング素子を介して前記インバータの直流側と接続され、前記電動機の回生電力を消費する回生抵抗器と、
前記回生抵抗器および前記インバータを空冷するためのファンと、
前記乗りかごの荷重値を検出する荷重検出手段と、
前記乗りかごの行先階を検出する行先階検出手段と、
前記検出した行先階と荷重値をもとに、運転開始前に、運転に伴う前記インバータ内のスイッチング素子と前記回生抵抗器の温度変化パターンを予測する温度変化予測手段と、
前記予測した温度変化パターンをもとに、経過時間に対する前記インバータ内のスイッチング素子の温度変化の値が所定の基準値以下となり、かつ前記回生抵抗器が空冷されるように、前記ファンの駆動電圧および駆動時間を制御するファン制御手段と
を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
交流電源からの交流電力を直流電力に変換する整流回路と、
前記整流回路で変換された直流電力の脈動を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑化された直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換して出力するインバータと、
前記インバータから出力された交流電力で駆動して乗りかごを昇降させる電動機と、
スイッチング素子を介して前記インバータの直流側と接続され、前記電動機の回生電力を消費する回生抵抗器と、
前記回生抵抗器および前記インバータを空冷するためのファンと、
前記回生抵抗器の温度を検出する抵抗温度検出手段と、
前記インバータ内のスイッチング素子の温度を検出する素子温度検出手段と、
前記抵抗温度検出手段および前記素子温度検出手段による検出結果をもとに、前記回生抵抗器および前記インバータ内のスイッチング素子の温度上昇値を検出する温度上昇検出手段と、
前記温度上昇値の検出結果をもとに、経過時間に対する前記インバータ内のスイッチング素子の温度変化の値が所定の基準値以下となるように、かつ前記回生抵抗器が空冷されるように、前記ファンの駆動電圧および駆動時間を制御するファン制御手段と
を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項3】
前記ファン制御手段は、
前記温度上昇検出手段による検出結果が、前記回生抵抗器および前記インバータ内のスイッチング素子の急速冷却を要する所定の基準値以上である場合に、前記温度上昇値が前記基準値未満となるように、前記ファンの制御を一定風量による連続運転に切り替えて前記回生抵抗器および前記インバータ内のスイッチング素子を急速冷却する
ことを特徴とする請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記ファンを複数備え、
前記抵抗温度検出手段は、
前記回生抵抗器における前記複数のファンのいずれかにより空冷可能な複数の箇所のそれぞれの温度を検出し、
前記素子温度検出手段は、
前記インバータ内のスイッチング素子における前記複数のファンのいずれかにより空冷可能な複数の箇所のそれぞれの温度を検出し、
前記ファン制御手段は、
前記回生抵抗器の複数の箇所のそれぞれの温度間の差分、および前記インバータ内のスイッチング素子の複数の箇所のそれぞれの温度間の差分の少なくとも一方が、所定の基準値以上である場合に、当該差分が前記所定の基準値未満となるように、前記複数のファンのそれぞれの駆動電圧および駆動時間を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記回生抵抗器の温度を検出する抵抗温度検出手段と、
前記インバータ内のスイッチング素子の温度を検出する素子温度検出手段と、
前記抵抗温度検出手段および前記素子温度検出手段による検出結果をもとに、前記回生抵抗器および前記インバータ内のスイッチング素子の温度上昇値を検出する温度上昇検出手段と、
遠隔指示に基づいて乗りかごの点検運転を行なう点検運転部と
をさらに備え、
前記ファン制御手段は、
前記点検運転部による点検運転の開始後における、前記予測した温度変化パターンで示される温度上昇値と前記検出した温度上昇値との差分が前記インバータ装置内のスイッチング素子や前記回生抵抗器の経年劣化を示す所定の基準値以上である場合に、前記差分が前記所定の基準値未満となるように前記ファンの駆動電圧および駆動時間を補正制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−23305(P2013−23305A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157061(P2011−157061)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】