説明

エレベータ

【課題】操作方法が理解できない子供による使用を禁止できるエレベータを提供することである。
【解決手段】エレベータ10は、乗りかご12に乗り込む利用者又は乗りかご12内の利用者を検出する検出装置として秤装置31と、チャイルドロックモードを実行する制御装置50とを備える。制御装置50は、秤装置31により検出された積載重量が予め定められた閾値未満であるときに乗りかご12内の利用者が特定の子供のみであると判定する判定手段51、判定手段51の判定結果に基づいてドアの閉扉を禁止する運転休止手段52、および予め定められた解除操作がなされたときに、ドアの閉扉禁止を解除する解除手段53を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに関し、より詳しくは、子供による操作を考慮したエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、各種商業施設やマンションなど、複数階床を有する建造物に広く設置されている。エレベータの利用者は、乗場操作盤の呼び登録釦を操作することで乗りかごを乗場に停止させることができ、かご内操作盤の行き先階釦を操作することで目的階床の乗場に乗りかごを移動させることができる。このように、エレベータは操作が簡単で誰でも利用できるため、保護者が目を離したすきに子供が誤って乗場操作盤を操作し乗りかごに乗り込むことが想定される。
【0003】
本発明に関連する技術として、利用者(子供等)を特定して種々のサービスを提供できるエレベータが幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、エレベータの乗りかごに乗り込む乗客を高い精度で特定し、特定された乗客が子供や高齢者である場合には、かご戸の開閉速度を遅くする等のサービスを提供するエレベータの制御装置が開示されている。また、特許文献2には、監視対象者である子供や高齢者などの識別情報を携帯端末に記憶させておき、監視対象者の帰宅や外出といった動向を保護者などに知らせることができるエレベータの利用状況監視システムが開示されている。また、特許文献3には、子供等の特定関係者がエレベータを利用したときに、かご室内の画像を保護者等が遠隔で確認できるエレベータかご室内確認装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007‐1758号公報
【特許文献2】特開2010‐64883号公報
【特許文献3】特開2009‐190847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各特許文献の技術によれば、子供等の特定の利用者に対応したサービスを提供できる。しかしながら、上記各特許文献の技術では、子供が誤って乗場操作盤等を操作し乗りかごに乗り込むような状況については十分考慮されていない。
【0006】
なお、従来のエレベータは、かごドアの戸袋付近に近づく利用者の手や荷物などを検知するとドアの開扉速度を減速又は開扉を停止させる気配りドアセンサ、乗降口を通過する利用者や荷物を検知すると閉じかけたドアを開くマルチビームドアセンサ等を備えている。つまり、エレベータには、万全な安全対策が施されているが、操作方法を理解できない子供のみが乗りかごに乗っている状況は好ましくはない。
【0007】
即ち、本発明の目的は、操作方法が理解できない子供による使用を禁止できるエレベータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータは、乗りかごに乗り込む利用者又は乗りかご内の利用者を検出する検出装置と、検出装置により検出された利用者が特定の子供のみであるときに、ドアの閉扉を禁止する制御装置と、を備えることを特徴とする。
ここで、特定の子供とは、エレベータの操作方法が理解できない、或いは適切な操作ができない小さな子供(幼児)を意味し、利用者が特定の子供のみであるか否かは、例えば、利用者の体格、特に体重および/又は身長に基づいて判断する。例えば、特定の子供は、体格が予め設定した基準値未満の子供である。
なお、ドアの閉扉を禁止すべき状況としては、例えば、特定の子供が1人で乗りかご内にいる状況は勿論、特定の子供が複数乗りかご内にいる状況が挙げられる。場合によっては、乗りかご内に大人が乗っており、ある乗場から乗り込む利用者が特定の子供のみである状況についてもドアの閉扉を禁止してもよい。
当該構成によれば、検出装置により検出された利用者が特定の子供のみであるときに、ドアの閉扉を禁止して、乗りかごの昇降運転を止めることができる。つまり、エレベータの操作方法が理解できない、或いは適切な操作ができない小さな子供(幼児)だけが乗りかごに乗った状態で、エレベータが動くことを防止できる。
【0009】
また、本発明に係るエレベータにおいて、検出装置が乗りかごの積載重量を検出する秤装置であり、制御装置は、秤装置により検出された積載重量が予め定められた閾値未満であるときに乗りかご内の利用者が特定の子供のみであると判断して、ドアの閉扉を禁止する構成とすることができる。
当該構成によれば、利用者の体重に基づいて、利用者が特定の子供であるか否かを判断することができる。例えば、閾値としては、使用を禁止すべき対象年齢の子供の体重に基づいて、当該対象年齢の子供の大部分が含まれるような値に設定できる。
【0010】
また、本発明に係るエレベータにおいて、検出装置が乗降口の上部から下部まで複数の赤外線が横方向に照射され当該赤外線が遮断されることで乗降口を通過する利用者を検出する赤外線センサであり、制御装置は、赤外線センサの乗降口下部の赤外線のみが遮断されたときに乗りかご内の利用者が特定の子供のみであると判断して、ドアの閉扉を禁止する構成とすることができる。
当該構成によれば、利用者の身長に基づいて、利用者が特定の子供であるか否かを判断することができる。例えば、判断のボーダーラインとなる赤外線の高さとしては、使用を禁止すべき対象年齢の子供の身長に基づいて、当該対象年齢の子供の大部分が含まれるような高さに設定できる。
【0011】
また、制御装置は、予め定められた解除操作がなされたときに、ドアの閉扉禁止を解除する構成を含むことが好ましい。
当該構成によれば、利用者の体格等に基づいて利用者が特定の子供か否かを判断する弊害を防止できる。つまり、体格が小さな子供等であっても、エレベータの操作方法が理解でき適切に操作できる子供等であれば、エレベータの使用を許可することができる。したがって、解除操作は、エレベータの操作方法を理解し適切に操作できる子供と、操作方法が理解できず使用を禁止すべき子供とを識別可能な操作内容とする。
【0012】
また、乗りかご内にかご内表示装置を備え、制御装置は、解除操作がなされたときに、子供の注意を引く画像をかご内表示装置に出力する構成を含むことが好ましい。
【0013】
また、制御装置に接続された遠隔監視装置を備え、制御装置は、ドアの閉扉禁止の情報を遠隔監視装置に送信する構成を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るエレベータによれば、操作方法が理解できない子供による使用を禁止することができる。つまり、本発明に係るエレベータによれば、乗りかご内の利用者が、操作方法が理解できない子供のみであるか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態であるエレベータの全体構成を模式的に示す図である。
【図2】図1のシステムにおける乗りかご内を示す図である。
【図3】図1のシステムにおけるチャイルドロックモードの制御手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を用いて、本発明に係るエレベータの実施形態につき、以下詳細に説明する。実施形態では、上部機械室14を有するロープ式のエレベータ10を例示して説明するが、本発明の適用はこれに限定されず、機械室レスエレベータや油圧式エレベータにも適用することができる。また、本発明は、複数のエレベータが併設されたシステムにも適用することができる。
【0017】
なお、図1では、乗りかご12内に子供100が1人で乗り込んだ様子を例示している。本明細書において、子供100とは、エレベータの操作方法が理解できない子供による使用を禁止するチャイルドロックモードの対象者(使用禁止対象者)となる特定の子供であって、具体的には、体重および/又は身長が予め定められた基準値未満である幼児を想定する。
【0018】
図1に示すように、エレベータ10は、昇降路11内において、乗りかご12が各階床に設置された乗場13の間を昇降する昇降機構部と、その動作を制御する制御装置50とで構成されている。また、制御装置50は、遠隔監視装置40に接続されており、昇降機構部等に異常が発生した場合には制御装置50を介して遠隔監視装置40に異常通報がなされる。遠隔監視装置40としては、例えば、エレベータ10が設置された建造物内にある管理人室やエレベータ10の遠隔監視を行う情報センター等の監視装置(以下、遠隔監視装置40が設置される場所を情報センターとして説明する)が例示できる。
【0019】
昇降路11は、建造物内等に鉛直方向に貫通して設けられた乗りかご12の昇降通路である。昇降路11の最下部には、図示しないピットが設けられ、昇降路11の上部には、上部機械室14が設けられる。上部機械室14には、乗りかご12を昇降させる巻上げ機15や制御装置50が設置されている。巻上げ機15のシーブには、一端が乗りかご12の上部、他端がカウンターウエイト(図示せず)に連結された主ロープ16が巻きかけられている。ゆえに、巻上げ機15を駆動させることで主ロープ16が巻上げられ又は送り出されて、乗りかご12が昇降路11内を昇降することになる。
【0020】
乗りかご12は、利用者が乗り込むことのできる室内スペースを有し、巻上げ機15の駆動により昇降路11内を昇降する。乗りかご12内の壁面には、制御装置50と接続されたかご内操作盤17(図2参照)が設置されている。また、乗りかご12には、かごドア24、かごドア24を開閉するかごドア開閉装置25、かご内表示装置26、および乗りかご12の積載重量を測定できる秤装置31、監視カメラ41等が設置されている。
【0021】
ここで、乗りかご12内を示す図2を参照する。
図2に示すように、乗りかご12内の壁面には、かごドア24の近傍にかご内操作盤17が設置されている。かご内操作盤17は、行き先階釦18、ドア開閉釦19、乗りかご12の位置等を表示するかご内インジケータ20、および遠隔監視装置40が設置された情報センターと通話するためのインターホン21を有している。インターホン21は、インターホン釦22と、マイク・スピーカを含む通話装置23とを有し、乗りかご12内の利用者はインターホン釦22を押して情報センターのオペレータを呼び出すことができる。また、通話装置23のスピーカは、後述する解除音声ガイドを出力する装置としても利用することができる。
【0022】
乗りかご12の壁面に設置されたかご内表示装置26は、後述する画像出力手段54の機能により子供の注意を引く画像、例えば、アニメ等を表示するための装置である。したがって、かご内表示装置26は、子供100の目線に合った高さに設置することが好ましい。なお、通常運転モードにおいて、かご内表示装置26が使用されてもよく、例えば、宣伝広告等の画像が表示されてもよい。
【0023】
乗りかご12のかご上に設置された秤装置31は、乗りかご12の積載重量(荷重)を検出する装置である。つまり、秤装置31により乗りかご12内にいる利用者の体重を検出することができる。秤装置31としては、既設の装置を利用することができ、例えば、シャックルロッドの変位から荷重を検出する秤装置、或いは乗りかご12の床下に設けた弾性体のたわみ量から荷重を検出する秤装置などを用いることができる。なお、かごドア開閉装置25、かご内表示装置26、および秤装置31等は、かご内操作盤17と同様に、いずれも制御装置50と接続されており、制御装置50からの制御指令により動作し、又は制御装置50に検出値等を送信する。
【0024】
乗場13は、各階床に設けられた乗りかご12の乗降口である。乗場13の壁面は、かごドア24追従して開閉する乗場ドア27(本明細書において、「ドア」と言うときには、かごドア24および乗場ドア27を意味する)、および制御装置50と接続された乗場操作盤28等が設置されている。乗場操作盤28は、呼び登録釦29、および乗りかご12の位置等を表示する乗場インジケータ30を有している。なお、乗場インジケータ30は、昇降運転の休止等を乗場13で待つ利用者に知らせるための表示を行う。例えば、乗場インジケータ30には、「休止中」等の文字が表示される。
【0025】
制御装置50は、昇降装置を構成する各要素の動作を統一的に制御する装置である。例えば、制御装置50は、かご内操作盤17の操作に基づき、巻上げ機15に指令を与えて乗りかご12の昇降運転を制御する等の機能を有する。さらに、制御装置50は、チャイルドロックモードを実行するための手段として、判定手段51と、運転休止手段52と、解除手段53と、画像出力手段54と、報知手段55とを有する。チャイルドロックモードとは、上記のように、乗りかご12内の利用者が子供100のみである場合に実行される制御モードであって、エレベータの操作方法が理解できない特定の子供による使用を禁止するための制御モードである。
【0026】
なお、制御装置50は、CPUと、上記各手段の機能を実行する際に使用される制御パラメータ等の入力に用いられる入力部と、入力した制御パラメータ、制御プログラムなどを記憶する記録部と、入出力ポートなどを備える装置であって、コンピュータによって構成することができる。各機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、対応するエレベータ制御プログラムを実行することにより実現できる。
【0027】
判定手段51は、秤装置31により検出された積載重量と予め定めた閾値とを比較して、乗りかご12内の利用者が子供100のみであるか否かを判定する機能を有する。つまり、判定手段51は、秤装置31から検出値を取得して、検出値である積載重量が閾値未満であるときに、乗りかご12内の利用者が子供100のみであると判定する。そして、乗りかご12内の利用者が子供100のみであると判定したときには、ドアの閉扉を禁止する制御指令(以下、休止許可指令とする)を運転休止手段52に対して出力する。なお、閾値は、乗りかご12を安全に操作できる子供と乗りかご12の操作ができない子供とを識別可能な値とする必要がある。例えば、使用を禁止すべき年齢(例えば、5歳以下)の子供の体重頻度分布(例えば、5歳児の体重頻度分布)に基づいて、当該年齢の子供(5歳以下の子供)がほぼ含まれる閾値(例えば、頻度分布の90%〜99%の範囲に設定)とすることが好ましい。
【0028】
また、判定手段51は、乗りかご12内に子供100が複数乗っている場合についても特定することができる。例えば、判定手段51は、秤装置31から短時間毎に検出値を取得でき、ある乗場13において時間軸の異なる検出値が複数取得された場合には、各検出値と閾値とを比較して上記判定を実行することができる。例えば、時間軸の異なる検出値のいずれもが閾値未満であるときには、乗りかご12内の利用者は子供100のみであると判定する。一方、時間軸の異なる検出値のいずれかが閾値以上であるときには、乗りかご12内の利用者は子供100のみではないと判断する。なお、判定手段51は、子供100が乗りかご12から降りて秤装置31の検出値が0kgになったときには、休止許可指令の出力を停止又は休止許可指令を取り消す制御指令を出力する。
【0029】
運転休止手段52は、判定手段51から休止許可指令を取得したとき、即ち判定手段51が乗りかご12内の利用者は子供100のみであると判定したときに、ドアの閉扉を禁止する機能を有する。具体的には、休止許可指令を取得したときに、ドアの閉扉を禁止する制御指令をかごドア開閉装置25に対して出力しドアの閉扉を禁止することで、乗りかご12の昇降運転(通常運転モード)を休止する。なお、当該制御指令を受信したかごドア開閉装置25は、例えば、ドア開閉釦19(ドア閉釦)が操作された場合にも開扉状態を継続する。つまり、運転休止手段52は、かご内操作盤17および乗場操作盤28の操作を無効化し、さらに、ドアの閉扉を促すブザー音が鳴らないようにする等、一連の通常運転モードを休止する。
【0030】
解除手段53は、予め定められた解除操作がなされたときに、ドアの閉扉禁止を解除する機能を有する。解除手段53は、チャイルドロックモードの対象者と判定される上記閾値未満の体重の子供100に、エレベータの操作方法を理解している子供等が含まれる場合を考慮して設けられた手段である。つまり、チャイルドロックモードの対象者と判定された利用者が解除操作を行えるときには、チャイルドロックモードを解除する。具体的には、解除操作に対応する操作信号を取得したときに、例えば、休止解除指令を運転休止手段52に出力してドアの閉扉禁止を解除し、かご内操作盤17等の操作に基づく通常運転モード(通常の昇降運転)を再開させる。なお、解除操作とは、エレベータの操作方法を理解している子供と、操作方法が理解できず使用を禁止すべき子供とを識別可能な操作であって、例えば、乗りかご12内にチャイルドロックモード解除釦を設けて当該釦を操作すること、或いは行き先階釦18を複数回、所定間隔で操作すること等が例示できる。
【0031】
解除手段53は、運転休止手段52により昇降運転が休止されたときに、チャイルドロックモードを解除するための解除音声ガイドを流すことができる。例えば、「エレベータの運転が休止されました。エレベータの運転を再開するには、ご用の階の釦を3回押して下さい。」等の解除音声ガイドを、通話装置23のスピーカから出力することができる。そして、解除音声ガイドを理解でき、当該ガイドに従って解除操作を行える子供等については、エレベータ10の使用を許可することができる。なお、解除音声ガイドが出力されるスピーカとしては、通話装置23のスピーカに限定されず、別途設けられたスピーカを利用してもよい。また、解除音声ガイドの代わりに、乗りかご12内に設置された表示装置(例えば、かご内インジケータ20やかご内表示装置26等)を用いて解除操作の方法を表示してもよい。
【0032】
画像出力手段54は、解除手段53によりチャイルドロックモードが解除されたときに、子供の注意を引く画像をかご内表示装置26に出力する機能を有する。画像出力手段54は、エレベータの使用を許可した子供に対する安全性をさらに向上させるために設けられた手段であり、例えば、かご内表示装置26にアニメ等を表示することで、子供がかごドア24に触れたり、乗りかご12内で暴れたりすることを防止できる。また、かご内表示装置26は、昇降運転が休止されたときにもアニメ等を表示して、例えば、保護者が来るまでの間、子供100が動かないように注意を引き付けておくこともできる。
【0033】
報知手段55は、ドアの閉扉禁止の情報、つまり昇降運転休止の情報を遠隔監視装置40に送信する機能を有する。なお、当該情報の送信は、例えば、解除操作が行われない場合に実行される。つまり、報知手段55は、子供100のみが乗りかご12内にいることを情報センターに通報して、子供100を保護し迅速な通常運転モードの復旧を可能にするための手段である。また、報知手段55は、乗場インジケータ30に昇降運転休止を表示させる機能を有する。
【0034】
昇降運転休止の情報を受信した情報センターでは、種々の適切な対応がとられる。例えば、インターホン21を利用して子供100に呼びかける、監視カメラ41により乗りかご12内を確認し必要により遠隔操作する、場合によっては遠隔操作によりドアを閉扉して子供100を保護する等、種々の対応が例示できる。
【0035】
ここで、図3のフローチャートを参照して、エレベータ10によるチャイルドロックモードの制御方法を説明する。なお、以下では、図1に示すように、乗りかご12がある乗場13で停止しているときに、子供100が呼び登録釦29を操作してドアが開扉し、乗りかご12内に乗り込んだ状態を例示して説明する。
【0036】
まず初めに、秤装置31から取得した検出値である積載重量が閾値未満であるか否かを判定する(S10)。この手順は、判定手段51の機能によって実行される。つまり、判定手段51は、秤装置31から検出値である積載重量を取得し、閾値を読み出して互いに比較して、積載重量が閾値未満であるときには、乗りかご12内の利用者は子供100のみであると判定する。そして、休止許可指令を運転休止手段52に対して出力し、チャイルドロックモードを起動する。一方、積載重量が閾値以上である場合には、通常運転モードが継続される。
【0037】
S10において、積載重量が閾値未満であると判定されたときには、ドアの閉扉を禁止して、乗りかご12の昇降運転を休止する(S11)。この手順は、運転休止手段52の機能によって実行される。つまり、運転休止手段52は、判定手段51から休止許可指令を取得したときに、かごドア開閉装置25に対してドアの閉扉を禁止する制御指令を出力する。その他、ドアの閉扉を促すブザー音が鳴らないようにする等、一連の通常運転モードを休止する。
【0038】
S11において、ドアの閉扉が禁止され、昇降運転が休止されたときには、チャイルドロックモードを解除するための解除音声ガイドを出力する(S12)。そして、解除音声ガイドに従った解除操作がなされたか否かを判定する(S13)。S13において、解除操作がなされたと判定されたときには、チャイルドロックモードを解除して、通常運転モードを復旧する(S14)。この一連の手順は、解除手段53の機能によって実行される。例えば、解除手段53は、休止許可指令を取得して、解除操作をガイドする解除音声ガイドを乗りかご12内に流し、解除操作に対応する操作信号を受信したときに、休止解除指令を運転休止手段52に対して出力する。
【0039】
解除操作がなされて昇降運転が再開されたときには、かご内表示装置26に子供の注意を引くアニメ等の画像を出力する(S15)。この手順は、画像出力手段54の機能によって実行される。一方、解除操作が行われなかったときには、昇降運転休止の情報を、各乗場13の乗場インジケータ30に表示すると共に、情報センターに通報する。この手順は、報知手段55の機能によって実行される。
【0040】
以上のように、エレベータ10は、乗りかご12に乗り込む利用者又は乗りかご12内の利用者を検出する検出装置として秤装置31を備え、秤装置31により検出された積載重量が予め定められた閾値未満であるときに乗りかご12内の利用者が特定の子供のみであると判定する判定手段51および判定手段51の判定結果に基づいてドアの閉扉を禁止する運転休止手段52を含む制御装置50を備える。また、制御装置50は、予め定められた解除操作がなされたときにドアの閉扉禁止を解除する解除手段53を含む。
したがって、乗りかご12内の利用者が特定の子供100のみであるときに、ドアの閉扉を禁止して、乗りかご12の昇降運転を休止することができる。つまり、エレベータの操作方法が理解できない、或いは適切な操作ができない小さな子供だけが乗りかご12に乗って乗りかご12が昇降運転する状況を防止できる。一方、体重が閾値未満の子供であっても、解除操作を行うことができる子供、即ちエレベータの操作方法が理解できる子供である場合には、エレベータの使用を許可して、体重による利用者の一律な特定による弊害を防止できる。
【0041】
また、制御装置50は、解除手段53によりチャイルドロックモードが解除されたときに、子供の注意を引く画像をかご内表示装置26に出力する画像出力手段54を含むので、エレベータの使用を許可した子供が、かごドア24に触れたり、乗りかご12内で暴れたりすることを防止できる。また、制御装置50は、ドアの閉扉禁止の情報を遠隔監視装置40に送信する報知手段55を含むので、例えば、子供100を保護し、迅速な通常運転モードの復旧を可能にする。
【0042】
なお、上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で設計変更することができる。ここで、図4に、上記実施形態の変形例の1つを示す(以下では、上記実施形態と重複する説明は省略する)。
【0043】
図4に示すように、チャイルドロックモードの検出装置として秤装置31の代わりに、マルチビームドアセンサ32を利用することができる。マルチビームドアセンサ32は、乗降口33の上部から下部まで複数の赤外線(図4に点線で示す)が横方向に照射され当該赤外線が遮断されることで乗降口33を通過する利用者を検出する赤外線センサである。例えば、赤外線の投光装置が一方のかごドア24の戸当り面又は戸当り面付近に設置され、他方のかごドア24の戸当り面又は戸当り面付近に赤外線の受光装置が設置される。なお、マルチビームドアセンサ32としては、既存の設備を利用することができる。
【0044】
図4に例示する形態において、制御装置50の判定手段51は、マルチビームドアセンサ32の乗降口33下部の赤外線のみが遮断されたときに乗りかご12内の利用者が子供100のみであると判定する。つまり、利用者の身長に基づいて、利用者が子供100であるか否かを判定する。そして、図1に例示する形態と同様に、当該判定結果に基づいて、運転休止手段52の機能によりドアの閉扉が禁止される。
【0045】
子供100と他の利用者とを識別するための赤外線の高さの閾値としては、例えば、使用を禁止すべき年齢(例えば、5歳以下)の子供の身長頻度分布(例えば、5歳児の身長頻度分布)に基づいて、当該年齢の子供(5歳以下の子供)がほぼ含まれる閾値(例えば、頻度分布の90%〜99%の範囲に設定)とすることが好ましい。閾値以上の高さの赤外線が遮断された場合、判定手段51は、乗りかご12内の利用者が子供100のみではないと判断する。
【0046】
なお、チャイルドロックモードの検出装置として、マルチビームドアセンサ32および秤装置31の両方を使用してもよい。当該2つの検出装置を用いることで、利用者の身長および体重に基づいて利用者を識別することができる。また、マルチビームドアセンサ32および秤装置31に加えて、又は当該2つの検出装置の代わりに、監視カメラ41を用いることもできる。例えば、監視カメラ41から取得される画像を解析して利用者の体格を特定し、予め定めた基準値と比較して利用者を識別することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 エレベータ、11 昇降路、12 乗りかご、13 乗場、14 上部機械室、15 巻上げ機、16 主ロープ、17 かご内操作盤、18 行き先階釦、19 ドア開閉釦、20 かご内インジケータ、21 インターホン、22 インターホン釦、23 通話装置、24 かごドア、25 かごドア開閉装置、26 かご内表示装置、27 乗場ドア、28 乗場操作盤、29 呼び登録釦、30 乗場インジケータ、31 秤装置、32 マルチビームドアセンサ、33、乗降口、40 遠隔監視装置、41 監視カメラ、50 制御装置、51 判定手段、52 運転休止手段、53 解除手段、54 画像出力手段、55 報知手段、100 子供。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごに乗り込む利用者又は乗りかご内の利用者を検出する検出装置と、
検出装置により検出された利用者が特定の子供のみであるときに、ドアの閉扉を禁止する制御装置と、
を備えることを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータにおいて、
検出装置は、乗りかごの積載重量を検出する秤装置であり、
制御装置は、秤装置により検出された積載重量が予め定められた閾値未満であるときに乗りかご内の利用者が特定の子供のみであると判断して、ドアの閉扉を禁止することを特徴とするエレベータ。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベータにおいて、
検出装置は、乗降口の上部から下部まで複数の赤外線が横方向に照射され当該赤外線が遮断されることで乗降口を通過する利用者を検出する赤外線センサであり、
制御装置は、赤外線センサの乗降口下部の赤外線のみが遮断されたときに乗りかご内の利用者が特定の子供のみであると判断して、ドアの閉扉を禁止することを特徴とするエレベータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載のエレベータにおいて、
制御装置は、予め定められた解除操作がなされたときに、ドアの閉扉禁止を解除することを特徴とするエレベータ。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベータにおいて、
乗りかご内にかご内表示装置を備え、
制御装置は、解除操作がなされたときに、子供の注意を引く画像をかご内表示装置に出力することを特徴とするエレベータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1に記載のエレベータにおいて、
制御装置に接続された遠隔監視装置を備え、
制御装置は、ドアの閉扉禁止の情報を遠隔監視装置に送信することを特徴とするエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−121710(P2012−121710A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275341(P2010−275341)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】